骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨 ......第42...

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Instructions for use Title 骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨癒合の予測 Author(s) 岩田, 玲 Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第12092号 Issue Date 2016-03-24 DOI 10.14943/doctoral.k12092 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/65113 Type theses (doctoral) Note 配架番号:2196 File Information Akira_Iwata.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Page 1: 骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨 ......第42 回日本脊椎脊髄病学会,平成25 年4 月25-27 日, 沖縄県宜野湾 7. 岩田 玲 金山雅弘

Instructions for use

Title 骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨癒合の予測

Author(s) 岩田, 玲

Citation 北海道大学. 博士(医学) 甲第12092号

Issue Date 2016-03-24

DOI 10.14943/doctoral.k12092

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/65113

Type theses (doctoral)

Note 配架番号:2196

File Information Akira_Iwata.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学 位 論 文

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨癒合の予測

(The Effect of Conservative Treatment

and the Prospect of Union Status

for Osteoporotic Vertebral Compression Fracture)

2016 年 3 月

北海道大学

岩田 玲

(Akira Iwata)

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学 位 論 文

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する保存治療の効果と骨癒合の予測

(The Effect of Conservative Treatment

and the Prospect of Union Status

for Osteoporotic Vertebral Compression Fracture)

2016 年 3 月

北海道大学

岩田 玲

(Akira Iwata)

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発表論文目録および学会発表目録

緒言

略語表

第一章

緒言

対象と方法

結果

考察

第二章

緒言

対象と方法

結果

考察

第三章

緒言

対象と方法

結果

考察

第四章

緒言

対象と方法

研究全体の考察

総括および結論

謝辞

引用文献

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50頁

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51頁

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発表論文目録および学会発表目録

本研究の一部は以下の論文に発表した.

1. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama MD, Fumihiro Oha, MD,

Tomoyuki Hashimoto, MD, Norimasa Iwasaki, MD

Effect of Teriparat ide (rh -PTH 1-34) versus Bisphosphonate on the

Healing of Osteoporotic Vertebral Compression Fracture: A Retrospective

Comparative Study

Osteoporosis Internat ional, under review, (2015)

2. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama MD, Fumihiro Oha, MD,

Tomoyuki Hashimoto, MD, Norimasa Iwas aki, MD

Does Spinopelvic Alignment Affect the Union Status in Thoracolumbar

Osteoporotic Vertebral Compression Fracture?

International Orthopaedics , under review, (2015)

本研究の一部は以下の学会に発表した.

1. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama, MD, Keiichi Shigenobu MD, Fumihiro Oha, MD, Takashi

Ohnishi, MD, Masaru Tanaka, MD, Tomoyuki Hashimoto, MD

Effect of RH-PTH 1-34 versus bisphosphonate on the union rate of osteoporotic vertebral

fractures

40th annual meeting, International Society for the Study of the Lumbar Spine, May 13-17, 2013,

Scotts dale, U.S.A.

2. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama, MD, Fumihiro Oha, MD, Shingo Onda MD, Kaoru

Tashiro, MD, Takamasa Watanabe, MD, Tomoyuki Hashimoto, MD, Norimasa Iwasaki MD

Does daily teriparatide enhance the healing process of osteoporotic vertebral fracture?

41th annual meeting, International Society for the Study of the Lumbar Spine, June 3-7, 2014,

Soul, KOREA

3. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama, MD, Fumihiro Oha, MD, Shingo Onda MD, Kaoru

Tashiro, MD, Takamasa Watanabe, MD, Tomoyuki Hashimoto, MD, Norimasa Iwasaki MD

Effect of Teriparatide versus Bisphosphonate on the Healing of Osteoporotic Vertebral Fracture

American Academy of Orthopaedics Surgeons 2015, Mar 24-28, 2015, Las Vegas, U.S.A.

4. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama, MD, Fumihiro Oha, MD, Shingo Onda MD, Kaoru

Tashiro, MD, Takamasa Watanabe, MD, Tomoyuki Hashimoto, MD, Norimasa Iwasaki MD

Effect of Spinopelvic Alignment on the Union of Thoracolumbar Osteoporotic Vertebral

Compression Fracture

42th annual meeting, International Society for the Study of the Lumbar Spine, June 8-12, 2015,

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San Francisco, U.S.A.

5. Akira Iwata, MD, Masahiro Kanayama, MD, Fumihiro Oha, MD, Tomoyuki Hashimoto, MD,

Norimasa Iwasaki MD

Does Spinopelvic Alignment Affect the Union Status in Thoracolumbar OsteoporoticVertebral

Compression Fracture?

American Academy of Orthopaedics Surgeons 2016, Mar 1-5, 2016, Orland, U.S.A.

6. 岩田 玲 金山雅弘 重信恵一 大羽文博 大西貴士 田中 将 橋本友幸

PTH 製剤(daily teriparatide)の使用は骨粗鬆症性椎体骨折の治癒を促進する

第 42 回日本脊椎脊髄病学会,平成 25 年 4 月 25-27 日, 沖縄県宜野湾市

7. 岩田 玲 金山雅弘 重信恵一 大羽文博 大西貴士 田中 将 橋本友幸

PTH 製剤(daily teriparatide)の骨形成促進作用が骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合に及ぼす影

第 86 回日本整形外科学会学術総会,平成 25 年 5 月 23-26 日,広島市

8. 岩田 玲 金山雅弘 重信恵一 大羽文博 遠田慎吾 田中 将 橋本友幸 岩崎倫

Daily teriparatide は骨粗鬆症性椎体骨折の治療を促進するか?-MRI および骨代謝マー

カーによる評価-

第 43 回日本脊椎脊髄病学会,平成 26 年 4 月 17-19 日,京都

9. 岩田 玲 金山雅弘 重信恵一 大羽文博 遠田慎吾 田中 将 橋本友幸 岩崎倫

PTH 製剤(daily teriparatide)に比較し骨粗鬆症性椎体骨折の治癒を促進するか-ランダ

ム化試験(第 1 報)-

第 87 回日本整形外科学会学術集会,平成 26 年 5 月 22-25 日,神戸

10. 岩田 玲 金山雅弘 大羽文博 遠田慎吾 田代 薫 橋本友幸 岩崎倫政

受傷時の脊椎骨盤アライメントが骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合に及ぼす影響

第 44 回日本脊椎脊髄病学会,平成 27 年 4 月 16-18 日,福岡

11. 岩田 玲 金山雅弘 大羽文博 遠田慎吾 田代 薫 橋本友幸 岩崎倫政

骨粗鬆症性椎体骨折の骨折治癒に対する脊椎骨盤アライメントの影響

第 88 回日本整形外科学会学術集会,平成 27 年 5 月 21-24 日,神戸

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緒言

骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の

危険性が増加する疾患である。日本の骨粗鬆症患者数は 1280万人で男性 300万人、女性 980万

人である 1。高齢化社会で骨粗鬆症患者は増加しており、70歳台で 30-45%、80歳台で 40-45%に

達する 2-4。一方椎体骨折の発生は 60歳台で 8-13%、70歳台で 30-40%、80歳台では 60%に達する

4,5。椎体骨折後の生存率は 3年でおおよそ 50%、5年で 30%、7年で 10%であり生命予後に関わる

が 6、続発する椎体骨折ではさらに生存率を下げる 7。続発する椎体骨折の発生リスクは新鮮椎体

骨折を生じた最初の 1年が 1番高く 5倍のリスクを持つ 8。2個以上の椎体骨折があると新規椎

体骨折の発生リスクが 12倍になりさらに生命予後を増悪させる 8,9。椎体骨折を生じると新規椎

体骨折の発生を防ぐ治療が必要とされ、薬物療法が必須である。

椎体骨折そのものの経過でも、骨癒合が得られない場合(偽関節)では、耐えがたい背部

痛や神経組織の圧迫による神経学的脱落所見の出現が生じる 10-12。疼痛が持続する場合や下肢

痛・麻痺などの神経学的脱落所見が生じた症候性の椎体骨折の偽関節には外科的介入が必要であ

り約 4割死亡を回避でき 13、手術は神経学的脱落所見を生じた椎体骨折患者の予後を改善する。

神経学的脱落所見を呈する症例にはインストゥルメンテーションを用いた脊柱再建術が必要とさ

れるが 14,15、神経学的脱落所見を呈していない場合に比較して、一度神経学的脱落所見を呈した

場合には予後は悪い 13。椎体骨折の治療では神経学的脱落所見を呈することが無いように偽関節

を防ぐことが最も優先するべき治療目標となる。

神経学的脱落所見を呈していない骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の治療方法は投薬を中心とし

た薬物療法になる。現在の第一選択薬はビスフォスフォネート製剤で、安価で効果が高い骨粗鬆

症治療薬である。しかし同薬剤を使用しても椎体骨折が偽関節に陥ることは散見される。如何に

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対して医療資源を考慮した上で骨癒合を得られるか検討をする必要が

ある。

本研究ではこれに対して日本で 2010 年から導入された骨粗鬆症治療薬である副甲状腺

ホルモン製剤(テリパラチド)を用いて椎体骨折に有用であることを明らかにした。また椎体骨折

の骨癒合を阻害する因子が現在報告されているもの以外にないか、脊柱骨盤配列に着目して骨癒

合との関係を調査した。そしてビスフォスフォネート製剤を使用しても骨癒合が得られない場合

の予測が可能かを、同薬剤導入後の比較的早期に骨代謝マーカーの変動を調べることによって予

測が可能あることを示した。本研究は骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の保存治療に関して医療経済を考

慮しまた安全に遂行できるかを、ビスフォスフォネート製剤を基準にして病態に応じてテリパラ

チドをどの条件で選択するかに資することができる報告である。

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略 語 表

本文中および図中で使用した略語は以下のとおりである.

