東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現 … and...- 3 - 東 115 図1....

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- 1 - 東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現状と国内 の養豚防疫対策 末吉益雄 宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター防疫戦略部門 はじめに 世界には約10億頭の豚が飼養されている。その多くがア ジアに集中しており、中国に約5億頭、ベトナムに3千万頭、 さらにインド、フィリピン、韓国と日本を加えた豚の飼養頭数 6カ国合計で約6億頭となり、世界の約60%を占めている。 国内の豚の飼養状況として、飼養戸数は約100万戸(1962) であったものが、約4,700(2017)と、200分の1に減少した。 一方、飼養頭数は約260万頭(1962)であったのが、約940 万頭(2017)と、4倍弱に増加した。1戸当たりの飼養頭数は 平均約2.6(1962)から約2,000(2017)と約800倍にな った。庭先養豚の家業から大規模養豚の産業として規模拡 大し、発展した。20188月に中国にアフリカ豚コレラが侵入 し、発生拡大していることで、生産と需要のバランスが乱れ、 今後、豚肉の高騰化あるいは豚肉の国際流通が激変する可 能性がある。 東アジア諸国の豚疾病 1. 中国 1, 2) 高病原性オーエスキー病(HPAD) ウイルス株が流 行・拡大している。2011 年ではその陽性率は 7.70%あったのが 2016 年には 39.92%に上昇した。その伝 播・拡大の要因の一つとして豚流行性下痢(PED) 策としての強制馴致( 下痢便の給与) が指摘されてい る。既存の AD ワクチンは HPAD に対して完全には効 かないことから新型 AD ウイルスを使用したワクチンが 開発され、実験室内試験では良好な成績を示した、 と報告されている。とくに、繁殖養豚場での AD 清浄 化が必要であるとして対策がとられている。 豚コレラの陽性率は、2016 年の母豚の調査では 6.54%(155/2,369 )であり徐々に減少している、とし て、撲滅に向けて対策がとられている 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)はまん延しており、 従来株と高病原性株を使用したワクチンが使用され ている。しかし、生ワクチンの使用は諸刃の剣と捉えら れ、養豚場の PRRS の状態で考察する必要があると され、未発生農場、とくに繁殖農場ではワクチンを使 用せず、バイオセキュリティ対策の強化での対応が推 奨されている。 日本脳炎と豚パルボウイルス感染症はワクチンでコ ントロールされている。 下痢症として、2016 年の病原体検出率は、PED イルスが 67.85%と最高で、続いて、伝染性胃腸炎 (TGE) ウイルスが 9.18% 、豚ロタ (PoR) ウイルスが 2.23%、豚デルタコロナウイルスが 7.07%となっている。 PED の予防対策としては、新型株や変異株を含むワ クチン接種と強制馴致が実施されている。また、PED- TGE-PoR ウイルスの三価ワクチンも広く接種されてい る。大腸菌症とサルモネラ感染症も発生しているが、 それらは主要因ではなく、混合感染が多い。 呼吸器病の原因として、細菌では Haemophilus parasuis Streptococcus suis Actinobacillus pleuro- pneumoniaePasteurellaそして Bordetella bronchi- septica がある。ウイルスとして PRRS ウイルス、 豚イン フルエンザウイルス、 AD ウイルス、そして豚サーコウ イルス (PCV)2 がある。寄生虫として Toxoplasma gondii Eperythrozoon がある。 PRRS ウイルスと PCV2 の侵入後、二次的に細菌や寄生虫が感染し、 症状悪化し、大きな経済的損失となっている。 Streptococcus suis は人でも感染例があり、2 型、7 および 9 型が検出されている。 豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)については、5 種の PCV 株を使用した不活化ワクチンが広く接種さ れているが、サブユニットワクチンも臨床で応用され 始めた。また、1990 年から 1999 年の 29 州において 採取された 200 の豚組織検体について PCR 検査し た結果、1996 年と 1999 年の 13 検体から PCV3 が検 出された。PCV3 は分離されておらず、その病原性に ついては、未だ不明であり、今後の研究報告を注視 する必要がある。 口蹄疫は牛、豚、緬山羊で血清型 O 型と A 型が流 行し、経済的損害額はワクチネーション費を含めて年 2,664 億円と試算されている。 2. 韓国 3) 最近問題となったのが、野生イノシシで豚コレラが 検出されたことである。豚胸膜肺炎は 2008-2010 年に は、その発生は血清 2 型と 5 型のみであり、ワクチン 抗原も 2 型と 5 型を基本としていた。ところが、血清 1 型が増加し、2014 年には 94.7%を占めた。血清 1 が典型的な胸膜肺炎とは違って若齢豚にも重大な障 害を引き起こしている。 口蹄疫が 2017 2 5 日と 2 13 日に牛農場 で発生した。それは O 型と A 型の同時発生で珍しい 事例だった。計 9 農場 713 頭が摘発淘汰され、その 上、予防的に 12 農場 712 頭が殺処分された。分離ウ イルスの遺伝子解析で、 O/ME-SA/Ind2001d 型と A/Asia/Sea-97 型であることが判明し、韓国内で過去 に発生していたタイプとは異なっていた。侵入経路と 拡大経路は不明のままである。現在、牛では、O 型と A 型、豚では O 型のワクチン接種が継続されている。 この時は、豚農場では発生がなかった。その後 2018 3 月と 4 月に、豚で 13 ヶ月ぶりに 2 (A )が発 生した。 3. フィリピン 4) PRRS、豚コレラおよび PCVAD が年々増加し、AD とブルセラ病を加えて、豚の 5 大疾病である(1)2020 年までに豚コレラ、AD および PED の清浄化、 地域の豚病発生情報データベース作成、疾病制御 対策の強化に努めている。 4. タイ 口蹄疫が散発している(2)。流行血清型は O 33%A 型が 22%で、感染家畜は肉用牛が 40%乳用牛が 31%、豚が 27%、水牛が 2%である(2016 )タイは ASEAN の中心となって、OIE PVS Pathway に取り組み、The South East Asia and China Foot and

