民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック2011~15年9月 〈67歳以上〉...

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賃貸住宅経営における投資判断フロー 賃貸住宅の新築・経営開始 賃貸住宅経営の継続 売却 賃貸住宅の解体・滅失 賃貸住宅以外の 有効活用 更地化 現状のまま 必要な投資 賃貸住宅の質や価値の維持 居住水準にあわせた性能向上が可能 計画修繕 リノベーション 賃貸住宅の解体・建替え 経年劣化 外観や内装の陳腐化 外観や内装の陳腐化がさらに進展 (継続する) (投資する) (継続しない) (投資しない) 計画修繕 準備 はしていますか? 賃貸アパートや賃貸マンションは、築年数が経つと、外観の劣化などが進み、放置したまま 賃貸経営を続けると、競争力が低下し、家賃の下落や入居率の低下につながります。 オーナーが安定した賃貸経営を継続するためには、建物の劣化状況を把握し、外壁や屋上 防水の補修や修繕を実施し、建物を長期的かつ良好に維持管理する 「計画修繕」 と、外観 デザインの改修や居室の間取り変更を行い、居住水準や性能を向上させる 「リノベーション」 の選択肢があります。 オーナーには、どのような賃貸経営を行うかの投資判断が求められる中、本ガイドブックは、 「計画修繕」 に取組む事 例を紹介しています。本ガイドブックを参考に、あらかじめ計画修繕 の準備に取組み、適時適切な投資判断を行いましょう。 民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック 事 例 編

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Page 1: 民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック2011~15年9月 〈67歳以上〉 〈58~67歳〉 〈48~57歳〉 〈38~47歳〉 〈28~37歳〉 〈23~27歳〉 〈18~22歳〉

賃貸住宅経営における投資判断フロー

賃貸住宅の新築・経営開始

賃貸住宅経営の継続売却

賃貸住宅の解体・滅失

賃貸住宅以外の有効活用

更地化現状のまま必要な投資

● 賃貸住宅の質や価値の維持 居住水準にあわせた性能向上が可能

計画修繕 リノベーション 賃貸住宅の解体・建替え

● 経年劣化● 外観や内装の陳腐化

● 外観や内装の陳腐化がさらに進展

(継続する)

(投資する)

(継続しない)

(投資しない)

計画修繕の準備はしていますか? 賃貸アパートや賃貸マンションは、築年数が経つと、外観の劣化などが進み、放置したまま賃貸経営を続けると、競争力が低下し、家賃の下落や入居率の低下につながります。 オーナーが安定した賃貸経営を継続するためには、建物の劣化状況を把握し、外壁や屋上防水の補修や修繕を実施し、建物を長期的かつ良好に維持管理する「計画修繕」と、外観デザインの改修や居室の間取り変更を行い、居住水準や性能を向上させる「リノベーション」の選択肢があります。 オーナーには、どのような賃貸経営を行うかの投資判断が求められる中、本ガイドブックは、「計画修繕」に取組む事例を紹介しています。本ガイドブックを参考に、あらかじめ計画修繕の準備に取組み、適時適切な投資判断を行いましょう。

民間賃貸住宅の

計画修繕 ガイドブック

発行・お問い合わせ先 国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 TEL:03-5253-8111(内線39335)

事 例 編

国土交通省ホームページ

● 民間賃貸住宅 計画修繕を含む投資判断についてhttp://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000016.html

計画修繕の支援策 賃貸住宅のオーナー向けに国土交通省が公表した計画修繕を含む投資判断を行うための支援ツールを公表していますのでご活用ください。

公表ツール

● 賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について計画修繕を含む賃貸住宅経営における投資判断の重要性を示し、参考事例による修繕周期や点検の実施方法など、計画修繕に取り組むためのガイドライン(提案)を公表しています。

民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック計画修繕に取組むための手順や実施のイメージを解説しています。

● 民間賃貸住宅における計画修繕のため の事例集木造・RC造等35物件の、建物診断の実施結果、長期修繕計画作成の内容、修繕工事の内容・費用などの計画修繕の取組み事例を紹介しています。

