若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて...2018/08/09  ·...

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2013 8 回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成 25 年度 Vol.15 (通算 127 号) 若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて 平成 26 年3月 横浜市会議会局政策調査課 編集・発行

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Page 1: 若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて...2018/08/09  · 2013第8回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

2013第8回マニフェスト大賞

「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

平成 25年度 Vol.15

(通算 127号)

若者の自立支援

― 無業・ひきこもりからの自立にむけて ―

平成26 年3月

横浜市会議会局政策調査課 編集・発行

Page 2: 若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて...2018/08/09  · 2013第8回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

1 若者の状況(内閣府 平成25年 版子ども・若者白書)

(1)人口の現状と推移

(2)出生

(3)若年無業者

(4)ひきこもり

参 考 各種法令による子ども・若者の年齢区分

2 国の取組

(1)子ども・若者育成支援推進法

(2)子ども・若者ビジョン

3 神奈川県の取組

(1)かながわ青少年育成・支援指針

(2)かながわ子ども・若者総合相談センター

コラム 発達障害とは

4 横浜市の取組

(1)横浜市次世代育成支援行動計画

「かがやけ横浜こども青少年プラン後期計画」

参 考 次世代育成支援対策推進法

(2)横浜市子ども・若者支援協議会

(3)横浜市子ども・若者実態調査

(4)子ども・若者自立支援施策

横浜市青少年相談センター

よこはま南部ユースプラザ

よこはま若者サポートステーション

よこはま型若者自立塾

つるみ元気塾(寄り添い型学習等支援事業)

参 考 生活困窮者自立支援法

コラム 海外の取組

5 参考図書一覧

………P 3

………P 4

………P 4

………P 5

………P 7

………P 8

………P21

………P26

………P31

………P32

………P34

………P41

………P42

………P46

………P51

………P52

………P53

………P54

………P55

………P56

………P57

………P59

………P61

目 次

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子ども・若者育成支援推進法が平成 22 年 4 月から施行されました。この法

律は、ニート、ひきこもりといった困難を抱える若者へ支援を行うための地域

ネットワークづくりの推進を目的にしています。また、生活困窮者自立支援法

が平成 25 年 12 月に成立し、平成 27 年4月から施行されます。

生活困窮者が自立へ向かうための制度はもちろん必要ですが、困難を抱える

若者たちが生活困窮者にならない仕組みも欠かせません。

横浜市には、ひきこもり・不登校等の若者の社会的自立に向けた支援の拠点

として「横浜市青少年相談センター」があります。また、平成 18 年に職業的

自立に向けた支援の拠点として「よこはま若者サポートステーション」を設置

しました。さらに、総合相談やひきこもり回復期にある若者の居場所等を提供

する地域の支援拠点である「地域ユースプラザ」を方面別に4か所設置してい

ます。

本稿では、若者の自立支援制度の概要と、横浜市の現場での取組をご紹介し

ます。

【子ども・若者の定義】

子ども:乳幼児期、学童期及び思春期の者

若 者:思春期、青年期の者。施策によっては、40 歳未満までのポスト青年

期の者も対象とします。

青少年:乳幼児期から青年期までの者。

※乳幼児期は、義務教育年齢に達するまでの者

※学童期は、小学生の者

※思春期は、中学生からおおむね 18 歳までの者

※思春期の者は、子どもから若者への移行期として、施策により、子ども、若者それ

ぞれに該当する場合があります。

※青年期は、おおむね 18 歳からおおむね 30 歳未満までの者

※ポスト青年期は、青年期を過ぎ、大学等において社会の各分野を支え、発展させて

いく資質・能力を養う努力を続けている者や円滑な社会生活を営む上で困難を有す

る、40 歳未満の者

※このほか、法令等により用語が定められており、それを使用することが適切な場合

には、その用語を使用しています。

【内閣府 子ども・若者ビジョン】

http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/sanko_02.html

若 者 の 自 立 支 援 に つ い て

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1 若者の状況
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≪子ども・若者自立支援に関する法令、計画等の概要図≫

次世代育成支援対策推進法

(平成 15 年 7 月施行)【P41】

子ども・若者育成支援推進法

(平成 22 年4月施行)【P8】

子ども・若者ビジョン

(平成22 年7月策定)【P21】

かながわ青少年育成・支援指針

(平成22年12月改定)【P26】

かながわ子ども・若者

総合相談センター【P31】

《神奈川県》

《横浜市》

次世代育成支援行動計画

「かがやけ横浜こども青少年プラン後期計画」

(平成 22 年6月策定) 【P34】

○横浜市子ども・若者支援協議会によ

る意見提案(平成 23 年度)【P43】

○横浜市子ども・若者実態調査

(平成 24 年度) 【P46】

横浜市子ども・若者支援協議会【P42】 ≪子ども・若者の自立支援施策≫

横浜市青少年相談センター【P52】

若者サポートステーション【P54】

●よこはま若者サポートステーション

●湘南・横浜若者サポートステーション

地域ユースプラザ 【P53】

(東部・西部・南部・北部)

よこはま型若者自立塾 【P55】

寄り添い型学習等支援事業【P56】

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1 若者の状況(内閣府 平成25年版子ども・若者白書)

(1)人口の現状と推移

30 歳未満人口は、昭和 50 年以降、ほぼ一貫して減少しています。

総人口に占める割合も、昭和 49 年に初めて 50%を下回り、その後、

低下を続けています。【図1】

平成 24 年 10 月 1 日現在、30 歳未満人口は 3,592 万人で、

総人口の 28.2%となっています。

男女別にみると、男子は 1,838 万人、女子は 1,754 万人です。

総人口では女性のほうが男性より多いですが、30 歳未満では男性

のほうが女性より多くなっています。

【図1】 30 歳未満人口

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1 若者の状況
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(2)出生

出生数は、昭和 22 年から 24 年の第 1 次ベビーブーム期の後、

急激に減少しました。1960 年代から 1970 年代前半にかけては、

昭和 41 年の「ひのえうま」を除き、緩やかな増加傾向となりまし

た。しかし、昭和 46 年から 49 年の第 2 次ベビーブーム期を境

に再び減少に転じ、その後は現在まで緩やかな減少傾向が続いて

います。

平成 24 年は 103 万人(平成 25 年 1 月 1 日時点の推計値)

で過去最低の出生数となりました。【図2】

(3)若年無業者

若年無業者(15~34 歳の非労働力人口のうち、家事も通学もし

ていない者)の数は、平成 14 年に大きく増加した後、おおむね横

ばいで推移しており、平成 24 年には 63 万人です。

15~34 歳人口に占める割合は緩やかに上昇しており、平成 24

年は 2.3%となっています。年齢階級別にみると、15~19 歳が 9

万人、20~24 歳が 17 万人、25~29 歳が 18 万人、30~34 歳

が 18 万人です。【図3】【図4】

【図2】 出生数

15~19 歳

20~24 歳

25~29 歳

30~34 歳

35~39 歳

【図3】 若年無業者数の推移

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(4)ひきこもり

内閣府が平成 22 年 2 月に実施した「若者の意識に関する調査

(ひきこもりに関する実態調査)」によると、「ふだんは家にいる

が、近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家か

らは出ない」「自室からほとんど出ない」に該当した者(「狭義の

ひきこもり」)が 23.6 万人、「ふだんは家にいるが、自分の趣味

に関する用事の時だけ外出する」(「準ひきこもり」)が 46.0 万

人、「狭義のひきこもり」と「準ひきこもり」を合わせた「広義の

ひきこもり」は 69.6 万人と推計されています。【図5】

また、ひきこもりになったきっかけは、仕事や就職に関するもの

が多くなっています。【図6】

【図4】 15~34 歳人口に占める若年無業者の割合

【図5】 ひきこもり群の定義と推計数

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1 若者の状況
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(注)1 15~39 歳の 5,000 人を対象として、3,287 人(65.7%)から回答を得た。

2 ひきこもり群に該当する状態となって 6 カ月以上の者のみを集計。「現在の状態

のきっかけ」で統合失調症または身体的な病気と答えた者、自宅で仕事をしている

と回答した者、「ふだん自宅にいるときによくしていること」で「家事・育児をす

る」と回答した者を除く。

3 全国の推計数は、有効回収数に占める割合に、総務省「人口推計」(2009 年)に

おける 15~39 歳人口 3,880 万人を乗じたもの。

4 狭義のひきこもり 23.6 万人は、厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガ

イドライン」における推計値 25.5 万世帯とほぼ一致する。

【内閣府 平成25年版子ども・若者白書】

http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/index.html

【図6】 ひきこもりになったきっかけ

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参考 各種法令による子ども・若者の年齢区分

【内閣府 子ども・若者白書(平成25年版)】

http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/sanko_08.html

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1 若者の状況
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2 国の取組

(1)子ども・若者育成支援推進法(平成22年4月1日施行)

平成21年7月に成立した子ども・若者育成支援推進法は、教育、福

祉、雇用等の関連分野における子ども・若者育成支援施策の総合的推

進と、ニートやひきこもり等困難を抱える若者への支援を行うための

地域ネットワークづくりの推進を図ることの二つを主な目的としてい

ます。

とりわけ、ニートやひきこもり等に対して関係機関が現場レベルに

おいて、より一層連携して支援する地域協議会の仕組みが定められた

ことが特色となっています。

※ニート(NEET)とは、「進学も就職もせず教育訓練も受けない」を意味す

る英語の頭文字(Not in Employment、Education or Training)をとった

もので、1999年の英国内閣府の報告書で使用されたものと言われています。

ア 法律の概要

(ア)基本理念(第2条)

一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわ

りを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とと

もに次代の社会を担うことができるようになることを目指すこと

等を定めています。

(イ)子ども・若者育成支援推進大綱の作成(第8条)

子ども・若者育成支援推進本部は、子ども・若者育成支援推進

大綱(以下、大綱)を作成することとされています。大綱に定め

るべき事項は以下の通りです。

① 基本的な方針

② 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各

関連分野における施策に関する事項

③ 修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子

ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有

するものに対する支援に関する事項等。

本法の制定を受けて、子ども・若者育成支援推進大綱「子ど

も・若者ビジョン」(P21参照)が作成されました。

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2 国の取組
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(ウ)子ども・若者計画の作成(第9条)

都道府県(及び市町村)は、国の大綱を勘案して都道府県子ど

も・若者計画(市町村子ども・若者計画)を作成する努力義務が

定められました。

子ども・若者計画の内容は、国の大綱を「勘案」して作成する

ものとされていることから、地方公共団体の状況、抱えている問

題などを踏まえて地方公共団体が計画を作成することとなります。

(エ)子ども・若者総合相談センター(第13条)

子ども・若者総合相談センターは、地方公共団体が子ども・若

者育成支援に関する相談に応じて、関係機関の紹介その他の必要

な情報の提供及び助言を行う拠点として設けられるものであり、

相談の「たらい回し」を防ぐ機能を目指すものです。

(オ)アウトリーチ(訪問支援)の実施(第15条)

本法の重要な点の一つは、ニートやひきこもり等に対してアウ

トリーチ(訪問支援)を実施することについて明記したことです。

ニート・ひきこもり等は自ら相談窓口に出向くことは難しく、行

政の側が受け身的な姿勢に留まっていては、結局支援機関につなが

りません。特に、ひきこもり状態にある者においては、本人が外出

することや相談窓口や医療機関に出向くことが難しい場合や、家族

への支援を継続しても本人と家族の関係や本人の生活状況には何ら

の変化も生じない場合等があります。

このような場合に、より積極的な支援手段として、子ども・若

者の自宅などにおいて訪問支援(アウトリーチ)を実施し、本人へ

の直接の働きかけが効果を挙げる場合が多いことから、訪問支援に

係る規定(子ども・若者の住居その他の適切な場所において、必要

な相談、助言又は指導を行うこと)が本法において初めて定められ

ました。

第15条第1項第1号

「社会生活を円滑に営むことができるようにするために、関係機

関等の施設、子ども・若者の住居その他の適切な場所において、

必要な相談、助言又は指導を行うこと。」

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(カ)子ども・若者支援地域協議会(第19条)

