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アルク 英語教育実態レポート 2014 ―スピーキングテストと学習アドバイス業務を中心に― 2014 年3月

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Page 1: アルク 英語教育実態レポート · 2 本レポートの概要 1. tsst とtoeicⓇテストの相関をみると、相関係数r = .68 で「中程度の相関がある」が、

アルク

英語教育実態レポート

2014

―スピーキングテストと学習アドバイス業務を中心に―

2014年3月

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はじめに

(株)アルクは 1969年の創業以来、月刊『English Journal』「1000時間ヒアリングマラソ

ン」など様々な英語学習教材を開発してきました。1997年からは対面インタビュー形式の英語

スピーキング能力測定試験「スタンダード・スピーキング・テスト(Standard Speaking Test:

SST)」、2004年からは SSTで積み上げた知見を生かした「テレフォン・スタンダード・スピー

キング・テスト(Telephone Standard Speaking Test: TSST)」を開始し、学習成果を検証する

サービスを始めました。2005年には「英語学習アドバイザー資格認定制度(English Study

Advisors’ Certificate: ESAC)」を発足させ、学習者が自律的に学習を進められるよう助言する

学習支援サービスも充実させてきました。

近年、英語のスピーキング能力測定への関心が高まってきていることを踏まえ、ここに弊社が

調査した日本人の英語スピーキング能力の実態を公表することにいたしました。特に、英語スピ

ーキング能力に関して、中学生、高校生、大学生、社会人までを、9段階で能力の分布を示した

資料は類例がないと思われます。

合わせて、ESAC資格を持った人材を活用いただいている大学の事例もご紹介します。多様

化した学習者に充実した教育サービスを提供するための様々な取り組みもまた、今の日本の教育

現場の実態を反映していると考えるからです。

弊社が調査・公表していくレポートが英語教育関連各位の参考になれば幸いです。

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◆本レポートの概要◆

1. TSSTと TOEICⓇテストの相関をみると、相関係数 r = .68 で「中程度の相関がある」が、

2つの評価結果のばらつきの度合いが大きい。

2. スピーキング能力の分布のピークは、中学生から社会人まで、TSSTレベル2(丸暗記した

決り文句だけ口にできる)からレベル4(身近な話題についてのみ簡単な英語を使って言

える)へと移行している。

3. 大学生、社会人でもレベル4が分布のピークになっている。話す能力がレベル4では「英

語を使って仕事をしていく」のは難しい。

4. 大学に常駐する英語学習アドバイザーを利用する学生数、利用頻度、それらの月ごとの変

動は、大学によって大きく異なる。それは、学内 Eラーニング施設の利用促進、留学希望

者の支援など、アドバイザーを活用する大学側の姿勢を反映したものである。

5. 学習アドバイザーの初回利用者と複数回利用者の割合がほぼ同じ大学が多い一方、初回利

用者または複数回利用者の割合が圧倒的に高い大学もある。「学習相談」の反復利用を促す

ことで、学生に「学習習慣」をつけさせ継続学習を促したい大学側の姿勢を反映したもの

である。

◆目次◆

1 TSST

1.1 TSSTの概要 p.3

1.2 TSSTの評価方法 p.3

1.3 TSSTの評価基準と9つのレベル p.4

1.4 TSSTと TOEICⓇテストとの関係 p.5

1.5 TSSTのレベル分布――全体 p.6

1.6 TSSTのレベル分布――社会人 p.7

1.7 TSSTのレベル分布――大学生 p.11

1.8 参考:SSTのレベル分布――中学・高校生 p.14

1.9 TSST:まとめ p.17

2 ESAC

2.1 ESAC資格とは p.18

2.2 学習アドバイスの目的 p.19

2.3 学習支援活動の内容 p.19

2.4 7大学における ESACの事例 p.22

2.5 学年によるアドバイザー利用件数の違い p.24

2.6 リピーターとなる相談者 p.28

2.7 相談内容の分類、内訳、月別変動 p.29

2.8 ESAC:まとめ p.33

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1 TSST

TSST(Telephone Standard Speaking Test)は、電話を使った英語スピーキング能力試験で

ある。1997年から始まった対面インタビュー型テスト SST(Standard Speaking Test)の実績

と経験からアルクが独自に開発し、2004年から運用を開始した。法人団体受験を中心に利用が

伸び、SSTと合わせた受験者数は 2014年2月時点で累計7万件を超えるまでになっている。

1.1 TSSTの概要

1. 固定電話、携帯電話を利用して受験する。

2. 受験期間中は 24時間受験が可能。

3. 受験時間は約 15分。

4. 高校生以上の受験者が対象。

5. 質問項目は受験者ごとにデータベースからランダムに抽出され、全 10問が出題される。

6. 10の質問は、身の回りの具体的事柄につて述べたり、何かの手順を説明したりするなど、

難易度の異なるもので構成されている。

7. 質問音声は日本語・英語で流れる。質問の英語が聞き取れないので回答できないことを防

ぐため。

8. 1問の回答時間は 45秒。既定時間が経過後、次の質問が自動的に流れる。

9. 録音された回答音声を3人の評価官が独立して聞いて評価した後、コンピューター処理し

てひとつの評価を決定する。

10. 原則的に、受験期間終了後、約1週間で結果を Web上で公開。

1.2 TSSTの評価方法

TSSTは以下の4つの評価基準に基づいて「英語を使って何ができるか」を評価する。

評価者は上記基準に基づき、発話全体を見渡して評価する(包括評価 holistic rating と言う)。

言葉を使って何ができるか

= 総合的タスク・機能

単語・句・文・段落をどのように使っているか

=テクストの型

聞き手にどれくらい正確に理解されるか

=正確さ(文法、語彙、発音、流暢さ)

どのような内容、状況について話せるか

=内容範囲・コンテクスト

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1.3 TSSTの評価基準と9つのレベル

Level

Global Functions

英語を使って できるタスク

Accuracy (grammar, pronunciation, fluency, etc.) 正確さ(文法、

発音、流暢さなど)

