購買情報の受発信リテラシーに長けた マーケット・...

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1 購買情報の受発信リテラシーに長けた マーケット・メイブンへの効果的な到達 11C3150002G 栗田 概要 購買意思決定に影響を与える刺激として、消費者から発信される口コミが近年マ ーケティング研究において注目されつつある。そこで本研究では口コミの中核的な 受発信者であるマーケット・メイブンに着目する。彼らはマーケットに関する情報 に広く精通しており、他の消費者から頼られる規範的な個人であるため、他者に対 する口コミの影響力が大きい。つまり、マーケティング活動において重要視すべき ターゲットの一つである。ミクスチャ・モデルによって 2 つの消費者調査データを 融合することでマーケット・メイブンを抽出した後に、彼らの属性や価値観を明ら かにする。そして接触率の高いメディアの特徴を探索することで、企業がマーケッ ト・メイブンへの効果的な到達を図る方法を考察する。 1 はじめに 1.1 問題意識 近年のインターネット普及によって、価格.com や@コスメに代表される口コミ サイトや、Amazon.com のような消費者からの製品レビューを掲載したショッピン グサイトが増加傾向にある。そして製品に関しての口コミが、企業のマーケティン グ研究に欠かせないものになりつつある。そこで企業は、能動的に自社製品につい て情報収集し、そして他者に発信してくれる消費者へのアプローチが必須であると 考えられる。この口コミ発信の中核を担う存在として、いくつかの概念がある。ま ず挙げられるのは、マーケットに関しての情報受発信リテラシーが高いマーケッ ト・メイブンの存在である。彼らは製品カテゴリーに対して横断的な関心を持って おり、かつその情報の幅も広い。更には製品に対しての判断も常識的であるため、 他者への情報源として頼りにされる特徴がある(Feick and Price 1987)。マーケッ ト・メイブン以外に積極的な口コミ受発信を行う概念としてオピニオン・リーダー Katz and Lazarsfeld 1955)が挙げられる。彼らの口コミは他者に対して影響を与 えるが、その影響力は特定カテゴリーに限定される特徴を有している。また、関連 する概念としてイノベーター(Rogers 1962)がある。彼らは革新的な製品に対して 興味を持ち、その採用時期も早いが、他者への情報発信の影響力は問われない。 そこで本研究では、情報受発信能力と情報の汎用性の観点からマーケット・メイ

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1

購買情報の受発信リテラシーに長けた マーケット・メイブンへの効果的な到達

11C3150002G 栗田 学

概要

購買意思決定に影響を与える刺激として、消費者から発信される口コミが近年マ

ーケティング研究において注目されつつある。そこで本研究では口コミの中核的な

受発信者であるマーケット・メイブンに着目する。彼らはマーケットに関する情報

に広く精通しており、他の消費者から頼られる規範的な個人であるため、他者に対

する口コミの影響力が大きい。つまり、マーケティング活動において重要視すべき

ターゲットの一つである。ミクスチャ・モデルによって 2 つの消費者調査データを

融合することでマーケット・メイブンを抽出した後に、彼らの属性や価値観を明ら

かにする。そして接触率の高いメディアの特徴を探索することで、企業がマーケッ

ト・メイブンへの効果的な到達を図る方法を考察する。

1 はじめに

1.1 問題意識

近年のインターネット普及によって、価格.com や@コスメに代表される口コミ

サイトや、Amazon.com のような消費者からの製品レビューを掲載したショッピン

グサイトが増加傾向にある。そして製品に関しての口コミが、企業のマーケティン

グ研究に欠かせないものになりつつある。そこで企業は、能動的に自社製品につい

て情報収集し、そして他者に発信してくれる消費者へのアプローチが必須であると

考えられる。この口コミ発信の中核を担う存在として、いくつかの概念がある。ま

ず挙げられるのは、マーケットに関しての情報受発信リテラシーが高いマーケッ

ト・メイブンの存在である。彼らは製品カテゴリーに対して横断的な関心を持って

おり、かつその情報の幅も広い。更には製品に対しての判断も常識的であるため、

他者への情報源として頼りにされる特徴がある(Feick and Price 1987)。マーケッ

ト・メイブン以外に積極的な口コミ受発信を行う概念としてオピニオン・リーダー

(Katz and Lazarsfeld 1955)が挙げられる。彼らの口コミは他者に対して影響を与

えるが、その影響力は特定カテゴリーに限定される特徴を有している。また、関連

する概念としてイノベーター(Rogers 1962)がある。彼らは革新的な製品に対して

興味を持ち、その採用時期も早いが、他者への情報発信の影響力は問われない。

そこで本研究では、情報受発信能力と情報の汎用性の観点からマーケット・メイ

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ブンについて注目をする。さらに企業にとってマーケット・メイブンを真っ先に識