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Page 1: 東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現 … and...- 3 - 東 115 図1. フィリピンの5大豚疾病(2012-2016年) Acorda T. et al. 4) 図2. タイの口蹄疫発生経緯

- 1 -

東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現状と国内 1

の養豚防疫対策 2 3

末吉益雄 4

宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター防疫戦略部門 5 6

はじめに 7

世界には約10億頭の豚が飼養されている。その多くがア 8

ジアに集中しており、中国に約5億頭、ベトナムに3千万頭、 9

さらにインド、フィリピン、韓国と日本を加えた豚の飼養頭数 10

は6カ国合計で約6億頭となり、世界の約60%を占めている。 11

国内の豚の飼養状況として、飼養戸数は約100万戸(1962年) 12

であったものが、約4,700戸(2017年)と、200分の1に減少した。 13

一方、飼養頭数は約260万頭(1962年)であったのが、約940 14

万頭(2017年)と、4倍弱に増加した。1戸当たりの飼養頭数は 15

平均約2.6頭(1962年)から約2,000頭(2017年)と約800倍にな 16

った。庭先養豚の家業から大規模養豚の産業として規模拡 17

大し、発展した。2018年8月に中国にアフリカ豚コレラが侵入 18

し、発生拡大していることで、生産と需要のバランスが乱れ、 19

今後、豚肉の高騰化あるいは豚肉の国際流通が激変する可 20

能性がある。 21 22

東アジア諸国の豚疾病 23

1. 中国 1, 2) 24

高病原性オーエスキー病(HPAD)ウイルス株が流 25

行・拡大している。2011年ではその陽性率は7.70%で 26

あったのが 2016 年には 39.92%に上昇した。その伝 27

播・拡大の要因の一つとして豚流行性下痢(PED)対 28

策としての強制馴致(下痢便の給与)が指摘されてい 29

る。既存のADワクチンはHPADに対して完全には効 30

かないことから新型 ADウイルスを使用したワクチンが 31

開発され、実験室内試験では良好な成績を示した、 32

と報告されている。とくに、繁殖養豚場での AD 清浄 33

化が必要であるとして対策がとられている。 34

豚コレラの陽性率は、2016 年の母豚の調査では 35

6.54%(155/2,369 頭)であり徐々に減少している、とし 36

て、撲滅に向けて対策がとられている 37

豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)はまん延しており、 38

従来株と高病原性株を使用したワクチンが使用され 39

ている。しかし、生ワクチンの使用は諸刃の剣と捉えら 40

れ、養豚場の PRRS の状態で考察する必要があると 41

され、未発生農場、とくに繁殖農場ではワクチンを使 42

用せず、バイオセキュリティ対策の強化での対応が推 43

奨されている。 44

日本脳炎と豚パルボウイルス感染症はワクチンでコ 45

ントロールされている。 46

下痢症として、2016 年の病原体検出率は、PED ウ 47

イルスが 67.85%と最高で、続いて、伝染性胃腸炎 48

(TGE)ウイルスが 9.18%、豚ロタ (PoR)ウイルスが 49

2.23%、豚デルタコロナウイルスが 7.07%となっている。 50

PED の予防対策としては、新型株や変異株を含むワ 51

クチン接種と強制馴致が実施されている。また、PED- 52

TGE-PoR ウイルスの三価ワクチンも広く接種されてい 53

る。大腸菌症とサルモネラ感染症も発生しているが、 54

それらは主要因ではなく、混合感染が多い。 55

呼吸器病の原因として、細菌では Haemophilus 56

parasuis、Streptococcus suis、Actinobacillus pleuro- 57