 なお、本ガイドブックやこれらの公表支援ツールの中で用いている単価や修繕周期などは、あくまで、投資の規模感や投資効果の比較検討、計画修繕などにより多額の資金を必要とする時期などの目安を把握するための事例や参考値であり、実際の計画修繕に取り組む際には、その都度、管理会社や施工会社などにご相談してみましょう。

国土交通省 民間賃貸住宅

● ガイドブック

賃貸住宅経営のセルフチェックシート家賃や入居状況などを入力することで、簡易な賃貸住宅経営における修繕資金確保のためのシミュレーションを行うことができます。

賃貸住宅の修繕点検時期のセルフチェックシート建物の築年数と簡易な建物及び設備の状況をチェックすることで、修繕や点検時期を認識できます。

● セルフチェックシート

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あなたの賃貸住宅は何歳ですか?建物も年をとれば、それに応じたメンテナンスが必要です。例えば、RC造の外壁は一般的に12年目くらいに補修・塗装工事が必要といわれており、2000年代前半に建てられた住宅は、今、まさにその時期を迎えています。放っておくと、人が住めない状態にもなりかねません。メンテナンスには、当然、費用もかかります。安定的な賃貸経営のためにも、大規模修繕に備え、本ガイドブックをご参考に、あらかじめ長期的な計画をつくって、適切なメンテナンスに取り組みましょう。

民間賃貸住宅(共同住宅)の建築時期

出典:「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省)

(単位:万戸)

民間賃貸住宅の

計画修繕 ガイドブック

発行・お問い合わせ先 国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 TEL:03-5253-8111(内線39365)

民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

45

2499

253167

146155

18058

1950年以前1951~60年1961~70年1971~80年1981~90年1991~95年1996~00年2001~05年2006~10年2011~15年9月

〈67歳以上〉〈58~67歳〉〈48~57歳〉〈38~47歳〉〈28~37歳〉〈23~27歳〉〈18~22歳〉〈13~17歳〉〈 7~12歳〉〈 4~ 6歳〉

Page 2: 民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック2011~15年9月 〈67歳以上〉 〈58~67歳〉 〈48~57歳〉 〈38~47歳〉 〈28~37歳〉 〈23~27歳〉 〈18~22歳〉

屋根

建築年

敷地面積

総戸数

当期利益 損益分岐 手元資金残高

物件概要

1 2

■1 賃貸アパート(木造・2階建)の計画修繕 事例 <共用部分の修繕工事を一括で施工する事例>

長期修繕計画の概要 単位:万円

計画修繕を実施した場合の賃貸経営シミュレーションによる試算結果

キャッシュフロー表

家賃収入銀行借入自己資金 収入計建物建設費(初期投資)建物管理費(募集・管理委託等)保険料原状回復費修繕費(小修繕〈故障対応〉)修繕費(計画修繕)固定資産税・都市計画税借入金返済所得税等支出計手元資金残金(年)手元資金残金(累計)

屋根・屋上外壁鉄部・非鉄部塗装足場仮設その他日常修繕経費・消費税

給湯・風呂釡エアコン浴室設備厨房設備洗面化粧台トイレ日常修繕

賃料収入水準(新築時の満室時賃料を100)

総収入ー総支出(運用期間通算)

駅徒歩15分

閑静な住宅街

周辺に競合物件増加

立地条件 市場環境

建物外観を重視

築12年目:建物診断実施

安定した収益物件へ

入居者ニーズ

外壁の劣化は軽度

診断結果● 修繕工事の早期の 実施● 外壁の改修

提  案 効  果

建物診断の結果外壁の一部汚れチョーキング 美観を損ねるごみ置き場

単位:万円

36~40年目31~35年目26~30年目21~25年目16~20年目11~15年目1~10年目修繕周期(目安)