別することは、マーケティング活動におけるパーソナル・コミュニケーションに着

目する上で重要な意義を持つとされている(清水 2012)。

1.2 課題

本研究では、ビッグデータを用いてマーケット・メイブンの特徴を探索する。そ

のためにミクスチャ・モデルを用い、主分析に用いるデータとマーケット・メイブ

ンの特定を行うためのデータを融合させる。ビッグデータの被験者からマーケッ

ト・メイブンを特定する。そして彼らの行動をデモグラフィック変数、サイコグラ

フィック変数、購買行動に関する変数から記述を行い、彼らの消費者像を解明する。

その後、利用するネットメディアやテレビ視聴の特徴などを分析し、マーケット・

メイブンとの接触可能性が高いメディアを特定する。そして彼らにアプローチしや

すい広告手段を考察することを研究の目的とする。

1.3 概念

マーケット・メイブンとは、多くの種類の商品や店などマーケットに関する情報

を持ち、人々が欲する情報に返答できる個人という言語的定義がなされている

(Feick and price 1987)。彼らの特徴として、規範を守り、その規範の範囲内でのユ

ニークさを求めることから、彼らの好むものは他の消費者に受け入れられやすい

(Clark and Goldsmith 2005)。更に買い物好きで新製品情報誌を読み、メディアの

接触に積極的で、クーポンをよく用いるといった堅実な消費者であることが明らか

になっている(Feick and price 1988)。また、知名集合・処理集合・保留集合のサイ

ズが大きく(Eliott and Warfield 1993)、比率として女性が多い傾向にあることがあ

げられる(池田、小林、志村、呉 2005)。そして心理学の観点からは、情報を共有

するというある種の義務感の程度が高く、他の消費者を助けたいという欲望と、製

品について他者に知らせることで喜びを感じるという特徴を持った利他志向な消

費者であること(谷本、大室、大平、土肥、古村 2013)が述べられている。

マーケット・メイブンに類似した概念にオピニオン・リーダーが存在する。彼ら

はある特定の領域に精通し、周囲の人々に積極的に影響を与える個人であると定義

されている(Katz and Lazarsfeld 1955)。特徴として社交性が高く、革新的であり、

特定領域については深い知識を有している(Robertson 1971)。また、肯定的な意見

だけではなく否定的な意見も発信することや(Leonard-Barton 1985)、個人特性に

よる違いは見出せていないこと(澁谷 2002)が示されている。

先述した 2 つに先立つ概念としてイノベーター理論が存在する。Rogers(1962)

は「革新性」の概念を製品・サービスの採用時期を基準として分類を行い(図 1)、

革新的な製品やサービスに対して市場導入の初期段階で採用する層をイノベータ

ーとした。彼らは消費者全体の 2.5%ほどしかおらず、特徴として未知の製品やサ

ービスに自ら進んで手を伸ばすことや、あくまで目新しさ・革新性という点が重視

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される。そのため、製品のベネフィットは購買意思決定においてほとんど注目され

ない特徴がある。次に製品やサービスを採用する層がアーリーアダプターである。

先述のマーケット・メイブンやオピニオン・リーダーはこの層に分類される。(清

水 2014)アーリーアダプターは全体の 13.5%を占め、特徴として社会と価値観を

共有しているものの、流行には敏感で自ら情報収集を行い判断することが挙げられ

る。その次にアーリーマジョリティ(新しい様式の採用には比較的慎重な層。全体

の 34.0%を占める)が採用を行い、レイトマジョリティ(新しい様式の採用には懐

疑的で、周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする層。全体の

34.0%を占める)、ラガード(世の中の動きに関心が薄く、流行が一般化するまで採

用しない層。全体の 16.0%を占める)の順に製品を採用していくと述べている。そ

してイノベーター、アーリーアダプターを合わせた 16%の消費者に普及させること

が、製品・サービスの全体的な普及につながるポイントである(普及率 16%の論理)

と説いた。

図 1 イノベーション採用段階に応じた採用者分布

出典:http://www.dreamgate.gr.jp/guide/eigyou-seikou/eigyou-keyword/innovator

2 データと方法

2.1 データ

本研究ではマーケット・メイブンの特定と記述を行うにあたり、2 種類のデータ

を用いて分析を行う。1 つ目は野村総合研究所から提供された「消費者調査データ」

(シングルソースデータ)である。2 つ目はマーケット・メイブン特定のために収

集したアンケートデータである。1 つ目のデータ概要は以下の通りである。

□ 調査期間:2014 年 2 月 8 日~4 月 5 日、

□ 対象:2975 名、関東、20~69 歳、

□ 調査項目:属性、価値観、消費先進度、メディア接触(テレビ・ラジオ・新聞・

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雑誌・WEB など)、行動(耐久財の所有と購買意向、サービスの利用意向、ブ