子ども・若者支援地域協議会(以下「協議会」という。)とは、

ニート、ひきこもり等困難を抱える若者への支援を行うための、

教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各分野

の関係機関からなる地域におけるネットワークを指します。

協議会の対象者は、「修学及び就業のいずれもしていない子ど

も・若者」である若年無業者(いわゆるニート)やひきこもりだ

けではなく、「その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑

に営む上での困難を有するもの」である不登校、非行、摂食障害、

適応障害などの問題に起因して、就業や修学状態にありながら社

会生活を円滑に営む上での困難を有する者も含まれます。

対象年齢は0歳から30歳代です。もっとも、福祉、雇用といっ

た個別の分野において、それぞれの担当機関だけで十分に対応可

能なもの(たとえば、フリーター等、就労支援がメインとなるも

の)まですべて協議会で継続的に支援を行う対象とするという意

味ではなく、協議会においては、関係機関が密接に連携して総合

的に対応する必要のあるケースを扱います。

(キ)協議会における支援の流れ(第20条)

個別の相談、照会から支援に至るまでの具体的な流れについて

は、地域の実情によって異なりますが、子ども・若者の立場から

は次のような例が想定されます。

①困難を有する子ども・若者である甲又はその家族は、子ども・

若者総合相談センター(第13条)に相談。

②子ども・若者総合相談センターは適切な関係機関を甲に紹介。

③甲は子ども・若者総合相談センターから紹介された個別の関係

機関(機関A)に相談。

④相談を受けた機関Aは、機関Aだけで対応するよりも、他の機

関(機関B、機関C)とも連携をとって対応した方が効果的と判

断。

⑤機関Aは、個人情報保護法令・条例に基づき、甲(甲が未成年

の場合にはその保護者等)より個人情報の取扱い(協議会への

提供)について原則書面にて同意を得る。

⑥機関Aは、調整機関を通じ、協議会(個別ケース検討会議)の

場で提案(機関A又は調整機関は事前に機関B、機関Cと意見の

すり合わせを行うことも考えられる。)。

⑦協議会において、機関Aが中心となりながらも、機関B、機関

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2 国の取組
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Cが連携して支援することとし、今後の支援方針を取りまとめ。

調整機関(第21条)は、議論の概要及び会議の結果を記録・

保存。

⑧機関Aから甲に対し、支援方針など必要な事項を伝達。

⑨機関Aは協議会において状況を適宜報告し、協議会は必要に

応じ支援方針を再検討。

⑩調整機関は支援の結果を記録し、保存。

(ク)子ども・若者支援調整機関、子ども・若者指定支援機関

(第21条、第22条)

子ども・若者支援調整機関とは、協議会が効果的に機能するた

めの協議会の事務局機能を果たすもので、運営の中核として支援

の実施状況を的確に把握し、必要に応じて他の関係機関等との連

絡調整を行います。

(ケ)秘密保持義務(第24条)

協議会では、官民問わず、構成するすべての者が、協議会の事

務に関して知った秘密を漏らしてはならないとし、相談者が安心

して相談できる環境を整備すると同時に、協議会における積極的

な情報交換及び官民間の連携の推進ができる制度を整備しました。

(コ)子ども・若者育成支援推進本部の設置(第26条~第33条)

内閣総理大臣を本部長とし、内閣官房長官及び内閣府特命担当

大臣(青少年育成)を副本部長とする子ども・若者育成支援推進

本部の設置が定められました。この本部は子ども・若者育成支援

推進大綱の作成を主な機能とするものです。

(サ) 罰則(第34条)

第24条の秘密保持義務に違反して協議会の事務に関して知り

得た秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰

金に処せられることが定められています。

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本法の制定により、初めてニートやひきこもりに対する支援について

根拠法令が定められました。これにより、現場レベルでの連携をより一

層進め、縦割りの枠を超えて各分野の機関が連携して一人ひとりの子ど

も・若者に対し総合的な支援を行うことが期待されています。

【内閣府 子ども・若者育成支援推進法】

http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/h19-2/html/pdf/1.pdf

子ども・若者育成支援推進法

(平成二十一年七月八日法律第七十一号)

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、子ども・若者が次代の社会を担い、その健やかな成長が我が

国社会の発展の基礎をなすものであることにかんがみ、日本国憲法 及び児童の権

利に関する条約の理念にのっとり、子ども・若者をめぐる環境が悪化し、社会生活

を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の問題が深刻な状況にあることを踏

まえ、子ども・若者の健やかな育成、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことが

できるようにするための支援その他の取組(以下「子ども・若者育成支援」とい

う。)について、その基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本とな

る事項を定めるとともに、子ども・若者育成支援推進本部を設置すること等により、

他の関係法律による施策と相まって、総合的な子ども・若者育成支援のための施策

(以下「子ども・若者育成支援施策」という。)を推進することを目的とする。

(基本理念)

第二条 子ども・若者育成支援は、次に掲げる事項を基本理念として行われなけれ

ばならない。

一 一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、

自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができる

ようになることを目指すこと。

二 子ども・若者について、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な差別的取扱い

を受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善

の利益を考慮すること。

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2 国の取組
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三 子ども・若者が成長する過程においては、様々な社会的要因が影響を及ぼすも

のであるとともに、とりわけ良好な家庭的環境で生活することが重要であることを

旨とすること。

四 子ども・若者育成支援において、家庭、学校、職域、地域その他の社会のあら

ゆる分野におけるすべての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力し

ながら一体的に取り組むこと。

五 子ども・若者の発達段階、生活環境、特性その他の状況に応じてその健やかな

成長が図られるよう、良好な社会環境(教育、医療及び雇用に係る環境を含む。以

下同じ。)の整備その他必要な配慮を行うこと。

六 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における

知見を総合して行うこと。

七 修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であっ

て、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及

び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこ

と。

(国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、

子ども・若者育成支援施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、子ども・若者育成支援に関し、国

及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における子ども・若者の状

況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(法制上の措置等)

第五条 政府は、子ども・若者育成支援施策を実施するため必要な法制上又は財政

上の措置その他の措置を講じなければならない。

(年次報告)

第六条 政府は、毎年、国会に、我が国における子ども・若者の状況及び政府が講

じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、こ

れを公表しなければならない。

第二章 子ども・若者育成支援施策

(子ども・若者育成支援施策の基本)

第七条 子ども・若者育成支援施策は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体

の関係機関相互の密接な連携並びに民間の団体及び国民一般の理解と協力の下に、

関連分野における総合的な取組として行われなければならない。

(子ども・若者育成支援推進大綱)

第八条 子ども・若者育成支援推進本部は、子ども・若者育成支援施策の推進を図

るための大綱(以下「子ども・若者育成支援推進大綱」という。)を作成しなけれ

ばならない。

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2 子ども・若者育成支援推進大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 子ども・若者育成支援施策に関する基本的な方針

二 子ども・若者育成支援施策に関する次に掲げる事項

イ 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における施

策に関する事項

ロ 子ども・若者の健やかな成長に資する良好な社会環境の整備に関する事項

ハ 第二条第七号に規定する支援に関する事項

ニ イからハまでに掲げるもののほか、子ども・若者育成支援施策に関する重要事項

三 子ども・若者育成支援施策を総合的に実施するために必要な国の関係行政機関、

地方公共団体及び民間の団体の連携及び協力に関する事項

四 子ども・若者育成支援に関する国民の理解の増進に関する事項

五 子ども・若者育成支援施策を推進するために必要な調査研究に関する事項

六 子ども・若者育成支援に関する人材の養成及び資質の向上に関する事項

七 子ども・若者育成支援に関する国際的な協力に関する事項

八 前各号に掲げるもののほか、子ども・若者育成支援施策を推進するために必要

な事項

3 子ども・若者育成支援推進本部は、第一項の規定により子ども・若者育成支援

推進大綱を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変

更したときも、同様とする。

(都道府県子ども・若者計画等)

第九条 都道府県は、子ども・若者育成支援推進大綱を勘案して、当該都道府県の

区域内における子ども・若者育成支援についての計画(以下この条において「都道

府県子ども・若者計画」という。)を作成するよう努めるものとする。

2 市町村は、子ども・若者育成支援推進大綱(都道府県子ども・若者計画が作成

されているときは、子ども・若者育成支援推進大綱及び都道府県子ども・若者計

画)を勘案して、当該市町村の区域内における子ども・若者育成支援についての計

画(次項において「市町村子ども・若者計画」という。)を作成するよう努めるも

のとする。

3 都道府県又は市町村は、都道府県子ども・若者計画又は市町村子ども・若者計

画を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更した

ときも、同様とする。

(国民の理解の増進等)

第十条 国及び地方公共団体は、子ども・若者育成支援に関し、広く国民一般の関

心を高め、その理解と協力を得るとともに、社会を構成する多様な主体の参加によ

る自主的な活動に資するよう、必要な啓発活動を積極的に行うものとする。

(社会環境の整備)

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第十一条 国及び地方公共団体は、子ども・若者の健やかな成長を阻害する行為の

防止その他の子ども・若者の健やかな成長に資する良好な社会環境の整備について、

必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(意見の反映)

第十二条 国は、子ども・若者育成支援施策の策定及び実施に関して、子ども・若

者を含めた国民の意見をその施策に反映させるために必要な措置を講ずるものとす

る。

(子ども・若者総合相談センター)

第十三条 地方公共団体は、子ども・若者育成支援に関する相談に応じ、関係機関

の紹介その他の必要な情報の提供及び助言を行う拠点(第二十条第三項において

「子ども・若者総合相談センター」という。)としての機能を担う体制を、単独で

又は共同して、確保するよう努めるものとする。

(地方公共団体及び民間の団体に対する支援)

第十四条 国は、子ども・若者育成支援施策に関し、地方公共団体が実施する施策

及び民間の団体が行う子ども・若者の社会参加の促進その他の活動を支援するため、

情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第三章 子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするため

の支援

(関係機関等による支援)

第十五条 国及び地方公共団体の機関、公益社団法人及び公益財団法人、 特定非営

利活動促進法 (平成十年法律第七号)第二条第二項 に規定する特定非営利活動

法人その他の団体並びに学識経験者その他の者であって、教育、福祉、保健、医療、

矯正、更生保護、雇用その他の子ども・若者育成支援に関連する分野の事務に従事

するもの(以下「関係機関等」という。)は、修学及び就業のいずれもしていない

子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を

有するものに対する次に掲げる支援(以下この章において単に「支援」という。)

を行うよう努めるものとする。

一 社会生活を円滑に営むことができるようにするために、関係機関等の施設、子

ども・若者の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行う

こと。

二 医療及び療養を受けることを助けること。

三 生活環境を改善すること。

四 修学又は就業を助けること。

五 前号に掲げるもののほか、社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助け

ること。

六 前各号に掲げるもののほか、社会生活を円滑に営むことができるようにするた

めの援助を行うこと。

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2 関係機関等は、前項に規定する子ども・若者に対する支援に寄与するため、当

該子ども・若者の家族その他子ども・若者が円滑な社会生活を営むことに関係する

者に対し、相談及び助言その他の援助を行うよう努めるものとする。

(関係機関等の責務)

第十六条 関係機関等は、必要な支援が早期かつ円滑に行われるよう、次に掲げる

措置をとるとともに、必要な支援を継続的に行うよう努めるものとする。

一 前条第一項に規定する子ども・若者の状況を把握すること。

二 相互に連携を図るとともに、前条第一項に規定する子ども・若者又は当該子ど

も・若者の家族その他子ども・若者が円滑な社会生活を営むことに関係する者を必

要に応じて速やかに適切な関係機関等に誘導すること。

三 関係機関等が行う支援について、地域住民に周知すること。

(調査研究の推進)

第十七条 国及び地方公共団体は、第十五条第一項に規定する子ども・若者が社会

生活を円滑に営む上での困難を有することとなった原因の究明、支援の方法等に関

する必要な調査研究を行うよう努めるものとする。

(人材の養成等)

第十八条 国及び地方公共団体は、支援が適切に行われるよう、必要な知見を有す

る人材の養成及び資質の向上並びに第十五条第一項各号に掲げる支援を実施するた

めの体制の整備に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

(子ども・若者支援地域協議会)