36~40年目31~35年目26~30年目21~25年目16~20年目11~15年目6~10年目2~5年目1年目

40年目35年目30年目25年目20年目15年目10年目5年目1年目100.0 94.0 87.0 80.8 74.9 70.9 67.3 63.7 60.7

初期投資

4,2000

4,2004,200

4,20000

–9,444

49900

4990

251127

31046

28220

4247575

4992541

–8,985

1,92200

1,9220

9742

1061842

1641,129

771,675

247322

1,92297

197–7,229

2,24000

2,2400

11653

13311852

1731,412

732,129

111433

2,240116316

–5,292

2,07500

2,0750

11053

133237428141

1,41241

2,554–479

–472,075

110–3

–4,015

1,92600

1,9260

10553

13310752

1061,412

1002,067–141–187

1,926105194

–2,381

1,80400

1,8040

10053

13332

45794

0227

1,095709522

1,804100522

–1,199

1,71400

1,7140

9553

133323

5294

0338

1,087627

1,1491,714

951,149

7

1,62400

1,6240

9053

13321

45794

0311

1,159465

1,6141,624

901,6141,020

1,54300

1,5430

8653

133285294

0362807736

2,3501,543

862,3502,350

小 計(建物全体)

小 計(建物全体)合 計(建物全体)

00000

1040

1045044

1523

34139243

351731492

05256

42222

2490426017

237659

00000

520

524842

0000

17107159

35207

1492

05256

457221523

1732

489

00000

520

5248422490426017

323375

35207

1492

05256

457220000

1721

478

00000

520

52001523

172880

10年10年10年--毎年-

10年10年15年15年15年15年毎年

防水塗装塗装・シーリング打替

塗装--

日常修理・消防点検-

修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換日常修理

外壁

築年数

延床面積

住戸タイプ

鋼板・ガルバリウム鋼板

2007年(平成19年)

230㎡

6戸

サイディング

13年

288㎡

2LDK

投資判断利回り(40年通算)

NOI 実質利回り表面利回り5.68% 1.40%

総家賃収入15,347万円

総支出12,997万円

手元資金残高2,350万円

損益分岐点28年目9.14%

収支(40年通算)

建物本体

室内設備

収入

支出

収支

収支計算

P/

建物の劣化の抑制修繕費の負担軽減物件イメージ向上

–500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500(万円) (万円)

入居率低下の懸念

入居率低下の懸念

そのまま放置すると…

1年目

2〜5年目

6〜10年目

11〜15年目

16〜20年目

21〜25年目

26〜30年目

31〜35年目

36〜40年目

1年目

2〜5年目

6〜10年目

11〜15年目

16〜20年目

21〜25年目

26〜30年目

31〜35年目

36〜40年目

総支出 総家賃収入固定費(管理費・税、返済)

02,0004,0006,0008,000

10,00012,00014,00016,00018,000 損益分岐点

総家賃収入と総支出の交差点以降が、運用期間を通じた収入と支出をみて、純利益を生む期間

総支出●運用期間(40年)を通じて生じる経費●40年間の固定費総額に、修繕費の 支出を毎年合算

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40

当期利益(期間)当期利益累計

手元資金残金(期間)手元資金残金累計

–1000

–500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

Page 3: 民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック2011~15年9月 〈67歳以上〉 〈58~67歳〉 〈48~57歳〉 〈38~47歳〉 〈28~37歳〉 〈23~27歳〉 〈18~22歳〉

屋根

建築年

敷地面積

総戸数

当期利益 損益分岐 手元資金残高

物件概要

1 2

■1 賃貸アパート(木造・2階建)の計画修繕 事例 <共用部分の修繕工事を一括で施工する事例>

長期修繕計画の概要 単位:万円

計画修繕を実施した場合の賃貸経営シミュレーションによる試算結果

キャッシュフロー表

家賃収入銀行借入自己資金 収入計建物建設費(初期投資)建物管理費(募集・管理委託等)保険料原状回復費修繕費(小修繕〈故障対応〉)修繕費(計画修繕)固定資産税・都市計画税借入金返済所得税等支出計手元資金残金(年)手元資金残金(累計)