ランド認知、ブランド購買意向・経験、店舗利用、利用路線・駅など)。

□ 調査方法:WEB アンケート

以上を主データと呼ぶ。

2 つ目はマーケット・メイブン特定にあたり、主データにマーケット・メイブン

尺度を追加するためのデータを質問紙調査によって別途収集した。調査内容はマー

ケット・メイブンを特定するための質問と、主データ内の質問項目から先験的にマ

ーケット・メイブン尺度と関連が深そうなものを調査した。概要は以下の通りであ

る。

□ 調査日時:2014 年 9 月 24 日

□ 対象:中央大学の学部生 80 名

□ 調査項目:Feick and Price が作成した、マーケット・メイブン尺度を測定するた

めの質問 6 項目(7 点尺度)、消費価値観に関する質問 32 項目+論理チェックの

ための質問(2 点尺度)、パソコン利用方法に関する質問 14 項目+論理チェック

のための質問(2 点尺度)、購買チャネルの利用頻度に関する質問 13 項目(7

点尺度)、消費先進度に関する質問 1 項目(4 点尺度)。

□ 調査方法:質問紙調査

以上を副データと呼ぶ。

2.2 全体の分析方針

本研究の主たる分析を行う前段階として、主データ内のマーケット・メイブンを

特定する必要がある。そこで予備分析として、ミクスチャ・モデルによって、主デ

ータと副データのデータフュージョンを実施する。そして主データ内のマーケッ

ト・メイブンを特定した後に、マーケット・メイブン以外の人たちをマジョリティ

と分類してセグメンテーションを行う。そして両セグメントをデモグラフィック変

数、サイコグラフィック変数、購買行動に関する変数から比較分析を行い、マーケ

ット・メイブンの特徴を記述していく。そして彼らが利用するメディアを CGM、

サイトアクセス、テレビ視聴の 3 つの観点から分析を行い、到達しやすいメディア

の特徴を探索していく。特徴差が現れた変数に関しては、その差がセグメントによ

るものであるかを検証するためにχ2 検定を実施する。その後セグメント記述と利

用メディアの特徴から、マーケット・メイブンに接触しやすいアプローチ方法を考

察する。統計解析には SPSS Statistics 22 と Amos22、そして SAS 9.3 を用いる。

3 予備分析

3.1 概要

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データフュージョンとは、独立して取得した 2 つの調査データを、サンプルの類

似度に基づいて融合をすることである。本研究では主データと副データに共通する、

先験的にマーケット・メイブンと関連が深いと考えられる質問の類似度で両データ

を融合させる。データフュージョンの手法は複数あるが、予備分析ではミクスチ

ャ・モデル(トレーニングデータを用いた混合モデリング)によってデータを融合

させる。今回行うデータフュージョンのイメージは以下の図である。

図 2 データフュージョンの図解

3.2 分析方法

ミクスチャ・モデルで主データ内のマーケット・メイブンを特定する準備として、

副データでトレーニングデータを生成する必要がある。最初に副データにおいて、

マーケット・メイブン特定のための質問を 7 点尺度で調査し、マーケット・メイブ

ン尺度を測定する(図 3)。質問項目は以下の 6 つである。

□ 新ブランドや新製品を友人に紹介することが好きだ。

□ 多様な製品についての情報を世間に提供することにより、人を助けるのが好き

だ。

□ 製品・店舗・特売などについての情報を、人から尋ねられる。

□ いくつかの種類の製品については、人から、購入に最も適した店舗を尋ねられ

たらどこで買ったらよいかを教えることができる。

□ 新製品発売や特売の時期についての良い情報源であると、友人から思われてい

る。

□ 多様な製品についての情報を持ち、その情報を他人と共有するのが好きな人が

いる。この人は新製品・特売・店舗などについてよく知っている。ただし、あ

る特定の製品についての専門家というわけではない。あなたは、こうした人に

当てはまると思うか。

マーケット・メイブン尺度の調査結果は最大値 40.5 点、最小値 6.0 点であった。

平均値は 21.1 点、標準偏差は 7.69 点である。この結果は Feick and Price(1987)の

最大値 42.0 点、最小値 6.0 点、平均値 25.6 点、標準偏差 8.5 点と多少であるが値に

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ズレが生じている。しかし、これは日本と米国の国民性などを加味すると、日本の

調査の方が低い値が出るのは妥当であると考えられる。そしてマーケット・メイブ

ン尺度の値が平均+1 標準偏差(28.79≒29 点)以上である個人をマーケット・メイ

ブンとし、それ以下の値の個人をマジョリティとして分類する。次に分析の簡便化

を図るために、副データの質問項目とマーケット・メイブン尺度の点数の間に相関

が見られない変数を除外し、以下の質問項目 7 つをデータフュージョンに用いる。

□ 商品や店舗に関する情報をよく人に教えるほうである

□ 周りの人と違う個性的なものを選ぶ

□ 良い情報を得るためにはお金を払うのが当然である

□ 流行にはこだわるほうである

□ 消費先進度

□ 利用チャネル頻度(コンビニエンスストア)

□ 利用チャネル頻度(携帯・スマートフォン)

