脳神経倫理学とは - k-net脳神経倫理学 ニューロエシックス...
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熊本大学 発生医学研究所(薬学部・医学教育部・社会文化科学研究科)
くわみず病院 内科睡眠障害外来
粂 和 彦
熊本県高校地歴・公民科研究会熊本県高校地歴・公民科研究会 協議会協議会
脳神経倫理学とは脳神経倫理学とはその射程とするものその射程とするもの
K.Kume 2011. 11. 8.
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自己紹介自己紹介所属1.発生医学研究所(分子生物学・神経科学)
睡眠・覚醒制御と体内時計の分子機構=>原始的な意識(志向性)に興味がある
所属2.社会文化科学研究科(哲学・倫理学)熊本大学生命倫理研究会(高橋隆雄教授主宰)先端倫理学コースで「脳神経倫理学」を教える「心(意識)の哲学」 <=認知科学、心理学
所属3.くわみず病院(睡眠医療)睡眠障害診療(ナルコレプシーなどの病気)インターネットを介した医療相談
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熊本大学熊本大学 発生医学研究所発生医学研究所12研究室 若手:5年任期2002年-2007年21世紀COEプログラム(23大学28プログラム)
2007年-2012年グローバルCOE/生命科学(13大学13プログラム)
↓2009年 大学間共同利用施設化研究センター →研究所に格上 2005年 9月完成
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睡眠医療認定医睡眠医療認定医
熊本県認定医 2名熊本県3名
認定施設熊本県で唯一(全国約50)
週に半日のみ外来診療
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睡眠障害相談室睡眠障害相談室
開設 2000年12月アクセス数 100万回超
サイト経由の相談:2000件以上受付
Google 検索睡眠障害 2位睡眠+悩み 1位
homepage2.nifty.com/sleep/5
熊本大学生命倫理研究会熊本大学生命倫理研究会
講義と演習(ゼミ)
論文集の執筆・編集
ニューロエシックスの日本への導入
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脳神経倫理学脳神経倫理学ニューロエシックス(2002年にできた分野)世界で最初の教科書(21人の専門家=哲学、倫理学、法律家、社会学、教育学、神経科学、医学、などが執筆)
文学部・高橋教授と共同監訳’06年原書 ’08年訳書出版
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熊本大学・発生医学研究センターくわみず病院・内科睡眠障害外来
粂 和 彦
熊本大学生命倫理研究会熊本大学生命倫理研究会
Neuroethics Neuroethics とはとは~心の科学と倫理~心の科学と倫理
K.Kume 2005. 11. 12.
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ポイント1.Neuroethics の定義と日本語訳2.なぜ、倫理を語る時に、脳科学を
知る必要があるか?~心とは?3.心の哲学と脳科学4.脳科学に関する倫理問題5.脳科学から見た倫理問題6.新しい、自己・心・自由に対する見方
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1.Neuroethics の定義と日本語訳
私見
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Neuroethics の定義 1
• neuro (Gk.)= nerve = 神経← nervus=腱= (L.) sinew(腱、弦)
• neuron = 神経細胞• neuroscience = 神経科学• neurology = 神経学・神経内科学
• neuroethics = 神経倫理学?
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神経科学と脳科学
• 神経 = 中枢神経 と 末梢神経• neuroethics の対象は、中枢神経であり、• さらに、その機能、特に人間の精神・意識、• つまり、心に関する機能を対象にする。• 「脳科学」は、俗語だが、人間の脳の機能を• 調べる学問としては、神経科学より、実態を• よく表しているともいえる。
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Neuroethics の起源 (2002年)
• 新語として作られた:2002年、最初の会合スタンフォード大学• 議事録集 2005年10月発行Neuroethics
-Mapping The Field脳科学、医学、心理学、倫理学、法律、教育、ビジネス、マスコミ等
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Neuroethics の定義 2
この会議の冒頭の言葉:neuroethics -the examination of what is right and wrong, good and bad about the treatment of, the perfection of,or the unwelcome invasion of and worrisome manipulation of the human brain.note: moral = right or wrong
ethical = good or bad
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Neuroethics との出会い
• 2005年10月 議事録の出版・WEBでの公開立花隆とNHKが、サイボーグ技術の特集• 2005年12月 熊本大学生命倫理研究会「ニューロエシックスとは?」で、紹介• 2006年 初めての教科書(論考集)の発行• 2008年 日本語翻訳版の発行(高橋・粂監訳)
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2.なぜ、倫理を語る時に、脳科学を知る必要があるか?~心とは?
