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飲食店の安全衛生活動好事例集

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飲食店で安全に健康で働く ために

1  平成 23年の労働災害は 4,170件

  飲食店における休業 4日以上の労働災害による死傷者数は、 こ こ数年 4,000人を超えています。

2 「 転倒」と「 切れ・ こすれ」で過半数

  労働災害の状況を事故の型別でみると 、「 転倒」 が

最も 多く 、 次いで「 切れ・ こ すれ」、「 高温・ 低温の

物と の接触」 と なっています。

3  あなたの職場は大丈夫?

  あなたの職場に危険の芽が潜んでいないか点検

してみましょ う 。

  □  安全衛生管理の責任者・ 担当者が決めら れて

いますか?

  □  厨房、 フロ ア、 階段、 通路等ですべり やすい

箇所はあり ませんか?

  □  包丁等による切れ災害の防止措置はと っていますか?

  □  食品加工用機械による切れ・ こ すれ、 はさ まれ・ 巻き込まれ災害の防止のために、 安全防護

措置をと ったり 、 機械の使用方法を教育していますか?

  □  やけどを防止するための教育をするなどの対策をしていますか?

  □  換気不足による一酸化炭素中毒の防止措置はと っていますか?

  こ のパンフレッ ト では、 安全衛生活動に取り 組んでいる飲食店の具体的な取組をご紹介していま

す。 これらを活用して、 あなたの職場でできるこ と から実践してみてく ださい。

図 1 飲食店での労働災害による死傷者数の推移( 休業 4 日以上)             ( 労働者死傷病報告: 厚生労働省)( 中災防 HP 労働災害分析データより )

図 2 事故の型別労働災害発生状況( 労働者死傷病報告: 厚生労働省)

( 円グラフは 6 年分( 平成 18~ 23 年)のデータより 作成。 中災防 HP 労働災害分析データより )

飲食店の安全衛生活動好事例集  1

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声かけや面談、さ らには飲み会・レクリ エーショ ンを

通じて従業員のコミ ュニケーショ ンを図る

  昭和 7年創業のおでん店。 テーブル席、 座敷をあわせ 100席ほどのお店を 8~ 9人で切り 盛り し

ている。 冬場の繁忙期は 12人体制のと きもある。 調理場に 3人、 おでん場に 2人が入る。

  営業時間は基本的に 15時から 23時。定休日は日・祝。昼の 12時ごろから 14時までが店舗の清掃、

仕込みの時間で、 営業前の 14時 45分から 10分間は朝礼の時間にしており 、 さ まざまな事項を伝

える中でケガをしないよ う に注意を促している。 営業中は順番に休憩をと る。 営業終了後は、 深夜

になるため従業員が速やかに帰宅できるよ う に段取り をして仕事を進めている。

  ヒ アリ ングは、 店舗の代表者 1名に聞きと り をした。

1  声をかけあって配膳

  これまであった労働災害は休業までには至らないケースがほと んどである。 事故の型で多いのは、

包丁で手指を切るこ と と やけどである。

  包丁を無理なく 扱う ためにはきれいな状態を保つこ と 、 手入れが十分でないと ケガの原因と なる

ので調理器具の手入れは徹底するこ と と している。 また、 置き場所を決め、 必ず元に戻すよ う にし

ている。

  おでんを扱う ので、 熱いだしを運んだり 、 火にかけたり と いった作業が頻繁にある。 熱いものを

お客様にお出しする時には「 熱いのでお気をつけく ださ い」 と 声をかけるのだが、 従業員同士でも

運ぶと きは「 後ろ、 鍋、 通り ます」 など声をかけ合う こ と でぶつかるこ と を防ぐよう にしている。

  店舗内で通路が死角になっていると こ ろには、 人の出入り

がわかるよ う 壁にカーブミ ラーをと り つける工夫も している

( 写真)。

  また、 重い物を運ぶと き、 腰を痛めてしまう こ と も 考えら

れるので、物を持ち上げる正しい姿勢を教え、面倒く さがらず、

その体勢をと るこ と と している。

写真  店舗内に設置されたカーブミ ラー

主な業務内容職人により 仕込んだおでんを中心に一品料理、 季節の料理、 アルコール類を提

供する。

労働者数正規従業員 6名

パート タイム労働者 4名

店舗数 1店舗

おでん店

2 飲食店の安全衛生活動好事例集

事例1

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2  コ ミ ュニケーショ ンをよく する飲み会やレク リ エーショ ン

