新規機能性パラジウム触媒の開発と 既存の不均一系...

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新規機能性パラジウム触媒の開発と 既存の不均一系白金族触媒が潜在的に保有する未知の機能性開拓 岐阜薬科大学 佐治木 弘尚 1. はじめに 近年の有機合成化学では,効率的でグリーンな合成法の開発が望まれている.しかし既存 製造プロセスには,化学量論的反応剤を必要としたり,無機塩類を多量に副生するなど原 子効率的問題を有する反応が多い.合成プロセスの「グリーン化」には効率の高い新規選択 的触媒あるいは触媒反応の開発が極めて重要である. 1 触媒は「均一系触媒」と「不均一系 触媒」に大別されるが,特に不均一系触媒は反応混合物からの分離が容易で,再利用の可 能性が高いため環境負荷低減型反応工程の構築に有用である. 我々は,不均一系機能性パラジウム触媒の創製とともに,Pd/Cをはじめとする既存の不 均一系白金族触媒における新しい機能性を開拓すべく研究を行っている.本講演では,「機 能性パラジウム触媒の開発例」として,官能基選択的接触還元触媒として既に市販されて いるPd/C-エチレンジアミン複合体触媒[Pd/C(en)] 2 並びにPd-フィブロイン触媒(Pd/Fib) 2 について概略を示した後、最近開発に成功したアルキン部分水素化触媒であるパラジウム -ポリエチレンイミン(Pd/PEI) 3 の開発と適用性について紹介する.また、「Pd/Cの新規機能 性開拓の例」として,フェノール性水酸基簡便除去法 の開発、ニトリルをアルキル化剤と したアミン類の還元的アルキル化法 並びに芳香族アミノ化反応の開発とトリアリールアミ ン合成法への適用 について順次概説する. 2. 触媒毒の積極的利用による不均一系官能基選択的接触還元触媒 Pd/C(en)の開発 パラジウムに代表される触媒には反応の進行を妨げる触媒毒の存在が知られている. 様々な硫黄化合物やアミン類などの孤立電子対を有する求核試薬が触媒毒の代表である. 本来触媒毒は反応に対してあまり好ましいものではないが、触媒毒を利用することで選択 的な接触還元が達成される場合がある.代表的なものとして、アルキンの部分水素化反応に 用いられる Lindlar 触媒と、酸塩化物を選択的にアルデヒドへと還元する Rosenmund 還元 法(Pd/quinoline-S)が挙げられる. 4 当研究室では、Pd/C を用いた接触還元系に、弱い触媒毒として知られる窒素性塩基(例 えばアンモニア、ピリジン、酢酸アンモニウム)を添加すると、Pd/C の接触還元能が低下 し、アルキルベンジルエーテルの水素化分解が完全に抑制され、同一分子内に共存するオ レフィン、アジド、ニトロ、 N-Cbz、ベンジルエステル等、 他の還元性官能基のみが選択 的に還元されることを見出し、 ベンジルエーテル存在下での 官能基選択的接触還元法とし て確立した. 5 5% Pd/C H 2 (balloon), rt NH 3 , pyridine or NH 4 OAc (0.5 equiv) Ph OBn Ph OBn NCbz BnO NH BnO (8598%) Scheme 1

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新規機能性パラジウム触媒の開発と

既存の不均一系白金族触媒が潜在的に保有する未知の機能性開拓

岐阜薬科大学 佐治木 弘尚

1. はじめに

近年の有機合成化学では,効率的でグリーンな合成法の開発が望まれている.しかし既存

製造プロセスには,化学量論的反応剤を必要としたり,無機塩類を多量に副生するなど原

子効率的問題を有する反応が多い.合成プロセスの「グリーン化」には効率の高い新規選択

的触媒あるいは触媒反応の開発が極めて重要である.1 触媒は「均一系触媒」と「不均一系

触媒」に大別されるが,特に不均一系触媒は反応混合物からの分離が容易で,再利用の可

能性が高いため環境負荷低減型反応工程の構築に有用である. 我々は,不均一系機能性パラジウム触媒の創製とともに,Pd/Cをはじめとする既存の不

均一系白金族触媒における新しい機能性を開拓すべく研究を行っている.本講演では,「機

能性パラジウム触媒の開発例」として,官能基選択的接触還元触媒として既に市販されて

いるPd/C-エチレンジアミン複合体触媒[Pd/C(en)]2 並びにPd-フィブロイン触媒(Pd/Fib) 2

について概略を示した後、最近開発に成功したアルキン部分水素化触媒であるパラジウム

-ポリエチレンイミン(Pd/PEI)3 の開発と適用性について紹介する.また、「Pd/Cの新規機能

性開拓の例」として,フェノール性水酸基簡便除去法の開発、ニトリルをアルキル化剤と

したアミン類の還元的アルキル化法並びに芳香族アミノ化反応の開発とトリアリールアミ

ン合成法への適用について順次概説する.

