転倒の発生構造に注目した...

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転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田 志眞子 1

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Page 1: 転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田

転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み

市立伊丹病院

医療安全管理室

前田 志眞子

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Page 2: 転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田

転倒予防チーム

発足 2012年9月(平成24年)

目的 ●当院における転倒(転落)事故(患者影響レベル3b) を減らす ●地域高齢者の転倒による骨折を減らす チーム構成 医師、看護師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、 医療安全管理担当者、事務

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転倒の定義

本人の意思からではなく、バランスを崩して、 足底以外の身体の一部が地面に接した状態

●転落を含む ●壁面等がなければ地面に接したとみなしうる場合を 含む ●脳卒中は除く

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患者影響レベル別 転倒報告件数の推移

患者影響レベル

2010 (9月1日~ 8月31日まで)

2011 2012 2013 2014

3b 8 6 4 1 3

3a 15 22 22 23 19

0~2 156 209 205 195 245

計 179 237 231 219 267

転倒予防チーム設置

*1年を9月1日から8月31日まで表示とする

(小児は除く)

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Page 5: 転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田

区分①職員の観察下での転倒 区分②判断力のある患者の排泄行動に 関わる転倒 区分③判断力のある患者の排泄行動以外の 転倒 区分④判断力のない患者の転倒

川村による転倒の 発生構造に基づく区分

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研究方法 2010年9月1日~2015年8月31日に発生した転倒に関する全1133件の事故報告書を川

村分類別に集計した。転倒予防チームの介入前後で転倒事故の発生構造を比較した。

倫理的配慮 事故報告書の取り扱いに際しては、患者および事故報告者の個人情報を削除して分析した。

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区分 ①:職員の観察下での転倒

12(5.1%) 196(20.3%)

患者の自由行動下の転倒

225(94.9%) 769(79.7%)

区分②:排泄行動に関わるもの 73(30.8%) 298(30.8%)

判断力あり

区分③:排泄行動以外

58(24.5%) 177(18.3%)

区分④:*判断力なし 94(39.7%) 294(30.4%)

赤字:市立伊丹病院 H23.9-H24.8 237件 (小児・外来除く) 黒字:全国調査 H11、 965件(300床以上、213施設)

川村による転倒の発生構造に基づいた区分 -全国(1999年)と市立伊丹病院(2011年)の比較-

*意識障害、認知機能障害などで指示に従えない、協力を得られない、など。

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Page 8: 転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田

• 理学療法士による看護助手、外来クラークに対する移乗介助の研修

• 手術室に、チームでラウンドした

• 部署に職員向けポスター(標語)を掲示した

• 転倒事例をもとにトランスファーの検証をおこなった

職員の観察下での転倒(区分①)をゼロにするために

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判断力がある患者の排泄行動に関わる転倒(区分②)を減少するために

• 入院患者のスリッパ禁止

• トイレにポスター掲示

• ポータブルトイレの設置基準を改訂

• ポータブルトイレの購入

• ベッド柵移動バー購入

• 緩衝マットの購入

• 転倒ラウンド

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判断力がない患者(区分④意識障害、認知機能障害など) の転倒に対して

• 緩衝マット購入 ・スリッパ禁止

• ベッド柵移動バー購入

• ストッパー付きオーバーテーブル

• 研修

• 転倒ラウンド ・スタッフへのフィードバック

• 転倒リスクアセスメントシート改訂

・ 家族へ患者の状態説明と協力

• 病室移動、センサー類使用時の説明方法 10

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改訂後:転倒(転落)リスクアセスメントシート

評価時期:○入院時 ○入院3日目 ○転倒時 ○手術、検査時

1次アセスメント

・完全に寝たきりで、手も足も動かない ・完全に自立しており、薬も管もない ・該当なし

2次アセスメント

・転倒の既往がある ・ナースコールを使えない または、使わなさそう ・トイレ動作に介助がいる または、いりそう ・利尿薬または、下剤を使用中 ・認知症、せん妄、不穏、うつに見える ・せん妄の既往がある ・向精神薬、麻薬を開始または、変更した ・視力障害がある ・聴力障害がある ・歩行器、杖、手押し車を使用している ・点滴、ドレーン等のチューブ類が入っている (・該当なし)

スコア化を廃止 対策を重視

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0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2011 2012 2013 2014

区分④

区分③

区分②

区分①

転倒の発生構造分布の推移

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患者影響レベル別 転倒事故件数の推移

患者影響レベル

2010 (9月1日~ 8月31日まで)

2011 2012 2013 2014

3b 8 6 4 1 3

3a 15 22 22 23 19

0~2 156 209 205 195 245

計 179 237 231 219 267

*1年を9月1日から8月31日まで表示とする

(小児は除く)

転倒予防チーム設置

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Page 14: 転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み転倒の発生構造に注目した 転倒事故予防の取組み 市立伊丹病院 医療安全管理室 前田

転倒事故(レベル3b)件数の推移

0

2

4

6

8

2010 2011 2012 2013 2014

排泄以外

排泄行動

(外来患者除く)

転倒予防チーム設置 14

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転倒予防チームの活動 区分① 区分② 区分③ 区分④

入院のしおり(転倒リスク、履き物) ○ ○ △

ポスター(掲示板、トイレ内) ○ △ △

施設(段差改修、ベッド低床化) ○ ○ ◎

備品(緩衝マット、移動介助バー) ◎ ○ ◎

転倒リスクアセスメントシート改訂 ◎ ○ ◎

ポータブルトイレ設置指針 ◎ ◎

睡眠薬の変更 △ △ △

転倒ラウンド ◎ ◎ △ ◎

転倒予防新聞 △ △

職員全体研修 ○ △

部署別研修(移乗介助、せん妄) ◎ ○

転倒予防教室、パンフレット、市民講座 △ △

印は振り返って感じる効果の大きさ ◎(大) ○(中) △(小)

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当院の現況

平均年齢 (小児除く)

延べ入院患者数

在院日数 手術件数 病棟 看護師数

2010年度 64.2 107136 14.1 2709 232

2011 64.7 111432 13.6 2784 233

2012 65.3 108001 13.4 3055 244

2013 67.0 109927 13.0 3199 245

2014 68.3 105137 12.9 3311 239

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考 察

多職種協働による排泄行動と患者の判断力に応じた対策が、事故防止の一助になった可能性がある。

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結 語

公立I病院において排泄行動に関連した対策が、転倒事故を減少させた。

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