  従業員のコ ミ ュニケーショ ンをよ く するための試みと して、 毎月第 3土曜日は営業終了後に従業

員の飲み会を開く よ う にしている。 また常連のお客様と 従業員で毎年、 レク リ エーショ ンを行って

いる。 今年はお客様 10名と 従業員と その家族を含んだ総勢 30名ではぜ釣り に行く 予定である。 こ

れは、 お客様と ゆっく り 話をする機会を持つこ と で共通の話題を持ったり 、 従業員同士が仕事以外

の話をするこ と で親睦を深める場になっている。

3  健保組合の資料を活用

  飲食業関連の国民健康保険組合に所属してお

り 、 そこから健康づく り に関する情報を入手し、

従業員に周知している ( 資料 1)。

  例えば、 健保組合で配布さ れた小冊子『 あな

たの健康を守る 100のヒ ント 』 では、 健康を守

るヒ ント と して 100種類のアク ショ ンプランが

イラスト と と もに紹介されている。「 ちょ っと だ

け」、「 やれる こ と だけ」 でも 実践でき る よ う 、

従業員に健康づく り を促す材料と して活用して

いる。

4  個人面談で話を聞く

  従業員の健康管理については、店主が気を配り 、就業前に体調が悪そう な場合は、皆の前ではなく 、

個人的に話を聞く よ う にしている。

  また体の面だけでなく 、 近年はメ ンタルヘルスにも配慮しており 、 店主が意識して声かけをする

などして、 従業員の不調にできるだけ早く 気づけるよう に心がけている。

  年に 2回は店主と 従業員が個人面談をする機会を設けている。 そこ では現在の仕事の満足度や将

来について、 また職場でのこ と だけでなく 、 その人が抱える家族や人間関係などの話も含め、 少し

でも悩みの解決の手伝いをしたり 、 問題を共有するこ と で楽になるこ と ができるよ う にしている。

  メ ンタルヘルスケアについては今後も 、 配慮しながら進めていきたいと 考えている。

資料 1  健保組合が提供する健康づく り に関する資料       ( 発行: 東京法規出版)の一例

飲食店の安全衛生活動好事例集  3

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う どん店

飲食業組合を通じた情報を活用して

街を活性化する飲食店経営を続ける

  昭和 30年に小料理屋と して開業し、 その後昭和 54年にビル( 11階建て、 店舗は 1階) への入

居を機会に手打ちう どん店に衣替えして営業を続けている。 ヒ アリ ングをした 1店舗の営業時間は

11時 30分~ 23時 30分まで。 従業員と パート タイム労働者で、 昼食、 夕食時を中心に 3~ 4名で

店舗運営をしている。

  ヒ アリ ングは、 店舗の代表者 1名に聞き取り をした。

1  気を使う のは包丁と 火の取扱い

  家族を中心に、 長年勤めているパート タ イム労働者と 営業しているこ の店舗では、 こ れまで大き

な労働災害は起きていない。製麺のための機械等は一切使わず、手打ちのう どんを提供しているので、

ミ キサーやカッ ターでの事故もない。

  ヒ ヤリ ハッ ト 事例と しては、 年配のパート タ イム労働者が、 ガス台の壁につるしてあった鍋を取

ろう と して、 袖口に火がつきそう になったこ と がある。

  日々の業務の中で、 安全衛生上気をつけているこ と は、 包丁の扱いと 火の取扱いである。 四季を

通じて数十種類もある メ ニューへの注文に対応し、 調理も配膳も皆でこ なすと いう 方法をと ってい

るため、 お昼時などはガス台での調理と 包丁を扱う 作業を背中合わせで行う 場合があるが、 厨房は

限られたスペースなので、最も注意を要する。作業者同士がすれ違う 場合は、右側に避けると いう ルー

ルを作り 、 これを守るこ と で、 ぶつかるこ と のないよう にしている。

  また、 こ の店舗が入居しているビルには、 他にも飲食店や会社事務所が多数入居しており 、 防火

に関しては定められた場所に消火設備を設置したり 、 ビル全体での避難訓練に参加するこ と で、 防

災意識を高めるよう にしている。

2 組合からの情報を有効活用

  この店舗は地元の飲食業生活衛生同業組合に所属している。 組合では機関紙等を通じ厚生労働省

や自治体からの保健・ 衛生の情報提供、 飲食業界の動向を学ぶ講演会の開催、 長年生活衛生の向上

主な業務内容 粉をねると こ ろから全工程を手作業で行う 、 手打ちう どんの店。

労働者数正規従業員 3名

パート タイム労働者 5名

店舗数 2店舗

事例2

4 飲食店の安全衛生活動好事例集

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に貢献した人物の表彰、 生活衛生関連業務の営業に関する相談窓口の設置、 組合独自のホームペー

