中学校・情報教育 英語の授業において生徒の情報活...

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TG1 中学校・情報教育 英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み - ICT 機器を活用した Plus 単元の学習活動の工夫を通して - 大崎市立古川北中学校 後藤 孝浩 概 要 「教育の情報化に関する手引」(平成 22年文部科学省)の中で児童生徒の「情報活用 能力の育成」及び教員の「教科指導における ICT 活用」の重要性が示されている。本 研究は英語の授業において教員が ICT 機器の活用を図り,単元の指導目標を達成するた めの一助とするとともに,生徒が ICT 機器を活用することによる情報活用能力の基礎を 育成することを目指した一試みである。 1 主題設定の理由 現代社会においては,インターネットの利用がグローバルな情報通信の基盤となって久しい。総務 省の「情報通信白書(平成12年まで「情報白書」)」(平成26年度版)の第5章「インターネットの利 用動向」によると,我が国のインターネット利用者数は平成 25 年末で 10,044 万人,人口普及率は 82.8%に上る。6~12 歳の若年層においても利用者数は平成 24 年末から 4.3 ポイント増加し,73.3% がインターネットを利用している。インターネット世帯普及率では平成 11 年から 65.8 ポイント増加 し,平成 25 年末で 84.9%の世帯に普及しており,情報化は着実に進んでいる。 現在の中学生は,デジタルネイティブ と言われる世代である。コンピュータや携帯電話,スマー トフォンなどが広く家庭や個人に普及し,インターネットを介して,誰もが情報の受け手だけでなく 送り手としての役割も担うようになった。児童生徒の周囲にも携帯ゲーム機や携帯情報端末があふれ, 学校や家庭で使用ルール作りを行わなければならない状況が生じている。また,ネットワーク上の有 害情報へのアクセスやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)への情報発信など,モラルに配慮 した使用も求められており,児童生徒に情報や情報手段を適切に活用できる能力が必要とされるよう になってきている。 文部科学省では,「教育の情報化に関する手引」(以下「手引」とする)を平成22年に示した。「手 引」では,「教育の情報化」について以下の3つの視点を示している。 情報教育 ~子どもたちの情報活用能力の育成~ 教科指導における ICT 活用 ~各教科等の目標を達成するための効果的な ICT 機器の活用~ 校務の情報化 ~教員の事務負担の軽減と子どもと向き合う時間の確保~ 上記の3つの視点で,教育の質の向上を目指すこととした。「情報教育」の視点においては,「情報 活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点に情報活用能力を整 理し,相互に関連付けながらバランスよく児童生徒に身に付けさせていくことが提言されている。 各校種における教育の情報化については,学習指導要領の総則において記述されている。中学校学 習指導要領総則では,「各教科等の指導に当たっては,生徒が情報モラルを身に付けコンピュータや情 報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ主体的,積極的に活用できるように学習活動を充実す ることと,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と示されている。 生徒が情報化社会で成長していく過程において,様々な情報通信機器に触れる機会が増える中で, ICT 機器を活用した授業の機会を設け,社会の様々な変化に主体的に対応するための能力の基礎を培 ICT : Information and Communication Technology の略で,コンピュータや情報通信ネットワーク(インターネット等)などの情 報コミュニケーション技術のこと。 2 デジタルネイティブ:生まれたときからインターネットが空気や水のように,あたりまえの環境として存在していた世代のこと。

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- TG1 -

中学校・情報教育 英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

- ICT 機器を活用した Plus 単元の学習活動の工夫を通して -

大崎市立古川北中学校 後藤 孝浩

概 要

「教育の情報化に関する手引」(平成 22年文部科学省)の中で児童生徒の「情報活用

能力の育成」及び教員の「教科指導における ICT1活用」の重要性が示されている。本 研究は英語の授業において教員が ICT 機器の活用を図り,単元の指導目標を達成するた めの一助とするとともに,生徒が ICT 機器を活用することによる情報活用能力の基礎を 育成することを目指した一試みである。

