軟磁性材料の磁気特性測定評価ノウハウ - 神奈川県...

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軟磁性材料の磁気特性測定評価ノウハウ 岩崎通信機株式会社 第二営業部 ○成田 芳正 1. はじめに モータやトランス、インダクタ、電流センサ、記録媒体など、軟磁性材料は多岐の分野に利用されている。磁気特性 の初めての方も熟練した方も、正確な測定を行えるように、磁気測定のノウハウを幅広くご紹介する。 2. 交流 B-H アナライザの測定原理 交流 B-H アナライザは、軟磁性材料の交流磁気特性(B-H カーブ、透磁率、コアロスなど)を簡単に測定できる計測 器である。交流 B-H アナライザの基本構成を図 1 に示す。測定対象の軟磁性材料は、通常トロイダル形状に加工した コアが用いられ、励磁用の 1 次コイルと誘起電圧検出用の 2 次コイルを施して測定する。 1 次コイルのみで測定を行う 1 コイル法では、コアロス P CV はコアに発生する鉄損と 1 次コイルに発生する銅損のト ータルロスとなるが、2 次コイルを設ける 2 コイル法では、銅損を除いた鉄損のみを測定することができる。 図2 1 次コイル/2 次コイル 図1 交流 B-H アナライザの基本構成 を施したトロイダルコア 3. 高確度なコアロス測定の必要性 装置の小型軽量化や省エネルギーに対応するため、高い磁束密度を保ったままコアロスを低く抑える軟磁性複合材 料の開発が進められているが、その磁気特性は、電流-電圧間の位相差 θ が 90°に近くコアロスが非常に小さい特 長を持つ。電流 I、電圧 V が単一正弦波の場合のコアロス P CV は、1 式で表される(図 3)。電流-電圧間の位相差が 89.6°の試料を測定する場合、位相測定誤差が±0.2°あった場合、コアロス測定誤差は約 50%も発生する(図 4)。 PCVI rms×Vrms×COSθ ・・・・1式 図3 コアロス測定の原理図 4. 形状により変化する磁気特性 図4 高位相試料における位相測定精度とコアロス測定誤差 磁気特性を測定する材料の形状により磁気特性自体が変化す ることは、磁気特性の形状依存性と呼ばれ材料評価の上で非常 に重要である。図5は、0.1 t ×5.0 W ×107 L のパーマロイ・バン ドの磁気特性を、円形と楕円の場合で比較した例である。円形 と楕円で保磁力は同じであるが、楕円の方が残留磁束密度や飽 和磁束密度は大きく、また、円形の方がコアロスの値が小さく なっている。電磁鋼鈑の測定には主にエプスタインフレームが 用いられているが、測定のために大きな単板(30 W × Min 280 L )を 12 枚以上必要とするために、研究開発など小型・少量の材料を測 定評価したいという要求には不向きであった。最近では、単ヨ ークを使用することで、小さな単板(長さ 36mm 以上、幅 35mm 図5 形状依存する磁気特性例 以下、厚さ 3mm 以下に対応)での測定を可能とした装置も開発されている。 発振器 パワー アンDUT 1 次コイル 電流検出抵抗 B の入力 2 コイル B の演算 H の演算 H の入力 I DUT V 3PM-D01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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Page 1: 軟磁性材料の磁気特性測定評価ノウハウ - 神奈川県 …...軟磁性材料の磁気特性測定評価ノウハウ 岩崎通信機株式会社 第二営業部 成田