pneumoniae、Pasteurella、そして Bordetella bronchi- 58

septicaがある。ウイルスとして PRRSウイルス、 豚イン 59

フルエンザウイルス、 AD ウイルス、そして豚サーコウ 60

イルス (PCV)2 がある。寄生虫として Toxoplasma 61

gondii や Eperythrozoon がある。PRRS ウイルスと 62

PCV2 の侵入後、二次的に細菌や寄生虫が感染し、 63

症状悪化し、大きな経済的損失となっている。 64

Streptococcus suis は人でも感染例があり、2 型、7 型 65

および 9型が検出されている。 66

豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)については、5 67

種の PCV 株を使用した不活化ワクチンが広く接種さ 68

れているが、サブユニットワクチンも臨床で応用され 69

始めた。また、1990 年から 1999 年の 29 州において 70

採取された 200 の豚組織検体について PCR 検査し 71

た結果、1996年と 1999年の 13検体から PCV3が検 72

出された。PCV3 は分離されておらず、その病原性に 73

ついては、未だ不明であり、今後の研究報告を注視 74

する必要がある。 75

口蹄疫は牛、豚、緬山羊で血清型O型とA型が流 76

行し、経済的損害額はワクチネーション費を含めて年 77

間 2,664億円と試算されている。 78 79 2. 韓国 3) 80

最近問題となったのが、野生イノシシで豚コレラが 81

検出されたことである。豚胸膜肺炎は 2008-2010年に 82

は、その発生は血清 2 型と 5 型のみであり、ワクチン 83

抗原も 2 型と 5 型を基本としていた。ところが、血清 1 84

型が増加し、2014 年には 94.7%を占めた。血清 1 型 85

が典型的な胸膜肺炎とは違って若齢豚にも重大な障 86

害を引き起こしている。 87

口蹄疫が 2017 年 2 月 5 日と 2 月 13 日に牛農場 88

で発生した。それは O 型と A 型の同時発生で珍しい 89

事例だった。計 9 農場 713 頭が摘発淘汰され、その 90

上、予防的に 12農場 712頭が殺処分された。分離ウ 91

イルスの遺伝子解析で、O/ME-SA/Ind2001d 型と 92

A/Asia/Sea-97 型であることが判明し、韓国内で過去 93

に発生していたタイプとは異なっていた。侵入経路と 94

拡大経路は不明のままである。現在、牛では、O 型と 95

A型、豚では O型のワクチン接種が継続されている。 96

この時は、豚農場では発生がなかった。その後 2018 97

年 3 月と 4 月に、豚で 13 ヶ月ぶりに 2 件(A 型)が発 98

生した。 99 100

3. フィリピン 4) 101

PRRS、豚コレラおよび PCVAD が年々増加し、AD 102

とブルセラ病を加えて、豚の 5 大疾病である(図 1)。 103

2020 年までに豚コレラ、AD および PED の清浄化、 104

地域の豚病発生情報データベース作成、疾病制御 105

対策の強化に努めている。 106 107

4. タイ 108

口蹄疫が散発している(図 2)。流行血清型は O 型 109

が 33%、A 型が 22%で、感染家畜は肉用牛が 40%、 110

乳用牛が 31%、豚が 27%、水牛が 2%である(2016年)。 111

タイは ASEANの中心となって、OIEの PVS Pathway 112

に取り組み、The South East Asia and China Foot and 113

図 1

図 2

Page 2: 東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現 … and...- 3 - 東 115 図1. フィリピンの5大豚疾病(2012-2016年) Acorda T. et al. 4) 図2. タイの口蹄疫発生経緯

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Mouth Diseases (SEACFMD) Campaign 2020 として、 114