2. 触媒毒の積極的利用による不均一系官能基選択的接触還元触媒 Pd/C(en)の開発

パラジウムに代表される触媒には反応の進行を妨げる触媒毒の存在が知られている.様々な硫黄化合物やアミン類などの孤立電子対を有する求核試薬が触媒毒の代表である.本来触媒毒は反応に対してあまり好ましいものではないが、触媒毒を利用することで選択

的な接触還元が達成される場合がある.代表的なものとして、アルキンの部分水素化反応に

用いられる Lindlar 触媒と、酸塩化物を選択的にアルデヒドへと還元する Rosenmund 還元

法(Pd/quinoline-S)が挙げられる.4 当研究室では、Pd/C を用いた接触還元系に、弱い触媒毒として知られる窒素性塩基(例

えばアンモニア、ピリジン、酢酸アンモニウム)を添加すると、Pd/C の接触還元能が低下

し、アルキルベンジルエーテルの水素化分解が完全に抑制され、同一分子内に共存するオ

レフィン、アジド、ニトロ、

N-Cbz、ベンジルエステル等、

他の還元性官能基のみが選択

的に還元されることを見出し、

ベンジルエーテル存在下での

官能基選択的接触還元法とし

て確立した.5

5% Pd/CH2 (balloon), rt

NH3, pyridine orNH4OAc (0.5 equiv)

Ph OBn Ph OBn

NCbzBnO NHBnO(85-98%)

Scheme 1

しかしアミン類を添加した条件下では,芳香族ベンジルエーテル(フェノール性水酸基

のベンジル保護基)の水素化分解は容易に進行したため,これを抑制すべく更なる検討を

行った.その結果,Pd/C とエチレンジアミンをメタノール中長時間撹拌することで,触媒毒

として用いたエチレンジアミン(en) が Pd 金属に配位した複合体[Pd/C(en)]を単離すること

に成功した.6 Pd/C(en)は,(1)不均一系触媒であり濾過のみで反応系から除去できる,(2)乾燥状態でも

Pd/C に見られる自然発火性を示さない,(3)通常の試薬瓶中で長期間保存しても活性に変化

はない,等の特長を有する.さらに,脂肪族ベンジルエ

ーテルのみならず芳香族

ベンジルエーテル,ベンジ

ルアルコール,7 脂肪族ア

ミンのN-Cbz基,8エポキシ

ド 9及びシリルエーテル 10

に対する水素化分解活性

が消失しており,これらの

官能基存在下,他の還元性

官能基を選択的に接触還

元することが可能であ

る .11 Pd/C(en)は市販の不

均一系触媒である Pd/C に

「官能基選択性」という新

たな機能を付与したもの

であり,再利用可能なこと

から現在広範に利用され

ている.12

OBn OBn(91%)

MeO

BnO CH CH2

MeO

BnO Et

5% Pd/C(en)H2 (balloon)MeOH, rt, 24 h

O10% Pd/C(en)H2 (balloon)MeOH, rt, 24 h

OH

(91%)

NH

CO2Bn

Cbz

5% Pd/C(en)H2 (balloon)

THF, DMAP, rt, 3 h NH

CO2H

Cbz(75%)

O2N O(CH2)3

O

O

5% Pd/C(en)H2 (balloon)

THF, DMAP, rt, 3 hH2N O(CH2)3

O

O

Ph OTBDMS

10% Pd/C(en)H2 (balloon)MeOH, rt, 24 h Ph OTBDMS

(100%)

(93%)

Scheme 2

3. Pd-フィブロイン触媒(Pd/Fib)の開発

40年ほど前に赤堀・和泉らは人工酵素の創製を目指して Pd を吸着させた絹-Pd 触媒

を調製し,接触還元条件下におけるイミンの不斉還元を行っている.13 しかし,触媒が高温・

高圧・強酸性条件下で調製されて

おり,立体選択性並びに再現性に

乏しく,実用的に使用されること

はなかった.これはタンパク質の

変性あるいは切断に起因するもの

と考えられる . 今回我々は,

Pd(OAc)2 をメタノールに溶解し

た後,白色のフィブロインを浸し

て常温・常圧下4日間放置するの

みで,Pd(OAc)2 のフィブロイン繊

維への定量的な吸着と同時にメタ

ノールを還元剤とした0価 Pd へ

Pd(OAc)2Fibroin

MeOH, rtPd(OAc)2/Fib

rt

MeOHPd(0)/Fib + HCHO + 2AcOH

Cl

Ph

O

Cl

Ph

O

N3

CO2Bn

H2N

CO2Bn

NHCbz NHCbz

2.5% Pd/Fib

H2, MeOH, rt(92-100%)

Scheme 3

の還元が進行し,黒色の Pd-フィブロイン複合体触媒(Pd/Fib)が得られる事を見いだした

(Scheme 3).14 Pd/Fib 触媒は,(1)室温下通常の試薬瓶中で長期間保存することができ,(2)発火性を全く示さず,(3)反応後は目の粗い濾紙で濾過するのみで触媒を除去できるといった

特長を有しており,Pd/C や Pd/C(en)を触媒とした場合に容易に還元される芳香族ケトン,

芳香族ハロゲン,ベンジルエステル及び芳香族アミンの Cbz 保護基に対する還元活性も消

失している.従ってこれらの官能基存在下にオレフィン,アセチレン及びアジドを極めて選

択的に還元することができる触媒である.15

4.