BAP bone-specific alkaline phosphatase

BMD bone mineral density

BP bisphosphonate

CT computed tomography

DICOM digital imaging and communications in medicine

DSVA distance from sagittal vertical axis

GFR glomerular filtration rate

MRI magnetic resonance image

N/A not applicable

ODI Oswestry Disability Index

RDQ Roland-Morris Questionnaire

ROC Receiver Operating Characteristic

SD standard deviation

SERM selective estrogen receptor modulator

SVA sagittal vertical axis

TPD teriparatide

TRAP5b tartrate resistant acid phosphate type 5b

YAM young adult mean

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第一章

テリパラチドが骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に及ぼす影響

(ビスフォスフォネート製剤との比較対照試験)

緒言

受傷時に神経学的脱落所見を呈していない骨粗鬆症性脊椎椎体骨折のうち骨癒合が得ら

れない場合(偽関節)では、耐えがたい背部痛や神経組織の圧迫による神経学的脱落所見の出現が

生じる 10-12。神経学的脱落所見を呈した骨粗鬆症性椎体骨折は予後を考慮すると手術治療の利点

が大きいが 13、神経学的脱落所見や耐え難い背部痛が生じないようにするのに、保存的治療がど

れほど有益なものであるのか未だ十分な報告がない。

骨粗鬆症治療に対して骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネート製剤が第 1 選択薬であ

るが、近年骨形成を促進させる副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド:TPD)が重度の骨粗鬆症に用

いられている。骨折の治癒を妨げないように非荷重にできる部位の骨折では骨癒合速度を促した

臨床研究があるが 16,17、日常生活を送るうえで荷重や屈曲・伸展・回旋などの応力を避けることが

できない脊椎椎体骨折にテリパラチドがどれほど有益であるか、未だ十分な報告がなされていな

い。骨粗鬆症性脊椎椎体骨折を治療する上で重要なことが耐え難い背部痛を生じることがある偽

関節や椎体圧潰を生じて脊髄・神経根障害を生じさせないことが重要であるため、生命予後を悪

化させないように脊椎椎体骨折の骨癒合率を改善することが最も重要なことである。

本研究ではテリパラチドは骨粗鬆症性脊椎椎体骨折において骨癒合を促進するという仮

説を立て、テリパラチドが骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合に与える影響を調査した。椎体骨折

が続発すると生命予後がさらに悪くなるため 8,9、倫理的観点からプラセボ群を比較対照にはせず

に従来使用されてきたビスフォスフォネート製剤との実薬対照後ろ向き比較試験を行った。後ろ

向き研究であるため、テリパラチドかビスフォスフォネート製剤の薬剤選択の要素以外に、骨癒

合に影響を与える因子について調査した。薬剤選択の違いが骨癒合に与えるかについて背景因子

の違いを調節するために多変量解析を行った。また副次項目として、骨折椎体の変形の程度、手

術加療の有無も調査した。

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対象と方法

対象は 2010 年 10月から 2012年 3月までに入院した、1椎体の新鮮骨粗鬆症性脊椎椎

体骨折の患者のうち、テリパラチドもしくはアレンドロネートを使用して保存療法を行った 98

人(男 12、女 86歳、平均 76.7歳(58-94歳)である。ステロイド性骨粗鬆症、GFR 30ml/min/m2以

下の慢性腎不全、悪性腫瘍の罹患、半年以内に転院・施設等に移動した後骨癒合判定されないま

ま脱落した症例が除外されている。骨粗鬆症治療薬としてテリパラチド(FORTEO®, Eli Lilly

and Company, Indianapolis, IN, USA, approved by the U.S. Food and Drug

Administration)20μg毎日皮下注を行った群 38人(TPD群)とアレンドロネート(FOSAMAX®,

Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, NJ, USA, approved by the U.S. Food and Drug

Administration)35mg 週 1回経口投与(BP群)を行い TPD群と BP群の骨癒合率について比較検討

した。

新鮮椎体骨折の診断は MRI(Signa HDxt1.5T Optima Edition, GE Healthcare Japan

Company, Tokyo, Japan)の T1強調画像で低輝度、T2強調脂肪抑制画像で高輝度変化を同定する

ことによって行った。骨粗鬆症は 2006年度の骨粗鬆症の診断基準 18を用いて、dual-energy x-

ray absorptiometry (Delphy QDR system Toyo Medic Company, Tokyo, Japan)で Young adult

mean (YAM)で 70%未満の骨密度(-2.5SDと同様)である場合と YAM70-80%の骨量減少状態(-1.5SD

から-2.5SD)に骨折を生じたものとした。両群とも下肢機能の温存のため両群ともプラスチック

製の体幹装具を入院後 1週間以内に作成し、装着後すぐに立位歩行訓練を行った。

主要評価項目の骨癒合の判定は X線前後屈機能撮影によって骨折部の可動性がなく、CT

で骨の連続性が確認されたものとし、受傷後 6か月および最終経過観察時の調査を行った。副次

項目は、骨折椎体の変形の程度として椎体高、後弯角の計測を行った。椎体圧潰の定義は受傷時

から 15%以上の椎体高の減少と 10度以上の角度変化とした 19。また、臨床評価として手術加療を

必要としたかを調査した。患者背景の年齢(80 歳以上か 80歳未満か)、性別、腰椎骨密度(-

2.5SD未満か-2.5SD以上か)、既存椎体骨折の有無、胸腰椎移行部(第 11胸椎から第 2腰椎)の椎

体骨折か否か、椎体の後壁骨折の有無、受傷時のビスフォスフォネート製剤の使用の有無につい

て調査をした(表1)。平均経過観察期間は 17.4ヶ月であった。

表 1. テリパラチド使用群とビスフォスフォネート使用群の患者背景

TPD

N=38

BP

N=60

P値

(検定)

年齢

(平均±標準偏差) 75.5±7.1 77.6±8.0

0.205

(t検定)

性別

(男性: 女性) 4:34 8:52

0.761

(Fisher正確検定)

腰椎骨密度 (g/cm2)

(平均±標準偏差)

0.709±0.02

0

0.692±0.01

9

0.561

(t検定)

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既存椎体骨折

(なし: あり) 8: 30 15: 45

0.653

(Fisher正確検定)

骨折椎体の高位

(胸腰椎移行部以外:胸腰椎移行部) 17: 21 18: 42

0.138

(Fisher正確検定)

椎体後壁骨折

(損傷なし: 損傷有り) 16: 22 28: 32

0.658

(Fisher正確検定)

ビスフォスフォネート製剤の使用

(使用なし: 使用あり) 17: 21 42: 18

0.021*

(Fisher正確検定)

*P<0.05, TPD:テリパラチド, BP:ビスフォスフォネート

統計処理は有意差を危険率 0.05未満として、統計ソフトには JMP Pro 11(SAS

Institute Incorporation, North Carolina, and America)を用いた。連続変数については t検

定を、文字変数には Fisherの正確検定を用いた。骨癒合の背景因子を考慮して多変量ロジステ

ィック解析を用いたが、有意な変数を選択するのに変数増減法として Step Wise法を用いた。

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8

結果

1. 薬剤選択が骨癒合に及ぼす影響について

骨癒合率は受傷後半年で TPD群は 89%(34/38)、BP群は 68%(41/60)で、TPD群の骨癒合

が有意に良好であった(P=0.026, Fisherの正確検定)。最終経過観察時は TPD群

97%(37/38)、BP 群 87%(52/60)であった(P=0.147, Fisherの正確検定)(図 1)。

TPD:テリパラチド、BP:ビスフォスフォネート

図 1 テリパラチド群とビスフォスフォネート群の骨癒合率

治療後半年後の骨癒合率はテリパラチド群 89%、ビスフォスフォネート群 68%であり、

有意にテリパラチド群の骨癒合率が高かった(P=0.026, Fisher正確検定). 最終経過観察時

にはテリパラチド群 97%、ビスフォスフォネート群 87%であった(P=0.147, Fisher正確検

定)。

Kaplan-Meyer生存曲線を骨癒合に用いると、有意に骨癒合が早くなる傾向がみられた

(P<0.001, Log-rank検定)(図 2)。

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図 2 骨癒合における Kaplan-Meier 生存曲線

実線はテリパラチド群、破線はビスフォスフォネート群でそれぞれの骨癒合を Kaplan-

Meier曲線で表した. 細い矢印は偽関節で経過観察を終了したもの、太い矢印は手術加療が

介入して保存治療期間が終了したものである。テリパラチド群は有意に骨癒合期間が短いこ

とが示された(p<0.001; Log-rankテスト). 調節したハザード比で 1.78 (95%信頼区間:

1.16 – 2.71)であった。

骨折椎体に対して外科治療を要したのは 2例あり、1例は神経学的脱落所見が出現しイ

ンストゥルメンテーションを用いた後方除圧固定術を、もう 1例は耐え難い背部痛が持続す

るために経皮的に骨セメントを充填する椎体形成術を行ったがいずれも BP群であった。

患者背景を基に多変量解析を行った結果は、骨癒合は TPD群の BP群に対する背景因子

で調節した Odds 比は 8.15(95%信頼区間は 2.02-43.33)、ハザード比は 1.78(95%信頼区間は

1.16-2.71)であった(表 2)。

表 2 治療後 6か月での骨癒合に及ぼす因子の Odds比

骨癒合に与える因子

多変量解析

(変数増減法にステップワイズ法を使用)

P値 調節したオッズ比

(95%信頼区間)

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10

年齢

(80歳未満: 80歳以上) 0.205

2.21

(0.65 – 8.11)

性別

(男性: 女性) N/A N/A

骨折椎体高位

(非胸腰椎移行部: 胸腰椎移行部) 0.001*

11.67

(2.48 – 83.17)

腰椎骨密度

( -2.5SD以上: < -2.5SD未満) 0.001*

11.68

(2.48 – 83.17)

既存椎体骨折

(なし: あり) N/A N/A

椎体後壁骨折

(損傷無し: 損傷有り) 0.001*

8.53

(2.25 – 42.23)

ビスフォスフォネートの使用

(使用無し: 使用有り) 0.019*

4.86

(1.29 – 22.09)

治療薬剤の選択

(TPD: BP) 0.002*

8.15

(2.02 – 43.33)

*P<0.05,SD: standard deviation,TPD: テリパラチド,BP: ビスフォスフォネート,N/A:適

応外(not applicable)

2. 骨癒合に影響を及ぼした背景因子について

本研究での骨癒合に影響を与える因子は、調節した Odds比で表すと、椎体骨折が胸腰

椎移行部の場合に比較してそうでない場合には 11.67 (95%信頼区間: 2.48 – 83.17), 腰椎

骨密度が標準偏差の 2.5倍以上ある場合にはそうでない場合に比較して 11.68(95%信頼区間:

2.48 – 83.17) 、椎体の後壁骨折がない場合にはある場合に比較して 8.53(95%信頼区間:

