金融itの現状とその改革について...金融 itの現状とその改革について...

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金融ITの現状とその改革について 2015.11.30 日本銀行 金融機構局 岩下直行 1 FinTech研究会参考資料 本資料の内容や意見は発表者個人に属します。 日本銀行あるいは金融機構局の公式見解を示す ものではありません。 参考2

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金融ITの現状とその改革について

2015.11.30

日本銀行 金融機構局

岩下直行

1

FinTech研究会参考資料

本資料の内容や意見は発表者個人に属します。 日本銀行あるいは金融機構局の公式見解を示す ものではありません。

参考2

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金融業界のIT対応は他業種に比べ先進的か?

新規システム構築・システム再構築に取り組んでいる企業の割合

経営におけるIT利活用からみた「ITステージ」の割合

金融・ 保険業 がトップ

(最も進んでいる)

(出典)平成26年度情報処理実態調査 2

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日本企業のIT投資は他国と異なるのか? (全産業ベース)

(出典)経済産業省・「日本の『稼ぐ力』創出研究会」第7回経産省資料(2014年10月24日)、p.54

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米国と日本企業のIT投資 (全産業ベース)

(出典)経済産業省・「日本の『稼ぐ力』創出研究会」第7回経産省資料(2014年10月24日)、p.55 4

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• P19

(出典)金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」資料

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わが国の金融業におけるIT活用の実態

• わが国の金融業のIT投資は、規模が大きく、歴史も長い。経営陣の関与も含め、その管理体制は充実している。

• しかし、長年にわたり、安全性と安定性を重視する、保守的なシステム開発が続いてきた。

• 構築するシステムの数が多いため、「(ひとつでも)新設・再構築に取組んでいる企業の割合」は高いが、実際には維持管理の比率が高く、変化への対応は遅れがちであった。省人化、コスト削減を目的とする、典型的な「守りのIT投資」であった。

• 最近のFinTechの潮流は、こうした金融業のIT投資スタイルに変革を促している。

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ムーアの法則: 「半導体の集積度は18か月で2倍になる」という経験則。この法則は過去数十年にわたって観察され、コンピュータのハードウエアのコスト・パフォーマンスは年を追うごとに改善している。

しかし、金融ITの現場の実感としては、劇的なコストの低下も、劇的な性能の向上もみられていない。これは一体なぜか。

ひとつの仮説: 「銀行が先にIT化に取り組み、それを完成させてしまったから」

1970-80年代 銀行のIT化が他の業界に先行し、その時代において高い完成度を達成

1990年代以降 インターネットが爆発的に普及し、ハードウエアのコスト・パフォーマンス向上の裾野が拡大

⇒ この結果、「普通のIT」と「金融IT」との乖離が生じ、銀行が急速なITの進展から「置いてきぼりをくった」形になってしまったと考えられる。

ムーアの法則が働かない金融IT

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① 1980年代までのわが国の金融機関は、店舗配置を含む経営戦略の自由度が制限される中で、システム投資を「規制からの抜け穴・捌け口」と受け止め、世界的にみても大規模なシステム投資を行った。その後、既存のシステムの抜本的な見直しは行われず、世の中のITの変化に取り残される形となった。

② 規制によって業務範囲や商品設計の自由度が乏しい中で、顧客サービスの内容や質の向上を目的とするのではなく、省人化によるコスト削減を目的とするものになっていた。

③ 金融機関本体によるクレジットカード業務への参入が制限されたため、外部とシステム連動する誘因が乏しくなり、業界内で孤立したシステムとなった。顧客のパーソナル情報の活用も拡大しなかった。

④ 海外との関係では、制度や慣行の違いから国内向けと国外向けのシステムを分断したため、海外の金融業界で進められた変革が国内の金融ITに波及しなかった。

その歴史的背景

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• 日本の金融システムが複雑化している背景には、以下の原因がある。 ① 勘定系システムが全取引をリアルタイムで連動させているため、システムの一部に手を入れようとすると、全体をメンテナンスする必要があること。 ② ユーザー側が細かな仕様変更を要求し、ベンダー側がそれを受け入れてしまうため、随所に修正が当てられてモジュールが崩れていること。

• 肥大化した勘定系システムには極力手を入れないようにし、インターネットやスマートフォンなどを介した新サービスとの柔軟な連携を可能とする仕組みを、いわば第2基幹系システムの形で追加していってはどうか。

• 自行のシステム要員は、業務アプリケーションの開発に特化することが肝要であり、煩雑な基礎技術あるいは制御ソフト部分に関わらなくて済むように、プライベート・クラウドなどの有効活用を進めてはどうか。

• 新システム構築に関しては、新しい人材の確保のほか、従来のシステム構築のやり方に阻害されない組織作りが肝要である。

• 組織のガバナンスの点で、経営陣がIT戦略に深く関与していくことが大切である。

課題への解決策として金融IT高度化ワークショップで出された意見

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金融ITの改革に当たって、既存の金融ITを手直ししていくアプローチには限界がある。⇒ 金融EDI(Electronic Data Interchange)構想は過去20年以上難航。