脳科学者から見た「心」の世界
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21世紀の倫理には、脳科学が必須?
• デカルト以来、私たちは、心と体をわけて考えてきた。倫理学は、意識(自己)の存在を自明のものとして、倫理問題を考えてきた。一方、科学は、魂の問題、死後の世界の問題を、「難解な問題」とし、または宗教的として、議論を避けてきた。理性と感情も分けて考えられることが多かった。• しかし、脳科学は「心脳一元論」に近づき、脳死を代表とする、死生観の変化などとともに、自明とされてきた前提、あるいは避けられてきた問題に、正面から疑問を投げかけつつある。
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生きているというのは、どういうことか?先端医学は、生と死の概念に、根本的な問いを投げかけた。
脳死=自発的な活動の停止外部からの刺激に対する反応の停止
=>何が失われたのか? =>それは心???つまり、脳=人間なのか? 養老孟司「唯脳論」その脳は、何を、どうやって作り出しているのか?
先端生殖医学=いつ、どのような状態から人間なのか?
=>心の終わりが死なら、生命の始まりは心の始まりなのか?脳がなくても、生きていると言えるのか?
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心と身体は、別・・・心と脳は???健全な肉体に、健全な魂が宿る。
身体的ケア、精神的ケア、霊的ケア(physical, mental, spiritual)
・・・日本語の「心」は、精神と霊の両方を含む
精神の病気と霊の病気は、身体の不調と、どう異なるか?精神疾患は薬で治す。「それは気の持ちよう」とか、「精神の問題だから、内科の病気ではない」?
精神の不調=脳(という機械)の不調じゃないの???野球のピッチャーが精神的に乱調、精神的に弱い=>いったい「何が」乱調なのか???
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心と、意識、無意識
心は、どこにあるか? 心の働きは?意識は心を支えるか?動物には、心があるか?なければ、何がある?なぜ、私は、私であると考えるか?
=>脳の科学で、自己の心の問題を解くことは、人間の存在の本質の解明に迫る可能性がある
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医療倫理には、心の問題が必須医療倫理には、心の問題が必須医療倫理四原則自律尊重: Respect for autonomy本人の意志、自己決定の尊重
善行: Beneficence治療による良い効果を最大にする
無危害: Non maleficence治療による副作用を最低にする
正義/公正: Justice同じ状態であれば、同じように扱う社会の中の正義に反しない
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終末期にかかわる倫理問題の例終末期にかかわる倫理問題の例1.本人の意志による治療拒否80歳の女性、肺炎で入院して、気管内挿管・人工呼吸管理で改善して退院。でも、次回は、絶対に挿管しないで欲しいと依頼。
2.家族に意志による治療拒否脳出血で意識がはっきりしないが、状態は安定している。しかし、経管栄養が必要で、誤嚥性肺炎が多いため、胃瘻造設(PEG)を勧めるが、家族はやめて欲しいと拒否。
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ニューロエシックスの拡大ニューロエシックスの拡大脳神経科学を、発展させていく時に、やって良いことと、いけないことを考える
↓脳神経科学の倫理学
倫理学の脳神経科学↑
良いとか、いけないとか、考えている時の脳を調べてしまおう!
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倫理の脳神経科学倫理の脳神経科学
私たちは、どのようにして、あることを正しいとか、良いとか判断しているのか?その時、脳は、どのように働いているか?
=>特に、倫理的ジレンマにおいて
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「正義」の話「正義」の話 マイケル・サンデルマイケル・サンデル 25
トロリー(トロッコ)問題トロリー(トロッコ)問題 11トロリーが暴走してきた。線路で5人が作業中このままでは、全員、死んでしまう。
引き込み線があるが、そこにも、1人いる。あなたは、ポイントを切り替えるべきか?