Context/Content

対応できる 状況/話題

Text Type

使用できる 文章の構造

参考

職場や生活の場で できること

時制を使いこなし、

詳細な描写、比較、

説明ができる。複雑

な事態に対応でき

る。

文法には小さな誤りが時に

あるが、意思疎通の妨げに

はならない。母語話者に近

い発音。母語話者なみの流

暢さ。

個人的あるいは一

般的な話題につい

て具体的に話せる。

パラグラフを使

って論理的なま

とまりのある話

ができる。

海外駐在で仕事をする

/ネイティブスピーカ

ーと時事問題ついて議

論する/人前でスピー

チをする。

詳細な描写、比較、

説明がかなりでき

る。複雑な事態にあ

る程度対応できる。

複雑な構文では時に大きな

誤りがあるが、簡単な構文

では殆ど誤りはない。日本

語的発音が混じることもあ

るが、かなり流暢。

殆どの個人的ある

いは一般的な話題

について具体的に

話せることが多い。

複雑な構文を使

って話ができる。

パラグラフを使

うこともある。

海外出張で仕事をする

/問題があった時に解

決策を提案する/自分

の業務について詳しく

説明する。

Level 6 と同じ。 基本的には Level 6 と同じ

だが、文法的な正確さや発

音の良さの点でより優れて

いることがある。

Level 6 と同じ。 基 本 的 に は

Level 6 と同じ

だが、時にはより

優れた構文の構

成力がある。

海外出張で困らない/

商品やサービスの問題

点を指摘し、苦情を言う

/商品やサービスの問

題点を指摘し、苦情を言

う。

簡単な質問ができ、

答えられる。社会生

活の維持に必要な

対話ができる。

複雑な構文ではよく大きな

誤りがあるが、簡単な構文

では誤りは少ない。日本語

的発音が多いが、時には流

暢である。

主に自分自身と身

近な出来事に関す

る話題について話

せる。

センテンスを使

って話すことが

でき、複雑な構文

を使うこともあ

る。

海外出張で困らない/

商品やサービスの問題

点を指摘し、苦情を言う

/商品やサービスの問

題点を指摘し、苦情を言

う。

Level 4と同じ。 基本的には Level 4 と同じ

だが、文法的な正確さや発

音の良さの点でより優れて

いることがある。

Level 4と同じ。 基 本 的 に は

Level 4と同じだ

が、時にはより優

れた構文の構成

力がある。

自分の業種や業務につ

いて簡単に概要を説明

する/入手したい情報

を得るために質問する

/道案内をする。

社会生活の維持に

必要な受け答えが

何とかできる。

複雑な構文では頻繁に大き

な誤りがあり、簡単な構文

でもたまにある。日本語的

発音と遅いスピードのため

わかりにくいことがある。

主に自分自身と身

近な出来事に関す

る話題について何

とか話せる。

センテンスを使

って話せるが、単

純な構文が殆ど

である。

自分の業種や業務につ

いて簡単に概要を説明

する/入手したい情報

を得るために質問する

/道案内をする。

サバイバルに必要

な受け答えもかな

りできるが、暗記し

た表現が多い。

簡単な構文でも大きな誤り

が時々ある。強い日本語的

発音と繰り返しや長い沈黙

のため母語話者にはわから

ないことがある。

主に自分自身と身

近な出来事に関す

る話題について話

せることが多い。

センテンスを使

って話すことも

あるが、句や未完

のセンテンスが

多い。

簡単な自己紹介をする

/レストランで食事を

注文する/道に迷った

時に人に助けを求める。

暗記した表現が使

える。物事を列挙す

ることができる。

簡単な構文でも大きな誤り

がよくある。強い日本語的

発音と繰り返しや長い沈黙

のため母語話者にはわから

ないことが多い。

日常生活の話題に

ついて断片的に話

せる。

単語や句が中心

で、センテンスが

混じる。

決り文句の挨拶を交わ

す/食べ物や身近なこ

とについての好みを表

す。

暗記した限られた

表現が使える。物事

を簡単に列挙する

ことができる。

大きな誤りが簡単な構文で

も頻繁にある。強い日本語

的発音と繰り返しや長い沈

黙のため母語話者にはたい

ていわからない。

日常生活の話題に

ついて非常に断片

的に話せる。

語や句が殆どを

占める。

挨拶されたら"Hello"や

"Hi"と返す/感謝を示す

ために"Thank you"と言

うことができる。

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1.4 TSSTと TOEICⓇテストとの関係

2004年から 2013年までの TSST受験者の内、TOEIC スコア(リスニング+リーディング)

の分かる大学生以上 16,188人のデータとその TSST レベルを以下にまとめた。 TOEICスコア

は自己申告によるものである。

◆グラフから分かること◆

1. TSSTを基準にしてみると、TOEICスコアが大きくばらついている。TSSTレベル3(=

誤解なく意味の伝わるセンテンスを作って話すには困難が伴うレベル)では、TOEICスコ

アは 200点~900点くらいまでの幅がある。

2. TOEICを基準に見てみると、例えば 800点の人は TSSTレベル2(暗記した決り文句など

が言える)~レベル8(海外出張、駐在ができる)まで幅がある。

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9

TOEIC平均 N/A 368 513 637 729 815 871 910 947

平均 標準偏差 相関係数

TSST 4.23 1.22

TOEIC 643 167.620.68

y = 93.402x + 248.64R² = .4655r= .68

N=16,188

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1 2 3 4 5 6 7 8 9

TOEIC

Ⓡテ

スト

TSST

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企業83%

大学

9%

その他8%

受験者内訳

企業 大学 その他 計

受験件数 13,423 1,411 1,354 16,188

割合 83% 9% 8% 100.0%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

TSSTレベル分布 割合

TSST

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

企業団体受験者数 0 569 3,423 5,202 2,825 879 312 133 80 13,423

割合 0.0% 4.2% 25.5% 38.8% 21.0% 6.5% 2.3% 1.0% 0.6% 100.0%

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

大学団体受験者数 0 17 333 646 284 82 33 9 7 1,411

割合 0.0% 1.2% 23.6% 45.8% 20.1% 5.8% 2.3% 0.6% 0.5% 100%

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

その他受験者数 0 3 122 389 369 244 131 62 34 1,354

割合 0.0% 0.2% 9.0% 28.7% 27.3% 18.0% 9.7% 4.6% 2.5% 100.0%

3. 調査対象となった大学生以上の受験者には TSSTレベル1(日本語的発音で少数の単語をや

っと並べられる程度)の受験者はいない。

4. リーディング、リスニング試験で判定できる能力と、スピーキング能力とは、必ずしも一致

しない。バランスよく英語能力を判断するためには、2つ以上の評価軸が必要である。

1.5 TSSTのレベル分布――全体

下の図は TOEICスコアを自己申告した 16,188人における TSSTのレベル分布を示したもの

である。「初級の上から中級の下」とも言えるレベル3~5に全体の 84%が属している。

上記のデータを「企業団体受験者」「大学団体受験者」「その他受験者」の3つに分けてみると

以下のようになる。レベル3~5の人が占める割合は、「企業」85.3%、「大学」89.5%、「その

他」65%となる。

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

全受験者数 0 589 3,878 6,237 3,478 1,205 476 204 121 16,188

割合 0.0% 3.6% 24.0% 38.5% 21.5% 7.4% 2.9% 1.3% 0.7% 100.0%

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y = 95.75x + 235.39

R² = .45r= .67

N=13,423

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1 2 3 4 5 6 7 8 9

TOEIC

Ⓡテ

スト

TSST

平均 標準偏差 相関係数

TSST 4.14 1.18

TOEIC 632 167.690.67

さらに、TSSTや TOEIC スコアの平均値などをとると、この3グループ間の差が見えてくる。

TSST、TOEICともに、「企業」「大学」「その他」の順で TSSTレベル平均、TOEICスコア

平均が上がっている。受験者数は少ないものの「その他」グループは、レベル6以上の人が全体

の 34.8%に上る。自分の専門分野の知識や経験が一定以上備わっており TSSTレベル6以上の

能力があれば、英語を使って仕事をしていくことができると言ってよい。「その他」グループに

は属性不明の個人受験者の他、英語教師、企業人事部勤務など何らかの形で業務上、英語に関わ

っている受験者が多く含まれている。それぞれの動機があって TSSTを受験する「個人」は、

比較的英語能力の高い人が多くなっている。

1.6 TSSTのレベル分布――社会人

企業法人に所属している 13,423件を抽出すると TSSTのレベル分布は以下のようになる。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

企業団体受験者のレベル分布

TSST

全体 企業団体受験者 大学団体受験者 その他

TSST平均 4.23 4.14 4.18 5.14

TOEIC平均 643 632 633 769

相関係数 0.68 0.67 0.60 0.67

TSST標準偏差 1.22 1.18 1.06 1.43

TOEIC標準偏差 167.62 167.69 135.46 144.31

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0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

