季刊誌17号 053 056管#25df5 - takii54 2010.タキイ最前線 冬春号 2圃 ほ 場の準備...
TRANSCRIPT
53 2010. タキイ最前線 冬春号
1播種・育苗❶発芽を揃える 秀品率を高めるには、発芽を揃えることが最低条件です。「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」はともに、発芽揃いがよく、育苗のしやすい品種ですが、より揃いのよい苗作りのためには、発芽しやすい条件をつくることが重要です。 温度は発芽適温の15~25℃を目標にします。潅水は均一に行い、その後は本葉1.5枚目までは適湿を保つよう心掛けます。セルトレイやチェーンポットでの育苗の場合、培土が乾燥しやすいのでこまめな潅水が必要です。 また、市販培土は種類により保水力が異なるので、潅水量には注意が必要です。タキイの「ねぎ培土」なら、含水量が低い反面、保水性に優れており乾きにくいほか、初期の肥効が高いといった特性があります。そのため使用する際は、最初にしっかりと水を含ませた状態で播種
管理技術シリーズ⑰
良質ネギの出荷で差をつける !
~秀品率を高めるには~
タキイ長沼研究農場
天あま
野の
亮りょう
治じ
ネギは価格変動幅が比較的少ない野菜です。そのため、
新しい産地ができるなど産地間競争は激しくなっており、
産地にとって市場への安定供給は当然として、それぞれ
に特徴づけを行うことが重要となります。
現在、市場に流通する根深ネギは、葉がかたいものが
主流なので、„やわらかさ“や„おいしさ“といった良
質性を産地の特徴づけとするのはいかがでしょうか。
ここでは、収量性にも優れ、やわらかくておいしいネ
ギ「ホワイトスター」と「ホワイトタイガー」の高品質
化への栽培ポイントをご説明します。
←やわらかくておいしい!
秀品率上々の多収種
「ホワイトスター」。
←耐病性で作りやすい!
良質合柄多収種
「ホワイトタイガー」。
根深ネギの春まき作型での栽培ポイント~「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」~
根深ネギの根深ネギの春まき作型での春まき作型での栽培ポイント栽培ポイント~「ホワイトスター」~「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」~「ホワイトタイガー」~
54 2010. タキイ最前線 冬春号
2圃ほ
場の準備 上作のためには、健全な根を土壌に張らせることが重要です。ネギの根は酸素要求量が高く、多湿条件に弱いため、なるべく通気性・排水性のよい圃場を選びましょう。そのため、連作はできるだけ避け、緑肥作物の導入や完熟堆
たい
肥ひ
の利用で、有機質に富んだ土づくりを日ごろから心掛けます。土づくり以外にも、圃場に水がたまらないように明
めい
渠きょ
を設けるなど、排水対策も重要です。また、畑は深耕し、土寄せすることを考え、25~30㎝を目標に作土層を確保します。
~排水のよい土づくり~
3肥培管理 ネギは在圃期間の長い作物で、生育途中の肥切れや過剰な肥効は、順調な生育の妨げとなり、病害の助長や品質の低下を招く恐れがあります。「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」の品質のよさを生かすには、穏やかな肥効の持続が重要です。 最終的なチッソ成分の目安は、10a当たり20~25㎏程度です。しかし、熟畑や新畑の違い、前作物による残効肥料の量などで施肥量は大きく異なります。土壌診断を行うなどして、適切な肥料設計を立てましょう。さらには“肥効の波”をつくらないよう、肥効調節型のロング肥料あるいは有機質系肥料を使った元肥主体の施肥や、元肥に全チッソ量の 1/ 3~ 1/ 2を使い、残りを数回に分けてこまめに追肥を行う施肥体系とするのがよいで
しょう。 また、ネギは夏場の高温によって生育が緩慢になります。夏場の過剰な施肥は、軟
なん
腐ぷ
病などの病害を助長するので控えます。注意したいポイント「ホワイトスター」 早生肥大性に優れ、根張りが強く、吸肥力が旺盛なため、穏やかな肥効を持続することが重要です。葉色が淡いという特徴がありますが、これを濃くする目的での施肥は避けます。注意したいポイント「ホワイトタイガー」 秋口からの生育が特に旺盛なため、元肥の割合を抑え、秋口から追肥で作りあげていくことで良品出荷が可能となります。
~穏やかな肥効の持続がポイント~