屋根・屋上外壁鉄部・非鉄部塗装足場仮設その他日常修繕経費・消費税

給湯・風呂釡エアコン浴室設備厨房設備洗面化粧台トイレ日常修繕

賃料収入水準(新築時の満室時賃料を100)

総収入ー総支出(運用期間通算)

駅徒歩15分

閑静な住宅街

周辺に競合物件増加

立地条件 市場環境

建物外観を重視

築12年目:建物診断実施

安定した収益物件へ

入居者ニーズ

外壁の劣化は軽度

診断結果● 修繕工事の早期の 実施● 外壁の改修

提  案 効  果

建物診断の結果外壁の一部汚れチョーキング 美観を損ねるごみ置き場

単位:万円

36~40年目31~35年目26~30年目21~25年目16~20年目11~15年目1~10年目修繕周期(目安)

36~40年目31~35年目26~30年目21~25年目16~20年目11~15年目6~10年目2~5年目1年目

40年目35年目30年目25年目20年目15年目10年目5年目1年目100.0 94.0 87.0 80.8 74.9 70.9 67.3 63.7 60.7

初期投資

4,2000

4,2004,200

4,20000

–9,444

49900

4990

251127

31046

28220

4247575

4992541

–8,985

1,92200

1,9220

9742

1061842

1641,129

771,675

247322

1,92297

197–7,229

2,24000

2,2400

11653

13311852

1731,412

732,129

111433

2,240116316

–5,292

2,07500

2,0750

11053

133237428141

1,41241

2,554–479

–472,075

110–3

–4,015

1,92600

1,9260

10553

13310752

1061,412

1002,067–141–187

1,926105194

–2,381

1,80400

1,8040

10053

13332

45794

0227

1,095709522

1,804100522

–1,199

1,71400

1,7140

9553

133323

5294

0338

1,087627

1,1491,714

951,149

7

1,62400

1,6240

9053

13321

45794

0311

1,159465

1,6141,624

901,6141,020

1,54300

1,5430

8653

133285294

0362807736

2,3501,543

862,3502,350

小 計(建物全体)

小 計(建物全体)合 計(建物全体)

00000

1040

1045044

1523

34139243

351731492

05256

42222

2490426017

237659

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17107159

35207

1492

05256

457221523

1732

489

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5248422490426017

323375

35207

1492

05256

457220000

1721

478

00000

520

52001523

172880

10年10年10年--毎年-

10年10年15年15年15年15年毎年

防水塗装塗装・シーリング打替

塗装--

日常修理・消防点検-

修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換修理・交換日常修理

外壁

築年数

延床面積

住戸タイプ

鋼板・ガルバリウム鋼板

2007年(平成19年)

230㎡

6戸

サイディング

13年

288㎡

2LDK

投資判断利回り(40年通算)

NOI 実質利回り表面利回り5.68% 1.40%

総家賃収入15,347万円

総支出12,997万円

手元資金残高2,350万円

損益分岐点28年目9.14%

収支(40年通算)

建物本体

室内設備

収入

支出

収支

収支計算

P/

建物の劣化の抑制修繕費の負担軽減物件イメージ向上

–500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500(万円) (万円)

入居率低下の懸念

入居率低下の懸念

そのまま放置すると…

1年目

2〜5年目

6〜10年目

11〜15年目

16〜20年目

21〜25年目

26〜30年目

31〜35年目

36〜40年目

1年目

2〜5年目

6〜10年目

11〜15年目

16〜20年目

21〜25年目

26〜30年目

31〜35年目

36〜40年目

総支出 総家賃収入固定費(管理費・税、返済)