5.00

5.50

受験300件以上の業種のTSST平均産業分野 受験者数 TSST平均

広告業 1 7.00

陸運業 4 6.75

金属製品 9 5.44

海運業 389 5.17

その他金融 61 5.00

パルプ・紙 3 5.00

小売業 5 4.80

銀行業 1,349 4.76

電気・ガス業 11 4.64

保険業 726 4.53

ガラス・土石製品 62 4.52

その他製品 208 4.50

不動産 228 4.50

証券・商品先物取引業 73 4.41

空運業 247 4.36

医薬品 478 4.35

繊維製品 440 4.30

食料品 424 4.29

石油・石炭製品 7 4.29

卸売業 181 4.16

倉庫・運輸関連業 13 4.15

建設業 283 4.12

電気機器 1,331 4.03

化学 1,991 4.00

情報処理 148 3.91

通信業 339 3.91

輸送用機器 1,868 3.90

その他サービス業 994 3.83

機械 417 3.73

精密機器 731 3.64

非鉄金属 259 3.56

鉄鋼 141 3.42

鉱業 1 3.00

ゴム製品 1 2.00

産業分野別の TSST レベル

対象受験者の所属する企業を業種ごとにグループ化し、受験者数とその TSST 平均レベルを

まとめると以下のようになる。受験数が少ない場合は、その受験者集団が業界を代表するとはみ

なし得ないので、ここでは受験 300件以上の 13業種を取り上げて比較した。社会人全体の TSST

平均 4.14を超えているのは、海運業、銀行業、保険業、医薬品、繊維製品、食料品の6業種で

ある。TSST平均 5.00を超えているのは海運業のみである。

34種類ある産業分野を「製造業」「非製造業」「金融業」

の3つに分け、受験者、TSSTレベル平均、TOEIC スコ

ア平均を調べてみると、以下のようになる。非製造業、金

融業が社会人平均 4.14を上回っている。特に、金融業の

TOEICスコアが社会人の全体平均より 122点高くなって

いるのが特徴的である。

さらに、「製造業」「非製造業」「金融業」の3つに大別した場合の TSSTレベルの分布を見て

みると、以下のようになる。

社会人平均 4.14

製造業 非製造業 金融業

受験者数 8,370 2,844 2,209

TSST平均 3.98 4.19 4.68

TOEIC平均 596 643 754

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金融業の TSST平均スコアは製造業、非製造業の平均より高くなっているが、その背景が上

記グラフから見てとれる。つまり、レベル5以上においては、いずれのレベルにおいても、金融

業の受験者の割合が勝っているのだ。上位レベルに行くに従って受験者の割合が低減していく傾

向はどの業界でも同じだが、金融業においては、上位者の層が厚い、ということが分かる。

次に、受験が 300件以上ある 13業種を、「製造業」「非製造業」「金融業」の3カテゴリーに

まとめてその TSSTレベル分布をグラフにすると、以下のようになる。

■製造業

TSST 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

製造業 0.0% 5.1% 28.4% 40.0% 19.0% 5.4% 1.5% 0.4% 0.2% 100.0%

非製造業 0.0% 4.5% 26.2% 35.5% 21.6% 7.1% 2.9% 1.4% 0.8% 100.0%

金融業 0.0% 0.5% 13.8% 38.3% 27.9% 10.2% 4.7% 2.7% 1.9% 100.0%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

2 3 4 5 6 7 8 9

医薬品

化学

機械

食料品

精密機器

繊維製品

電気機器

輸送用機器

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

製造業

非製造業

金融業

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10

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

2 3 4 5 6 7 8 9

銀行業

保険業

■非製造業

■金融業

◆業種別グラフから分かること◆

1. 取り上げた 13業種では、レベル4取得者の割合がピークとなる分布を示す業種が多い。

2. 分布のピークがレベル3または5になっている業種がある(その他サービス業、海運業)。

3. レベル5(常に「文」の形で話し、テーマによっては一定以上の時間話し続けることができ

る)以上の層が相対的にやや厚い業種がある(海運業、銀行業、保険業)。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

2 3 4 5 6 7 8 9

その他サービ

ス業

海運業

通信業

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y = 76.114x + 315.41R² = .355

r= .60

N=1,411

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1 2 3 4 5 6 7 8 9

TOEICⓇ

テス

TSST

平均 標準偏差 相関係数

TSST 4.18 1.06

TOEIC 633 135.460.60

1.7 TSSTのレベル分布――大学生

調査対象データ 16,188件の内、大学の団体受験者は約 8.7%に当たる 1,411件である。TSST

レベルの分布、TOEIC との関係は下記のようになっている。

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

TSST

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

大学団体受験者数 0 17 333 646 284 82 33 9 7 1,411

割合 0.0% 1.2% 23.6% 45.8% 20.1% 5.8% 2.3% 0.6% 0.5% 100.0%

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12

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

文系割合

理系割合

TSST

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

学部・文系割合

学部・理系割合

TSST

大学関係受験者はその属性により「学部生・大学院生」と「大学職員」に大別できる。「学部

生・大学院生」をさらに「理系・文系」に分けてその TSSTレベル分布を見てみると以下のよ

うになる。

大学院生のほとんどは理系であった。学部生のみ「理系・文系」に分けて分布を見てみると下

記のようになる。

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

文系 0 0 32 52 28 11 6 0 0 129

理系 0 16 289 561 232 60 25 9 7 1,199

文系割合 0.0% 0.0% 24.8% 40.3% 21.7% 8.5% 4.7% 0.0% 0.0% 100.0%

理系割合 0.0% 1.3% 24.1% 46.8% 19.3% 5.0% 2.1% 0.8% 0.6% 100.0%

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

職員 0 1 12 33 24 11 2 0 0 83

職員割合 0% 1% 14% 40% 29% 13% 2% 0% 0% 100%

TSSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

学部・文系 0 0 31 52 28 11 6 0 128

学部・理系 0 4 153 342 139 39 20 8 5 710

学部・文系割合 0.0% 0.0% 24.2% 40.6% 21.9% 8.6% 4.7% 0.0% 0.0% 100.0%

学部・理系割合 0.0% 0.6% 21.5% 48.2% 19.6% 5.5% 2.8% 1.1% 0.7% 100.0%

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0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

職員割合

TSST

学部生、大学院生、理系、文系、学部・理系、学部・文系、職員の7カテゴリーで TSSTの

平均レベルを出してみると以下のようになった。大きな差異は見られないものの「学部・文系」

のグループのレベルが相対的に高くなっている。さらに高いのは「職員」グループである。社会

人全体の平均 4.14を上回っている。受験 300件以上の業種と比較すると、医薬品 4.35と保険

業 4.53の間に位置している。

◆グラフから分かること◆

1. 学生・大学院生を「理系・文系」に分けてみたがこの2つの分類に応じた大きな差異は見ら

れなかった。

2. 学部生のみを取り上げて「理系・文系」に分けて分布を見てみても、大きな違いは見られな

かった。

3. 海外から留学生を受け入れ、日本の学生を海外留学に出すことが盛んになってきたことを受

けて、大学職員の研修も盛んになり、その英語スピーキング能力を見極める動きも出てきた。

83件と少ないデータではあるがレベル5以上の割合が 44%と高くなっている。

学部生 大学院生 理系 文系 学部・理系 学部・文系 職員

TSST平均 4.25 4.00 4.15 4.27 4.24 4.29 4.46

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1.8 参考:SST のレベル分布 ――中学・高校生

TSSTは 2004年から運用を開始し、企業の団体受験を中心に利用が進み、次第に大学での活

用も広がってきている。近年、高校生の留学、海外の大学への進学などが話題になってきている

ので、今後は高校生の TSST受験も広がっていくものと思われる。では、その日本の高校生の

英語スピーキング能力の実態はどうなっているのか。高校生の TSST受験はまだ少数にとどま

っているので、ここでは参考までに、かつて弊社が共同研究に関わって対面インタビュー型テス

ト SST(Standard Speaking Test)を提供した際に入手した「高校生の英語スピーキング能力」

の分布を見てみたい。

SSTとは

米国の学術団体・全米外国語教育協会(American Council on the Teaching of Foreign

Languages: ACTFL)と弊社が共同開発し 1997年から運用している1対1の対面インタビュー

型スピーキングテストが SSTである。約 15分で以下のステップを踏んで実施する。評価基準、

9段階評価であることは TSSTと共通である。

・ステージ1:身近な質問に答える(3~4分)