(P

アルケンを得る

みを部分水素化することにも成功し、本触媒の有用性を

アルキン部分水素化触媒パラジウム-ポリエチレンイミン(Pd-PEI)の開発

アルキンからアルケンへの選択的部分水素化は合成化学的有用性のみならず、触媒の選

択性発現といった観点からも興味が持たれる.一般にアルケンの水素化はアルキンの水素

化よりも速く進行するため、アルキンからアルケンへの選択的部分水素化は極めて困難で

ある.これまでに確立された唯一の方法として、鉛を触媒毒として用いた Lindlar 触媒があ

る.4 しかし鉛の毒性により環境負荷が高く、また一置換アルキンには適用ができないとい

った欠点を有し

数の窒素性塩

基を有するポ

リマーである

ポリエチレン

イミンを担体

かつ触媒毒と

した,パラジウ

ム-ポリエチ

レ ン イ ミ ン

ている.そこで我々は、Pd/C(en)のコンセプトを更に発展させ、分子内に多

PEIPEI-MeOH

1.Deaeration, 48 h

2.MeOH

vaccum pump

Pd(OAc)2

Ar Ar

PEI-MeOHPd(OAc)2

1.rt, 24 h

2.Concentrated in vacuo

Pd-PEI catalyst

H2

Figure 1

d-PEI)触媒の触媒活性に興味を抱き開発に着手した. あらかじめ脱気した PEI (2.11 g)を MeOH (100 mL)に溶解し、得られた PEI-MeOH 溶液を

Pd(OAc)2 (1 mmol)の入ったナスフラスコに加える.Pd(OAc)2 が均一に溶解した後、水素置換

を行い室温下 24 時間撹拌後、MeOH を減圧留去し、得られた残渣を減圧下乾燥することで

Pd-PEI 触媒を調製した(Figure 1).得られた

すべく、ジフェニルアセチレンを基質と

して接触還元反応を行った.その結果、

MeOH と Dioxane の混合溶媒を用いるこ

とで、目的とする cis-スチルベンを高選

択的に得ることができた.本法は多様な

二置換アルキンに適用可能であり、いず

れも高選択的に対応する

Pd-PEI 触媒のアルキンに対する還元活性を検討

97 % 96 % 94 %

100 %100 %100 %

PhPh Ph CO2H Ph CO2Et

3 3

OH

2

HO OH

とができた(Figure 2). 次に、Lindlar 触媒では達成困難な一置換アルキンの部分水素化反応への適用を検討した.

その結果、溶媒として AcOEt-Dioxane 混合溶媒を用いることで、アルケンからアルカンへ

の還元が抑制され、高選択的に一置換アルケンが得られた.また Lindlar 触媒を用いた場合

には、Cbz 基等の還元性保護基は容易に脱保護されるが、Pd-PEI 触媒では、還元性保護基

を脱保護することなくアルキンの

Figure 2 Partial Hydrogenation of di-substituted Alkynes

の選択的接触還元が可能となり,従来不可能であった特異的な官能基変換を可能と

した.

Figure 4 Reducible Functionalities

5.

ている.我々は穏和な新規フェノール性水酸基除去法を見

出し、その一般性を確立した.

5-

大することができた(Figure 3). Pd/PEI,Pd/Fib,Pd/C(en)及び Pd/C の使い分けにより,Figure 4 に示す種々の還元性官能

基間で

Ph

OH

91 %

OHNHCbz

93 %

CO2H

84 %

OBn

96 % 88 %

CO2Bn

84 % HO 100%

alkyl-N-Cbz

Reducible functionalitiesPd/C

Pd/C(en)

Pd/Fib

Pd/PEI

R-OTBDMS (TES) Benzyl alcohol

Pd/C を触媒としたフェノール性水酸基簡便除去法の開発

フェノール性水酸基は天然物や医薬品をはじめとする、生物活性物質の部分構造である

ため、水酸基を除去した誘導体の合成は、構造活性相関的見地から重要である.容易に入手

可能なフェノール誘導体から、フェノール性水酸基のみを簡便に除去する手法が開発され

れば、全合成経路の短縮や化合物ライブラリーの作成等に極めて有用であるが、フェノー

ル性水酸基は安定な官能基であり、除去は一般に困難である.従って、フェノール性水酸基

を持たない化合物は小分子量のシントンから多段階工程を経て合成していく必要があった.一方、フェノール性水酸基の直接除去法に関しては報告例は少ないものの、水酸基をテト

ラゾリール化 16 やイソウレイル化 17 して脱離性を高めた後に除去する方法や、トリフレー

ト(TfO)18 やトシレート(TsO)19 に代表されるスルホン酸エステルへと誘導し、還元的

に除去する方法が知られている.しかし、いずれも基質適用性が低い、脱離基の加水分解が

併発するといった問題点を有し

1. Pd/C-Et2NHを触媒とした接触還元条件下でのフェノール性水酸基の除去反応

変換が容易で、種々の化学反応条件下安定であり、取り扱いやすいメタンスルホン酸エ

ステルを脱離基として、Pd/C を用いた接触還元条件下、添加物及び溶媒等を工夫すると、

効率的に脱メタンスルホニルオキシ化、すなわち水酸基の除去が進行することを見出した.すなわち、メタノールを溶媒として、ジエチルアミンを添加することで、脱メタンスルホ

ニルオキシ化が効率的に進行し、高収率で対応するフェノール性水酸基除去体が得られた

(Table 1).

