金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced...

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205 知られてきた酸化ユーロピウム Eu Eu 2 O 3 の焼結体(セラミ クス),薄膜等を真空中で紫外光照射すると,照射時間 とともにルミネッセンス色が赤橙色から白色に変化し, ついには高輝度白色発光体に変わることを発見した。ま た,レーザー光を照射しなければ,この白色ルミネッセ ンス能力は雰囲気を真空から 1 気圧の酸素ガスに変え ても,数年以上メモリーされていることを確認した。こ れは書き込まれた光情報のメモリーに他ならない。そし て,この白色発光状態は,酸素ガス中や空気中での同じ 1 序 論 序 論 最近の物性物理学の重要な研究テーマのひとつに, レーザー光による物質状態や物性の制御がある。 この この この 背景には,圧力や温度を変化させて起こる相転移を光を 用いて制御しようとしたり,優れた特性を有する隠れた 準安定状態を光で選択的に励起して採り出そうとした り,新規な光メモリー物質を開発しようとする等の目的 がある。 2000 年以前に望月等 1は,赤橙色発光体として 望月章介 , ,藤代 史 ,飯野晃弘 ,芝田浩平 ,浅地哲夫 , 鈴鹿 敢 § ,橋本拓也 , ,中里勝芳 , ,中村正人 When Eu 2 O 3 is irradiated with a 325 nm laser light in vacuum, the photoluminescence (P L) spectrum changes from a red sharp - line structure to a white broad band, which can be clearly seen with the naked eye. After removing the ultravi- olet (UV) laser light, the white PL state was stored for several years at room temperature under room light, regardless of any changes of atmosphere. By irradiatting with the same UV laser light at room temperature under O 2 gas atmosphere, the original red PL state re - appears. Similar reversible phenomena have been observed for different kinds of oxides and they may well yield materials for white - light - emitting devices and erasable optical storage. Expecting the improvement in the speed of such spectral change due to system - size reduction, we have also studied the reversible UV- laser - light - induced spectral change in several kinds of oxide - nanoparticle and - bulk specimens. In the present paper, we report upon the experimental results of Eu 2 O 3 , Sm 2 O 3 , Y 2 O 3 , γ Al 2 O 3 , SrTiO 3 , ZnO, anatase TiO 2 , SiO 2 glass and γ Al 2 O 3 - Eu 2 O 3 composite. The results can be explained by the theor y on exciton instability. Keywords : photo - induced effects, photomemor y, photo - induced valence change, photo - induced defect 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ RoomTemperature Erasable Photomemory Phenomena of Metal Oxides I Shosuke MOCHIZUKI , , Fumito FUJISHIRO , Akihiro IINO , Kohei SHIBATA , Tetsuo ASAJI , , Isamu SUZUKA § , Takuya HASHIMOTO , , Katsuyoshi NAKAZATO ,and Masato NAKAMURA Received September 30, 2006Department of Physics, College of Humanities and Sciences, Nihon Department of Physics, College of Humanities and Sciences, Nihon University: 3 25 40 Sakurajosui, Setagaya ku, Tokyo, 156 8550, Japan 日本大学文理学部物理学科: 日本大学文理学部物理学科: 156 156 1568550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水32540 日本大学大学院総合基礎科学研究科相関理化学専攻: 日本大学大学院総合基礎科学研究科相関理化学専攻: 156 156 1568550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水32540 日本大学文理学部化学科: 日本大学文理学部化学科: 156 156 1568550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水32540 § 日本大学工学部物質化学工学科: 日本大学工学部物質化学工学科: 963 963 9638642 福島県郡山市田村町徳定字中河原1 福島県郡山市田村町徳定字中河原1 日本大学文理学部物理生命システム科学科: 日本大学文理学部物理生命システム科学科: 156 156 1568550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水32540 日本大学理工学部一般教育: 日本大学理工学部一般教育: 274 274 2748501 千葉県船橋市習志野台7241 日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 No.42 2007pp.205 220 1

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Page 1: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

─ ─205 ( )

知られてきた酸化ユーロピウムEuEu2O3の焼結体(セラミ

クス),薄膜等を真空中で紫外光照射すると,照射時間

とともにルミネッセンス色が赤橙色から白色に変化し,

ついには高輝度白色発光体に変わることを発見した。ま

た,レーザー光を照射しなければ,この白色ルミネッセ

ンス能力は雰囲気を真空から 1気圧の酸素ガスに変え

ても,数年以上メモリーされていることを確認した。こ

れは書き込まれた光情報のメモリーに他ならない。そし

て,この白色発光状態は,酸素ガス中や空気中での同じ

1 序 論 序 論

最近の物性物理学の重要な研究テーマのひとつに,

レーザー光による物質状態や物性の制御がある。 この このこの

背景には,圧力や温度を変化させて起こる相転移を光を

用いて制御しようとしたり,優れた特性を有する隠れた

準安定状態を光で選択的に励起して採り出そうとした

り,新規な光メモリー物質を開発しようとする等の目的

がある。2000年以前に望月等 1))は,赤橙色発光体として

望月章介*,†,藤代 史†,飯野晃弘†,芝田浩平†,浅地哲夫‡,†,

鈴鹿 敢§,橋本拓也♯,†,中里勝芳♯,†,中村正人¶

When Eu2O3 is irradiated with a 325nm laser light in vacuum, the photoluminescence (PL) spectrum changes from a red sharp- line structure to a white broad band, which can be clearly seen with the naked eye. After removing the ultravi-olet (UV) laser light, the white PL state was stored for several years at room temperature under room light, regardless of any changes of atmosphere. By irradiatting with the same UV laser light at room temperature under O2 gas atmosphere, the original red PL state re- appears. Similar reversible phenomena have been observed for different kinds of oxides and they may well yield materials for white- light- emitting devices and erasable optical storage. Expecting the improvement in the speed of such spectral change due to system- size reduction, we have also studied the reversible UV- laser- light-induced spectral change in several kinds of oxide- nanoparticle and- bulk specimens. In the present paper, we report upon the experimental results of Eu2O3, Sm2O3, Y2O3, γAl2O3, SrTiO3, ZnO, anatase TiO2, SiO2 glass and γAl2O3-Eu2O3 composite. The results can be explained by the theory on exciton instability.

Keywords : photo- induced effects, photomemory, photo- induced valence change, photo- induced defect

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究Ⅰ Ⅰ

Room-Temperature Erasable Photomemory Phenomena of Metal Oxides I

Shosuke MOCHIZUKI*,†, Fumito FUJISHIRO†, Akihiro IINO†, Kohei SHIBATA†, Tetsuo ASAJI‡,†, Isamu SUZUKA§, Takuya HASHIMOTO♯,†, Katsuyoshi NAKAZATO♯,† and Masato NAKAMURA¶

(Received September 30, 2006)

* Department of Physics, College of Humanities and Sciences, NihonDepartment of Physics, College of Humanities and Sciences, Nihon University: 3 -25 -40 Sakurajosui, Setagaya -ku, Tokyo, 156 -8550, Japan

* 日本大学文理学部物理学科 :日本大学文理学部物理学科 :: 〒156〒156156-8550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水33-25-40† 日本大学大学院総合基礎科学研究科相関理化学専攻:日本大学大学院総合基礎科学研究科相関理化学専攻: 〒156〒156156-8550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水33-25-40‡ 日本大学文理学部化学科:日本大学文理学部化学科: 〒156〒156156-8550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水33-25-40§ 日本大学工学部物質化学工学科:日本大学工学部物質化学工学科: 〒963〒963963-8642 福島県郡山市田村町徳定字中河原1 福島県郡山市田村町徳定字中河原11♯ 日本大学文理学部物理生命システム科学科:日本大学文理学部物理生命システム科学科: 〒156〒156156-8550 東京都世田谷区桜上水3 東京都世田谷区桜上水33-25-40¶ 日本大学理工学部一般教育:日本大学理工学部一般教育: 〒274〒274274-8501 千葉県船橋市習志野台77-24-1