簡単な質問に答えて英語発話のウォームアップをする。

・ステージ2:指示された絵を説明する(2~3分)

イラスト1枚を見て内容を表現し、発話に関連した質問に答える。

・ステージ3:役割を演じる(1~4分)

試験官が指定する役割を受験者が演じた後、発話に関連した質問に答える。

・ステージ4:絵に沿ってストーリーを作る(2~3分)

4~6コマの絵または1枚のイラストを見ながら試験官の指示に従い発話する。

・ステージ5:軽い質問に答える(1~2分)

ごく簡単な短い質問に答える。

■参考データ①

2008 年に、東京学芸大学から『日本人英語学習者のスピーキング能力の実態調査ならびに評

価指標開発―中学生・高校生を対象として―』という報告書が出た(文部科学省科学研究費助成

金対象研究)。中学・高校生 139 名に対して SST を実施し、レベル分布のほか、中学・高校生

の英語発話にはどのような特徴があるのかを探った研究である。

被験者は中学 3 年生 39 名、高校 1 年生 69 名、高校 2 年生 31 名の合計 139 名。139 名のレ

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SSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 SST平均

中3人数 1 26 10 1 1 0 0 0 0 39 2.36

高1人数 1 18 28 19 3 0 0 0 0 69 3.07

高2人数 0 8 13 8 2 0 0 0 0 31 3.13

中3割合 2.6% 66.7% 25.6% 2.6% 2.6% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

高1割合 1.4% 26.1% 40.6% 27.5% 4.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

高2割合 0.0% 25.8% 41.9% 25.8% 6.5% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

1 2 3 4 5 6 7 8

中3割合

高1割合

高2割合

SST

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

SST

ベル分布は以下のとおりである。

グループ Aは公立中学生、グループ Bは国立大付属中の卒業生、グループ Cは私立大学付属

中高一貫校の生徒である。グループ Aと Bは「全国的にみて英語運用能力の比較的高い」集団、

グループ Cは「英語運用能力がより平均的と思われる」集団である。

学年別のレベル分布は下記のとおりである。

TSSTと SSTの評価結果は強い相関がある研究結果を踏まえ、同じモノサシだとみなすと、

分布のピークがレベル2または3となっており、社会人や大学生とは明らかに異なっている。学

年が上がるに従ってレベルのピークがレベル2から上に移動しているのも分かる。

グループ 中3 高1 高2 計

A 5 0 0 5

B 0 35 0 35

C 34 34 31 99

計 39 69 31 139

SSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

人数 2 52 51 28 6 0 0 0 0 139

割合 1.4% 37.4% 36.7% 20.1% 4.3% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0%

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■参考データ②

東京都立国際高等学校は、平成 15~17年(2003~2005年)度に文部科学省のスーパー・イ

ングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(Super English Language High school; SELHi)の

指定を受け様々な研究開発に取り組んだ。3年間の生徒の能力の変化を SSTを使って追跡調査

した結果が「研究開発実施報告書」(平成 18年3月発行)に掲載されているので転載の許諾を

得て紹介する。

同校は習熟度別に授業グループを分けており、「1グループ」10人、「2グループ」15人、「3

グループ」15人、計 40人に関して、高校の3年間に渡り、年1回、計3回 SSTを実施し、SST

レベルの変化を調査した。以下のような結果だった。

東京都立国際高等学校は帰国生を多数受け入れており、「1グループ」には海外生活経験者が

多く交じっている。同校の分析によると「3年間の変化を見てみると、全体的にはレベル3の生

徒の数が減り、さらに第2回目でレベル3を吸収していたレベル4の人数も減少、相対的にレベ

ル5、6、7の人数が増えている。また、第2回目で減少したレベル9の人数が第3回で回復し

たものの、レベル8、9を合わせた人数は、第3回の方が第2回よりも少ないという結果になっ

た。レベル8、9の生徒はほとんどが帰国生であり、入学の時点では帰国して間もなく、自然な

会話が身についているが、日本での生活が長くなるにつれて会話力が多かれ少なかれ減退する傾

向がみられる」(研究開発実施報告書 p.85)とのこと。

日本の平均的な高校とは異なる生徒が集まっているのかもしれないが、学年が上がるにつれて

着実にスピーキング能力が伸びているのが見て取れるのは学芸大の調査結果と同じである。授業

の運営方法次第で高校3年間でもしっかり話す能力を伸ばすことが可能であることを示してい

ると思われる。

SSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 平均

1年次 0 0 9 13 8 3 1 3 3 4.88

2年次 0 0 2 20 5 4 6 2 1 5.05

3年次 0 0 2 14 6 7 7 1 3 5.45

SSTレベル 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計

1年次 0.0% 0.0% 22.5% 32.5% 20.0% 7.5% 2.5% 7.5% 7.5% 100.0%

2年次 0.0% 0.0% 5.0% 50.0% 12.5% 10.0% 15.0% 5.0% 2.5% 100.0%

3年次 0.0% 0.0% 5.0% 35.0% 15.0% 17.5% 17.5% 2.5% 7.5% 100.0%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

1 2 3 4 5 6 7 8 9

1年次

2年次

3年次

SST

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1.9 TSST:まとめ

中学3年、高校1年、2年、3年、大学学部生、大学院生、社会人の英語スピーキング能力の

違いを、TSST/SSTのレベルを手掛かりにみてきた。ただし、中学生と高校生のデータ件数が

ごく限られていること、東京都立国際高等学校の調査対象となった受験者に帰国生が一定数交じ

っている点で東京学芸大学の調査対象となった中高生と大きく異なる性質のグループとなって

いることなどを踏まえると、中学生から社会人までの英語スピーキング能力をひとつのモノサシ

の上に並べて俯瞰することは難しいのが現状である。

・中学/高校生(国立大附属中高+私立大附属中高) ・高校生(東京都立国際高校)