Figure 3 Partial Hydrogenation of mono-substituted Alkynes

acetylene

olefin

R-N3

Ar-NO2

R-CO2Bnaromatic-N-Cbz

ArCORepoxide

R-OBn

Ar-X

Table 1 Pd/C-Et2NH-Catalyzed Reductive Cleavage of OMs Groups in the Presence of H2

Ar OMs10% Pd/C, Et2NH

MeOH, rtAr HAr OH

H2 (balloon)

Substrate Time (h) Yield (%) Subtrate Time (h) Yield (%)

MsO CH2CO2Me

CO2Me

OMs

CO2Bn

MsO O

MsO

OMs

NH

OMs

OMe

OMe

MsO

Bn

OMs

4

1

19

17

31

29

24

58

89

87

91a

90b

91

99c

94c

79d

aHydrogenolysis of benzyl ester was also occured. b1,3-Diphenyl-2-propanol was obtained. c10% Pd/C (20 wt%), Et2NH (2.0 equiv) d10% Pd/C (40 wt%), Et2NH (4.0 equiv)

5-2. Pd/C-Mg-MeOH系による脱トリフルオロメタンスルホニルオキシ化 次に脱離性の高いトリフレートを用いたところ、アルゴン雰囲気下、触媒である Pd/C と

Mg 金属をメタノール中撹拌するのみで、脱トリフレート化が進行することを見出した

(Table 2).20

Table 2 Reductive Cleavage of Aryl Triflates Using Pd/C-Mg in the Absence of H2

Ar OTf10% Pd/C, Mg

MeOH, rt, Ar, 24 hAr HAr OH

Without H2

TfO

OMe

OMe

OMe

TfO

TfO NHCOMe

CH2Ph

OTf

TfO

CH2Ph

OTf

TfO

TfO CH2CO2Me

OMe

TfO OMe

Entry Substrate Yield (%) Entry Substrate Yield (%)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

95

89

90

88

93

98

90

99

80

TfO

C3H5MeO-

(79% conversion)

また、水素源

を明確にする目

的で重メタノー

ルを溶媒として

検討したところ、

本反応ではメタ

ノール水酸基の

水素が導入され

ていることが明

らかとなった

(Table 3).さら

に、重水素源と

して比較的安価

な CH3OD を用

いることで、

様々な基質への位置選択的重水素標識化が可能である.従って、本反応は芳香環上水酸基置

換部位への選択的な重水素導入法としての応用も可能である(Figure 5).

TfO

OMe

OMe

OMe

10% Pd/C (10 wt%), Mg (1.2 equiv)

Methanol, Ar, 24 hX

OMe

OMe

OMe

Entry Methanol

1234

CH3OHCD3OHCH3ODCD3OD

HHDD

X

Table 3 Determination of the Hydrogen Source

D

OMeOMe

OMe D

D

D

PhH2C

DD

86%, 4.5 ha 81%, 24 h 83%, 12 hb 95%, 18 h 84%, 24 h 64%, 24 ha

a 0.01 equiv of NH4OAc was added. b 2.4 equiv of Mg was used.

Figure 5

5-3. 酢酸アンモニウムの添加効果 本反応は、一般に電子供与性基が置換した基質に対して適用可能であるが、Table 2,

Entry 10 に示すように反応性が低い場合や、電子求引性基が置換した基質ではトリフレー

トの加水分解が併発する.そこで、反応性の向上、並びに基質適用性の拡大を目的として、

添加物による加速効果を検討した.

Table 4 Effect of Additive

C3H5MeO

TfO

C3H5MeO

H

10% Pd/C (10 wt%), Mg (1.2 equiv)

MeOH, Ar, rt

1 2

Additive

Entry Additive Time (h) 1 : 2

1 none 24 21 : 79

2 AcOH (0.1 equiv) 11 0 : 100

3 AcOH (0.01 equiv) 24 27 : 73

4 TFA (1.2 equiv) 24 59 : 41

5 HCl-MeOH 24 91 : 9

6 NH4OAc (0.01 equiv) 1 0 : 100

7 NH4OAc (0.001 equiv) 24 7 : 93

8 NaOH (1.2 equiv) 24 -(hydrolysis)

9 Et3N (1.2 equiv) 24 98 : 2

その結果,酢酸の添加によって反応性の向上が認められ(Table 4, Entries 2, 3)、0.1 当量

以上添加することで脱トリフレート化が完結することが明らかとなった.しかし、TFA や塩

酸等の強酸、NaOH や Et3N 等の塩基の添加は反応を抑制した(Entries 4, 5, 8, 9).一方、酢

酸アンモニウムはほぼ中性の塩であるが、基質に対してわずか 0.01 当量の添加で反応性が

著しく向上し、室温下わずか 1 時間で反応が完結し脱トリフレート体、すなわちフェノー

ル性水酸基が脱離した生成物のみが得られた(Entry 6).20 次に酢酸アンモニウムの添加効果を利用して、基質適用性の拡大とともに反応時間の短

縮、収率の向上について詳細に検討した.その結果、いずれの基質においても、脱トリフレ

ート化反応は極めて効率的に進行し、対応する脱トリフレート体を短時間,高収率で得るこ

とができた. 尚、最近の検討で、本反応はメシレートの脱離反応にも適用が可能となったので、併せ

て報告する予定である.