上記の変数を用いたデータフュージョンの結果を基に、主データ内の個人にマーケ

ット・メイブン尺度を割り振る。それによって主データのマーケット・メイブンと

マジョリティの識別を行う。

図 3 副データのマーケット・メイブン尺度人数分布

3.3 分類結果

データフュージョンの結果、主データから 183 名のマーケット・メイブンと 2330

名のマジョリティを特定した。分析対象となった人数は主データ 2513 名と副デー

タ 72 名である。母数より人数が少ないのは、分析に用いる質問への回答率が著し

く低い人と、論理チェックのズレが大である人を排除したためである。また、また、

副データによる正答率は 88.9%と高い値であったため、予備分析によるマーケッ

ト・メイブン特定は問題なく実行されたと考えられる。

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4 マーケット・メイブンの記述

4.1 デモグラフィック変数による記述

ここでは年代、世帯年収、職業区分による比較分析を行い、マーケット・メイブ

ンの特徴を記述する。年齢に関しては 20~60 代を 5 分割(20 代、30 代、40 代、

50 代、60 代)し、両セグメントの構成比を集計した(図 4)。その結果、マーケッ

ト・メイブン男性の 30~40 代の構成比率が高いという結果が出た。世帯収入は 0

~1200 万以上を 3 分割(0~300 万未満、300~700 万未満、700 万以上)した後に

構成比を算出した(図 5)。その結果、マーケット・メイブンはマジョリティに比

べて 700 万円以上の高収入者の割合が多いということが分かった。職業区分は 18

種類ある職業分類を社会人、無職・主婦、学生・パート・アルバイト(PA)の 3

種類に分けて、セグメントごとの構成比を出した(図 6)。その結果、マーケット・

メイブンは社会人の比率が高いということが分かった。更にこれらの分析で得られ

た差異がセグメントによるものであるかを検証するためにχ2 検定を実施した。検

定の結果、男性の年代と職業において 10%水準、男女の世帯年収において 5%水準

で有意であった。ここからマーケット・メイブンは高収入の人と、男性の 30~40

代と社会人が多いということがわかる。

図 4 年齢構成比

図 5 年収構成比

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図 6 職業構成比

4.2 サイコグラフィック変数による記述

ここでは、消費価値観に関する質問を基に因子分析を行い、マーケット・メイブ

ンとマジョリティの消費価値観因子を抽出することでマーケット・メイブンの特徴

を記述していく。因子分析では共通性 0.10 未満、因子負荷量 0.25 以下であった質

問項目を排除した。その結果、27 の質問項目が採用され、7 つの因子を抽出した。

それぞれの因子を質問項目の内容から「質重視」「合理的」「利他志向」「情報伝達」

「ブランド・デザイン重視」「同調傾向」「こだわり」と命名した。そしてマーケッ

ト・メイブンとマジョリティの各因子の得点平均を算出したところ(図 7)、マー

ケット・メイブンの因子得点平均はどの因子も正の値を示し、男女ともに似たよう

なグラフの形をとった。一方、マジョリティの因子得点平均は男女で正負が異なる

値を示す結果がでた。この結果から、マーケット・メイブンは男女ともに似たよう

な価値観を持っており、質・価格の両方を求める堅実さ、情報伝達することや他者

への思いやりを持ち合わせた利他志向を持つ消費者であることが分かる。

図 7 消費価値観の因子得点平均

4.3 購買行動に関する変数による記述

ここでは利用チャネル、購買意向のある耐久消費財、趣味による比較分析を行い、

マーケット・メイブンの特徴を記述する。利用チャネルでは、まず対象チャネルご

とに利用頻度が高い考えられる尺度を設定する。そしてセグメントごとにその尺度

より高い利用頻度の消費者の割合を算出した(図 8)。その結果、マーケット・メ

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イブンのチャネル利用頻度は全体的にマジョリティに比べて高いことが分かった。

中でもコンビニエンスストア、百貨店・デパート、大型家庭電器店、男性の日用品

スーパー、ショッピングモール・センター、パソコンショッピング、ファストフー

ド店、女性の携帯・スマートフォンショッピングにおいてはマーケット・メイブン

とマジョリティの割合の比率に 15 ポイント以上の差が開く結果となった。これら

のチャネルの割合差がセグメント間によるものかを検証するためにχ2 検定を実施

したところ、男性の日用品スーパーにおいて 5%水準、その他のチャネルにおいて

は 1%水準で有意であった。ここから、マーケット・メイブンは実際の消費活動に

関しても非常に意欲的な消費者であること、普及フェーズと考えられるネットショ

ッピングの利用に関しても意欲的であるが、中でも男はパソコン、女は携帯・スマ

ートフォンを頻繁に利用する傾向があることが伺える。

図 8 チャネル別高利用頻度者の割合

**は 1%、*は 5%水準で有意

次にマーケット・メイブンが購買意向のある耐久消費財に関して分析を行う。ここ

では 14 種類の耐久消費財を対象に、購買意向のある消費者の割合を算出した(図

9、10)。その結果、ホームセキュリティや太陽光発電、家庭用燃料電池などの、大々

的に自宅を工事しなければならない耐久消費財はあまり差異が見られなかったが、

それ以外の耐久消費財では、マーケット・メイブンの比率がマジョリティを上回る

値となった。中でもノート型パソコン、タブレット端末への購買意向が男女ともに

高い。この 2 種類の耐久消費財に生じた差異がセグメント間によるものかを検証す

るためにχ2 検定を実施したところ、ノート型パソコン、タブレット端末の男女と

もに 1%水準で有意であった。ここから、マーケット・メイブンは自宅の大々的な

工事を伴わない耐久消費財に対しては広範的な購買意欲を示す消費者であり、特に

ノート型パソコンやタブレット端末などの持ち運び可能なモバイル端末に対する

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購買意欲が強い消費者であることが伺える。

図 9 カテゴリー別購買意向(男性)