ジを利用したお店の PRなど、 さ まざまな側面のサポート をしている。

  例えば、「 喫煙ルールステッ カー」 は

組合がいろいろなパタ ーンのス テッ

カーを作成し、 組合員に配布している

( 資料 1)。 こ う し たも のがあれば、 各

店舗にあったも のをすぐに利用でき、

入店前にお客様に喫煙のルールを知っ

ても ら い、 飲食を楽しんでも ら う こ と

ができ、 苦情の減少にも つながってい

ると いう 。

  飲食店の営業上最も敏感になる食品

衛生・ 安全に関する情報も 、 組合を通

じて各店舗に知らされている。 例えば、

ノ ロ・ ウィ ルスやインフルエンザと いっ

た感染症に関する情報も 流行具合や手

洗いの方法などについて、 必要に応じ

て従業員に知らせている。

  組合を通じて、 国民健康保険組合に

も 所属しており 、 従業員( パート タ イ

ム労働者も 含む) はそこ で定期健康診

断を受診している。

3  定期的なチェッ クでゴキブリ 駆除

  小麦粉を扱う ので、 ゴキブリ 等の害虫の発生には注意を払っている。 そのため、 民間業者による

害虫駆除サービスを受けている。4週間に 1度、ゴキブリ 等の生息状態の確認や目視調査により チェッ

ク を受け、 駆除剤や調査ト ラ ッ プの設置をし 、 衛生的な環境を継続できるよ う にしている。

4  街の活性化の一翼を担って 

  以前に比べると 、 地元の飲食業組合への加入数は少なく なってきているが、 30歳代のオーナーの

店舗も少なからずある。 また、 組合主催の後継者育成事業と して「 飲食店で使える料理コンクール」

を開催するなど、 次世代の人材育成や個人店の活性化を目指し、 街をにぎやかにする飲食店の使命

を果たしていきたい、 と 考えている。

資料1   喫煙ルールステッ カー活用のためのチラシ

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そば店、 喫茶店他

最善の取り 組みを継続するこ と で

リ スク管理を

  主に駅構内においてそば店、 喫茶店、 カレー専門店などを運営する( 一部にはフラ ンチャイズ経

営の店舗もある。 以下「 FC店」 と いう )。 1店舗には平均 20人が所属し、 そのう ち正規従業員は店

長が 1名程度である。 店舗によって差異はあるが、 営業時間は 7時~ 23時までで、 年中無休の場

合が多い。

  ヒ アリ ングは本社の総務部総務課長兼人事課長、 営業部営業第一課長の 2名に聞き取り をした。

1  再発防止のために本質的な安全を追求

  労働災害は、転倒、やけど、包丁による切り 傷などがあるが、重篤なケガはほと んど起きていない。

労働災害があった場合は 1週間に一度開催している部課長連絡会議において、 報告される。 原因が

どこにあったか分析し、 可能な限り 再発防止対策をと るこ と と している。

  こ れまでの再発防止対策の例と しては、 転倒があった床を滑り にく いタイルに張り 替えたり 、 野

菜を切る際に包丁で指を切ってしまったこ と があったので、 それ以降はカッ ト 済み野菜を使う よ う

に変更したこ と などがある。 費用がかかるこ と ではあるが、 本質的な安全を追求するこ と を優先し

て実施している。

  駅構内と いう 限られた空間であるので、 制約があり 、 すぐに改築するこ と が難しい部分もあるが、

可能な範囲を模索しながら行っている。