これに対して、白地に絵を描いた形のEC(Electronic Commerce)決済は短期間で普及した。ノンバンクの決済事業者の主導により、売り手と買い手がインターネット上で商流情報と金流情報とを一体として通信し、取引履歴に基づく商流ファイナンスも実現している。

金融EDI構想 EC決済+商流ファイナンス

金融EDIとEC決済

消費者 販売業者

Web による 購 入

決済代 行業者

①融資

クレジット 会 社

商流情報 分析

②自動振替(1か月後)

③送金 (1か月後)

④返済

Web による 販 売

Internet

商 流 情 報

金 流 情 報

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インターネットバンキングの利用率に関する異なる見方

あり 19.9

% なし 80.1

%

あり 65.2

%

なし 34.8

% あり 71.4

%

なし 28.6

%

調査実施期間:2013年11月8日~12月4日 調査対象:全国の満20歳以上の個人 標本数:4,000人 有効回答者数:2,241人 調査方法:質問票によるアンケート調査

(郵送調査法) 非利用理由(上位3つ): ①セキュリティに関して不安(52.9%) ②サービス利用の申込手続やPW入力 などの操作が面倒/難しい(40.8%) ③必要性がない(35.2%)

設問:インターネットによる銀行振込を利用したことがあるかないかを尋ねた。

調査実施期間:2012年8月3日~8月6日 調査対象:一般生活者、企業経営者 マクロミルのネットリサーチモニター 標本数:3,700人 有効回答者数:3,235人<銀行利用者>

調査方法:インターネット調査

非利用理由(上位3つ): ①セキュリティ面で不安(52.1%) ②必要性がない(41.8%) ③申込手続が面倒(29.1%)

設問:インターネットバンキングを利用したことがあるかないかを尋ねた。

調査実施期間:2015年1月1日~1月5日 調査対象:「MyVoice」のアンケートモニター 標本数:― 有効回答者数:11,303人

調査方法:インターネット調査 (ネットリサーチ) ※当調査は、99年から開始され、08年の83.1%をピークに漸減傾向。

設問:インターネットバンキングを現在利用している、または利用したことがあると回答した人の合計値を「あり」、利用したことがない回答した人を「なし」。

日本銀行 「生活意識に関するアンケート調査 (第56回)」

全国銀行協会(電通に委託)

「よりよい銀行づくりのためのアンケート (2012年度) 」

マイボイスコム㈱ 「インターネットバンキングの利用 (自主企画アンケート) 」

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2011 2012 2013 2014

インターネット利用率 2011年 2012年 2013年 2014年

北海道 82.7 77.5 84.1 82.4 東北 72.3 71.8 77.0 77.1 北関東 74.9 75.7 81.1 80.2 南関東 84.2 84.7 85.2 87.3 北陸 74.8 77.8 81.1 81.5 甲信越 72.7 75.2 80.4 75.4 東海 79.9 78.0 83.5 81.7 近畿 80.2 80.6 85.6 85.2 中国 74.6 77.9 79.1 79.8 四国 73.4 76.5 78.9 77.5 九州・沖縄 75.4 77.2 80.2 79.3 全体 79.1 79.5 82.8 82.8

スマホ利用率 2011年 2012年 2013年 2014年

北海道 13.1 25.0 38.5 41.9 東北 10.8 24.5 36.0 39.4 北関東 13.3 29.6 37.3 44.3 南関東 20.9 36.3 46.3 53.1 北陸 12.3 27.8 37.9 43.5 甲信越 11.3 25.2 37.0 40.6 東海 16.3 30.4 43.3 45.4 近畿 17.5 34.1 45.5 50.1 中国 12.2 28.7 37.1 43.7 四国 12.3 25.6 38.6 42.0 九州・沖縄 14.0 29.6 41.0 42.8 全体 16.2 31.4 42.3 47.1

(出典)総務省 「通信利用動向調査」

インターネット利用率

スマホ利用率

地方間のIT格差は大きくない (%)

12 (年)

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年齢階層別インターネットの利用状況の推移 (%)

(出典)総務省「通信利用動向調査」 13

78.2

65.5

95.6 97.4

95.1 94.2

86.6

64.4

39.2

20.3

79.1

61.6

96.4 97.7

95.8 94.9

86.1

68.7

42.6

14.3

79.5

69.0

97.2 97.2 95.3 94.9

85.4

68.0

48.7

25.7

82.8

73.3

97.9 98.5 97.4 96.6

91.4

73.1

48.9

22.3

82.8

71.6

97.8 99.2 97.8 96.6

91.3

75.2

50.2

21.2

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80.0

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全体 6~12歳 13~19歳 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳 80歳以上

2010年末 2011年末 2012年末 2013年末 2014年末