し、その後は地表面が乾いてから潅水を行います。また、育苗が60日を超える場合は液肥を施し、肥切れを防止します。❷しっかりした苗作り 本葉 2枚目以降は、苗を徒長させないように注意し、潅水はやや控えめにします。ハウスでの育苗の場合は換気に努め、徒長しないようにします。また、葉先が垂れるようになったら、12~15㎝程度の草丈に剪葉します。3回程度繰り返すことで、太くてしっかりとした苗作りが可能となります。
↑通気性・排水性のよい圃場で栽培し、健全な根を土壌に張らせることが上作のポイント(写真は「ホワイトスター」)。
↑タキイの「ねぎ培土」は、速効性肥料と緩効性肥料をバランスよく配合した、ネギ育苗用の長期肥効型培土。茎の太い良質苗を追肥なし(60日以上育苗する場合は適宜追肥する)で作ることができる。
(左:ねぎ培土、右:他社培土)
55 2010. タキイ最前線 冬春号
4定植~土寄せ❶スムーズな活着を目指す 順調な初期生育と揃い性向上のためには、苗をスムーズに活着させることが最も大切です。そのためには、土壌の水分状態が適湿であることが重要です。整地の方法やタイミングには、十分注意してください。 栽植密度は慣行通り、条間90~1 0 0㎝、株間 2~ 3㎝を目安とします。定植溝は、目標とする軟白部の長さと土壌条件によりますが、10~15㎝程度の深さで掘ります。❷太さを確保し、こまめな土寄せを 一度に多量の土寄せを行うことは、葉を傷めたり、根を一度にたくさん切ったりするため、病気にかかりやす
くなります。削り込みで 2回、溝が埋まってからの土寄せは 3~ 4回を目安に、こまめに行ってください。芯葉から 4~ 5枚は土がかからないようにします。最終土寄せは分岐部近くまで行い、軟白部を仕上げます。 「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」は、ともに肥大性に優れていますが、早めに土寄せした場合に葉鞘部が細くなることがあります。 1回目の削り込みの時に太さを確保してから、少量を寄せることがポイントになります。「ホワイトタイガー」は初期生育がじっくりしているため、「ホワイトスター」よりも土寄せを遅らせ、太りを確保することが重要です。
~適湿な土壌、こまめな土寄せを~
5高い品質で収穫を ネギは収穫適期を過ぎてしまうと品質の低下を招くため、適期での収穫を心掛けます。 「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」は生育旺盛な品種なので、特長である良質性を生かすためにも、収穫予定日から逆算して最終土寄せを行い、適期収穫を行ってください。
~適期での収穫~
↑適湿な土壌水分の下、株間 2~ 3㎝に定植する。 ↑土寄せした「ホワイトスター」。最終、分岐部の近くまで土寄せし、軟白部を仕上げる。
↑最終土寄せのタイミングと適期収穫を心掛け、良質の根深ネギを収穫する。
56 2010. タキイ最前線 冬春号
6病害対策 ネギの重要病害として、べと病、さび病、軟腐病、白
しら
絹きぬ
病、小しょう
菌きん
核かく
病などがあります。近年、連作に伴う土壌条件の悪化や、夏の猛暑や集中豪雨などの異常気象が増加傾向にあり、被害が拡大しています。それらの予防には、品種に頼るだけではなく、栽培も含めた総合的な対策が必要となります。前述の「健全な育苗生産」「圃場の排水対策」「適切な肥培管理」を行い、病気にかかりにくいネギの生産を目指しましょう。 さらに、計画的な予防と早期の病害発見・対応による「適期防除」に努めます。「ホワイトタイガー」はべと病・さび病に比較的強い品種ですが、防除はしっかり行ってください。
~栽培時の予防が一番の対策~
7両品種の使い分け 「ホワイトスター」は、特長である早生性、肥大性を生かせる冷涼地の 7~ 8月どりが最適です。また、中間地では年内どり、暖地では 6~ 7月どりの作型にも好適します。
「ホワイトタイガー」は、冷涼地の 9月後半~11月どりの作型をおすすめします。中間地では年内~ 2月どりに好適します。
「ホワイトスター」の適作型
ハウス・トンネル育苗
春まき
秋まき
↑ネギの重要病害の一種、べと病(写真上)と軟腐病(写真下)の被害株。このような病気にかからないよう、栽培による予防と早期発見・適期防除を心掛ける。
「ホワイトタイガー」の適作型
春
ま
き
トンネル・ハウス
※管理技術シリーズは今回が最終回ですが、今後も不定期で掲載を予定しています。