第十九条 地方公共団体は、関係機関等が行う支援を適切に組み合わせることによ

りその効果的かつ円滑な実施を図るため、単独で又は共同して、関係機関等により

構成される子ども・若者支援地域協議会(以下「協議会」という。)を置くよう努

めるものとする。

2 地方公共団体の長は、協議会を設置したときは、内閣府令で定めるところによ

り、その旨を公示しなければならない。

(協議会の事務等)

第二十条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報の交換を行うと

ともに、支援の内容に関する協議を行うものとする。

2 協議会を構成する関係機関等(以下「構成機関等」という。)は、前項の協議

の結果に基づき、支援を行うものとする。

3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認め

るとき、又は構成機関等による支援の実施に関し他の構成機関等から要請があった

場合において必要があると認めるときは、構成機関等(構成機関等に該当しない子

ども・若者総合相談センターとしての機能を担う者を含む。)に対し、支援の対象

となる子ども・若者に関する情報の提供、意見の開陳その他の必要な協力を求める

ことができる。

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(子ども・若者支援調整機関)

第二十一条 協議会を設置した地方公共団体の長は、構成機関等のうちから一の機

関又は団体を限り子ども・若者支援調整機関(以下「調整機関」という。)として

指定することができる。

2 調整機関は、協議会に関する事務を総括するとともに、必要な支援が適切に行

われるよう、協議会の定めるところにより、構成機関等が行う支援の状況を把握し

つつ、必要に応じて他の構成機関等が行う支援を組み合わせるなど構成機関等相互

の連絡調整を行うものとする。

(子ども・若者指定支援機関)

第二十二条 協議会を設置した地方公共団体の長は、当該協議会において行われる

支援の全般について主導的な役割を果たす者を定めることにより必要な支援が適切

に行われることを確保するため、構成機関等(調整機関を含む。)のうちから一の

団体を限り子ども・若者指定支援機関(以下「指定支援機関」という。)として指

定することができる。

2 指定支援機関は、協議会の定めるところにより、調整機関と連携し、構成機関

等が行う支援の状況を把握しつつ、必要に応じ、第十五条第一項第一号に掲げる支

援その他の支援を実施するものとする。

(指定支援機関への援助等)

第二十三条 国及び地方公共団体は、指定支援機関が前条第二項の業務を適切に行

うことができるようにするため、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努

めるものとする。

2 国は、必要な支援があまねく全国において効果的かつ円滑に行われるよう、前

項に掲げるもののほか、指定支援機関の指定を行っていない地方公共団体(協議会

を設置していない地方公共団体を含む。)に対し、情報の提供、助言その他必要な

援助を行うものとする。

3 協議会及び構成機関等は、指定支援機関に対し、支援の対象となる子ども・若

者に関する情報の提供その他必要な協力を行うよう努めるものとする。

(秘密保持義務)

第二十四条 協議会の事務(調整機関及び指定支援機関としての事務を含む。以下

この条において同じ。)に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当

な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

(協議会の定める事項)

第二十五条 第十九条から前条までに定めるもののほか、協議会の組織及び運営に

関し必要な事項は、協議会が定める。

第四章 子ども・若者育成支援推進本部

(設置)

第二十六条 内閣府に、特別の機関として、子ども・若者育成支援推進本部(以下

「本部」という。)を置く。

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(所掌事務等)

第二十七条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 子ども・若者育成支援推進大綱を作成し、及びその実施を推進すること。

二 前号に掲げるもののほか、子ども・若者育成支援に関する重要な事項について

審議すること。

三 前二号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務

2 本部は、前項第一号に掲げる事務を遂行するため、必要に応じ、地方公共団体

又は協議会の意見を聴くものとする。

(組織)

第二十八条 本部は、子ども・若者育成支援推進本部長、子ども・若者育成支援推

進副本部長及び子ども・若者育成支援推進本部員をもって組織する。

(子ども・若者育成支援推進本部長)

第二十九条 本部の長は、子ども・若者育成支援推進本部長(以下「本部長」とい

う。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

(子ども・若者育成支援推進副本部長)

第三十条 本部に、子ども・若者育成支援推進副本部長(以下「副本部長」とい

う。)を置き、内閣官房長官並びに 内閣府設置法 (平成十一年法律第八十九号)

第九条第一項 に規定する特命担当大臣であって 同項 の規定により命を受けて

同法第四条第一項第十四号 に掲げる事項に関する事務及びこれに関連する 同条第

三項 に規定する事務を掌理するものをもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

(子ども・若者育成支援推進本部員)

第三十一条 本部に、子ども・若者育成支援推進本部員(次項において「本部員」

という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

一 国家公安委員会委員長

二 総務大臣

三 法務大臣

四 文部科学大臣

五 厚生労働大臣

六 経済産業大臣

七 前各号に掲げるもののほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、

内閣総理大臣が指定する者

(資料提出の要求等)

第三十二条 本部は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、

関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求め

ることができる。

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2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項

に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

(政令への委任)

第三十三条 第二十六条から前条までに定めるもののほか、本部の組織及び運営に

関し必要な事項は、政令で定める。

第五章 罰則

第三十四条 第二十四条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下

の罰金に処する。

附 則 抄

(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で

定める日から施行する。

(検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、我が国における

子ども・若者をめぐる状況及びこの法律の施行の状況を踏まえ、子ども・若者育成

支援施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基

づいて所要の措置を講ずるものとする。

【法令データ提供システム】

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H21/H21HO071.html

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(2) 子ども・若者ビジョン(平成22年7月23日策定)

ア 「子ども・若者ビジョン」とは

イ 子ども・若者の「今」と「未来」

ウ 状況認識

「子ども・若者ビジョン」は、子ども・若者育成支援推進法

(平成21年法律第71号)の施行を受け、「青少年育成施策大綱」

(平成20年12月決定)に代わるものとして作成されました。

子ども・若者は、かけがえのない「今」を生きています。また、

それと同時に、我が国の、そして世界の未来を担う「将来の大人」

でもあります。

今を生き生きと幸せに生きるとともに、未知の事柄に挑戦し、試

行錯誤を経て新しい能力を身に付け、自信を持って社会に羽ばた

く、未来への準備期間なのです。

グローバリズムの進展は、世界と我が国との距離を縮め、私たち

には多様な価値観をもつ人たちとの共生が求められています。

また、情報化の更なる進展は、視野や見識を広げ、新しい知的、

文化的価値創造の舞台を提供する一方で、子どもたちに思わぬ被害

や人間関係などへの負の影響を及ぼすことを懸念する意見もあり、

情報あるいは情報機器を適切に使いこなす能力を身に付けることが

課題となっています。

さらに、雇用環境が大きく変化しており、特に、非正規労働者の

増大は、若者が将来に対し不安を抱く大きな原因となっています。

フリーターやニートの数は高止まりの状態であり、経済的格差の拡

大と世代をまたがる固定化は、「子どもの貧困」問題としてもクロ

ーズアップされています。児童虐待などの被害者の中には、帰れる

家も頼れる人もなく、社会における受け皿も不十分な中で居場所を

探し求めている子ども・若者もいます。

家庭や地域における養育力の低下が指摘されている中、このよう

な困難を有する人々に対する支援はもちろんのこと、社会全体で子

ども・若者を見守り、育てる機能を果たしていかなければなりませ

ん。

このため、大人の側でも自覚を持って社会のあり方を見直すとと

もに、必要な費用は子ども・若者自身の幸せのためだけでなく「未

来への投資」「社会への投資」と位置づけて施策を推進していきた

いと考えています。

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エ 「子ども・若者ビジョン」の5つの理念と3つの重点課題

1 5つの理念

(1)子ども・若者の最善の利益を尊重

日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、

子ども・若者の個人としての尊厳を重んじ、発達段階に応じて

その意見を十分尊重するとともに、その最善の利益が考慮され

ることが確実に保障されることを目指します。

(2)子ども・若者は、大人と共に生きるパートナー

子どもや若者を大人とは一段下の存在として位置づけるので

はなく、また逆に、子ども・若者を甘やかすのでもなく、子ど

も・若者と大人がお互いに尊重しあいながら、社会を構成する

担い手として共に生きていくことを目指します。

(3)自己を確立し社会の能動的形成者となるための支援

子ども・若者が、社会とのかかわりを自覚しつつ、自尊感情

や自己肯定感をはぐくみ、自立した個人としての自己を確立す

るとともに、社会との関係では、適応するのみならず、自らの

力で未来の社会をよりよいものに変えていく力を身に付けるこ

とができるよう、健やかな成長・発達を支援します。

(4)子ども・若者一人一人の状況に応じた総合的な支援を、社会全

体で重層的に実施

子ども・若者が持つ能力や可能性、あるいは抱えている困難

の程度は一人一人異なります。また、様々な分野にわたる支援

を組み合わせることが必要な場合や、一つの分野の中でも官民

の様々な団体や個人が支援を行う場合があることから、社会全

体で分野、主体の壁を越えて互いに連携、協力し、必要な財源

を確保しながら、一人一人の置かれた状況、発達段階、性別等

に応じて抱えている問題が異なることにも配慮しつつきめ細や

かな支援を行っていく必要があります。

また、このような連携・協力を通じて、支え合いのネットワ

ークから誰一人として排除されることのない「一人一人を包摂

する社会」の実現を目指すとともに、すべての子ども・若者が

確かな社会生活を始めることができるよう支援していきます。

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(5)大人社会の在り方の見直し

児童虐待を始め大人が子ども・若者に対する加害者となる場

合に限らず、子ども・若者の問題は、それを取り巻く大人を含

む社会全体の問題です。このことを踏まえ、大人自らがその責

任を自覚して子ども・若者のモデルとなるよう努めるとともに、

社会の改善に取り組むことができるよう、社会の在り方を見直

す取組を進めていきます。

2 3つの重点課題

(1)子ども・若者が生き生きと、幸せに生きていく力を身につ

けるための取組

子ども・若者が成長・発達するための基礎づくりを支援しま

す。このため、良好な家庭的環境の確保や大人社会の在り方の

見直しなど子ども・若者を取り巻く状況の改善を図るとともに、

豊かな人間性の育成、基本的な生活習慣の形成、体力の向上、

基礎学力の保障等に取り組みます。また、子ども・若者の意見

表明機会の確保を図ります。

さらに、このような基礎の上に様々な体験や他者との交流を

積み重ねることにより、自立した個人として必要な知識、能力、

社会性やリーダーシップなどをはぐくみます。

このため、社会参加・体験活動等の能動的な活動の充実、自

らとは異なる文化に接し、理解を深めるための活動、キャリア

教育・職業教育の充実に取り組みます。

(2)困難を有する子ども・若者やその家族を支援する取組

様々な困難を有するが故に特別な支援が必要な子ども・若

者がいます。

その困難は、ニート、ひきこもり、不登校等社会生活を円滑

に営む上での困難や、障害、虐待を始めとする犯罪被害、定住

外国人であることなど多岐にわたっていることから、それぞれ

に必要な支援を行っていきます。非行や犯罪に陥った子ども・

若者については、その抱える困難に配慮し、社会の一員として

立ち直ることができるよう支援します。

子ども・若者本人だけでなく、家族に対する支援も行います。

また、「子どもの貧困」問題についても積極的に取り組みます。

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(3)地域における多様な担い手の育成

子ども・若者育成支援は、社会のあらゆる分野におけるすべ

ての構成員がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に協力し

ながら一体的に取り組むことが必要です。特に、地域における

つながりの弱体化が指摘されていることから、「新しい公共」

の考え方も踏まえつつ、家族や地域の機能を補完する多様な活

動を支援します。また、官民の取組が行政分野ごとの縦割りと

ならないようネットワークの総合性を確保するとともに、子ど

も・若者自身のネットワークの強化も図ります。

さらに、民間人の参加協力も含めた地域での教育支援体制の

強化により、「開かれた」学校づくりを含めた取組を推進する

とともに、一部地方公共団体で「子どもオンブズパーソン」等

の名称で設けられている、子ども・若者に関する権利侵害など

さまざまな問題を第三者的立場から調整しつつ解決していく仕

組みの普及を図ります。

【内閣府 子ども・若者ビジョン】

http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/pdf/vision.pdf

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2 国の取組
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3 神奈川県の取組