日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要

No.42 (2007) pp.205-220

1

Page 2: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

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紫外レーザー光照射で元の赤橙色発光状態に戻せること

も確かめた。これは書き込まれた光情報の消去を意味す

る。この紫外レーザー光誘起現象は,消去可能な光情報

メモリー材料の開発や白色発光デバイスに応用できる可

能性を秘めている。その後,我々は文部科学省科学研究

費補助金,日本大学学術助成金総合研究,日本大学文理

学部情報科学研究所,日本大学文理学部自然科学研究所

ほかの研究費補助を受けて,種々の酸化物について,紫

外レーザー光誘起フォトメモリー現象とそのダイナミク

スを発見してきた。最近では,現象の変化速度すなわち

光情報の書き込み速度の向上を意図して,系のサイズが

小さな酸化物のナノメートルサイズの粒子を試料として

同様な研究を進めている 2))。

この論文Ⅰでは,既に論文として公表した実験結Ⅰでは,既に論文として公表した実験結では,既に論文として公表した実験結

果 3)-16))-16)16))や未発表の実験結果の概要を併せて示し,紫外

レーザー光誘起光メモリー現象を総括するともに,これ

らの実験結果を励起子理論の立場より定性的に解析す

る。論文Ⅱでは光誘起メモリー現象について,そのダイⅡでは光誘起メモリー現象について,そのダイでは光誘起メモリー現象について,そのダイ

ナミクスを含めた定量的解析を行う予定である。

2 実験方法 実験方法

2. 1 試 料. 1 試 料1 試 料 試 料

用いた試料の原料と作製法は以下のとおりである。

(1)Eu1)Eu)EuEu2O3

原料としてStrem Chemicals社製の純度99.98%のStrem Chemicals社製の純度99.98%の Chemicals社製の純度99.98%のChemicals社製の純度99.98%の社製の純度99.98%の99.98%の%の

Eu2O3粉末を用いた。この粉末を0.2 GPaの圧力で 1時0.2 GPaの圧力で 1時の圧力で 1時1時時

間かけて圧縮成型し,空気中で1273Kにて24時間加熱1273Kにて24時間加熱にて24時間加熱

してセラミクス試料を得た。このセラミクスをターゲッ

トとして355nmのパルスレーザー光で,真空中や低圧355nmのパルスレーザー光で,真空中や低圧のパルスレーザー光で,真空中や低圧

酸素ガス中でのレーザーアブレーション法により石英ガ

ラス基板上にナノ粒子を積層させて平滑膜やナノ粒子膜

を得た。平滑膜は高周波スパッタリング法でも作製し

た。 そのほかに,高周波スパッタリング法で膜試料や そのほかに,高周波スパッタリング法で膜試料やそのほかに,高周波スパッタリング法で膜試料や

焼結法でセラミクス試料を得ている。

(2)Sm2)Sm)SmSm 2O3

原料として和光純薬製の純度99.9%のSm99.9%のSm%のSmSm2O3粉末を

用いた。この粉末を0.0.2 GPaの圧力で 1時間かけて圧縮の圧力で 1時間かけて圧縮1時間かけて圧縮時間かけて圧縮

成型し,空気中で1273Kにて24時間加熱してセラミク1273Kにて24時間加熱してセラミクにて24時間加熱してセラミク

ス試料を得た。そのほかに,高周波スパッタリング法で

膜試料や焼結法でセラミクス試料を得ている。

(3)Y3)Y)YY2O3

原料として和光純薬製の純度99.99%のY99.99%のY%のYY2O3粉末を用

いた。この粉末を0.0.2 GPaの圧力で 1時間圧縮成型し,の圧力で 1時間圧縮成型し,1時間圧縮成型し,時間圧縮成型し,

空気中で1673Kにて100時間加熱してセラミクスを得1673Kにて100時間加熱してセラミクスを得にて100時間加熱してセラミクスを得

た。このセラミクスを口径10mの大型太陽炉で空気中10mの大型太陽炉で空気中mの大型太陽炉で空気中

にて溶融させた後,自然冷却して無色透明 YY2O3を得た。

また,ナノクリスタル試料はAldrich社製の粒径が2525-

30nmのYのYY2O3ナノパウダーを0.4 GPaの圧力で10分間圧0.4 GPaの圧力で10分間圧の圧力で10分間圧10分間圧分間圧

縮成型して得られた。また,この圧縮成型したペレット

を1273Kで48時間,空気中で加熱してセラミクス試料1273Kで48時間,空気中で加熱してセラミクス試料で48時間,空気中で加熱してセラミクス試料48時間,空気中で加熱してセラミクス試料時間,空気中で加熱してセラミクス試料

を得た。

(4)SrT iO4)SrT iO)SrT iOSrT iO3

単結晶試料として信光社製の純度99.99%で(100)面99.99%で(100)面%で(100)面100)面)面

カットの両面研磨SrTiOSrTiO3単結晶を用いた。また,ナノ

粒子試料はAldrich社製の粒径が2525-30nmのSrTiOのSrTiOSrTiO3ナ

ノパウダーを0.4 GPaの圧力で10分間圧縮成型して得ら0.4 GPaの圧力で10分間圧縮成型して得らの圧力で10分間圧縮成型して得ら10分間圧縮成型して得ら分間圧縮成型して得ら

れた。

(5)アナターゼ TiO5)アナターゼ TiO)アナターゼ TiOTiO2

単結晶試料は和光純薬製の純度99.99%のTiO99.99%のTiO%のTiOTiO2粉末と

和光純薬製のGRグレードのNHNH4Cl粉末を重量比10:1粉末を重量比10:1

で石英ガラス中に真空封入し,ソースゾーンを1073 K,1073 K,,

成長ゾーンを973Kで 2週間程度かけて成長させて得ら973Kで 2週間程度かけて成長させて得らで 2週間程度かけて成長させて得ら2週間程度かけて成長させて得ら週間程度かけて成長させて得ら

れた。

セラミクス試料は和光純薬製の純度99.9%,平均粒径99.9%,平均粒径%,平均粒径

50nmのアモルファスTiOのアモルファスTiOTiO2ナノ粒子粉末を673Kで24時673Kで24時で24時

間空気中にて加熱した後に,0.0.2 GPaの圧力で30分間圧の圧力で30分間圧30分間圧分間圧

縮成型して得られた。

(6)ZnO6)ZnO)ZnOZnO

和光純薬製の平均粒径20nmのZnOナノ粒子粉末を20nmのZnOナノ粒子粉末をのZnOナノ粒子粉末をZnOナノ粒子粉末をナノ粒子粉末を

0.2GPaの圧力で30分間かけて圧縮成型し,空気中での圧力で30分間かけて圧縮成型し,空気中で30分間かけて圧縮成型し,空気中で分間かけて圧縮成型し,空気中で

873 Kにて12時間加熱してセラミクス試料を得た。にて12時間加熱してセラミクス試料を得た。

(7)SiO7)SiO)SiOSiO2ガラス

200重量ppmのOHを含む東芝セラミクス製のTOHを含む東芝セラミクス製のTを含む東芝セラミクス製のTT-1030

と,General Electric社製の 5重量ppm以下のOHを含む

GE-124とGEとGEGE-214を用いた。アルミニウム不純物はTを用いた。アルミニウム不純物はTT-

1030が 8重量ppmで,Gが 8重量ppmで,GGE-124とGとGGE-214はともに14重はともに14重14重重

量ppmである。

(8)8))γAl2O3-Eu2O3複合体

原料としてMeller社製の純度99.992%,平均粒径がMeller社製の純度99.992%,平均粒径が社製の純度99.992%,平均粒径が99.992%,平均粒径が%,平均粒径が

60nmのwetのwetwetγAl2O3ナノ粒子粉末を脱水・乾燥処理後,

873Kで12時間加熱後,この粉末をEuで12時間加熱後,この粉末をEu12時間加熱後,この粉末をEu時間加熱後,この粉末をEuEu2O3粉末と等モル

で混合し,0.2GPaの圧力で2時間圧縮成型し,空気中で0.2GPaの圧力で2時間圧縮成型し,空気中での圧力で2時間圧縮成型し,空気中で

873Kにて69時間加熱してセラミクス試料を得た。にて69時間加熱してセラミクス試料を得た。

なお,いずれの試料もX線回折法によりそれぞれの原

子的構造(結晶構造)に対応するX線回折パターンを示

すことを確かめた。

2. 2 実験方法 実験方法

試料は合成石英ガラス光学窓付きステンレス容器内に

置かれ,真空排気は真空ポンプよりのオイル蒸気の影響

2

Page 3: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

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金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

を避けるべくオイルフリーのターボ分子ポンプを主ポン

プとした真空排気装置(到達真空度=10-33~1010-44 Pa))

により行われた。酸素ガス雰囲気は市販高純度酸素ガス

を用いてつくられた。

He-Cdレーザー装置(金門電気製)より連続発振されレーザー装置(金門電気製)より連続発振され

た325 nm(325 nm((= 3.8 eV)のレーザー光(強度)のレーザー光(強度=20~60 mW)~60 mW)60 mW))