02,0004,0006,0008,000

10,00012,00014,00016,00018,000 損益分岐点

総家賃収入と総支出の交差点以降が、運用期間を通じた収入と支出をみて、純利益を生む期間

総支出●運用期間(40年)を通じて生じる経費●40年間の固定費総額に、修繕費の 支出を毎年合算

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40

当期利益(期間)当期利益累計

手元資金残金(期間)手元資金残金累計

–1000

–500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

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屋根

建築年

敷地面積

総戸数

空室バルコニー鉄部塗装

階段内壁塗装・階段溝防水

エントランスパラペット塗装

着工前 完 了

着工前 完 了

着工前 完 了

建物の健全な状態の維持

1年目

2年目

3年目

4年目

5年目

6年目

7年目

8年目

9年目

10年目

11年目

12年目

13年目

14年目

15年目

3 4

足場仮設●養生費・飛散防止ネット・ 高圧洗浄含む

313万円廊下・階段・バルコニー●各防水工事

463万円

屋上●部分補修●全面防水

●トップコート●クラック補修

265万円

外壁●補修●塗装(全面補修・コーキング・塗装)

934万円

鉄部●玄関・扉・受水槽等塗装

163万円

2,138万円(15年間で分割施工)

総額建物診断の実施 (築18年目)修繕施工会社へ計画的な修繕工事の実施提案を依頼し、建物診断を実施しました。

1

診断結果に基づく長期修繕計画の作成屋上・外壁北面・東面など、修繕が必要な建物の部位などを分割して修繕する15年間のメンテナンス計画(長期修繕計画)を策定しました。

2

修繕工事の実施 (築19年~33年)メンテナンス計画書に基づき、外壁補修や塗装、防水工事等、建物外部全体の修繕工事とその後のメンテナンスを継続して実施しています。また、毎年実施する建物点検結果や、修繕工事の際に確認された計画外の不具合部分も修繕することで建物の劣化抑制に努めています。

3

■2 賃貸マンション(RC造8階建)の計画修 繕事例 <共用部分の修繕工事を分割して施工する事例>

物件概要外壁

築年数

延床面積

住戸タイプ

陸屋根(シート防水)

1999年(平成11年)

880㎡

33戸

磁器質タイル、モルタル吹付

22年

1,593㎡

1LDK~3LDK

部 位 名

パラペット

東 面

西 面

南 面

業 務(点検、保守、補修)

部分補修、全面防水補修、トップコート

クラック補修

補修、塗装(全面補修・コーキング・塗装)

メンテナンス計画の概要

屋 上

外 壁

部分補修

クラック補修

クラック補修

全面補修・コーキング・塗装

全面補修・コーキング・塗装

全面補修・コーキング・塗装

メンテナンス

メンテナンス メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

全面防水改修

メンテナンス トップコート メンテナンス

メンテナンス

Page 5: 民間賃貸住宅 計画修繕 ガイドブック2011~15年9月 〈67歳以上〉 〈58~67歳〉 〈48~57歳〉 〈38~47歳〉 〈28~37歳〉 〈23~27歳〉 〈18~22歳〉

屋根

建築年

敷地面積

総戸数

空室バルコニー鉄部塗装

階段内壁塗装・階段溝防水

エントランスパラペット塗装

着工前 完 了

着工前 完 了

着工前 完 了

建物の健全な状態の維持

1年目

2年目

3年目

4年目

5年目

6年目

7年目

8年目

9年目

10年目

11年目

12年目

13年目

14年目

15年目

3 4

足場仮設●養生費・飛散防止ネット・ 高圧洗浄含む

313万円廊下・階段・バルコニー●各防水工事

463万円

屋上●部分補修●全面防水

●トップコート●クラック補修

265万円

外壁●補修●塗装(全面補修・コーキング・塗装)

934万円

鉄部●玄関・扉・受水槽等塗装

163万円

2,138万円(15年間で分割施工)

総額建物診断の実施 (築18年目)修繕施工会社へ計画的な修繕工事の実施提案を依頼し、建物診断を実施しました。

1

診断結果に基づく長期修繕計画の作成屋上・外壁北面・東面など、修繕が必要な建物の部位などを分割して修繕する15年間のメンテナンス計画(長期修繕計画)を策定しました。