図 10 カテゴリー別購買意向(女性)

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そしてマーケット・メイブンの興味関心の範囲を探るために、趣味に関して分析

を行う。ここではデータ内にある 31 種類の趣味(スポーツ観戦、テレビゲームな

ど)に関するアンケートを基に因子分析を実施し、マーケット・メイブンの関心を

もつ因子の探索を行う。分析のルールは消費価値観の因子分析と同様である。その

結果、15 種類の趣味が採用され、5 つの因子を抽出した。そしてそれぞれの因子を

対象となる趣味の構成から「知的活動1」「旅行2」「近距離外出3」「制作・加工4」「ア

ウトドア5」と命名した。そしてマーケット・メイブンとマジョリティでそれぞれ

の因子得点平均を算出したところ(図 11)、男性は旅行以外の因子、女性は制作・

加工系、アウトドアの因子以外で正の値を示し、かつマジョリティよりも値が高い

結果となった。おそらく男性の旅行、女性の制作・加工、アウトドア因子が負の値

を示したことに関しては、マーケット・メイブン、マジョリティともにその因子に

対して負を示していることから、性別によって生じたものではないかと考えられる。

この分析結果から、マーケット・メイブンは男女ともに知的活動と近距離外出の因

子に対しては非常に関心を持ち、男性は制作・加工とアウトドア、女性は旅行の因

子に対して関心をもつ消費者であること、総じて多趣味な活動的消費者であること

が伺える。

図 11 趣味の因子得点平均

1 「映画・演劇・美術鑑賞」「音楽鑑賞」「ビデオ・DVD 鑑賞」「読書」「パソコン」 2 「国内旅行」「海外旅行」 3 「遊園地・テーマパーク」「外食・グルメ・食べ歩き」「ドライブ」「カラオケ」 4 「日曜大工、機械・模型いじり」「園芸・庭いじり」 5 「アウトドア・キャンプ」「釣り」

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5 メディア分析

5.1 CGM 分析

ここからはマーケット・メイブンに接触を図りやすいメディアの特徴を分析する。

最初に CGM について調べる。CGM とは Consumer Generated Media の略称で、つぶ

やきや動画投稿を通じて消費者が創り上げていくメディアのことを指す。分析対象

とする CGM は mixi、Twitter、Facebook、モバゲー、GREE、YouTube、ニコニコ動

画、LINE の 8 つである。本分析では該当する CGM のアクセスが「ほぼ毎日であ

る」と回答した常時利用者の割合を算出した(図 12)。その結果、男性は Twitter、

Facebook、LINE、女性は YouTube、ニコニコ動画において特に大きな差異が見られ

た。一方、男女ともにモバゲー、GREE といったソーシャルゲームプラットフォー

ムを常時利用している消費者割合が少数で、かつマーケット・メイブンとマジョリ

ティでほぼ変わらない。さらに各 CGM で生じた割合の差異がセグメントによるも

のかを検証するためにχ2 検定を実施したところ、男性の Facebook と YouTube、女

性の Twitter において 5%水準、男性の Twitter と LINE、女性の YouTube とニコニ

コ動画において 1%水準で有意であった。割合差と検定結果から総合すると、マー

ケット・メイブンの男性は SNS、通話・メールサイトなどのコミュニケーションア

プリに、女性は動画配信サイトに常駐して利用する人が多いことが伺える。また、

単純にマーケット・メイブンの CGM 接触量が多いわけでなく、モバゲー、GREE

の比率やセグメント間の差から、マーケット・メイブンは先述したコミュニケーシ

ョンアプリや動画配信サイトなどの CGM をあえて選択して利用する特徴がある。

更に、マーケット・メイブンの各 CGM と利用チャネルとの間に関連があるかを調

べるために相関分析を実施し、その分析結果を表にまとめた(図 13、14)。この分

析で注目したいのは女性の分析結果である。女性の携帯ショッピングはニコニコ動

画以外の CGM と相関が見られる。YouTube に関してはコンビニや PC ショッピン

グに関しても相関があるという事がわかった。このことから、マーケット・メイブ

ンの女性は携帯と CGM の関連性が深いということ、更に YouTube を活用しつつ、

ネットショッピングを行っている可能性があることが分かった。

図 12 CGM を常時利用している消費者の割合

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図 13 CGM と利用チャネル頻度の相関性(男性)

**は 1%、*は 5%水準で有意

図 14 CGM と利用チャネル頻度の相関性(女性)

**は 1%、*は 5%水準で有意

5.2 ネットアクセス分析

次にマーケット・メイブンがよくアクセスするサイトを分析する。そしてマーケ

ット・メイブンにアプローチをかけやすいサイトの特徴を探る。ここでは携帯、パ

ソコンのどちらにも存在するサイトを対象とする。そのサイトに 1 ヶ月以内にセグ

メントの何%がアクセスしたかを携帯サイト、パソコンサイトごとに算出する。そ

の後、マーケット・メイブンとマジョリティのアクセス人数の割合差に特徴が見ら

れるかを調べた(図 15、16)。図を見ると携帯・パソコンともにマーケット・メイ

ブンのアクセス人数割合がマジョリティに比べて多いことが分かる。また、縦軸の

割合を見ると、同サイトであっても携帯サイトのアクセス割合がパソコンサイトの

アクセス割合に比べて非常に高い。

そこで、この割合差が携帯サイトとパソコンサイトの違いによるものかを検証す

るために、まず該当のサイトを用途から以下の 4 種類に分類する。

□ 検索サイト(Yahoo!、Google、Infoseek、goo、BIGLOBE)