(1)かながわ青少年育成・支援指針

(平成17年3月策定 平成22年12月改定)

かながわ青少年育成・支援指針は、子ども・若者育成支援推進法

(P8参照)に基づく計画です。

ここでは、「3つの基本目標」と若者自立支援施策に関係する

「施策の方向」をご紹介します。

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ア 3つの基本目標

基本目標1 青少年の成長の基盤づくりと社会参画の推進

青少年が成長するための基盤となる基本的な生活習慣や、基礎

的な体力・学力及び社会の変化の中で健全に成長する力を身に付

け、豊かな人間性と社会性をはぐくみ、かつ、社会の一員とし

て、自立心を高めながら、創造性とエネルギーを地域社会で生か

すことができるように支援します。

基本目標2 青少年の自立を支援する環境づくり

ひきこもり、いじめ、不登校、非行、暴力行為等の課題に対応

する多様な機関の連携による総合的相談・支援体制を整備すると

ともに、豊かな資質と可能性を秘めた青少年の社会的・経済的自

立を支援する環境を整えます。

基本目標3 青少年の健やかな成長を支える地域社会づくり

青少年の成長と自立を支援するという自覚と責任を特って行動

するよう、大人自身の意識改革を進めるとともに、急激に進展す

る情報化社会への対応や、青少年の福祉を害する犯罪被害等の防

止対策を進め、民間事業者を含む社会全体で、青少年が心豊かに

成長できる環境とコミュニティづくりに取り組みます。

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3 神奈川県の取組
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イ 施策の方向(若者の自立支援に関係するものを抜粋)

ウ 施策の方向【抜粋】

施策の方向4 多様な機関の連携による総合的相談・支援体制の整備

各相談・支援機関及びNPOなどの民間団体の連携を促進し、支援

を必要とする青少年や家族に対し、効果的な相談・支援が個別的・継

続的に行えるように、子ども・若者育成支援推進法に基づく総合的な

相談・支援体制(子ども・若者総合相談センター機能)の整備や庁内

横断的な体制に基づく取組みを進めます。

また、県ホームページの「神奈川県青少年相談支援情報サイト」の

運営や、電話相談窓ロを記載した「相談機関紹介カード」の県内小・

中・高校生への配付など、様々な問題に悩む青少年や家族が気軽に相

談できるように、相談窓ロの周知を図ります。

【施策の展開】

○青少年サポートプラザの充実

福祉、教育、心理等の専門職による相談・支援体制を整備

するとともに、出前相談会の開催等、ひきこもり等青少年の

多様な悩みにきめ細かく対応し、ひきこもり地域支援センタ

ーとしての機能を担う青少年サポートプラザの充実を図る。

○少年相談活動の充実

警察官や少年相談員が、非行やいじめ、犯罪被害に関する

相談に対して、きめ細かな指導・助言を行うとともに、必要

に応じて被害少年カウンセリングアドバイザーと連携した支

援を行うなど、相談・支援体制の充実を図る。

○医療、福祉、教育などの専門職による適切な相談・支援体制の

充実

児童相談所、総合療育相談センター、精神保健福祉センタ

ー、保健福祉事務所、総合教育センターヘの専門職の配置、

学校におけるスクールカウンセラーの配置やスクールソーシ

ャルワーカーの活用など多彩な職種を活用した教育相談の実

施等、相談・支援体制の充実を図る。

○各相談機関・民間団体間の連携促進

子ども・若者育成支援協議会をはじめとする各協議会、連

絡会議等の各相談・支援機関や民間団体の連携を促進し、切

れ目のない総合的な相談・支援を行う。

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施策の方向5 ひきこもり等困難を抱える青少年の支援

ひきこもり等社会生活を円滑に営む上での困難を抱える青少年が、社

会とのつながりを回復し、自立に向けて動き始めることができるよ

う、関係機関やNPOなど民間団体との連携・協力を推進して支援し

ます。

【施策の展開】

○自立支援プログラムを活用したひきこもりへの対応

ひきこもり等青少年の自立に向けた社会体験や就労体験に

ついて、NPOと協働で取りまとめた「ひきこもり等青少年

自立支援プログラム」を活用し、安心できる居場所での仲間

づくり、家族への支援、多彩な体験メニューにより、就労等

自立に向けた支援を充実させる。

○発達障害(P32 参照)などのある青少年とその家族への支

LD(学習障害)、AD/HD(注意欠陥・多動性障

害)、高機能自閉症など発達上の特性から生じる不適応を予

防するための家庭・学校等での適切な対応や早期発見、自立

と社会参加に向けた相談・支援体制を充実させ、障害特性に

応じた適切な対応等により、発達障害などのある青少年とそ

の家族を支援する。

○ひきこもり等課題を持つ青少年とその家族への支援

ひきこもりについての理解を深め、支援機関などの情報を

知ってもらうためのセミナーを開催し、また、相談機関、親

の会、NPO等が連携し、心のよりどころとして心理的環境

の改善を図るなど、ひきこもり等課題を特つ青少年とその家

族を支援する。

○ひきこもりに対応するNPO等民間団体への支援

相談などを行っているNPO等民間団体に対し、スキルの

向上に向けた研修会の開催や居場所づくり、情報・交流機会

の提供、活動のための場所やパソコン等機器を備えた活動場

所の提供等により支援する。

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【かながわ青少年育成・支援指針】 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f4151/p35672.html

施策の方向8 社会的・経済的な自立の促進

青少年が、勤労観・職業観を形成し、社会的・経済的自立に必要

な能力を身に付けるためのキャリア教育を充実させるとともに、企業等とも連携・協力し、きめ細かい職業相談、職業訓練、職業紹介等の支援を行います。また、経済的に困窮した家庭環境にある青少年に対しては、教育支援・生活支援等を行います。

【施策の展開】

○若者の就労支援の強化

「かながわ若者就職支援センター」において、若者一人

ひとりの就職活動の悩み等に対応するキャリアカウンセ

リング、面接対策等の就職に役立つ就職活動支援セミナ

ーの実施、就職情報・職業訓練情報の提供等を行うとと

もに、自立援助ホームにおいて、就労等自立支援を行う

など、若者の就職支援を強化する。

○勤労観・職業観の形成と職業能力開発

学校や高等職業技術校などにおいて、キャリア教育、

職業教育、就職指導等を行う。

また、学校において、多様な働き方、生き方を選択す

るための知識や考え方、発達段階に応じた勤労観・職業

観の形成等を推進するほか、高等職業技術校などにおい

て職業訓練やキャリア・コンサルティング等による職業

能力開発支援を推進する。

○青少年の貧困問題への対応

奨学金制度、学費減免制度等、経済的に困窮した家庭

環境にある青少年ヘの教育支援・生活支援を行うととも

に、生活保護世帯の子どもと親を支援する子ども支援員

の配置、支援プログラムの策定等により、子どもの貧困

問題への対応を行います。

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(2)かながわ子ども・若者総合相談センター

子どもや若者(おおむね 30 代まで)が抱える様々な悩みについ

ての一次相談窓口です。教育・福祉・警察等の職員の他に、臨床心

理士、精神保健福祉士、社会福祉士、キャリアカウンセラー等が相

談を受け付けています。

複数の課題を抱えたケースや困難事例については、県や市町村の

専門機関などに丁寧に橋渡しをしています。

神奈川県立青少年センターの相談スタッフのほか、ひきこもり、

不登校などのサポート活動を行う NPO などで、活動経験が豊かな

アドバイザーも相談を受け付けています。また、県西部青少年サ

ポート相談室でも、ひきこもり、不登校等についての相談を受け

付けています。

【かながわ・子ども若者総合相談センター】

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f100332/p453436.html

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3 神奈川県の取組
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コラム 発達障害とは

発達障害は、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害 です。発達障害

がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手 です。

また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」

と誤解され、敬遠されることも少なくありません。それが、親のしつけや

教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものだと理解すれば、周囲の人

の接し方も変わってくるのではないでしょうか。

ここでは、発達障害のある人を理解するために、自閉症、アスペルガー

症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害など、主

な発達障害の特徴を紹介します。

なお、発達障害は、複数の障害が重なって現れることもありますし、障

害の程度や年齢(発達段階)、生活環境などによっても症状は違ってきま

す。

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1 広汎性発達障害

コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発

達障害の総称 です

(1)自閉症

自閉症は、「言葉の発達の遅れ」「コミュニケーションの障害」「対

人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、こだわり」などの特

をもつ障害で、3 歳までには何らかの症状がみられます。

また、自閉症の人々の半数以上は知的障害を伴いますが、知能に遅れ

がない高機能自閉症の人々もいます。最近では、症状が軽くても自閉症

と同質の障害がある場合、自閉症スペクトラムと呼ばれることがありま

す。

(2)アスペルガー症候群

アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれる一つのタイ

プで、「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パ

ターン化した行動、興味・関心のかたより」があります。自閉症のよう

に、幼児期に言葉の発達の遅れがないため、障害があることが分かりに

くいのですが、成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。

2 注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity

Disorder)は、「集中できない(不注意)」「じっとしていられない

(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特

徴する発達障害です。

注意欠陥多動性障害の特徴は、通常 7 歳以前に現れます。多動や不注

意といった様子が目立つのは小・中学生ごろですが、思春期以降はこう

いった症状が目立たなくなるともいわれています。

3 学習障害

学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)と

は、全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計

算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著

しい困難を示すさまざまな状態 をいいます。

【政府広報オンライン】

http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html

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3 神奈川県の取組
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4 横浜市の取組 (1)横浜市次世代育成支援行動計画

「かがやけ横浜こども青少年プラン後期計画」(平成22年6月策定)

ア 次世代育成支援行動計画とは

次世代育成支援行動計画は、次世代育成支援対策推進法(P41参

照)に基づき、市町村・都道府県が策定する計画です。

この法律は、急速な少子化の進行等を踏まえ、子どもが健やかに生

まれ育つ環境の整備を図るため、地方公共団体及び事業主に対し、子

育て環境の整備や、仕事と子育ての両立のための取組について行動計

画として策定することを義務付けています。

平成27年3月31日までの時限立法ですが、行動計画は5年を1期と

して策定するため、平成17年度から21年度までを前期計画、22年

度から26年度までを後期計画として策定しています。

イ 本市の次世代育成支援行動計画

横浜市では、子育て環境の整備を進めるための計画として、平成

17年4月に横浜市次世代育成支援行動計画(前期計画)「かがやけ

横浜こどもプラン」(平成17年度~21年度)を策定しました。

さらに平成18年4月、こども青少年局が発足したことに伴い、局設

置の目的である「生まれる前から乳幼児期を経て、青少年期に至る

までのライフステージを縦断する一貫した施策の展開」、「福祉・

保健・教育などの施策分野を横断する取組」を推進するため、平成

20年4月に「横浜市青少年プラン」(平成16年7月策定)と統合

し、次世代育成支援行動計画(前期計画)「かがやけ横浜こども青

少年プラン」として、これを推進してきました。

平成21年には、次世代育成支援対策推進法に基づき、平成22年

度から26年度までを計画期間とする「次世代育成支援行動計画(後

期計画)」を策定し、平成22年6月に公表しました。

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横浜市次世代育成支援行動計画

「かがやけ横浜こども青少年プラン後期計画」

1 理念

未来を創る子ども・青少年は、家族にとっても、社会にとっても、可能

性を秘めたかけがえのない存在です。

子ども・青少年は、やがて大人として成長し、その次の世代を育む側へ

と移っていきます。次世代育成とは、次代の親となる世代を育み、それに

よりさらに次の世代の子ども・青少年を育んでいくという、社会全体の未

来への責任ある取組です。子どもを取り巻くすべての市民が連携して、未

来の世代を育むまち「よこはま」の実現をめざします。

子ども・青少年が健やかに成長し、自立していくためには、周囲から温

かく受け入れられ、安心して毎日を過ごすことのできる「保護」の機能と、

社会に参加し自主性や社会性を育んでいくことのできる「自立支援」の機

能が、成長段階に応じて適切に得られる環境を整備していくことが重要と

なります。子ども・青少年の自立を支えるため、子ども・青少年一人ひと

りが、地域の中で見守られながら、安心して毎日を暮らすことができると

ともに、世代や価値観の異なる他者とふれあいながら、様々な体験を重ね、

自立に向けて生きる力を育んでいくことができるまちづくりを進めます。

また、子ども・青少年が安心して毎日を過ごすためには、子育ての基本

となる家庭が安心して生み育てられる環境の整備が重要となります。すべ

ての子育て家庭が、子どもの成長や家庭の状況にあわせて必要な支援を受

けることができ、子育ての喜びを実感しながら、ゆとりを持って楽しく子

育てができるまち、また、子どもを持ちたいと思う人が、子どもを産み育

てることに希望を持てるまちづくりを進めます。

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4 横浜市の取組
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2 基本的な視点

