抗菌性尿道留置カテーテルの開発に関する基礎的研究 (第2報...

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441 抗菌性尿道留置カテーテルの開発に関する基礎的研究 (第2報) ―新 しい抗 菌性 カテーテルの抗 菌力 と持続性― 岡山大学泌尿器科(*現 ・川崎 医科大学附属川崎病院泌尿器科) 橋本 英 昭*小 憲昭 門田 晃一 公文 裕巳 クリエー トメディ ック技術研究所 斯波 安達 俊明 金子 佳代 (平成11年12月24日 受付) (平成12年3月7日 受理) Key words: urethral catheter, experimental model, antimicrobial activity, silver citrate, lecithin クエ ン酸銀 レ シ チ ン,液 状 シ リ コ ン を2:2:8で 配 合 した 抗 菌 性 素 材 を 内 腔 面 お よ び 外 表 面 に コ ー テ ィ ン グ した 抗 菌 性 尿 道 カ テ ー テ ル の 有 効 性 とそ の 持 続 性 を 市 販 の 抗 菌 性 尿 道 カ テ ー テ ル と比 較 し た. こ の 新 しい 抗 菌 カ テ ー テ ル は,in vitroで 強 い抗 菌 力 と優 れ た 持 続 性 を 認 め た.臨 床におけるカテーテル 留 置 関 連 感 染 症 の 感 染 経 路 を 再 現 し う る管 内 性 感 染,管 外 性 感 染 実 験 モ デ ル を新 た に 考 案 し,本 抗菌カ テ ー テ ル の 有 効 性 に 関 す る 総 合 的 な 評 価 を 行 っ た.本 抗 菌 カ テ ー テ ル で は 市 販 の 抗 菌 カ テ ー テ ル と比 較 して,管 内性,管 外 性 感 染 モ デ ル の い ず れ に お い て も,抗 菌 効 果 お よ び そ の 持 続 性 に お い て 明 らか に 優 れ て い た. 以 上 よ り,カ テ ー テ ル 留 置 関 連 尿 路 感 染 症 の 予 防 に対 す る 本 カ テ ー テ ル の 有 用 性 が 示 唆 さ れ た. 〔感染症誌 74:441~449, 2000〕 尿道留置カテーテルは排尿障害患者における尿 路 の 確 保 の ほ か に は 尿 路 管 理 の 目 的 で も使 用 さ れ,今 日の 医 療 現 場 で 最 も繁 用 され る治 療 手 技 の ひ とつ で あ る.一 方,米 国 で は 院 内 で発 症 す る感 染症全体(広 義 の 院 内 感 染 症)の40%が 尿路感染 症(UTI)で あ り,そ の80%が 尿路カテーテル留 置 に起 因 した も の で あ る と報 告 され て い る1)2).本 邦 で も蟻 田 ら に よ れ ば,広 義 の 院 内感 染 症 の な か でUTIの 頻度は呼吸器感染症に次いで高 く,そ の う ち の 半 数 以 上 は尿 路 へ の カ テ ー テ ル留 置 に起 因 す る もので あ っ た と報 告 され て い る3).こ の カ テ ー テ ル留 置 に伴 うUTIを 予 防す る 目的 で,様 々 な抗菌カテーテルが開発され本邦でも市販されて いるが,抗 菌 力 な らび に抗 菌 効 果 の持 続 性 とい う 点 で 必 ず し も充 分 とは い え な い4)~6). 我 々 は,第1報 においてクエ ン酸銀 とレシチン を 液 状 シ リ コ ンに 配 合 し,シ リ コ ン シー トに 塗 布 した 新 しい抗 菌 性 素 材 が 抗 菌 力 お よび そ の持 続 性 に優 れ て い る こ と を報 告 した.本 報 で は,こ の新 しい 抗 菌 性 素 材 を 内 腔 面 お よ び外 表 面 に コー テ ィ 別刷 請 求 先:(〒700-8505)岡 山 市 中 山下2-1-80 川崎 医 科大 学 附 属 川崎 病 院泌 尿 器科 橋本 英昭 平 成12年5月20日

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  • 441

    抗菌性尿道留置 カテーテルの開発 に関す る基礎 的研究 (第2報)

    ―新 しい抗 菌性 カテーテルの抗 菌力 と持続性―

    岡山大学泌尿器科(*現 ・川崎医科大学附属川崎病院泌尿器科)

    橋 本 英 昭*小 野 憲 昭 門田 晃 一 公文 裕 巳

    クリエートメディック技術研究所

    斯 波 徹 安達 俊 明 金 子 佳 代

    (平成11年12月24日 受付)

    (平成12年3月7日 受理)

    Key words: urethral catheter, experimental model, antimicrobial activity,

    silver citrate, lecithin

    要 旨

    クエ ン酸銀 レシチ ン,液 状 シ リコ ンを2:2:8で 配 合 した抗 菌性 素材 を内腔 面 お よび外 表面 に コー

    テ ィン グ した抗 菌性尿 道 カテ ー テルの 有効 性 とそ の持続 性 を市販 の抗 菌性 尿 道 カテ ーテ ル と比 較 した.