□ SNS(mixi、Twitter、Facebook、2 ちゃんねる、GREE、モバゲー)

□ ショッピングサイト(楽天市場、Amazon、nissen、EC ナビ、楽天オークション、

yahoo!オークション)

□ グルメサイト(ぐるなび、ホットペッパー)

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その後分類サイト群ごとに、携帯サイトとパソコンサイトのアクセス人数割合の差

が特徴的であるかχ2 検定を実施したところ、検索サイト以外の 3 つにおいて 1%

水準で有意であった。この結果から、マーケット・メイブンのネット利用はパソコ

ンよりも携帯端末から行う傾向があるということ、つまりちょっとしたスキマ時間

においても情報の受発信、または購買行動を行う消費者であると考えられる。

図 15 サイトアクセス人数(携帯から)

図 16 サイトアクセス人数(パソコンから)

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5.3 テレビ視聴分析

最後にマーケット・メイブンのテレビ視聴における特徴を探索する。具体的には

該当する 11996 番組の中から、マーケット・メイブンとマジョリティの 10%以上

が視聴した番組をセグメントの高視聴率番組としてそれぞれ抽出する。その後、抽

出された番組をテレビ配信局、視聴時間帯で分類し、マーケット・メイブンに到達

を図りやすい特徴を探索していく。まず、両セグメントの視聴者割合 10%の高視

聴率の番組を抽出したところ、マーケット・メイブンの男性は 482 番組、女性は

633 番組、マジョリティの男性は 229 番組、女性は 480 番組が該当した。ここから

マーケット・メイブンはテレビ視聴も積極的なで消費者であることが分かる。次に

抽出した番組を平日、休日の番組で分類し、さらに配信局で分類して比較した(図

17、18)。グラフを比較すると、平日における男性と休日の女性の配信局構成に特

徴が見られる。男性はマーケット・メイブンの場合、フジテレビと日本テレビの割

合が高く、マジョリティはテレビ朝日の割合が高い。女性の場合、マーケット・メ

イブンは TBS の構成が高く、マジョリティは日本テレビの割合が高かった。更に

構成比率の差がセグメントによるものであるかを検証するためにχ2 検定を行った

結果、男性の平日、女性の休日どちらも 1%水準で有意であり、平日の女性、休日

の男性は非有意であった。この分析結果から、マーケット・メイブンの男性は平日

の視聴に、女性は休日の視聴において視聴配信局の偏りが見られることが分かる。

つまり視聴している番組ジャンルにも特徴があると考えられる。

そして視聴時間帯の視聴人数割合に関しても分析を行う。テレビ視聴 1 時間毎の

視聴人数割合の算出方法を以下に示す。

① 抽出した視聴率 10%以上の番組を平日、休日の放送日で分類

② 視聴時間帯を 5~26 時で 22 分割

③ 時間帯毎の番組数に時間帯の平均視聴人数をかけて 1 時間あたり視聴合計人

数(9 週間全て放送した場合の視聴人数)を算出

④ ③の人数を週数(ここでは 9 週)と日数(平日なら 5 日、休日なら 2 日)で

割ることで 1 日 1 時間あたりの視聴人数を算出

⑤ ④の人数をセグメントの母数で割り、セグメント内の何%が該当時間帯にテ

レビ視聴をしているかを算出

その後マーケット・メイブンとマジョリティの時間帯別人数割合を平日、休日で

分けて図でまとめた(図 19、20)。算出結果を見たところ、平日のマーケット・メ

イブン男性の 5 時からの視聴と 7 時からの視聴、そして 21~23 時の視聴割合がマ

ジョリティに比べて高いことが見受けられる。それに対して休日の視聴はマーケッ

ト・メイブンの女性やマジョリティと比較しても視聴割合が低く消極的である。一

方マーケット・メイブン女性は、平日の 19~21 時と休日の 8~10 時、19~21 時の

視聴割合がマジョリティと比べて高いことが見受けられる。また、この差が現れた

時間帯の番組を調べたところ、早朝、午前の情報番組(ZIP!、めざましテレビ、王

様のブランチなど)とバラエティ番組の構成が高いという特徴があった。ここから、

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マーケット・メイブンはエンタメ要素が強い、もしくは情報系の番組ジャンルを好

んで視聴する特徴を持つことが伺える。つまり、マーケット・メイブンはそのジャ

ンルの番組が集中する時間帯にテレビ視聴を行う特徴があることがわかった。

図 17 高視聴率番組の配信局構成(平日)

図 18 高視聴率番組の配信局構成(休日)

図 19 時間帯別テレビ視聴者割合(平日)

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図 20 時間帯別テレビ視聴者割合(休日)