2.25 – 42.23)、受傷時にビスフォスフォネート製剤を使用していない場合には使用してい

る場合に比較して 4.86(95%信頼区間: 1.29 – 22.09)であった (表 2)。

3. 椎体の変形について

TPD 群の骨折椎体の椎体高は受傷時 16.6 mmから最終経過観察時 13.2㎜に、BP群は 16.9㎜

から 13.0㎜に変化し有意な差を認めなかった(p=0.228, paired t検定)(図 3)。

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図 3 骨折椎体の椎体中央高

治療前の骨折椎体の椎体中央高はテリパラチド群 16.6±0.9 mm でビスフォスフォネー

ト群 16.9±0.7 mm であったが、治療後にはそれぞれ 13.2±0.9mm と 13.0±0.7mm であり、

椎体高の変化に両群間は有意差を認めなかった(P=0.228, paired t検定)。

骨折椎体の後弯角について TPD群は受傷時 8.6°から 13.2°、BP群は 10.8°から 14.6°

に変化し後弯角の変化にも有意差を認めなかった(p=0.495, paired t-test)(図 4)。

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12

図 4. 骨折椎体の後弯角

骨折椎体の後弯角に関してテリパラチド群は 8.6±1.0° ビスフォスフォネート群は

10.8±0.8°であったが、治療後それぞれ 13.2±1.3°と 14.6±1.0°になったが、後弯角の

変化に両群間で有意差を認めなかった(P=0.495, paired t 検定)。

4. 椎体圧潰を来した場合の骨癒合について

椎体圧潰を来したのは TPD群 66%(25/38)、BP群 60%(36/60)で有意差を認めなかった

(p=0.670, Fisher’正確検定)。この椎体圧潰を来した場合の骨癒合率は TPD群 84%

(21/25)、BP群は 61% (22/36)であった(P=0.086, Fisher’s exact test)。Step Wise法で

変数選択をした調節 Odds比は 7.80 (95%C.I.; 1.41-70.35, P=0.012)で椎体圧潰を来した場

合でも TPD群は有意に BP群に比較して骨癒合が有意に高かった。

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考察

副甲状腺ホルモンは 84個の塩基を持つ構造であるが、テリパラチドはその 1番目から

34 番目の塩基配列構造を再現し、副甲状腺ホルモンと同様の作用を示す薬剤で、日本では 2010

年 10月から導入された。副甲状腺ホルモンは持続投与で骨吸収に作用する 20。しかし全身への

間欠投与では骨芽細胞の分化増殖を促し 21,22、骨芽細胞のアポトーシスを抑制し 23、骨芽細胞の

活性を増加させ 21,22、骨形成の増加を促して骨折の発生を抑制する 8,22。これらの骨形成を促進

させる作用が骨折の治癒も促進することが期待される。

Aspenberg17は橈骨遠位端骨折に対して副甲状腺ホルモン製剤 20μg毎日皮下注を使用

した群とプラセボとを比較した 102例のランダム化試験の報告があるが、テリパラチドは骨折部

の架橋を早く形成することを示した。Peichl16は恥骨骨折に対して 1-84副甲状腺ホルモンとビ

タミン Dを使用した 2群のランダム化比較試験で同様の事を示した。また胸骨骨折や歯突起骨折

の偽関節に対してテリパラチドを導入すると骨癒合が得られた報告がある 24,25。

本研究では治療後半年の骨癒合率はテリパラチド群 89%、ビスフォスフォネート群 68%

であり、骨癒合期間もテリパラチドが有意に早かった。テリパラチドはビスフォスフォネート製

剤に比較して早期に骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合を促した。しかし骨折椎体の後弯変形はビ

スフォスフォネート製剤を使用した場合と違いはなかった。骨折椎体の強度を得るには数か月は

かかるが、椎体の変形は主に最初の数週間から数か月で変化する 26 27。そのため、テリパラチド

は骨癒合率や骨癒合期間を短縮させることが示されたものの、骨折椎体の変形は阻止できなかっ

たと考えられる。

椎体の圧潰を来した場合に両群とも骨癒合率は低下したが、椎体圧潰を来してもテリパ

ラチドはビスフォスフォネートよりも有意に骨癒合率が高かった。本研究では手術を要する例は

ビスフォスフォネート製剤を使用した 2例でテリパラチドを使用した場合には発生していなかっ

た。手術に至る場合の発生率が低い為に今後更なる検討を要するが、テリパラチドは椎体圧潰を

起こした場合でも骨癒合率を高く保つため、激しい疼痛が持続する偽関節や神経組織を圧迫して

神経障害が発生することを阻止したのではないかと考えられた。

本研究の制限:後ろ無研究であり、患者背景を調節するために多変量解析を用いている

が、前向きのランダム化試験が望ましい。臨床評価として手術治療の有無について評価したが、

臨床的には椎体骨折発生後に生じる疼痛の程度とその経過も重要な指標であり、これを含めた研

究が望まれる。本研究の骨癒合の評価には X線と CTを用いたが、生物学的な骨癒合過程を観察

するために、骨代謝マーカーの使用や MRIでの骨折椎体の信号変化などで評価するのもよいと思

われる。手術症例を抑制する効果に対しては、手術症例数の発生率が少なく本研究の対象症例数

では評価できない。

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第二章

脊柱骨盤アライメントが胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合に及ぼす影響

緒言

骨粗鬆症性椎体骨折とこれに関連する問題は高齢者の生活の質や予後に大きな影響を与

える 28-32。椎体骨折受傷後には骨折が無い場合の 4-7倍の椎体骨折が生じるが、これは椎体骨折

のカスケードと言われる 33。この椎体骨折のカスケード以外に、椎体骨折そのものも骨癒合が得

られない場合には椎体が圧潰し高度の後弯変形を背景とした耐えがたい背部痛が持続し、神経障

害を呈することもある 10-12,34.耐え難い背部痛が持続する場合には椎体形成術、そして神経学的

脱落所見を呈する椎体圧潰にはインストゥルメンテーションを使用した脊柱再建術が必要とされ

る 14,15。椎体骨折の最も優先するべきものは偽関節を防ぐことである。

第一章において骨癒合に影響を与える因子は、薬剤の選択以外に椎体骨折が胸腰椎移行

部の場合、腰椎骨密度が-2.5SDより低い場合、椎体の後壁骨折がない場合受傷時にビスフォス

フォネート製剤を使用していない場合であった。しかし、この後ろ向き比較対照試験において調

査した患者背景には脊柱骨盤配列については調査されていない。

脊柱が前方に傾くと脊柱の荷重は増大し 35-37、新規椎体骨折の発生例には胸椎の後弯が

大きいこと 38,39を含めて脊柱配列が新規椎体骨折の発生と関与していると報告がある 40。しかし

脊柱骨盤配列と骨癒合の関係については未だ報告がない。

本研究は矢状面の脊柱骨盤配列が胸腰椎移行部椎体骨折の骨癒合に影響する因子である

ことを示したものである。

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対象と方法

対象は平成 24年 4月から平成 26年 3月までに第 10胸椎から第 3腰椎の新鮮な 1椎体

の胸腰椎移行部椎体骨折を受傷した患者のうち、骨粗鬆症に未治療の患者で調査に同意した 38

人(女性 31人、男性 7人、年齢は 73.5±6.6歳)である。除外診断は認知障害、パーキンソン

病、腎不全(クレアチニンクリアランスが 30ml 毎分未満)、ステロイド使用(プレドニゾロン換算

で 5mg毎日)、悪性腫瘍の罹患とした。骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の診断は軽微な外傷で生じた椎

体骨折で、MRI(Signa HDxt1.5T Optima Edition, GE Healthcare Japan Company, Tokyo,

Japan)の T1強調画像で低輝度および T2強調脂肪抑制画像で高輝度変化があり、骨密度が-1.5SD

より低いことであるとした。骨密度測定は二重 X線吸収撮影(Delphy QDR system Toyo Medic

Company、東京、日本)で腰椎および大腿骨頚部で測定した。薬剤の選択はランダムにアレンドロ

ネートを 1週間に 1度 35mgの経口投与と、テリパラチド 20μgを 1日 1回皮下注射に振り分け

た。入院後 1週以内に軟性コルセットを作成し、立位歩行および下肢筋力訓練を行った。骨癒合

は治療後半年で評価し、胸腰椎移行部の前後屈機能撮影で骨折部の異常可動性が無いことおよび

CT で骨折部の連続性が確認されていることを条件として、3人の脊椎外科専門医がそれぞれ独立

して判定した。

X線計測は立位全脊柱側面像で行った。測定項目は骨盤固有角(脊柱骨盤配列で使用さ

れるパラメーターとして大腿骨頭中心から仙骨椎体の二等分線と仙骨椎体終板と垂直に交わる線

とのなす角)、骨盤傾斜角(大腿骨頭中心と散骨椎体の二等分線と鉛直線とのなす角)、腰椎前弯

角(第 1 腰椎椎体と仙骨椎体終板とのなす角)、胸椎後弯角(第 5胸椎から第 1腰椎上位終板のな

す角)、および脊柱前方偏位(第 7頸椎の鉛直線(SVA線)から仙椎椎体後上方までの距離)に加え

て、本研究では DSVA(SVA線から骨折椎体の中心までの距離)を定義(図 5)し測定した。

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図 5 DSVA

DSVAは第 7頸椎椎体の中心から鉛直方向に作成した線から骨折椎体の中心までの距離

と定義した。

X線測定項目を骨癒合群と非骨癒合群で比較検討した。正規分布とみなされる連続値は

平均値±標準偏差で表記した。正規分布とみなされる連続値には t検定を用い、文字データには

フィッシャーの正確検定を用いた。薬剤選択が本研究で大きく異なる点であるので患者背景因子

に薬剤選択も導入し、骨癒合群と非骨癒合群について多変量解析をした。統計は JMP Pro 11

(SAS Institute Incorporation, North Carolina, America). 統計学的有意差は危険率 0.05 未

満とした。連続変数のうち有意差を生じたものについてカットオフ値を Receiver Operating

Characteristic Curve (ROC曲線)を用いて計算した。またカットオフ値を参考に二値変数を設

け、骨癒合を阻害する因子に対しても脊柱骨盤配列が有意な計測項目か多項ロジスティック解析

を用いて検討した。この解析にはサンプルサイズが少ないためステップワイズ法を用いた変数増

減法による変数選択を併用した。

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結果

1.患者背景について

治療開始後半年で 23例が骨癒合し(骨癒合群;11例が TPD 使用、12例が BP使用)、15

例が非骨癒合(非骨癒合群;7例が TPD 使用、8例が BP使用)であった。骨癒合群と非骨癒合

群の患者背景を表 1に示す。年齢、性別、骨密度、椎体骨折の高位といった背景因子には骨

癒合群と非骨癒合群に有意差を認めなかった(表 3)。またいずれの群も手術を要しなかっ

た。

表 3. 治療開始後 6か月の時点での骨癒合群と非骨癒合群の患者背景

骨癒合群

(N=23)

非骨癒合群

(N=15)

P値

性別

(女性: 男性)

21:2

10:5

0.100

年齢(平均±標準偏差) 72.1±1.4 75.5±1.7 0.123

骨密度(g/cm2)

腰椎

大腿骨

0.720±0.027

0.546±0.019

0.722±0.035

0.518±0.024

0.965

0.378

治療薬剤

(BP:TPD)

12:11

8:7

1.000

椎体骨折の高位

第 11胸椎

第 12胸椎

第 1腰椎

第 2腰椎

第 3腰椎

2

3

8

5

5

2

5

5

3

0

0.264

*: P<0.05,BP: ビスフォスフォネート,TPD: テリパラチド

2.計測値の結果

受傷時の X線計測値を骨癒合群と非骨癒合群に分けて示す(表 4)。

表 4.矢状面の脊柱骨盤配列

計測項目 骨癒合群

(N=23)

非骨癒合群

(N=15)

P値

骨盤固有角 57.5±3.2 55.6±2.6 0.658

骨盤傾斜 27.5±2.5 22.0±2.0 0.096

腰椎前弯角 29.8±4.1 37.9±3.3 0.131

胸椎後弯角 39.7±3.5 36.4±2.8 0.476

脊柱前方偏位 67.9±11.2 45.4±9.1 0.128

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DSVA 73.7±10.2 40.6±8.2 0.0161*

