fcpa 外国公務員贈賄規制

39
外外外外外外外外外 FCPA 外外外 外外外外外 、~ 外外外 外外外外外外外外外外 外外 外外 2016 外 7 外 1 外 外外外外外外外外外外外外外外外外外外外外外 外外外外外外外外外外外外外外外 外外外外外外外外外外外外外外外外 、体。

Upload: yuki-nakamura

Post on 12-Feb-2017

395 views

Category:

Law


3 download

TRANSCRIPT

Page 1: FCPA 外国公務員贈賄規制

外国公務員贈賄規制~ FCPA の概要、執行状況~弁護士・ニューヨーク州弁護士 中村 優紀

2016 年 7 月 1 日

本内容は、当職の個人的見解を述べるものであり、所属する法律事務所その他の団体の見解を示すものではありません。

Page 2: FCPA 外国公務員贈賄規制

2

自己紹介弁護士・ニューヨーク州弁護士2000 年 3 月 宮城県立仙台第二高校卒業2005 年 3 月 一橋大学法学部卒業2007 年 3 月 一橋大学法科大学院卒業2009 年 12 月 最高裁判所司法研修所修了 ( 新 62 期 )

   弁護士登録 ( 東京弁護士会 )2010 年 1 月 矢吹法律事務所入所2014 年 5 月 米国 Northwestern University School of Law 卒業 (LL.M.)2014 年 9 月~ 2015 年 6 月 米国 Gibson, Dunn & Crutcher LLP (San Francisco) 2015 年 4 月 ニューヨーク州弁護士登録2015 年 7 月 矢吹法律事務所復帰~現在に至る

7/1/2016

Page 3: FCPA 外国公務員贈賄規制

3

アウトライン1. 外国公務員贈賄規制の拡大2. FCPA の概要3. 日本の不正競争防止法

7/1/2016

Page 4: FCPA 外国公務員贈賄規制

4

アウトライン1. 外国公務員贈賄規制の拡大2. FCPA の概要3. 日本の不正競争防止法

7/1/2016

Page 5: FCPA 外国公務員贈賄規制

5

1. 外国公務員贈賄規制の拡大2015 年腐敗認識指数( Corruption Perceptions Index 2015 )

7/1/2016

順位 国名 点数1 デンマーク 912 フィンランド 908 シンガポール 8510 イギリス 8116 アメリカ 7618 日本 7530 台湾 6261 南アフリカ 4476 インド 3876 タイ 3876 ブラジル 38

順位 国名 点数83 中国 3788 インドネシア 3695 フィリピン 3595 メキシコ 35112 ベトナム 31119 ロシア 29136 ナイジェリア 26139 ラオス 25147 ミャンマー 22150 カンボジア 21175 北朝鮮 8

国際 NGO Transparency International ウェブサイトを加工

Page 6: FCPA 外国公務員贈賄規制

1. 外国公務員贈賄規制の拡大外国での贈賄の典型例

A国で国立病院建設プロジェクトを落札するため、事前に公表されない最低入札価格を聞き出す目的で、A国厚生省職員に現金を供与 B国で、環境基準を満たさない化学プラントを設置する許可を受ける目的で、B国検査機関の職員を接待 C国で、建築資材の輸入に係る関税を不当に減免してもらう目的で、C国税関職員にゴルフセット等の高額品を提供 D国で、競合企業より優位に立つため、商品の輸出の認可を優先的に処理してもらう目的で、D国公務員の親族に利益を供与

なぜ賄賂はだめなのか? 贈賄側―国際商取引における競争が公正でなくなる収賄側―発展途上国における法の支配、経済秩序を歪める(賄賂がないと仕事しなくなる)