    この新 しい抗 菌 カ テー テル は,in vitroで 強 い抗 菌 力 と優 れた持 続性 を認 めた.臨 床 にお け る カテー テル

    留 置 関連感染 症 の感染 経路 を再現 しう る管 内性 感染,管 外性 感染 実験 モ デ ル を新 た に考 案 し,本 抗 菌 カ

    テー テルの 有効性 に関す る総 合 的な評 価 を行 った.本 抗 菌 カ テー テル では市 販 の抗 菌 カテ ーテ ル と比 較

    して,管 内性,管 外性 感 染モ デ ルの いず れ におい て も,抗 菌効 果お よびそ の持続 性 にお い て明 らか に優

    れて いた.

    以上 よ り,カ テ ーテ ル留置 関連 尿路 感染 症 の予 防 に対 す る本 カテー テル の有用 性 が示 唆 され た.

    〔感染 症 誌  74:441~449,  2000〕

    序 文

    尿道留置カテーテルは排尿障害患者における尿

    路の確保のほかには尿路管理の 目的で も使用 さ

    れ,今 日の医療現場で最 も繁用 される治療手技の

    ひとつである.一 方,米 国では院内で発症する感

    染症全体(広 義の院内感染症)の40%が 尿路感染

    症(UTI)で あ り,そ の80%が 尿路カテーテル留

    置に起因したものであると報告されている1)2).本

    邦でも蟻田らによれば,広 義の院内感染症のなか

    でUTIの 頻度は呼吸器感染症に次いで高 く,そ の

    うちの半数以上は尿路へのカテーテル留置に起因

    す る もので あった と報告 されて いる3).こ の カ

    テーテル留置に伴 うUTIを 予防す る目的で,様 々

    な抗菌カテーテルが開発され本邦でも市販されて

    いるが,抗 菌力ならびに抗菌効果の持続性 という

    点で必ず しも充分 とはいえない4)~6).

    我 々は,第1報 においてクエ ン酸銀 とレシチン

    を液状シリコンに配合 し,シ リコンシー トに塗布

    した新 しい抗菌性素材が抗菌力お よびその持続性

    に優れていることを報告 した.本 報では,こ の新

    しい抗菌性素材を内腔面および外表面にコーティ

    別刷請求先:(〒700-8505)岡 山市中山下2-1-80

    川崎医科大学附属川崎病 院泌尿器科

    橋本 英昭

    平成12年5月20日

  • 442 橋本 英昭 他

    Fig. 1 Schematic diagram of the experimental model for ascending infection via in-

    traluminal route

    ングした試作カテーテルの抗菌効果とその持続性

    を,新 たに考案 した管外性 ・管内性感染実験モデ

    ルを用いて,市 販の抗菌 カテーテルと比較検討 し

    たので報告する.

    材 料 と方 法

    1. 材 料

    ク エ ン酸 銀,レ シチ ン,液 状 シ リ コ ン を2/2/8

    で 配 合 し,シ リ コ ン カ テ ー テ ル の 内 腔 面 お よ び外

    表 面 に コ ー テ ィ ン グ し た16Fr抗 菌 性 シ リ コ ン カ

    テ ー テ ル(以 下,ク エ ン酸 銀 カ テ ー テ ル)を 用 い

    た.対 照 と して ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロテ イ ン(ユ

    ニ チ カ社 製),シ ルバ ー ル ブ リキ ャ スTM(バ ー ド社

    製),SL-cathTM(Rusch社 製),SSC-cathTM(Rusch

    社 製)の4種 類 の 市 販 カテ ー テ ル(う ち2種 類 は

    国 内未 発 売),な ら び に 通 常 の シ リ コ ンカ テ ー テ ル

    (ク リエ ー トメ デ ィ ッ ク社 製)を 使 用 した.

    2. 溶 出 銀 濃 度 の 測 定

    ク エ ン酸 銀 カ テー テ ル(16F,30cm)に 人 工 尿7)

    を40ml/hrで 流 し,先 端 か ら流 出 した 人 工 尿 中 の

    銀 量 を 原 子 吸 光 分 析 に よ り定 量 した.な お,人 工

    尿 の灌 流 は37℃ で14日 間 行 い,原 子 吸 光 分 析 に

    は 日立 製 作 所 製,偏 光 ゼ ー マ ン原 子 吸 光 分 光 光 度

    計(グ ラ フ ァイ ト炉 原 子 化 法)を 用 い た.