1 主題設定の理由

現代社会においては,インターネットの利用がグローバルな情報通信の基盤となって久しい。総務

省の「情報通信白書(平成 12年まで「情報白書」)」(平成 26年度版)の第5章「インターネットの利

用動向」によると,我が国のインターネット利用者数は平成 25 年末で 10,044 万人,人口普及率は

82.8%に上る。6~12歳の若年層においても利用者数は平成 24年末から 4.3 ポイント増加し,73.3%

がインターネットを利用している。インターネット世帯普及率では平成 11年から 65.8 ポイント増加

し,平成 25年末で 84.9%の世帯に普及しており,情報化は着実に進んでいる。

現在の中学生は,デジタルネイティブ2と言われる世代である。コンピュータや携帯電話,スマー

トフォンなどが広く家庭や個人に普及し,インターネットを介して,誰もが情報の受け手だけでなく

送り手としての役割も担うようになった。児童生徒の周囲にも携帯ゲーム機や携帯情報端末があふれ,

学校や家庭で使用ルール作りを行わなければならない状況が生じている。また,ネットワーク上の有

害情報へのアクセスやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)への情報発信など,モラルに配慮

した使用も求められており,児童生徒に情報や情報手段を適切に活用できる能力が必要とされるよう

になってきている。

文部科学省では,「教育の情報化に関する手引」(以下「手引」とする)を平成 22年に示した。「手

引」では,「教育の情報化」について以下の3つの視点を示している。 ① 情報教育 ~子どもたちの情報活用能力の育成~ ② 教科指導における ICT 活用 ~各教科等の目標を達成するための効果的な ICT 機器の活用~ ③ 校務の情報化 ~教員の事務負担の軽減と子どもと向き合う時間の確保~ 上記の3つの視点で,教育の質の向上を目指すこととした。「情報教育」の視点においては,「情報

活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点に情報活用能力を整

理し,相互に関連付けながらバランスよく児童生徒に身に付けさせていくことが提言されている。 各校種における教育の情報化については,学習指導要領の総則において記述されている。中学校学

習指導要領総則では,「各教科等の指導に当たっては,生徒が情報モラルを身に付けコンピュータや情

報通信ネットワークなどの情報手段を適切かつ主体的,積極的に活用できるように学習活動を充実す

ることと,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」と示されている。 生徒が情報化社会で成長していく過程において,様々な情報通信機器に触れる機会が増える中で,

ICT 機器を活用した授業の機会を設け,社会の様々な変化に主体的に対応するための能力の基礎を培 1ICT : Information and Communication Technology の略で,コンピュータや情報通信ネットワーク(インターネット等)などの情

報コミュニケーション技術のこと。 2 デジタルネイティブ:生まれたときからインターネットが空気や水のように,あたりまえの環境として存在していた世代のこと。

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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っていくことは生きる力の育成につながるものと考える。 英語の授業で教員が ICT 機器を活用するメリットは,教材や文章を大きく提示することができるこ

とで,単語の発音を短時間に何度も練習させることが可能になるなどのインプット3活動を通して,

生徒に英語の単元目標達成の基礎を効率よく身に付けさせることができることであると考える。その

ことが,学習指導要領の外国語科の目標にある「聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコ

ミュニケーション能力の基礎を養う」(言語活動)ことにつながっていくのではないかとも考える。

また,生徒にも ICT 機器を活用する場面を単元ごとに設定して授業を行うことにより,生徒の情報

活用能力の基礎を培うことができると考える。 これらを踏まえ,本研究では,教科書の各 Unit よりもアウトプット4活動に特化した単元に着目し

た。「話すこと」「書くこと」の技能を育成することを目指した単元(Speaking Plus,Writing Plus)