  食のリ スク 管理( 食中毒、 賞味期限切れ、 誤販売等) には細心の注意を払っている。 平成 23年

12月には清掃、 温度管理など、 食品衛生上欠かせない事項について解説した『 食品衛生・ 商品管理

マニュアル』 を本社で作成し、 各店長に教育した。 食品納品時の確認事項や商品・ 食材の期限につ

いてはチェッ ク シート を用いて、 誰もが同じよ う に、 抜けがなく できるよ う 対策をと っている。 ま

た食品衛生に関しては毎月 1回、 細菌検査を行っている。 また 3 ヵ 月に 1回は外部の業者による衛

生点検を行っている。 第三者の立場でチェッ ク しても ら う こ と で、 いつも厨房にいる従業員が見過

ごしてし まう よ う な部分についての指摘や違った視点からの意見をも ら い、 改善につなげている。

検査結果については社内で情報を共有するよ う 、 書類を回覧している。 店舗の従業員には店長を通

じて、 掲示するなどの方法で伝達している。

主な業務内 容 主に駅構内における飲食店の経営。

労働者数正規従業員 約 57名

パート タイム労働者 約 230名( 飲食の店舗に関わる者のみ)

店舗数 10店舗

事例3

6 飲食店の安全衛生活動好事例集

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2  季節ごと に安全衛生教育を実施

  親会社である鉄道会社の安全運動キャンペーンなどにあわせて、 定期的に教育・ 訓練を行ってい

る ( 資料 1)。 実施に当たってはその計画と 実施結果を親会社に報告している。

3  他社の活動を学んだり 、 積極的な情報収集を図る

  今年度よ り 本社の安全衛生担当者の意見によ り 、 中央労働災害防止協会( 以下「 中災防」 と いう )

の賛助会員に加入した。 会員になるこ と で安全衛生に関する情報を確実に入手できるよ う になり 、

研修を受講しやすく するなど支援体制を整えた。 それ以降、 安全衛生への関心を促すポスターなど

を安全週間や労働衛生週間など時季に応じてエレベーターホールや事務所内に掲示している。 さ ら

に、 中災防で年 1回開催している全国産業安全衛生大会に本社と 現場の従業員を参加させ、 全国の

事業場で行われている安全衛生活動の状況を学ばせるこ と と している。 他社の実際の活動を聞いた

り 、 他業種の取り 組みを知るなどの実体験は、 必ず自社の活動の糧になると 考えている。

  FC店では親会社の安全衛生や食品衛生基準が設けられているものもあるので、 それらに則って仕

全国火災予防運動

( 3月・ 11月)①消防用設備、 消火器、 防災用品の点検、 使用方法の再確認

②閉店時「 点検表」 によるチェッ クの再徹底

③店舗周り 、 ゴミ 置き場の巡回強化

④各店長は火災発生を想定し緊急連絡網により 通報訓練を実施 

全国交通安全運動

( 4月・ 9月)・ 各店舗で始業時に以下の項目について本社総務課長及び現場責任者

  より 集合教育を実施。

①交通法規遵守による安全運転励行

②飲酒運転の根絶

③自転車の安全利用の推進

夏季の安全輸送推進運動

( 8月)・ 自己の健康管理と 更なる安全対策の構築と 安全意識の高揚を図り 本

  運動の実効を上げるために実施。

①心身状態の的確な把握と 健康管理の徹底

②業務用自動車運転手に対する安全、 安定輸送の適切な指導

③事故・ 災害等発生時における救出・ 救護・ 避難誘導体制の徹底及び

  お客様に対する適切な案内等の徹底

年末年始の輸送等に関する

安全総点検

( 12~ 1月)