    3. 市 販 の抗 菌 カ テ ー テ ル との 抗 菌 力 お よ び 持

    続 性 の 比 較

    1) 抗 菌 力 の 比 較  (抗菌 力 試 験)

    6種 類 の カ テ ー テ ル を 長 さ10mmに 切 断 し10

    mlの 人 工 尿 に投 入 し た 後,試 験 菌 を 初 期 濃 度 が

    105cfu/mlに な る よ う に接 種 し た.菌 接 種 後,37

    ℃ で 振 盪 処 理 を し な が ら経 時 的 に 試 験 液 を 採 取

    し,そ の 中 の 生 菌 数 を 測 定 した.な お,抗 菌 性 素

    材 の 抗 菌 成 分 の 影 響 を 除 くた め,採 取 した 試 験 液

    は 直 ち に 中 和 希 釈 液(1%Pepton,1%Tween80

    を 含 む5%NaCl溶 液)で10倍 希 釈 し,平 板 希 釈 培

    養 法 に よ り生 菌 数 測 定 を行 っ た.上 記 で得 られ た

    結 果 は生 菌 数 の 対 数 値 を菌 液 添 加 後 の振 盪 時 間 に

    対 して プ ロ ッ ト し,そ の 生 残 曲線 の 傾 き に-1を

    乗 じた 値 を 殺 菌 速 度 と して示 した.な お,試 験 菌

    と してEscherichia coli IFO 13,500株 お よびStaphy-

    lococcus aureus IFO 13,276株 を使 用 した.

    2) 抗 菌 力 の持 続 性 の比 較

    1)で 強 い 抗 菌 力 を 認 め た2種 類 の カ テ ー テ ル を

    長 さ10mmに 切 断 し,10mlの 人 工 尿 に投 入 し た

    後,37℃ で 振 盪 した.連 日新 しい 人 工 尿 と交 換 し

    な が ら,1,5,7,14日 目 に カ テ ー テ ル 片 を 取 り

    出 し た(人 工 尿 処 理).取 り出 し た カ テ ー テ ル 片 に

    感染症学雑誌  第74巻  第5号

  • 抗菌性尿道留置 カテーテルの開発 (第2報) 443

    対 して1)と 同様,抗 菌 力 試験 を行 っ た.な お,試

    験 菌 はE. coli IFO 13,500株 を使 用 した.

    4. 管 内 性 感 染 モ デ ル実 験

    管 内性 感染 モ デ ル の模 式 図 をFig.1に 示 す.実

    験 装 置 は,膀 胱 に相 当す る上 段 の 容 器("膀 胱")と

    採 尿 バ ック に 相 当 す る 下段 の 容 器("採 尿 バ ッ ク")

    と を試 験 カ テ ー テ ル で連 結 し,人 工 尿 が"膀 胱"か

    ら"採 尿 バ ッ ク"に カ テ ー テ ル 内 腔 をつ た っ て 自

    然 に流 れ る よ う に した.試 験 カ テ ー テ ル の 下 端 は

    液 面 に わ ず か に 触 れ る よ う に した."採 尿 バ ック"

    に人 工 尿 を満 た し,試 験 菌 を107cfu/ml接 種 した.

    実 験 装 置 は37℃ の 恒 温 器 中 に 設 置 し,"膀 胱"に

    40ml/hrの 流 速 で 人 工 尿 を 流 し,"採 尿 バ ッ ク"に

    接 種 した 試 験 菌 の"膀 胱"へ の 上 行 の 度 合 い を評

    価 した.な お,表 面 張 力 に よ り"膀 胱"か ら人 工

    尿 が 断 続 的 か つ 一 気 に流 れ 落 ち る現 象 を 防 ぐた め

    に カテ ー テ ル 上端 に 綿 球 を 詰 め た.ま た"膀 胱"が

    極 端 な陰 圧 ま た は 陽 圧 に な ら な い よ う に通 気 孔 を

    も うけ た."採 尿 バ ッ ク"に 菌 接 種3日 後 に試 験 カ

    テ ー テ ル を実 験 モ デ ル よ り外 し,内 腔 を リ ン酸 緩

    衝 液(PBS)で 洗 浄 して 浮 遊 菌 を洗 い 流 した.つ い

    で,全 長32cmの カ テ ー テ ル を4cmず つ に切 断

    し,各 カ テー テ ル の 内 腔 面 に 付 着 した 細 菌 を綿 棒

    で か き と り混 釈 培 養 にて 生 菌 数 を求 め た.

    次 い で,各 抗 菌 カ テ ー テ ル の 抗 菌 力 の 持 続 性 を

    検 討 す る た め に,各 カテ ー テ ル を人 工 尿 を用 い て

    40ml/hrで7日 間灌 流 し た後,同 様 の 管 内 性 感 染

    モ デ ル 実 験 を行 っ た.な お,管 内 性 感 染 モ デ ル 実

    験 は クエ ン酸 銀 カ テ ー テ ル の 比 較 対 照 と して,日

    本 で 市 販 さ れ て い る ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ

    ン,シ ルバ ー ル ブ リ キ ャスTMな らび に シ リ コ ン カ

    テ ー テ ル を 用 い て 行 い,試 験 菌 はE. coli IFO

    13,500株 を使 用 した.