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東 115

図 1. フィリピンの5大豚疾病(2012-2016年) Acorda T. et al. 4)

図 2. タイの口蹄疫発生経緯

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40

Jan Mar May Jul Sep Nov

2015 2016

Page 4: 東アジア諸国の豚疾病およびアフリカ豚コレラの現 … and...- 3 - 東 115 図1. フィリピンの5大豚疾病(2012-2016年) Acorda T. et al. 4) 図2. タイの口蹄疫発生経緯

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南アジア諸国、中国(その後モンゴル追加)と協力して、 116

2020年までにワクチン接種清浄国 OIE申請を目指し 117

ている。SEACFMD とは、その対策の一つとして、口 118

蹄疫フリーゾーン対策を実施しており、着実に成果を 119

上げ、東部地区がウイルス循環・侵入阻止を維持して 120

いるとして、ワクチン接種清浄地区として、2016 年に 121

OIE に承認された(図 3)。その口蹄疫フリーゾーン対 122

策地区の経済的効果として、利益から各種防疫対策 123

費を減じて、約 30億円の純利益があった。 124

一方で、One health の概念から薬剤耐性(AMR)に 125

ついて取り組んでいる 5)。2016年、タイは国家アクショ 126

ン計画として、2020 年までに産業動物領域において 127

抗生物質使用量を最低 30%低下させることを目標に 128

定めた。極めて重要な抗生物質であるコリスチン、セ 129

ファロスポリン、ベータ-ラクタム、フルオロキノロンおよ 130

びホスホマイシンについては治療にのみ使用する。 131

オランダの AMR 対策成功例を参考に積極的に取り 132

組んでいく。そのために、バイオセキュリティの強化、 133

プロバイオティクスやタイのハーブなどについても検 134

討を推進させる。 135 136

5. ベトナム 6) 137

口蹄疫が 2016 年に 12 行政区で 60 件発生し、 138

2,746頭の家畜が感染し、40頭(豚は 23頭)が殺処分 139

された。口蹄疫ワクチンの 47 万ドーズと豚コレラワク 140

チンの 45万ドーズが政府によって農場に無償で提供 141

された。豚ではO型が、牛では A型が流行している。 142

PCV2 は豚離乳後多臓器性発育不良症候群 143

(PMWS)豚の 38%(南部)、89%(北部)で検出された。 144

PED ウイルスは下痢の主原因で、南部では下痢症の 145

約 30%から検出されている。動物衛生法が 2016年 7 146

月 1 日から整備された。農務地方開発省は、抗生物 147

質の販売を制限し、成長促進目的の抗生物質の飼 148

料添加を段階的に取りやめる。 149 150

6. 台湾 7) 151

2 大豚疾病は口蹄疫と豚コレラであり、強制ワクチ 152

ン接種措置が執られ、撲滅を目指している。口蹄疫 153

は台湾本島では2013年から発生しておらず、2015年 154

以降、金門島でも発生がない。現在、農場と輸送トラ 155

ックのバイオセキュリティの改善とワクチン予防接種に 156

よって良好に制御されている。PED は、現在、最も損 157

害の大きな疾病である。2014 年に侵入し、特に分娩 158

舎に侵入したことで、新生子豚の甚大な被害が出て、 159

今なお、一部の養豚場で、被害が続いている。その 160

他、育成豚の損害が大きいものとして、離乳後呼吸器 161

症候群の原因となっている PRRS、PCV2、AD、豚イ 162

ンフルエンザ、マイコプラズマ病や大腸菌、サルモネ 163

ラ、レンサ球菌との混合感染が問題となっている。 164 165

アフリカ豚コレラ 166

1. アフリカ豚コレラの現状 167

原因はアスファウイルス科アスフィウイルス属アフリ 168

カ豚コレラウイルスである。ウイルスはエンベロープを 169

持ち、消毒液に対して比較的弱いが、死亡イノシシの 170

体中、感染豚の加工肉製品内などで、長く生存する。 171

感染豚には本ウイルスに対する中和抗体が産生され 172

ないため、本病に対する有効なワクチンは未だない。 173

本病はアフリカ豚コレラウイルスが豚やイノシシに 174

感染する伝染病であり、豚コレラと極めて似ており、発 175

熱や出血性病変等、高い致死率を特徴とする。本病 176

は、ダニの媒介、感染畜等との直接的・間接的な接 177

Target area Current

PCP

stage

PCP stage

goal

Year goal

FMD zone 2 (東部) 4 4 (OIE 承認) 2016

FMD zone 4 (南部) 3 5 2019

FMD zone 3 (北東) 3 4 2020

FMD zone 1 (中央, 北西) 3 4 2022

Thailand (全域) 3 4 2023

図 3. 口蹄疫フリーゾーン対策

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触により感染が拡大する。本ウイルスは豚やイノシシ 178