Page 7: FCPA 外国公務員贈賄規制

7

1. 外国公務員贈賄規制の拡大歴史的背景~グローバルルールの形成

1976 年 ロッキード事件 米国上場企業に簿外債務の問題発覚、企業の公正な情報開示の要請

1997 年 連邦海外腐敗行為防止法( Foreign Corrupt Practices Act )①外国公務員への贈賄行為等を禁じる贈賄禁止条項②会社取引・資産処分を公正に反映した帳簿・記録の維持義務と、これを合理的に保障する内部統制システム構築義務 しかし、米国企業のみ摘発されると国際競争上不利、不公正との批判

1988 年  FCPA改正各国に対して利益供与禁止を義務付ける国際的な取り決めの締結や、各国制度の改変を積極的に求める規定(域外適用) 米国は、条約で外国公務員贈賄を規制しようと、 OECD に条約策定提案

1997 年 国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約( OECD条約)成立 OECD は、条約締約国の措置の同等性確保のため、条約の履行状況を相互審査

1998 年 日本、不正競争防止法を改正「外国公務員に対する不正の利益の供与の禁止」( 18条)を設ける

7/1/2016

YLO
丸紅が関与
YLO
丸紅が摘発
YLO
当時の田中角栄首相が米ロッキード社の航空機売込みで、同社から賄賂を受け取り、丸紅がその仲立ちをしていた。
YLO
企業ガバナンスは州会社法の規律に属するため、連邦法が制定される
Page 8: FCPA 外国公務員贈賄規制

8

アウトライン1. 外国公務員贈賄規制の拡大2. FCPA の概要3. 日本の不正競争防止法

7/1/2016

Page 9: FCPA 外国公務員贈賄規制

9

FCPA の概要疑問

アメリカの法律は日本企業には関係ない?共謀、幇助教唆、エージェント理論により摘発対象となる

接待だから許される?社会通念上の範囲を超えると贈賄と認定されうる

外国政府でなければOK?外国政府関係機関の関係者に対する贈賄も摘発される

第三者に支払うのであればOK?外部団体への寄付も摘発される場合がある

ファシリティーペイメントだから OK?適法かどうかの線引きが不明確、日本の指針では言及自体削除

親会社は関係ない?親会社が賄賂を承認していれば親会社も摘発される

→いずれも摘発対象となることに注意7/1/2016

Page 10: FCPA 外国公務員贈賄規制

10

FCPA の概要~規制当局米国司法省DOJ ( Department of Justice )主に刑事責任追及を担当。罰金、禁固刑、違法収益の没収

米国証券取引委員会SEC(Securities Exchange Commission)民事責任追及を担当。民事制裁金、違反行為の停止命令等

7/1/2016

Page 11: FCPA 外国公務員贈賄規制

11

FCPA の概要~規制当局FCPA の法執行件数(不起訴も含む)

7/1/2016

Gibson Dunn & Crutcher LLP “2015 Year-End FCPA Update” より抜粋

Page 12: FCPA 外国公務員贈賄規制

12

FCPA の概要~違反類型①賄賂禁止条項( Anti-bribery provision )

外国公務員に対して、賄賂の支払、その申込、約束、それらの承認を行うことを禁止収賄については処罰されない

②会計、内部統制条項( Accounting and record-keeping provisions ) 正確かつ適正な会計帳簿を作成し、取引及び資産を管理して記録する内部統制を確立し、故意に虚偽の記録を行い又は内部統制確立を怠ることを禁止「賄賂」としてではなく、会計上虚偽の項目で計上されることに対処 賄賂禁止条項の立証が困難な場合に、説明できない支払行為全般を指摘して、キャッチオール的に処罰民間贈賄(例えばキックバック)は、こちらで処罰

7/1/2016

Page 13: FCPA 外国公務員贈賄規制

13

FCPA の概要~域外適用 ①米国上場企業( Issuer )

親会社が米国で上場しており、日本子会社が日本で賄賂を支払った場合 ②国内関係者―居住者、法人等( Domestic concern )