上記2つの結果は「教育現場の実態」を代表しているものではないかもしれないが、学年が上

がるにつれてスピーキング能力が上がっている傾向は出ている。学習者個人の努力とともに学校

の取り組みの結果を反映していると言えるかもしれない。

一方、受験件数の多い大学生、社会人のスピーキング能力は下記のようになっている。

大学学部生、大学院生、社会人の平均 TSSTレベルに大きな差は見られない。社会人ではその

属する業界別に若干の差異はあるものの、自分の専門・得意分野のことであれば英語を使って何

とか仕事ができる「レベル5」を超えている業界はまだわずかである。

また、中学生、高校生、大学生、社会人の各カテゴリーのレベル分布を見ると、分布のピーク

はレベル2、3、4と移ってはいくものの、レベル5以上には至っていない現状も見えてきた。

仕事での海外出張・赴任で大きな困難がないレベル6以上は、今回対象とした受験者全体の

12.3%にすぎない。

語彙、文法、リーディング、リスニングの学習や訓練が重要なのはもちろんである。今後は、

蓄えた知識を実際に使ってみる訓練、あるいは、実際に使う体験を通して知識の定着を図るよう

な教育がますます重要になってくるものと思われる。

SST平均

中3 2.36

高1 3.07

高2 3.13

SST平均

高1 4.88

高2 5.05

高3 5.45

TSST平均

大学学部生 4.25

大学院生 4.00

社会人 4.14

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2 ESAC

アルクは 2005年より「英語学習アドバイザー資格認定制度 English Study Advisors’

Certificate(ESAC)」を運用している。英語教師とは異なり、学習者自身が「自律的学習」を

進められるよう支援することのみを役目とする「プロの英語学習支援者」を育成・管理している。

2.1 ESAC資格とは

ESACには下記のような4段階の資格がある。

現在、主に「プロフェッショナル」資格以上を持った人々が、各種教育機関や企業でアドバイ

ス業務に当たっている。

レベル 説明 定義

申請資格

・TSST/SST* 8以上(ただし1年以内

のスコア)・TOEIC900点以上(ただし2年以内の

スコア)・プロフェッショナル資格者として3年相

審査方法実技テスト(正規マスターとほぼ同様のタスクを実施)

更新手続き 4年に1度

申請資格・ジュニア資格を取得・指定ワークショップ修了・TSST/SST* 7以上

審査方法・英文エッセー課題・アドバイス実践レポート課題・出願書類

更新手続き 4年に1度

申請資格・ジュニア資格を取得・指定ワークショップ修了・TSST/SST* レベル6以上

審査方法 出願書類

更新手続き 4年に1度

申請資格指定教材の学習(TOEIC600点以上取得推奨)

審査方法 課題提出

更新手続き 特になし

英語学習アドバイスに関する教材(書籍、DVD)

で学習している。大学生協、書店等で英語教材の説明・販売をする際、学習した知識を生かすことができる。

英語学習アドバイスに関する基礎知識を備えている

ジュニア

資格の取得

英語力、指導力、社会経験の面で、英語学習アドバイザーとして最高の資格。一般学習者へのアドバイスはもとより、他の学習アドバイザーのアドバイザーとして、後進の育成を行う能力・知識・技能を備えていることや、複数の資格者をマネージメントする能力などが求められる。たとえば、セミナーで講師を担当したり、大きな英会話スクールや団体などのマネジャーとして複数のアドバイザーの指導に当たることができる。

新たな学習アドバイザーの育成ができる

マスター

高校や大学・語学学校・留学相談機関などにおいて、対面授業・書籍・通信教育・Eラーニング等多様な手段・教材で学ぶ学習者のアドバイザーとして、活躍の道がさらに広がる。

プロの学習アドバイザーとして、即戦力として活躍できる

プロフェッショナル

自分の学習体験を例に、適切な学習アドバイスが行える。英語学習アドバイスが主たる業務である場合の他、大学生協、書店等での英語教材販売員など英語学習周辺の仕事にも活躍の場が広がる。

自分の英語学習経験を踏まえ、適切なアドバイスができる

アソシエイト

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教員の役割

⇒学習者全体に対応

・シラバス決定

・ティーチング

・評価する

・全体の学習管理

アドバイザーの役割

⇒個別の対応

・学習動機の維持・喚起

・学習アドバイス

・評価しない

・個人目標の設定

・個別学習管理

2.2 学習アドバイスの目的

教師との立場の違いを意識し、英語学習アドバイザーは以下のような目的を持って学習者と対

話している。

・ 学習者に学習習慣がつく

・ 学習者に問題発見・解決策模索の習慣がつく

・ 学習者に「学習能力」がつく

・ 学習者の意識を変え、自律的学習を確立させる

2.3 学習支援活動の内容

学習アドバイザーの基本姿勢は、「対面で一人ひとりに最適な英語学習プランと方法をアドバ

イス」することである。学習プロセスに関与することで「学習者の学習行動パターンを変える」

ことを第1の目的とする。そのためには、以下のような内容で学習者と対話している。

1. 目標の確認

いつまでに試験(TOEFL/TOEIC等)で何点必要か、立てた目標の達成度の度合いは、な

ど。

2. 現在の学習状況

学習の進み具合はどうか、その他に取り組んでいることはあるか、など。

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3. 英語学習全般についての悩み

3つの側面(学習面、精神面、環境面)から具体的アドバイスを提供

4. 次回カウンセリングまでの目標設定

Unit*まで終える、毎日*分勉強する、など。

5. 次回カウンセリングの日時の設定

進捗状況の確認のために次回カウンセリングの予約を入れてもらう。

アドバイスにおける「3つの側面」とは以下のような内容を指す。

(1)学習面

英語に関する質問や学習方法の相談に答える。4技能をバランスよく、学習者のレベルと目的を

踏まえた学習方法・素材を提示。

(2)精神面

学習モチベーションの低下によって学習が滞っている場合、 モチベーションアップさせるため

の助言、学習スケジュールの調整、場合によっては学習等の負荷を下げる助言などをする。具体

的で明確、現実的、実行可能な目標設定を心掛ける。努力を認める ⇒ 改善点を指摘する ⇒ 励

まして終える、のパターンを意識して対話。

(3)環境面

多忙のため学習が滞っている場合や、学習をする場所の確保が困難な場合、どのようにすれば継

続可能かをアドバイスする。達成可能な小さな目標と大きなゴールの設定、モバイル学習(iPod、

携帯電話で語彙学習)などの提案。

さらに学習アドバイザーは、勤務する場所・機関に応じてさまざまな形態で学習を支援する。

1. 指名制カウンセリング

特定の集団向けの必須カウンセリング。短期留学者への事前・事後カウンセリング、グロー

バル人材育成プログラム参加者向け、など。

2. クラスサポートカウンセリング

Eラーニング(アルクの「Net Academy2: NA2」等)と連動したクラス運営の補助。学習

履歴を見ながら個別にアドバイスを行うこともある。

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3. メールカウンセリング

入学前、長期休暇中など、対面アドバイスが難しい場合の遠隔サポート。

4. 教職員向けカウンセリング

大学等の教職員研修の一環で、アドバイザーが可能な範囲で支援。

5. ミニ講座(1回 30分/最大 20名)

