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48 MARCH 2009 シリーズ 世界の公共放送のインターネット展開 韓国・KBS IT 先進国に見る視聴者サービスのありかた メディア研究部(海外メディア) 田中則広 第6回 1. IT 先進国への道のりと 韓国のインターネットサービス シリーズ「世界の公共放送のインターネット展 開」,第 6 回は世界有数のブロードバンド大国 である韓国を取り上げる。 韓国では,2008 年にブロードバンド加入者 数が 1,500 万人を突破し,世帯普及率は 92%に 達している 1) 。このように,韓国社会において ブロードバンドが普及したのは,1997 年のアジ ア通貨危機後の生き残り策をITに集中し,当 時の韓国政府が高速インフラの開発に対して 強力な支援を行ったことが大きな理由のひとつ だといわれている 2) 。1998 年にキム・デジュン (金大中)政権が誕生すると,韓国では様々な 改革が行われたが,なかでもブロードバンドの 普及に大きく寄与したのが,1999 年 3月に樹立 された「サイバーコリア 21(Cyber Korea 21)」 計画であった 3) 。この計画に基づき,韓国政府 は情報インフラの整備を進め,知識情報の創 出,蓄積,活用能力の先進化に取り組んだ。 また,インターネットの利用者が急増したこの 時期,地上放送局各社は,インターネット関連 の子会社を設立して,自社番組のストリーミン グやVOD サービスを開始した。 韓国を代表する公共放送である韓国放送公社 (KBS)の場合,2000 年 4月に韓国通信などと の共同出資によって KBS インターネット(KBSi) を設 立した 4) 。その後,KBSは2001年12月か らホームページの運用を子会社のKBSiに委託 している。なお,KBSiも独自に2002 年 8月か ら政府機関の韓国ソフトウェア振興院と共同で, インターネット有料サービス「www.conpia.com (コンピアドットコム)」事業を行っている 5) この他,半官半民の文化放送(MBC)は, 2000年3月にiMBCを設立し,2003年4月か ら有料サービスを行っている 6) 。また,民放 のエスビーエス(SBS)は,iMBCよりも早く, 1999年8月にSBSiを設立,2001年9月から有 料サービスを始めている 7) これらの放送局のうち,本稿では,公共放 送 KBS のインターネットサービス, とりわけ VOD サービスの現状と運営の仕組み,基本戦 略に関して,KBS及び KBSiでの調査,また, 日本や韓国で発表された先行研究などを基に 報告する 8)

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48  MARCH 2009

シリーズ 世界の公共放送のインターネット展開

韓国・KBS IT 先進国に見る視聴者サービスのありかた

メディア研究部(海外メディア) 田中則広

第 6 回

1. IT先進国への道のりと韓国のインターネットサービス

シリーズ「世界の公共放送のインターネット展開」,第6回は世界有数のブロードバンド大国である韓国を取り上げる。

韓国では,2008年にブロードバンド加入者数が1,500万人を突破し,世帯普及率は92%に達している1)。このように,韓国社会においてブロードバンドが普及したのは,1997年のアジア通貨危機後の生き残り策をITに集中し,当時の韓国政府が高速インフラの開発に対して強力な支援を行ったことが大きな理由のひとつだといわれている2)。1998年にキム・デジュン

(金大中)政権が誕生すると,韓国では様々な改革が行われたが,なかでもブロードバンドの普及に大きく寄与したのが,1999年3月に樹立された「サイバーコリア21(Cyber Korea 21)」計画であった 3)。この計画に基づき,韓国政府は情報インフラの整備を進め,知識情報の創出,蓄積,活用能力の先進化に取り組んだ。また,インターネットの利用者が急増したこの時期,地上放送局各社は,インターネット関連

の子会社を設立して,自社番組のストリーミングやVODサービスを開始した。

韓国を代表する公共放送である韓国放送公社(KBS)の場合,2000年4月に韓国通信などとの共同出資によってKBSインターネット(KBSi)を設立した4)。その後,KBSは2001年12月からホームページの運用を子会社のKBSiに委託している。なお,KBSiも独自に2002年8月から政府機関の韓国ソフトウェア振興院と共同で,インターネット有料サービス「www.conpia.com

(コンピアドットコム)」事業を行っている5)。この他,半官半民の文化放送(MBC)は,

2000年3月にiMBCを設立し,2003年4月から有料サービスを行っている6)。また,民放のエスビーエス(SBS)は,iMBCよりも早く,1999年8月にSBSiを設立,2001年9月から有料サービスを始めている7)。