を適当に減光し,合成石英ガラスレンズ(焦点距離=200

mm程度)により試料表面に集光した。試料よりの発光程度)により試料表面に集光した。試料よりの発光

(ルミネッセンス)はレーザー光カットフィルターを付

けた集光光学系で集められた後に合成石英製バンドルタ

イプ光ファイバーを通してイメージインテンシファイ

アー付CCD光検知器またはイメージインテンシファイCCD光検知器またはイメージインテンシファイ光検知器またはイメージインテンシファイ

アー付ダイオードアレイ光検知器を取り付けられたツェ

ルニ・ターナー型回折格子分光器(焦点距離=150またまた

は340 mm)に送られて,レーザー光の照射時間の関数340 mm)に送られて,レーザー光の照射時間の関数)に送られて,レーザー光の照射時間の関数

として分光測定されてパーソナルコンピューターに記録

された。生のルミネッセンススペクトルは測定に用いた

分光測定装置の分光特性により補正された。なお,実験

は主に室温で行われた。なお,以下に示すフォトルミ

ネッセンス(PL)スペクトルの強度は試料ごとに露光条

件が必ずしも同じでないので,異なる物質試料同士の比

較には注意されたい。

3 実験結果 実験結果

3. 1 Eu EuEu2O3のナノメートルサイズ粒子

Figure 1(a)にEu(a)にEua)にEu)にEuEu2O3ナノメートルサイズが堆積して

できたEuEu2O3ナノ粒子膜の酸素中での3.8 eVレーザー光3.8 eVレーザー光レーザー光

励起でのPLを示す。EuEu2O3は赤色発光体としてよく知

られた物質であり,このナノ粒子試料もレーザービーム

が当たった箇所は赤く輝いている。紫外光レーザーを照

射したまま,このナノ粒子試料が入っている試料室を真

空排気すると,Figure 1(b)に示した如く,ルミネッセFigure 1(b)に示した如く,ルミネッセ(b)に示した如く,ルミネッセb)に示した如く,ルミネッセ)に示した如く,ルミネッセ

ンス色は照射時間の経過とともに徐々に白色に変化す

る。

この紫外光誘起ルミネッセンス色の変化の間のPLスPLスス

ペクトルの移り変わりをFigure 2Figure 2 (a)に示す。図中の各

Figure 1 325nm- laser- light- induced luminescence color change of Eu2O3 nanocrystals

Figure 2  325nm- laser- light- induced PL spectral change of Eu2O3 nanocrystals

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

5D0-7FJ

tir = 0 min

14

30

in O2 gas

(b)0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

5D0-7FJ

30102

tir = 0 min

in vacuum

(a)

in O2 gas

(a)

in vacuum

(b)

3

Page 4: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

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スペクトルの傍にある数字は分単位で表された紫外レー

ザー光照射時間 t i rである。

この図で,2.2 eV 以下のシャープなスペクトルは2.2 eV 以下のシャープなスペクトルは以下のシャープなスペクトルは

Eu3++イオンの ff-f 遷移遷移 5D07F J (JJ = 0, 1, 2,…)によるも)によるも

のである。照射時間の経過とともに,測定波長領域全域

にわたる白色ルミネッセンス成分の強度が大きくなって

いく状況が判る。また,白色化の変化速度は照射時間の

経過とともに減少し,さらに照射を続けると飽和する傾

向にある。この紫外レーザー光で白色ルミネッセンスで

きる能力は,酸素ガスに曝してもレーザー光の照射がな

ければ,これまでの数年間安定に保持されている。これ

は光情報のメモリーに対応する。

つぎに紫外レーザー光を当てたままで試料室に 1気

圧の酸素ガスを導入すると,Figure 2(b)に示した如く,Figure 2(b)に示した如く,(b)に示した如く,b)に示した如く,)に示した如く,

白色ルミネッセンス状態が徐々に赤色ルミネッセンス状

態に変化して元の状態に戻って行く。これは書き込まれ

た光情報の消去に対応する。この赤色化の速度は,照射

直後は大きいが,さらに照射を続けるとその速度は徐々

に小さくなって行くことが判る。

なお,EuEu2O3のルミネッセンス色はユーロピウムイオ

ンの価数によることが判っているので,ここで見られた

ルミネッセンス色の変化は価数変化(Eu3+↔ Eu2+)が起

こっていることを示している。ここに示したEuEu2O3ナノ

粒子の紫外レーザー光誘起現象は,望月等が既にセラミ

クス試料,高周波スパッタリング法やレーザーアブレー

ション法で作製された平滑膜試料の結果と同じである

が,現象の変化速度はナノ粒子化で増大する傾向にあ

る。ただし,このナノ粒子試料を高温でアニールすると

粒子の凝集・融合がおこり,現象の変化のスピードの減

少が起こりナノ粒子としての特性は失われることが判っ

た。

3. 2 Sm SmSm2O3 のセラミクスおよびナノメートルサイズ粒子

Figure 3(a)にSm(a)にSma)にSm)にSmSm 2O3セラミクス試料の酸素中での

3.8 eVレーザー光励起でのフォトルミネッセンス(PL)レーザー光励起でのフォトルミネッセンス(PL)PL))

を示す。この試料は青色のルミネッセンスを呈してい

る。紫外レーザー光を照射したまま,このSmSm2O3セラ

ミクスが入っている試料室を真空排気すると,Figure 3Figure 3

(b)に示した如く,ルミネッセンス色は徐々に白色になb)に示した如く,ルミネッセンス色は徐々に白色にな)に示した如く,ルミネッセンス色は徐々に白色にな

る。SmSm 2O3ナノ粒子試料でも同様なルミネッセンス色の

変化が見られるが,その白色化の程度はセラミクスに比

べて格段に高く,白色発光は余りにも明るすぎて直視不

可能である。

真空中でのこの紫外光誘起ルミネッセンス色の変化の

間のPLスペクトルの移り変わりをFigure 4(a)に示す。PLスペクトルの移り変わりをFigure 4(a)に示す。スペクトルの移り変わりをFigure 4(a)に示す。Figure 4(a)に示す。(a)に示す。a)に示す。)に示す。

この図にあるように,紫外光照射時間の経過とともに

2.35 eVを中心とする発光成分が増大する。さらに照射を中心とする発光成分が増大する。さらに照射

を続けると,2.25 eVと2.10 eVを中心とするルミネッセ2.25 eVと2.10 eVを中心とするルミネッセと2.10 eVを中心とするルミネッセ2.10 eVを中心とするルミネッセを中心とするルミネッセ

ンス成分が成長して行き,広帯域化して白色ルミネッセ

ンスとなる。この図より1.8 eV付近にもルミネッセンス1.8 eV付近にもルミネッセンス付近にもルミネッセンス

成分があることが判る。この白色ルミネッセンスを与え

る成分が数個以上あることは,酸素欠損に由来する多種

類の発光中心が生成されたことを意味する。EuEu 2O3と同

様にこの紫外レーザー光で白色ルミネッセンスできる能

力は,酸素ガスに曝してもレーザー光の照射がなければ

長期間保持されており,光情報のメモリー能力を示す。

紫外レーザー光を当てたまま,この試料室に 1気圧の1気圧の気圧の

酸素ガスを導入すると,Figure 4(b)に示す如く,酸素導Figure 4(b)に示す如く,酸素導(b)に示す如く,酸素導b)に示す如く,酸素導)に示す如く,酸素導

入直後は一旦 2.1 eVルミネッセンス成分と2.2 eVルミ2.1 eVルミネッセンス成分と2.2 eVルミルミネッセンス成分と2.2 eVルミ2.2 eVルミルミ

ネッセンス成分の寄与が増大しスペクトル強度は増大す

る。さらに照射を続けるとスペクトル強度は急激に減少

し,2.35 eV成分が発光スペクトルを支配するようになる。2.35 eV成分が発光スペクトルを支配するようになる。成分が発光スペクトルを支配するようになる。

Figure 3 325nm- laser- light- induced luminescence color change of Sm2O3 ceramics

in O2 gas

(a)

in vacuum

(b)

4

Page 5: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

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金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

同様な実験をSmSm2O3ナノ粒子堆積膜についても行っ

た。Figure 5(a)に真空中に置かれた試料の紫外レーザーFigure 5(a)に真空中に置かれた試料の紫外レーザー(a)に真空中に置かれた試料の紫外レーザーa)に真空中に置かれた試料の紫外レーザー)に真空中に置かれた試料の紫外レーザー