・ 期間中各施設、 各店舗責任者は設備、 備品類の保守点検並びに器具

  等の安全点検を実施。

①「 業務用自動車運転作業要領」 の再確認

②自然火災発生時の連絡体制並びに指揮命令系統について再確認

③緊急連絡網の再確認

④各施設責任者は、 健康管理チェッ ク シート により 健康状態を確認

資料 1  安全衛生に関する教育の時期と 実施項目( 一部抜粋)

飲食店の安全衛生活動好事例集  7

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事をしている。 FC店で実施しているこ と の良い点は、 自社の他店舗の活動にも取り 入れ、 取り 組み

の改善につなげている。

4  職場を知る産業医の意見を仰ぐ

  年 1回春に定期健康診断をグループ会社の健康支援センターで行っている。 会社独自の検査基準

値が設けられているので、 それを上回った場合は再検査をするよ う 通知する。 有所見者は定期的に

保健指導を受けるよ う な仕組みを作り 、 検査結果が改善されないままになってしまう こ と のないよ

う に注意を払っている。

  個人的に通院し受診していればよいと いう のではなく 、 勤務内容を知っている産業医の診断を仰

ぐこ と が重要であると 考えている。

  特に、 メ ンタル面が原因で休業する場合に関しては、 その従業員がどんな仕事をしているか、 職

場環境がどう であるのかを知った上で対処する必要があり 、 産業医と 本人と が面談をしながら対処

している。

  産業医は定期的に職場を巡視し、 従業員の健康状況、 労働環境、 食品衛生の観点から冷蔵庫の中

の管理状態などをチェッ ク している。

5  今後の課題はリ スク管理

  食品衛生は飲食業の基本であり 、 食に関する安全が一度揺らいでしまう と 風評被害も含め会社や

従業員に大きな損害を招く と いう こ と を折に触れて話し、 従業員一人ひと り が最善の取り 組みを継

続して行う こ と の大切さを伝えている。

  また、駅構内であると いう 性格上、鉄道会社と 一体と なった対処方法を定め共に訓練も行っている。

例えば地震対策やインフルエンザ対策など、 事業を継続していく ためにできるだけリ スク を回避す

る、 最小限に留める努力をするこ と を常日頃から教育していく こ と と している。

8 飲食店の安全衛生活動好事例集

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コーヒ ーチェーン

会社が安全に働ける仕組みを作るこ と で

ケガを減らす

  主にセルフサービスのコーヒ ーチェーン店を経営する。 1店舗に所属する人数は 15~ 60人ほど。

そのう ち正規労働者は 1~ 4人である。 大学生のアルバイ ト が多く を占めるため、 店舗勤務者の平

均年齢は若い。

  営業時間は基本的には7時~23時で、その前後30分が開店準備および閉店後の片付け時間である。

休業日は基本的にないが、 1割程の店舗では、 店舗の入居している建物や立地条件によって休業日を

設けている。

  ヒ アリ ングは、 本社の総務人事部長と 部長代理の 2名に聞き取り をした。

1  やけどを防ぐためのさまざまな対策

  作業は主にフロアでのサービス提供や食器の片付けと 、 キッ チンでサンド イ ッ チを作る調理作業

や設備の組立・ 分解・ 清掃などがある。

  職場では休業に至るよ う な重篤なケガをしてしまう ケースは少なく 、 ほと んどは不休災害で、 ケ

ガの種類で多いのはやけどと 切り 傷である。

  やけどはコーヒ ーマシンでお湯を落と している最中にデカンタを抜き出してしまい、 手にお湯が

かかってしまう ケースが多い。 そこ でその対策と して、 抽出を始める時に終わる時間をタイマーに

セッ ト して、 音が鳴ったのを確認した後に抜き出すよ う にした。 さ ら に、 コーヒ ーがも う できてい

るだろう と いう 思い込みでデカンタを抜いてしまう こ と がないよ う に、 スト ッ パーをかけて簡単に

抜けないよ う な対策をと っていると こ ろも ある。 また、「 やけど注意」 のステッ カーを貼るこ と など

も している。

  それでも若い従業員が、 カッ プが熱く ても我慢して持ち続けて、 帰宅後に異変に気づき受診する

と いった思いがけないケースもある。

  キッ チンでは、 食パンのスラ イサーを使用している。 手指が刃に触れるこ と がないよ う に、 はず

すこ と のできないカバーがついているなど、 数十年前に比べれば本質的な安全化が進んできている。

主な業務内容 コーヒ ーチェーンの経営。

労働者数

正規従業員 約 400名そのう ち、 本社勤務者は約 50名。

パート タイム労働者 約 5,000名

店舗数 約 200店舗

事例4

飲食店の安全衛生活動好事例集  9

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  店舗で使用しているバースプーン( 柄の長いスプーンで、