    5. 管外性感染モデル実験

    管外性感染モデルの模式図をFig2に 示す.透

    析膜(透 析用セルロースチューブ,サ イズ8/32)を

    約17cmの 長 さにカットし,一端を結紮した.そ の

    袋状 の透析 膜に約15cmに 切断 した カテーテル

    シャフ ト部を挿入 し,透 析膜 を尿道粘膜内腔面に

    見立てた.カ テーテル下端お よび上端からそれぞ

    れ約1cmの 部分 を軽 く結紮することで試験液の

    Fig. 2 Schematic diagram of the experimental model

    for ascending infections via extraluminal route

    対流による菌の自由な移行が生 じないように形成

    した後,滅 菌を行った.こ の系では透析膜 を使用

    することにより,栄 養分は常に供給され,低 分子

    の代謝産物や抗菌成分などは排出されるが,菌 体

    は透析膜内にとどまることになる.さ らに,人 工

    尿 に細菌の増殖が目視で識別できるように塩化 ト

    リ フェ ニ ル テ トラゾ リ ウム(Triphenyltetra-

    zolium Chloride: TTC)を25ppm添 加 した試験

    液を,24mmφ ×200mmの 試験管に40mlず つ分注

    した.TTCは 菌体内に取 り込まれて還元 されると

    赤色を呈するために,医 療材料の細菌付着性の評

    価 などに用い られている8).

    カテーテル内腔部上端よ り毎 日107cfu/mlの 菌

    液を50μl接 種 し,試 験管内の培養液に静かに浸漬

    した.つ まり,菌 はカテーテル内腔をつたって最

    下端まで達 した後,カ テーテル管外 と透析膜の間

    を上行することになる.主 にカテーテルより溶出

    した抗菌成分の影響 を除くため,培 養液は毎 日交

    換 した.こ の状態で37℃ の恒温器内で静置培養を

    行い,菌 のカテーテル表面での上方への増殖 を

    TTCと の反応による赤変部の長さで14日 間測定

    した.な お,管 外性感染モデル実験はクエ ン酸銀

    カテーテル,ウ ロ トピックTMAgプ ロテイン,シ ル

    平成12年5月20日

  • 444 橋本 英昭 他

    Fig . 3 Release of silver from silver citrate and

    lecithin-coated catheter, as measured by atomic ab-

    sorption analysis over a 14 day period

    バ ー ル ブ リ キ ャ スTM,シ リ コ ン カ テ ー テ ル を 用 い

    て 行 い,試 験 菌 はE. coli IFO 13,500株 お よ びS.

    aureus IFO 13,276株 を使 用 した.

    成 績

    1. 溶 出 銀 濃度 の 測 定

    クエ ン酸 銀 カ テ ー テ ル か らの 銀 の 溶 出濃 度 は人

    工 尿 灌 流 開 始 直 後 は600~800ppbで あ っ た が,経

    時 的 に徐 々 に 低 下 し,3日 後 に は約400ppb,7日 後

    に約200ppbと な り,14日 後 に は約50ppbと な っ

    た(Fig.3).

    2. 市 販 の抗 菌 カ テ ー テ ル と の 抗 菌 力 お よ び 持

    続 性 の 比 較

    1) 抗 菌 力 の 比 較

    E. coliに 対 す る 抗 菌 力 はSL-cathTMが 最 も 強

    く,ク エ ン酸 銀 カ テ ー テ ル は こ れ に次 ぐ抗 菌 力 を

    示 した.ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ン,シ ルバ ー

    ル ブ リキ ャ スTM,SSC-cathTMは こ の 実 験 条 件 で は

    ま っ た く抗 菌 力 を示 さ な か っ た(Fig.4).

    S.aureusに 対 す る 抗 菌 力 はE. coliと 同 様,SL-

    cathTMが 最 も強 く,次 い で ク エ ン酸 銀 カ テ ー テ

    ル,シ ルバ ー ル ブ リキ ャスTMの 順 で あ っ た.ウ ロ

    トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ン,SSC-cathTMの 抗 菌 力

    は,シ リ コ ン カ テ ー テ ル と同 等 で あ っ た(Fig.4).

    2) 抗 菌 力 の持 続 性 の 比 較

    1)の 抗 菌 力 試 験 でE. coli, S.aureusと も に 強 い

    Fig. 4 Comparison of anti-bacterial activity against

    E. coli and S. aureus using a 10-mm piece of each ma-

    terial

    Fig. 5 Comparison of anti-bacterial activity against

    E. coli between two catheters after irrigation for 1

    to 14 days

    抗菌力を認めたSL-cathTM,ク エ ン酸銀 カテーテ

    ルに対 して人工尿処理後の抗菌力試験を行った.

    クエ ン酸銀 カテーテルでは時間の経過 とともに殺

    菌速度は低下するものの7日 目でもある程度の抗

    菌力が認められた.こ れに対 して未処理では強力

    な抗菌力を示 したSL-cathTMは,1日 の人工尿処理

    で抗菌力が消失 した(Fig.5).

    3. 管内性感染モデル実験

    クエン酸銀 カテーテル,ウ ロ トピックTMAgプ ロ

    テイン,シ ルバ ールブ リキャスTM,シ リコンカ

    テーテルに対する管内性感染モデルでの実験結果

    感染症学雑誌  第74巻  第5号

  • 抗菌性尿 道留置 カテーテルの開発 (第2報) 445

    Fig. 6 Comparison of ascending distances via intralu-

    minal route among 4 catheters studies. E. coli IFO

    13,500 was used as a test organism.