DSVA:第 7頸椎椎体中心から引いた鉛直線と骨折椎体中央までの距離

骨盤固有角は骨癒合群 55.6+/-2.6 °で遷延癒合群は 57.5+/-3.2 °であった(P=0.658,

t-検定)。 骨盤傾斜角 は骨癒合群 22.0+/-2.0 °で非骨癒合群は 27.5+/-2.5°であった

(P=0.096, t-検定)。腰椎前弯角は骨癒合群 37.9+/-3.3°で非骨癒合群 29.8+/-4.1°であっ

た(P=0.131, t-検定)。胸椎後弯角は骨癒合群 36.4+/-2.8°で非骨癒合群 40.0+/-0.4 °で

あった(P=0.476, t-検定)。脊柱前方偏位は骨癒合群 4.5+/-0.9cmで非骨癒合群 6.8+/-1.1

cm であった(P=0.128, t-検定)。DSVAは骨癒合群 4.1+/-0.8cm で非骨癒合群 7.4+/-1.0 cm

であった(P=0.016, t-検定)。薬剤選択の違いを加えて検討しても DSVAは非骨癒合群に比較

して骨癒合群は有意に小さかった(P=0.014、t検定)。DSVAのカットオフ値は ROC曲線(area

under the curve 0.765)を用いると 36.0 mmで、このときには骨癒合は感度 0.933、特異度

0.565であった(図 6)。

図 6.受傷時の DSVAに対する骨癒合率で作成した Receiver Operating Characteristic

curve (ROC 曲線)

受傷時の DSVAに対して骨癒合率で作成した Receiver Operating

Characteristic curve の area under the curveは 0.765であった。骨癒合を示す最適

な受傷時 DSVAのカットオフ値は DSVA が 36.0 mmの時で、感度 93.3%、特異度 56.5%で

ある。

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3.DSVAの有用性について

骨癒合に対する DSVAの ROC曲線は Area Under the Curveが 0.765、カットオフ値 36mm

は感度 57%で高くはなく、カットオフ値としては不十分である。N数を考慮した切りの良い

数値として DSVA>5㎝を採用し、他の骨癒合を阻害する因子に対して DSVA>5cmがどれほど

骨癒合を阻害する影響を与えるかを解析した。

年齢、性別、腰椎骨密度、骨粗鬆症薬の選択、既存椎体骨折の有無といった骨癒合を阻害

する因子の中でも DSVA>5cmは有意な骨癒合を阻害する因子であった(表 5)。

図 5. 骨癒合に影響を及ぼす因子

骨癒合に与える因子

多項ロジスティック解析

ステップワイズ法を用いた変数選択(P<0.25)

P value 調節 Odds比(95%CI)

年齢

<75 vs. ≥75 0.021* 12.0 (1.4– 294.9)

性別

男性 vs. 女性 0.161 6.4 (0.5 – 192.3)

腰椎骨密度

≤ -2.5 SD vs. > -2.5 SD p>0.25

薬剤選択

TPD vs. BP p>0.25

既存椎体骨折

なし vs. あり 0.211 3.4 (0.5 – 34.5)

脊柱骨盤配列

DSVA < 5 cm vs. > 5cm 0.020* 9.2 (1.4 – 103.7)

*: P<0.05

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考察

本研究では、非骨癒合群は比較的小さい腰椎前弯、大きい骨盤傾斜、大きい脊柱前方偏

位を示す傾向がみられたが、有意差を生じたのは DSVAであった。DSVA は第 7頸椎の鉛直線と骨

折椎体中心からの水平距離であり、骨折椎体に加わる屈曲モーメントの大きさを他の計測値より

も正確に表している。そして本研究では多変量解析を用いて脊柱骨盤配列の DSVA>5cmが他の骨

癒合を阻害する因子と一緒に多変量解析を用いて検討しても、有意な骨癒合を妨げる因子である

ことを示した。

我々は矢状面配列でのバランスの崩れは非骨癒合の重要な危険因子であると考えた。

DSVAは骨折椎体の中心から骨折部よりも上にある身体の重心までが作る屈曲モーメントの距離

を脊柱前方偏位(SVA)よりも正確に反映され、脊柱が傾いたときの骨折椎体の圧迫力と剪断力を

反映することになる。

脊柱の荷重は脊柱が傾くことによって増加することがすでに報告されている 35-37.実験

では椎体前方に非対称の荷重が新規椎体骨折の発生を促し 41、胸腰椎移行部の前方凸の楔状椎体

の形態をとるようになる 42ことが報告されている。脊柱の前方傾斜が直接楔椎体骨折に影響を及

ぼす。

臨床では、椎体骨折の発生に関しては脊柱配列と関連があると報告され、異常な脊柱配

列が椎体骨折の発生を予測する因子であると報告され 40、大きな胸椎後弯角を呈していることが

椎体骨折を発症した患者では多く、大きな胸椎後弯角が独立した新規椎体骨折の予測する因子で

あるとされている 38,39.

静止時の脊柱側面形態に加えて、脊柱が前方傾斜している患者はバランスを取るのが難

しい 43。脊柱前方傾斜が大きい患者では脊柱の揺れが通常の脊柱配列の人よりも頻度や大きさが

大きいことが予測され、また揺れに対して体幹筋力の活動も大きくしてバランスを保つ。脊柱配

列異常がある椎体骨折患者ではバランスを取ることが難しくなっていることも骨癒合を得られ難

くする原因の一つと考えられる。

結語:本研究では脊柱骨盤配列に注目して骨粗鬆症を背景とする胸腰椎移行部脊椎椎体

骨折の骨癒合に影響を及ぼす因子を調査した。骨癒合に影響を及ぼすのは脊柱骨盤配列のうちで

も局所の脊柱配列の異常ではなく骨折部に対する脊柱全体の前方傾斜(DSVA)が危険因子であっ

た。 DSVA>5cmは他の骨癒合を妨げる因子の中でも有意な骨癒合を阻害する因子であった。

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第三章

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折にビスフォスフォネート製剤を使用した場合の

骨代謝マーカーを用いた骨癒合予測

緒言

ビスフォスフォネート製剤は安価で効果が高い第 1選択の骨粗鬆症治療薬である。ビス

フォスフォネート製剤は、破骨細胞の活動を抑えて骨吸収を阻害することによって骨量を増加さ

せ 44、新規椎体骨折の発生を防ぐ効果が高い 45-47。骨折に対しては骨折部に生じる仮骨を増加さ

せて強度を増加させる 48-51。その一方で一次骨化も 52二次骨化も抑制する 48ために骨の再構築の

過程を防ぐことが懸念されている。現在のところ前向きランダム化研究の meta-analysisでは臨

床において骨癒合を阻害していないと結論しており 53,54、臨床的には新鮮椎体骨折にビスフォス

フォネート製剤を導入することは有益である。

脊椎椎体骨折は非荷重にできない骨折で、屈曲・伸展・回旋運動を日常生活動作で強い

られる。そのため骨癒合が他の部位の骨折よりも得られにくく、第一章で示したようにビスフォ

スフォネート製剤の骨癒合率は最終経過観察時点で 87%であったが、半年では 68%にとどまる。

椎体骨折が偽関節に陥る場合には耐えがたい背部痛を生じ 11,12、椎体圧潰が後に生じてくると神

経障害を呈する場合もあり 11,12,34、椎体形成や脊柱再建術が必要とされる 13-15。

第一章で骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対して治療効果を検討したテリパラチドは骨癒合率

をビスフォスフォネート製剤に比較して有意に高くするが、経口投与ではなく皮下注射の手技で

あること、治療費も現在のところビスフォスフォネート製剤に比較してかなり高価であることか

ら、全例にテリパラチドを導入することは患者負担も医療経済上からも望ましくはない。経口ビ

スフォスフォネート製剤を投与しても骨癒合が得られない患者に、テリパラチドを含めた骨癒合

をより促す治療へ移行するか予め手術加療を選択する等のより強化した治療を早期に選択できる

ようになることが望ましい。そのためには骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対してビスフォスフォネー

ト製剤を投与した時に骨癒合が得られないことを早期に同定できる目安が必要である。

酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(tartrate resistant acid phosphate type 5b:

TRAP5b)は破骨細胞に特異的で、骨代謝のうち骨吸収の強さを示すマーカーの一つである 55-58。

血清 TRAP5bはビスフォスフォネート製剤を導入した後の治療効果を表す指標になる 59。一方椎

体骨折後の骨代謝マーカーの変動に関しての報告はあるものの、骨癒合を予測する十分な指標に

なるという報告はない。

本研究では骨粗鬆症性脊椎椎体骨折後に経口ビスフォスフォネート製剤を導入した場合

の骨代謝マーカーの反応を骨癒合する場合と骨癒合しない場合に分けて調査し、骨代謝マーカー

が骨癒合の予測に使用可能かを検討した。

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対象と方法

対象は平成 24 年 4月から平成 26年 10月までに第 10 胸椎から第 3 腰椎の 1椎体の胸腰

椎移行部椎体骨折を受傷した患者のうち、骨粗鬆症に対して未治療で、受傷時に神経障害を呈し

ていないことが確認され、経口ビスフォスフォネート製剤を導入した患者 28人(女性 24人、男性

4 人、年齢 74.0±7.0 歳)である。除外診断は認知障害、パーキンソン病、腎不全(クレアチニンク

リアランスが 30ml 毎分未満)、ステロイド使用(プレドニゾロン換算で 5mg 毎日)、担癌状態とし

た。骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の診断は軽微な外傷で生じた椎体骨折で、MRIの T1強調画像で低輝

度および T2 強調脂肪抑制画像で高輝度変化があり、骨密度が標準偏差の-1.5 倍以下であるとし

た。骨密度測定は二重 X線吸収撮影(Delphy QDR system Toyo Medic Company、東京、日本)で腰

椎および大腿骨頚部で測定した。入院後座位が可能になった段階でアレンドロネート(ALN)35mgを

週 1回経口投与し、軟性コルセットを装着して立位歩行訓練を行った。

骨代謝マーカーは初診時とアレンドロネート投与後 1か月、2か月、3か月、6か月後に

TRAP5b (mU/dL)および骨型アルカリフォスファターゼ(bone-specific alkaline phosphatase:

BAP) (μg/mL)を測定した。TRAP5bは定量的酵素免疫測定(enzyme immunoassay: EIA)法(DS ファ

ーマメディカル株式会社、大阪)、BAP は化学発光酵素免疫測定(chemiluminescent enzyme

immunoassay: CLEIA)法(SRL社、東京)で測定された。同時期の立位 X線側面像における骨折椎体

の椎体高と後弯角及び MRIT2強調脂肪抑制画像(T2FS)と T1強調画像(T1WI)における骨折椎体の

輝度を測定した。骨癒合はアレンドロネート投与開始後 6 か月で評価し、胸腰椎移行部の前後屈

機能撮影で骨折部の異常可動性が無いことおよび CTで骨折部の連続性があることを条件に、3人

の脊椎外科専門医がそれぞれ独立して判定した。

骨癒合と判断された骨癒合群と骨癒合をしていないと判断された非骨癒合群に分け骨代

謝マーカーと X線および MRIでの計測項目を比較検討した。

正規分布とみなされる連続値は平均値±標準偏差で表記した。正規分布とみなされる連

続値には t検定を用い、文字データにはフィッシャーの正確検定を用いた。統計は JMP Pro 11

(SAS Institute Incorporation, North Carolina, America). 統計学的有意差は確率 0.05 未満

とした。連続変数のうち有意差を生じたものについて最適なカットオフ値を Receiver Operating

Characteristic curve (ROC曲線)を用いて計算した。

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結果

1. 本研究の患者背景

骨癒合群は 19人、非骨癒合群は 9 人であった。この患者背景を表 4に示す。男女比には

有意差を認めなかったが、年齢は骨癒合群 71.6±1.5 歳、非骨癒合群 77.8±2.1 歳で非骨癒

合群は年齢が有意に高かった(P=0.024, t 検定)。また腰椎骨密度は骨癒合群 0.808±0.044、

非骨癒合群 0.686±0.034(g/cm2)で腰椎骨密度が有意に低かった(P=0.041, t検定)。これが本

研究での椎体骨折に対してビスフォスフォネート製剤を投与したときの骨癒合を阻害する因

子であった(表 6)。

表 6.骨癒合群と非骨癒合群の患者背景

骨癒合群

n=19

非骨癒合群

n=9

P値

(検定方法)

年齢

(平均±標準偏差) 71.6±1.5 77.8±2.1

0.024*

(t検定)

性別(女性:男性) 17:2 7:2

0.574

(Fisher正確検定)

腰椎骨密度 (g/cm2)

(平均±標準偏差) 0.808±0.044 0.686±0.034

0.041*

(t検定)

*: P<0.005

2. ビスフォスフォネート製剤導入前値の比較

ビスフォスフォネート製剤導入前の骨代謝マーカーの値を図 7 に示す。TRACP5b は骨癒

合群 432±62(mU/dL)で非骨癒合群 585±43(mU/dL)であった(P=0.053, t検定)。BAPの骨癒合

群は 20.9±2.0(μg/ml)で非骨癒合群は 17.3±3.0(μg/ml)であった(P=0.320, t 検定) (図

7)。

a. b.

図 7. ビスフォスフォネート投与前の骨代謝マーカーの値

a. Tartrate-resistant acid phosphatase 測定値

b. 骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)測定値

TRAP5bも BAPいずれも非骨癒合群は低い傾向はあるが有意差はない。

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3.ビスフォスフォネート製剤導入後の経過

ビスフォスフォネート製剤導入前の骨代謝マーカーの値を基準値として、骨代謝マーカ

ーの推移を以下に示す。TRAP5bの変化は 1か月で骨癒合群-39±5%に対して非骨癒合群-1±

8%で(P<0.001,t 検定)、2か月で骨癒合群-41±5%に対して非骨癒合群-2±8%(P<0.001, t検

定)、3か月で骨癒合群-45±6%に対して非骨癒合群-3±9%(P<0.001, t検定), 6か月で骨癒

合群-48±6%に対して非骨癒合群-22±9%(P=0.022, t検定)であった。骨癒合群の TRAP5bは

投与開始後 1 か月から速やかに減少したが、非骨癒合群は 3 か月間ほぼ減少せず 6 か月で減

少し始めた。TRAP5b の変化はビスフォスフォネート製剤導入 1 か月後から骨癒合群と非骨癒

合群に顕著な差を呈した(図 8)。

図 8. Tartrate-resistant acid phosphatase (TRAP5b)の経時的変化

アレンドロネート導入開始前の値を基準とした tartrate-resistant acid phosphatase

(TRAP5b)値の変化を示した。投与後 1か月で骨癒合群-39±5%に対して非骨癒合群は-1±8%

で、非骨癒合群は BP を投与しても TRAP5b が抑制されなかった(P<0.01,t 検定)。またそれ以

降も 2 か月で骨癒合群-41±5%に対して非骨癒合群-2±8%(P<0.01, t 検定)、3 か月で骨癒

合群-45±6%に対して非骨癒合群-3±9%(P<0.01, t 検定), 6 か月で骨癒合群-48±6%に対

して非骨癒合群-22±9%(P=0.022*, t検定)であった。骨癒合群と非骨癒合群は異なる経時的

変化を示し、骨癒合群の TRAP5bは投与開始後 1か月から速やかに減少したが、非骨癒合群は

アレンドロネート導入後でも 3か月減少しなかった。

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BAPの受傷時からの変化は 1か月で骨癒合群と非骨癒合群ではそれぞれ 2±9%と 34±13%

(P=0.049*, t 検定)、2か月で-13±7%と 5±10%(P=0.153, t検定)、3か月で-24±8%と-1

±11%(P=0.113, t検定)、6か月で-34±7%と-25±10%(P=0.504, t検定)であった。BAPは

BP を投与後でも一度上昇してから減少したが、非骨癒合群では骨癒合群よりもそのピークが

高くそして遅れる傾向がみられたが、2群に大きな差を認めなかった(図 9)。

図 9. 骨型アルカリフォスファターゼの変化

骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)のアレンドロネート導入後の変化を示した。BP 投

与後 1か月で骨癒合群と非骨癒合群ではそれぞれ 2±9%と 34±13% (P=0.049*, t検定)、2か

月で-13±7%と 5±10%(P=0.153, t検定)、3か月で-24±8%と-1±11%(P=0.113, t検定)、

6か月で-34±7%と-25±10%(P=0.504, t 検定)であった。BAPはアレンドロネート導入後で

も一度上昇してから下がる傾向があったが、非骨癒合群では骨癒合群よりもそのピークが高

く遅れている傾向がみられた。その後骨癒合群と非骨癒合群はほぼ同様に緩やかに減少して

いった。

ビスフォスフォネート製剤導入後 1 か月で TRAP5b も BAP のいずれも骨癒合群と非骨癒

合群に違いが有意にあり、特に TRAP5bでは顕著であった。ビスフォスフォネート製剤導入後

1か月の BAPは導入後 1か月の TRACP5bと中等度の正の相関(R=0.451)があった。

4.ビスフォスフォネート製剤導入後 1か月の骨代謝マーカーの変化における骨癒合予測

TRAP5bがビスフォスフォネート製剤導入後 1か月で骨癒合群が速やかに低下するが、非

骨癒合群は低下しないことに対して ROC 曲線(area under the curve=0.914)を作成した(図

10)。カットオフ値は TRAP5b が 16%の時で、TRAP5b がビスフォスフォネート製剤導入後 1 か

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月で 16%以下低下しない場合には感度 89.5%,特異度 87.5%で骨癒合が得られない。

図 10. 1 か月での TRAP5b の減少率に関して骨癒合の有無を示した Receiver Operating

Characteristic curve (ROC 曲線)

アレンドロネート導入後 1か月の TRAP5bは骨癒合群が速やかに低下するが、非骨癒合群

は低下しない。これに対して ROC曲線(area under the curve=0.914)を作成した。カットオ

フ値は 16%で、アレンドロネート導入後 1 ヶ月の TRACP5b が導入時に比較して 16%以上低下

しない場合には骨癒合が得られない(感度 89.5%,特異度 87.5%)。

5.骨折椎体の形態変化

椎体高は、投与開始前は骨癒合群と非骨癒合群で椎体高に有意差を生じていないが、ビ

スフォスフォネート製剤導入後 1ヶ月で有意に低下(P<0.01, t検定)し、2か月でも大きな有

意差があった(P=0.013, t 検定) (図 11.a)。椎体高の変化は両群とも最初の 1か月は大きい

が、非骨癒合群は 2か月でも大きかった(図 11.b)。

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a.

b.

図 11. 骨癒合群と非骨癒合群の骨折椎体の高さの推移

a. 骨折椎体の高さ

b. 骨折椎体の高さの変化

アレンドロネート導入時には骨癒合群と非骨癒合群には椎体高の差を認めないが、導入

後1ケ月で非骨癒合群の椎体高の減少が骨癒合群に比較して大きく、導入後 2 カ月間でも非

骨癒合群は椎体高の低下が進行している。

後弯角はビスフォスフォネート製剤開始前で非骨癒合群はすでに有意に大きい(P<0.01)。

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またその後 6 か月の経過中で後弯角は非骨癒合群で有意に大きかった(P<0.01)(図 12.a)。後

弯角の変化は、骨癒合群はその変化のピークは最初の 1 か月であるが、非骨癒合群は 2 ヶ月

でピークが生じており、導入後 2 ヶ月での後弯角の変化が非骨癒合群では有意に大きかった

(P=0.038, t検定)。導入後3ヶ月以降では後弯角には変化はほとんど見られなかった(図12.b)。

a.

図 12. 骨癒合群と非骨癒合群の骨折椎体の後弯角の推移

a. 骨折椎体の後弯角

b. 骨折椎体の後弯角の変化

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アレンドロネート導入前から後弯角に有意な差があり、骨折椎体の骨癒合を阻害する因

子と考えられる。後弯角の変化に関しては、骨癒合群はアレンドロネート投与後 1ヶ月で変化

が大きいが、2ヶ月では変化が小さくなっている。しかし非骨癒合群は 2ヶ月でも後弯の変化

が大きく、ビスフォスフォネート製剤導入後 1 ヶ月から 2 ヶ月の角度の変化に骨癒合群と非

骨癒合群で有意差がある(P<0.05)。

投与後 1か月の TRAP5b(ビスフォスフォネート導入時を基準とした変化)は投与後 1ヶ月

から 2ヶ月での椎体高の変化と中等度の相関(R=0.456)を認め、後弯角の 1ヶ月から 2ヶ月の

変化とも中程度の相関(R=0.482)を認めた。

6.MRIの輝度変化

MRIの椎体内の輝度は、T1強調画像では非骨癒合群の輝度が低下している傾向があるが、

非骨癒合群では輝度の低下が回復するのが遅く、2ヶ月、6ヶ月の時点で有意差を生じている

(P<0.01)(図 13 a.)。一方 T2強調脂肪抑制画像では有意な差を生じていなかった(図 13 b.)。

T1 強調画像では受傷後 1 か月の TRAP5b の変化とは相関を認めなかったが、T2 強調脂肪抑制

画像では中等度の相関を認めた(R=0.396)。

a.

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b.