6 効果的な到達への示唆

最後にメディア分析で得られた特徴とマーケット・メイブンの記述から効果的な

アプローチの方法を考察する。本研究では男性、女性、男女共通の 3 つの観点で考

察を行う。まず男性に対しては、30~40 代が多く、近距離外出やアウトドアに積

極的であること、一方で休日のテレビ視聴割合が低いことから、休日に夫婦や家族

での外出を好む人が多いと考えられる。そのため、週末のサイト検索やアウトドア

関連のサイトアクセスが加速すると予想されるため、そこを狙った広告展開が有効

であると考えられる。女性に対しては知的活動における因子が高く、映像や音声に

興味を惹かれる消費者であると考えられる。そして CGM との関連性もあることか

ら、SNS サイト、動画サイトでの動画広告宣伝などが有効であると考察する。また、

動画サイトを常時利用している消費者が多いことや YouTube と PC・携帯ショッピ

ングの相関があることから、動画サイトの影響力は大きいと考えられる。そこで、

動画サイトの人気配信者に製品の宣伝を依頼するのもひとつの手段として考えら

れる。男女共通の観点では、モバイル端末の購買意向が高く、ネット利用は携帯・

スマートフォンからのアクセスが多いということから、会社員の通勤時間、お昼休

みなどのスキマ時間を狙ったモバイル端末向けの広告配信が有効であると考察で

きる。また、マーケット・メイブンは男女ともに視聴するテレビ番組のジャンルが

似通っていることから、そのジャンルが多い時間帯のテレビ CM を配信することで、

より広範的に到達を望むことができるだろう。

7 まとめ

7.1 マーケット・メイブンの記述

以上の分析結果からマーケット・メイブンの特徴をまとめる。彼らは高収入の世

帯、30~40 代の男性、そして社会人の割合が高いことが分かった。そして合理的

に質を求める堅実さや情報伝達、利他志向を併せ持つ消費者である。この結果は先

行研究で述べられてきた特徴と整合している。消費活動に関して、積極的な買い物

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好きであることが分かり、この結果も先行研究と整合している。更にネットショッ