    Fig. 7 Comparison of ascending distances via intralu-

    minal route among 4 catheters after 7-day pre-

    irrigation with artificial urine. E. coli IFO 13,500 was

    used as a test organism.

    をFig.6に 示 す.X軸 の0~4cmが"採 尿 バ ッ ク"

    側 を示 し,28~32cmが"膀 胱"側 を 示 す.Y軸 は

    カテ ー テ ル 片4cmあ た りの 付 着 菌 数 の 対 数 値 を

    示 した.シ リ コ ンカ テ ー テ ル で は,3日 後 に は 管 長

    32cmま でE. coliが 人 工 尿 の 流 れ に逆 ら っ て 上 行

    して付 着 して い るの に対 して,ウ ロ トピ ックTMAg

    プ ロ テ イ ンで は8~12cmま で,シ ル バ ー ル ブ リ

    キ ャスTMで は12~16cmま で 上 行 して い た.し か

    Fig. 8 Relationship between ascending distances via extraluminal route and days of incubation. E. coli IFO 13,500(A)and S. aureus IFO 13,276(B)were

    used as test organisms.

    A

    B

    し,ク エ ン酸 銀 カ テ ー テ ル で は0~4cmの 部 位 に

    菌 の 付 着 を認 め る の み で あ っ た.

    抗 菌 力 の 持 続 性 の 検 討 で は,人 工 尿 の7日 間 の

    前 処 理 に よ る 抗 菌 力 の 低 下 に よ り,ウ ロ ト ピ ッ

    クTMAgプ ロ テ イ ンで は24~28cmま で,シ ルバ ー

    ル ブ リ キ ャ スTMで は 管 長32cmま でE. coliの 上

    平成12年5月20日

  • 446 橋本 英昭 他

    行 に よ る付 着 を認 め た の に対 して,ク エ ン酸 銀 カ

    テ ー テ ル で は4~8cmの 部 位 ま で の 上 行 に と ど

    ま っ た だ け で な く,付 着 菌 数 も極 め て少 数 で あ っ

    た(Fig.7).

    4. 管 外 性 感 染 モ デ ル 実 験

    E. coliお よ びS. aureusに 対 す る ク エ ン 酸 銀 カ

    テ ー テ ル,ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ン,シ ル

    バ ー ル ブ リ キ ャスTM,シ リ コ ン カ テ ー テ ル の 管 外

    性 感 染 モ デ ル実 験 の 結 果 をFig.8A,Bに 示 す.E.

    coliに 対 して は,ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ン,

    ル ブ リ キ ャスTMで は シ リ コ ン カ テ ー テ ル よ りは

    や や 優 れ て い る もの の,3日 後 に は 菌 は カ テ ー テ

    ル の 下 端 よ り11cmま で 増 殖 を認 め た.し か し,ク

    エ ン酸 銀 カ テ ー テ ル で は,14日 後 に も0 .5cmま で

    増 殖 を認 め る の み で あ っ た(Fig.8A).ま た,S.

    aureusに 対 して も3日 後 に ウ ロ トピ ッ クTMAgプ

    ロ テ イ ン で11cmま で,ル ブ リ キ ャ スTMで12cm

    まで 菌 の 上 行 を 認 め た の に 対 して,ク エ ン酸 銀 カ

    テ ー テ ル で は14日 後 に も菌 の 上 行 を 全 く認 め な

    か っ た(Fig.8B).

    考 察

    一般に尿道カテーテルが留置 された症例ではグ

    ラム陰性桿菌を主体 とした複雑性尿路感染症が必

    発する.こ のカテーテル留置尿路感染症は化学療

    法に対する反応性が不良であるだけでなく,院 内

    感染の原因となることから臨床的に課題の多い感

    染症である.