反対側にフォーク がついている ) で、 指を刺してし まった

こ と があり 、 それ以降フォーク の部分を丸めたも のに全て

切り 換えた( 写真)。 従業員の人数が多いので、 起こ り う る

こ と は根本的な原因を取り 除く 方法を模索し、 本質的な安

全対策を講じ る こ と を目指している。 やけどに関しても 全

てのも のを触っても やけどしないよ う なも のにすれば、 ケ

ガはなく なるのかも しれないが、 現実的には難し く 、 ジレ

ンマを抱える。

  新人は作業に慣れていないためにケガをしてし まう こ と

がある。 また一方で、 一定の作業に慣れる と 気が緩んでケ

ガをしてし まう こ と があるので、 時期と し ては、 新人が入

る数の多い 4~ 6月に注意喚起を強化している。

2  店長の研修ではまず安全管理の重要性を説く

  店長になった時の昇格研修で、 まず店舗の安全管理に配慮するこ と を教育している。 安全管理・

衛生管理を最初に位置づけるこ と によ り 、 会社がそのこ と に力を入れているこ と の表れであるこ と

を理解しても ら う 。

  研修の中で、 店長が従業員に作業方法を指導している様子を実際にやってみせるロールプレイを

するこ と がある。 その時も 「 まず、 手を洗います」 と 衛生管理上重要なこ と を忘れずに実践してい

る様子が見られ、 日ごろ店舗で実際に行われているこ と が、 その作業のコツも含めて上手く 従業員

に伝えられている。

  店長研修で安全衛生について教えるこ と によ り 、 店長の「 従業員にケガをさせてはいけない」 と

いう 意識が高く なり 、 実際の指導方法も 、 例えば包丁の使い方であれば置く 場所や刃の向き、 安全

な洗浄方法を教えるなど具体的になったと いう 。 その結果近年、 包丁の事故は減少傾向にある。

3  インフルエンザの流行期には早めの対処を

  インフルエンザの流行期には、 感染を予防するよ う 注意を促す通達を店舗に流している。 産業医

からのコメ ント も あわせて載せている。

  アルバイ ト は大学生が多いので、 大学の休講の情報なども調べて在籍する学校がインフルエンザ

のために休講になっている場合はアルバイ ト に出るこ と も認めない、 などの措置をと っている。

  お客様や従業員に感染が広まったり 、 突然休んでしまう のは、 店舗運営に支障が出るので、 セキ

がひどい場合は仕事に就かせないなど、 早めの対策をと るこ と と している。

  写真  バースプーン

        右  以前使用していたもの

        左  現在使用しているもの

10 飲食店の安全衛生活動好事例集

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4  メ ンタルヘルスケアはこれからの課題

  社員は各地の店舗に配属さ れる。 店舗では社員は 1~ 4人程度で、 多く はアルバイ ト 店員なの

で、 数ヵ 月に一度ある集合研修は社員同士が情報交換したり コ ミ ュニケーショ ンを図る重要な機会

になっている。

  現在は入社時研修から定期的に行っている教育の中で、 随時メ ンタルヘルスケアについての時間

を設け、 スト レスを溜め込まないこ と などについて社員に伝えている。 研修後には研修担当者がカ