Table 5 Pd/C-Catalyzed Reductive Cleavage of Aryl Trifrates in the Presence of Mg and NH4OAc

OTfR 10% Pd/C , Mg (1.2 equiv)

MeOH , Ar, rt, TimeH

RNH4OAc (1.0equiv)

Entry Substrate Time (h) Yield (%)a Entry Substrate Time (h) Yield (%)a

1 OMe

TfO OMe 1 99 7 TfO

1 94

2 TfO

OMe

OMe

OMe

1 89 8 TfO CH2CO2Me

0.5 83

3 TfO

C3H5MeO

0.5 95 9 TfO

1 92

1 97 10 OTf

TfO NHCOMe 0.5 84 4

0.5 95 11 TfO

CO2MeMeO

TfO

CH2Ph

2.5 92b 5

CH2Ph

OTf6 0.5 98 12

TfO

F

24 100c

a Isolated yield. b 3.0 equiv of NH OAc was used. 4 c Reaction was performed without NH4OAc and determined by GC/MS because of the low boiling point of the product.

6.

,3級アミン

ニトリルをアルキル化剤としたアミン類の選択的アルキル化法

2級アミン類の従来合成法として,アルキルハライドによる1級アミン類の直接アルキ

ル化法やカルボニル化合物を用いた還元的アルキル化法が用いられているが

4級アンモニウム塩の副生とともに等量の無機塩の生成等が欠点である.

本節では,Pd/C の「新規機能性開拓」の一例として,ニトリルをアルキル化剤とした Pd/C触媒下におけるアミン類の選択的アルキル化法について紹介する.

6

-1. 芳香族アミン類の選択的モノアルキル化 10% Pd/CH2 (balloon)

MeOH, rt, 24 h

アセトニトリル中アニリンを基質とし

て 10% Pd/Cを触媒とした接触還元を行

ったところ,アニリンのモノエチル化が

効率よく進行することが明らかとなった.さらに,アルキル化剤であるアセトニト

リルの当量数並びに溶媒について検討を

行ったところ,メタノール中試薬量(2

~5当量)のアセトニトリルを用いた場

合にもモノエチル化は定量的に進行した

合物か

ら二級芳香族アミンへの直接変換も可能であり,有機合成化学的にも有用である.

6-

Scheme 3). そこで種々の芳香族アミンやニトリルを用いて検討したところ,いずれも反応は高収

率・高選択的に進行しモノアルキル化体(ArNHCH2R)を得ることができた.21 なお反応性が低

い場合には,ニトリルを蒸留するか水素圧の上昇もしくは酢酸アンモニウムの添加により

収率が改善された.なお,本法の更なる適用として,容易に得られる芳香族ニトロ化

2. 脂肪族アミン類の選択的モノ及びジアルキル化

6-1 で紹介した芳香族一級アミン類の還元的モノアルキル化反応の条件を,脂肪族アミン

のアルキル化に適用したところ過剰アルキル化が進行し相当量の脂肪族三級アミンが生成

した(Table 6, Entries 1, 3, 5).そこで,適当な触媒を見いだすべくスクリーニングを行った.その結果,5% Rh/Cを用いた場合に三級アミンはほとんど副生せず二級アミン(モノアル

キル化体)が高選択的に得られることが明らかとなった(Entries 7-9).21

応は大きく加速

ところで,

Pd/C を触媒と

した脂肪族1

級アミン類の

アルキル化反

応で,相当量の

脂肪族三級ア

ミンが副生し

た こ と か ら

(Entries 1, 3, 5),これを脂肪

族一級アミン

から脂肪族三

級アミンを合

成する手法と

して適用すべく検討を行った.その結果,酢酸アンモニウムの添加により反

Table 6 Mono-Alkylation of Aliphatic Amines

CH3(CH2)10NH2Catalyst, H2

RCN, MeOHCH3(CH2)10NHCH2R CH3(CH2)10N(CH2R)2+

A B C

Entry RCN (equiv) Catalyst Time (h) A : B : Ca

1 MeCN (2) 10% Pd/C 48 7 : 18 : 75 2c MeCN (2) 10% Pd/C 24 0 : 0 : 100 (97)b 3 PrCN (5) 10% Pd/C 57 7 : 59 : 34 4c PrCN (5) 10% Pd/C 29 0 : 0 : 100 (100)b 5 BuCN (5) 10% Pd/C 13 0 : 17 : 83 6c BuCN (5) 10% Pd/C 13 0 : 0 : 100 (90)b 7 MeCN (2) 5% Rh/C 24 0 : 100 (96)b : 0 8 PrCN (2) 5% Rh/C 34 3 : 97 (82)b : 0 9 BuCN (2) 5% Rh/C 13 3 : 97 (71)b : 0

a) Determined by H NMR. b1 ) Isolated yield. c) 1.0 equiv of NH4OAc was used as an additive.

NTESO Cbz 10% Pd/CH2 (balloon)

MeCN, rt, 24 h

NHHO

NTESO

(98 %)

(quant)

PhNH2

Et

10% Pd/CH2 (balloon)

MeCN (2 equiv)MeOH, rt, 24 h

PhNHEt(98 %)

Scheme 3

され,完全に三級アミンへと変換される事がわかった(Entries 2, 4, 6).