    尿道カテーテル留置に伴 う感染症の発症 を予防

    す るために,種 々の新 しい抗菌性素材,抗 菌性 カ

    テーテルが開発されている.な かでも,銀 イオ ン

    の抗菌作用 を応用 した抗菌性 カテーテル として金

    属銀4)9)10),プロテイ ン銀5)6),酸化 銀11)12)を配合 し

    た抗菌性カテーテルが実際に使用されている.仲

    田ら4)はカテーテル長期留置例においてシルバー

    ルブ リキ ャスTMと シリコンカテーテルの比較 を

    行い,カ テーテル表面の走査電子顕微鏡像ではシ

    ルバールブ リキ ャスTMで 細菌の付着が少 なかっ

    た ものの,細 菌尿の発生頻度は変わらなかったと

    報告 している.一 方,Liedbergら9)は シルバールブ

    リキャスTMと テフロンカテーテルをそれぞれ60

    症例に6日 間留置 したところ,細 菌尿の発生率が

    シル バ ー ル ブ リキ ャスTM留 置 群 で6例(10%)で

    あ り,テ フ ロ ンカ テ ー テ ル群 の22例(37%)と 比

    較 し て有 意 に低 率 で あ っ た と報 告 して い る.ま た,

    同 様 にLiedbergら10)は90症 例 を対 象 と して,シ

    ル バ ー ル ブ リ キ ャ スTM,親 水 性 素 材 の み で コ ー

    テ ィ ング した カ テ ー テ ル,何 も コ ー テ ィ ン グ して

    い ない カ テ ー テ ル の3種 を5日 以 上 留 置 した 際 の

    細 菌 尿 の発 生 率 は,そ れ ぞ れ10%,33%,50%で

    シ ル バ ー ル ブ リキ ャ スTMで 最 も低 か っ た と報 告

    して い る.一 方,小 西 ら5)はウ ロ トピ ックTMAgプ ロ

    テ イ ン と シ リ コ ンカ テ ー テ ル を4週 間留 置 して,

    そ の 表 面 を 走 査 電 子 顕 微 鏡 で比 較 観 察 し,シ リ コ

    ン カ テ ー テ ル で は全 例 に細 菌 の付 着 を認 め た が,

    ウ ロ トピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ン で は認 め な か っ た

    と報 告 して い る.し か し,竹 内 ら6)は同様 に ウ ロ ト

    ピ ッ クTMAgプ ロ テ イ ンを 天 然 ゴ ム カ テ ー テ ル と

    比 較 し,無 菌 尿 持 続 期 間 が4.0日 で あ り,天 然 ゴ ム

    カ テ ー テ ル の場 合 の4.6日 と変 わ ら な か っ た と報

    告 して お り,成 績 は 必 ず し も一 定 して い な い.ま

    た,酸 化 銀 を配 合 した 抗 菌 性 カ テ ー テ ル の 報 告 で

    は,Johnsonら11)は482症 例 に 対 し て 酸 化 銀 コー

    テ ィ ン グ カ テ ー テ ル と シ リコ ン カ テ ー テ ル を7日

    間 留 置 し比 較 し た と こ ろ全 体 で のUTIの 発 症 率

    は変 わ らな か っ たが,唯 一,抗 菌 薬 の 投 与 を受 け

    て い ない 女 性 の グ ル ー プ で の み,UTIの 発 症 率 が

    シ リ コ ン カ テ ー テ ル 群 の19%に 対 して,酸 化 銀

    コ ー テ ィ ング カ テ ー テ ル 群 で0%と 有 意 に低 率 で

    あ っ た と報 告 して い る.し か し,Rileyら12)は1,309

    症 例 に 対 して 同 様 に酸 化 銀 コ ー テ ィ ン グ カ テ ー テ

    ル と シ リ コ ンカ テ ー テ ル の 比 較 を行 っ た とこ ろ,

    細 菌 尿 の 発 症 率 が 酸 化 銀 コー テ ィ ン グ カ テ ー テ ル

    で11.4%,シ リ コ ンカ テ ー テ ル群 で12.9%と 同 等

    で あ っ た と報 告 して い る.以 上 の 臨床 試 験 の 結 果

    か ら は,金 属 銀 を 配 合 した抗 菌 カ テ ー テ ル が 最 も

    優 れ て い る よ う に 思 わ れ,Saintら13)のmeta-

    analysisで も,金 属 銀 を 配 合 した 抗 菌 カ テ ー テ ル

    の 有 用 性 が 報 告 され て い る.し か し,こ れ らの 臨

    床 試 験 で は 個 々 の報 告 にお い て,性 差,留 置 期 間,

    抗 菌 剤 の使 用 の 有 無,尿 路 感 染 症 の 診 断基 準 な ど

    が 異 な っ て お り,単 純 に は比 較 で き な い もの と考

    身 られ る。

    感染症学雑誌 第74巻 第5号

  • 抗菌性尿道留置 カテーテルの開発 (第2報) 447

    我々は新 しい抗菌性 カテーテルに用いる抗菌性

    コーティング素材を開発して第一報で報告 した.