図 13. MRI 骨折椎体の輝度

a. T1強調画像

b. T2強調脂肪抑制画像

T1強調画像では非骨癒合群の輝度がすべての期間で低いが、有意な差は治療開始後 2ヶ

月と 6 ヶ月で生じている。T2 強調脂肪抑制画像では BP 投与開始後高くなる傾向が見られる

が、6ヶ月の経過中に有意差を生じていなかった。

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考察

骨代謝マーカーは骨折が生じたときに誘導されることはすでに報告されている 60-62。骨

折の治癒過程において、ミネラルが沈着する前の仮骨の増成をする時期(受傷後 2 から 4 週)には

骨代謝マーカーは高いが、仮骨にミネラルが沈着する頃(受傷後 4 から 8 週)には骨代謝マーカー

は減少する。その後の骨代謝マーカーは全身の骨代謝の状態を強く反映し骨折で生じた変化はマ

スクされ、骨代謝マーカーの推移は骨癒合過程と相関しなくなる 62。臨床でも、椎体骨折後 2 週

から 4 週で骨代謝マーカーはピークを迎え、その後減少して損傷後 48 週で受傷前の値に戻る 63。

つまり骨代謝マーカーの変化は骨折が生じた時に変化するが、その後比較的早期に消失してしま

う。

本研究での骨癒合群はビスフォスフォネート導入後 1 ヶ月で BAP は増加したが、その後

減少に転じ、TRAP5b は導入後 1 ヶ月で 40%減少しその後ほぼ変化を認めなかった。骨癒合群の骨

代謝マーカーの変化は1カ月で BAP に少し変化が確認された程度で、導入後 2 カ月移行はほぼ椎

体骨折の影響を受けずアレンドロネートを導入した全身状態の骨代謝の状態を反映していると思

われた。これはアレンドロネートを骨粗鬆症患者に投与すると、骨吸収マーカーである TRAP5b が

破骨細胞の活性を抑制して治療効果の指標となり、椎体骨折の無い骨粗鬆症患者に用いると 3 か

月で 40%減少する 59からである。

一方非骨癒合群ではアレンドロネートを導入しても TRAP5b は抑制されず 3 ヶ月は導入

前程度にとどまり、その後低下した。

骨折椎体のアレンドロネート導入後 1 から 2 か月の間に骨癒合群と非骨癒合群で有意差

を示したのは、椎体高の変化と後弯角の変化であり、MRI には反映されなかった。MRI は T1 強調

画像で時間経過してから骨癒合群と非骨癒合群に差を生じた。アレンドロネート導入後 1 ヶ月か

ら 2ヶ月の椎体高と後弯角の変化は TRAP5bの 1か月の減少と中程度の相関が認められ、椎体の形

態の変化が TRAP5b に反映されていた。アレンドロネートを導入しても非骨癒合群で 3 か月ほど

TRAP5bが抑制されなかったのは、微小な骨折を繰り返して骨折椎体の形態変化が持続しているこ

とを反映しており、非骨癒合群ではアレンドロネートを投与していてもこの微小な骨折に TRAP5b

が反応して減少しなかったと推測する。

本研究では受傷後 1か月の TRAP5bが十分骨癒合群と非骨癒合群で異なり、骨癒合の予測

に使用できると考えられた。本研究ではアレンドロネート導入後 1ヶ月の TRAP5bが投与前を基準

として 16%以上減少しないものは感度 89.5%,特異度 87.5%(area under the curve=0.914)で骨癒

合が得られなかった。

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折後にビスフォスフォネート製剤を投与した場合,骨粗鬆症患者

へ投与した場合とほぼ同様の経過をたどり全身の骨代謝回転を抑制し、骨代謝マーカーを減少さ

せる.しかし,非骨癒合群では骨折の影響と考えられる骨代謝マーカーが一過性に上昇する反応

が遷延した。椎体の形態変化が持続することは椎体の圧潰を示すが、椎体圧潰は偽関節の過程で

ある。ビスフォスフォネート製剤を導入しても 1ヶ月で TRAP5bが抑制されない症例は高率に偽関

節に陥る。骨粗鬆症性椎体骨折にビスフォスフォネート製剤を導入した場合の骨癒合の予測にビ

スフォスフォネート投与後 1か月の TRAP5bが有用であると考えられた。

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第四章

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対するテリパラチドの治療効果

(ビスフォスフォネート製剤との前向き比較対照試験)

緒言

第一章では、骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対してテリパラチドを使用した場合とビスフォ

スフォネート製剤を使用した場合の骨癒合に及ぼす影響について後ろ向きに比較検討した。骨癒

合を得るのにテリパラチドを選択するとビスフォスフォネートに比較して Odds比で 8.15(95%信

頼区間は 2.02-43.33)、ハザード比で 1.78(95%信頼区間は 1.16-2.71)が期待される。また、骨

癒合に影響を与える他の因子は、調節した Odds比で表すと、椎体骨折が胸腰椎移行部の場合に

比較してそうでない場合には 11.67 (95%信頼区間: 2.48 – 83.17), 腰椎骨密度が標準偏差の

2.5倍以上ある場合にはそうでない場合に比較して 11.68(95%信頼区間: 2.48 – 83.17) 、椎体

の後壁骨折がない場合にはある場合に比較して 8.53(95%信頼区間: 2.25 – 42.23)、受傷時にビ

スフォスフォネート製剤を使用していない場合には使用している場合に比較して 4.86(95%信頼

区間: 1.29 – 22.09)であった。

しかし後ろ向き研究には限界があり、多変量解析を行って患者背景の違いを調節して計

算することができても、第二章でしめした脊柱骨盤配列の違いなど把握できていない背景因子が

存在する可能性がある。テリパラチドの骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する効果をより正確に判定

するために、臨床試験第Ⅲ相に相当する有効性の確認を行う試験に準じて検討したい。薬価と投

与経路を考慮すると、優越性の検証を行うことが必要とされる。プラセボとの比較試験で行う前

向きの二重盲検試験が望ましいが、骨粗鬆症性椎体骨折が生じると続発する椎体の骨折の発生は

最初の 1年で 20%になり、椎体骨折の無い人に比較して 4から 7倍に上昇させる 33。そして続発

する椎体骨折を生じると生存率を下げる 7。対照群にプラセボではなく治療薬を使用するとその

治療効果が高い場合には有意差を生じるのに必要な目標登録症例数が多くなり試験がより難しく

なることから、コントロール群としてはプラセボ群であることが望ましいが、骨粗鬆症性脊椎椎

体骨折に対しては倫理的な観点から非投与群を設けられない。本研究では、骨粗鬆症に対して現

在の第 1選択となっているビスフォスフォネート製剤を標準治療と考え、これに対しての優越性

の検討を行う試験デザインを作成した。

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対象と方法

本研究では 1施設内で行う実薬を用いた研究で、治療者は患者がどの薬剤を使用してい

るかわかること、また患者は剤型からどの薬剤を選択したかわかることから二重盲検試験は不可

能である。比較的症状の安定している慢性疾患ではない(骨折の治癒過程は時間に依存する要素

が大きい;時期効果)ことや、テリパラチドが骨形成を促す一方でビスフォスフォネートは骨吸

収を抑制し、この相反する効果のために使用する順番によって骨に与える影響が異なる(先にテ

リパラチドを使用することが有利に働く可能性が高い;順序効果と持越し効果)ためにクロスオ

ーバー試験のデザインはふさわしくない。また薬剤の投与量や投与回数の変更は厚生省の認可し

た治療と異なる事になり漸増法試験や用量反応試験は不可能である。また相加・相乗効果がある

二剤ではないため上乗せ試験も不可能である(却って効果を打ち消しあう可能性が高い)。我々は

本研究の試験デザインを被検薬群と対照薬群の割り当てを無作為化した一重のランダム化実薬対

照試験とした。

サンプルサイズの計算は、後ろ向き研究での骨癒合率を用いテリパラチド 89%、ビスフ

ォスフォネート製剤 68%であった。テリパラチドの投与形態は皮下注射であること、費用負担が

大きいことを考慮すると、ビスフォスフォネート製剤に対して非劣勢を示すものではなく優性で

あることを示す必要がある。検出力を 0.80と計算すると片側 37例(両側 74例)となる。目標登

録症例数を 100例に定めて平成 24年 4月 1日から試験を開始した。

以下にテリパラチドとビスフォスフォネート製剤の前向き無作為化実薬対照比較試験を

行うにあたり作成した資料を示す。本研究は平成 27年 10月現在 70例の登録であり、目標症例

数 100例に達したら解析に入る予定である。

以下に作成したプロトコールと患者説明書および同意書を添付する。

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PTH製剤の骨形成促進作用が

骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合におよぼす影響

研究実施計画書

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1.研究目的

テリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤)は、骨形成促進作用を持つ骨粗鬆症治療薬として平

成 22年より日本で臨床応用が開始された薬剤であり、従来の骨吸収抑制系薬剤と比較して

強力な骨量増加作用が特徴である。動物実験ならびに臨床報告においてテリパラチドが骨癒

合過程を促進させることが示されている。本研究の目的は、テリパラチドが骨粗鬆症性椎体骨

折の骨癒合過程におよぼす影響を調査することである。

2.目標登録症例数・調査予定期間・登録予定期間

(1)目標登録症例数:100例

(2)調査予定期間:平成24年4月1日~平成26年9月31日

(3)登録予定期間;平成24年4月1日~平成26年9月31日

3.調査対象

(1)対象症例

→骨粗鬆症治療が必要な症例

腰椎あるいは大腿骨頚部でYAM70%未満、閉経後の女性でYAM80%未満、脆弱性既存

骨折のある症例(2006年骨粗鬆症ガイドラインより)

→第11,12胸椎および第1,2,3腰椎の範囲の圧迫骨折で1椎体の新規骨折に限る。

→受傷日が明確で1カ月以内に受診された方に限る。

(2)除外症例

受診前よりビスフォスフォネート・SERM・テリパラチドにより加療中の方

85歳以上

MRI撮影できない方

転移性・原発性脊椎腫瘍のある方

1週間以内にビスフォスフォネートの内服を開始できなかった方

テリパラチドを注射できない方

過去6ヵ月以内に脊椎以外の骨折や骨関節手術(人工関節手術、脊椎手術)を受けている方

高度骨粗鬆症例

(YAM50%未満、高度の骨粗鬆症性圧迫骨折により画像評価が困難な場合)

4.調査の方法

(1)試験デザイン

前向きランダム化比較試験

(2)調査実施手順

①上記の対象基準を満たす患者に研究内容の説明を行い、同意が得られた方に対し

調査を行う

②初診時に診療外の職員がテリパラチド投与とビスフォスフォネート投与に振り分

ける。

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③テリパラチド群では初診日からテリパラチド(フォルテオ®20μg/日)の自己注射