2

修繕工事の実施 (築19年~33年)メンテナンス計画書に基づき、外壁補修や塗装、防水工事等、建物外部全体の修繕工事とその後のメンテナンスを継続して実施しています。また、毎年実施する建物点検結果や、修繕工事の際に確認された計画外の不具合部分も修繕することで建物の劣化抑制に努めています。

3

■2 賃貸マンション(RC造8階建)の計画修 繕事例 <共用部分の修繕工事を分割して施工する事例>

物件概要外壁

築年数

延床面積

住戸タイプ

陸屋根(シート防水)

1999年(平成11年)

880㎡

33戸

磁器質タイル、モルタル吹付

22年

1,593㎡

1LDK~3LDK

部 位 名

パラペット

東 面

西 面

南 面

業 務(点検、保守、補修)

部分補修、全面防水補修、トップコート

クラック補修

補修、塗装(全面補修・コーキング・塗装)

メンテナンス計画の概要

屋 上

外 壁

部分補修

クラック補修

クラック補修

全面補修・コーキング・塗装

全面補修・コーキング・塗装

全面補修・コーキング・塗装

メンテナンス

メンテナンス メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

メンテナンス

全面防水改修

メンテナンス トップコート メンテナンス

メンテナンス

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外壁(東面)

2年目

外壁(北面)

5年目

オーナー

設計監理 施工 管理

設計監理 施工 管理

オーナー

設計監理

施工

管理

オーナー

管理会社一任

工事関係 管理業務入居者対応

個別発注

助言・工事監理

メリット

メリット

メリット

分割施工方式 (■2 の計画修繕事例)2

5 6

計画修繕の発注方式 修繕工事の施工方式

 管理会社や修繕施工会社などによる計画修繕実施のための発注方式には、管理会社や修繕施工会社が調査・設計から施工までを一括して発注する方法や、調査・設計と施工を分離して発注を行う方法があります。それぞれ特徴を比較して、発注方式を選択することになります。

●調査・設計から施工、工事監理、検査までを管理会社に一任する方式 (多くの場合、管理会社から施工会社へ外注)

●修繕周期に基づく建物診断を実施後、対象となる共用部分の修繕工事を一括して実施

●修繕工事を行う都度、施工期間に合わせた発注請負契約を締結

●発注請負契約に準じて支払う

●固定資産の通常の維持管理及び原状回復のためなどの支出の場合は修繕費として経費算入

 修繕工事の施工方式は、日常点検や建物診断に基づき、建物本体や共用設備の修繕工事を一括して施工する方法(一括施工方式)が一般的ですが、建物診断を実施後、修繕部位の中で修繕が必要な部分を優先して工事を行う長期修繕計画を作成し、長期修繕計画に基づき、各年に分割して修繕工事を施工する方法(分割施工方式)もあります。

●調査・設計から施工、工事監理、検査までを施工会社に一括して発注する方式

●調査・設計、施工会社の選定、工事監理を設計コンサルタントに委託し、施工は施工会社に発注する方式

●オーナーの手間が軽減 (工事中の苦情、 要望等の窓口は日常管理業務と同じ)●物件の入居状況や周辺家賃動向を踏まえ、 リノベーションを含む修繕の投資提案も可能

●初期の段階から施工等に配慮した検討が可能●初期の段階から一社指名での発注となるため、 公募・入札方式を採用することにより 修繕費の削減も可能

●中立的な立場で工事監理の委託が可能●施工会社選定に競争原理が働き、 修繕費の削減が可能●発注者が希望する仕様の設定が可能●統一仕様書による入札が可能なため、 見積もりなどの比較検討が容易化

施工方法

契約期間

修繕費の支払い

修繕費の税務上の一般的な取扱い※

●建物診断を実施後、修繕が必要な部分を優先した修繕計画を作成し、各年に分割して修繕工事を実施

●原則15年の発注請負 契約を締結

●工事費総額の20%を当初2年間で支払い、残りの80%を契約期間月数で 毎月定額にて支払う

●不動産収入を  得るために 直接必要な費用 とした修繕委託費 として経費算入

施工方法

契約期間

修繕費の支払い

修繕費の税務上の一般的な取扱い※

※ 税務署の判断による

※ 税務署の判断による

管理会社一任方式1 一括施工方式 (■1 の計画修繕事例)1

責任施工方式2

設計監理方式3

屋上防水

1年目

外壁(南面)