米国に駐在する日本人社員、日系企業の米国子会社 ③米国内で行為の一部を行った者( Foreign person acting within the

United States ) 賄賂に関する電子メールや電話の送受信を米国内で行う 米国内に設置されている電子メールサーバーを経由していた場合も米国内での行為とみなされうる 米ドルにより米国外で賄賂を送金し、米国の銀行口座が資金決済の過程で用いられた場合(米国内でなされる行為を生ぜしめたとして、米国内で行為の一部あり)

④①~③について共謀( Conspiracy )、幇助( Adding and abetting ) 米国当局からは、日本企業に FCPA を適用する根拠として使うケースが多い 日本企業と米国企業が合弁事業に参加していて、その合弁企業が賄賂を支払った

→外国企業による贈賄行為、米国外の贈賄行為にも適用される点に特徴7/1/2016

YLO
発展途上国では信用の高い米ドルを海外口座(香港、シンガポール、スイス、ケイマン諸島)に支払うよう要求すること多い)
Page 14: FCPA 外国公務員贈賄規制

14

FCPA の概要~域外適用(続き)親会社、子会社の関係

親会社が子会社の贈賄行為を指示し、又はその他の方法により参加していた場合子会社が親会社の代理人として行為していると認められる場合

管轄について裁判で争うことは実務上ない訴訟長期化、国際的信用毀損をおそれて和解で終わることが多い米国の陪審員制度―贈収賄について敗訴、厳刑のリスク高いDOJ/SECが取引先企業に情報提供を依頼してしまうと、取引の存続に支障がでるおそれ

7/1/2016

Page 15: FCPA 外国公務員贈賄規制

15

FCPA の概要~構成要件 賄賂禁止条項は、以下の行為を禁止

①外国公務員等に対して②汚職の意図をもって( Corruptly )③営業上の利益を得る目的で④利益の申込、供与、約束、承認又はこれらを助長する行為

7/1/2016

Page 16: FCPA 外国公務員贈賄規制

16

FCPA の概要~構成要件(続き)①外国公務員等に対して

立法、行政、司法、国際機関、政治団体の個人への支払が、処罰対象となり、外国政府に対する支払いは禁止されていない 行政機関職員、裁判官、検察官、国会議員、国会議員秘書、国連職員 国有企業(外国政府機関、 foreign instrumentality )については、明確な基準はない

②汚職の意図をもって( Corruptly )「不当に、事業を自ら取得し又はその依頼者に取得させ、有利な立法又は規制を獲得し、外国公務員の職務上の不作為を誘発するような、外国公務員の職務の不当行使の誘発を意図すること」→社会的儀礼行為の範囲内の接待や贈答は、処罰の対象とならない

7/1/2016

YLO
FCPAガイドラインでは、①外国政府の持分割合、②重要な役員、取締役が政府により選任されている等の政府による支配の程度、③当該政府系企業及び従業員の外国政府による位置づけ、等を考慮するとされている。
YLO
ガイドラインThe FCPA prohibits payments to foreign officials, not to foreign governments.」
Page 17: FCPA 外国公務員贈賄規制

17

FCPA の概要~構成要件(続き)FCPA ガイドラインのケーススタディ

Q:米国上場会社 A社は、外国でのトレードショーで、現顧客又は見込み客合計 10 数名に、会場外で飲もうと誘い、控えめな代金を支払った。客の中には、外国公務員もいた。A:違反しない。 FCPA は、外国公務員に対する全ての接待を禁止するものではない。ブースで提供する飲み物、軽食、プロモーション品に比較すると、ある程度の費用が発生しており、提供相手も特定して選別されているが、この場合も汚職の意図を伺わせる事情はない。

7/1/2016

Page 18: FCPA 外国公務員贈賄規制

18

FCPA の概要~構成要件(続き)④利益の申込、供与、約束、承認又はこれらを助長する行為

以下はいずれも処罰の対象になる賄賂を支払う約束はしたが実際利益の供与はされなかった場合国際事業部長が某国の事業に関し賄賂支払を承認した場合賄賂を支払ったが不当な利益を得られなかった場合