これらの放送局のうち,本稿では,公共放送KBSのインターネットサービス,とりわけVODサービスの現状と運営の仕組み,基本戦略に関して,KBS及び KBSiでの調査,また,日本や韓国で発表された先行研究などを基に報告する8)。

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2. KBSのVODサービス運営状況

KBSのホームページからVODサービスを利用するには,国の内外を問わず利用者登録が必要である。なお,登録には費用がかからない。KBSによると,2008年11月末時点での会員数は総計1,654万841人で,内訳は国内会員

(韓国国籍)1,625万6,874人,国外会員(韓国国籍以外)28万3,967人である。会員全体の中で,18歳以下の会員は316万4,564人で2割弱,男女比については,男性868万8,866人に対して女性785万1,975人で,53:47となっている。ただし,国外会員の場合,女性会員の方が多く,男性会員の1.6倍,18歳以下の会員も女性会員が男性会員の1.2倍となっている。また,アクセス数は月に900万UV(Unique Visitor)程度とのことである。

実際に,KBSのホームページ(http://www.

kbs.co.kr/)からVODサービスを見てみると,テレビ,ラジオ合わせておよそ300の番組サイトにアクセスできる他,地上テレビで放送中の番組を視聴することも可能である。テレビ番組のVODサービスの場合,コンテンツはドラマ,ニュースなどカテゴリー別に6つに分類されており(図1),日本の少女漫画作品を原作に制作された韓国版『花より男子』の視聴もできる。このドラマは,2009年1月5日よりKBS2で月曜日と火曜日の週2回放送され,VODサービスについても1日当たりのアクセス数が過去最多

300Kbpsにつ いては放 送 終了後2週間までの提供となっており,それ以降は56Kbpsのみのサービスとなる。ただし,56Kbps でのサービスは画質が不鮮明であり視聴には適していない。なお,午前中に放送した番組は当日の17時頃,午後に放送した番組は翌日の13時頃からインターネット上

図 1 VOD サービスのカテゴリー

(KBSホームページより)

を記録するなど,注目を集めている。KBSが提供する無料サービスは56Kbpsと

300Kbpsの2種類であるが,画面上は56Kbpsと300Kbps,それに700Kbpsの3種類となっていて(図2),700Kbpsをクリックすると,KBSのホームページを委託運営する子会社KBSiが別途運営する有料サイト,コンピアドットコムに

リンクする仕組みに なっている。無料の

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での視聴が可能になる。ドラマの場合,KBS1及び KBS2で放送中のドラマ10数作品,それに放送が終了したドラマ約50 作品の視聴が可能である。

KBSによると,ジャンル別ではドラマの人気が最も高く,続いて,演芸・娯楽の順であるが,演芸・娯楽番組の中には他社との視聴率競争で常にトップ争いを続けている人気バラエティー番組『ハッピーサンデー』などのような,ドラマ以上に人気があるといわれる番組も含まれてい

る。VODサービスの視聴主体は30代,40代の男性有職者であり,男女比で見るとほぼ同数であるという。10代,20代といった若年層の視聴者数は相対的に低いが,これはもともとKBSの主な視聴者が中高年層であることに起因していると考えられる。

運営費用はおよそ30 億ウォン(約2億円:2009年1月時点の1ウォン=0.066円で換算)で,この中には著作権料は含まれていない。30 億ウォンのうち,KBSiに対する運営委託費用は21億ウォンで,残りは設備費などとなっている。KBSのホームページ上では,企業や自治体からの広告を掲載しており(図3),それによって得た収益などが運営費用に当てられている。

前にも触れたように,韓国ではKBS,MBC,SBSなど地上放送局各社がVODサービスを始めて10年になる。比較的短期間で各種ITサービスがこのように人々の生活に浸透した背景に

図 3 オンライン広告事例

図 2 VOD スタート画面 ─『花より男子』のケース─

(KBSホームページより)

(KBSホームページより)