大学等において、学習者のモチベーションの維持、またはカウンセリングへの誘導を目的に、

スキル強化/試験対策などのミニ講座を行う。

6. スタディグループのサポート

大学のラウンジ等に学生同士の自主学習グループを集め、アドバイザーは巡回しながら、適

宜アドバイジングを行う。相談者にスタディグループを作って学習を進めてみては、とアド

バイスすることもある。

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2.4 7大学における ESACの事例

アルクはこれまで、25の大学と数社の企業において英語学習アドバイス業務を展開してきた。

週に数回訪問して対面カウンセリングをしたり、電話やメールを使ってアドバイスしたりと形態

はさまざまだが、ここでは最も効果が期待できる「英語学習アドバイザー常駐型」で実施してい

る大学7つの事例を取り上げて、ESAC業務の実態を報告する。「常駐型」とは、原則的に、月

曜から金曜まで、1日約7時間、特定の教育機関に滞在してアドバイス業務を行う形態を指す(詳

細は各機関と協議の上で決定)。

2013年 4~12月の9カ月間に渡るアドバイス業務の実態を調査したのは以下の7大学である。

A大学 国立総合大学。10学部の1~4年生、大学院生が対象。海外留学に関心のある層へ

の対応が主業務。海外研修と連動したカウンセリングを夏期と冬期に実施。スキル

別の英語学習方法に関わる相談も多い。

B大学 国立総合大学。9学部の1~4年生、大学院生が対象。Eラーニング授業の補助、海

外留学に関心のある層への対応が主業務。スキル別の英語学習方法に関わる相談も

多い。

C大学 国立総合大学。工学部1~4年、大学院生が対象。Eラーニングの利用促進、TOEIC

対策がメインだが、留学関連、英語学習全般の相談も多い。

D大学 理系学部のみの国立大学。1~4年生、大学院生に加え、研修の一環として参加す

る教職員も対象。TOEICテストのスコアが進級用件。

E大学 私立総合大学。文系5学部の1~4年が中心。夏期にはスクーリングに参加する通

信教育受講学生なども対象に。常駐アドバイザーは学生の自主学習グループのファ

シリテーターの役割も持つ。

F大学 私立総合大学。10学部の1~4年生、大学院生が対象。海外留学促進に特化した相

談、学習アドバイスが主業務。

G大学 私立女子大学。文系の学部1~4年生に加え、教職員も対象。Eラーニング授業の補

助、海外留学に関心のある層への対応が主業務。スキル別の英語学習方法に関わる

相談も多い。

本レポートで扱うデータは、アドバイザー「1名」が大学に「常駐」して扱ったものである。

学習カウンセリングを利用できる学生の母数は大学によってまちまちなので、相談件数の単純な

比較は意味がない。「月」による相談件数等の変動を見ると、各大学のアドバイザー利用の姿勢

を反映しているのが分かる。下記は「リピート相談」も含めた相談の延べ件数である。

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大学/月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計

A大学 40 46 93 112 35 38 92 78 106 640

B大学 32 26 31 34 24 10 30 29 22 238

C大学 2 10 7 6 14 6 31 35 12 123

D大学 49 48 44 85 77 44 67 70 78 562

E大学 23 35 28 27 39 21 35 23 23 254

F大学 ― 65 59 54 20 41 82 84 41 446

G大学 21 14 8 41 12 30 17 14 7 164

計 167 244 270 359 221 190 354 333 289 2,427

A大学が6、7月と 10、11、12月に相談件数が大きく伸びているのが特徴的である。これは、

短期海外研修に参加する学生に対して大学側から、出発前学習、帰国後の継続学習等に関してア

ドバイスを受けるよう働きかけがあったためと思われる。

各大学で学習アドバイザーを活用している形態は、以下のように異なっている。

大学/内容個別

カウンセリング授業

入り込みNA

ガイダンスミニ

ワークショップニューズレター

メールサポート

小テスト作成

学習履歴管理

スタディグループ

A大学 ○ × ○ × × ○ × × ×

B大学 ○ ○ ○ ○ × ○ × ○ ○

C大学 ○ × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ×

D大学 ○ × ○ ○ × ○ × × ○

E大学 ○ × × ○ × × × × ○

F大学 ○ × × ○ × ○ × × ○

G大学 ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ×

0

20

40

60

80

100

120

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

A大学

B大学

C大学

D大学

E大学

F大学

G大学

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大学における具体的サポートは下記のような内容である。

個別カウンセリング 多くの場合、特定の場所に待機しつつ、事前予約制により、1人 20~30分の

個別学習相談を実施。継続学習につなげるため、相談終了時に課題を出すな

どして、次回予約を促す。

授業入り込み Eラーニングを使った正課授業または課外授業の補助としてアドバイザーが

関与。CALL教室において、教員と共に Eラーニング活用方法のほか、英語学

習そのものなどに関して個別に助言。

NA ガイダンス アルクの Eラーニング「NetAcademy2」の利用方法を年度初めなどに説明。

ミニワークショップ 学生の自習用施設・空間(Self-Access Learning Center: SALCなど)におい

て、30分程度の英語学習ワークショップを開催(対象 20名程度)。個別カウ

ンセリングを促すための施策として実施。開催頻度は大学によって異なる。

ニューズレター 学生のメールアドレス宛に、学習アドバイス、小テスト、イベント案内など

を発信。個別カウンセリングを促すための施策として実施。送信頻度は大学

によって異なる。

メールサポート 指定の場所で会えない相談者に対して、メールで学習相談を実施。長期休暇

中の学生向け、入学前の対象者向け、など。

小テスト作成 アルクの Eラーニング「NetAcademy2」を活用して英語の小テストをアドバイ

ザーが作成。Eラーニング利用促進、授業の補助、などが目的。

学習履歴管理 アルクの Eラーニング「NetAcademy2」の利用履歴を学生個別に調査し、授業

担当教員に報告。利用率の低い学生にメール等で利用を促すこともある。

スタディグループ 学生の英語自主学習グループの企画・運営補助に関与。ファシリテーター役

を担う。

2.5 学年によるアドバイザー利用件数の違い

■A大学

2年生の利用が多い。海外研修プログラムの事前事後(夏

期と冬期)に相談に来るのが特徴的である。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 ― 21 25 23 10 6 20 25 27 157 26.2%

2年 ― 8 31 46 16 19 46 37 58 261 43.5%

3年 ― 10 26 22 3 8 14 11 13 107 17.8%

4年 ― 2 6 14 2 1 10 3 6 44 7.3%

その他 ― 5 5 7 4 4 2 2 2 31 5.2%

計 ― 46 93 112 35 38 92 78 106 600 100.0%

1年

26%

2年

44%

3年

18%

4年

7%

その他

5%

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25

1年

41%

2年

16%

3年

18%

4年

15%

その他

10%

■B大学

1年生の利用が多い。必修の英語 Eラーニング授業でアドバ

イザーと接する機会が多いため、個別相談がしやすくなって

いるようだ。

■C大学

3年生の利用が多い。工学部生の大学院入試対策、TOEICテ

スト対策などの相談が特徴的。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 7 13 21 17 10 4 8 9 9 98 41.2%

2年 2 2 5 7 5 2 7 2 5 37 15.5%

3年 9 7 2 3 4 1 6 8 3 43 18.1%

4年 6 4 2 5 4 1 4 7 2 35 14.7%

その他 8 0 1 2 1 2 5 3 3 25 10.5%

計 32 26 31 34 24 10 30 29 22 238 100.0%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 0 1 1 2 0 0 4 4 0 12 9.8%

2年 0 0 0 0 1 0 9 14 6 30 24.4%

3年 1 7 5 2 5 1 10 14 4 49 39.8%

4年 1 2 1 2 2 2 4 2 2 18 14.6%

その他 0 0 0 0 6 3 4 1 0 14 11.4%

計 2 10 7 6 14 6 31 35 12 123 100.0%

1年

10%

2年

24%

3年

40%

4年

15%

その他

11%

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■D大学

3年生の利用が多い。理系学生の大学院入試対策、TOEIC

テスト対策などの相談が特徴。留学前の院生、研修を受ける

大学教職員の利用も目立つ。

■E大学

学年による利用率の偏りがないのが特徴。アドバイザーはオー

プンスペースで待機し、予約なしで自由に相談できる形式に起

因していると思われる。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 ― 9 5 8 1 6 7 10 3 49 9.6%