軟磁性材料の磁気特性測定評価ノウハウ

岩崎通信機株式会社 第二営業部 ○成田 芳正

1. はじめに

モータやトランス、インダクタ、電流センサ、記録媒体など、軟磁性材料は多岐の分野に利用されている。磁気特性

の初めての方も熟練した方も、正確な測定を行えるように、磁気測定のノウハウを幅広くご紹介する。

2. 交流B-Hアナライザの測定原理

交流B-Hアナライザは、軟磁性材料の交流磁気特性(B-Hカーブ、透磁率、コアロスなど)を簡単に測定できる計測

器である。交流B-Hアナライザの基本構成を図1に示す。測定対象の軟磁性材料は、通常トロイダル形状に加工した

コアが用いられ、励磁用の1次コイルと誘起電圧検出用の2次コイルを施して測定する。

1次コイルのみで測定を行う1コイル法では、コアロスPCVはコアに発生する鉄損と1次コイルに発生する銅損のト

ータルロスとなるが、2次コイルを設ける2コイル法では、銅損を除いた鉄損のみを測定することができる。

図2 1次コイル/2次コイル

図1 交流B-Hアナライザの基本構成 を施したトロイダルコア

3. 高確度なコアロス測定の必要性

装置の小型軽量化や省エネルギーに対応するため、高い磁束密度を保ったままコアロスを低く抑える軟磁性複合材

料の開発が進められているが、その磁気特性は、電流-電圧間の位相差θが90°に近くコアロスが非常に小さい特

長を持つ。電流I、電圧Vが単一正弦波の場合のコアロスPCVは、1式で表される(図3)。電流-電圧間の位相差が

89.6°の試料を測定する場合、位相測定誤差が±0.2°あった場合、コアロス測定誤差は約50%も発生する(図4)。

PCV=Irms×Vrms×COSθ ・・・・1式

図3 コアロス測定の原理図

4. 形状により変化する磁気特性 図4 高位相試料における位相測定精度とコアロス測定誤差

磁気特性を測定する材料の形状により磁気特性自体が変化す

ることは、磁気特性の形状依存性と呼ばれ材料評価の上で非常

に重要である。図5は、0.1t×5.0W×107Lのパーマロイ・バン

ドの磁気特性を、円形と楕円の場合で比較した例である。円形

と楕円で保磁力は同じであるが、楕円の方が残留磁束密度や飽

和磁束密度は大きく、また、円形の方がコアロスの値が小さく

なっている。電磁鋼鈑の測定には主にエプスタインフレームが

用いられているが、測定のために大きな単板(30W×Min280L)を12

枚以上必要とするために、研究開発など小型・少量の材料を測

定評価したいという要求には不向きであった。最近では、単ヨ

ークを使用することで、小さな単板(長さ36mm以上、幅35mm 図5 形状依存する磁気特性例

以下、厚さ3mm以下に対応)での測定を可能とした装置も開発されている。

発振器 パワー アンプ

DUT

1次コイル

電流検出抵抗

Bの入力

2次

コイル Bの演算

Hの演算 Hの入力

I

DUT V

3PM-D01 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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巻線応力がリング試料の直流磁気特性に及ぼす影響

神奈川県産業技術センター 電子技術部 ○馬場 康壽

1. はじめに

磁性材料はモーター、発電機および電磁弁などの鉄心や磁気回路の構成部品として広く使用されている。これらの

機器や部品は、用途に最適な軟磁性材料の選定や磁場解析による機器内部の磁気回路の最適化によって高性能化する

ことができる。そのためには磁性材料の特性を把握する必要があり、直流磁化特性を測定する方法の一つにリング状

試料を用いた積分方式直流B-H測定方法がある。この測定方法では試料に一次と二次のコイル及び絶縁テープを巻き

付けるが、これらを直接巻いた場合は試料を締め付ける応力が発生する。また、一部を除いて磁性材料は大なり小な

り磁歪特性を持っていることから、この巻線応力の影響によって測定した磁化特性が材料本来の磁化特性と異なるこ

とが懸念される。 そこで、本研究では積分方式直流B-H測定において、手巻き程度の大きさの応力が磁化特性に与える影響について

調べたので、その結果について報告する。 2. 実験方法

リング試料の材料には、巻線応力による影響が磁化特性に現れやすい材料である大きい正の磁歪を持つことで知ら

れているパーメンジュール(FeCoV)を用いた。リング試料の大きさは外径 45.0mm、内径 37.5mm、高さ 3.0mmとし、巻線は一次コイルが線径 0.6mm で 50 ターン、二次コイルが線径 0.2mm で 161 ターンを手巻きした。直流