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は,官民挙げてIT大国を目指す流れの中で,実施可能なサービスについてはできる限り推進していこうといった社会的なコンセンサスのあったことが大きい。とはいえ,韓国ではこれまで法的には曖昧なままVODサービスが行われてきた。KBSの場合,韓国の放送法により,その「業務」が記されており,そのひとつに「衛星放送など新しい放送媒体を通した放送の実施」(第54条第1項第3号)がある。しかし,そもそも放送法における「放送」とは,「放送プログラムを企画・編成または制作してこれを空中(個別契約による受信者を含み,以下「視聴者」という)に電気通信設備によって送信すること」(第2条第1項)と規定されているため,KBSのVODサービスに関しては,明確には記されていないことになる。この点については,KBS以外の放送局についても同様であり,法制度の不備を指摘する声が多い。例えば,韓国にはVODを受け入れる法的体系も,VODサービスの体系的な分類基準も特段あるわけではない 9)。また,放送・通信融合環境でも,放送の公益性維持と自由な世論形成,子ども・青少年層の保護のためのコンテンツ規制は相変わらず重要であるが,韓国国内ではVODコンテンツ規制に対する論議はほとんど無い状況にある10)。こうした観点からも,法制度の整備は今後の主要課題のひとつである。

3. インターネットによる地上テレビ放送の視聴実態

ここでは,韓国の地上テレビ放送がインターネットではどのように視聴されているのかについて触れておく。

韓国放送広告公社(KOBACO)11)が,昨年(2008年)5月から6月にかけて全国6,000人を

対象に実施した調査報告12)によると,インターネットを利用する4,445人のうち,最近3か月の間にインターネットを利用して地上テレビ放送を視聴したと回答したのは9.6%(426人)であった。男女別では男性が女性より若干高く,年齢別では男女ともに10代と20代が相対的に高くなっている(図4)13)。

視聴頻度については,インターネットで地上テレビ放送を視聴した426人のうち,「月に1~3日」が29.8%で最も多く,次いで「週に1~ 2日」が23.5%であった。また,週1回以上視聴すると回答した人の合計は51.3%であった(図5)14)。

図 4 インターネットテレビ視聴経験

図 5 インターネットテレビ視聴頻度

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視聴理由については,「(放送で)見られなかったものを見るため」が74.2%,「見たものを再度見るため」が16.0%であるのに対し,「同時放送を見るため」は9.4%にとどまっている(図6)15)。この数値からは,視聴者が同時放送を視聴するためというよりは,むしろ見たい番組を放送時間にとらわれず視聴できるVODサービスを利用する手段としてインターネットを利用していることが明らかである。

視聴者に人気のある番組に関しては,インターネット視聴とテレビ視聴との比較結果が出ている。それによると双方とも「ドラマ」が第1位であるが,第2位は,インターネットの場合が「ショー・娯楽」であるのに対して,テレビの場合は「ニュース・報道」となっている(図7)。その理由についてKOBACOでは,正確さや信頼が重視される「ニュース・報道」番組が,インターネット視聴者よりもテレビ視聴者から好まれていることについて,地上テレビに対する信頼度がインターネットテレビより高いからだと分析している16)。

4. KBSの戦略

ここでは,KBSのインターネットサービスに対する基本的な考え方,視聴者獲得のための戦略について見ていく。

KBSはインターネットと地上放送の連携によって,より多くの情報と利便性のあるサービスを拡張していくことで,デジタル時代における公共放送の存在感を維持するとの立場に立っている。しかしその一方で,視聴者の中心は中高年層であり,若年層が相対的に少ないことに対する危機感を持っている。そのため,VODサービスをはじめとするインターネットサービスは若年層という新たな顧客を開拓するための手段でもある。現段階においてインターネットサービスは,地上放送の補完的な役割を担っているに過ぎないが,これまで,テレビやラジオだけでは提供が難しかった付加情報も伝えるツールとして徐々に競争力を高めつつある。

○顧客層開拓のための具体事例

KBSでは,若い視聴者を取り込むための新たなコンテンツの開発に取り組んだ結果,2008

図 7 インターネットテレビと地上テレビの選好度比較

29.1

37.8

図 6 インターネットテレビ視聴理由

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年からドラマやショー ・娯楽番組を対象に「ビデオマーキング」サービスをスタートさせた。このサービスは,KBSのVODサービスを利用しながらお気に入りの場面を画面右下のボタン

(図8)を押してクリッピングし,自らそのコンテンツに対して名前を付けて投稿したり,知人に送ったり,あるいは,自分のブログにスクラップしたりと,地上放送のコンテンツをあたかも個人コンテンツのように使うことができるようにしたものである。

ビデオマーキングサービスの画面(図9)の多くは,ドラマのワンシーンを切り取ったものが多く,投稿されたシーンに対するアクセス数ランキングや視聴感想などが掲載されている。こうして新たに生産される「作品」は1日当