光誘起PLスペクトルの変化を,Figure 5(b)に試料室にFigure 5(b)に試料室に(b)に試料室にb)に試料室に)に試料室に

1気圧の酸素ガスを導入した場合の紫外レーザー光誘起気圧の酸素ガスを導入した場合の紫外レーザー光誘起

PLスペクトルの変化をそれぞれ示してある。

セラミクス試料の結果(Figure 4)と比較して判るようFigure 4)と比較して判るよう)と比較して判るよう

に,白色ルミネッセンスの強度は 3倍以上大きく,ス3倍以上大きく,ス倍以上大きく,ス

ペクトル変化の速度も大きく,光照射開始後の 1時間1時間時間

程度でほぼルミネッセンス強度は飽和する。

3. 3  Y2O 3のセラミクスおよびナノメートルサイズ粒子

耐火物,超イオン導電体および燃料電池の材料物質,

半導体デバイスの絶縁膜の候補物質等として研究されて

いるYY2O3についても大型太陽炉により空気中で溶融・

自然冷却して得られた透明結晶,ナノ粒子,セラミクス

等の試料について同様な実験を行った。

ナノ粒子試料(ナノ粒子ペレット)の真空中および 11

気圧の酸素ガス中での紫外レーザー光照射実験の結果を

Figure 6 に示す。に示す。

このYY2O3ナノ粒子ペレットを1273Kで48時間,空気1273Kで48時間,空気で48時間,空気48時間,空気時間,空気

中にて焼結して得られたYY2O3セラミクスの真空中およ

び 1気圧の酸素ガス中での紫外レーザー光照射実験の1気圧の酸素ガス中での紫外レーザー光照射実験の気圧の酸素ガス中での紫外レーザー光照射実験の

結果をFigure 7に示す。Figure 7 に示す。に示す。

これらの結果より,YY2O3のナノ粒子試料はセラミクス

試料に比べて10倍以上のルミネッセンス強度を与え,10倍以上のルミネッセンス強度を与え,倍以上のルミネッセンス強度を与え,

紫外光誘起スペクトル変化の速度も大きくなっている。

また,発光成分は数種類あり,セラミクス試料では高エ

ネルギー側にルミネッセンスが移動している。いずれの

Y2O3 試料でも長期間の光情報メモリー性と消去性を示

すことが確かめられた。なお,両試料に見られる2.1 eV2.1 eV

Figure 4 325nm- laser- light- induced spectral change of Sm2O3 ceramics

Figure 5 325nm- laser- light- induced spectral change of Sm2O3 nanocrystals

200×103

150

100

50

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

(a)

10

tir = 0 min

60

20

90in vacuum

40

200×103

150

100

50

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

tir = 0 min

2

46

10

30

1(b)

60×103

50

40

30

20

10

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

2

4

10

30

6090

tir = 0 min(b)1

60×103

50

40

30

20

10

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

tir = 0 min

4

10

20

3060

90 (a)

5

Page 6: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

─ ─210( )

から1.6 eVの間に見られるルミネッセンス成分は微量不1.6 eVの間に見られるルミネッセンス成分は微量不の間に見られるルミネッセンス成分は微量不

純物のEuEu3+イオンの光学遷移( 5D07F J (JJ = 0, 1, 2,

…))によるものであり,特にFigure 7 では雰囲気交換))によるものであり,特にFigure 7 では雰囲気交換Figure 7 では雰囲気交換では雰囲気交換

に伴うユーロピウムイオンの光誘起価数変化(EuEu3+↔

Eu2++)が 5D07F 2 のルミネッセンス強度の変化とし明

瞭に観測されている。

3. 4 SrTiO SrTiOSrTiO3の単結晶とナノメートルサイズ粒子

量子常誘電体として研究が盛んなSrTiOSrTiO3単結晶の雰

囲気交換に伴う紫外光誘起PLスペクトル変化現象の実

験結果が,真空中での測定結果についてはFigure 8(a)Figure 8(a)(a)a))

に,1気圧の酸素ガス中での測定結果についてはFigure1気圧の酸素ガス中での測定結果についてはFigure気圧の酸素ガス中での測定結果についてはFigureFigure

8(b)に示されている。(b)に示されている。b)に示されている。)に示されている。

これらを見ると2.5 eV付近のスペクトル変化が雰囲気2.5 eV付近のスペクトル変化が雰囲気付近のスペクトル変化が雰囲気

交換で大きく変化していることが判る。真空中での測定

で見られたこの現象は10 K程度の極低温でも見られて10 K程度の極低温でも見られて程度の極低温でも見られて

おり 10)),現象がフォノンに助けられた現象でなく,電子

励起が主に関与した欠陥生成・酸素放出現象であること

を示している。また,SrTiOSrTiO3の2.5 eVルミネッセンスが2.5 eVルミネッセンスがルミネッセンスが

量子常誘電性に密接に関係した機構で起こっているとす

る最近の研究に疑問を投げかける結果でもある 10, 11))。

同様な実験をSrTiOSrTiO3ナノ粒子についても行った。雰

囲気交換に伴う紫外光誘起PLスペクトル変化現象の実

験結果を,真空中についてはFigure 9(a)に,1気圧のFigure 9(a)に,1気圧の(a)に,1気圧のa)に,1気圧の)に,1気圧の1気圧の気圧の

酸素ガス中についてはFigure 9(b)に示す。光照射の初Figure 9(b)に示す。光照射の初(b)に示す。光照射の初b)に示す。光照射の初)に示す。光照射の初

期の変化だけ見ると,ナノ粒子試料のスペクトル変化速

Figure 6  325nm- laser- light- induced spectral change of Y2O3 nanocrystals

450×103

400

350

300

250

200

150

100

50

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4

Photon energy (eV)

in O2 gastir= 0 min

2

5

10

20

3080

450×103

400

350

300

250

200

150

100

50

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4Photon energy (eV)

in vacuumtir= 60 min

4130

20

10

5

2

0

(a) (b)

3000

2500

2000

1500

1000

500

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4Photon energy (eV)

in vacuum

tir = 0 min

5

10

203040

60

(a)3000

2500

2000

1500

1000

500

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4

Photon energy (eV)

in O2 gastir = 0 min

510

30

(b)

1

60

Figure 7 325nm- laser- light- induced spectral change of Y2O3 ceramics

6

Page 7: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

─ ─211 ( )

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

度は単結晶試料のそれに比べて極めて大きくなってい

る。また,系のサイズの小ささが現象の変化速度を大き

くしており,これは光誘起現象すなわち欠陥生成・酸素

放出(または酸素吸着)に表面が大きく寄与していると

見れるが,厳密には,この変化速度の速さが系のサイズ

減少による量子サイズ効果か,系が小さくなって系全体

がコヒーレントに励起された為の効果か,または表面効

果によるのかは今のところ不明である。また,Figure 9Figure 9

(b)の 0から0.5分までのスペクトル変化は,光によっb)の 0から0.5分までのスペクトル変化は,光によっ)の 0から0.5分までのスペクトル変化は,光によっ0から0.5分までのスペクトル変化は,光によっから0.5分までのスペクトル変化は,光によっ0.5分までのスペクトル変化は,光によっ分までのスペクトル変化は,光によっ

て生成された欠陥への酸素吸着サイトが,初期段階では

真空中での紫外光照射で起こる欠陥サイトと異なってい

ることを示唆している。なお,いずれのSrTiOSrTiO3 試料で

も消去可能な光情報メモリー性を示す。

3. 5  アナターゼ TiOTiO2の単結晶,ナノメートルサイズ粒子

光触媒物質として研究が盛んなアナターゼTiOTiO2の単

結晶試料の雰囲気交換に伴う紫外光誘起PLスペクトル

変化現象の測定結果を,真空中についてはFigure 10(a)Figure 10(a)(a)a))

に,1気圧の酸素ガス中についてはFigure 10(b)に示す。1気圧の酸素ガス中についてはFigure 10(b)に示す。気圧の酸素ガス中についてはFigure 10(b)に示す。Figure 10(b)に示す。(b)に示す。b)に示す。)に示す。

他の物質に比べて,この単結晶のスペクトル強度の変化

の割合は意外に小さい。

この単結晶試料のPLスペクトルは2.6 eV,2.4 eV,2.22.6 eV,2.4 eV,2.2,2.4 eV,2.22.4 eV,2.2,2.22.2

eVあたりを中心とした数種類のルミネッセンス成分よあたりを中心とした数種類のルミネッセンス成分よ

りなっており,これらが雰囲気交換に対してほぼ同等に

変化していることが詳細なスペクトル解析により判る。

アナターゼ TiOTiO2 のこの白色ルミネッセンスは真性自己

束縛励起子によるとして多くの研究者が報告している

Figure 8 325nm- laser- light- induced spectral change of SrTiO3 single crystal

Figure 9 325nm- laser- light- induced spectral change of SrTiO3 nanocrystals

1600

1400

1200

1000

800

600

400

200

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

1

10

30

60

t ir = 0 min

(b)1600

1400

1200

1000

800

600

400

200

0

PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

tir = 0 min

10

30

60

(a)