や4技能を総合的に育成することを目指した Plus 単元(Multi Plus)の学習において,単元の目標達

成を目指しながら生徒に ICT 機器を活用したアウトプット活動に取り組ませることによって,生徒の

情報活用能力を育成することができるのではないかと考え,本主題を設定した。

2 研究目標

英語の授業において単元の目標達成を目指しながら生徒の情報活用能力を育成する指導の在り方を,

ICT 機器を活用した Plus単元における学習活動の工夫を通して明らかにする。

3 研究仮説

英語の授業の Plus 単元において,以下の手立てを講じることで,生徒の英語のコミュニケーション

能力の基礎を育成するとともに情報活用能力を伸長させることができると考える。

(1) 言語活動と情報活用能力との関わりを示した指導計画作成及び授業実践

(2) Writing Plus,Multi Plus の学習における ICT 機器を活用したワークシートの作成と集積

(3) 作成したワークシートの ICT 機器を活用した発表

4 研究の対象と方法

4.1 研究対象

大崎市立古川北中学校第3学年 男 49 名 女 31 名 計 80 名

4.2 研究方法

(1) 文献や先行研究を通した「ICT 機器活用」や「ICT 機器活用の授業づくり」などの理論研究

(2) 教員及び生徒の ICT 機器の活用方法の検討,実施,分析

(3) 単元に基づいた情報活用能力との関わり(指導計画)の作成と実施

(4) 実践の分析及び実態調査による生徒の変容の分析

(5) 研究のまとめと考察

(6) 新たな課題の明確化

5 研究の概要

5.1 研究主題及び副題について

5.1.1 英語と情報活用能力との関連性について

中学校学習指導要領では,英語の言語活動の指導事項において「聞くこと」「話すこと」「読むこ

と」「書くこと」の4技能それぞれについて,主に指導する事項として5項目ずつを挙げている。英語 3インプット:英語の学習においては,単語などの知識を習得したり,リスニングにより情報を得たりするための活動を指す。 4アウトプット:英語の学習においては,覚えた英語の知識を実際に使ってみる実践的な活動(英作文・対話など)を指す。

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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における情報発信及び伝達の手段は「話すこと」「書くこと」といった言語活動が中心となる。「話す

こと」では,

(ア)強勢,イントネーション,区切りなど基本的な英語の音声の特徴をとらえ,正しく発音する

こと。

(イ)自分の考えや気持ち,事実などを聞き手に正しく伝えること。

(ウ)聞いたり読んだりしたことなどについて,問答したり意見を述べ合ったりなどすること。

(エ)つなぎ言葉を用いるなどのいろいろな工夫をして話を続けること。

(オ)与えられたテーマについて簡単なスピーチをすること。

「書くこと」については,

(ア)文字や符号を識別し,語と語の区切りなどに注意して正しく書くこと。

(イ)語と語のつながりなどに注意して正しく文を書くこと。

(ウ)聞いたり読んだりしたことについてメモをとったり,感想,賛否やその理由などを書いたり

などすること。

(エ)身近な場面における出来事や体験したことなどについて,自分の考えや気持ちなどを書くこ

と。

(オ)自分の考えや気持ちなどが読み手に正しく伝わるように,文と文のつながりなどに注意して

文章を書くこと。

がそれぞれの指導項目である。

「話すこと」での(ア)に関しては,教員がインプット活動を通じて ICT 機器を活用することが可

能で,(イ)~(オ)と「書くこと」については生徒にアウトプット活動で ICT 機器を活用させること

が可能となり,英語の指導項目を踏まえた言語活動が活性化するとともに情報活用能力の育成が期待

できるのではないかと考える。

次に,英語の学習活動と情報活用能力との関連を考えてみると,例えば,英語をインプットする場

面のリスニングや対話で「必要な情報を聞く・読み取る・判断する」ことは,「情報活用の実践力」の

「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理」することに関連する。その聞き取った情報を適切

に「処理・創造」して意見を述べることは,「受け手の状況を踏まえた発信」をしていくことに関連す

る。また,アウトプットの際に自分の気持ちを伝えるためにスピーチすることは「相手の状況を考え

て発信」していくことであり,自分と相手の関係性を考慮し適切に「発信・伝達」していくことに関

連があると考える。さらに,「Eメールを書く」ことや「ウェブサイトの利用を通して資料を収集」す

る学習活動は,「情報の科学的な理解」の「情報を適切に扱うこと」や「情報手段の特性の理解」と,

「情報社会に参画する態度」の「情報モラルの必要性や情報に対する責任」と密接な関わりがあると

考える。 これらを踏まえ,「話すこと」「書くこと」の学習活動における ICT 機器の活用を通して,英語の単

元目標の達成を目指すとともに情報活用能力の育成が期待できると考える。 本研究では Plus 単元を指導する際,様々な単元がどの情報活用能力と関わるかを示す一覧表を作成