3年目

外壁(西面)

4年目

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外壁(東面)

2年目

外壁(北面)

5年目

オーナー

設計監理 施工 管理

設計監理 施工 管理

オーナー

設計監理

施工

管理

オーナー

管理会社一任

工事関係 管理業務入居者対応

個別発注

助言・工事監理

メリット

メリット

メリット

分割施工方式 (■2 の計画修繕事例)2

5 6

計画修繕の発注方式 修繕工事の施工方式

 管理会社や修繕施工会社などによる計画修繕実施のための発注方式には、管理会社や修繕施工会社が調査・設計から施工までを一括して発注する方法や、調査・設計と施工を分離して発注を行う方法があります。それぞれ特徴を比較して、発注方式を選択することになります。

●調査・設計から施工、工事監理、検査までを管理会社に一任する方式 (多くの場合、管理会社から施工会社へ外注)

●修繕周期に基づく建物診断を実施後、対象となる共用部分の修繕工事を一括して実施

●修繕工事を行う都度、施工期間に合わせた発注請負契約を締結

●発注請負契約に準じて支払う

●固定資産の通常の維持管理及び原状回復のためなどの支出の場合は修繕費として経費算入

 修繕工事の施工方式は、日常点検や建物診断に基づき、建物本体や共用設備の修繕工事を一括して施工する方法(一括施工方式)が一般的ですが、建物診断を実施後、修繕部位の中で修繕が必要な部分を優先して工事を行う長期修繕計画を作成し、長期修繕計画に基づき、各年に分割して修繕工事を施工する方法(分割施工方式)もあります。

●調査・設計から施工、工事監理、検査までを施工会社に一括して発注する方式

●調査・設計、施工会社の選定、工事監理を設計コンサルタントに委託し、施工は施工会社に発注する方式

●オーナーの手間が軽減 (工事中の苦情、 要望等の窓口は日常管理業務と同じ)●物件の入居状況や周辺家賃動向を踏まえ、 リノベーションを含む修繕の投資提案も可能

●初期の段階から施工等に配慮した検討が可能●初期の段階から一社指名での発注となるため、 公募・入札方式を採用することにより 修繕費の削減も可能

●中立的な立場で工事監理の委託が可能●施工会社選定に競争原理が働き、 修繕費の削減が可能●発注者が希望する仕様の設定が可能●統一仕様書による入札が可能なため、 見積もりなどの比較検討が容易化

施工方法

契約期間

修繕費の支払い

修繕費の税務上の一般的な取扱い※

●建物診断を実施後、修繕が必要な部分を優先した修繕計画を作成し、各年に分割して修繕工事を実施

●原則15年の発注請負 契約を締結

●工事費総額の20%を当初2年間で支払い、残りの80%を契約期間月数で 毎月定額にて支払う

●不動産収入を  得るために 直接必要な費用 とした修繕委託費 として経費算入

施工方法

契約期間

修繕費の支払い

修繕費の税務上の一般的な取扱い※

※ 税務署の判断による

※ 税務署の判断による

管理会社一任方式1 一括施工方式 (■1 の計画修繕事例)1

責任施工方式2

設計監理方式3

屋上防水

1年目

外壁(南面)

3年目

外壁(西面)

4年目

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賃貸住宅経営における投資判断フロー

賃貸住宅の新築・経営開始

賃貸住宅経営の継続売却

賃貸住宅の解体・滅失

賃貸住宅以外の有効活用

更地化現状のまま必要な投資

● 賃貸住宅の質や価値の維持 居住水準にあわせた性能向上が可能

計画修繕 リノベーション 賃貸住宅の解体・建替え

● 経年劣化● 外観や内装の陳腐化

● 外観や内装の陳腐化がさらに進展

(継続する)