    この抗菌性素材は,抗 菌剤 として銀化合物の中で

    抗菌力 と持続力に優れ,安 全性の高いクエ ン酸銀

    と,さ らに界面活性剤の中で細菌付着抑制効果の

    高いレシチンを配合 している.今 回は,こ の新 し

    い抗菌性素材を内腔面および外表面に使用 したク

    エン酸銀カテーテルの抗菌効果と持続性 を,抗 菌

    加工を施したプラスチック類の抗菌力の評価に用

    いられる侵漬法15)に準拠 した抗菌力試験 を行い,

    金属銀 を配合 したシルバールブリキャスTM(バ ー

    ド社 製),SL-cathTM(Rusch社 製),SSC-cathTM

    (Rusch社 製)お よびプロテイン銀を配合 したウロ

    トピックTMAgプ ロテイン(ユ ニチカ社製)と 比較

    した.そ の結果,ク エ ン酸銀 カテー テルはSL-

    cathTMに 次 ぐ抗菌力を認めた.さ らに,抗 菌力の

    持続性 とい う点では,ク エ ン酸銀 カテーテルは

    SL-cathTMよ りはるかに優れていた.ク エン酸銀カ

    テーテルに限らず銀化合物を配合 した抗菌カテー

    テルでは,通 常その抗菌効果はカテーテル表面よ

    り溶出する銀 イオンの作用に依存すると考えられ

    ている.ク エン酸銀カテーテルより溶出する銀濃

    度を,実 際のカテーテル留置 と同様の条件で測定

    したところ,溶 出銀濃度 は人工尿灌流開始直後は

    600~800ppbで あったが,徐 々に低下 して,7日 後

    に約200ppb,14日 後には約50ppbと なった.銀

    の殺菌作用 として,500ppbの 濃度 で106/mlの 細

    菌が5分 以内に死滅するとされてお り15),14日 後

    の50ppbは 必ず しも高 くないかも知れない.し か

    し,抗 菌力試験の結果得 られた殺菌速度や抗菌力

    の持続性か ら考えると,他 の抗菌カテーテルと比

    較した場合,極 めて高いレベルと考えられ,現 時

    点では最高 レベルの徐放性 を示す抗菌カテーテル

    と考えられる.問 題はこのレベルでの抗菌力が現

    実的な感染予防につながるか否かであろう.

    実際のカテーテル留置複雑性尿路感染症の感染

    経路を考えた場合,感 染経路は管内性感染 と管外

    性感染に分けられる1)16).管内性の感染経路は,細

    菌がカテーテルと導尿チューブとの接続部や採尿

    バ ックからカテーテル内腔を上行して膀胱内に到

    達 し,管 外性の感染経路では,カ テーテル挿入部

    か らカテーテル表面 と尿道粘膜との間を細菌が上

    行する.こ の管内性,管 外性感染に対するクエン

    酸銀 カテーテルの抗菌効果を評価するために管内

    性,管 外性感染実験モデルを考案 し,日 本で市販

    されている抗菌カテーテルであるウロ トピックTM

    Agプ ロテイン,シ ルバールブリキャスTMお よび

    対照としてシリコンカテーテルと比較 した.今 回

    考案 した管内性 ・管外性感染実験モデルは,実 際

    に管内性,管 外性感染 をsimulateで きる実験系で

    あ り,in vitroで簡便にカテーテル留置感染症にお

    ける感染経路 を再現 で きるだけでな く,抗 菌カ

    テーテルでの経路別の細菌付着 とその上行阻止効

    果が検討可能であ り,抗 菌カテーテルの評価系 と

    して有用である.