に感染し、致死性となるが、イボイノシシやカワイノシ 179

シなどに感染しても無症状で長期間持続感染する。 180

また、ペッカリーには感染しない。 181

本病は、2018 年 9 月 13 日現在、アフリカで 29 ヶ 182

国、ヨーロッパ・アジアで 18 ヶ国の計 47 ヶ国で発生し 183

ている。本ウイルスは、アフリカにおいてイボイノシシ 184

などとダニに不顕性感染していた。1950 年代後半か 185

ら、ヨーロッパ、中南米の国々で本病の豚での発生が 186

あり、養豚業に多大な被害をもたらした。船舶内から 187

出た本ウイルスの汚染した食料生ゴミ残渣を介して、 188

2007 年、ジョージアに侵入した。それ以降、本病は拡 189

大し、過去 10年間にアゼルバイジャン、ロシア、ウクラ 190

イナ、ポーランドなど東欧全土に広がり、家畜および 191

野豚に感染し、バルト諸国に拡大した。幸運なことに、 192

未だにダニが関与しているとの報告はない。 193

2018年 8月、本病はついに、世界の半数の約 5億 194

頭の豚を飼養している中国に侵入・拡大し、11 月 25 195

日現在で、その発生地域は 4直轄市 15省 1区 91か 196

所(81 農場、3 施設、6 村、野生イノシシ 1 か所)に拡 197

大した。中国株 SY18 株はⅡ型で、その p72 遺伝子 198

はGeorgea2007、Krasnodar2012、Irkutsk2017と100% 199

同じとされた。その発生のほとんどが小規模養豚であ 200

る(表 1)。飼養規模の割合は、飼養頭数 99 頭以下 201

(29%), 100-999 頭(58%), 1000 頭以上(17%)である 202

(2018.8.3~11.20)。アフリカ豚コレラ発生の約 80%が 203

庭先養豚であることが報告されており、家畜豚群への 204

アフリカ豚コレラウイルス侵入の主な要因は低い農場 205

バイオセキュリティであるとされている。また、それらの 206

多くが感染豚の不法取引と無秩序な動きに関連して 207

いるとされている。 208

東欧から西に徐々に拡大していた本病が、2018 年 209

9 月、ドイツを跳び越えて、いわゆる”Jumping” (長距 210

離間の伝播)して、ベルギーの野生イノシシでその感 211

染が確認された。野生イノシシが新しい地域にウイル 212

スを伝播していることは事実だが、アフリカ豚コレラに 213

感染した野生イノシシ集団が、大規模養豚場の発生 214

に関与したことは確認されていない。しかし、感染野 215

生イノシシの森林内での解体は拡大リスクがあるので 216

要注意である。 217

本病の臨床症状は、ウイルス株の病原性の強さに 218

より、甚急性、急性、亜急性、慢性および不顕性があ 219

る。致死率は 0~100%まで様々である。急性型では 220

41℃以上の発熱、元気消失、食欲不振、皮膚のうっ 221

血、紅斑が観察され、死に至る。致死率は 100%であ 222

る。病理学的特徴として、脾腫と内臓付属リンパ節の 223

腫大・出血がある。その他、腎臓の点状出血、消化管、 224

循環器系の出血病変が認められ、血小板減少のため、 225

剖検時、血液が凝固不全となり、周囲に流れ、ウイル 226

スの環境汚染が危惧される。 227 228

2. 国内防疫対策 229

国内で、本病と診断された場合は、「アフリカ豚コ 230

レラに関する特定家畜伝染病防疫指針」に従って、 231

感染拡大の防止のため、摘発・淘汰による防疫措置 232

が執られる。口蹄疫と違い、有効なワクチンがないの 233

で、緊急ワクチン接種措置は執れない。 234

1) 国家防疫(水際防疫) 235

国家防疫(水際防疫)対策の一つとして、国際空港 236

等への動植物検疫探知犬(探知犬)の配備がある。 237

2005年12月に成田国際空港をトップに、その後、関 238

表 1. 中国におけるアフリカ豚コレラ発生養豚場の飼養規模(2018.8.3~11.20)