ピングは男女でアクセスする端末が異なるという特徴も見受けられた。耐久消費財

に関しては広範な製品カテゴリーの購買意向を示しており、中でもノート型パソコ

ンやタブレット端末などのモバイル端末に対して興味をもつ人の割合が、他の耐久

消費財に比べて高いことも分かった。一方で、家庭での大規模な設置工事が伴う耐

久消費財ではマジョリティと比較してもあまり変わらないようである。また、男女

ともに近距離外出や知的活動など内向きと外向きの両方の趣味に関心を示す活動

的な消費者であることが分かった。しかし、マーケット・メイブンの男女で旅行、

制作・加工、アウトドアで正負が異なることから、外向きの趣味には性差が存在す

るようである。

7.2 研究上の意義

本研究ではビッグデータを用いてマーケット・メイブンの抽出から記述まで行い、

効果的なアプローチ手段の考察まで行った。その結果、抽出されたマーケット・メ

イブンは先行研究と整合する点が多く、データフュージョンによるマーケット・メ

イブンの特定は可能であると考えられる。また、新たな知見として CGM やサイト

アクセス、テレビ視聴の特徴などで定量的な分析結果を得られた。

7.3 今後の課題

本研究はマーケット・メイブンの特定と記述、そして彼らの好む CGM やメディ

アを調査し、その到達率や効果的な到達方法を明らかにする分析方針であった。他

にもメディアミックスの可能性を考慮した分析や、カテゴリーだけでなくブランド

別に比較分析なども行うことで、より効果的にマーケット・メイブンを惹きつける

広告手法を解明することができると考えられる。更に、今後のモバイル端末の展開

からも、マーケット・メイブンが今まで以上に時間帯に縛られずに情報収集・発信

を行う可能性がある。そこで彼らのスキマ時間を狙って広告展開をすることが不可

欠になるであろう。そのスキマ時間に関する考察を明らかにするためにも、ネット

メディアの時間帯アクセス頻度についても調査していくことで、より広範囲にマー

ケット・メイブンへアプローチする手段を明らかにすることができると考えられる。

引用文献

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1

補遺-副データ収集のための調査票

Ⅰ 次の質問に関して、自分が該当する数字に○をつけてください。

Ⅱ 新しい商品やサービスを利用する際に、あなたはどれにもっとも近いとお考えになりますか。

以下の 1~4 から選び、該当するものに○をつけてください。

大いに

当ては

まる

当ては

まる

やや当

てはま

どちら

とも言

えない

やや当

てはま

らない

当ては

まらな

大いに

当ては

まらな

新ブランドや新製品を友人に紹介することが好きだ。 1 2 3 4 5 6 7

多様な製品についての情報を世間に提供することにより、人を助

けるのが好きだ。 1 2 3 4 5 6 7

製品・店舗・特売などについての情報を、人から尋ねられる。 1 2 3 4 5 6 7

いくつかの種類の製品については、人から、購入に最も適した店

舗を尋ねられたらどこで買ったらよいかを教えることができる。1 2 3 4 5 6 7

新製品発売や特売の時期についての良い情報源であると、友人か

ら思われている。 1 2 3 4 5 6 7

多様な製品についての情報を持ち、その情報を他人と共有するの

が好きな人がいる。この人は新製品・特売・店舗などについてよ

く知っている。ただし、ある特定の製品についての専門家という

わけではない。あなたは、こうした人に当てはまると思うか。

1 2 3 4 5 6 7

当てはまる 当てはまらない

人よりも先に新しい商品やサービスを利用したり、新しいお店に行くほうである 1 2

少し様子をみてから、新しい商品やサービスを利用したり、新しいお店に行くほうである 1 2

一般に普及してから、新しい商品やサービスを利用したり、新しいお店に行くほうである 1 2

新しい商品やサービス、お店には関心がないほうである 1 2

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2

Ⅲ 製品やサービスを選択する際の価値観として当てはまるかを、1・2 から選び該当する数字に○をつけてください。

当てはまる 当てはまらない

とにかく安くて経済的なものを買う 1 2

価格が品質に見合っているかどうかをよく検討してから買う 1 2

多少値段が高くても、品質のよいものを買う 1 2

名の通ったブランドやメーカーの商品であれば、そのぶん多少値段が高くてもよい 1 2

いつも買うと決めているブランドがある 1 2

使いやすい・着やすいかどうかよりも、色やデザインを重視して商品を買う 1 2

テレビやパソコンなどの商品でも、色やデザインを重視して商品を買う 1 2

無名なメーカーの商品よりは、有名なメーカーの商品を買う 1 2

多少値段が高くても、利便性の高いものを買う 1 2

使っている人の評判が気になる 1 2

流行にはこだわるほうである 1 2

周りの人が持っているものを持っていないと気になる 1 2

多少値段が高くても、アフターサービスが充実している方がよい 1 2

周りの人と違う個性的なものを選ぶ 1 2

自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ 1 2

できるだけ長く使えるものを買う 1 2

環境保護に配慮して商品を買う 1 2

安全性に配慮して商品を買う 1 2

レンタルやリースをよく利用する 1 2

中古製品やリサイクル品をよく買う 1 2

使い捨て商品をよく買う 1 2

プライベートブランド小売店が独自に販売しているブランドをよく買う 1 2

自分のためにオーダーメイドされた商品をよく買う 1 2

商品を買う前にいろいろ情報を集めてから買う 1 2

よい情報を得るためにはお金を払うのが当然である 1 2

商品や店舗に関する情報をよく人に教える方である 1 2

すぐに使える現金や預貯金がないときに、クレジットカードで高額の買い物をすることよくある 1 2

自分の好きなものは、たとえ高価でもお金を貯めて買う 1 2

同じ機能・値段であるならば、外国製品よりも日本製品を買う 1 2

有名な人がよいと言っているものを選ぶことが多い 1 2

周りの人がよいと言っているものを選ぶことが多い 1 2

探している商品が見つからない場合は、すぐに店員に聞く方である 1 2

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3

Ⅳ 以下の店舗の利用頻度について、該当する数字に○をつけてください。

Ⅴ PC の利用方法として該当するものに○をつけてください。

利用する 利用しない

電子メールの送受信 1 2

銀行口座の残高照会・ネットバンキング 1 2

株式のオンライントレード 1 2

商品・サービスの発注 1 2

商品・サービスの代金の支払い 1 2

オークションでの商品売買 1 2

掲示板の閲覧・利用 1 2

オンラインゲーム 1 2

映像配信サービス 1 2

音楽配信サービス 1 2

ブログ作成 1 2

メッセンジャー、チャット 1 2

SNS(mixi、GREE など) 1 2

どれも利用したことがない 1 22

ほ と ん

ど毎日

週に 2~

3 回程度

週に 1 回

程度

月に 1~

2 回程度

半年に 1

~2 回程

年に 1 回

程度

ほとんど

利用して

いない

コンビニエンスストア(セブンイレブン、ローソンなど) 1 2 3 4 5 6 7

衣料品・家電等も販売している総合的なスーパーマーケット

(イトーヨーカドー、イオンなど)

1 2 3 4 5 6 7

主に食料品・日用品を販売しているスーパーマーケット

(ヨークベニマル、成城石井など)

1 2 3 4 5 6 7

薬局・薬店、ドラッグストア 1 2 3 4 5 6 7

百貨店・デパ-ト 1 2 3 4 5 6 7

総合的なショッピングセンター、ショッピングモール 1 2 3 4 5 6 7

本屋 1 2 3 4 5 6 7

大型家庭電器店、大型パソコンショップ、大型カメラ店 1 2 3 4 5 6 7

雑誌・カタログなどを使った通信販売 1 2 3 4 5 6 7

テレホンショッピング、テレビショッピング 1 2 3 4 5 6 7

インターネットショッピング(パソコン) 1 2 3 4 5 6 7

インターネットショッピング(携帯電話・スマートフォン) 1 2 3 4 5 6 7

ハンバーガーや牛丼などのファストフードの店 1 2 3 4 5 6 7

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4

性別と年代を選択し、○をつけてください。

男性 女性

20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代

学籍番号と名前を記入してください。

学籍番号

名前