B-H 特性の測定には理研電子(株)製の B-H カーブトレーサ BHU-60 を用いた。巻線応力の影響を調べるために同一

のリング試料に対して、先にリング試料を樹脂ケースに入れてから巻線をした試料に応力が掛からない場合を測定し

た後、樹脂ケースから試料を取り出してコイルと絶縁用テープを直接巻いて試料に応力を掛けた場合を測定し、両者

の直流B-H特性を比較した。ここで、試料をケースに入れたときの測定結果については、二次コイルとリング試料間

の空隙補正を行った。 3. 測定結果

磁界強度が150A/mの時のB-H曲線をFig.1に示す。試料に直接コイル巻きした試料とケースに入れてからコイル

巻きした試料の磁化曲線が全体的に異なり、コイルを直接巻いてリング試料に巻線応力を与えたときの方がB-H曲線

は磁化容易になった。巻線応力はリング試料を締め付ける方向に働き、極僅かではあるが円周を伸ばすようにリング

を歪ませる作用が働くと考えられる。また、コイルに流す電流によってリング試料は円周方向に磁化される。即ち、

正の磁歪材に対して磁化方向に伸ばしていることになるので、巻線応力によってB-H曲線が磁化容易になるのは逆磁

歪現象に合致している。 B-H 曲線から求めた各磁気特性値において、測定磁界強度を変化させたときの巻線応力の有無による誤差率を

Fig.2 に示す。誤差率はケースに入れた時の値を基準に算出し、大小関係が分かるように絶対値を取らなかった。測

定磁界強度を増加させていくと最大透磁率μmを除く各特性値の誤差率は急激に増加し、磁界強度100 A/mまでの間

に極大点を示してから減少に転じた。さらに、測定磁界強度を増加させると誤差率の変化は小さくなった。 今後は磁歪と磁界強度の関係を評価して今回の結果との相関について検討する。

Fig.1 Comparison B-H curve (■) with and (△) without polymer case.

-25

0

25

50

75

0 200 400 600 800 1000 1200

Rel

ativ

e er

ror

Er

(%)

Magnetic field H (A/m)

Bm

Br

μm

Hc

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

-200 -100 0 100 200

Mag

netic fl

ux

densi

ty

B(T)

Magnetic field

H(A/m)

Without case

With case

Fig.2 Relationship of relative error and magnetic field on magnetic properties. (Er=(B-A)/A×100(%), A:With ,B:Without polymer case)

3PM-D02 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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実験・シミュレーション融合したパワーモジュールの信頼性解析