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西国際空港、羽田空港、福岡空港、中部国際空港、 239

新千歳空港、那覇空港、川崎東郵便局などの国際 240

空港等に配備される探知犬の頭数は増加し、2018 241

年11月現在、29頭となり、違法的に持ち込まれた肉 242

製品の摘発数は増加している。しかし、畜産立県の 243

宮崎県、茨城県あるいは鹿児島県などの国際空港 244

には、まだ、探知犬の配備はされていない。宮崎空 245

港では、2018年10月24日~26日の3日間、探知犬 246

(タンク号)が初試行し、この間の活動で持ち込みが 247

禁止されているハンバーガーを摘発した(図4)。昨今、 248

海外からの訪問客は年々増加している。動物検疫所 249

の家畜防疫官の積極的アナウンスで検疫も強化され 250

ている。2018年8月27日、韓国で、加熱された食品で、 251

伝染の可能性は低いと注釈付きであったが、中国遼 252

寧省瀋陽から帰国した旅行者が持ち込んだ加工食 253

品から、アフリカ豚コレラウイルスの遺伝子が検出さ 254

れた(韓国政府)。日本の動物検疫所でも旅客の手 255

荷物から、アフリカ豚コレラウイルスが検出された(図 256

5)。この探知には探知犬も活躍している。しかし、探 257

知犬を何頭整備しても、水際での越境性伝染病の 258

100%STOPは不可能であることを知っておく必要が 259

ある。摘発をかいくぐり、どれだけのウイルスが国内の 260

どこに侵入しているのだろうか。大型客船は今や多く 261

の港に寄港している。持ち込み手荷物のほとんどは、 262

加熱調理されて、人が摂食するなど、家畜には供与 263

されていないから、アフリカ豚コレラが発生していな 264

いのではないだろうか。今や、知らない間に生ゴミに 265

紛れてアフリカ豚コレラウイルスが農場のすぐそこま 266

で来ていても不思議ではない。 267

一提案として、アフリカ豚コレラ、口蹄疫等の発生 268

国からの、違反手荷物の持ち込みに対して罰金制度 269

を設けて、そのことを入国書類に明記してはどうだろ 270

うか。オーストラリアの入国の際に検疫が厳正である 271

ことは有名であり、また、台湾ではアフリカ豚コレラや 272

口蹄疫の発生地域からの家畜や肉製品の持ち込み 273

に対し、最高1万5000台湾元(約5万5000円)の過料 274

を科している。これらは、罰金の徴収が目的ではなく、 275

日本への入国の際には、肉製品等持ち込めないこと 276

を出国事前に周知させることにある。 277

2) 地域防疫ネットワーク 278

アフリカ豚コレラは高伝播力で、高致死率のため、 279

家畜伝染病予防法で家畜伝染病(法定伝染病)に指 280

定されており、一旦発生すると、半径3km~10km圏 281

内の飼養豚は殺処分となる確率が高い。即ち、自分 282

の農場を最後まで守り抜いてもその発生圏内であれ 283

ば自農場の豚も殺処分される。養豚団地などに限ら 284

ず、半径10km圏内は運命共同体として、日常から、 285

防疫意識を高め、家畜衛生情報など共有しておく必 286

要がある。これは、国内にまん延しているPRRSの清 287

浄化プログラムでも同様態勢で臨む必要がある。 288

アフリカ豚コレラの流行・拡大防止の際、まず、留 289

意すべきこととして、豚と豚肉製品の違法な移動が指 290

摘されている。本病はしばしば長距離間の伝播・拡 291

大する”Jumping”の特徴があり、野生イノシシの行動 292

での伝播ではあり得ない場合が多々ある。2018年11 293

月、入管法改正案が衆議院の法務委員会で採決さ 294

図 4.宮崎空港での探知犬初試行

探知されたハンバーガー

※農研機構動物衛生研究部門において,感染力のあるウイルスが存在するかを確認するため,ウイルス

分離を実施中

図 5.中国からの旅客携帯品からアフリカ豚コレラウイルス遺伝子検出(2018年)

