通過困難bk病変を 極小プロファイルバルーン「mastuly」 …通過困難bk病変を...
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通過困難 BK病変を極小プロファイルバルーン「MASTULY」で通過する
PERIPHERAL Marketing Report Vol.26
54 歳 男性高度石灰化を伴う後脛骨動脈閉塞、腓骨動脈偏心性狭窄 vs MASTULY 主訴:左重症下肢虚血(Rutherford 5)現病歴:左足趾の重症下肢虚血にて当院紹介受診(Fig. 1A)。若年であり下肢バイパス術が望ましいと考えられたが、冠動脈バイパス術後で良好な静脈グラフトが採取できないことから、EVT目的で当科紹介となった。既往症:透析(10 年)、糖尿病(20 年)、狭心症(冠動脈バイパス術後)、高血圧
術前の下肢動脈エコーや下肢造影 CTでは、左腸骨から大腿膝窩動脈までに高度狭窄を認めなかった。膝下単独病変と診断し、左鼠径部より4.5Fr のガイディングシースを同側順行性に挿入しEVTを開始した。術前の下肢造影を示す(Fig. 1B)。膝窩動脈に高度石灰化の亜閉塞があり、膝下動脈の十分な情報は得られなかった。そこで、膝窩動脈病変に対しバルーン拡張を行った後、改めて膝下動脈を造影した(Fig. 1C)。
患者背景
クリニカルコース
血管内治療(EVT)の進化は著しく、多くの膝下(Below-the-knee; BK)病変が EVTで治療されるようになってきた。これはひとえに、道具の進歩だけでなく、技術の蓄積による向上に他ならない。しかし、いまだに我々を苦しめるのは、ワイヤー通過後のバルーン不通過病変である。高度の石灰化により血管の弾力性が失われ、現状のバルーンのプロファイルでは圧倒的困難な状況となっていた。今回、圧倒的困難な状況の BK病変に対して極小プロファイルバルーン「MASTULY」を用いてEVTを試みたので報告する。
はじめに
CASE 1Fig. 1A
曽我 芳光 先生小倉記念病院 循環器内科 部長
術者
Fig. 1B Fig. 1C
PERIPHERAL Marketing Report Vol.26
Fig. 2A Fig. 2B Fig. 2C Fig. 2D
Fig. 3A Fig. 3B
初めの造影とは異なり、腓骨動脈は局所の偏心性高度石灰化のタンデム病変であった。前脛骨動脈は起始部から閉塞しており、足背動脈も明らかではなかった。後脛骨動脈は、ほぼ入口部から閉塞していた。今回の治療標的は後脛骨動脈と腓骨動脈としEVTを開始した。後脛骨動脈の入口部を慎重に選択し(Fig. 2A)、石灰化をメルクマールにしながらゆっくりCTO用のガイドワイヤーで掘り進めた(Fig. 2B)。途中、ガイドワイヤーが進まなくなり、貫通用カテーテルからtip injectionを行ったところ、高度石灰化により血管内腔が閉塞していた(Fig. 2C)。より先端荷重の高いCTO用のガイドワイヤーに変更して、通過に成功したが、貫通用カテーテルが高度石灰化に阻まれ追従せず、通過しなかった(Fig. 2D ➡)。
そこで、貫通用カテをMASTULY 2.0x40mmに交換し通過を試みたところ、抵抗なく容易に通過した(Fig. 3A)。通過後、病変全体を複数回にわたり繰り返し拡張した(Fig. 3B)。
拡張後、順行性の良好な血流を確認した(Fig. 4A)。次いで腓骨動脈病変に対して先ほど使用したMASTULY 2.0x40mmで治療を試みた(Fig. 4B)。強い抵抗もなく病変部を容易に通過し、拡張に成功した(Fig. 4C)。
最終造影にて良好な結果を得て終了した(Fig. 5)。創部の治癒経過も良好である。
Fig. 4A Fig. 4B Fig. 4C
Fig. 5
2017-05-odp-01-s00704
[企画・発行]
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PERIPHERAL Marketing Report Vol.26
今回、通過困難病変に対して極小プロファイルバルーン「MASTULY」を用いてEVTを行った。実際に使用した率直な印象を以下に述べる。① 極小プロファイルによって達成される優れた通過性ワイヤーが通過したが、バルーンが何も通過しない状況を経験している術者は、是非この使用感を体験してほしい。「MASTULY」の登場で BKの EVTストラテジーは大きく変わると思われる。従来、通過困難が予想される病変では、小径の短いバルーンを繰り返し拡張することで、まずはルーメンを得て、その後に至適サイズにサイズアップしていたが、今後は始めから至適サイズで至適長さの「MASTULY」を選択することができる。これは、手技時間の観点からも、経済的な観点からも有益である。② 高い直進性を生み出すシャフトバランスバルーンが極小プロファイルに加え、屈曲のある膝下血管で十分な直進性が確保できるように、①モノレールルーメンを50cmと長めに設定し、②バルーンシャフト自体の剛性を強化することで耐キンク性を向上させている。直進性に関する高いレベルでの安定感は、pushabilityとcrossability のバランスが優れていることを示している。既存のOTWバルーンと比べても、遜色ないと思われる。③ 繰り返し拡張できる耐久性と損なわれない通過性今回の症例では、同じ「MASTULY」を複数回も使用しているが、通過性、リラップにおいても問題を認めなかった。BK病変では繰り返しバルーン拡張するシーンが多く、耐久性と損なわれない通過性が求められる。後脛骨動脈病変を複数回拡張後、腓骨動脈にもバルーン拡張を行ったが、通過性、耐久性にも優れており、バルーン本数のセーブにも役立つと思われる。実際に体外にて拡張前と拡張後を比べても、その高い再現性が視認できる(Fig. 6)。
今回、通過困難 BK病変に対して設計された極小プロファイルバルーン「MASTULY」を使用して優れた通過性を体験した。今後直面するであろう複雑 BK病変に対するマストアイテムの一つとして報告する。
考察
最後に
PROFILE 2000年 高知医科大学医学部卒業2000年 京都大学医学部付属病院内科2001年 小倉記念病院循環器内科2014年 現職
曽我 芳光 先生小倉記念病院 循環器内科 部長
Fig. 6 拡張前 拡張後(拡張時に色水を使用)
従来 1.5mm径バルーンでも通過困難である 0.65mm径の穴にMASTULY2mmは、拡張前も拡張後も難なく通過した。