① すべての子ども・青少年への支援

子ども・青少年一人ひとりの置かれた状況を見ると、本人や保護者に

障害のある家庭や、ひとり親家庭、適切な養育が受けられない家庭など、

それぞれの状況は様々です。子どもの権利条約(※)にもあるように、

子どもの生きる権利・育つ権利を保障する意味で、子どもの視点に立っ

た支援を展開する必要があります。

こうした個別の状況に応じたきめ細かな支援が求められるとともに、そ

れを特別な個人の問題としてとらえて他の子ども・青少年と区別して支援

するのではなく、それぞれの状況や課題を地域社会で広く理解し、受け入

れ、すべての子ども・青少年を同じように地域の中で支えていくことが重

要です。

子ども・青少年が、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援と、すべ

ての子ども・青少年が共通に享受すべき支援との両方を得られる環境を整

えていくため、「すべての子ども・青少年」を対象とすることを基本に計

画を推進します。

※「児童の権利に関する条約」。子どもの基本的人権を国際的に保障するために

定められました。1989年の国連総会において採択され、1990年に発効し

た。日本は1994年に批准しています。

≪5つの基本的な視点≫

① すべての子ども・青少年への支援

② 家庭の子育て力を高める支援

③ 成長段階に合わせた一貫した支援

④ 子ども・青少年の自立に向けた支援

⑤ 社会全体による支援

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② 家庭の子育て力を高める支援

子ども・青少年の健やかな成長にとって、家庭が大きな役割を担って

いることは誰もが認めるところですが、核家族化や地域のつながりの希

薄化に伴い親族や地域からの支えが少なくなるなど、子育てにおける家

庭の負担が大きくなっており、不安や孤立感を抱える家庭も少なくあり

ません。

特に、子ども・青少年や保護者に障害のある家庭やひとり親家庭など

については、個別の状況に応じたきめ細かな支援が求められているほ

か、児童虐待や配偶者からの暴力(DV)等により子ども・青少年に適

切な養育環境を整えられない家庭に対しては、適切な養育環境を提供し

親子がともに地域で継続して生活ができるよう、家庭の全体像を踏まえ

た支援を進めることも重要です。

各家庭が子育てに十分に力を発揮できるよう、個別の状況にかかわら

ず、「すべての家庭」を対象に積極的な支援を行うことを基本に計画を

推進します。

③ 成長段階に合わせた一貫した支援

子ども・青少年が、成長段階に合わせた切れ目ない支援を受けられ

るよう、生まれる前から乳幼児期を経て青少年期に至るまでの長期的な

視点に立った、ライフステージを一貫した施策を展開することを基本に

計画を推進します。

特に、乳幼児期については、子どもが基本的な生活習慣や社会性を養

ううえでも、子育て家庭が子どもを生み育てることに積極的な価値を見

出すうえでも、重要な時期だといえます。子どもたちが、健やかな成長

の基礎となる身近な人への信頼感や自己肯定感を持つとともに、規則正

しい生活習慣を身につけていけるよう、子どもの成長の出発点となるこ

の時期を重点的に支えていきます。

さらに、支援にあたっては、福祉・保健・医療・教育などの分野だ

けでなく、労働・まちづくり・住宅施策など、生活全般にわたる分野で

施策を展開していきます。

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4 横浜市の取組
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④ 子ども・青少年の自立に向けた支援

子ども・青少年は、やがて大人として成長し、次代の親世代となって

いきます。

子ども・青少年が、世代や価値観の異なる他者とふれあいながら、

様々な体験を重ねることを通じて、自らの意志で物事の決定や行動が

でき、その結果に対して責任を負えるとともに、他者への配慮やコミ

ュニケーション能力などの社会性を身につけていけるよう、自立に向

けた支援を行っていくことを基本に計画を推進します。

特に、思春期を迎えた青少年は、体と心の発達の中で、様々な悩み

にぶつかることから、他者との関わりの中で思春期の悩みを乗り越える

ことのできる環境を整えていきます。

また、育ちの過程で困難にぶつかり、ひきこもりや無業状態などの

状況にある若者についても、それぞれの社会・経済的な状況を考慮し

ながら、就労を視野に入れた適切な支援を行うなど、自立に向けた新

たなスタートを応援する環境を整えていきます。

⑤ 社会全体による支援

子ども・青少年の健やかな成長を支えることは、社会全体の未来へ

の責任です。

行政はもとより、家庭、地域、保育所・幼稚園・学校、企業など、

社会全体の様々な担い手が、次世代育成を自らの課題として捉え、それ

ぞれの役割を担いながら次世代育成に積極的に関わっていくことを基本

に計画を推進します。

特に、子ども・青少年が日々を過ごしながら成長していく地域は、子

ども・青少年の自立に欠かせない、多様な他者とのふれあいの場として

重要な役割を担っていることから、地域の大人一人ひとりが、地域の子

ども・青少年に関心を持ち、見守り、積極的に関わる環境を整えていき

ます。

また、子ども・青少年が多くの時間を過ごす学校は、学習の場である

とともに、活動の幅が広がっていく学齢期に社会性を育む場としても重

要な役割を担っており、地域全体が学校により積極的に関わっていく環

境を整えていきます。

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3 基本目標

≪3つの基本目標・4つの施策分野・10 の基本施策≫

(1)第1の基本目標

≪子ども・青少年を育む多様な「成長空間」を創る≫

子ども・青少年が健やかに成長し、自立していくため、地域で温か

く見守られる中で多様な人との交流や体験を得られ、また家庭が子育

て力を高めていけるような、豊かな関わり合いができる場や機会=

「成長空間」を創り出します。

(2)第2の基本目標

≪成長空間を支える「地域力」を高める≫

子ども・青少年とその家庭が豊かな関わり合いを持てる場や機会を

広げていくため、地域の中で支援の担い手を増やし、その連携を図る

ことにより、「成長空間」を支える「地域力」を高めます。

(3)第3の基本目標

≪市民の参画を促す「共生社会」を実現する≫

「地域力」を高めることで、地域に「成長空間」が広がります。

それをさらに推し進め、社会全体による次世代育成につなげていくた

め、市民一人ひとりが当事者意識を持ち、多様な支えあいの輪に参画

する「共生社会」を実現します。

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4 横浜市の取組
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4 基本施策

ここでは若者自立支援に関連する基本施策5をご紹介します。

基本施策5 困難を抱える若者の自立支援

【横浜市こども青少年局 かがやけこども青少年プラン】 http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/action/plan/kodomoplan.html

≪取り巻く現状と課題≫

・一人ひとりの心身の状況や、その状況に至るまでの社会・経済的な

背景が多様で複雑となっている。

・育ちの過程や経済的な要因などで十分な学習機会や体験機会、就労

機会が得られなかった若者が増えている一方で、社会・経済的な自

立に向けた新たなスタートを応援する環境となっていない。

・働き方が多様化する中で、人生の早い時期からの職業意識の醸成や

進路選択に応じた能力の養成が求められるようになってきている。

≪達成目標≫

①一人ひとりの状況に応じて「きめ細かく」、「切れ目ない」相談支

援・情報提供が受けられ、社会参加から就労体験まで、支援プロ

グラムが地域に多様な形で展開されている。

②次のステップアップにつながるための就労の場づくりに向けた検

討が進んでいる。

③学齢期・青年期からの早期支援の仕組みづくりに向けた検討が進

んでいる。

④支援情報やノウハウを蓄積、共有するとともに、支援者を育成す

る取組が充実し、一人ひとりの状況に応じて、社会参加から就労

まで、一歩一歩階段を上がるように経験を積むことができるプロ

グラムのかけはしが構築されている。

≪重点取組と主な事業≫

①相談・支援・情報提供体制の強化と社会参加・就労体験プログラ

ムの充実

・横浜市青少年相談センター(P52参照)、地域ユースプラザ

(P53参照)、よこはま若者サポートステーション(P54参

照)の機能及び連携強化

・よこはま型若者自立塾(P55参照)など社会参加・就労体験プ

ログラム

②次のステップアップにつながるための就労の場づくり

③学齢期・青年期からの早期支援に向けた取組の拡充

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参考 次世代育成支援対策推進法(抜粋)

(平成15年7月施行、平成24年8月改正)

(目的)

第1条 この法律は、我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を

取り巻く環境の変化にかんがみ、次世代育成支援対策に関し、基本理念を定め、

並びに国、地方公共団体、事業主及び国民の責務を明らかにするとともに、行

動計画策定指針並びに地方公共団体及び事業主の行動計画の策定その他の次世

代育成支援対策を推進するために必要な事項を定めることにより、次世代育成

支援対策を迅速かつ重点的に推進し、もって次代の社会を担う子どもが健やか

に生まれ、かつ、育成される社会の形成に資することを目的とする。

(基本理念)

第3条 次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義

的責任を有するという基本的認識の下に、家庭その他の場において、子育ての

意義についての理解が深められ、かつ、子育てに伴う喜びが実感されるように

配慮して行われなければならない。

(市町村行動計画)

第8条 市町村は、行動計画策定指針に即して、5年ごとに、当該市町村の事務

及び事業に関し、5年を一期として、地域における子育ての支援、母性並びに

乳児及び幼児の健康の確保及び増進、子どもの心身の健やかな成長に資する教

育環境の整備、子どもを育成する家庭に適した良質な住宅及び良好な居住環境

の確保、職業生活と家庭生活との両立の推進その他の次世代育成支援対策の実

施に関する計画を策定するものとする。

【総務省法令データ提供システム 次世代育成支援対策推進法】

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO120.html

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4 横浜市の取組
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【協議会の主な取組】

1 当事者目線による子ども・若者育成支援施策の検証と政策提言

支援を受ける困難を抱える子ども・若者の目線に立って、既存の枠組

みを検証し、新たな施策や事業を提言します。

2 NPO、企業、有識者や行政機関の連携による包括的な支援の仕組み

づくり

子ども・若者の育成支援に取り組む市内外の多くの NPO や企業、有

識者や行政機関と連携し、困難を抱える子ども・若者を社会全体で包括

的に支援し、子どもや若者の社会参加を進めるための仕組みを構築しま

す。

(2)横浜市子ども・若者支援協議会

ニートやひきこもりなど若者の自立をめぐる問題の深刻化や、児

童虐待、いじめ、少年による重大事件、有害情報の氾濫など、子ども

や若者をめぐる状況は大変厳しいものとなっています。次代の社会を

担う子どもや若者の健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすも

のであることにかんがみれば、関連分野における知見を総合して諸課

題に対応していくことが必要であると考えられ「子ども・若者育成支

援推進法」(P8)が、平成 22 年 4 月 1 日に施行されました。

本市では、社会生活を営む上で困難を有する若者や子どもたちの育

成・支援のために、全国には例を見ない様々な施策や事業を展開して

きました。

そこで、「子ども・若者育成支援推進法」で定められている「子ど

も・若者支援地域協議会」(横浜市子ども・若者支援協議会)を政令

指定都市では、初めて設置し(平成 22 年)、当事者である子どもや

若者の目線に立って、これまでの施策や事業を検証すると共に、包括

的な支援の仕組みづくりに取り組んでいます。

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【協議会のあゆみ】

平成 22 年度 「思春期問題部会」「相談ネットワーク部会」「人材育成

部会」「就労促進部会」を設置し、それぞれ検討・協議

が行われました。

平成 23 年度 「思春期健全育成部会」「若者自立支援部会」を設置し、

行政を始め子ども・若者の育成支援に関わる関係機関・

団体、地域などが取り組むべき方向性と具体的な施策や

事業についての意見提案「横浜から未来に向けて発信す

る~子ども・若者支援の新たな取組~」が報告されまし

た。

平成 24 年度 「思春期健全育成部会」「若者自立支援部会」を設置し、

子ども・若者の生活実態や意識やニーズ、課題について

の実態調査(P46 参照)を実施し、結果を分析・検証を

しました。また、意見提案(H24.1)があった施策のう

ち、モデル実施するものの検証や今後の青少年施策の展

開についての協議が行われました。

平成 25 年度 「思春期健全育成部会」「若者自立支援部会」を設置し、

活動しています。

ここでは、平成 23 年度に出された横浜市子ども・若者支援協議会

による意見提案「横浜から未来に向けて発信する~子ども・若者支援

の新たな取組~」の概要をご紹介します。

意見1 地域で子ども・若者を見守り、課題を早期発見する仕組みづくり

○地域全体で青少年の育ちを見守りながら、青少年の健全育成に包括的

に取り組む仕組みを確立することが必要です。(思春期健全育成部

会)