を開始する。ビスフォスフォネート群では座位が可能な段階でビスフォスフォネー

トの内服を開始する。テリパラチドとビスフォスフォネートの投与期間は6カ月間

とする。

③当院外来にて調査を行う。

④受傷後半年間を調査期間とする。

5.調査を行う事項等

(1)画像(X線、MRI, CT)による評価

①骨癒合の有無と骨癒合に要した期間

②移植骨吸収の有無

③インプラントの転位、沈下の有無

④新規骨折の有無

(2)骨代謝マーカーの推移

(3)骨密度の推移

(4)腰痛評価

6. 評価方法

(1) 単純胸腰椎移行部X線(2方向-正面、立位もしくは座位側面中間位・前屈位・後屈

位、仰臥位側面)による評価

以下の項目につき評価を行う

① 中間位で対象椎体の椎体高、 楔状角、後弯角

② 偽関節の有無

③ 新規骨折の有無

撮影時期:初診時、2週間、6週間、12週間、18週間、24週間

(2) 全脊柱X線(正面、側面)による評価

以下の項目につき評価を行う

① C7 plumb line, Pelvic incidence, Pelvic tilt, Sacral slope

撮影時期:初診時、2週間、6週間、12週間、18週間、24週間

(3)CT(3方向-axial,sagittal,coronal)による評価

以下の項目につき評価を行う

① 骨梁の連続性の有無の評価

② 骨密度評価

③ 新規骨折の有無

④ DICOM dataで後の解析に使用できるようにもっとも0.5mmスライス、0.2mm出力,

軟部条件・骨条件で保存(CDR等に)

撮影時期-初診時、12週、24週

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(3) MRI(T1, T2, STIR, sagittalのみ)による評価

以下の項目につき評価を行う

① 椎体の等信号化

② 新規骨折の有無

③ 椎体圧潰への移行

撮影時期-初診時、12週、24週

(4) 骨代謝マーカーによる評価

以下の項目につき評価を行う

① 骨型 ALP

② TRACP5b

採血時期-初診時、2週、6週、12週、24週

外注する。血清 Ca、P、Albuminの経時的変化は適宜監視する。

(6)DEXAによる骨密度の評価

大腿骨による測定

検査時期-初診時、6カ月

(7)腰痛評価

VAS

評価時期-初診時、2週、6週、12週、18週、24週

(8)腰痛機能評価

以下の項目につき評価を行う

① Roland-Morris Questionnaire (RDQ)

② Oswestry Disability Index (ODI)2.0

評価時期-初診時、2週、6週、12週、18週、24週

7.医療費負担

入院、外来診療費、骨粗鬆症治療に通常行う保険診療による費用は患者負担とし、保険

外診療による検査は研究費で行う

8.費用負担

なし

9.予期される効果および不利益

骨粗鬆症治療に関しては、確立された治療法であり、治療効果も確証されている。受傷

後の経過で生じる合併症に対しては、保険診療にて適切に対処する。

10.連絡先

社会福祉法人函館厚生院 函館中央病院

函館市本町33番2号 TEL O138-52-1231/FAX O138-54-7520

研究分担医師:函館中央病院 脊椎センター長 金山 雅弘

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研究分担医師:函館中央病院 診療部長 重信 恵一

研究分担医師:函館中央病院 整形外科科長 大羽 文博

研究分担医師:函館中央病院 病院長 橋本 友幸

北海道大学病院

札幌市北区北15条西7丁目 TEL O11-706-5936/FAX

研究分担医師:北海道大学病院 整形外科 岩田 玲

研究分担医師:北海道大学病院 整形外科 高畑 雅彦

研究分担医師:北海道大学病院 整形外科 三浪 明男

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函館中央病院

『PTH製剤の骨形成促進作用が

骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合におよぼす影響』

について

説明文書および同意文書

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1. はじめに

この冊子は、当院にて骨粗鬆症を背景とした骨粗鬆症性椎体骨折の治療を受ける方に、当

院で行う研究について説明し、研究へ参加していただけるかどうかをおたずねするためのも

のです。 研究を担当する医師である私が、この研究について説明いたしますが、ご自身で

もこの説明文書をよくお読みになり、分らないことやもっと詳しく聞いておきたいこと、ま

た、何か不安や心配なことがあればいつでも遠慮なく質問してください。研究の内容につい

て十分ご理解いただいた後、この研究に参加したいかどうかをおたずねします。ここで説明

された内容をご自身でゆっくりとお考えいただき、また、ご自身で決めかねる場合には、ご

家族の方や友人、知人と相談してから決めていただいてかまいません。この研究に参加する

かどうかは自由です。研究に参加した後でもいつでも自由に止めることができます。また、

参加を断っても、そのために不利益を受けることは一切ありません。もし、この研究に参加

していただけるならば、それを口頭で私に伝えるだけでなく、同意書に署名し、文書の形で

はっきりと意思を示していただくことになります。

2.研究内容について

1)研究目的

骨粗鬆症の患者さんは骨折が起こりやすく、しっかりとした骨が出来上がる(骨癒合と

いいます)までに長い時間を必要としたり、さらに脊椎が崩れてくる椎体圧潰に至る場合

や、しばしば骨癒合が起こらない“偽関節”と呼ばれる状態、になることがあります。

これらが生じると強い腰背部痛が持続したり、圧潰した骨が神経の通り道である脊柱管

内に入り込んで神経の障害(脚の痛みや動かしづらくなる症状、また尿を出しづらくなる

症状)が出現することもあります。それをできるかぎり防ぐためには、骨粗鬆症の状態を

改善させることが有用と考えられています。

骨はいつも体重を支えるように作りかえられて、骨がとかされて、また骨を作ること

を繰り返しておりますがご年齢とともに少しずつ骨の量が減っていきます。いままでは

骨が溶かされていくのを抑える効果の高い、ビスフォスフォネート製剤という薬を内服

していただいておりました。

欧米では10年前からですが日本では平成22年からテリパラチドというお薬が使えるよ

うになりました。これは注射を毎日おこなって骨を増やすようにしていくお薬です。テ

リパラチドは副甲状腺ホルモンという、骨に作用するホルモンの成分を科学的に合成し

た薬剤です。この薬剤は骨を作る骨芽細胞に働きかけて新しい骨を作ることで骨粗鬆症

を改善し、また、骨癒合が早くなることが期待されています。

本研究の目的は、従来用いられてきた治療効果の高いビスフォスフォネート製剤に比

較してテリパラチドが骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合過程にどれほど有効であるかを調査

することにあります。

予定している研究期間は受傷後6カ月間で、当院において合計100名の方の調査を行う

予定です。

2)研究の方法

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この研究の対象となる方は、以下の①~②の基準を満たしている必要があります。な

お、以下の基準内容については、私から詳しく説明します。

①ご本人が説明文書の内容を理解した上で、同意文書に日付を記載し、記名捺印または

署名する能力のある方。

②骨粗鬆症治療が必要な方

→腰椎あるいは大腿骨頚部の骨密度が成人男性平均値の70%未満の方

→閉経後の女性で成人男性平均値の80%未満の方

→脆弱性既存骨折のある方(2006年骨粗鬆症ガイドラインより)。

③圧迫骨折の受傷時期がはっきりとしている方

3)骨粗鬆症治療薬の使用

初診時にビスフォスフォネート製剤を使用するかテリパラチドを使用するかくじ引きを

用いて決定いたします。

ビスフォスフォネート製剤を飲む場合には、毎日起床後すぐにコップ1杯の水で飲みま

す。飲んだ後、30分間は飲水、食事をしないまま臥床せずに過ごしてください。このため

体を起こせるようになってから投薬を開始することになります。一緒に飲むものを水以外

にすると薬の吸収が悪くなり効果がでないで注意をしてください。

テリパラチド剤であるフォルテオ®(商品名)の使用を行う場合には、投与方法は自己

注射です。この投与方法は糖尿病などで一般的に用いられている方法で、下の図のような

ペン型の簡便な注射器を使って一日一回自分で腹部に注射します。注射液はすでにキット

の中に入っていますので、薬液を詰め替えたりする必要はありません。投与期間は6ヶ月

です。

予定の投与期間が終わった後は、他の骨粗鬆症薬に切り替えて受傷後1年まで内服を続

けます。この薬剤も同様に骨粗鬆症に対して効果があることが報告されています。

4)受傷後検査

あなたに受けていただく検査は、圧迫骨折を受傷された後の経過を確認するために受け

る画像検査と、治療効果を判定するために受ける血液検査です。

3.医療費の負担について

特にありません。

4.予期される効果および不利益

骨粗鬆症治療に関しては、確立された治療法であり、治療効果も認められております。も

し治療中に何か不利益なことが生じた場合は、保険診療にて適切に対処いたします。

5.あなたの人権保護について

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この研究は、当院が定めた規則に従って行われ、人権の尊重と保護について厳しく審査さ

れています。あなたがこの研究への参加に同意され、同意書にご署名された後でも、同意を

取り消し、研究参加を止めることができますので、私まで申し出てください。この研究によ

って得られたあなたの情報(画像、検査結果など)は、研究依頼者に報告されます。また、

取りまとめられた成績は、学会発表や医学論文として公表されることもあります。さらに、

研究依頼者または、当院の治験委員えつらん会が、調査の目的であなたの診療録などを見る

(閲覧)ことがあります。しかし、いずれの場合でもあなたのプライバシーの保護について

は十分に配慮し、特にあなたのお名前や住所電話番号などは決して公表されることはありま

せんのでご安心ください。

なお、あなたがこの同意書にご署名されますと、診療録などの閲覧をお認めいただいたこ

とになります。

6. 連絡先

この研究について何か聞きたいことや分らないこと、心配なことがありま

したら、遠慮なくお申し出ください。いつでもご相談させていただきます。

社会福祉法人函館厚生院 函館中央病院

函館市本町33番2号 TEL O138-52-1231/FAX O138-54-7520

研究責任医師:函館中央病院 脊椎センター長 金山 雅弘

研究分担医師:函館中央病院 診療部長 重信 恵一

研究分担医師:函館中央病院 整形外科 岩田 玲

研究分担医師:函館中央病院 病院長 橋本 友幸

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(研究責任医師控え)

同 意 書

私は、この研究に参加するにあたり、担当医師から『PTH製剤の骨形成促進作用が骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合におよぼ

す影響』の説明書を受け取り、その内容について説明を受けました。この研究の内容を十分に理解しましたので、今回の研

究に参加することについて私の自由意思により同意いたします。

同意日: 平成 年 月 日

ご本人 氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

【代諾者または立会人がいる場合】

同意日: 平成 年 月 日

氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

(ご本人との関係: )

説明日: 平成 年 月 日

研究責任(分担)医師 (自筆署名)

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(治験事務局控え)

同 意 書

私は、この研究に参加するにあたり、担当医師から『PTH製剤の骨形成促進作用が骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合におよぼ

す影響』の説明書を受け取り、その内容について説明を受けました。この研究の内容を十分に理解しましたの

で、今回の研究に参加することについて私の自由意思により同意いたします。

同意日: 平成 年 月 日

ご本人 氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

【代諾者または立会人がいる場合】

同意日: 平成 年 月 日

氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

(ご本人との関係: )

説明日: 平成 年 月 日

研究責任(分担)医師 (自筆署名)

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(本人控え)