ニトリルでアル

キル化することで非対称三級アミンを効率良く合成できる(Scheme 4).

アニリンを添加して,塩基性をほぼ同等と

あるアミンが存在すると,イ

ミン(E)の接触還元よりも速くアミンの求核攻撃が進行し,還元的アルキル化が優先すると

考えれば合理的である.

さらに,Rh/C による脂肪

族一級アミンのモノアルキ

ル化と Pd/C を用いたジア

ルキル化を組み合わせて,

脂肪族一級アミンに 2 つの

異なるアルキル基を導入し

た三級アミンの合成が可能

である.すなわち,Rh/C を

触媒として脂肪族一級アミ

ンをモノアルキル化した後,Pd/C を触媒として生成した二級アミンを別の

Me(CH2)9NH2 Me(CH2)9NHBu Me(CH2)9N(Et)Bu

5% Rh/C, H2PrCN (2 eq)

MeOHMeOH

NH4OAc,(88%)(82%)

Ph(CH2)2NH2 Ph(CH2)2NHEt Ph(CH2)2N(Et)Pr(94%, 2 steps)

10% Pd/C, H2MeCN (5 eq)

5% Rh/C, H2MeCN (2 eq)

MeOHMeOH

NH4OAc,

10% Pd/C, H2EtCN (5 eq)

Scheme 4

本反応では二つの機構が考えられ

る.一つは,パラジウムへの配位により

活性化されたニトリルをアミンが求

核攻撃し,中間体としてのアミジン

(D)の生成を鍵段階とした反応機構で

ある(Scheme 5, Path a).しかし,アニ

リンのエチル化反応の中間体として

考えられるフェニルアセトアミジン

[PhNHC(=NH)Me]を別途合成し同条

件下接触還元したところ,全くの原料

回収であった事からこの機構は否定

される.第二のメカニズムは,ニトリル

が一段階接触還元を受けイミン(E)が生成することにより開始されるルー

トである(Path b).イミン中間体(E)は二段階目の接触水素化に優先して、アミンの求核攻撃を受け,続いて脱アンモニア,さ

らにこの段階で接触還元を受け反応が進行する.この機構が正しければ,求核種となるアミ

ンが存在しない場合、イミン(E)が速やかに還元され対応するアミンが生成するはずである.そこで,アルキル化の基質にならないジメチル

した反応系でバレロニトリルの還元を行った

ところ,室温下24時間後,原料は残存する

ものの,イミンの還元により生成したペンチ

ルアミンが,共存するバレロニトリルにより

還元的アルキル化を受けた二級及び三級アミ

ンの生成が確認された(Scheme 6).従って,還元的アルキル化は,Path b に示すメカニズ

ムで進行している可能性が高い.なお反応開始段階に求核性の

CR'R-NH2

R-NHC R' N

H

CHR

NH2

R'

R-N CH R' R-NHCH2R'

Pd

CHR' N

H

CHR

NH2

R'

NH3

Pd

NNH

H2

PdH2

(Path a)

NHCR'

Pd

NPdH2

R-NH2

R-N CH R' R-NHCH2R'

NH

Pd

3

H2

E(Path b)

D

Scheme 5

BuCN

10% Pd/CH2 (balloon)

MeOH, rt, 24 hPhNMe2

(C5H11)2NH (C5H11)3N

(20%) (3%)+

Scheme 6

7. 不均一系 Pd 触媒を用いた芳香族アミノ化反応の開発とトリアリールアミン合成への適用

芳香族アミン類は、医薬品、農薬、色素の原料や天然物の合成素子等として利用される

有用な化合物である.その合成法として、均一系Pd触媒を用いるBuchwald-Hartwig反応 22 が

適用範囲の広さと比較的穏和な反応条件のためよく知られている.しかし使用する Pd 触媒

が均一系であり、1) 空気中で不安定、2) 触媒の分離や再利用が困難、3) 生成物への残

留Pd等の問題点を有している.従って工業的には、強熱反応条件下Cu試薬を用いるUllmann反応が未だ一般法として使用されている.一方、不均一系 Pd/C は、均一系触媒と比較して、

1) 安価、2) 空気中で安定、3) 処理の際に濾過のみで除去可能、4) 再利用可能など多

くの利点を持ち、有機合成や環境面からも重要な触媒である.今回我々は、Pd/C を用いた不

均一系 Buchwald-Hartwig 型芳香族アミノ化反応の開発と共に、近年注目されている有機 ELディスプレイの重要な構成材料であるトリアリールアミン合成法の確立を目指して研究に

着手した.

7-1. Pd/Cを触媒とした芳香族アミノ化反応の開発 不均一系 Pd 触媒を用いたカップリング反応の確立を目指して、ブロモベンゼンと環状二級

アミンであるモルホリンの t-BuONa 存在下におけるカップリングを検討したところ、

Cyclopentylmethylether (CPME) 中 、 二 座 配 位 子 リ ガ ン ド で あ る

1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene (dppf) の添加により、反応が極めて効率的に進行するこ

とを見出し, 電子

あることを明らか

いても、反応は

問題なく進行す

ることを確認し

た (Table 7, Entries 1-3).また

ブロモベンゼン

と一級アミンと

のカップリング

反応を検討した

ところ、高選択

的に二級アミン

供与性基及び求引性基いずれが置換したブロモベンゼンにも適用可能で

が 得 ら れ た

とした.さらにオルト位に置換基を有し立体障害が懸念される基質にお

Table 7 Pd/C-Catalyzed Aromatic Amination in the Presence of dppf and tBuONa

Ar Br HNR1

R2

+10% Pd/C (4 mol%), dppf (6 mol%)

CPME, tBuONa (2 eq), refluxAr N

R1

R2

Entry Product Yield (%)a Entry product Yield (%)a

1 MeO N O

70% 4 N

N O

95%

2b EtOOC N O 92% 5 HN

9

95%

3 N O

(Entries 5 and 6).