○支援につながらない子ども・若者を発見し、適切な相談支援機関やプ

ログラムにつなげ、自立に向けた段階的・包括的な支援を提供してい

く仕組みを確立することが求められています。(若者自立支援部会)

○子ども・若者が気軽に立ち寄れ、他者と関わりながら自己肯定感を育

み、自立に向けて成長できる居場所が求められています。(両部会)

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4 横浜市の取組
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意見2 適切な支援につなげるための総合相談・調整

○困難を抱える子ども・若者に対しては、個別的、継続的、包括的支援

を充実していく必要があります。(両部会)

○福祉、医療、教育、警察、更生・保護、就労・雇用などの分野別専門

相談機関(関係機関等)とのネットワークを構築し、適切な支援につ

なげていく「青少年総合相談センター」を設置し、相談支援の中核機

関とします。(両部会)

意見3 段階的な体験・訓練プログラムから自立につなげる取組

○困難を抱える子ども・若者が他者との共同生活を通じて、自主性や社

会性及び基本的な生活習慣や食生活を身に付け、社会に対する参加意

識を醸成する場や機会が必要です。(両部会)

○各支援機関で個々に実施しているプログラムについて位置づけを明確

化するとともに体系化し、各支援機関が相互のネットワークを強化し

て、より専門性の高いプログラムを提供する必要があります。(両部

会)

○青少年が、自然体験や社会体験を通じて、感動する心や他者への思い

やりの心を育むとともに、規範意識を身に付け、社会の一員であるこ

とを認識する、多様な体験プログラムの提供が求められています。

(思春期健全育成部会)

○若者に長期的・継続的に生活訓練と就労訓練を提供することが求めら

れます。また、不安定にしか社会に繋がっていない困難を抱える若者

たちが安心して生活し、潜在的な能力を発揮して働きつづけることが

できる場が必要です。(若者自立支援部会)

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意見4 子ども・若者を支える社会の仕組みづくり

○地域の方々が、不登校、ひきこもり、非行など思春期の青少年が抱え

る課題やケータイ・インターネット、薬物など青少年を取り巻く環境

について理解を深め、課題の解決に向けて話し合う場を提供するとと

もに、思春期の問題に取り組む青少年育成団体や保護者、学校関係者

などのつながりを深め、地域全体で青少年の育ちを見守る環境づくり

が求められています。(思春期健全育成部会)

○子ども・若者支援人材育成機能を充実し、横浜市にとどまらず、全国

を対象とすることも視野に入れて、段階的・包括的な自立支援システ

ムを支える人材や団体を育成することが課題となっています。(両部

会)

○また、支援を受ける子ども・若者の自己達成感や満足度、自立に向け

た状態像の変化などから、若者自立支援施策の社会的還元効果を誰に

でもわかりやすく説明できるような評価指標の策定が必要です。(若

者自立支援部会)

本市では、この意見提案を踏まえ、具体的な施策や事業について検討

しています。

【横浜市こども青少年局】

http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/ikusei/kyougikai/

(参考)

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4 横浜市の取組
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(3)横浜市子ども・若者実態調査

本市の子ども・若者の実態や困難を抱える若者のニーズ等を把握するため、平

成 24 年度に「横浜市子ども・若者実態調査」が実施されています。調査結果の

概要をご紹介します。

1 調査の全体構造

≪一般市民調査≫

≪施設利用者調査≫

2 調査の実施状況

(1)アンケート調査

目的:子ども・若者が抱える困難状況のマクロ的把握

①基礎数値の把握(ひきこもり数、無業数、各種リスクを抱える者の数)

②子ども・若者が抱える悩み・課題、就労等についての意識や実態の傾向分

析(ひきこもり群・無業群と一般群の比較等) (2)追加調査(ヒアリング) (1)の調査の中で協力者を募り実施

目的:下記(3)の調査で把握できない困難事例の実態把握及び有効な施

策・支援方法の検討

①困難を抱えながら支援機関につながっていない者の事例検証・分析

②支援機関につながらずに困難を克服した者の事例検証・分析

(3)支援機関におけるヒアリング調査

目的:困難事例の実態把握及び有効な施策・支援方法の検討

①困難を抱える子ども・若者の意識や実態についての事例検証・分析

②有効な支援方法・プログラムの抽出

①調査対象

又は対象機関

②標本数 ③方法 ④調査時期

(1)

アンケート

調査

横浜市内に居住する

満15歳以上39歳以

下の男女個人

3,000標本

(住民基本台帳

から無作為抽

出)

郵送配付・訪問回収調

査(調査票を郵送後、

調査員が回収)

平成24年

8月27日~

9月17日

(2)

追加調査

上記アンケート調査

から協力者を抽出

3事例 困難を抱えながら支援

機関につながっていな

い者への聞き取り

平成25年

1月~2月

(3)

支援機関ヒ

アリング調

査 (困難を抱

える当事者

等)

青少年相談センター、

若者サポートステー

ション、地域ユースプ

ラザ

30事例 支援団体・機関等の紹

介を通じて現在支援を

受けている当事者及び

過去に支援を受けてい

た方への聞き取り

平成24年

9月~10 月

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3 各調査結果の概要

(1)アンケート調査の概要

(2)追加調査の概要

(1)ひきこもり状態にある若者の推計人数(約8,000人)

定義:ほとんど家から出ない状態が、6か月以上継続し、かつ、疾病、介護、

育児等をその理由としない者

10人(男性:6人、女性4人)(有効回答数に占める割合 0.72%) が該当

24年1月1日時点の横浜市の年齢別人口において、15~39歳は1,136千人

市内のひきこもり群の推計数は 1,136千人×0.72%=約8,000人

(2)ひきこもり親和群の推計人数(約52,000人)

定義:家や自室に閉じこもりたいと思うことがある等、心理的にはひきこもり

群と同じ意識傾向を持っているが、ひきこもりの状態ではない者

63人(男性:28人、女性35人)(有効回答数に占める割合 4.55%)

市内のひきこもり親和群の推計数は、1,136千人×4.55%= 約52,000人

ひきこもり状態にある人の回答傾向が一般よりも低いと推定されることを勘

案すると、この数値は下限値と考えられます。

(3)無業状態にある若者の推計人数(約57,000人)

定義:「無職」または「派遣会社などに登録しているが、現在は働いていない」

69人〔男性:37人、女性32人〕(有効回答数に占める割合 4.98%)

市内の無業群の推計数は、1,136 千人×4.98%= 約 57,000 人

(1)相談支援機関につながらず、自らの力で困難を乗り越えたケースについ

て、何がポイントになったのかを中心に聞き取りを行いました。

(2)対象となった3人の聞き取りからは、以下の共通点がみつかりました。

① 困難を乗り越えるにあたり、家族・友人の中に、仮に少人数であったとし

ても、信頼できる人がいたことが大きい。

② 現在は、自分が置かれている状況(自分自身の問題、家族や友人関係、学

校や職場の環境など)について、客観的に振り返ることができる姿勢があ

る。

③ 何らかの困難を抱えている人にとっては、身近なところに、相談支援機関

や多様な人と接する場や機会があると良い。

(3)個別の意見として、以下の点は今後の施策推進の参考になると考えられま

す。

① 子どもたちが多様な大人たちと接するためにも、独身の大人が普通に子ど

も達と接する機会を設けるべき。

② 学校の掲示板に、もっと地域の活動をPRする内容のものを掲示すべき。

③ 小・中・高校にも、児童・生徒が気軽に悩みを相談できる場があると良い。

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(3)ヒアリング調査結果の事例紹介

青少年相談センター・20代前半、男性

【外とのつながりを持てなくなったわけ(困難を抱えた経緯)】

中2の頃、同級生とのコミュニケーションが苦手だったこともあり、苦痛になって学校に

通えなくなった。学校には行かなかったものの、仲のいい友人とは毎日遊んでいた。

中3になって遊んでいた友人とトラブルになり、仲間外れにされた。そのことがショック

だったことと、友人と遊ぶために外に出る理由がなくなったことで、それから外に出ること

がなくなった。

家にいることで、人とのコミュニケーションがわからなくなり、さらに苦手になった。

高校へは進学はしたが、コミュニケーションの取り方がわからないまま進学したので、人と

の関係の築き方がわからず、誰とも話をせず、いつも一人でいた。“頑張っていかなきゃ”

と学校へは行っていたが、1年の秋には学校に行けなくなった。その間、以前遊んでいた友

達との関係は修復せず、外にも出られなくなった。高校は、2年の夏頃に退学し、社会のつ

ながりがなくなった。 それから外に出ない状況が2年ぐらい続いた。

【その時に思っていたこと】

家の中では、ずっとテレビとゲームの生活で、その時のことはほとんど覚えていない。で

も“外に出なきゃ”っていう強い思いはあった。でも出られない・・・それがとてもストレ

スになったし、つらかった。

母は心配してくれていて、いろいろなところに相談していた。だんだんと対人恐怖のよう

な感じになり、母親以外とはコミュニケーションをとりたくなかった。

【青少年相談センターに来るようになったきっかけ】

家にいて、すごいストレスが溜まっていった。ある時パニック発作になって、苦しくて、

怖くて病院に行った。それが外へ出るきっかけだった。

センターは、親が見つけて相談していて、それから相談員が家に訪問することになった。

最初の訪問の時は、事前に母から訪問に来ることを聞かされていて、“会いたくない”と反

発した覚えはある。でも、“この生活から抜け出すのは今しかない”、“抜け出したい”と

思ったので、相談員に会うことにした。

会う前は、怖いと思っていたが、会ってみたら想像とは違って、堅苦しい感じではなく、

明るく、陽気な人で恐怖心は少しなくなった。

訪問は月1回ぐらいのペースで来てくれた。相談員と話すことは、社会とのつながりがな

い自分にとってすごく大きい事だったけど、外にはまだ出られなかった。

家庭訪問を受けながら、徐々に病院にも通うようになって、その後センターに行くように

なった。でも一人で外に出るのはまだ怖かったので、センターへは母親と一緒に来ていた。

それが17歳の時。

その後一人でセンターにいけるようになり、相談員からは10代グループに参加を薦めら

れたが、同年代とのコミュニケーションはまだとれないと感じた。まだ年が離れていた方が

話し易かった。

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グループに参加したのは、センターに通って1~2年後だった。まずは少人数のグループ