同 意 書

私は、この研究に参加するにあたり、担当医師から『PTH製剤の骨形成促進作用が骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合におよぼ

す影響』の説明書を受け取り、その内容について説明を受けました。この研究の内容を十分に理解しましたの

で、今回の研究に参加することについて私の自由意思により同意いたします。

同意日: 平成 年 月 日

ご本人 氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

【代諾者または立会人がいる場合】

同意日: 平成 年 月 日

氏名 (自筆署名)

住所

連絡先(電話番号)

(ご本人との関係: )

説明日: 平成 年 月 日

研究責任(分担)医師 (自筆署名)

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研 究 全 体 の 考 察

椎体骨折の保存治療体系を考慮するときに、我々が行う主たる選択は薬剤の選択である

が、本研究は現在の骨粗鬆症治療の第 1 選択薬であるビスフォスフォネート製剤を基準とした治

療体系を検討したものである。テリパラチド(1-34リコンビナント副甲状腺ホルモン)は骨癒合に

優位に働くが、その投与経路と経費を考慮するとすべての症例に用いることは避けるべきである

と思われ、ビスフォスフォネート製剤を基準の投薬として、骨癒合を阻害する因子、そして経過

中に偽関節になる経過を辿る場合に適宜テリパラチドを選択することを考慮している。

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折において、テリパラチドがビスフォスフォネート製剤に対して

有効な薬剤であるのかを検討したのが第一章である。間欠投与で骨芽細胞の分化増殖を促し 21,22、

骨芽細胞のアポトーシスを抑制し 23、骨芽細胞の活性を増加させ 21,22、骨形成の増加を促して骨折

の発生を抑制する 8,22 ことにより骨折の治癒を促進することが期待される。脊椎椎体骨折以外の

ランダム化試験の研究 16,17 や偽関節例を治癒させた症例報告 24,25 から骨癒合に有利であることは

十分推測できる。しかし脊柱は荷重を避けることができず、捻じれ、軸圧、屈曲力が頻回に加わ

る部分で、四肢の骨折のようには安静にはできない。同部位でのテリパラチドを使用した場合に

どれほど治療効果が得られるかはまだ不明である。第一章ではテリパラチドはビスフォスフォネ

ート製剤に比較して骨癒合を有意に早めて、受傷後半年の骨癒合率を上昇させたことが示され、

骨癒合が得られないために手術加療を要した症例がいなかった。しかし骨折椎体の変形の程度は

ビスフォスフォネート製剤と差を認めなかった。これは椎体の変形が受傷後数週間から数か月で

生じ 26 27、薬剤の効果が十分発揮される前であるからと推測される。しかし椎体が高度に変形し

た状態であっても、骨癒合を有意に改善した。これは激しい背部痛の持続や神経障害を呈する椎

体圧潰といった手術加療を要する状態になることを防ぐという観点から非常に大事な点である。

第一章で明らかとなった骨癒合を阻害する因子は胸腰椎移行部の椎体骨折、腰椎骨密度

が-2.5SD未満であること、椎体の後壁骨折がある場合、受傷時にビスフォスフォネート製剤を使

用している場合であった。第二章では、骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合に及ぼす因子の検討の

一つとして、第一章での多変量解析から求められた骨癒合を阻害する因子以外に、脊柱骨盤配列

が骨癒合を阻害する因子になりえるかについて検討をした。脊柱の荷重は前方傾斜で増加するこ

とがすでに報告されている 35-37.実験では椎体前方に非対称の荷重が新規椎体骨折の発生を促し 41、

胸腰椎移行部の前方凸の楔状椎体の形態をとるようになる 42 ことが報告されている。臨床では、

椎体骨折の発生が脊柱配列と関連があると報告され、異常な脊柱配列が椎体骨折の発生を予測す

る因子であると報告され 40、椎体骨折を発症した患者では大きな胸椎後弯角を呈していることが

多く、大きな胸椎後弯角が独立した新規椎体骨折の予測する因子であるとされている 38,39。また

動的因子の関与として、脊柱が前方傾斜している患者はバランスを取るのが難しく、バランスを

取るのに大きく揺れてしまう 43。本研究では DSVAというパラメーターを導入した。これは第 7頸

椎の鉛直線と骨折椎体中心からの水平距離であり、骨折椎体に加わる屈曲モーメントの大きさに

関して骨折部までの距離に比例しやすい値となる。骨癒合が得られなかった群で DSVAは有意に大

きく、DSVA>5cmは他の骨癒合を阻害する因子と多変量解析を行っても骨癒合を阻害する有意な因

子であることが示された。

第一章では骨粗鬆症性椎体骨折にもテリパラチドはビスフォスフォネート製剤に比較し

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て有用であることが示されたが、テリパラチドは皮下注射であること、費用負担が大きいため、

ビスフォスフォネート製剤を用いても骨癒合が得られない場合に使用を考慮したい。第三章では、

ビスフォスフォネート製剤を用いて骨粗鬆症性脊椎椎体骨折を治療した場合に骨癒合を予測する

因子として骨代謝マーカーを用いることができるか検討をした研究である。骨癒合をする場合と

骨癒合しない場合の骨代謝マーカーの変動が異なり、特に TRAP5bではその差が顕著でビスフォス

フォネート製剤導入後 1 か月ですでに大きな差が確認できた。ビスフォスフォネート製剤導入前

を基準値とし、投与後 1 か月の TRAP5b の減少が 16%以上減少しないものは感度 89.5%,特異度

87.5%(area under the curve=0.914)で偽関節になることが計算された。骨代謝マーカーは全身の

骨代謝にマスクされて骨癒合過程では骨癒合の推移に相関しなくなる 62 が、椎体骨折では、椎体

骨折後 2 週から 4 週で骨代謝マーカーにピークがあることが示されている 63。本研究ではアレン

ドロネートを導入することによって、全身の骨代謝マーカーを抑えることにより骨折後に短期間

に生じる骨代謝マーカーの反応を顕在化させた。骨癒合しない場合には椎体の形態変化が継続(微

小な椎体骨折が断続)し椎体圧潰に至り骨癒合を得ることが難しくなっているが、この微小な骨折

の繰り返しが骨代謝マーカーを継続して上昇させていると考えられた。

第四章は、テリパラチドのビスフォスフォネート製剤に対する脊椎椎体骨折の治療効果

の高さを検討する無作為化前向き比較試験についてである。薬剤の効果を正確に把握するには後

ろ向き比較試験では十分比較検討できない要素がある。テリパラチドの投与方法の侵襲性および

薬価、テリパラチドとビスフォスフォネート製剤には相加・相乗効果が期待できないこと、椎体

骨折が時間依存性の疾患であること等を加味して本研究の試験デザインを被検薬群(テリパラチ

ド)と対照薬群(ビスフォスフォネート製剤)の割り当てを無作為化した一重のランダム化実薬対

照試験とした。本研究は平成 27 年 10 月現在 70 例登録された。サンプルサイズの計算では 74 例

必要であるが、目標症例数 100 例に達したら解析に入る予定である。また後ろ向き研究の際に検

討できなかった項目として疼痛の程度の把握、MRIを用いた癒合過程の評価、骨密度の推移を含め

て評価をしている。

受傷時にすでに神経障害を呈している骨粗鬆症性脊椎椎体骨折への保存治療には限界が

ある。しかし受傷時に神経障害を呈していない骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対して手術を要する状

態にならないように適切な保存治療を行うことが大事である。患者背景を考慮し予め薬剤の選択

を定めること、治療の経過観察中に偽関節になる特徴を見極め骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の治療方

針を再検討すること、そして保存治療で治せない限界を知り適宜手術加療を遅滞なく導入するこ

とが理想的であると考える。この答えを出せるように引き続き骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対して

研究を継続していきたい。

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総括および結論

我々は骨粗鬆症治療薬テリパラチドの骨形成促進作用が骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合に

有利に作用するか、骨粗鬆症治療薬の第 1選択となるビスフォスフォネート製剤と比較して

検討した。

テリパラチドはビスフォスフォネート製剤に比較して骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合を早

期に促し、受傷後半年後の骨癒合率を有意に高めた。

骨折椎体の変形の程度はテリパラチドを使用した場合とビスフォスフォネート製剤を使用し

た場合とに差を認めなかった。しかし椎体の変形が大きい場合であってもテリパラチドの骨

癒合は有意に高かった。

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折を阻害する因子として骨折高位が胸腰椎移行部であること、腰椎が

低骨密度であること、椎体の後壁骨折があること、受傷時にビスフォスフォネート製剤を使

用していることが挙げられた。

胸腰椎移行部の骨粗鬆症性脊椎椎体骨折の骨癒合阻害因子を、脊柱骨盤配列に注目して検討

した。

第 7頸椎椎体中央からの鉛直線から骨折椎体中央までの距離を DSVAと定義し、DSVAが大き

い程骨癒合が獲得できないことを示した。DSVA>5cmは他の因子と比較しても有意な骨癒合

を阻害する因子であった。

骨粗鬆症治療の第一選択薬であるビスフォスフォネート製剤を骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に導

入した場合に、骨癒合が得られる場合と骨癒合が得られない場合に分けて骨代謝マーカーを

調査した。そして骨代謝マーカーの比較的早期の推移が脊椎椎体骨折の骨癒合を予測ができ

る検討した。

骨代謝マーカーの変動は、骨癒合した場合には速やかに低下したが非骨癒合群では骨代謝マ

ーカーの低下が遅れた。特に酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP5b)で顕著であった。

骨吸収マーカーの酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP5b)がビスフォスフォネート製剤を

投与後 1か月経過しても 16%以上抑制されない場合には感度 89.5%,特異度 87.5%で骨癒合

が得られないことを示した。

ビスフォスフォネート製剤を投与後に骨代謝マーカーが低下しない場合には椎体圧潰が生じ

ていると考えられ,偽関節に至らないように治療方法を再検討するべきであると考える。

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テリパラチドの骨粗鬆症性脊椎椎体骨折に対する効果をより正確に判定するために、我々は

対照群にビスフォスフォネート製剤を用いた前向き無作為化実薬対照試験の試験デザインを

作成し、目標登録症例数を 100例に定めて平成 24年 4月 1日から試験を開始している。

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謝辞

本論文は北海道大学大学院医学研究科 医学専攻 機能再生医学講座 整形外科学分野

博士課程 臨床医学コースの在学中に行った研究内容です。

本研究に関して函館中央病院に於いて研究をさせていただきました北海道大学整形外科

学分野教授 岩崎倫政先生、函館中央病院院長・北海道大学客員教授 橋本友幸先生に心より感

謝いたします。

本研究を行うにあたり、研究を主導し細部にわたりご指導を賜りました函館中央病院脊

椎センター長・北海道大学客員准教授 金山雅弘先生に深い感謝の意を表します。

これまでの研究課程において北海道大学整形外科の諸先生方、函館中央病院の病院スタ

ッフの皆様に心より感謝を申し上げます。

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