60×103

50

40

30

20

10

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4Photon energy (eV)

in vacuumtir= 260 min

120605

0

80×103

60

40

20

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4

Photon energy (eV)

in O2 gastir= 0 min

0.5

1

25

60

(a) (b)

7

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望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

─ ─212( )

が,ここに示した実験結果は酸素欠陥が関与した外来型

の自己束縛励起子が白色ルミネッセンスの主因であるこ

とを示している。

アナターゼ TiOTiO2 ナノ粒子試料の雰囲気交換に伴う紫

外光誘起PLスペクトル変化現象の実験結果が,真空中

の結果はFigure 11(a)に,1気圧の酸素ガス中の結果はFigure 11(a)に,1気圧の酸素ガス中の結果は(a)に,1気圧の酸素ガス中の結果はa)に,1気圧の酸素ガス中の結果は)に,1気圧の酸素ガス中の結果は1気圧の酸素ガス中の結果は気圧の酸素ガス中の結果は

Figure 11(b)に示されている。 2.2 eVに強度ピークを(b)に示されている。 2.2 eVに強度ピークをb)に示されている。 2.2 eVに強度ピークを)に示されている。 2.2 eVに強度ピークを 2.2 eVに強度ピークをに強度ピークを

持っていた幅広いルミネッセンスが,真空中でのレー

ザー光照射時間の経過とともに,単結晶のルミネッセン

ス強度ピークエネルギー2.4 eVにシフトして行くように2.4 eVにシフトして行くようににシフトして行くように

見える。時間分解PLスペクトルやPLスペクトルの温

度依存性の測定 9))により,この幅広い発光帯は少なくと

も二つ以上のルミネッセンス成分より成り,高エネル

ギー側の成分が成長した為である。また,1気圧の酸素

ガス中ではレーザー光照射時間の経過とともに低エネル

ギー側にシフトして元に戻る。

単結晶試料に比べて,このナノ粒子試料のスペクトル

強度の変化の割合と現象の変化の速度は非常に大きく,

光照射後の 1分間以内でほぼ完了する。この変化速度1分間以内でほぼ完了する。この変化速度分間以内でほぼ完了する。この変化速度

の速さが系のサイズ減少による量子サイズ効果か,系が

小さくなって系全体がコヒーレントに励起された為の効

果か,または表面効果によるのかは今のところ不明であ

る。また,紫外レーザー光照射がなければ,この白色ル

ミネッセンス能力はいかなる雰囲気交換に対しても長期

間メモリーされている。

Figure 10 325nm- laser- light- induced spectral change of anatase TiO2 single crystal

Figure 11 325nm- laser- light- induced spectral change of anatase TiO2 nanocrystals

5000

4000

3000

2000

1000

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in oxygen

20

110

tir = 0min

30

(b)5000

4000

3000

2000

1000

0

PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

101

3020

tir = 0min

(a)

1000

800

600

400

200

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

30

tir = 0 min

1

(b)1000

800

600

400

200

0

PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

t ir = 0 min

1

30 (a)

8

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─ ─213 ( )

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

3. 6 ZnOのセラミクス ZnOのセラミクスZnOのセラミクスのセラミクス

青色発光する半導体候補物質や光触媒物質として研究

が盛んなZnOのセラミクス試料の雰囲気交換に伴う紫ZnOのセラミクス試料の雰囲気交換に伴う紫のセラミクス試料の雰囲気交換に伴う紫

外光誘起PLスペクトル変化現象の実験結果が,真空中

についてはFigure 12(a)に,1気圧の酸素ガス中についFigure 12(a)に,1気圧の酸素ガス中につい(a)に,1気圧の酸素ガス中についa)に,1気圧の酸素ガス中につい)に,1気圧の酸素ガス中につい1気圧の酸素ガス中につい気圧の酸素ガス中につい

てはFigure 12(b)に示されている。単結晶試料で同じエFigure 12(b)に示されている。単結晶試料で同じエ(b)に示されている。単結晶試料で同じエb)に示されている。単結晶試料で同じエ)に示されている。単結晶試料で同じエ

ネルギー領域に見られる白色ルミネッセンスは酸素空格

子や中性ドナーに捕らえられた束縛励起子による発光に

よるものとして知られている 6))。また,紫外レーザー光

照射がなければ,この白色ルミネッセンス能力はいかな

る雰囲気交換に対しても長期間メモリーされている。

3. 7 SiO SiOSiO2ガラス

SiO2ガラス中に含まれるOH基は種々の現象の種になOH基は種々の現象の種にな基は種々の現象の種にな

ると想像されるので,OH含有量が異なる 3種の石英ガOH含有量が異なる 3種の石英ガ含有量が異なる 3種の石英ガ3種の石英ガ種の石英ガ

ラスを対象に紫外レーザー光誘起現象の実験を行った

が,いずれの石英ガラスでも消去可能なフォトメモリー

現象が観測された 8))。一例として東芝セラミクッス製透

明石英ガラスTT-1030の紫外光誘起ルミネッセンス色のの紫外光誘起ルミネッセンス色の

変化の実験結果をFigure 13に示す。Figure 13 に示す。に示す。

Figure 13(a)に示すように,石英ガラスは程度の差は(a)に示すように,石英ガラスは程度の差はa)に示すように,石英ガラスは程度の差は)に示すように,石英ガラスは程度の差は

あれ,紫外光に対して微弱な淡青色のルミネッセンスを

呈する。Figure 13(b)に示すように,紫外光を当てたまFigure 13(b)に示すように,紫外光を当てたま(b)に示すように,紫外光を当てたまb)に示すように,紫外光を当てたま)に示すように,紫外光を当てたま

ま真空にすると時間とともにルミネッセンス色は白色化

する。ルミネッセンスの輝度は極めて小さいので,図に

示された写真は長時間露光で得られた。また,フォトメ

モリー性も確認された。このルミネッセン色の変化の間

のPLスペクトルの時間変化を真空中についてはFigureFigure

14(a)に,1気圧の酸素ガス中で元に戻る過程をFig(a)に,1気圧の酸素ガス中で元に戻る過程をFiga)に,1気圧の酸素ガス中で元に戻る過程をFig)に,1気圧の酸素ガス中で元に戻る過程をFigFigure

14(b)に示す。(b)に示す。b)に示す。)に示す。

ここに示されたPLスペクトルは,一見して発光強度

ピークが照射時間とともにシフトしているように見える

が,よく見ると白色ルミネッセンスは3.15 eVから2.13.15 eVから2.1から2.12.1

eV間にある多種類のルミネッセンス成分よりなること間にある多種類のルミネッセンス成分よりなること

Figure 12 325nm- laser- light- induced spectral change of ZnO ceramics

Figure 13 325nm- laser- light- induced luminescence color change of SiO2 glass

7000

6000

5000

4000

3000

2000

1000

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

tir = 0 min

10

20

30

(a)7000

6000

5000

4000

3000

2000

1000

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

0.02

30

tir = 0 min

10

(b)

in O2 gas

(a)

in vacuum

(b)

9

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望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

─ ─214( )

が判る。真空中で見られたPLスペクトルはγ線照射さ

れた石英ガラスや250 nmの短紫外レーザー光を照射さ250 nmの短紫外レーザー光を照射さの短紫外レーザー光を照射さ

れた石英ガラスで見られるスペクトルと酷似している。

GE社製石英ガラス(GEGE-214)も同様な消去可能なフォ)も同様な消去可能なフォ

トメモリー現象を示すが,スペクトル変化量は小さい 8))。

3. 8 白色化現象を伴わない消去可能なフォトメモリー 白色化現象を伴わない消去可能なフォトメモリー

現象:γAl2O3-Eu2O3複合体セラミクス

Figure 15に白色化現象を伴わない物質として設計・に白色化現象を伴わない物質として設計・

作製したγAl2O3-Eu2O3 複合体の実験結果を示す。

Figure 15(a)に示すように,真空中の紫外レーザー光(a)に示すように,真空中の紫外レーザー光a)に示すように,真空中の紫外レーザー光)に示すように,真空中の紫外レーザー光