(ミニグループ)に参加し、徐々に同年代とのコミュニケーションに慣れていった。少人数

は慣れてはきたが、その時は、通信制の高校に週4日通い始めていて、まだ学校生活に慣れ

ていなかったこともあって、次の段階のグループには参加することができなかった。

通信制の学校は、単位をとるために学校に来る人ばかりで、友達を作る場がなく、コミュ

ニケーションが全くなかった。

余裕ができたころ、ミニグループのメンバーと10代グループを見学した。その時は緊張

して酸欠状態になり、手がしびれていたことを覚えている。それからはちょくちょくグルー

プに参加していた。

【支援を受けた感想】

グループ参加には不安があったけど、ほとんどの人が気を使うわけでもなく、特別に接す

るというわけでもなかったので、自然に入ることができた。同じような悩みをもっているメ

ンバー同士だったので、安心できた。

グループは週3回参加。その中で友達もできるようになって、外で遊ぶこともあった。

高校は前の学校の単位があったので、2年間で卒業して、病院に通院しながらしばらくは

センターに通ってアルバイトを探したりしていた。 グループは3年間参加。

センターで一番思い出深い事は、2泊3日の夏期宿泊体験。仲間とたくさん話すことがで

きたこと、新しい仲間とも仲良くなれて、人との関係がうまく築けたと思う。夏期宿泊体験

は参加してよかったと思うし、とてもいい経験だった。

自分がつながりをもてるようになったのは、先輩の利用者が話しかけてくれたり、趣味の

近い人が遊びに誘ってくれたことが大きいと思う。

センターはとても話をしやすい環境だった。

【現在の思い】

今は福祉施設で働いている。

福祉の仕事には興味があった。 “センターのような施設は自分にとって助かっている”

と思ったし、”自分もこのような場所で働きたい”と思って、それが興味を持つきっかけに

なった。 また、刺激を受けたのは親・子宿泊研修。「福祉系の通信制の大学に通って卒業を

して、その後仕事について今では家庭を持っている」という先輩の体験談を聞いて、それが

目標になった。この体験は本当にありがたかった。

去年の9月には、福祉の通信制の大学に入学した。

福祉の仕事は、母親が福祉に興味があることを知っていて、新聞の求人誌で見つけてくれ

た。

今までは面接を10回以上も受けていたが、どれもうまくいっていなかった。相談員から

は「諦めずに続けていくこと、自分の目指すものに近いものは、積極的に挑戦していこう」

とアドバイスをもらっていた。今回は、自分の興味がある仕事でもあったし、福祉の通信制

の大学に行っているし、”うまく話せばいけるかも”と思った。相談員から背中を押された

こともあって、気合も違っていた。

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4 横浜市の取組
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※他に29人の経験談が掲載されていますので是非ご覧ください。

【横浜市こども青少年局】

http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/ikusei/kyougikai/

仕事の内容は、知的障害通所施設で利用している子についていろいろな活動の補助をして

いる。仕事はとても大変だけど、やりがいはある。採用されて3か月、今は利用している人

たちに名前を憶えてもらえるとうれしく感じる。

センターを利用して本当に良かったし、ためになった。今もなかなか友人や親に相談できな

い仕事の事などでいろいろなアドバイスをしてくれて、とても助かっている。

こんな毎日が送れるとは思わなかったし、今では家にいると外へ出たいと思うようになっ

た。

【伝えたいこと】

センターはいろいろ経験ができるしアドバイスもくれる。利用者の人たちもいい人ばかり

で、いい場所。

無理のない範囲で通い続ければ、同じように悩んでいる人も変化していくと思う。小さな

変化で自分自身は気が付かないかもしれないけれど、社会にだんだん適応できるようになっ

ていく場所だと思う。

おとなしい人、人と話すことが苦手な人が身近にいたら、一言でもいいからなるべく声を

かけてほしい。話さないからと言って、話をしたくないわけではない。自分から話しかける

ことができないだけだから、話しかけてくれることがうれしいと感じていると思う。

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(4)子ども・若者自立支援施策

横浜市では、若者たちの状態や段階に応じた多様な社会体験、就労訓練プ

ログラムを実施し、切れ目のない支援を行っています。(下図参照)

今回、本市において支援を行っている、「横浜市青少年相談センター」、「よ

こはま南部ユースプラザ」、「よこはま若者サポートステーション」、「よこはま

型若者自立塾」及び、寄り添い型学習等支援事業(※)を行っている「つるみ

元気塾」を訪問し、お話を伺ってきましたので、次ページからその取材記事を

ご紹介します。

※寄り添い型学習等支援事業

生活保護世帯及び経済的困窮状態にあるなど養育環境に課題があり、支援を

必要とする家庭に育つ小・中学生等に対して学習支援等を行い、将来の進路選

択の幅を広げ、自立した生活を送れるようにすることを目的に実施しています。

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4 横浜市の取組
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【目 的】青少年の健全な育成を目的とする団体等との連携を図りつつ、青少年に関

する総合的な相談並びに青少年の自立及び社会参加の支援等を行うこと

【対象者】15 歳~39 歳までの青少年及びその家族

【開所日】昭和 38 年8月

【開所日時】月曜日~金曜日 8時 45 分~5時 15 分

【場 所】横浜市南区浦舟町 3-44-2 4 階

【相談・支援方法】電話相談、家庭訪問、来所相談

【支援活動】グループ活動、短期宿泊体験、社会参加体験事業、家族勉強会、ユース

サポーター訪問事業、きっかけづくり講座

【運 営】横浜市

横浜市青少年相談センター

横浜市青少年相談センターでは、相談員一人で 80~100 人の相談者を

担当しています。

ひきこもりや不登校の相談では、まずご家族が来て、それから本人が来

る場合が大半です。本人が回復してくるとグループ活動や社会参加体験

などを利用しますが、まだまだ種類が少ないため、利用できる支援メニ

ューの幅を広げていくことが課題だそうです。

「ひきこもりは怠けであるとか甘えているからだとか、世間で多くの場

合誤解されています。ひきこもっている若者が心の中で、自分自身を責

め続け苦しみもがいている事実を知ってもらえたらと思います。」

「若者が、転んでも再チャレンジできる社会になることを願っていま

す。」と現場で働く相談員の方からお話を伺いました。

100 人もの個々の相談に応じ、ケースごとに適切な対応を検討する現

場の苦労を感じるとともに、若者の自立支援=就労支援と捉えるだけで

はなく、就労以前に社会に出るきっかけを作るという支援も欠かすこと

ができないと改めて感じました。

≪外観≫

≪相談室≫

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よこはま南部ユースプラザ (地域ユースプラザ)

働くことや自立に悩む若者と家族のための総合相談窓口、地域ユース

プラザは横浜市内に方面別で4か所あります。

南部ユースプラザは根岸駅の近くにあり、港南区・磯子区・金沢区・

戸塚区・栄区の南部エリアを中心に、ひきこもりからの回復期にある若

者をサポートしています。

自由に過ごせるフリースペースと専門スタッフに相談できる相談スペ

ースがあります。ボイストレーニング、スポーツ、パソコンセミナーな

どのプログラムが毎日開催されています。

スタッフに相談したり、利用者同士友達になったり、プログラムやイ

ベントを楽しみながら、自立に向けて一歩ずつ進んでいます。

【目 的】青少年相談センターや若者サポートステーションの支所的機能を有し、思

春期・青年期問題の第一次的な総合相談や、自立に向けた青少年の居場所

を運営するほか、地域で青少年の支援活動を行っているNPO法人等の団

体や区と連携を図り、地域に密着した活動を行うこと

【対象者】おおむね15歳~40歳未満の若者及びその家族

【開所日】平成20年11月

【開所日時】月曜日~土曜日 11時~19時

【場 所】横浜市磯子区西町12−1

【事業内容】・第一次的な総合相談(電話・来所相談、継続した来所面接、訪問)

・ひきこもり状態からの回復期にある若者の居場所

・社会体験、就労体験のプログラムの実施

・地域の関係支援機関、区役所との連携及び地域ネットワークづくり

【運 営】特定非営利活動法人コロンブスアカデミー

≪相談スペース≫

≪フリースペース≫

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4 横浜市の取組
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よこはま若者サポートステーション

働きたいのに一歩が踏み出せない 15 歳~40 歳未満の若者に対して 1

対 1 の個別相談、自信をとりもどすためのプログラム、協力事業所での

就労体験などにより、就労に向けた支援を行っています。

様々な事情や困難を抱え、従来のキャリア相談だけではすくいきれな

い悩みに対して、個別的継続支援を行って、一歩踏み出す勇気とそれを

支える条件を整備することもサポートステーションの大きな役割です。

中間的就労(※)の取組にも力を入れている運営法人の理事長は、

「生活困窮者自立支援法(P57参照)が成立したことにより、生活困窮

者が自立に向かうための仕組みが整備されるが、そもそも若者が生活困

窮者にならないための仕組みが必要」とサポートステーションの重要性

を話してくださいました。

※様々な理由で一般的な仕事に就くことが難しい人が、就労体験や軽作業に従事

しながら自立を目指す就労形態

≪利用者の声≫

【目 的】地域や企業、NPO法人等とネットワークを構築し、若年無業者の

就労に向けた包括的・継続的な支援を実施することで、社会的自立、

職業的自立を図ることを目的とする。

【対象者】15歳~40歳未満の若者とその保護者

【開所日】平成18年12月

【開所日時】月曜日~土曜日 10時~18時

【場 所】横浜市西区北幸1-11-15 横浜STビル3階

【事業内容】

・職業的自立に向けた個別相談

・自信をつけるプログラム、職場体験・就労訓練プログラム、就職活動支援

プログラム

・他の団体や機関への橋渡し

・学校連携

・職業資格取得の促進(資格取得に関する経済的支援等)

【運 営】特定非営利活動法人ユースポート横濱

≪相談スペース≫

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よこはま型若者自立塾

よこはま型若者自立塾とは、長期にわたって不登校・ひきこもり・無

業などの状態にあった若者に対し、地域活動やボランティア、共同生活、

就労体験等を通じて、生活リズムを取り戻し、働くための力を身につけ

るプログラムです。

スタッフとして働いて4年目の石原さんは、ひきこもり経験者で、よ

こはま型若者自立塾の利用者でした。農業体験プログラムを機に、気持

ちが就労へ向かったそうです。

現在は、磯子区の農園でスタッフとして塾生6名とともに寮で暮らし

ながら働いています。

運営法人代表から、「働く喜びを実感してもらいたいです。ひきこも

っていた若者たちが農業などの就労体験によって少しずつ変わっていき

笑顔が見られるようになります。支援される側から支援する側へと成長

していく循環型社会を目指しています。」というお話を伺いました。

≪スタッフの石原さん(左)と塾生の鈴木さん(右)≫

≪農園≫

【目 的】地域活動やボランティア、共同生活、就労体験等を通じて、生活リズ

ムを取り戻し、働くための力を身につける

【対象者】不登校・ひきこもり・無業などの状態にあった 15 歳~40 歳未満の

若者

【短期就労体験プログラム―JOB CAMP(ジョブキャンプ)】

宮城県石巻市での復興支援ボランティア合宿や横浜での物産販売を実施

【長期合宿型プログラム―250にこまるソーシャルファーム】

農地に隣接する寮(アパート)での合宿生活。日中は農地で畑づくりや、寮

の整備等を行いながら、生活習慣を改善し、働く経験をしていく

【場 所】横浜市磯子区岡村7丁目(農地)

【運 営】特定非営利活動法人ヒューマンフェローシップ

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つるみ元気塾(寄り添い型学習等支援事業)

つるみ元気塾は、鶴見区役所の委託を受けて、平成 25 年1月に一戸建

ての民家を利用しスタートしました。

私が訪問した際には、利用している子どもたちは皆礼儀正しく、元気

に挨拶してくれました。「貧困、生活保護の連鎖を断ち切り、子どもた

ちに夢をもってもらいたい。子どもたちは確実に成長している。」と施

設長の須田さんから伺いました。

施設の運営には地域の方々の理解が欠かせません。子どもたち皆で近所

のゴミ拾いや公園の水やりをしたり、お祭りやイベントを地域の方々と

一緒に行うことで、地域に溶け込む努力をしています。

頼りになる(頼れる)大人が身近にいることで、子どもたちは安心し

成長することができます。子どもたちに“寄り添い”ながら支援ができ

る制度が増えることで、「学校」や「家庭」以外の居場所で、大人にな

る準備を整えることができます。

【活動の様子を facebook に掲載しています】

https://www.facebook.com/tsurumihotlink

≪外観≫

≪勉強部屋≫

【目 的】子どもたちに、自信・達成感・肯定感をもたせ、円滑な学校生活を

送るための支援などを行う

【対象者】家庭環境等により支援を必要とする小中学生

【場 所】横浜市鶴見区本町通3丁目

【開所日時】月~金の 13 時~18 時

【支援内容】宿題のフォロー、挨拶や礼儀、身だしなみ、食事・おやつや翌日

の準備の基本的な生活習慣の習得

【運 営】特定非営利活動法人あしほ

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参考 生活困窮者自立支援法(抜粋)