ウンセリ ングをする時間を設けている。 職場の人間関係の悩みが多いと いう 。

  メ ンタルヘルスは職場環境だけが原因であるわけではないケースも多く 、 どこ までが労災に入る

のか判断するのが難しいため、 精神科の医師である産業医と 連携しながら対応している。 精神疾患

が若い女性社員に増えているこ と も あり 、 メ ンタルヘルスケアはこれからの課題の一つになってい

る。

飲食店の安全衛生活動好事例集  11

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総合レスト ランチェーン

安全衛生担当者を定め年月をかけて

進めてきた従業員の意識向上

  主にビヤレスト ラ ンで飲料、 料理の提供を行う 。 ビヤガーデンなど期間限定の店舗も ある。 大型

店舗には 50~6 0人が所属し、 そのう ち正規労働者は 10人程である。

  ヒ アリ ングは、 本社の人事総務部マネージャー1 名に聞き取り をした。

1  労働災害データの収集と 分析から再発防止策につなげる

  地元の労働基準監督署の指導をきっかけに、 平成 16年より 安全衛生専門の担当者を新たに配置し

た。 それまでは人事部門と してどう しても給与や採用の仕事が優先される状態であったが、 安全衛

生の担当者を明確にするこ と で、 安全衛生活動を確実に実施できるよ う にした。

  安全衛生担当者がまず行ったのは、 各店舗の労働災害のデータの収集である。 それまで店舗で起

きた事故やケガについて本社に報告する仕組みはできていたが、 その情報が経営陣まで伝わってい

なかった。 さ らに、 各店舗にも伝わっておらず、 せっかく 収集した災害情報が有効活用されていな

かった。 そこで、各店舗の労働災害の件数を集計し、災害の発生月、時間、被災者の性別、勤続年数、

事故の型、場所などの分析、さ らには度数率、強度率、年千人率を算出するこ と で、 災害の傾向を会社

と して把握し、 店舗にも伝えるこ と で的確な再発防止対策に結びつけるこ と ができるよ う になった。

  労働災害を事故の型別に見ると 、 調理場では切れややけど、 ホールではグラ スの破損によって手

などを切るケースが目立つ。 やけどは直接火に触れるものに限らず、 温められた調理器具や料理そ

のものに接触するこ と で起こ るこ と も ある。 その他には転倒に伴う 打撲、 扉にはさ まれる、 従業員

同士の激突などがある。

  労働災害の報告( 資料1 、 2 ) は内容をできるだけ具体的に書かせるよ う にしている。「 野菜を切

ろう と して、 手を切った」 と いう 報告は、「 カウンターでレモンを切っている際に、 誤って包丁で左

手薬指を切った」 と 書く こ と で、 要因が明らかになり 、 再発を防ぐためには何が必要かわかり やす

く なるからである。 店舗から本社にあがってきた報告書を見て、 分からないこ と があれば、 店舗の

従業員と 直接話をし、 状況を確認するこ と と している。 こ れらの情報については、 必要に応じ各種

会議で水平展開している。

主な業務内容 ビヤレスト ランをはじめと し 、 和洋さまざまなスタイルの料理、 飲料の提供を

行う 。

労働者数正規従業員 約 500~ 600名

パート タイム労働者 約 3,600名

店舗数 約 150店舗( 季節により 変動) 

事例5

12 飲食店の安全衛生活動好事例集