照射では白色ルミネッセンス成分の成長は殆ど見られ

ず,EuEu3++イオンの ff-f 遷移遷移 5D07F J (JJ = 0, 1, 2,…)によ)によ

るルミネッセンス成分のみの強度が照射時間の経過とと

もに減少していく。また,Figure 15(b)に示すように,1Figure 15(b)に示すように,1(b)に示すように,1b)に示すように,1)に示すように,11

気圧の酸素ガス中の紫外レーザー光照射ではEuEu3++イオ

ンの ff-f 遷移遷移 (JJ = 0, 1, 2,…)によるルミネッセンス成分)によるルミネッセンス成分

のみの強度が照射時間の経過とともに増加して元に戻っ

ている。すなわち,5D07F 2 遷移の赤色ルミネッセンス

の強度変化のみで特徴付けられるフォトメモリー現象に

なっている。この複合体の設計では,γAl2O3ナノ粒子

とEuEu2O3 粒子との界面にできる非輻射性トラップへの励

Figure 14  325nm- laser- light- induced spectral change of SiO2 glass

Figure 15 325nm- laser- light- induced spectral change of γAl2O3-Eu2O3 composite

25×103

20

15

10

5

03.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8

Photon energy (eV)

in O2 gas

1

2

46

10

20306090

t ir = 0 min(b)25×103

20

15

10

5

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8Photon energy (eV)

in vacuum

tir = 0 min2

4

10

30

60

90(a)

4

2

02.1 2.0 1.9 1.8

in O2 gas

tir= 0 min

60

6

4

2

0

in vacuum

5D0-7F0,1

5D0 - 7F2

5D0 - 7F3

5D0 - 7F4

tir= 0 min60

PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts) (a)

(b)

Photon energy (eV)

10

Page 11: 金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の ......induced spectral change in several kinds of oxide-nanoparticle and-bulk specimens. In the present

─ ─215 ( )

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

起エネルギー移動による白色ルミネッセンスの抑制 7))を

期待したが,実験結果は設計どおりになっている。また,

この複合体の雰囲気交換(真空↔酸素ガス)における5D0

7F 2 遷移による赤色ルミネッセンス強度の変化は

Figure 16 に示すように非常に再現性が良く,赤色ルミに示すように非常に再現性が良く,赤色ルミ

ネッセンスの強度変化・メモリー現象を利用したセン

サーデバイスの候補物質となり得る。

4 実験結果の定性的解釈 実験結果の定性的解釈

以上に示した種々の酸化物で紫外レーザー光誘起光ス

ペクトル変化現象のうち,真空中での現象はレーザー光

子場での酸化物表面での酸素の脱離に伴われた酸素欠陥

生成であり,また,酸素ガス中での現象はレーザー光子

場での酸化物表面での酸素分子の解離吸着による酸素欠

陥の消滅であると考えられる。この現象の機構の研究に

おいて重要な点は以下のとおりである。

(1)酸化物がレーザー光を吸収して,どのような励起状1)酸化物がレーザー光を吸収して,どのような励起状) 酸化物がレーザー光を吸収して,どのような励起状

態を経て酸素の脱離,吸着が起こるか?

(2)現象の変化の速度は何によって決まるか?2)現象の変化の速度は何によって決まるか?) 現象の変化の速度は何によって決まるか?

光物性物理学の立場では,上記(1)は励起子の不安1)は励起子の不安)は励起子の不安

定性に関係しており,上記(2)は物質とレーザー輻射2)は物質とレーザー輻射)は物質とレーザー輻射

場が共存する場での励起子のダイナミクスに関係してい

る。この種の光誘起現象は,結晶固体表面の構造を念頭

に入れた電子構造の計算によるシミュレーションが必須

である 15),16),17)),16),17)16),17)),17)17))。しかし,本論文の主目的が新しい光メ

モリー現象の発見の報告であり,また,かかる計算や表

面構造解析の実験も準備中の段階であるので,以下に示

すような定性的解釈を行った。

4. 1 紫外レーザー光子場での酸素脱離 紫外レーザー光子場での酸素脱離

まず真空中での紫外レーザー光照射で起こる酸化物

表面からの酸素の脱離について論じよう。空間的にも

時間的にもコヒーレントなレーザー光を吸収した物質

構成要素は励起状態となる。対象にした酸化物の室温

でのバンドギャップエネルギーと電荷移動吸収端エネ

ルギーを Table 1 に掲げる。に掲げる。

この表により,照射に用いた325 nmレーザー光の光325 nmレーザー光の光レーザー光の光

子のエネルギーは,SrTiOSrTiO3 ,アナターゼTiOTiO2 ,ZnOのZnOのの

エネルギーギャップより充分大きいので,このレーザー

光照射はバンド間励起を誘起する。このバンド間励起に

よりつくられた自由電子と自由正孔は,格子振動の波動

の量子(フォノン)と相互作用する。かかる場合には,

励起子の併進運動に関係する励起子バンドの幅Bと励起Bと励起と励起

子を構成する電子・正孔間のクーロンエネルギーUそしUそしそし

て電子・フォノン相互作用に由来する格子緩和エネル

ギーEE LR 等の相対的な大小関係によって,つぎの三つの

形態のいずれかをとることが豊沢による励起子の理論的

研究成果 18))が教えてくれる。

(1)e + h:電子と正孔がキャリヤーとなって独立に結1)e + h:電子と正孔がキャリヤーとなって独立に結) e + h:電子と正孔がキャリヤーとなって独立に結e + h:電子と正孔がキャリヤーとなって独立に結:電子と正孔がキャリヤーとなって独立に結

晶中を動き回る状態

(2)ex:電子と正孔が水素原子様の対を形成して結晶中2)ex:電子と正孔が水素原子様の対を形成して結晶中) ex:電子と正孔が水素原子様の対を形成して結晶中ex:電子と正孔が水素原子様の対を形成して結晶中:電子と正孔が水素原子様の対を形成して結晶中

Figure 16 Irradiation- time dependence of the 5D07F2 luminescence intensity of γAl2O3 -Eu2O3 composite

6

5

4

3

2

1

0PL

inte

nsity (

arb.

uni

ts)

350300250200150100500

Irradiation time tir(min)

5D0 - 7F2

in vacuum in vacuum in vacuum

in oxygen in oxygen in oxygen

11

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望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

─ ─216( )

を動き回る自由励起子状態

(3)S3)S) SSe + S h:電子と正孔が隣接サイトに局在したオフセ

ンター型自己捕獲励起子状態

上記(3)の自己捕獲励起子状態では,電子・フォノ3)の自己捕獲励起子状態では,電子・フォノ)の自己捕獲励起子状態では,電子・フォノ

ン相互作用と正孔・フォノン相互作用の符合が異なる場

合には,電子と正孔が別々のサイトに捕らえられたオフ

センター型励起子状態になり,ポテンシャルエネルギー

が低下すると予想される。その極端な例として電子・

フォノン相互作用が電子・正孔間のクーロンエネルギー

や自由励起子のバンド幅より大きい場合には自己捕獲正

孔SS hに電子を捕らえたオンセンター型の状態(e + Se + S h )

が形成され,これが結合を切ってオフセンター型の(SSe +

S h )状態に転移し,原子が放出される可能性がある。こ

の場合,結合切断の為のエネルギーはオンセンター型の

自己捕獲励起子(SS h + e)の内部エネルギーの一部が担う)の内部エネルギーの一部が担う

ことになる。しかし,SrTiOSrTiO3 ,アナターゼTiOTiO2 ,ZnOZnO

等の如く半導体ではエネルギーギャップは原子間の結合

エネルギーより小さく 1段階の光励起である 1光子励

起では原子の放出は起こり得ず,不可避的に結晶欠陥を

含んでいる結晶表面の原子のみが放出される可能性があ

る。これらの考察を基礎に,真空中に置かれた酸化物半

導体 SrTiOSrTiO3 ,アナターゼTiOTiO2 ,ZnOの酸素原子の放出ZnOの酸素原子の放出の酸素原子の放出

はつぎのいずれかの反応式で表せるであろう。

結晶表面では

O21

Sh2O 2surfaceson

h2 →→+−

. . . . . . . . . . . . .( 1)

で酸素放出がおこり,電子を捕らえた酸素空格子すなわ

ちVVe が残される。また,SrTiOSrTiO3 ,アナターゼ TiO TiO2では,

この VVeとして孤立点欠陥配置

Ti)e2OTiTiVTi 4V

44e

4 ++++ +++→−− (

. . . . . . . . . . . . .( 2)