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れた。益々、養豚場内の外国人労働者や外国人実 295

習生などが増えると予想される。彼らの家畜衛生教 296

育についても、個々の農場単位だけでなく、国や地 297

域ぐるみでも啓発する必要がある。自国から送られて 298

きている肉製品が故意ではなくてもそれは違法だと 299

知らずに受け取っている可能性がある。アフリカ豚コ 300

レラの伝播は感染豚の移動の他、ウイルスに汚染さ 301

れた車両や物品、または人の移動によることもある。 302

豚の生体、豚肉やその加工品など食品、精子や受 303

精卵、そして食品残さは流通によって遠隔地まで移 304

送されることから、清浄地域にも脅威である。 305

現在、岐阜県で、野生イノシシの感染が捕獲を含 306

めて60頭(26頭死亡イノシシ)の豚コレラ陽性が確認 307

された(2018年11月29日現在)。豚コレラとアフリカ豚 308

コレラは名称、その臨床症状や感受性動物が豚とイ 309

ノシシであることなど良く似ているが、原因ウイルスが 310

異なる全く別な伝染病である。しかし、この豚コレラ発 311

生事例は、アフリカ豚コレラと置き換えても、ほぼ同 312

様のことが想定される。今回のケースは点から面に 313

拡がったと考えられるが、最初の点がどこかは特定さ 314

れていない。また、この「点」発生は国内どこでも可能 315

性がある。野生イノシシが山間部から生活生ゴミを求 316

めて里に降りてきている。国内各地での観光地のゴミ 317

対策、日常の生ゴミ対策、生ゴミを山中に捨てない啓 318

発が急務である。ビニル袋に入れて出す、網を被せ 319

る、網カゴに捨てるなど開放的放棄はリスクがある。 320

地域自治体として、カラス、イノシシなどが荒らさない 321

ような頑丈な大きなゴミ缶の設置が必要である(図6)。 322

また、夏季の鳥獣害駆除、冬季の猟期において、 323

捕獲したイノシシなど野生動物の森林内での解体、 324

不要臓器などの破棄は、他の野生動物の摂食する 325

機会を促し、種々の疾病の拡大リスクがあるため、ジ 326

ビエ振興としても清潔な解体場所の確保も必要であ 327

る。 328

3) 自農場を衛る 329

エコフィーディングの場合、安全性を保持する方 330

法として、加熱処理が有効である。中心温度の 331

70℃30分間以上または80℃3分間以上の加熱処理 332

で本ウイルスは失活する。国内では、現在、アフリカ 333

豚コレラが発生していないからとか、食料残渣はそれ 334

らに汚染されていないからとか、判断して加熱しなく 335

ても良い、との油断は禁物である。前述の通り、国内 336

の流通が日本製品だけとは限らない。2018年9月、 337

26年ぶりに国内で海外からの侵入で豚コレラが発生 338

したことは事実である。このことは水際防疫をすり抜 339

け、国内に海外から豚コレラウイルスが侵入していた 340

という証拠である。当該養豚場への侵入ルートは不 341

明のままであるが、海外から加工肉製品は大量に輸 342

入されており、加熱不十分のまま豚に給与されると生 343

きたウイルス等が豚に感染するリスクがある。用心し 344

て、エコフィード等は中心温度まで充分加熱して、万 345

全を期してほしい。 346

野生動物を農場敷地内に侵入させないようにする 347

必要がある。自農場内で野生動物を目撃したことが 348

ないからといって、侵入していないとは限らない。野 349

生動物の侵入は、発見されるリスクが高い人の出入り 350

がなくなってから、夕方の給餌から早朝の給餌の時 351

間帯、即ち、夜間に集中する。まず、餌となるものが 352

農場内にあることを学習させないことが肝心である。 353

光、音、臭いなど忌避剤等々は、初めは効果があっ 354

ても、危険がないことを動物が学習すると侵入を再開 355

する。電気牧柵は効果が実証されているが、その設 356

置は、漏電しないようにすること、鼻先に当たるように 357

すること、周囲の雑草を刈ることなど、諸留意点があ 358

る。運動場や放牧養豚の場合、特に、野生動物との 359

接触リスクが高くなるのでより強化された対策をとらな 360

くてはならない。野生動物から家畜へ伝播リスクとな 361

る共通伝染病は口蹄疫、アフリカ豚コレラあるいは豚 362

コレラに限らず、その他数多くある。 363

ウイルスは肉眼で見えないので、衣服や靴底に付 364

けて養豚場に入ると豚に感染する危険がある。シャワ 365

ーイン・シャワーアウトを取り入れていない養豚場は、 366

図 6. 生ゴミを野生動物が摂食しない対策が早急に求められる

