ヒト特異的な小腸の 尿酸トランスポーターを標的と …...transporter (eut)...
TRANSCRIPT
1
ヒト特異的な小腸の尿酸トランスポーターを標的とした創薬
名古屋市立大学
大学院薬学研究科 薬物動態制御学分野
助教 保嶋 智也
2
高尿酸血症
痛風 尿路結石
腎機能障害 動脈硬化
生体内における意義:強い抗酸化作用を有する
生体内におけるデメリット:血中に高濃度に存在すると様々な疾患を誘発
尿酸とは
3
引用:日経トレンディネット:夏の痛風は食事と水分補給を工夫して回避しよう(http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1008498/062300334/?rt=nocnt)
痛風患者数の推移(厚生労働省の国民生活基礎調査より)
引用:・http://blog.ryuzou.com/?eid=979153・http://www.oguchi-clinic.jp/memo-category04/memo06/・http://www.wound-treatment.jp/next/wound209.htm
痛風結節痛風発作
痛風に起因した病変部
痛風患者数は年々増加傾向
痛風
4
体内循環血
尿酸の移動(排泄方向)尿酸濃度200~500 μM
糞便中へ(排泄)約30% 尿中へ
(排泄)約70%
分泌
尿酸合成
尿酸の移動(供給方向)
再吸収
小腸
肝臓
腎臓
糸球体ろ過
尿酸の体内動態
尿酸合成
5
尿酸の細胞膜透過(体内動態)には、トランスポーターが必要である。
尿酸の体内動態
小腸
肝臓
腎臓
6
①尿酸合成酵素(キサンチンオキシダーゼ)阻害薬
プリン代謝物
ヒポキサンチン
キサンチン
尿酸
キサンチンオキシダーゼ
キサンチンオキシダーゼ
アロプリノール
フェブキソスタット
治療薬の現在
7
ベンズブロマロン
②尿酸排泄促進剤:URAT1阻害薬
プロベネシド
腎臓
治療薬の現在
8
既存の治療薬とその問題点
既に上市されている高尿酸血症・痛風治療薬には、
①尿酸合成酵素(キサンチンオキシダーゼ)阻害薬
②尿酸排泄促進剤(URAT1阻害薬)
があるが、
•尿酸の排泄を低下させる可能性が示唆されている(①)
•重篤な腎毒性を誘発する事例が報告されている(②)
•①②の治療薬で効果が認められない患者がいる
等の問題があり、異なる作用点の治療薬が求められている。
9
安西尚彦:URAT1阻害の意義:トランスポーターの視点から(http://www.urinorm.jp/current_topics/hyperuricemia/pdf/anzai.pdf)
高尿酸血症の約9割は「尿酸排泄低下」を伴う
病型からみた高尿酸血症の原因とメカニズム
10
Equilibrative Urate Transporter (EUT)の発見
小腸
肝臓
腎臓
11
EUTの機能解析(in vitro)
ヒトEUT安定発現MDCKII(イヌ腎臓由来)細胞を樹立*MDCKII: トランスポーターの機能解析で宿主細胞として汎用される
24 well plateに細胞を播種 [14C]urateを用いた輸送実験 液体シンチレーションカウンター
で放射活性を測定し輸送量を評価
EUTの機能を解析する。
12
タイムコース 親和性
EUTによる尿酸輸送ミカエリス定数(Km): 532 μM
ミカエリス定数と、血中尿酸濃度がほぼ同じ程度
EUTの機能(in vitro)
13
駆動力
促進拡散的な輸送様式を示したことからequilibrative urate transporter (EUT)と命名
Inhibitor Concentration
(mM)
Urate uptake
(% of control)
Inhibitor
Concentration
(mM)
Urate uptake
(% of control)
Riboflavin 0.1 N.D. Lactate 1 116.1 ± 2.7**
FMN 0.1 8.5 ± 0.8* 10 86.6 ± 3.4*
Allopurinol 0.5 92.5 ± 1.2* Nicotinate 1 68.1 ± 4.5*
Amiloride 0.5 81.2 ± 6.2* 10 71.9 ± 2.1*
BSP 1 18.2 ± 1.8* Oxypurinol 0.5 77.9 ± 3.6*
Benzbromarone 0.1 55.6 ± 2.8* PAH 1 98.1 ± 6.7*
Butyrate 1 73.0 ± 2.0* Probenecid 1 78.8 ± 2.1*
10 61.5 ± 2.4* Pyrazinate 1 76.5 ± 3.7*
DIDS 1 19.5 ± 1.5* Sulfinpyrazone 1 39.0 ± 0.4*
Estron sulfate 1 51.8 ± 7.3* Xanthine 0.5 56.3 ± 3.4*
Hypoxanthine 0.5 94.3 ± 2.4*
Indmethacin 0.1 79.2 ± 4.3*
阻害剤
riboflavin, FMN, BSP, DIDS, sulfinpyrazoneが、比較的強くEUTを阻害
N.D.: not detected
EUTの機能(in vitro)
14
発現分布
胎盤、小腸において高い発現
主な治療対象者である男性においては、ほぼ小腸特異的である
推定11回膜貫通型タンパク
トポロジー
EUTの特徴
15
赤: EUT緑: BCRP(刷子縁膜)青: 核
EUTは小腸上皮細胞の基底膜側に局在している
ヒト空腸組織切片を用いた免疫染色
EUTのヒト小腸における発現と局在
16
血中尿酸濃度
尿酸合成酵素
高等霊長類(ヒト、サルなど)
ラット、マウスなどのげっ歯類(それ以外の動物)
尿酸に起因した病態の罹患
尿酸分解酵素
200~500 μM 50~100 μM
あり あり
ありなし
あり なし
EUTの保持 あり なし
EUTは高等霊長類にのみ存在する遺伝子である。
治療薬の標的分子として、これまでに見逃されてきた可能性があるのではないか?