と酸素欠陥よりTiTi4++イオンへの電荷移動を考慮した複

合欠陥生成

complex)TiOTi(TiVTi 3V

34e

4 ++++ ++→−−

. . . . . . . . . . . . .( 3)

が考えられる。特に,SrTiOSrTiO3では式(2)のような孤立し

た酸素点欠陥よりも,式(3)の複合欠陥が実現している

ことが理論的にも実験的にも明らかになってい

る 19, 20, 21))。複合欠陥のTiTi3++ は正孔トラップ,OO Vは電子

トラップとして働き,エネルギーギャップ中にそれぞれ

アクセプター準位とドナー準位をつくる。つまり,光に

よるバンド間励起によってつくられた電子とホールが偶

然に同じ複合欠陥に捕らえられて再結合発光することに

なる。これが幅広い白色発光の起源である。定量的解釈

には結晶表面のステップ,コーナーほかの表面構造(ク

ラスター構造)を仮定した光励起状態の形成と緩和過程

の計算が必要である。なお,ZnOの酸素欠陥構造は酸素ZnOの酸素欠陥構造は酸素の酸素欠陥構造は酸素

空格子や格子間Zn等が支配的であると言われている。Zn等が支配的であると言われている。等が支配的であると言われている。

他方,EuEu2O3 , Sm2O3 , Y2O3 ,γAl2O3 ,SiOSiO2ガラス等の

如くエネルギーギャップが照射レーザー光の光子のエネ

ルギーより大きい場合には,更なる注意が必要である。

この議論を始める前に,これらの絶縁体酸化物の光誘起

現象の速度は固体結晶よりもセラミクスやナノ結晶試料

の方が大きい傾向にあるということに注意しよう。これ

は観測した紫外光誘起現象が表面構造や表面電子構造と

密接に関連したものであることを示唆している。すでに

γAl2O3 やMgOの電子エネルギー損失分光実験で,大きMgOの電子エネルギー損失分光実験で,大きの電子エネルギー損失分光実験で,大き

なバンドギャップ中には,光吸収実験では小さすぎて見

Table 1 Band gap energies and charge-transfer onset energies of several oxides

Oxides Band gap energies (eV) Onset energies of charge transfer exciton absorption (eV)

Eu2O3 > 6 3.8

Sm2O3 > 4.3 -

Y2O3 6 -

γAl2O3 9 -

SrTiO3 3.2 -

anatase TiO2 3.2 -

ZnO 3.4 -

SiO2 glass 9 -

12

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─ ─217 ( )

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

えないが,表面構造に由来する電子準位が存在すること

が実験的に確かめられている。それによると,γAl2O3

では固体状態で8.7 eVであった光吸収端が,表面では8.7 eVであった光吸収端が,表面ではであった光吸収端が,表面では

2.5 eVまで減少するというまで減少するという 22))。また,Trevisanutto等Trevisanutto等等 16))

のMgOのレーザー光誘起酸素脱離の研究によれば,MgOのレーザー光誘起酸素脱離の研究によれば,のレーザー光誘起酸素脱離の研究によれば,

MgOの固体のバンドギャップ内には表面構造(コーの固体のバンドギャップ内には表面構造(コー

ナー,ステップ)の 3,4配位の酸素イオンに由来する数

種のOO- 状態(SS h)が存在し,やはりこの実験で用いた

3.8 eVの紫外レーザー光子を吸収できることを裏付けての紫外レーザー光子を吸収できることを裏付けて

いる。また,この表面構造に由来する固体状態のエネル

ギーギャップ以下の光吸収の存在は,EuEu2O3 , Sm2O3 ,

Y2O3 ,,γAl2O3等がNdNd3++-YAGレーザーの第 3高調波(光レーザーの第 3高調波(光

子エネルギー=3.5 eV)を吸収して簡単にレーザーアブ3.5 eV)を吸収して簡単にレーザーアブ)を吸収して簡単にレーザーアブ

レーションされるという我々が日々経験する実験事実か

らも確かである。これらの酸化物での光誘起酸素放出は

正孔を捕らえた酸素イオンの正孔自己捕獲状態OO- 状態

(SS h)が(SS h + e)なる不安定性を有することに起因する)なる不安定性を有することに起因する

と解釈される。特に,EuEu2O3では

complex)EuOEu(

Eu)e2O(Eu2

V2

3V

3

++

++

++→−+−

. . . . . .( 4)

で表されるユーロピウムイオンの価数変化(EuEu3++

Eu2++)がルミネッセンス色の変化を与えていると解釈さ

れる。

ところで,真空中での紫外レーザー光照射でつくられ

た白色ルミネッセンスを与える構造すなわち酸素欠損を

含む構造が,レーザー光照射がなければいかなる雰囲気

交換に対してなぜ安定であるかの解明は光メモリー性の

永続化に対して重要である。この点については現在研究

中であるが,欠陥を含む構造も酸化物の多重構造安定性

が持つ一つの隠れた準安定状態と見なせ,これを真空中

の紫外レーザー光照射で選択的に採り出した可能性もあ

る。

4. 2 紫外レーザー光子場での酸素欠陥消滅(酸素吸着) 紫外レーザー光子場での酸素欠陥消滅(酸素吸着)

真空中で還元された酸化物は,紫外光照射しなくて

も,酸素中に放置しておくと徐々に酸化されて元に戻る

ことが多い。しかし,ここで扱われたEuEu2O3 , Sm2O3 ,

Y2O3 ,,γAl2O3 ,SrTiOSrTiO3 ,アナターゼ TiOTiO2 ,ZnO,SiOZnO,SiO,SiOSiO2

ガラス等の真空中での紫外レーザー光照射でつくられた

白色発光能力はレーザー光の照射がなければいかなる雰

囲気交換に対しても永続的に維持される。そして,紫外

レーザー光の照射があれば,酸化性雰囲気で元の状態に

戻る。ところで,酸素分子の結合エネルギーは5.2 eV程5.2 eV 程程

度で我々が用いた紫外レーザー光の光子のエネルギー

3.8 eVよりはるかに大きく光で直接酸素分子が解離しよりはるかに大きく光で直接酸素分子が解離し

て,酸素欠陥サイトに吸着されて欠陥を消滅させるとは

考え難い。つまり,観測された光酸化現象は,レーザー

光子場に助けられた酸素分子の固体表面での解離吸着現

象である。光子場が存在しない場合の気体分子の固体表

面での解離吸着現象の理論的研究は古くよりあるが,光

子場が存在する場合の研究例は難解な事柄なのか少ない

のが現状である。

これまでの光子場が存在しない場合の気体分子の遷移

金属固体表面での解離吸着現象の研究では以下の事柄が

判っている 23))。

(1) 吸着された気体原子と固体の結合エネルギーの大き

さは,吸着原子の p軌道のエネルギーと表面固体原p軌道のエネルギーと表面固体原軌道のエネルギーと表面固体原

子の d軌道のエネルギーの差によって決まる。d軌道のエネルギーの差によって決まる。軌道のエネルギーの差によって決まる。

(2) 気体原子は,清浄固体表面よりステップやキンク等

の欠陥を含む表面のほうが吸着され易い。

特に(2)は固体より表面欠陥を多く含むナノ粒子表面

では顕著に見れるであろう。純金属と金属酸化物の違い

はあるだろうが,酸化物のナノ粒子でも同様であろうと

考えられる。また,酸素ガス中での光酸化現象の速度は,

光還元の速度よりも大きいことが我々の実験を通して確

かめられている。

4. 3 白色発光の機構 白色発光の機構

真空中での紫外レーザー光照射で現れた白色ルミネッ

センスのスペクトルの形状と強度ピークエネルギーは試

料物質によって僅かずつ異なるが,現段階ではそれらを

無視して以下の如く解釈する。

まず,バンド間励起で紫外光誘起現象(白色発光化)

がおこり,バンド間励起で効率よく白色ルミネッセンス

を励起できるSrTiOSrTiO3 ,アナターゼTiOTiO2 ,ZnO等についZnO等につい等につい

て機構を考察しよう。これらの物質の発光寿命は長いの

が特徴である。これはバンド間励起でできた電子や正孔

が浅い不純物準位によるトラップを繰り返しながら酔歩

運動を繰り返し,偶然に酸素欠損に由来する同じ欠陥サ

イトで出会って輻射再結合すると理解される。これらの

結晶は電子・フォノン相互作用が高く電子と正孔が出

会った欠陥サイトでは外因的自己束縛励起子状態ができ

ていると考えられ,幅広い発光スペクトルとなる。なお,

SrTiO3 ,アナターゼ TiO アナターゼ TiOアナターゼ TiOTiO2の静的誘電率は室温において

もそれぞれ約300,約50と大きいので自由励起子状態は300,約50と大きいので自由励起子状態は,約50と大きいので自由励起子状態は50と大きいので自由励起子状態はと大きいので自由励起子状態は