株式会社先端力学シミュレーション研究所 ○大浦 賢一

1. はじめに

自動車向けパワーモジュールにおいて、高出力密度化

の要求によって、信頼性の確保が重要な課題となってい

る。実験による信頼性評価の重要な項目として、繰返し

熱負荷における疲労寿命を評価する温度サイクル試験

(TCT)、パワーサイクル試験(PCT)が行われている

が、非常な長期間を要する点がネックである。したがっ

て、数値シミュレーションを用いた予測手法が用いられ

るが、汎用の有限要素法(FEM)シミュレーション

(ABAQUS、ANSYAなど)に高度に非線形な材料特性

モデルを適用する解析は、メッシュ生成や、材料構成則

の設定等に FEMの専門家の知見を必要とするため、企

業内で活用するためには非常にハードルが高い。

株式会社先端力学シミュレーション研究所では、実験

結果・シミュレーション・統計解析を統合することで、

TCTを模擬したシミュレーション、ならびにそのパラメ

ータスタディを簡易に高速に実現する信頼性予測ソフト

ウェア「ASU/PM-Lifetime」を開発したので、ここで、

その原理ならびに機能について紹介する。

2. パワーモジュールの信頼性予測手法

パワーモジュールへの繰返し熱負荷は、線膨張係数

(CTE)の異なる部材間での伸びの差異により、接合面

付近でせん断応力・ひずみを発生させる。このせん断ひ

ずみは、相対的に剛性の小さいはんだ接合層で疲労破壊

を生じさせる。ここで、対象となる接合層の低サイクル

疲労寿命Nfは、Coffin-Manson則(もしくは類似の関連

則)によって、非弾性ひずみ振幅Δ𝜀ineや非弾性ひずみエ

ネルギーΔ𝑊ineと関連付けられることが知られている。

Nf = 𝐶(Δ𝜀ine)−𝑛

したがって、任意の構造・形状を持つパワーモジュー

ルに対して、FEM シミュレーションではんだ接合層の

ひずみ振幅やひずみエネルギーを評価することができれ

ば、Coffin-Manson則と組み合わせることにより、温度

サイクル試験における寿命を予測することが可能となる。

3. 信頼性予測ソフトウェア「ASU/PM-Lifetime」

ASU/PM-Lifetimeの全体構成を図 1に示す。本ソフ

トウェアは、実験結果・シミュレーション・統計解析が

統合されたパッケージとなっており、シミュレーション

と実験結果から個別のモジュール寿命を予測するだけで

なく、統計解析モジュールによるパラメータスタディや

回帰式の構築、回帰式を利用した簡易・高速な寿命評価

ができることが特徴である。図 2に示すようにシミュレ

ーションの実験計画表を作成すると、各水準のモジュー

ル寸法値からパラメトリックメッシュ生成機能によって

自動で FEMメッシュが生成される。さらに、自動で複

数のシミュレーションが実行される。シミュレーション

完了後は、図 3に示す分散分析、回帰式作成が可能とな

り、一旦回帰式を作成すれば、類似形状のモジュールに

対して非常に高速に寿命予測を行うことが出来る。

図 1 ASU/PM-Lifetime構成図

図 2 実験計画表の作成とパラメトリックメッシュ生成

図 3 分散分析表と回帰式の作成

4. おわりに

本ソフトウェアは、平成28年度~平成30年度の 3か

年のサポインプロジェクトにて、PCT解析機能、Agナ

ノ接合への対応、SAT画像の自動計測機能と、さらに有

用なソフトウェアへと進化する予定である。

3PM-D03 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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spice を利用した実装構造の温度解析 神奈川県産業技術センター 電子技術部 ○八坂 慎一 1. はじめに