し,英語の単元と情報活用能力との関連性を明らかにしていく。

5.1.2 「ICT 機器を活用すること」について

ICT 機器を活用することは,効果的な単元の到達目標達成を目指しながら,生徒の情報活用能力の

基礎を身に付け授業を展開していく上での手段であり,ICT 機器を活用すること自体が授業の目的で

はない。具体例としては,映像などを情報提示することにより学習課題への興味・関心を高め,学習

内容の理解が容易になると考える。英語が苦手な生徒にとっては,ただ音声を聞いたり紙に印刷され

た文章を見て音読したりするだけでは文字と音声の対応が理解しにくく,リスニングや音読といった

学習活動は困難なものになると考える。教員が ICT 機器を活用して英語の単語や文章などの情報を見

やすく提示することは,発問・指示や説明が可視化されることで生徒の理解が容易になり英語の教科

指導の場面でも有効に活用できると考える。

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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本研究では,教員による ICT 機器の活用については,「インプット活動」で重点的に使用していく。

一例として,プレゼンテーションソフトを用いて単語の発音練習を行わせる際,英語が苦手な生徒た

ちにとってスクリーンを見ることで,どの語を発音しているのかが分かり,文字と音声の対応が理解

できるというメリットが生まれる。さらに,文章の音読練習ではスクリーンを見て,文章のどの部分

を読んでいるのかが一目で分かるようになる。全体から遅れずに自信をもって声を合わせた音読がで

きるようになることで,自分の声も聞きながら練習し,流暢さや抑揚の確認もできるようになると考

える。このように教員が Plus 単元を指導する際,文章の音読練習や単語の発音といったインプット活

動で ICT 機器を活用できる教材を作成していきたいと考える。 次に,生徒による ICT 機器の活用については,「アウトプット活動」の際に重点的に使用させたいと

考える。生徒に英作文活動をさせる際は,書かせたい主題に沿った文法をインプットさせた状態で英

作文させていく。それを日常生活と関連付けた「日記」や旅行の「回想」,「Eメール」といった主題

に沿って文章を書かせていく。本研究では,ICT 機器を活用して「ワークシート」に入力させ,集積

していきたいと考える。文書作成ソフトを使用してキーボードで英作文を入力させることで,情報活

用の実践力の中の「課題や目的に応じた情報手段の適切な活用」を育成することができると考える。

さらに,文法に則った文章の入力とともに,英作文に関連する画像を教員が著作権について説明しな

がらワークシートに貼り付けさせ,成果物(作品)として仕上げさせたい。単元によっては作成した

英文をEメールで実際に送信するといったアウトプット活動もさせていきたい。また作成した英文を

発表する際は,プレゼンテーションソフトや実物投影機を使用して自分の成果物(作品)を大きく提

示して発表させることで,受け手の状況を踏まえた発信・伝達といった情報活用の実践力を育成した

いと考える。 5.1.3 「Plus 単元」について

東京書籍の New Horizon English Course は,各 Unit と Plus 単元に分かれている。各 Unit は,本

文や練習問題で基本文を繰り返し学習し,基礎を学ぶ。Unit に続く Plus 単元では,前の Unit の文法

事項をスクリプトやモデル文に取り入れてあり,言語活動を通じて活用しながら定着を図る構成にな

っている。さらに Plus 単元はそれぞれの技能の活動はもちろん,英語の質問を聞いて答えを書く,重

要表現を聞いて書き取ることで確認する,モデル文を読んで構成を理解するなど,他の技能を用いた

活動を取り入れながら,4技能をバランスよく育成できる構成となっている。さらに Multi Plus で

は,Hop(モデル文を「読む」),Step(読んだ内容にならって「書く」),Jump(書いた文章を「発表す

る(話す)」,発表を「聞く」,聞いた内容について「質問する・感想を述べる(話す)」)という流れで,

4技能を結び付けながら活用できる単元となっている。

5.1.4 「学習活動の工夫」について

英語の4技能それぞれについて,ICT 機器を活用した学習活動を行う内容を以下に示す。

「聞くこと」:ネイティブスピーカーの音声が速くて聞き取りづらい場合,ICT 機器を活用してゆっ

くり再生することによって聞こえやすくすることができる。その際,音声のスクリプトを画面に大き

く表示してどこが読まれているのかを提示できると考える。

「話すこと」:日本人にとって発音しにくい「l」や「r」,「θ」といった記号を含む単語の発音練

習で,ウェブ上で公開されている口や舌の動きを示す動画を見て,視覚・聴覚を使ってネイティブス

ピーカーの音声を確認し,練習させることができると考える。

「読むこと」:自分が音読している音声を録音し,練習後に再度録音した以前の音読と比較すること

で,よりよい音読にしていこうとする意欲を高めたり,改善すべき点が把握できたりするようになる

と考える。

「書くこと」:文書作成ソフトで英作文の文書を作成させることや,英作文した文章をEメールで外

国の人に送信させる活動ができると考える。

「手引」が示す,「生徒の知識の定着を図るための教員による ICT 活用」と「自分の考えをまとめた

り,分かりやすく発表したり表現したりする生徒による ICT 活用」による学習活動を並行して行って

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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図 1 英語の有用性