(平成25年12月公布、平成27年4月施行)

(目的)

第1条 この法律は、生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保

給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずるこ

とにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この法律において「生活困窮者」とは、現に経済的に困窮し、最低限度

の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。

(生活困窮者自立相談支援事業)

第4条 都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業を行うものとする。

2 都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業の事務の全部又は一部を当該都

道府県等以外の厚生労働省令で定める者に委託することができる。

3 前項の規定による委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれら

の者であった者は、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしては

ならない。

(生活困窮者住居確保給付金の支給)

第5条 都道府県等は、その設置する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する

生活困窮者のうち第二条第三項に規定するもの(当該生活困窮者及び当該生活

困窮者と同一の世帯に属する者の資産及び収入の状況その他の事情を勘案して

厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、生活困窮者住居確保給付金を支

給するものとする。

2 前項に規定するもののほか、生活困窮者住居確保給付金の額及び支給期間そ

の他生活困窮者住居確保給付金の支給に関し必要な事項は、厚生労働省令で定

める。

(生活困窮者就労準備支援事業等)

第6条 都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給

付金の支給のほか、次に掲げる事業を行うことができる。

一 生活困窮者就労準備支援事業

二 生活困窮者一時生活支援事業

三 生活困窮者家計相談支援事業

四 生活困窮者である子どもに対し学習の援助を行う事業

五 その他生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業

(生活困窮者就労訓練事業の認定)

第 10 条 雇用による就業を継続して行うことが困難な生活困窮者に対し、就労

の機会を提供するとともに、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な

訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業(以下この条において

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「生活困窮者就労訓練事業」という。)を行う者は、厚生労働省令で定めると

ころにより、当該生活困窮者就労訓練事業が生活困窮者の就労に必要な知識及

び能力の向上のための基準として厚生労働省令で定める基準に適合しているこ

とにつき、都道府県知事の認定を受けることができる。

2 都道府県知事は、生活困窮者就労訓練事業が前項の基準に適合していると認

めるときは、同項の認定をするものとする。

3 都道府県知事は、第一項の認定に係る生活困窮者就労訓練事業(第十五条第

二項において「認定生活困窮者就労訓練事業」 という。)が第一項の基準に

適合しないものとなったと認めるときは、同項の認定を取り消すことができる。

(雇用の機会の確保)

第 11 条 国及び地方公共団体は、生活困窮者の雇用の機会の確保を図るため、

職業訓練の実施、就職のあっせんその他の必要な措置を講ずるように努めるも

のとする。

(罰則)

第 20 条 偽りその他不正の手段により生活困窮者住居確保給付金の支給を受け、

又は他人をして受けさせた者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処す

る。ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条があるときは、刑法に

よる。

第 21 条 第四条第三項(第六条第二項において準用する場合を含む。)の規定

に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第 22 条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 第十五条第一項の規定による命令に違反して、報告若しくは物件の提出

若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出若

しくは提示をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、答弁

せず、若しくは虚偽の答弁をした者

二 第十五条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

第 23 条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の 従業

者が、その法人又は人の業務に関して第二十条又は前条第二号の違反行為を

したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑

を科する。

【厚生労働省 生活困窮者自立支援法】

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsu

hogo/0000024812.html

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コラム 海外の取組

1 フィンランド「ユースセンター」

社会的に排除されがちな若者(移民や障害者等)を含め、誰でも気軽に立ち

寄り、悩みを相談し、語り合う中で、相互の助け合いのネットワークを築いて

いくことのできる施設です。

また、文化やまちづくり、多文化共生、環境保全などをテーマにした活動プ

ログラムを通じて若者の社会参加を促進しています。

首都ヘルシンキ市(人口約59 万)では、市内を13の地域に分け、各地域

に4~5館のユースセンターが設置されており、市全体では50館を超えます。

ユースセンターの運営は、若者支援団体が担っていますが、どのユースセン

ターでも10代後半から20歳前後の多数の若者たちがボランティアとして施

設運営を支えています。

またユースセンターを拠点に、若者たちが地域の街づくりについて、行政に

提案を行うケースが多々あり、例えば空き地に「スケートパーク」の整備を提

案したグループが、行政との交渉や資金調達、近隣住民との合意形成まで全て

を担い、自らの提案を実現した例もあります。

2 イギリス「コネクションズ」

イギリスでは、関係機関が協働し、様々な専門性をもつコネクションズ・

パーソナルアドバイザーのネットワークによって、個々の若者が必要とする

問題解決のための支援が行われています。

バーミンガム市では、「個人を尊重し、秘密を守って相談できる場所がほ

しい。様々な情報が取れる場所がほしい。」という若者の声を受けて運営さ

れています。

対象は若者全般ですが、麻薬、お金、家庭内暴力、DV、妊娠などの課題

を抱えた若者に長期的に関わっています。「自分が抱えた悩み、例えば金銭

トラブルや性感染症など、どこに相談にいけばよいかも分からない」という

若者に対し、必要に応じて専門家とともに相談にのり、適切な機関につなぐ

役割を担っています。

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3 ドイツ「生産学校」

旧来の学校教育制度を超えて、いつでも入学可能な2年制の第二の学校で、

正規の教育コースから中退した15歳〜 25歳の若者の教育・訓練の場です。

1クラス10人で編成され、実際の授業の中で建築・建設、情報技術、手

工技術、機械技術、調理、商業・事務・会計などの生産活動に従事し、労働

や学習の意味を体得し、就労や復学など次のステップに進むことをめざして

います。

就学中は手当てが支給されます。

4 オーストラリア「宿泊サービス(Accommodation Services)」

概ね13〜19歳で、親子関係が悪化したために家庭で暮らせない青少年を受

け入れ、自立に向けてサポートする最長2年間の宿泊型支援施設です。

住まいの提供、衣食住に関する生活スキル訓練、学習支援、就職支援が系統

的に行われ、進学または就職できる段階までを親に代わって支援しています。

具体的には、国からの給付金で生活を支えられるよう金銭管理を中心に、ス

ーパーでの買い物、料理の仕方など、自立した後も限られた収入で家計を維持

できるための実践的な支援を行っています。

横浜市子ども・若者支援協議会

http://www.city.yokohama.jp/me/kodomo/ikusei/

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Page 63: 若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて...2018/08/09  · 2013第8回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

5 参考図書一覧

市会図書室では、若者の自立支援に関連する次のような資料を配架し(配架予定を含

みます)、閲覧・貸出を行っております。ぜひご活用ください。

孤立無業(SNEP)

働くのをあきらめた「ニート」に続く、新しいタイプの未婚

無業者=「スネップ」が急増。彼らは社会と接点がなく、ずっと

ひとりか、家族だけと暮らしている。生活力もないまま、ゆく

ゆくは生活保護へ。社会的コスト増大の危険は深刻だ。

◇著 者:玄田有史

◇出版社:日本経済新聞出版社

◇発 行:平成25 年8月

若者と労働―「入社」仕組みから解きほぐす

就活、ブラック企業、限定正社員、非正規雇用……

様々な議論の中でもみくちゃになる若者の労働問題。

日本型雇用システムの特殊性とは?

そして、現在発生している軋みの根本原因はどこにあるのか?

労働政策に造詣の深い論客が、雇用の「入口」に焦点を当てた

決定版。

感情論を捨て、ここから議論を始めよう。

◇著 者:濱口桂一郎

◇出版社:中央公論新社

◇発 行:平成25 年8月

若者問題の社会学―視線と射程

海外の社会学者が構築主義のアプローチから日本の「若者問

題」を分析。援助交際やひきこもりといった社会問題が存在す

るかどうかよりも、それがいかに社会問題化されるのかという

プロセスに注目することで、従来の若者論とは異なった風景が

我々の前に立ち上がる。

◇著 者:ロジャー・グッドマン、井本由紀、

トゥーッカ・トイボネン

◇出版社:明石書店

◇発 行:平成25 年6月

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大卒だって無職になる―“はたらく”につまづく若者たち

大卒無職 急増中!!

知識も能力もあるのに働けない……

一体、彼らは何につまづくのか?

若者支援の最前線の現場で

現代の若者たちの“つまずき"から“立ち直り"までを追った

6 つのストーリー

◇著 者:工藤啓

◇出版社:エンターブレイン

◇発 行:平成24 年10 月

若者が無縁化する―仕事・福祉・コミュニティでつなぐ

高校中退者、若者ホームレス、低学歴ニート、世の中から切

り捨てられ、孤立する若者たち。社会に彼らをつなぎとめるた

めに、現状を分析し、解決策を探る一冊。

◇著 者:宮本みち子

◇出版社:ちくま新書

◇発 行:平成24 年2 月

二極化する若者と自立支援―「若者問題」への接近

二極化する社会の中で排除され貧困化する若者たち。学校、

就職、終身雇用というこれまでのレールが機能しなくなった今

日、若者の自立はいかにして可能か。教育、企業、地域社会の

さまざまな現場にひそむ問題を明らかにし、今後の具体的な解

決策をさぐる。

◇著 者:宮本みち子、小杉礼子

◇出版社:明石書店

◇発 行:平成23 年11 月

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若者就労支援「静岡方式」で行こう!!

若者の驚くべき変容ぶりに感動!

静岡方式はとてもシンプル、「どんな人でも働ける」という

信念を、ただちに実行に移すだけ!

多様な引き出しをもつ「素人(サポーター)」集団が緊密に

連携、働けない若者を働ける若者に変える! 若者に寄り添

う伴走型支援のノウハウのすべてを明らかに。

◇著 者:津富 宏

◇出版社:クリエイツかもがわ

◇発 行:平成23 年10 月

青少年・若者の自立支援―ユースワークによる学校・地域の再生

人間的成熟と社会を見る眼をどこでどのように養うか、これ

こそが今日の青少年問題である。心理主義の限界を踏まえつつ、

社会学的観点からグループのもつ人間的成長機能を再認識し、

現代の若者が抱える自立への課題とその困難性を多角的に考

察。

◇著 者:柴野昌山

◇出版社:世界思想社

◇発 行:平成21 年9月

ニート―フリータ―でもなく失業者でもなく

出生率 1.29。若年層の経済基盤が弱体するなか、さらにも

うひとつの問題が深刻化していた。2000年に17万人、2003

年に40 万人、今年はさらに……。働くことにも学ぶことにも

踏み出せないニートが急増している。少子化が進むなか、日本

経済にも根深い影響を与えはじめた「ニート」。この時代の鮮や

かな分析と新しい希望がここにある。

◇著 者:玄田有史、曲沼美恵

◇出版社:幻冬舎

◇発 行:平成18 年8月

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Page 66: 若者の自立支援 無業・ひきこもりからの自立にむけて...2018/08/09  · 2013第8回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

あとがき

今回この市会ジャーナルの作成にあたり、横浜市が行っている若者自立

支援の現場に行く機会を得ました。

施設の皆さんは若者たちと真剣に向き合い、一歩でも前に進めるように

と一生懸命でした。

「若者」を支援の対象とするようになってからまだまだ日が浅く、十分

な支援を受けられない若者もたくさんいます。また、無業・ひきこもりは

怠けているだけだという偏見もあります。

若者たちの前に進もうとする気持ちが大切なのはもちろんですが、社会

の理解も欠かすことはできません。

無業・ひきこもりは誰にでも起こり得る身近な問題です。

私自身、初めに就職した会社は1年で退職してしまい、飲食店でアルバ

イトをしたり、中国で日本語教師をしたり転々とし、29歳の時、横浜市

に入庁することができました。

期間は短いですが、何もせず家にひきこもっていた時期もありました。

いろいろ思い悩んでいたあの頃、今回取材させていただいた施設の支援

を受けられていたら、どんなに気持ちが楽になっただろうと思いました。

つまずいた若者たちが早い段階で支援を受けることができ、何度つま

ずいてもやり直せる社会になってほしいと願っています。(Y.S.)

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