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トロリー(トロッコ)問題トロリー(トロッコ)問題 22トロリーが暴走してきた。線路で5人が作業中このままでは、全員、死んでしまう
橋に太った男が一人立っている。あなたは、彼を突き落として、5人を助けるべきか?
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例えば、例えば、fMRIfMRIで、脳を調べてしまうで、脳を調べてしまう 28
脳を調べると、人がわかる脳を調べると、人がわかる??????
1.嘘発見器の問題2.自由意志の問題3.行為の責任の問題4.罪と罰の問題5.教育の問題
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3.心の哲学と脳科学
~脳の機能は、物質や遺伝子で、どこまで説明されるのか?
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心の哲学の問題心の哲学の問題
1.決定論的世界に「自由意志」は存在するか?2.動物に「心」はあるか?3.ロボットは「心」を持ちうるか?4.われわれの「心」は一つか?→「自己」決定したときの「単一」なのか?
5.言葉は「自己」決定と呼べるのか?6.「良い」と考えることは「生得的」か?
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心・意識とは、なんだろうか?前野隆司: 慶応大学工学部
脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説
前野 隆司 2004
cf. ユーザー・イリュージョントール ノーレットランダーシュ
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心の働き (5+1)
前野隆司の著書より1.知 intellect 入力情報について考え判断する2.情 emotion 感情と情動3.意 volition 意図、意志 (飢餓状態=>食行動)4.記憶と学習 memory and learning5.意識 awareness と self-consciousness=>1-4 を、統括し、6 に注意を向ける
6.補足する概念・・・無意識、 心の理論
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心の難しい問題
前野隆司の著書より1.<私>の不思議自分が自分であると感じる、自己意識の仕組み魂と呼ばれる。自分のコア部分。コピー・移植できるか?
2.バインディング問題異なる情報が、どのように同一のものとして扱われるか?
3.クオリアの問題情報をまとめて、生き生きとした質感を持たせる作用
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心の、もっとも難しい問題意識(私、自己)は、誰か? どこにいるか?=>少し簡単に、意識(心)の中を見る
外部情報 認識・行動脳(無意識?)の
情報処理
形
色
Binding 問題
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脳が、心を作るのか?
1.デカルト → NO!心脳二元論
2.エックルス、リベット → NO!
3.クリック → YES!
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近代・身心二元論の始まり
デカルト(1596-1650)
我思う、故に、我在り~Cogito ergo sum.
感覚はだまされ易い自由意志を人は持つ心と身体は別である
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デカルトの劇場理論 38
最後の(?)、大物二元論者Sir John Eccles (1903-1997)1963 Nobel Laureate in
Physiology or Medicine
~The Ionic Mechanism of Postsynaptic Inhibition
自己(魂)
微細レベルでの脳機能
出力=身体機能入力=感覚
自己はどのように脳をコントロールするか(1995年発表 遺作)
エックルスは、自己を探して、顕微鏡を覗き続けたが、自己は見つからなかった!?
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心脳一元論DNAに魂はあるか―驚異の仮説
フランシス クリック 1995
心を生みだす遺伝子ゲアリー・マーカス 2004 大隅 典子(訳)
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心・意識とは、なんだろうか?前野隆司: 慶応大学工学部
脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説
前野 隆司 2004
cf. ユーザー・イリュージョントール ノーレットランダーシュ
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脳が行動を支配する脳の形態・機能は、遺伝子が設計をして、発生・発達中の環境要因や、偶然の要素が、決める。
その形態・機能に基づく内的因子、及び、外部環境からの外的因子により、脳は、ダイナミックに、行動のプログラムを作り出す。
複雑な行動の解析=> 双生児研究など
比較的単純な本能行動の解析:動物を使った遺伝学実験=> 学習・記憶 (アメフラシ)
生殖行動概日周期・生物時計睡眠・覚醒・意識?