図 2 文章の内容理解

いきたい。 なお,所属校での ICT 機器の導入状況は,コンピュータ室にコンピュータ 40台,デジタルカメラ各

学年に1台ずつ,電子黒板 1基,実物投影機1基,デジタルビデオカメラ1台,プロジェクタ2台,

小型スクリーン2台である。また各教室にはネットワーク環境(校内 LAN)が整っている。これらを

活用して学習活動を行っていきたい。

5.2 実態調査

5.2.1 実態調査のねらい

英語の学習及び英語学習における情報活用能力に関する実態調査を行い,指導の方向性や手立てを

探るための方策とする。また,授業実践後の研究仮説検証のための資料とする。

5.2.2 調査の対象

大崎市立古川北中学校第3学年 男 49 名 女 31 名 計 80 名 5.2.3 調査期日 平成 26年7月9日(水)

5.2.4 調査方法

(1) 英語の学習に関する意識調査(質問紙法:選択肢法)

(2) 英語の4技能に関する意識調査(質問紙法:選択肢法,自由記述)

(3) 英語の授業での情報活用能力に関する実態調査(質問紙法:選択肢法)

5.2.5 調査結果と考察

実態調査では,(1)英語の学習に関する意識調査,(2)英語の 4技能に関する意識調査,(3)英語の授

業での情報活用能力に関する実態調査を実施した。

(1) 英語の学習に関する意識調査

「英語の授業で学習したことは,将来,社会に出

た時に役に立つと思いますか」という質問では,「当

てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」と 88%

の生徒が回答し,社会に出てから英語が役に立つと

考えている(図1)。また「英語の授業で文章を読

み,全体的な内容を理解していますか」という質問

では,「当てはまらない」「どちらかと言えば当て

はまらない」と 41%の生徒が回答している(図2)。

以上のことから,本校の生徒は英語を有用である

と感じている一方,文章の内容理解に課題が見られ

た。全体的な英文の内容理解は単に単語や文法を理

解することのみによるものではなく,段落や意味の

まとまりごとに内容を読み取る訓練も必要である。

英語の言語の特徴として主要素が文頭にあるため,

文頭から意味を取っていく練習も必要である。

しかし,英語の文章を構成している最小の単位は

単語である。その単語が意味のあるまとまりを作り,

文法に則って結びついたものが文である。英語を苦

手としている生徒がつまずいているのは,単語や文法などの基礎力の部分であると考える。そのた

め,教員が効果的に単語や文法のインプット活動を行うために ICT 機器を活用した学習活動を展開

していくことにより,単語(文字)と音声の対応が理解できるようになることで生徒の小さなつま

ずきを解消し,文章の内容理解を進めていくための支援になると考える。そうした学習活動を充実

させていきながら単語や文法を習得させ,英文の内容理解の前段階として基礎力を高めさせ,英語

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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図 5 キーボードによる英文入力