近年、SiC など高温動作可能な新しい半導体材料の開

発が進められており、これに対応するため実装構造には

高放熱性や高耐熱性が要求されている。実装構造の放熱

性や耐熱性の評価を実デバイスを用いて行うためには、

デバイスを動作時の各実装構造の温度を解析する技術が

重要となるが、放熱構造の経路上に熱電対などの温度セ

ンサを放熱性能に影響することなく設置することは困難

であり、温度計測を目的として試作したデバイスならば

可能であるが、製品仕様のデバイスで実測することは難

しい。放熱構造を解析する方法として、デバイスの温度

を過渡的に測定・解析することによって、パッケージ内

部やヒートシンクなどの実装構造ごとの熱特性を分離す

ることができる、熱過渡解析という手法がある。この方

法を用いることによって放熱構造を一次元の熱回路で表

すことができるので、この熱回路を電気伝導と熱伝導の

アナロジーから、spice などの回路シミュレーションソ

フトを利用することにより解析することができる。 本報告ではこの解析手法を検証するため実装構造の放

熱経路上に熱電対を設置したサンプルを試作し、このサ

ンプルを使用して経路上の各測定点の温度変化を実測値

と spice による解析結果を比較することによって解析方

法の有効性を調べたのでその結果を報告する。

2. 実験方法

検証用サンプル(図 1)はショットキーバリアダイオ

ード(SBD)を実装基板にダイボンディングし、実装基

板を銅ヒートシンクにはんだ付けし、熱伝導シートを介

してこのヒートシンクを水冷ユニットに固定する構造と

した。発熱源はこの SBD とし、このデバイスの温度特

性をあらかじめ計測しておき、この温度特性からデバイ

スのジャンクション温度(Tj)を計測できるようにした。

さらにダイボンディング部(T1)、基板-銅ヒートシンク

接合部(T2)、熱伝導シート-水冷ユニット間(T3)にそ

れぞれ熱電対を設置し温度計測できる構造とした。水冷

ユニットは25℃の冷却水を流量3L/minで循環させて冷

却を行った。この検証用サンプルの過渡熱解析を行い、

構造関数と spice 温度解析モデルを取得した。このとき

同時にT1、T2、T3の温度測定も行い、加熱安定時の温

度と Tj および環境温度(Ta)との温度差と累積熱抵抗

が比例すると仮定して、解析モデルにおける T1、T2、T3 の部位を決定した。この T1、T2、T3 の温度変化を

デバイス動作時に計測し、本解析法による解析モデルを

用いてシミュレーションを行った結果と比較し解析方法

の妥当性を検証した。 3. 結果とまとめ

熱過渡解析による検証用サンプルの構造関数を図2に

示す。加熱安定時のT1、T2、T3の温度から算出した累

積熱抵抗値に対応する点を図中に示している。解析モデ

ルとして使用する熱回路の熱抵抗値と熱容量値はこの構

造関数から取得した。このサンプルを使用してパワーサ

イクル試験を想定して ON/OFF 時間 2sec/18sec の繰り

返し通電試験を行った際の、20サイクルにおける各測定

点の温度の実測値(プロット)と spice によるシミュレ

ーションの結果(実線)を図 3 に示す。T1、T2 につい

ては実測値とシミュレーションはよく一致しているが、

T3については大きくずれていることがわかる。以上の結

果から本解析法は発熱部に熱経路的に近い部分であれば

解析可能であることがわかった。熱経路的に遠い部分の

解析は困難であるが、デバイスの発熱の影響を受けにく

い部分なので、解析対象としては除外できると思われる。

デバイス(SBD)

放熱基板

接合層

ジャンクション温度TJ

環境温度Ta

T1

ヒートシンク

熱電対 T1

TJ

T2

T3

Ta

デバイスと接合層の熱抵抗

放熱基板の熱抵抗

ヒートシンクの熱抵抗

水冷ユニットの熱抵抗

水冷ユニットT3

T2

図1 検証用サンプルの模式図と熱回路

0.00001

0.0001

0.001

0.01

0.1

1

10

100

1000

10000

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4

・ン・マ・M・e・ハ[J/K]

累積熱抵抗 [K/W]

構造関数

T1

T2

T3

図2 検証用サンプルの構造関数

20

40

60

80

100

384 386 388 390 392 394 396 398 400 402 404

T1 [・・]

time [sec]

実測値

spiceシミュレーション

20

25

30

35

40

45

50

384 386 388 390 392 394 396 398 400 402 404

T2 [℃

]

time [sec]

実測値

spiceシミュレーション

20

25

30

35

384 386 388 390 392 394 396 398 400 402 404

T3 [℃

]

time [sec]

実測値

spiceシミュレーション

図3 各測定点の温度プロファイル

(上からT1、T2、T3の実測とシミュレーション)

3PM-D04 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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超音波映像観察による半導体デバイスの故障状況の評価

神奈川県産業技術センター 電子技術部 ○田口 勇、八坂慎一

1. はじめに

電気自動車等における半導体デバイスについて、高耐

熱・高電流密度に対応可能であるなど高品質・高耐久性

が求められている。そのため、故障状況などその品質を

詳細に評価することが不可欠である。そこで、本研究で

は、耐久性評価試験としてパワーサイクル試験を実施す

ることにより故障した典型的な半導体デバイスについて、

超音波映像観察(Scanning Acoustic Tomograph:SAT)

により内部欠陥の発生状況を詳細に把握できるか検討し

た。

2. 実験

市販の樹脂封止型ショットキーバリアダイオード(図

1)について、30秒毎に断続的に通電(1分/サイクル)

することによるパワーサイクル試験を実施した。このと

き、当該試験を 1万サイクル実施することにより、放熱

性能が低下するなど故障した試料を用意した。そして、

試験前と故障時の各試料について、公称周波数100 MHz

で理論分解能25.9 μmの水浸探触子を用いた超音波映像

観察を行った。このとき、試料の金属側から超音波を入

射し、これにより発生した超音波反射波について測定し

た。その後、試料を機械的に切断・研磨し、レーザー顕

微鏡による断面構造観察を行った。なお、観察領域は接

合層(界面を含む)とした。

3. 結果と考察

パワーサイクル試験を実施し故障した樹脂封止型ショ

ットキーバリアダイオードについて、音響特性が著しく

変化した領域がみられ、その領域で剥離,空隙・割れの

内部欠陥の全部または一部が存在することが把握できた

(図 2)。これにより、超音波映像観察は、当該試験を実

施し故障した典型的な半導体デバイスにおける内部欠陥

の発生領域の評価に有効であることがわかった。さらに、

故障原因についても詳細に評価するためには、故障が発

生するまでの内部欠陥の成長・拡大の様子についても把

握することが求められる。このとき、超音波映像観察が

同様に有効であるかについては十分わかっておらず、よ

り詳細な調査が必要である。

図 1 試料断面構造図

図 2 SAT像とレーザー顕微鏡像;

(a)試験前、(b)故障時

3PM-D05 平成28年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