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安藤 寿康さんの研究
心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観
講談社ブルーバックス
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遺伝と環境 (生まれか、育ちか?)nature or nurture
• 別々に育てられた一卵性双生児の研究• 一卵性と二卵性双生児の比較研究
遺伝要因の強い生物現象
環境要因の強い生物現象
注意:何を一つの現象と考えるか?(悪い例=幸福の遺伝子 ×)
浸透率の高い遺伝病など(例:ハンチントン舞踏病)
髪・瞳・肌の色一部の行動?
運動能力?成績?
生活習慣病思想・嗜好?
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アメフラシ(aplysia)の学習!
http://members.optushome.com.au/drgg/images/aplysia_parts2.GIF www.icb.ufmg.br/~neuronet/miguel/Memory/Memory.html
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本能行動と遺伝的プログラミング一つの遺伝子が、一つの行動を制御できることを、最初に示したのがベンザーその材料が、ショウジョウバエシーモア・ベンザーの業績:時間=>概日周期愛 =>交尾(求愛)行動記憶=>学習行動
=>1970年
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脳の機能を「見る」「知る」技術群
• 定位脳手術(脳梁切断、ロボトミー...)• 電気刺激術• 脳波• fMRI (functional MRI)• SPECT• PET• 脳磁図• などなど・・・
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Mapping The Mind• Rita Carter 脳と心の地形図
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4.脳科学に関する倫理問題
~どこまで明らかにして良いか?どこまで介入して良いか?
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考えていることは、わかるか?
A)真実、B)間違い、C)嘘を言う場合で、脳活動が異なる =>究極の嘘発見器
A)見たことのあるものと、B)見たことのないものに対する脳活動が異なる =>スパイ発見
・・・実際に、訴訟の証拠にも採用されている
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なぜ、そう考えるかは、わかるか?
• 修道僧のトランス体験時の脳活動の記録
• 幻聴、幻覚時の、高次聴覚野、視覚野の記録
• うつ病などの精神病時の脳機能
• DBS,TMSなどによる、モダンな?刺激
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脳機能の要素
脳機能、脳の活動=遺伝に規定される部分=遺伝ではないが、先天的に規定される部分=環境の影響による部分=本人の「意思」による部分
どこまで、どう研究を進めても良いのか?
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脳機能の研究
脳への介入的研究は、どの程度までが、許されるのか?(自己を分裂させるような研究は???)
単に本人の同意だけで良いものか?(記憶の消去・操作など)
何らかの特別な配慮は不要なのか?
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脳のプライバシー
脳機能について、調べて欲しくないという権利脳活動測定による差別の危険性→ 犯罪率や潜在能力などが予測される危険性
嘘発見器的な使い方により、自白を強要される危険性、本心を見抜かれる?危険性
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脳のエンハンスメント
何を正常と、どの異常に対する治療が、認められるか?
平均的能力の者へ脳科学的方法によるエンハンスメントは、どこまで許容されるか?
人格・精神障害に対して、矯正的介入は、どこまで認められるのか?
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カッコーの巣の上で(1975)One Flew Over The Cuckoo's Nest
Lobotomy, Nobel prize in 1949 56
脳の移植
脳の移植は認められないが、その根拠は?
内容だけの移植が可能になった場合には?(これは、当面は、SFだが・・・)
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5.脳科学から見た倫理問題
~脳の機能から見て、従来の倫理問題は、どのように見えるのか?
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生命の出発点
命は、確かに、受精卵から始まる。が・・・心が始まるのは、脳が機能を始めた時。
脳の形成開始は、早くても14日目以後…
親から見た時、心があると考えることの重要性→「意図」と「心の理論」
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心の理論(Theory of Mind)
ある人が、別の人に「心がある」と考えること相手に心があると考えるからこそ、相手が、生きていると、考えるとも言える
誤信念課題により、この機能の有無が推定でき、通常は、5~6歳で、機能を始める。自閉症の研究、チンパンジーの研究などが、されている。
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心心と体の関係を自覚すると体の関係を自覚する精神的ショックを受けた時と、けがをした時に、同じ脳の場所が、活性化する → 本当に痛い!
気分が良いことは、良い笑顔を見る → 気分が良い怒り顔を見る→ 気分が悪い
教師は、どちらの表情をすべきか?