種差による尿酸動態の違い
17
• 1,3-15N2 Urateを定速静注• 尾静脈からの血液サンプルの経時的採取
麻酔下で小腸ループを作成 所定時間経過後、小腸ループ内からのサンプル回収
control(wild type)とtransgenic miceのデータを比較検討し、EUTの機能を解析する。
マウス小腸にヒトEUTを発現するtransgenic miceを作成
EUTの機能解析(in vivo)
18
Mean ± S.E. (control, n = 1; Tg, n = 3); dose of urate, 80 mg/h/kg.
Mean ± S.D. (control, n = 1; Tg, n = 3); dose of urate, 80 mg/h/kg. UA: 1,3-15N2 Urate
Time (h)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
Concentr
ation (
g/m
L)
0
5
10
15
20
25
30 Control
Tg (EUT)
尿酸(1,3-15N2 Urate)の血漿中濃度推移
尿酸(1,3-15N2 Urate)の小腸排泄
EUT導入により小腸における尿酸排泄低下
EUTが血漿中への尿酸供給経路として働いている
Control Tg (EUT)
Jejunum
Urate excreted (μg) 2.37 1.12 ± 0.08
CLexc (μL/h) 0.129 0.05 ± 0.02
Ileum
Urate excreted (μg) 5.19 1.46 ± 0.95
CLexc (μL/h) 0.283 0.06 ± 0.03
EUTの機能(in vivo)
19
新技術の特徴
EUTの生理的役割①小腸上皮細胞で合成された尿酸を血中に供給②血中から取り込まれた尿酸を再び血中に輸送
小腸での尿酸排泄増加
EUT阻害剤の作用小腸上皮細胞から血中への尿酸供給を阻害
EUTは有望な高尿酸血症治療薬の新規標的分子である。
糞便中へ
20
既存の医薬品との比較
EUT阻害剤のメリット
• 尿酸排泄低下型症例への対応
• 尿酸腎排泄促進剤の欠点(有機アニオン分泌系阻害による薬物相互作用)の回避
•EUT特異性の高い非アニオン型阻害剤(riboflavin類似化合物等)の可能性
•汎用性の高い経口剤の投与部位に当たる小腸が標的臓器
→体内移行(他臓器への分布)を抑えながら標的部位濃度を確保できるような薬物設計・投与設計の可能性
21
日本: 425億円1位:フェブリク
(キサンチンオキシダーゼ阻害剤)2位:ザイロリックを含むアロプリノール製剤
(キサンチンオキシダーゼ阻害剤)3位:ユリノーム
(URAT1阻害剤)その他:プロベネシド
(URAT1阻害剤)
世界: 638億円(フェブリク錠のみ)
2015年12月lesinurad(URAT1阻害剤)がFDAより承認される。
MLリソース:高尿酸血症治療剤より( http://www.medmk.com/mm/add/mp_hyperuricemia.htm )
高尿酸血症・痛風治療薬の市場規模(2015年)
22
想定される用途
EUT阻害剤(尿酸排泄促進剤)のスクリーニング方法・
スクリーニング系
• EUT導入哺乳類細胞:EUT単独系、SNBT1(尿酸取り込みトランスポーター)またはBCRP(尿酸分泌トランスポーター)との共導入系
• EUT導入アフリカツメガエル卵母細胞• EUT導入トランスジェニックマウス
23
医薬品開発に向けた課題
• 現在、EUT阻害剤のスクリーニングの実施可能なところまで研究が進んでいる。しかし、強力な阻害活性を示す化合物を見出すまでには至っていない。
• 今後、トランスジェニックマウスを用いた検討を推進し、in vivoにおける検討で、本モデルがヒトでの生体環境を反映するか検討を行う。
• 高等霊長類における病態モデルを作成し、検討を行う必要がある。
24
企業への期待
• EUT阻害剤の探索には、製薬会社で保有する化合物ライブラリーを使用させていただくことで、強力な阻害活性を示す化合物を見出すことが可能であると考えている。
• 高等霊長類を用いた薬物動態試験等を行う技術を持つ企業との共同研究を希望。
• 本技術の導入により、高尿酸血症・痛風治療薬開発に繋がると考えられる。このことから、生活習慣病治療薬の開発に力を入れる企業には、本技術の導入は有効であると思われる。
25
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:
小腸上皮細胞特異的な尿酸トランスポーター及びその利用
• 出願番号:
特願2017-152034
• 出願人:
名古屋市立大学、東京薬科大学
• 発明者:
湯浅博昭、保嶋智也、井上勝央、山本俊輔
26
お問い合わせ先
名古屋市立大学
社会連携センター(事務局学術課内)
TEL: 052 - 853 - 8041
FAX: 052 - 841 - 0261
e-mail: ncu_renkei@sec.nagoya-cu.ac.jp