現地コンサルタントを通じ商品を政府系企業に販売する場合第三者に提供する利益が、外国公務員に対して支払われることを知っていた場合( knowingly )=第三者が外国公務員に対して賄賂を支払う結果が生じるであろうと認識している場合は、処罰対象となる

7/1/2016

Page 19: FCPA 外国公務員贈賄規制

19

FCPA の概要~構成要件(続き)FCPA ガイドラインが定める第三者に関する「不正の兆候」( Red Flag )

①第三者エージェント、コンサルタントへの報酬額が過大②第三者ディストリビューターに対する不合理に過大な割引③コンサル契約上の委託業務内容が不透明④第三者コンサルタントが当初契約外の業務を行っている⑤第三者が外国公務員の親戚や近親者である⑥外国公務員の明示的な要求により第三者が取引に参加⑦第三者が国外で設立されたペーパーカンパニー( shell

company )⑧第三者が国外の銀行口座に支払を要求

7/1/2016

Page 20: FCPA 外国公務員贈賄規制

20

FCPA の概要~構成要件(続き)機械的業務に対する円滑化のための少額の支払( Facilitation Payment )

査証の発行、警察出動、郵便、電気、ガス、水道、電話、登記簿謄本発行といった機械的、非裁量的業務( routine governmental action )を促進させるために外国公務員に提供される少額の支払FCPA では例外的に処罰対象から除外。しかし、その例外の範囲は狭いので注意。

外国公務員に一定の裁量が認められている場合は、処罰の対象外国公務員の権限の行使に不当な影響を及ぼすことを目的としている場合支払の目的が違法の場合(関税の減額、禁制品の輸入)

7/1/2016

Page 21: FCPA 外国公務員贈賄規制

21

FCPA の概要~構成要件(続き)寄付

汚職の意図をもって外国公務員に対して影響を与えるための支払の隠れ蓑として行われる場合は違法①寄付の目的は何か②寄付を行う企業の社内規定に従った寄付であるか③外国公務員の要請に基づいてなされる寄付か④外国公務員に、寄付を行う企業が行うビジネスについての決定権があるか⑤ビジネスの獲得その他の便宜を図ることを条件として行われる寄付か 

7/1/2016

Page 22: FCPA 外国公務員贈賄規制

22

FCPA の概要~DOJ の調査(続き)

・大陪審( Grand jury )がサピーナ( Subpoena 、召喚状)を発行・サピーナの交付を受けた米国会社は、それに従って証拠を提出する義務を負う(日本にはサピーナの効力は及ばない)・提出する文書の範囲や、証言を行うタイミング等については、合理的な範囲で DOJと交渉可能・ DOJ は、サピーナに基づいて提出された文書や証人へのインタビュー等を通じて情報を集め、司法取引を行う

7/1/2016

Page 23: FCPA 外国公務員贈賄規制

23

FCPA の概要~ DOJ の調査(続き)米国外でのサピーナの執行

日本には米国の主権は及ばないので、サピーナが日本の会社に強制的に執行されることはない。しかし、日米司法共助条約により DOJ は日本所在の証拠入手が理論的には可能証人へのインタビューも、犯罪引渡条約によらない限り、強制的に米国につれてくることはできない(日本で同条約に基づいた引渡事例はない)。

他方、任意でインタビューに応じるため米国に入国したときに身柄拘束されるリスクがあるので安全に米国から離れることを確約するレター( Safe Passage Letter )を DOJから取り付ける。7/1/2016

Page 24: FCPA 外国公務員贈賄規制

24

FCPA の概要~DOJ の調査(続き)

・司法取引による事件解決①有罪答弁合意( Plea Agreement )②訴追延長合意( Deferred Prosecution Agreement )③不訴追合意( Non Prosecution Agreement )④不起訴処分( Declination )