7-2. Pd/C再利用の検討 金属触媒は一般に高

価であることから再利

用が可能であればコス

ト削減につながると共

にグリーンケミストリ

ーの観点からも極めて

有用な方法となる.そこ

76% 6

HN

97%

a Isolated yield. b Cs2CO3 was used as a base.

Table 8 Reuse of Pd/C

Br +CPME (2 mL), tBuONa (2 eq), 120 ゚C

N O10% Pd/C (2 mol %), dppf (3 mol %)O

NH

(2 mmol) (3 mmol)

Recycle 10% Pd/C (mg) Yield (%)a

1st 42.6 82

2nd 48.6 89 3rd 48.0 86 4th 43.5 95

a Isolated yield.

で本法で使用する Pd/C の再利用を検討した (Table 8). その結果、反応は 4 回目まで収率の減衰なく、いずれも効率的に進行したことから、本

反応において Pd/C は再利用可能であることが明らかとなった.また、濾過により回収され

る Pd/C は通常フィルターへの吸着等で目減りするはずであるが、本反応では 2 回目から 4回目まで若干ながら増加傾向を示した.この理由としては、活性炭に dppf が吸着されたか、

あるいは Pd 金属と dppf が一部強固な複合体を形成したことに起因するものと考えている.

7- 3. トリアリールアミンの合成 アニリンとブロモ

ベンゼンのカップリ

ング反応において、

アミノ化が二段階進

行したトリフェニル

アミンが極めて微量

ながら副生する事を

見出した .検討の結

果、より高沸点を有

するメシチレンを溶媒として用いることでトリフェニルアミン生成反応が効率的に進行す

82%で得ることができた.

Ar1 Br +

HN

PhNAr2

事が明らかとなった(Scheme 7). 一方、CPME 中ブロモベ

過剰量用いることで、ア

ミノ化が二段階進行し

たトリフェニルアミン

の副生を抑え、選択的に

ジフェニルアミンを合

ンゼンとアニリンとのモノカップリング反応において Aniline を

することができる(Scheme 8). そこで、異なる置換基を有する非対称トリアリールアミンの合成を目的とした検討を行

った (Scheme 9).まず 4-ブロモアニソール と 3,4-Xylideine (1.5 eq) を 10% Pd/C (2 mol %)、dppf (3 mol %) 及び tBuONa (1.5 eq) 存在下 CPME (2 mL) 中 30 時間加熱還流したところ、

目的のジアリールアミンが 91%の収率で得られた.さらにこの生成物を 4-ブロモビフェニ

ル (1.5 eq)、10% Pd/C (2 mメシチレンを溶媒として

24 時間加熱還流したとこ

ろ反応は効率的に進行し、

目的とする 3 つの置換基

がすべて異なる非対称ト

リアリールアミンを 90%、

すなわち 4-ブロモアニソ

ールからのトータル収率

ol %)、dppf (3 mol %) 及び tBuONa (1.5 eq) 存在下、沸点の高い

Ph

Ar2 NH2

or10% Pd/C (2 mol%), dppf (3 mol%)

Mesitylene, tBuONa, refluxor

NAr1

Ar1 Ar1 Ph Ph

N

OMe

78%

N

84%

N

92%

N

100%

Scheme 7

Br

10% Pd/C ( 2 mol %), dppf (3 mol %)

CPME, tBuONa, (2 eq), 120 °C

HN

(96%)

+ H2N

(5 eq)

Scheme 8

MeO Br

+

H2N

10% Pd/C (2 mol %), dppf (3 mol %)

CPME, tBuONa (1.5 eq), 160 °C

(1.5 eq)

91% (Isolated yield)

HN

MeO

+

Br

10% Pd/C (2 mol %), dppf (3 mol %)

Mesitylene, tBuONa (1.5 eq), 180 °C

(1.5 eq)

N

OMe90% (Isolated yield)

HN

MeO

Scheme 9

8.

利用価値の高い手法であり,学術的応用の

ならず産業的な適用・発展が期待される.23

lenediamine Complex」及び「Palladium-Fibroin」

iki, H.; Hirota, K. Chem. Pharm. Bull. 2003, 51,

1 1998, 4043. (b) Hattori, K.; Sajiki, H.; Hirota, K.

i

., Jpn. 1961,

kawa, T.; Sajiki, H.; Hirota, K.

.

iki, H.; Ikawa, T.; Hirota, K. Org. Process Res.

Chem. 1999, 576, 125. 3 Sajiki, H. ファルマシア 2006, 42, 140.

