高松松ククレレーータターーのの謎謎をを探探るるhasegawa/research/creter.pdf1.高松クレーターとは...
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1.高松クレーターとは
高松クレーターは、金沢大学の河野芳輝教授らの重力探
査によって発見、命名された伏在陥没構造で、高松市仏生
山町を中心に直径約4km、深さ千数百mの規模と推定され
た(河野ほか,1991)。
高松クレーターの成因については、河野教授、山口大学
の三浦保範助教授らは隕石衝突説を主張し、長谷川や神戸
大学の佐藤博明教授らは火山活動のよるカルデラ(コール
ドロン)説を主張している。
高松クレーターの成因を解明するには、①重力探査によ
って推定された陥没構造を構成している比重の小さな物
質(岩石)は何か、②その岩石がどのような過程で形成さ
れたか、③その岩石の形成過程で陥没構造が説明できる
か、をまず明らかにすることである。したがって、陥没構
造を埋めている物質で陥没構造のでき方を説明できれば、
これを有力な成因としてまず考えるべきである。
これに対して、①河野教授らの隕石説は、地球物理学デ
ータによる間接的な推論と期待(「夢があるから」)を根拠
とし、②三浦助教授の隕石説は陥没構造を構成する物質を
無視し、衝突鉱物らしき粒子を探そうとする方法論をとっ
ている。
2. 高松クレーターの地質
高松平野の基盤は花崗岩類から構成される(図-
1)。花崗岩類は、高松クレーターの周囲に分布し、
高松クレーター内には、中新世の火山噴出物が分布
している。このうち黒雲母デイサイトは、日山など
の円錐形の小山(ビュート)の山頂部を構成し(図
-2)、それらの麓には流紋岩質凝灰岩類が分布し
ている。つまり、高松クレーターは、火山噴出物と
関係している(図-3)。
高高高松松松クククレレレーーータタターーーののの謎謎謎ををを探探探るるる 香香川川大大学学工工学学部部 長長谷谷川川研研究究室室
図-1 香川県の地質図
図-3 高松クレーター周辺の地質図
3. 電磁探査による地下構造と地下水
河野教授らは、早明浦ダム 7杯分の地
下湖として有望な地下水源になるとの見
解を発表した。これに対して、長谷川や
㈱ナイバの石井秀明氏は、クレーターは
凝灰岩類などの岩盤から構成され、いわ
ゆる帯水層は期待できないと反論した。 高松市は平成 7 年度に高松クレーター
の地下水調査を四国総合研究所に委託
し、CSAMT 法電磁探査と既存のボーリン
グ・揚水データに基づき、高松クレータ
ーは渇水時の有望な水源にはならないと
結論した。電磁探査により、高松クレー
ターは電気抵抗(比抵抗)の小さい物質
から構成されその基底は、700-900mと
推定された(図-4)。
図-4 高松クレーターCSAMT法電磁探査比抵抗断面図
図-2 高松クレーター内のビュートの小山
4. ボーリング調査による推定
高松クレーター内外のボーリン
グ調査データおよび地下約 320m
から採取されたボーリングコアの
密度・比抵抗試験によるによると、
高松クレーターは、低密度・低比抵
抗の溶結凝灰岩を主体として構成
されている。
6. 高松クレーターは約1400万年前のコールドロン(カルデラ跡)である
以下の地質学的証拠から、陥没構造は大量の火砕流堆積物を噴出させたカルデラ跡、すなわちコールドロンであることはほぼ確実で
ある。
(1)CSAMT 法電磁探査によれば、隕石衝突孔ではなく、火山性の陥没構造(コールドロン)に類似した地下構造をしている(長谷川
ほか,2000)。
(2)重力探査および電磁探査結果を地表の地質と地下 320mのボーリングコアから解釈すれば、陥没構造は基本的には低密度かつ低
比抵抗の流紋岩質火砕流堆積物(凝灰岩・凝灰角礫岩)からできていると推定される(長谷川ほか,1998)。
(3)流紋岩質火砕流堆積物に含まれるガラスの化学組成とその形成年代(14Ma)は周辺の火山岩類と一致している(山田・佐藤,1998)。
(4) モルデン沸石などの変質鉱物からも、カルデラ起源と説明できる。
7. 隕石衝突説は本当か?
隕石衝突の物証とされる根拠(Miura & Rampino,2000)には以下の問題点があるため、隕石衝突の確たる物証があるとはいいがたい。
それらに対する説明責任、検証責任は三浦助教授にある。学術的な裏づけのないままに、夢とロマンの隕石説に踊らさると、あとで困
ったことになると懸念している。
(1) 隕石衝突起源の証拠とする鉄ニッケル粒子が、地表から採取された岩石中にさびずに含まれているのは不自然である。また、
マンガンの含有は隕石起源と矛盾する。
(2) 隕石衝突起源の証拠とする高密度石英、衝突石英の産状、分析方法、分析精度が不明である。
(3) ガラススフェリュールが衝突起源である根拠が不明である。
(4) 衛星データから高松クレーターの外側に更に大きな陥没構造を発見し、三浦 KTクレーターと命名したが、根拠が全くない。
(5) なぜ、三浦助教授(のグループ)しか衝突鉱物を発見できないのか?
(6)どうして、大量の火山噴出物の中から、衝突鉱物が発見できるのか?
(謝辞)本研究は長谷川が(株)四国総合研究所在職時に担当した高松市による高松クレーター地下水調査結果にその後のデータを加
えたものである。本研究にご支援・ご協力頂いた高松市、四国総合研究所、建設企画コンサルタント、ナイバ、田村ボーリング、松の
井パレス、観翠,神戸大学佐藤博明教授、東京大学歌田実名誉教授の関係各位に厚くお礼申し上げます。
図-5 高松クレーターの地質断面図
5. 1700mボーリングでわかったこと
最近、高松クレーター内で、1700m級の温泉ボーリングが掘削され、10m毎にスライムが採取され、研究者の分析に提供されている。
スライムの分析結果は以下の通りである。
(1)高松クレーター内部は,溶結凝灰岩とそれを貫くデイサイト溶岩,基盤の花崗岩からなる。
(2)ボーリング地点における高松クレーターの基底深度は、1080mである。
(2)基盤の花崗岩の密度より溶結凝灰岩の密度が小さい。
(3)XRD分析の結果,沸石類・ゼオライト・カオリン鉱物の生成から,クレーター内はカルデラによる熱水変質作用があったと推
察される。
図-6 1700mボーリング柱状
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
10000
11000
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65
θ-2θ
C.P.S
①
②
④
③
⑤
① 320m② 600m③ 1090m④ 1110m⑤ 1550m
zeolite feldspar
feldspar
feldspar
biotite
opal-ct
feldspar
biotite
biotite
quartz
quartz
quartz
quartz
quartz
kaolinite
feldspar
feldspar
opal-ct
quartz
feldspar
chlorite
hornblende
smectite
quartz
quartzquartz
quartz
calsite
図-7 X線分析 チャート