7/1/2016

Page 25: FCPA 外国公務員贈賄規制

25

FCPA の概要~ DOJ の調査(続き)①有罪答弁合意( Plea Agreement )

有罪を認める答弁を行い、捜査協力をする代わりに、量刑を軽減することを検察官と合意する 裁判所は、合意された内容の量刑で有罪判決を下す →無罪推定の原則、合理的な疑いを超える立証の手間・コストを省ける

②訴追延期合意( Deferred Prosecution Agreement ) FCPA 事件のほとんどがDPA で処理される DOJ は起訴状を裁判所に提出するが、訴追が一定期間(通常3 年)猶予され、行為者が契約で定めた義務を遵守した場合、起訴が却下 ただし、罰金の支払、調査協力、事実を認めること、コンプライアンス措置導入等の約束をする →有罪判決を受けないため、入札資格停止処分等を避けられる

③不訴追合意( Non Prosecution Agreement ) NPA上の義務を果たした場合は訴追しないことを約束。約束事項は DPAと同じ 起訴状の提出はなく、裁判所の関与がない。

7/1/2016

Page 26: FCPA 外国公務員贈賄規制

26

FCPA の概要~ DOJ の調査(続き)④不起訴処分( Declination )

モルガンスタンレー( MS )の不起訴事例( 2012 年 4月)MS 不動産取引グループの上海事務所のマネージングディレクターが、不動産投資にあたって中国政府関係者に

500万米ドルの賄賂を支払ったマネージングディレクターは、 9ヶ月の禁固刑、違法収益の吐き出しとして約 24万ドルの支払、証券業等への永続的な従事禁止の制裁を受けるMS は不起訴

①MS には、従業員が贈賄行為を行っていないと合理的に信じるに足るコンプライアンス体制 を構築していた( 100% の予防を求めてはいない) ②DOJ に自主申告し、その調査に全面的に協力した

7/1/2016

YLO
当該マネージング・ディレクターがモルガン・スタンレーに勤務していた2002年から2008年の間、モルガン・スタンレーは以下を含むコンプライアンス体制を構築していた。① コンプライアンス業務に500名を超える担当者が専属的に従事② コンプライアンス部門による経営層への報告(CEO及びシニアマネジメント委員会に定期的に報告、取締役に直接報告することも可能)③ モルガン・スタンレーの贈賄防止ポリシー等を用意し、従業員の研修等を担当する専任の贈賄防止専門家を雇用④ コンプライアンス担当者が顧客との取引やハイリスク分野の従業員等を定期的に監視・監督⑤ 年中無休・24時間対応、多言語対応かつ通話無料のホットラインを設置⑥ 各従業員が贈賄のリスクやFCPA違反の行為につき特に記載したセクションを含む行動規範(code of conduct)の遵守について誓約⑦ 従業員に対する講義・Eラーニング等による研修を実施(2002年から2008年の間、アジア地域の従業員に対しては、米国FCPAにも対応した贈賄防止ポリシーに係る研修が合計54回行われていた)⑧ 不適切な支払を発見・防止するため、外部の法人・個人への支払に際し、複数の従業員が当該支払の承認手続に関与するシステムを構築⑨ 上記プログラムの継続的な評価・改善モルガン・スタンレーは、2002年から2008年の間、上記マネージング・ディレクターに対しても、少なくとも7回の研修(中国の国営企業の従業員も米国FCPAのもとでは外国公務員に該当するという内容も含む)を実施し、米国FCPAのコンプライアンスに係るリマインダーを少なくとも35回送り、米国FCPAの遵守を複数回書面で誓約させていた。
Page 27: FCPA 外国公務員贈賄規制