おわりに

不均一系触媒に特化した高い官能基選択性を有する新規触媒の開発や既存の触媒を用い

る新規反応の開発は,有機合成化学における反応の多様性をもたらすとともに,グリーン

ケミストリーの観点からも有用性が高い.本講演では、当研究室で実施している不均一系パ

ラジウム触媒における新しい機能の創製あるいは発見に関する研究の中から,「機能性パラ

ジウム触媒の開発」並びに「汎用性ある既存触媒 Pd/C の知られざる機能性探索」の一部を

紹介する.これらの研究結果は,いずれも実用的

9. 参考文献

1 (a)”医薬品のプロセス化学” 日本プロセス化学会編, 化学同人, 2005. (b)”グリーンケミストリー-持続的

社会のための化学”御園生誠, 村橋俊一, 講談社, 2001. (c) Anastas, P. T.; Warner, J. C. 著, 渡辺 正; 北島 昌夫 訳 グリーンケミストリー, 丸善, 1999. Pd/C(en)と Pd/Fibはそれぞれ「Palladium-Activated Carbon Ethy2 として和光純薬工業(株)より試薬として市販されている.

3 2006 年 6 月より発売予定. (a) Nishimura, S. Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis, W4 iley-Interscience: New York, 2001; (b) Rylander, P. N. Hydrogenation Methods; Academic Press: New York, 1985.

5 (a) Sajiki, H. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 3465; (b) Sajiki, H.; Kuno, H.; Hirota, K. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 399; (c) Sajiki, H.; Kuno, H.; Hirota, K. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 7127; (d) Sajiki, H.; Hirota, K. Tetrahedron 1998, 54, 13981; (e) 佐治木 弘尚 薬学雑誌 2000, 120, 1091; (f) Saj320.

6 Sajiki, H.; Hattori, K.; Hirota, K. J. Org. Chem. 1998, 63, 7990. (a) H. Sajiki, K. Hattori, K. H7 irota, J. Chem. Soc., Perkin Trans. Tetrahedron 2001, 57, 4817.

8 Hattori, K.; Sajiki, H.; Hirota, K. Tetrahedron 2000, 56, 8433. (a) Sajiki, H.; Hatto9 ri, K.; Hirota, K. Chem. Commun. 1999, 1041; (b) H. Sajiki, K. Hattori, K. Hirota, Chem. Eur. J., 6, 4043 (2000).

10 (a) Hattori, K; Sajiki, H.; Hirota, K. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 5711−5714; (b) Hattori, K; Sajiki, H.; Hirota, K. Tetrahedron 2001, 57, 2109−2114; (c) Sajiki, H.; Ikawa, T.; Hattori, K.; Hirota, K. Chem. Commun. 1999, 1041; (d) Sajiki, H.; Ikawa, T.; Hirota, K. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 7407; (e) Ikawa, T.; Sajiki, H.; H rota, K. Tetrahedron 2004, 60, 6189; (f) Ikawa, T.; Hattori, K.; Sajiki, H.; Hirota, K. Tetrahedron 2004, 60, 6901. (a) 佐治木 弘尚・廣田 耕作 有機11 合成化学協会誌 2001, 59, 109−120; (b) 佐治木弘尚; 廣田耕作 Organic Square (WAKO); 2004, No. 12, 1−3.

12 For example, (a) Kurosawa, K.; Nagase, T.; Chida, N. Chem. Commun. 2002, 1280; (b) Campos, K. R.; Journet, M.; Cai, D.; Kowal, J. J.; Lee, S.; Larsen, R. D.; Reider, P. J. J. Org. Chem. 2003, 68, 2338.; (c) Moreau, X.; Bazan-Tejeda, B.; Campagne, J.-M. J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 7288.

13 (a) Akabori, S.; Sakurai, S.; Izumi, Y.; Fujii, Y. Nature 1956, 178, 323−324; (b) Izumi, Y. Bull. Chem. Soc., Jpn. 1959, 32, 932−936, 936−942 and 942−945; (c) Akamatsu, A.; Izumi, Y.; Akabori, S. Bull. Chem. Soc34, 1067−1072; (d) Akamatsu, A.; Izumi, Y.; Akabori, S. Bull. Chem. Soc,. Jpn. 1961, 35, 1706−1711.

14 Sajiki, H.; Ikawa, T.; Hirota, K. Tetrahedron Lett., 2003, 44, 171. (a) Sajiki, H.; Ikawa, T.; H15 irota, K. Tetrahedron Lett., 2003, 44, 8437; (b) ITetrahedron 2005, 61, 2217.

16 Hussey, B. J.; Johnstone, R. A. W.; Entwistle, I. D. Tetrrahedron 1982, 38, 377517 Vowinkel, E.; Baese, H. J. Chem. Ber. 1974, 107, 1213. 18 Cassi, S.; Ciattini, P. G.; Morera, E. Ortar, G. Tetrahedron Lett. 1986, 27, 5541. 19 Wang, F.; Chiba, K.; Tada, M. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1992, 1897. 20 Sajiki, H.; Mori, A.; Mizusaki, T.; Ikawa, T.; Maegawa, T.; Hirota, K. Org. Lett. 2006, 8, 987.

(a) Sajiki, H.; Ikawa, T.; H21 irota, K. Org. Lett. 2004, 6, 4977; (b) Saj& Develop. 2005, 9, 219.

22 Yang B. H.; .Buchwald, S. L. J. Orgnomet.2