(あやしい)脳科学的には、ミラーニューロンの働き?
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PMv 腹側運動前野(F5)ニューロン
:運動課題の抽象的な表出:他者の認知
by Rizzolotti et al 1996
視覚的な運動認知
ミラーニューロンミラーニューロン 62
心の発達、乳児で既にチンパンジーレベル63
相手に心があると考えるのは人間に特有
動物、さらに、植物、物も、心があるかのように考える能力を、人間は持つ。脳科学的には、心がない?と推定される、胎児にさえも、「心を感じる」ことにより、感情を移入し、重要だと、信念を持つことができる。これが、道徳観、さらには、倫理観の源になっているのかもしれない。
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自殺自殺する時の脳活動の状態を調べることで、
A)特定の脳活動が異常の場合、そこに介入すれば、自殺念慮がなくなるかもしれない。しかし、それは許容される介入なのか?B)逆説的に、なぜ、多くの人が自殺しないかが、わかってくるのか。
悲しみの中枢の破壊は、倫理的行為か?
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自己決定権と自由意志
自由意志は、どのような形で、存在しうるのか?
感情と理性は、わけるべきか?
脳科学者には、真の自由意志などはない、との主張もある。
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倫理問題に対する倫理観の個人差
さまざまな倫理問題に対する考え方と(倫理問題だけには限らないが…)、その人の脳活動記録のクラスター分析で、思考パターンと、そこにいたる基礎的な傾向(生来のものと環境性のもの)がわかるようになるかもしれない。
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宗教と、宗教観
「預言者」は、多くの出来事を、強く、「神」、「祖先」や「前世」と、関連付けた。=>関係念慮が強いのかもしれない。
人が死を恐れる理由=>その中枢は、情動の中枢である扁桃体か?
もし、扁桃体機能に異常を来たせば、死もまた怖くなるのだろうか?
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6.新しい人間観の必要性
新たな、自己・心・自由
環境心理学的視点の可能性
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心の哲学の問題心の哲学の問題
1.決定論的世界に「自由意志」は存在しうるか?2.動物に「心」はあるか?3.ロボットに「心」を持たせることはできるか?4.われわれの「心」は一つなのか?
→「自己」決定したときの、われわれは、本当に「単一」5.身体(脳)が一つだから、そこから出てきた言葉は、
一人の人の「自己」決定と呼んでよいのか?6.私たちが「良い」と考えることは「生得的」か?
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人格が一つと考えることが間違い?人格が一つと考えることが間違い?1.脳内の人格を統合するような構造はない
統合を仮定すると、マトリョーシカになってしまう脳の決定も、基本は合議制度、多重人格の存在
2.意識の下に広がる、膨大な無意識の世界3.シャム双生児の「自己」決定?
→ 人格(心)が存在すると考えるのは、生得的= 人間は生まれつき、心身二元論者であるThe Moral Life of Babies – PAUL BLOOM是非、ご覧下さい→ http://bit.ly/NeuroC
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心と体の関係を自覚する心と体の関係を自覚する
私たちは、歩きながら、考えることができる「意識に上っている」ことは、一つだが、「無意識」も、体を動かし、判断している「無意識」も、一瞬で「意識に上る」ことがある→「無意識」も、私たちの「心」の一部
脳は一つでも、心は一つではない
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まとめる自分が、本当の自分?まとめる自分が、本当の自分?
