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日臨技九州卒後研修会 第28回血液検査研修会 症例2 独立行政法人 那覇市立病院 医療技術部検査室 天願 聖子

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  • 日臨技九州卒後研修会 第28回血液検査研修会

    症例2

    独立行政法人 那覇市立病院 医療技術部検査室

    天願 聖子

  • 症例

    70歳代、女性

    1ヶ月前より、心窩部不快感を認めていたが、CT検査で器質的病変なし。 両側下顎歯肉腫脹、気分不良を認め、近医受診。

    白血球増加と血小板減少で、紹介された。

  • 検査所見 生化学 TC mg/dl

    AST 28 IU/l

    ALT 15 IU/l

    ALP 251 IU/l

    GGT 20 IU/l

    LDH 324 IU/l

    CHE IU/l

    Fe μg/dl

    TIBC μg/dl

    UIBC μg/dl

    フェリチン ng/ml

    IgG 1170 mg/dl

    IgA 209 mg/dl

    IgM 32 mg/dl

    CRP 2.02 mg/dl

    Na 140 mEq /dl

    K 4.4 mEq /dl

    Cl 104 mEq /dl

    Ca 9.4 mg/dl

    BUN 22.3 mg/dl

    CRE 0.94 mg/dl

    UA 10.6 mg/dl

    AMY IU/l

    TP 7.8 g/dl

    ALB 4.4 g/dl

    TB 0.9 mg/dl

    DB mg/dl

    IDB mg/dl

    GLU 133 mg/dl

  • 検査所見 血液

    WBC 27.6 ×103/μl

    RBC 3.67 ×106/μl

    Hb 11.4 g/dl

    Hct 34.0 %

    MCV 92.6 fl

    MCH 31.1 pg

    MCHC 33.5 %

    RDW 16.9 %

    PLT 57 ×103/μl

    PCT 0.05 %

    PDW 9.4 %

    Ret 1 %

    PT(%) 16.8 %

    PT(INR) 1.39

    APTT(秒) 28.2 sec

    Fib 111.3 mg/dl

    FDP 74.1 μg/ml

    D-ダイマー 23.6 μg/ml

    ・PT延長、Fib低下、FDP、D-ダイマー上昇、 FDP/D-ダイマー比高値 → 線溶亢進型DIC

  • 末梢血液像

    Blast %

    Promyelo %

    Myelo %

    Meta %

    Stab %

    Seg 1 %

    Lymph 9 %

    Mono 1 %

    Eosino %

    Baso %

    Other 89 %ギムザ染色(弱拡大)

  • 末梢血(強拡大)

    クロマチンは繊細、NC比約60-70%、核型不整、アウエル小体(+)

  • 骨髄検査

    ギムザ染色(弱拡大)

    顆粒球系 0.4 %

    赤芽球系 1.6 %

    Plasma cell 0.2 %

    リンパ球 6.8 %

    Other 91 %

    標本 不良 有核細胞数 9.0×104/μl

    造血三系統の細胞は抑制

  • ギムザ染色(強拡大)

  • 細胞形態

    90 %

    80%

    70%

    60%

    50%

    40% N/C比の基準

    (1)細胞の大きさ 小 中 大

    (2)N/C比 <60% 60~80% >80%

    (3)核の形状 整 不整 切れ込みを認める

    (4)クロマチンの性状 繊細網状 顆粒状 粗剛

    (5)核小体 明瞭 不明瞭

    (6)細胞質

    1)好塩基性: 強

    2)顆粒: 微細顆粒を認めるものもみられる

    3)辺縁: 整

    4)その他構造:アウエル小体(+)

  • MPO染色

    陽性率100% 強陽性

  • 考えられる疾患

    白血球増加、芽球様細胞90%以上、

    アウエル小体(+)、MPO染色100%強陽性、

    2つにくびれた核形態

    → 急性骨髄性白血病

    考えられる病型は

    AML M3 < M3 variant

    AML M1 (特にHLA-DR陰性の場合)

    鑑別すべき病型は

    AML(M2)

    AML(単球性白血病)

  • 細胞形態の比較(M1、M3)

    M3 M1 Cup like 本症例

    鉄アレイ状に 近いです

  • 細胞形態の比較(M2、M5)

    M2 M5 本症例

    陽性顆粒が核の上にも

  • 顆粒球系細胞の分化

    骨髄芽球 前骨髄球 骨髄球 後骨髄球 桿状核 好中球

    分葉核 好中球

    骨髄芽球 10~15μm大 NC比は60~80% 核はほぼ中央 核クロマチンは繊細網状

    前骨髄球 15~20μm大 NC比は50~70% 核は偏在 一次顆粒あり

  • 細胞表面マーカー

    CD2 33.6%

    CD13 90.5%

    CD33 99.8%

    CD34 33.7%

    CD14 2.3%

    CD41 2.1%

    GP-A 8.7%

    HLA-DR 7.6%

    微細顆粒型APL(M3v)では、 CD2、CD34の発現を示すことがある

  • 染色体検査

  • 白血病キメラマルチスクリーニング(RT-PCR)

    ・major-bcr/abl 検出せず

    ・minor-bcr/abl 検出せず

    ・PML-RARA 1.8×105 コピー/μgRNA

    ・AML 1MTG8 検出せず

    ・CBFβ-M 検出せず

    ・DEK-KAN 検出せず

    ・NUP98-HOXA9 検出せず

    ・ETV6-AML 検出せず

    ・E2A-PBX1 検出せず

    ・SIL/TAL1 検出せず

    ・MLL-AF4 検出せず

    ・MLL-AF6 検出せず

    ・MLL-AF9 検出せず

    ・MLL-ENL 検出せず

  • 診断

    AML M3 variant /FAB

    特定の遺伝子異常を有する急性骨髄性白血病

    APL: t(15;17)(q22;q21); PML-RARA

    microgranular (hypogranular) types /WHO

  • 急性前骨髄性白血病とDIC

    APL細胞には大量の組織因子(TF)が発現しており、そのため、外因系凝固活性化が一気に進行する。

    APL細胞には、アネキシンⅡが過剰発現している。アネキシンⅡがt-PA、プラスミノゲンと結合するとt-PAの作用が増強し、線溶が活性化する。

    フィブリンだけでなく、フィブリノゲンの分解も進行するため、FDPとD-ダイマーに乖離現象を生じる。

    『しみじみわかる 血栓止血』朝倉英策より

    プラスミノゲン

    促進 t-PA

    プラスミン

    フィブリン分解産物 フィブリン

  • まとめ

    急性前骨髄性白血病(APL)は異常な前骨髄球が増加する白血病であり、FAB分類のAML-M3、M3vに相当する。

    90%以上にt(15;17)(q22;q21);PML;RARA融合遺伝子を認め、ATRAによる分化誘導療法にきわめて良好な反応を示す予後良好な病型である。しかし、線溶亢進によるDICを合併していることが多いため、早期発見が重要である。

    M3 variantは光学的にはほとんど観察できない微細な顆粒が増加しており、AMLの他の病型との鑑別が困難である。

    診断へ導くポイントとして、

    アウエル小体、ファゴット細胞を見つける。

    核のくびれた形態も観察する。

    MPO染色が強陽性、フローサイトで顆粒球系マーカー陽性、HLA-DR陰性の確認をする。