    これまでに報告されている管内性 ・管外性感染

    モデル実験 としては,望 月ら17)18)がクロルヘキシジ

    ンを徐放する抗菌性尿道カテーテルの開発におい

    て,管 内性 ・管外性感染モデルを作成 し,カ テー

    テルの抗菌力 を評価 している.望 月らの管内性感

    染モデルは,約20度 の傾斜角度をもつ斜面上に固

    定 した試験 カテー テルに,37℃ 下 に下方 よ り

    1,000ml/dayの 流量で培 地 としてTripticase soy

    brothを 流 し,カ テーテル出口部に前培養 した105

    cells/mlの 濃度 のE. coliを 毎 日100~200μl接 種

    し,カ テーテル入口部の上流に設けられた膀胱モ

    デルに何 日目に逆行性感染 を起こすかにより判定

    するというものである.こ の結果,コ ントロール

    としての抗菌剤 を含 まない通常 カテーテルが9.5

    日で膀胱モデルまで逆行性感染を起こしたに対 し

    て,ク ロルヘキシジン徐放性カテーテルでは30.7

    日で感染が認められたとしている.こ の望月 らの

    管内性感染モデルと,今 回我々の考案 したモデル

    を比較 してみる と,望 月 らのモデルの方が より

    simpleで あるが,こ れは,望 月らのモデルでは試

    験カテーテルの下流にポンプを設置 し培養液を流

    しているのに対 して,我 々のモデルでは"膀 胱"の

    上流にポ ンプを設置 し"膀 胱"に 流れ込んだ培養

    液が,"採 尿バ ック"に カテーテル内腔 をつたって

    自然に流れるようにしているためである.ま た,

    望月らのモデルではコン トロールであるカテーテ

    ルにおいて膀胱モデルまで逆行性感染 を起 こすの

    平成12年5月20日

  • 448 橋本 英昭 他

    に9.5日 かかっているのに対 して,我 々のモデル

    では,試 験菌接種3日 後 にコントロールであるシ

    リコンカテーテル全長に細菌の上行による付着 を

    認めている.こ れは,望 月 らのモデルではカテー

    テル出口部に1日1回,菌 を接種 しているのに対

    して,我 々のモデルでは,"採 尿バ ック"内 に菌 を

    接種するためカテーテル端は常に相当数の菌に接

    していることになり,こ の菌の接種方法の違いに

    よるのであろう.し かし,管 内性感染はカテーテ

    ル留置後,比 較的早期に発症 し,Nickelら のラッ

    トを用いたカテーテル留置感染モデル実験で も,

    採尿バ ックへの試験菌接種後32~48時 間で細菌

    尿を認めた と報告 してお り16),我々のモデルの方

    がより実際の管内性感染を再現 しているのではな

    いかと思われる.今 回の管内性感染モデル実験の

    結果,ウ ロ トピックTMAgプ ロテイン,シ ルバール

    ブリキャスTMで は細菌の上行 はある程度阻止 さ

    れるが,付 着菌量は比較的多 く,人 工尿 を7日 間

    灌流 した後には抗菌力は減弱 し,シ リコンカテー

    テルと同等になった.し か し,ク エ ン酸銀カテー

    テルでは,細 菌の上行距離,付 着菌量 ともにわず

    かであ り,人 工尿の7日 間の灌流後にも,充 分な

    効果を認め,管 内性感染の発症予防において優れ

    ていると考えられた.

    次に,管 外性感染モデルであるが,望 月 らのモ

    デルはカテーテル外径 とほぼ等 しい内径の塩 ビ

    チューブ内に,尿 道粘膜モデルとしての超吸水性

    のカルボキシメチルセルロース繊維を外周部に巻

    き付けた試験カテーテルを収納 し,そ のわずかの

    間隙に培養液 としてTripticase soy brothを 満た

    し,前 記管内性感染モデルと同様にカテーテル出

    口部に細菌を接種 し,菌 がカテーテル入口部に設

    けられた膀胱モデルに何 日目に到達するかにより

    判定するものである.こ のモデルを使用 し,通 常

    のカテーテルとクロルヘキシジン徐放性 カテーテ

    ルを比較 した ところ,菌 の移動速度が通常の カ

    テーテルでは2.5cm/日 であったのに対 して,ク ロ

    ルヘキシジン徐放性 カテーテルでは0.6mg/日 で

    あったと報告 している.わ れわれのモデルは,試

    験カテーテルを透析膜で覆い,こ れを培養液で満

    た した試験管に浸すことにより菌に栄養分を与え

    るとともに,培 養液を毎 日交換することで,カ テー

    テルより溶出 した抗菌成分の影響を除去 した.さ

    らに,TTC(Triphenyltetrazolium Chloride)を 添

    加することで,そ の赤色への変化により,菌 の上

    行する程度をより可視的に観察で きるため望月 ら

    のモデルを改良 したもの と言 える.一 般 に,管 外

    性感染はカテーテル留置後,一 定期間を経過 した

    場合の感染経路 として重要である.こ のことは,

    正常の尿道定着菌(常 在菌)が 通常グラム陽性球

    菌であるのに対 して,留 置期間の長期化 につれて

    グラム陰性桿菌が尿道への定着菌の優位菌になる

    という報告19)20)からも理解できる.つ まり,管 外性

    感染を防止するためには,抗 菌効果の持続力が重

    要となって くる.し か し,今 回の管外性モデル実

    、験においては,ウ ロ トピックTMAgプ ロテイン,シ

    ルバールブリキャスTMは それぞれプロテイ ン銀,

    金属銀を内外面にダブルコーティングしているに

    もかかわらず,実 験開始3日 後には細菌の上行を

    認め,シ リコンカテーテルとほとんど同等であっ

    た.こ れに対 してクエン酸銀カテーテルはE. coli

    に対 しては実験開始14日 後 にも細菌の上行はわ

    ずかであ り,S. aureusで は細菌の上行は全 く認め

    ず,カ テーテル留置後,一 定期間を経過した後に

    問題 となって くる管外性感染 に対 しても有効であ

    ると思われた.

    以上 より,本 クエン酸銀カテーテルはカテーテ

    ル関連尿路感染症において管内性お よび管外性の

    細菌の上行を阻止することにより,そ の発症予防

    に有用であると思われる.

    文 献

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    Basic Study on Anti-bacterial Urethral Catheter

    II. Potency of a New Anti-bacterial Catheter and Its Durability in Experimental Models

    Hideaki HASHIMOTO, Noriaki ONO, Koichi MONDEN&Hiromi KUMON

    Department of Urology, Okayama University School of Medicine

    Tohru SHIBA, Toshiaki ADACHI&Kayo KANEKO

    Create Medic, Technical Research Laboratory

    The potency and effectiveness of an anti-bacterial catheter coated with a mixture of silver cit-rate, soybean lecithin and liquid silicon at the ratio of 2:2:8 were compared withthose of commer-cially available anti-bacterial and conventional urethral catheters. This new anti-bacterial catheter showed a strong activity and excellent durability in ordinary in vitro experimental studies. In the pre-sent series we have developed new in vitro experimental models for the evaluation of anti-bacterial catheters in inhibiting bacterial ascent via intraluminal or extraluminal route. The characteristic fea-tures of the silver citrate/lecithin catheter, namely strong activity and excellent durability, were con-firmed using these new models that mimic urinary catheter-associated clinical infections.

    平成12年5月20日