図 6 情報の累積と自己評価

図 4 4技能で困っていること 図3 身に付けたい 4技能

図7 コンピュータを活用した英文メール作成

の文章の内容を理解できる生徒の割合を増やしていきたいと考える。

(2) 英語の4技能に関する意識調査

「英語の授業でどんな力を伸ばしたいですか(複数回答)」(図3)という質問に対しては,「話

すこと」や「書くこと」のアウトプットの力が5割

を超えた。また,4技能を身に付ける上で困ってい

ることは何ですか(複数回答)」(図4)では,ほ

ぼ7割が単語や文章の書き方が分からないと回答し

ている。このことから,これまでの授業において,

事前に範囲を指定しておき毎時間小テストで単語や

文の書き取りテストを行ってきたが,知識の定着が

十分ではないことが分かった。今後は単語や文章を

構成する要素の定着のためのインプット活動を,ICT

機器を活用しながら行い,生徒の書く力の基礎を培

わせながら情報活用能力を高めていく必要があると

考える。

(3) 英語の授業での情報活用能力に関する実態調査

「情報活用の実践力」については,本校の生徒は

「プレゼンテーションソフトを使って発表できます

か」の質問では,「当てはまらない」「どちらかと言

えば当てはまらない」と 67%の生徒が回答した。ま

た「インターネットを使って宿題の参考となる情報

を得ることができますか」,「コンピュータを使って

ウェブで検索し写真や絵を入れた掲示物や作品を作

ることができますか」については,半数以上の生徒

が「当てはまる」「どちらかと言えば当てはまる」と

回答しており,概ね身に付いていると考えられる。

一方で「コンピュータを使って正確にキーボードで

英文を入力することができますか」という質問につ

いては,「どちらかと言えば当てはまらない」「当て

はまらない」が 47%という回答を示している(図

5)。「情報の科学的な理解」については,「収集・整理した情報について累積し,それについて自己

評価したり修正したりする方法を知っていますか」という質問に対して,「どちらかと言えば当て

はまらない」「当てはまらない」という回答が 63%と半数を超えている(図6)。さらに「情報社

会に参画する態度」については,「コンピュータを活用した英文メール作成」については,54%が

「どちらかと言えば当てはまらない」「当てはまらない」という回答を示している(図7)。

以上の結果からこれまでの英語の授業では,教員による ICT 機器の活用が中心で,生徒が ICT 機

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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器を活用する授業場面はそれほど多くなかったことが分かった。今後は技術科の授業の他に,生徒