2年 ― 3 7 12 2 0 13 3 16 56 10.9%

3年 ― 18 19 8 17 5 30 28 41 166 32.4%

4年 ― 11 8 25 21 11 11 13 9 109 21.2%

その他 ― 7 5 32 36 22 6 16 9 133 25.9%

計 ― 48 44 85 77 44 67 70 78 513 100.0%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 7 8 5 3 2 6 12 3 8 54 21.3%

2年 9 13 9 6 4 5 10 10 7 73 28.7%

3年 6 7 7 8 2 0 5 3 4 42 16.5%

4年 0 6 7 9 1 7 4 7 2 43 16.9%

その他 1 1 0 1 30 3 4 0 2 42 16.5%

計 23 35 28 27 39 21 35 23 23 254 100.0%

1年

10% 2年

11%

3年

32%

4年

21%

その他

26%

1年

21%

2年

29%3年

16%

4年

17%

その他

17%

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■F大学

1、2年生の利用が多い。3年次に海外留学を考える人が

多く、その準備の相談が特徴的。大学側でも様々な留学プ

ログラムを準備したり、アドバイザーと連携して留学関連

情報の提供を充実させたりしている。

■G大学

1年生の利用が多い。必修の英語 Eラーニング授業でア

ドバイザーと接する機会が多いため、個別相談がしやす

くなっているようだ。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 ― 23 23 8 3 17 36 27 15 152 34.1%

2年 ― 19 17 32 7 16 36 39 15 181 40.6%

3年 ― 20 11 5 5 5 9 9 5 69 15.5%

4年 ― 1 6 4 1 1 0 7 3 23 5.2%

その他 ― 2 2 5 4 2 1 2 3 21 4.7%

計 ― 65 59 54 20 41 82 84 41 446 100.0%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

1年 12 11 6 38 5 9 11 11 7 110 67.9%

2年 1 0 2 0 1 8 1 0 0 13 8.0%

3年 3 0 0 0 1 8 0 3 0 15 9.3%

4年 2 1 0 1 0 0 2 0 0 6 3.7%

その他 3 2 0 0 5 5 3 0 0 18 11.1%

計 21 14 8 39 12 30 17 14 7 162 100.0%

1年68%

2年8%

3年9%

4年4%

その他11%

1年

34%

2年

41%

3年

15%

4年

5%

その他

5%

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初訪

49%再訪

51%

初訪

56%

再訪

44%

訪50%

訪50%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 2 5 0 4 13 5 18 11 2 60 48.8%再訪 0 5 7 2 1 1 13 24 10 63 51.2%

計 2 10 7 6 14 6 31 35 12 123 100.0%

初訪

27%

再訪

73%

2.6 リピーターとなる相談者

以下は、アドバイスを受けに来た人は「初回訪問」だったのか「再訪問」だったのかを示した

もの。

■A大学

「初回訪問」と「再訪問」の件数が同率。これは他の大学にも見られ

る傾向である。

■B大学

「初回訪問」と「再訪問」の件数が類似の率になっている。

■C大学

「初回訪問」と「再訪問」の件数が類似の率になっている。工学部

のみの取り組みであるが、多くの学部が対象のA大学、B大学と傾

向が似ている。

■D大学

D 大学は、複数回の来訪をアドバイザーが積極的に促した結果、かな

りの頻度でアドバイザーのいるオープンスペースを訪れ、そこで自習

あるいは相談する学生が現れた結果、再訪の率が極端に増えた。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 ― 16 49 88 14 6 5 47 75 300 50.0%再訪 ― 30 44 24 21 32 87 31 31 300 50.0%

計 ― 46 93 112 35 38 92 78 106 600 100.0%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 30 16 9 29 13 5 13 9 9 133 55.9%再訪 2 10 22 5 11 5 17 20 13 105 44.1%

計 32 26 31 34 24 10 30 29 22 238 100.0%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 ― 15 14 31 25 13 14 18 10 140 27.3%再訪 ― 33 30 54 52 31 53 52 68 373 72.7%

計 ― 48 44 85 77 44 67 70 78 513 100.0%

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初訪

84%

再訪

16%

訪53%

再訪

47%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 14 23 9 16 28 15 17 5 7 134 52.8%再訪 9 12 19 11 11 6 18 18 16 120 47.2%

計 23 35 28 27 39 21 35 23 23 254 100.0%

初訪

66%

再訪

34%

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 15 13 8 37 10 26 14 10 3 136 165.9%再訪 6 1 0 2 2 4 3 4 4 26 31.7%

計 21 14 8 39 12 30 17 14 7 82 100.0%

■E大学

E大学は来訪者の学年によるばらつきが少なかったが、「初回訪問」

と「再訪問」の率も似ている。

■F大学

F大学は、留学に関わる内容の相談が圧倒的に多く、しかも、1、2

年生がまずは情報収集に来訪するケースが多いため「初訪」も多いと

思われる。

■G大学

G大学は、1年生が授業の一環で臨む Eラーニング学習との関連で

来訪するケースが多いため、「初訪」が圧倒的に多い。

2.7 相談内容の分類、内訳、月別変動

アドバイザーは相談内容を毎月まとめて大学に報告している。大学に応じて報告内容の項目立

てを変えているが、ここでは大学間の比較をしやすくするために、以下のようにデータを整理し

た。また、一人の相談内容が複数に渡る場合は内容ごとに加算した。

・留学時に受験が必要となる試験 TOEFLと IELTS の相談件数を分けて集計していたものを合

算した。

・スピーキング、ライティングなどスキル別に分けていた相談件数を「特定スキル」の項目に統

合した。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合初訪 ― 50 42 38 13 29 59 46 18 295 66.1%再訪 ― 15 17 16 7 12 23 38 23 151 33.9%

計 ― 65 59 54 20 41 82 84 41 446 100.0%

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項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

TOEFL・IELTS対策 12 25 30 29 21 16 33 23 19 195 25.5%

留学関連:留学希望、留学準備など 8 8 8 8 4 6 9 4 0 55 6.7%

TOEIC・英検対策 4 6 9 9 1 6 13 7 11 66 8.1%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 8 6 47 74 15 14 61 58 87 370 45.3%

その他 8 14 24 29 5 4 12 11 10 117 14.3%

計 40 59 118 149 46 46 128 103 127 816 100.0%

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

TOEIC・英検対策 18 16 21 12 11 8 19 18 12 135 41.4%

TOEFL・IELTS対策 3 3 8 3 1 1 5 7 5 36 11.0%

その他英語資格に関する質問 1 0 2 1 1 0 0 0 0 5 1.5%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 5 8 4 16 8 1 7 8 5 62 19.0%

留学関連:留学希望、留学準備など 4 1 7 8 3 2 4 1 3 33 10.1%

目標設定、学習計画、モチベーション維持 5 2 4 2 3 5 7 3 4 35 10.7%

その他 2 1 8 2 4 0 0 2 1 20 6.1%

計 38 31 54 44 31 17 42 39 30 326 100.0%

TOEIC・英検対

策41%

TOEFL・

IELTS対策11%

その他英語資

格に関する質問2%

特定スキル(4

技能、語彙、文

法、発音)