13

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望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

─ ─218( )

実現されず,自由励起子発光の観測例もない。また,欠

陥のないSrTiOSrTiO3は間接遷移型半導体なのでバンド端発

光は無視できる。以上がFigure 17にまとめて示されてFigure 17にまとめて示されてにまとめて示されて

いる。なお,酸素欠陥構造の多様性が白色ルミネッセン

スのスペクトル構造に影響していることを考慮して詳細

に考察する必要がある。

つぎにEuEu2O3 , Sm2O3 , Y2O3 ,γAl2O3 ,SiOSiO2ガラス等の

如く照射(励起)レーザー光の光子のエネルギーが固体

状態のバンドギャップより小さい場合の白色ルミネッセ

ンスの機構を考察しよう。先述したとおり,これらの物

質の3.8 eVレーザー光照射による光誘起酸素脱離や白色3.8 eVレーザー光照射による光誘起酸素脱離や白色レーザー光照射による光誘起酸素脱離や白色

ルミネッセンス成分の増大は,固体内部の原子的構造と

異なる表面構造(欠陥構造)の存在が不可欠である。こ

の表面層をクラスター(分子)と見なすと,Figure 18にFigure 18 にに

示すように,その光学的特性は電子で占有された最高の

エネルギーの状態(HOMO)と電子で占有されてない最HOMO)と電子で占有されてない最)と電子で占有されてない最

低エネルギーの状態(LUMO)のエネルギーによって決LUMO)のエネルギーによって決)のエネルギーによって決

まる。

そして,クラスター内の電子・核振動相互作用を考え

ると,この図中のエネルギーギャップ中の右端のポテン

シャル曲線図に示すように,白色ルミネッセンスの発生

が理解できる。また,酸素イオンが正孔を捕らえた状態

であるOO- 状態も白色ルミネッセンスに寄与し得る。

4. 4 光誘起現象のダイナミクス 光誘起現象のダイナミクス

光誘起現象が光照射直後に完了せずに有限の時間を要

Figure 17 Energy diagram and photoluminescence model (incident photon energy > Eg)

Figure 18 Energy diagram and photoluminescence model (incident photon energy < Eg)

Conduction band

Valence band

Eg < 3.8 eV

Electron trap

Hole trap

Whiteluminescence

Shallow electron traps

Shallow hole traps

Valence band

Conduction band

LUMO

HOMO

ΔE < 3.8 eV

Whiteluminescence

Eg > 3.8 eV

O-

14

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─ ─219 ( )

金属酸化物の室温で起こる消去可能なフォトメモリー現象の研究 Ⅰ

することを考察しよう。実験では,物質(酸化物)がレー

ザー輻射場に置かれており酸素の出入りが可能な開放系

であり,この系の中での酸化物表面中に現れた酸素欠陥

構造をエンブリオ(embryo)とする核生成とエンブリオembryo)とする核生成とエンブリオ)とする核生成とエンブリオ

領域の成長を見ていることにもなる。このような場合,

輻射場の揺らぎと物質の揺らぎが光誘起現象のダイナミ

クスの鍵を握っている。これを反映してか,我々の実験

では,紫外光の光子のエネルギーがほぼ同じでも連続発

振レーザー光で起こっていた現象が,パルス光では観測

され難いという実験結果が得られている。また,ナノ

メートルサイズの微粒子試料では光誘起変化の速度が増

大するような現象は,表面系の内部系に対する相対的サ

イズが酸素欠陥構造の核生成とエンブリオ領域の成長を

支配していることを示している。この核生成と成長は温

度によって支配されるであろう。いずれにしてもこの種

の議論のためには,レーザー光を周期的に断続照射して

行う実験で,周期的断続のデューティレシオ(1周期中

の照射時間÷周期)の関数として白色化の速度を測定す÷周期)の関数として白色化の速度を測定す周期)の関数として白色化の速度を測定す

る実験を広い温度範囲にわたって行う必要がある。

5 結論と展望 結論と展望

これまでに,物質の光情報メモリー現象は半導体ナノ

メートルサイズ粒子や希土類イオンをドープした酸化物

結晶等を対象に永続的ホールバーニングに着目して国内

外で盛んに研究されている。しかし,これらの現象はご

く限られた物質でかつ極低温でしか起こらない。

我々の研究では多くの酸化物や酸化物をベースとした

複合体で,室温での雰囲気交換に伴う消去可能(逆行可

能)な紫外光誘起ルミネッセンス色の変化や強度変化の

現象を見つけた。特に,ナノメートルサイズ化により現

象の変化速度が大きくなる傾向にある。また,これまで

の実験によると,本論文に示した現象は325 nmの連続325 nmの連続の連続

発振レーザー光照射に特有な現象であり,他の波長の

レーザー光やパルスレーザー光では起こっていないが,

今後これについて,種々のレーザー装置を用いた実験を

行う予定である。なお,光励起による物質表面よりの酸

素の脱離・吸着という現象が物性物理学のみならず光還

元・光酸化,光誘起イオン価数変化等の化学反応の研究

分野に及んでいることや,光情報メモリー分野と関連し

ているので,今後も光化学や情報科学の分野の研究者と

の共同研究が必須である。

また,この研究に引き続いて以下の研究が進行中およ

び準備中である。

(1) 酸化物の微小化(ナノメートル化)によるフォトメ

モリー現象の高速化の研究。

(2) 近接場光を用いてのナノメートルサイズの情報ドッ

トの書き込み実験。

(3) 光の色の自由度を利用して,光情報を多色のドット

として物質表面に書き込む超多重・超高密度フォト

メモリー技術の開発を目指して,二色以上の多色カ

ラーフォトメモリー物質の探索・開発研究。これに

ついては,EuEu2O3 ,SmSm2O3 ,SiOSiO2 ガラス等の表面をガラス等の表面を

異なる物質の分子層やクラスター層で修飾する方法

を考えている。

謝辞

本研究は下記の学内外の研究助成の下に行われた。文部科

学省及び日本大学のご援助とご理解に感謝致します。

(1)文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C):平成121)文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C):平成12) 文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C):平成1212~13年度,平成15~17年度13年度,平成15~17年度年度,平成15~17年度15~17年度~17年度17年度年度

(2)文部科学省学術フロンティア推進事業:平成12~18年2)文部科学省学術フロンティア推進事業:平成12~18年) 文部科学省学術フロンティア推進事業:平成12~18年12~18年~18年18年年度

(3)文部科学省ハイテクリサーチセンター整備事業:平成123)文部科学省ハイテクリサーチセンター整備事業:平成12) 文部科学省ハイテクリサーチセンター整備事業:平成1212~16年度16年度年度

(4)日本大学学術助成金 総合研究:平成12~13年度,平4)日本大学学術助成金 総合研究:平成12~13年度,平) 日本大学学術助成金 総合研究:平成12~13年度,平12~13年度,平~13年度,平13年度,平年度,平

成15~17年度15~17年度~17年度17年度年度(5)日本大学文理学部研究費A:平成18年度。5)日本大学文理学部研究費A:平成18年度。) 日本大学文理学部研究費A:平成18年度。18年度。年度。

(6)日本大学文理学部情報科学研究所プロジェクト研究:平6)日本大学文理学部情報科学研究所プロジェクト研究:平) 日本大学文理学部情報科学研究所プロジェクト研究:平成14年度14年度年度

15

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望月章介・藤代 史・飯野晃弘・芝田浩平・浅地哲夫・鈴鹿 敢・橋本拓也・中里勝芳・中村正人

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(2003) 956. 6) F. Fujishiro, S. Mochizuki, Physica B 340-342 (2003) 216. 7) S. Mochizuki, H. Araki, Physica B 340-342 (2003) 913. 8) S. Mochizuki, H. Araki, Physica B 340-342 (2003) 969. 9) S. Mochizuki, F. Fujishiro, Journal of Physics: Condensed

Matter 15 (2003) 5057.10) S. Mochizuki, F. Fujishiro, S. Minami, Journal of Physics:

Condensed Matter 17 (2005) 923.11) S. Mochizuki, S. Minami and F. Fujishiro, Journal of Lu-

minescence 112 (2005) 267.12) F. Fujishiro, S. Mochizuki, Journal of Luminescence 112

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