たり8万件にもなる。いずれ地上放送の視聴者は減少していくと言われる中で,インターネットの視聴者を取り込んでいくため,KBSでは地上放送の影響力を用いて,インターネット向けサービスの開発にも力を入れている。

○有料サービスに対する立場

KBSが他 社との違いを明確にしたのが,2003年2月の「無料サービス宣言」である。公共放送として,インターネットサービスの方針を示したものである。内容については以下の通りである。

「最近,他の放送局各社がインターネットコンテンツを有料化する傾向にあるが,公共放送のKBSは,動画VODなどすべての放送コンテンツを無料で提供します。KBSは現在,ホームページ(www.kbs.co.kr)で生放送(On-Air),再視聴(VOD),再聴取(AOD)などの放送番組コンテンツを無料で提供しており,今後も有料化する計画はありません。KBSのこのような政策は普遍的サービスを提供しなければならない公共放送本来の任務であり,現段階でこれ

図 9 ビデオマーキングサービス画面

図 8 VOD 視聴画面とクリッピングボタン

(KBSホームページより)

(KBSホームページより)

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を変更するいかなる必要性も感じておりません。現在,コンピアドットコム(conpia.com)のホームページで一部KBSコンテンツが有料で提供されているのは(株)KBSインターネットが別途KBSコンテンツを購入し,自主供給しているのであり,KBSホームページの有料化とは何ら関連がありません」17)。

「無料サービス宣言」は,インターネットサービスがあくまでもKBSによる無料のサービスであり,KBSiが行っている有料サービスは,KBSとは会計を分離した独自事業であることを強調している。

KBSでは,現在においても「無料サービス宣言」は有効で,演芸,娯楽といったコンテンツを含め2週間の無料サービスを提供していることからも明らかだとしている。なお,韓国では,放送局各社が言論機関としての責任から,ニュース,時事,教養といったコンテンツについては無料での提供を行っている。

5. 放送通信融合時代のサービスと課題

本稿では,KBSの事例を取り上げて公共放送が行うインターネット展開の現状について概観した。そこからは,「公共放送はあらゆる手段を使ってできるだけ多くの人に番組を届けるべきであり,国民の生活様式の変化にともなって,公共放送もサービスの提供の仕方を変えるべきである」18)というフランス,ひいては欧米諸国における認識と軌を一にしていることが確認でき,利用者が利用する際の費用についても,欧米の公共放送と同様,無料提供が基本となっていた。

KBSをはじめ韓国の放送局各社は,欧米

諸国に先駆けてインターネット展開を図ってきたという経緯がある。そのため,放送コンテンツを利用者がプライベートで使えるサービスなど,諸外国の一歩先を行くサービスを通じて放送局と利用者,あるいは利用者同士の相互交流が盛んに行われている。

しかしその一方で,検討すべき課題もある。日本と同様,韓国でも若年層のテレビ離れが進む中で,KBSはこれらの視聴者層を取り込む必要に迫られている。KOBACOの調査報告にもあるように,インターネットテレビの視聴者が韓国においては10代,20代が多い中,KBSのインターネットサービスの利用者は,KBSが若者向けのサービスに力を入れ始めたとはいえ,まだ,30代,40代が相対的に高い。KBSの主たる視聴者が中高年層であることが大きな要因であると見られるが,このことは同じく視聴者が中高年層主体のNHKや英国放送協会(BBC)にも共通の課題である。また,不法コンテンツ対策も避けては通れない。インターネット展開のさらなる発展を大きく揺さぶりかねない不法コンテンツの問題に関しては,韓国のみならず,日本をはじめ世界各国が連携して対応していく必要がある。各国の放送局間で相互協力体制を構築しつつ,それだけでは対応に限界があるため,各国の政府や司法当局との間においても,より一層の連携を取りながら,これまで以上に強硬な姿勢で臨んでいく必要があろう。      (たなか のりひろ)

〔付記〕本稿の執筆にあたっては,KBSのインターネット部門を統括するニューメディア開発チームのキム・ジングォン(金振權)部長,また,KBSiコンテンツ事業2チームのチャン・ソンヒ(張誠希)チーム長と,日本担当職員の大屋千尋氏より多くのご教示を頂いた。末筆ながら,深く謝意を表したい。