27

FCPA の概要~ SEC の調査非公式な調査

対象者に対して任意に情報提供、インタビューを要請公式な調査

非公式な調査では不足する場合に正式調査命令( formal order of investigation )を発出、サピーナに基づき強制的に証拠収集

7/1/2016

Page 28: FCPA 外国公務員贈賄規制

28

FCPA の概要~贈賄への制裁 ①罰金

法人:  200万ドル以下、 個人:  10万ドル以下 ただし、選択的罰金法( Alternative Fines Act )により犯罪行為の利益又は損失の

2倍が上限になるため、 1億ドル単位の罰金が科される ②禁固:  5 年以下 ③違法利得の放棄 ④民事責任

SECが発行体への民事責任追及 DOJ はそれ以外の類型(国内関係者、米国内で行為の一部をした者)への民事責任追及

⑤衡平法( equitable remedy )に基づく違法利益相当額及び利息の追徴 違法利益を企業に残すことは衡平に反し違法行為を助長するとの考え方 場合によっては違法利益の金額が数百億円に至り、罰金額よりも多額になりうる

⑥その他の不利益処分 米国連邦政府の入札資格停止事由 国際開発金融機関(世界銀行、アジア開発銀行等)の取引停止処分

7/1/2016

YLO
違反行為に関与した社員の社内処分社内処分のタイミング(早すぎるとその後の調査協力得られない)
Page 29: FCPA 外国公務員贈賄規制

29

FCPA の概要~日本企業の摘発 日本企業の摘発件数は 6件(贈賄が5件、内部統制違反が1件、 2016 年 6月現在)事件名 概要 制裁

日揮・ナイジェリア事件( 2011 年4 月)

日揮は、 1991 年、米国企業及び外国企業 3社とともに合弁企業を設立。 1995年~ 2004 年にナイジェリアのボニー島に LNG施設を建設する入札に参加し、 60億ドルで受注。受注に際して、ナイジェリア政府高官に総額 1億 8200万ドルの便宜を計った。

・和解金 2億1880万ドル(約187億円)のDPA・合弁企業に出資する米国企業との共謀又は幇助

丸紅・ナイジェリア事件( 2012 年1 月)

上記事件について、当該合弁企業との間で業務委託契約を締結し、代理人としてナイジェリアの公務員に対して不正な支払。

・和解金 5460万ドル(約 42億円)の DPA・共謀、幇助

ブリジストン・中南米事件2011 年 9月)

ラテンアメリカ諸国の販売を確保するため、米国子会社が、海外エージェントを通じてラテンアメリカ諸国の公務員に対して不正な支払。日本本社の部長が、米国子会社と共謀したとして、米国内での会議に出席後逮捕

罰金 2800万ドル(独禁法違反も含む)の PA 。部長に 24ヶ月の禁固及び 8万ドルの罰金刑。

7/1/2016

Page 30: FCPA 外国公務員贈賄規制

30

FCPA の概要~日本企業の摘発(続き)事件名 概要 制裁

丸紅・インドネシア事件( 2014 年3 月)

フランス企業とコンソーシアムを組成して、インドネシアで火力発電所向けボイラー案件を受注したが、そこで起用された代理店がインドネシアの公務員に不正な支払

・罰金 8800万ドル(約 91億円)の PA・捜査協力なし

日立・南アフリカ事件( 2015 年9 月)

日立の子会社が南アフリカのインフラ整備契約受注のため、南アフリカ与党のフロント企業を介して贈賄を行い、コンサルティング費用として計上

・ 1900万ドルの民事制裁金・内部統制条項違反

オリンパス・中南米事件( 2016 年3 月)

2006 年から 2011 年にかけて、米国子会社が中南米諸国での医療機器の販売を増大させるため、政府系医療機関の医療従事者に合計 300万ドル支払い、結果として 750万ドル以上の利益を上げた

和解金 2280万ドルの DPA

7/1/2016

日本企業の摘発件数は 6件(贈賄が5件、内部統制違反が1件、 2016 年 6月現在)