19%

留学関連:留学

希望、留学準備

など

10%

目標設定、学習

計画、モチベー

ション維持

11%

その他

6%

・留学に関する相談で、「手続き、奨学金、準備」など細分化してあったものは「留学関連」の

項目に統合した。

■A大学

短期海外研修に参加する2年生が相談者に多いことを踏ま

えると、話す、書く、聞くなど海外での学習に必要なスキ

ルに関わる相談が多くなったと思われる。

■B大学

理系、文系の学部を問わず、試験対策に関わる相談が多い。

進学、就職と絡めて英語学習を捉えている人が多いためと

思われる。

TOEFL・ IELTS

対策26%

留学関連:留

学希望、留学

準備など

7%

TOEIC・英検

対策8%

特定スキル(4

技能、語彙、

文法、発音)

45%

その他

14%

Page 32: アルク 英語教育実態レポート · 2 本レポートの概要 1. tsst とtoeicⓇテストの相関をみると、相関係数r = .68 で「中程度の相関がある」が、

31

NetAcademy関

連12%

TOEIC・英検対

策25%

TOEFL・ IELTS

対策7%

留学関連:留

学希望、留学

準備など

10%

特定スキル(4

技能、語彙、文

法、発音)

26%

目標設定、学

習計画、モチ

ベーション維持

14%その他

6%

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

TOEIC・英検対策 32 26 19 30 9 3 27 21 44 211 27.4%

TOEFL・IELTS対策 6 5 7 2 8 4 4 2 1 39 5.1%

その他英語資格に関する質問 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3 0.4%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 28 5 10 35 25 11 11 15 33 173 22.5%

留学関連:留学希望、留学準備など 5 2 4 5 2 2 13 0 9 42 5.5%

その他 10 25 22 41 37 32 38 34 63 302 39.2%

計 81 63 62 113 81 52 93 75 150 770 100.0%

■C大学

相談者は2年生3割、3年生4割の工学部の学生で

ある。試験対策とスピーキング、リスニングなど特

定技能に関する相談が多いのは、進学、就職、学内

で行われる TOEIC試験を意識してのことと思われ

る。

■D大学

理系学部のみの大学で、3年生、4年生の相談が

多いことを踏まえると、進学、留学、試験対策に

関わる相談が多いのは自然なことといえる。

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

NetAcademy関連 0 0 7 7 10 3 1 4 2 34 11.6%

TOEIC・英検対策 1 4 5 7 9 5 17 21 5 74 25.3%

TOEFL・IELTS対策 1 1 0 0 0 0 11 5 3 21 7.2%

留学関連:留学希望、留学準備など 1 1 0 2 5 2 9 5 3 28 9.6%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 0 0 0 1 18 7 19 22 9 76 26.0%

目標設定、学習計画、モチベーション維持 0 5 7 7 5 5 6 4 1 40 13.7%

その他 0 0 0 0 4 1 5 7 2 19 6.5%

計 3 11 19 24 51 23 68 68 25 292 100.0%

TOEIC・英検対策

27%

TOEFL・IELTS対策

5%

その他英語資格

に関する質問0%

特定スキル(4技

能、語彙、文法、

発音)

23%留学関連:留学希

望、留学準備など6%

その他

39%

Page 33: アルク 英語教育実態レポート · 2 本レポートの概要 1. tsst とtoeicⓇテストの相関をみると、相関係数r = .68 で「中程度の相関がある」が、

32

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

TOEIC・英検対策 2 7 4 7 6 10 6 7 10 59 18.8%

TOEFL・IELTS対策 0 1 6 8 5 1 7 3 2 33 10.5%

その他英語資格に関する質問(英検など) 1 0 0 1 0 0 0 0 1 3 1.0%

留学関連:留学希望、留学準備など 10 20 15 5 4 4 21 9 0 88 28.1%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 8 6 5 6 15 6 5 4 14 69 22.0%

目標設定、学習計画、モチベーション維持 8 6 1 4 21 0 6 2 0 48 15.3%

その他 0 0 3 4 0 0 3 3 0 13 4.2%

計 29 40 34 35 51 21 48 28 27 313 100.0%

TOEIC・英

検対策19%

TOEFL・IELTS

対策11%

その他英語資

格に関する質

問(英検など)

1%

留学関連:留学

希望、留学準

備など

28%

特定スキル(4

技能、語彙、文

法、発音)

22%

目標設定、学

習計画、モチ

ベーション維持

15%

その他

4%

■E大学

学年、学部に関わりなくまんべんなく相談者が来訪

しているのがこの大学の特徴である。それを反映し

てか、相談内容も試験対策、留学関連、特定スキル

向上、継続学習の仕方など多岐にわたっている。

■F大学

学生の海外留学を促進するのがアドバーザーに期待

される主な役目であることから、留学相談が圧倒的に

多いのは当然の結果である。

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

留学関連:留学希望、留学準備など - 56 49 28 16 36 73 81 33 372 82.9%

TOEFL・IELTS対策 - 4 9 23 1 4 9 2 7 59 13.1%

TOEIC・英検対策 - 3 0 0 0 0 0 1 0 4 0.9%

その他 - 2 4 3 3 1 0 0 1 14 3.1%

計 65 62 54 20 41 82 84 41 449 100.0%

留学関連:

留学希望、

留学準備な

83%

TOEFL・

IELTS対策13%

TOEIC・英

検対策1%

その他

3%

Page 34: アルク 英語教育実態レポート · 2 本レポートの概要 1. tsst とtoeicⓇテストの相関をみると、相関係数r = .68 で「中程度の相関がある」が、

33

TOEIC・英検対策

17%TOEFL・ IELTS対策

6%

その他英語資格に

関する質問8%

特定スキル(4

技能、語彙、文

法、発音)

15%

留学関連:留学希

望、留学準備など19%

その他

35%

■G大学

相談者の 70%近くが1年生である。「その他」が多いの

は、英語学習の方法、学習習慣の付け方など、学習へ向

けての基本的姿勢に関わる相談が多かったものと思わ

れる。7月、9月の「その他」が多いのは e ラーニング

授業担当教員が学生に「グループカウンセリング」を受

けるよう促したため。

2.8 ESAC:まとめ

学習アドバイザーを導入して英語学習を進めようとする大学の態勢に応じて、対象となる学生

集団の規模、カウンセリングの内容、形態はさまざまである。本レポートの調査対象の9カ月を

見てみると、リピーターがコンスタントに発生していることが分かる。大学側の働きかけ、また

は、利用した学生本人が自らアドバイザーの利用価値を認めていることを示しているものと思わ

れる。

アドバイザーは基本的に、学習者に教えず、学習者の取り組みを否定せず、学習の結果を評価

しない。ひたすら、学習者個人に寄り添い、個人の事情を踏まえて、学習を自分で継続していけ

るように背中を押して、支援する。学習習慣のついていない新入生も、海外の大学院進学を目指

す3年生も、それぞれに悩みを抱えつつ学習を進めている。ESAC資格者を利用することでそ

のような人たちを支援しようとする教育機関が増えている。

*本報告書作成に当たっては金谷 憲・元東京学芸大学教授から貴重な助言をいただきました。東京都立国際高等学校か

らは貴重な資料の引用をご許可いただきました。

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 割合

TOEIC・英検対策 2 1 1 6 2 9 5 6 2 34 17.1%

TOEFL・IELTS対策 4 1 1 5 0 0 2 0 0 13 6.5%

その他英語資格に関する質問 1 0 0 4 0 4 2 4 1 16 8.0%

特定スキル(4技能、語彙、文法、発音) 4 0 4 5 8 5 0 4 0 30 15.1%

留学関連:留学希望、留学準備など 9 8 2 1 2 5 5 2 3 37 18.6%

その他 2 7 0 23 1 21 8 4 3 69 34.7%

計 22 17 8 44 13 44 22 20 9 199 100.0%

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