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注:1)放送通信委員会によると,ブロードバンドの加入

者数は 2008 年 11 月末時点で 1,545 万 8,027人である。韓国の世帯数(1,667 万 3,162 人)は,統計庁が公表している 2008 年「推計世帯」に基づく。

2)大黒能寛 「韓国 世界一のブロードバンド大国」『エコノミスト』第 81 巻第 23 号,2003 年 5 月13 日,32 頁。

3)インターネットビジネス研究会編「韓国ブロードバンドを読み解く~走りながら考える国」『インターネットビジネス白書 2002』ソフトバンクパブリッシング,2001 年,266 頁。

4)設立時の社名は「クレジオ」といい,2002 年 9月の社名変更により KBSi となった。また,韓国最大の通信事業者韓国通信は,2001 年の社名変更で KT となっている。

5)KBS のインターネットサービスが無料であるのに対し,KBSi が別途有料で実施しているのがコンピアドットコムである。会員数は 2008 年末で310 万人,コンテンツは,音楽 28 万,放送 1 万1,000,アニメーション 800,映画 400 となっている。料金はストリーミング及びダウンロードサービスによる 30 日間見放題のコースで 2 万ウォン。KBS の無料サービスとの大きな違いは高画質配信(ストリーミング 700 Kbps,ダウンロードは 1.5 Mbps)を行っている点である。また,KBSi は2008 年から日本市場向けサービスとして『KBS Download Mall』<http://www.kbs-tv.jp/> を,株式会社インタラクティブメディアミックス(本社:横浜市)と共同で開始している。

6)iMBC のホームページ <http://ir.imbc.com/> 中,「iMBC紹介(沿革)」の項目参照。2009年2月1日。

7)SBSi のホームページ <http://sbsi.sbs.co.kr/> 中,「会社沿革」の項目参照。2009 年 2 月 1 日。

8)韓国の放送局が実施する VOD サービスについては,これまで韓国において多くの研究が行われてきた。しかし,サービスを取り巻く状況は頻繁に変化しており,本稿においても可能な限り最新の情報を伝えるべく努めた。なお,執筆に当たっては韓国における先行研究である,河閏金「 VOD (国内外 VOD サービスの動向と展望)」(韓国放送映像産業振興院,ソウル,2008 年 10 月 15 日),それに,日本での研究として,沈成恩「放送通信融合時代の地上波放送局~韓国地上波番組のVOD 配信を中心に~」(『放送研究と調査』第58 巻第 5 号,2008 年 5 月),中村美子,米倉律,山口誠「公共放送のネットサービスはどう受け

止められているか~「日・韓・英 公共放送のネット展開に関する国際比較ウェブ調査」から~」

(『放送研究と調査』第 58 巻第 7 号,2008 年 7 月)などを参考にした。

9)崔聖鎭「Video

On Demand(望む時間に見たいコンテンツを直接選択する利用者注文型サービス VideoOn Demand)」『Media+Future』 第 25 号, ソウル,2008 年 7 月,52 頁。

10)河,前掲論文,43 頁。11)政府出資の特殊法人で,韓国における放送広告

の販売代行などを行っている。12)韓国放送広告公社広告教育研究院広告研究チー

ム 編『2008 (2008消費者形態調査報告書)』韓国放送広告公社,ソウル,2008 年 12 月。なお,インターネットによるテレビ視聴の調査としては,放送通信委員会・韓国インターネット振興院編「2008

(2008 年 インターネット利用実態調査)」(韓国インターネット振興院,ソウル,2008 年 11 月)もあるが,調査方法が異なっており,本稿では地上放送に焦点を当てた KOBACO の調査を取り上げることにした。

13)韓国放送広告公社広告教育研究院広告研究チーム編,前掲書,228 頁。

14)韓国放送広告公社広告教育研究院広告研究チーム編,前掲書,231 頁。

15)14)に同じ。16)韓国放送広告公社広告教育研究院広告研究チー

ム編,前掲書,232 頁。17)「KBS (KBS 放 送 コ

ンテンツ無料サービス)」(2003 年 2 月 4 日付KBS ホームページ公示事項)<http://www.kbs.co.kr/whatsnew> 2009 年 2 月 1 日。

18)長井暁「シリーズ 世界の公共放送のインターネット展開 第 3 回 フランス・FranceTélévisions と INA ~ VOD サービスの最先端事例に見る公共放送の役割の転換~」『放送研究と調査』第 58 巻第 11 号,2008 年 11 月,39 頁。