Page 31: FCPA 外国公務員贈賄規制

31

FCPA の概要~日本企業の摘発(続き)社名 国籍 法的地位 DOJ罰金・没収金 DPAの有無 禁固刑日揮 日本 共謀者 2億 1880万ドル あり丸紅 日本 エージェント 5460万ドル ありKBR/Halliburton アメリ

カ国内関連者 4億 200万ドル なし 3 年

Technip SA フランス

発行者 2億 4000万ドル ありSnamprogetti/Eni オラン

ダ / イタリア

親会社が発行者

2億 4000万ドル あり

Albert “Jack” Stanley

アメリカ

国内関連者 1080万ドル 収監 30ヶ月Jeffrey Tesler イギリ

スエージェント 約 1億 4900万

ドル収監 21ヶ月

Wojciech J. Chodan

イギリス

エージェント 約 70万ドル 保護観察 1 年合計 約 13億 1590

万ドル7/1/2016

日揮・ナイジェリア事件の全体像

内田芳樹「海外腐敗行為防止法( FCPA) の域外適用」国際商事法務 41巻 7号 976頁の図を加工

Page 32: FCPA 外国公務員贈賄規制

32

アウトライン1. 外国公務員贈賄規制の拡大2. FCPA の概要3. 日本の不正競争防止法

7/1/2016

Page 33: FCPA 外国公務員贈賄規制

33

日本の不正競争防止法~適用範囲不正競争防止法

第十八条  何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。属人主義により、以下が処罰対象

①日本国内で贈賄行為を行った者(構成要件の一部が国内)、又は②日本国外で贈賄行為を行った日本人海外でエージェントが賄賂を贈ったとしても、当該エージェントが日本人でなければ不正競争防止法の処罰対象とはならない ただし、日本本社が当該エージェントと共謀していた場合は、構成要件の一部が国内なので、当該日本本社が処罰対象となる

7/1/2016

Page 34: FCPA 外国公務員贈賄規制

34

日本の不正競争防止法~指針経済産業省「外国公務員贈賄防止指針」平成 27 年 7 月 30 日「営業上の不正の利益」について

ファシリティーペイメント事業者が現地法令上必要な手続を行っているにもかかわらず、事実上、金銭や物品を提供しない限り、現地政府から手続の遅延その他合理性のない差別的な不利益な取扱いを受けるケース そのような支払自体が「営業上の不正の利益を得るため」の利益提供に該当し得るものである上、金銭等を外国公務員等に一度支払うと、それが慣行化し継続する可能性が高いことから、金銭等の要求を拒絶することが原則

社交行為純粋に一般的な社交や自社製品・サービスへの理解を深めるといった目的があり、さらに外国公務員等の職務に関して、自社に対する優越的な取り扱いを求めるといった不当な目的もなければ、「営業上の不正の利益」を目的とする贈賄行為と評価されるわけではない。

7/1/2016

YLO
具体的には、次のケースが挙げられている。①企業から申請書を受け取った実体審査を担当しない窓口係員が形式的な不備等がないにもかかわらず、申請書への受領印の押印を拒絶するケース、②現地法令に基づき税金が還付されることとなっているにもかかわらず、税務署において合理的理由もなく一向に手続が進めてもらえないケース、③現地法令上、消防署から消防設備の点検を受ける義務があるにもかかわらず、当該消防署が点検の実施を渋るケース。
Page 35: FCPA 外国公務員贈賄規制

35

日本の不正競争防止法~指針(続き)「営業上の不正の利益」について

寄付行為通常、典型的な贈賄行為に該当(表面上は非営利団体に対する寄付の形式をとったとしても、当該寄付が実質的に外国公務員等に対する支払となっている場合)寄付に先立って、寄付先の役員やその親族等が自社のプロジェクトにかかる外国公務員等の関係者ではないこと、寄付後も寄付先の会計帳簿等を確認するなど合理的な範囲内で、外国公務員等の関係者への寄付金の還流がないことを確認する必要