理性的な自分 感情的な自分
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実は、まとめる自分などいません実は、まとめる自分などいません
理性的な自分 感情的な自分
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フジテレビ:フジテレビ: サイエンス・ミステリーサイエンス・ミステリー2011 2011 よりより
カナダの頭部結合双生児 タチアナとクリスタ
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拡張する心拡張する心 (河野哲也・立教大学)(河野哲也・立教大学)
環境に広がる心~生態学的哲学の展望「心」はからだの外にある~ 「エコロジカルな私」の哲学暴走する脳科学~哲学・倫理学からの批判的検討
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アフォーダンスアフォーダンス // 生態心理学生態心理学
動物を含む人は、環境を、自分に対する情報を提示し与える=アフォードするものとして、知覚する
動物を含む人は、他の動物のことを、環境を知覚し、その環境に対して、何らかの作用を及ぼすもの=エージェントとして、知覚する (近畿大学 高田司郎先生・改変)
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アフォーダンスアフォーダンス 22
このような知覚は、「生得的」なものである。また、知覚には、感覚のモダリティを問わない
赤ちゃんと「崖」の関係「崖は赤ちゃんに、すくみをアフォードする」
我々は無意識レベルの行動を、ほとんど環境のアフォーダンスに、まかせている。
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4
32
2 3
見えているもの 見ている私
4
写真
2 3 4
統合されて、「そこ」に「私」がいた記憶
視覚的フィードバック
視覚化された存在感の記憶
アスペルガー障害者の自己認知の障害
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パンクしたパンクした
大変な思いをして修理した
木
!
<情報> エピソード記憶
場所行動情動/感情認知・・パンクした/修理をしなくては
木
道
・・・
ここで何かした記憶がある
場所+
情動マークのみ残る
エピソード記憶の障害80
心身二元論は、うまれつき持つ心身二元論は、うまれつき持つ
http://bit.ly/NeuroC
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心身一元論的世界観心身一元論的世界観
決定論的空間に存在する(限られた)自由という、自由に対する「新しい見方」→「心・人格」の脱神聖化自己の存在を環境との相互作用からとらえ直す、アフォーダンスの考え方システム階層性から「自律性・自発性」が生じるロボット工学・制御工学からの知見
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河野哲也先生の道徳教育論河野哲也先生の道徳教育論
善悪は実在するか:アフォーダンスの倫理学(講談社メチエ)
道徳を問いなおす~リベラリズムと
教育のゆくえ(ちくま新書)
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用語の整理用語の整理道徳的=利他的正義:等しいものを等しく扱うという意味での、「公平性」「平等性」を意味する。善:ある人が価値を認めるもの個々人にとっての人生の目的や価値としての「善」道徳的価値一般としての「道徳善」
(→前者の「善・価値」を、私は「美」と呼びたい)
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「利他的」であること「利他的」であること
「愛国教育」と「善き社会」の差。→自分の属する組織の人だけを考えるのと、「見知らぬ他者」を含む「公共」を考える違い
「エゴイズム=悪」なら、その反対は、→「利他的=善」である
利他性を、全ての道徳的価値の根本に置ける
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道徳教育の目的道徳教育の目的
「善き社会」を構築するための、基本的態度と方法論、スキルを獲得するための教育。
「善き社会」とは、インクルーシブな民主主義社会
→道徳教育は、単なるエチケット教育やしつけとは異なる。それは、道徳の矮小化である。
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河野理論のまとめ河野理論のまとめ
• 個人の人権・自律・自由の尊重=平等
• 公共的で道徳的価値としての利他性の尊重
• →これらを元に、倫理問題を考えるべき
• 善き市民:民主主義に貢献:政治的
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参考サイト・文献参考サイト・文献• 1.医療、医学と倫理、医師・患者関係の変遷熊本大学生命倫理論集1 日本の生命倫理医師・患者関係の変遷 ~医療における医学と倫理~http://k-net.org/rinri1.html
• 2.自由意志・自己についての心の哲学脳科学は自由意志を否定するか?http://bit.ly/Noukag
• 3.社会と科学の関係なぜ科学を語って、すれ違うのか? (みすず書房)Who rules in Science?
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私の別の専門領域の参考書私の別の専門領域の参考書
1.睡眠制御と体内時計の基礎時間の分子生物学(講談社現代新書)ぐっすり眠っていますか?(熊大ブックレット)
2.具体的な悩みの例眠りの悩み相談室(ちくま新書)睡眠をケアする知恵と技(看護学雑誌2005年5月特集)
3.研究レベル眠りの科学 -動物モデルによる睡眠覚醒研究(医学のあゆみ:2007年1月号特集)
「眠り」をめぐるバイオロジー(細胞工学2008年5月号特集)
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