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段階的でいいので、設置していただきたい。衣服の 367

更衣は重要な防疫ポイントである。だが、シャワーイ 368

ン・シャワーアウトも過信してはいけない。国家(水際) 369

防疫と同じで、100%のリスク要因のSTOPは不可能 370

である。シャワーイン・シャワーアウト作業も、ただ単 371

に、髪を洗う、身体を洗うだけではなく、痰を吐く、鼻 372

を噛む、爪を洗う、耳掃除をするなどチェックポイント 373

の意識を持って取り組み、リスク減少対策の1つと認 374

識すべきである。 375

また、パスボックスは、徐々に取りやめる方向が望 376

ましい。これこそ、殺菌しているつもりとなって、場外 377

から場内にリスク因子を持ち込んでいる可能性大で 378

ある。UV殺菌灯が主体となっているが、影の部分は 379

全く殺菌されていないことを再認識すべである。 380

踏込み消毒槽も過信すべきではない。2~3秒間 381

程度の瞬間的な消毒液への浸漬で深い溝のある、 382

有機物がくっついているような長靴の底がどの程度 383

殺菌されるか疑問である。我々の調査では、消毒液 384

の濃度、交換頻度、管理が悪いと消毒槽内の消毒 385

液から大腸菌群などが生きて多数分離されている。 386

この状態は、踏込み消毒槽ではなく踏込み汚染槽に 387

変貌し、綺麗な長靴で入るとわざわざ汚染させてい 388

ることになりかねない。出入りの際は、履物の交換が 389

第一である。 390

日常の消毒作業は、その効果が確認できないこと 391

から、本作業のモチベーションはなかなか維持が困 392

難である。自農場の周囲にまで、目には見えない悪 393

玉ウイルスが来ている(図7)という仮定のもとで、日常、 394

草刈り、整理・整頓、消毒作業に取り組んでほしい。 395

前述したとおり、海外から、摘発を免れて国内侵入し 396

た悪玉ウイルスが「そこまで」来ている可能性があるの 397

だ。 398

4) 拡大を防ぐためには 399

もし、発生があった場合、早期に農場再生させる 400

ためにも、早期封じ込めが重要となる。豚の口蹄疫 401

は特徴的な症状が認められるが、アフリカ豚コレラや 402

豚コレラでは、特徴的な症状はない。異常豚がいつ 403

も以上に多くなったなど、中毒、熱射病、伝染病の可 404

能性を見つけるアンテナ(観察眼)が必要である。そ 405

のためには、日常の健康管理の観察眼が宝となる。 406

早期発見し、早期届出、早期診断、初動防疫が大事 407

である。この時、検査で陰性となり、特定疾病でなか 408

った、と分かった時、「空振り」を歓迎できる職場雰囲 409

気が大事である。 410

前述の通り、臨床現場で、アフリカ豚コレラと豚コレ 411

ラの鑑別診断には、解剖検査で、脾臓と内臓付属リ 412

ンパ節の病変観察が重要であるが、剖検時には周 413

囲を汚染させない環境あるいは方法で実施しなけれ 414

ばならない。特に、農場内での剖検は要注意である。 415

アフリカ豚コレラの場合、血小板減少のために、血液 416

凝固不全が生じ、周囲に流れ汚染する可能性がある。 417

血液中には大量の生きたウイルスが存在していること 418

を忘れてはならない。 419

おわりに 420

アフリカ豚コレラには有効なワクチンはないが、2018年9月、 421

ベルギーでの野生イノシシでの発生があって、ワクチン開発 422

の緊急度が上がり、2018年10月のEU会議で、アフリカ豚コレ 423

ラワクチン開発プログラムの基金(案)14 百万ユーロ(約18億 424

円)が提案された8)。しかし、当会議ヨーロッパ委員会の担当 425

官は、ワクチンが世に出るのは20年ほど先であろうした9)。一 426

方で、2018年9月の野生イノシシ国際シンポジウム(チェコ)で、 427

スペインのBarasona博士ら10)は、イノシシへの弱毒生経口投 428

与ワクチン(ベイトワクチネーション)で効果があり、感染イノシ 429

シによる感染環を断ち切り、拡大防止するという光明を見い 430

だす報告をした。 431

アフリカ豚コレラの発生で、東欧諸国は養豚産業が50%~ 432

70%の壊滅状況に陥っている。しかし、世界に誇る日本の畜 433

産防疫力を駆使して、国内侵入を防止し、例え、隙間から侵 434

入しても、最小限度で封じ込めて、畜産衛生立国を証明し、 435

日本産の豚肉、豚肉製品の海外輸出推進を期待したい。 436

図 7. 自農場周囲に忍び寄っている悪玉ウイルスを消毒しているシミュレーション

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