(投資する)

(継続しない)

(投資しない)

計画修繕の準備はしていますか? 賃貸アパートや賃貸マンションは、築年数が経つと、外観の劣化などが進み、放置したまま賃貸経営を続けると、競争力が低下し、家賃の下落や入居率の低下につながります。 オーナーが安定した賃貸経営を継続するためには、建物の劣化状況を把握し、外壁や屋上防水の補修や修繕を実施し、建物を長期的かつ良好に維持管理する「計画修繕」と、外観デザインの改修や居室の間取り変更を行い、居住水準や性能を向上させる「リノベーション」の選択肢があります。 オーナーには、どのような賃貸経営を行うかの投資判断が求められる中、本ガイドブックは、「計画修繕」に取組む事例を紹介しています。本ガイドブックを参考に、あらかじめ計画修繕の準備に取組み、適時適切な投資判断を行いましょう。

民間賃貸住宅の

計画修繕 ガイドブック

発行・お問い合わせ先 国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 TEL:03-5253-8111(内線39335)

事 例 編

国土交通省ホームページ

● 民間賃貸住宅 計画修繕を含む投資判断についてhttp://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000016.html

計画修繕の支援策 賃貸住宅のオーナー向けに国土交通省が公表した計画修繕を含む投資判断を行うための支援ツールを公表していますのでご活用ください。

公表ツール

● 賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について計画修繕を含む賃貸住宅経営における投資判断の重要性を示し、参考事例による修繕周期や点検の実施方法など、計画修繕に取り組むためのガイドライン(提案)を公表しています。

民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック計画修繕に取組むための手順や実施のイメージを解説しています。

● 民間賃貸住宅における計画修繕のため の事例集木造・RC造等35物件の、建物診断の実施結果、長期修繕計画作成の内容、修繕工事の内容・費用などの計画修繕の取組み事例を紹介しています。

 なお、本ガイドブックやこれらの公表支援ツールの中で用いている単価や修繕周期などは、あくまで、投資の規模感や投資効果の比較検討、計画修繕などにより多額の資金を必要とする時期などの目安を把握するための事例や参考値であり、実際の計画修繕に取り組む際には、その都度、管理会社や施工会社などにご相談してみましょう。

国土交通省 民間賃貸住宅

● ガイドブック

賃貸住宅経営のセルフチェックシート家賃や入居状況などを入力することで、簡易な賃貸住宅経営における修繕資金確保のためのシミュレーションを行うことができます。

賃貸住宅の修繕点検時期のセルフチェックシート建物の築年数と簡易な建物及び設備の状況をチェックすることで、修繕や点検時期を認識できます。

● セルフチェックシート

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あなたの賃貸住宅は何歳ですか?建物も年をとれば、それに応じたメンテナンスが必要です。例えば、RC造の外壁は一般的に12年目くらいに補修・塗装工事が必要といわれており、2000年代前半に建てられた住宅は、今、まさにその時期を迎えています。放っておくと、人が住めない状態にもなりかねません。メンテナンスには、当然、費用もかかります。安定的な賃貸経営のためにも、大規模修繕に備え、本ガイドブックをご参考に、あらかじめ長期的な計画をつくって、適切なメンテナンスに取り組みましょう。

民間賃貸住宅(共同住宅)の建築時期

出典:「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省)

(単位:万戸)

民間賃貸住宅の

計画修繕 ガイドブック

発行・お問い合わせ先 国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 TEL:03-5253-8111(内線39365)

民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック

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1950年以前1951~60年1961~70年1971~80年1981~90年1991~95年1996~00年2001~05年2006~10年2011~15年9月

〈67歳以上〉〈58~67歳〉〈48~57歳〉〈38~47歳〉〈28~37歳〉〈23~27歳〉〈18~22歳〉〈13~17歳〉〈 7~12歳〉〈 4~ 6歳〉