第三者への利益供与以下の場合は、処罰対象となりうる

第三者と外国公務員との間に共謀がある場合外国公務員の親族が当該利益の収受先になっている場合など、実質的に当該外国公務員に対して利益供与が行われたと認められる場合外国公務員が第三者を道具として利用し、当該第三者に利益を収受させた場合

7/1/2016

Page 36: FCPA 外国公務員贈賄規制

36

日本の不正競争防止法~制裁 刑事罰

自然人に対する罰則 5 年以下の懲役若しくは 500万円以下の罰金

法人に対する罰則 3億円以下の罰金刑

日本の裁判所で、懲役刑の実刑判決が出たケースはなく、罰金額もアメリカに比べると非常に少ない 政府系機関からの処分

①独立行政法人日本貿易保険( NEXI ) 保険引受の拒絶、引受後でも保険支払の拒否、補償または支払済保険金の返還

②国際協力銀行( JBIC ) 融資契約締結前は、融資の拒否 融資契約締結後は、貸出停止、融資未実行残高の取消、または期限の利益喪失

③独立行政法人国際協力機構( JICA ) 一定の要件の下で、最大 18ヶ月間、調達契約の当事者となることを認めない、または調達契約を資金協力の対象としない

④外務省 6ヶ月~ 36ヶ月の期間、日本国が資金供与する事業に係る調達契約の当事者と認められない 7/1/2016

Page 37: FCPA 外国公務員贈賄規制

37

日本の不正競争防止法~摘発事例これまでの摘発件数は 4件のみ( 2016 年 6 月現在)当事者 概要 制裁

九電工( 2007年)

2004 年 4 月、社員 2名が、フィリピンにおける自動指紋照合システム事業への参入を巡り、フィリピン国家捜査局の長官ら 2名に 80万円相当のゴルフセット等を贈った

罰金 20 ~ 50万円の略式命令

パシフィックコンサルタンツインターナショナル( 2009年)

2003 年~ 2006 年に、ベトナム高速道路建設のコンサルティング業務を受注した謝礼として、管理局長に合計 82万米ドルを渡した

・会社に罰金 7000万円、また外務省及び JBICから 24ヶ月間の円借款事業および無償資金協力事業に関する受注失格の処分・代表取締役に懲役 2 年 6 月(執行猶予 3 年)。代表取締役以外の 3名に、懲役 1 年 6 月、 1 年8 月、 2 年(それぞれ執行猶予3 年)

7/1/2016

Page 38: FCPA 外国公務員贈賄規制

38

日本の不正競争防止法~摘発事例これまでの摘発件数は 4件のみ( 2016 年 6 月現在)当事者 概要 制裁

フタバ産業( 2013年)

自動車マフラー最大手の同社は、中国の現地工場の違法操業を黙認してもらうために、中国の地方政府幹部に対し、現金 3万香港ドル(約 45万円)及び女性用バッグ(約14万円)を贈った

元専務に罰金 50万円の略式命令

日本交通技術( 2015年)

2014 年、鉄道関連のコンサルタント業を営む同社が、インドネシア、ベトナム、ウズベキスタンの ODA 事業に関連し、鉄道公社関係者等に、現金約 7,000万円を支払った

・会社に罰金 9000万円の判決、及び外務省・ JICAが 36ヶ月間の無償資金協力及び資金協力事業への参加排除措置・元社長、取締役ら 3名に懲役 2 年~ 3 年(執行猶予 3年~ 4 年)の判決7/1/2016

→摘発件数の少なさから、 OECD は法執行努力が欠如していると日本を批判

Page 39: FCPA 外国公務員贈賄規制

39

ご清聴ありがとうございました。弁護士 中村 優紀矢吹法律事務所〒 105-0002 東京都港区愛宕 1-3-4 愛宕東洋ビル 3階TEL: 03-5425-6761(代表) 03-5425-6825(直通)FAX: 03-3437-3680E-mail: [email protected]://www.yabukilaw.jp/

7/1/2016