が英語の授業を通して ICT 機器の操作を重ねていくことで,キーボードの操作やソフトウェアの活

用に慣れ親しむことができると考える。このように授業の中で情報活用能力の基礎を育成していく

場面を設定し,長いスパンで取り組ませることで生徒の情報活用能力を育成していくための手立て

としたいと考える。

5.3 指導対策

5.3.1 年間を通した指導計画について

生徒の情報活用能力を育成していくためには単発の授業だけではなく,継続的な取組を行う必要が

あると考える。本研究では英語の授業における生徒の情報活用能力育成のため,生徒が ICT 機器を活

用する場面を,英作文を書いたりそれを発表したりする場面と捉え,授業実践の中に位置付けていく。

普段の授業では,既習事項を活用して主語や目的語を替えた簡単な英作文をさせる場面は多いが,あ

る程度まとまった分量を書かせて発表させることができるのは,Plus 単元である。Plus 単元は教科書

の各Unitの間に配置されている。第3学年では年間16回の実施だが連続して扱う単元ではないため,

単元と情報活用能力の関わりを示す表を作成し,年間を通して指導していきたい。また Multi Plus

に関しては,扱う題材についての英作文を発表する活動の際に,ICT 機器を活用して発表することで

生徒の情報活用能力を育成することができると考える。

それぞれの Plus 単元での基本的な文章や単語の指導に関しては,教員が ICT機器を活用して指導し

ていきたい。具体的には,単語の意味から連想できるイメージをプレゼンテーションソフトのスライ

ドに貼り付けて視覚的なインパクトを高め,語句のイメージを生徒に焼き付けたり,文章のどこを読

んでいるのか視覚的に分かるよう文章の色を変化させたりさせて,効果的なインプット活動としたい

と考える。

5.3.2 ICT 機器を活用して具体的な成果物を作成し集積することについて

Writing Plus や Multi Plus を学習する際は大まかに,覚えるべき文章表現や単語のインプット活

動をさせた後,学習した事項を活用したオリジナルの英作文を書かせるという構成となっている。一

例として,日本文化の紹介であれば,モデル文の内容を確認させた後,実際に英作文を書かせていく。

ここでコンピュータを活用して,自分の紹介したい日本文化の芸術・スポーツ・建築物等の画像をウ

ェブサイトから検索し,著作権について説明を加えながらワークシートに貼り付けさせる。その後に

自分の紹介文を英作文としてキーボードで入力させ,感想を記入後,保存させる。

1枚のワークシートを完成させることを通して,自分に必要な情報を主体的に収集・処理すること

と,受け手の状況を踏まえて発信することを通して,情報活用能力の観点の1つである「情報活用の

実践力」を育成する手だてとしていきたい。Plus 単元を学習するたびにワークシートを集積していく

ことで,自分の作ったワークシートを振り返ることができるようにする。その集積を続けながら自己

評価を繰り返すことで,「英作文の構成力」と「情報の科学的な理解」に関する力を育成し次回のワー

クシートをより良いものに改善できると考える。年間を通してこうした活動を行い,英語の単元の目

標を達成させるとともに,総合的に生徒の情報活用能力を育成していきたい。

5.3.3 作成した成果物の ICT 機器を活用した発表について

生徒に自分の英作文をワープロソフトで作成させ,ワークシートを生徒用の所定のフォルダ内に保

存させる。発表に際しては,コンピュータ内に保存されたワークシートのデータを開き,印刷する,

スクリーンに映すなど様々な処理過程を通して,課題や目的に応じた情報手段の適切な活用について

の能力を育成していきたいと考える。そして実際の発表段階ではただ自分の書いた英文を読み上げさ

せるだけではなく,聞いている人の方へ視線を向けさせる,誰もが聞き取れる声の大きさで話させる

といった,受け手の状況を踏まえた情報の発信・伝達について注意させながら,ICT 機器を活用させ

分かりやすい発表をさせる経験を積ませることで,情報活用能力を育成する手段としたいと考える。

5.4 授業実践の結果と考察

5.4.1 年間を通した指導計画について

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

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表1 指導過程

年間を通した指導計画については,補助資料表1のとおり情報活用能力の3観点とそれを更に詳し

く解説した8つの要素を示した上で,補助資料のとおり英語の Plus 単元と補助資料表 1の情報活用能

力がどのように関わっているかを示した。また,その授業の中で ICT 機器を活用する主体が教員なの

か生徒なのかも併せて示した(補助資料を参照)。

5.4.2 ICT 機器を活用した具体的成果物の作成と集積について

(1) 単元名「Writing Plus2 レポート 意見のまとまりをつけて書こう」

(2) 到達目標 決められたテーマについて,賛成・反対などの自分の立場を明らかにし,理由を述

べながらまとまりのあるレポートを,5文以上の英文で書くことができる。

(3) 指導過程 表1を参照

(4) 授業実践の結果

教員が ICT 機器を活用して授業を展開

する場面において,新出単語の確認の際,

プレゼンテーションソフトを使用した。

新出単語の意味をイメージ化した画像を

スライドに貼り付けて,その単語を何度

も繰り返し音読練習させた。また,賛成・

反対の理由を表す6つの英文を1つずつ

音読させる際も,1文ずつ左から右へ文

字の色が変わるようにスライドを作成し

て練習させた。さらに,それぞれの文章

が「レジ袋を禁止すべきである」という

意見に対して賛成か反対かを示す際,賛

成を丸印,反対をばつ印と分類して結果

が分かるよう示した。

生徒の ICT 機器活用については,文書

作成ソフトを使用して,レジ袋について

賛成反対の立場を英文でキーボードによ

り入力させた。

5.4.3 作成した成果物のコンピュータを活用した発表について

後日,教室で発表を行わせた。発表の前に,相手に伝わる発表として,次の5つの観点を示した。

①大きな声で話す,②ゆっくりと話す,③スライドを指し示す,④間を取る,⑤聴衆とアイコンタク

トをとる,の5点である。ワークシートには,評価の観点と発表者の名前を表にして全員に配布した。

この5つの観点を意識させ,リハーサルを 15分行った。実践を行った学級は 40名であるため,発表

を2時間とした。発表者以外の生徒は,評価の観点を基に発表と発表の間の 30 秒で,50 点満点によ

図 10 モニターでの音読練習 図9 キーボードでの英文打ち込み 図8 コンピュータを使用した英文作成

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

- TG9 -

図 11 生徒による発表

図 13 調査結果の比較

・普段とは違う形でパソコンを使って英語の授業が

できたので楽しかった。

・単語も文字だけの時よりイメージがつかみやすく

単語がとても見やすかった。

・音読練習の時,文章の色が変わっていくので合わ

せやすかった。

・英語をキーボードで打つのが初めてだったので難

しかった。

・みんなの発表がとても聞きやすかった。ゆっくり

大きい声で話すことが大切だと分かった。

・アイコンタクトをとりながら,伝えようとする気

持ちが伝わってきた。

資料1 授業後の感想

図 12 発表に対する評価に取り組む様子

図 13 調査結果の比較

53%

77%

72%

33%

53%

67%

プレゼンテーションソフトを使用

した発表

キーボードでの英文入力

コンピュータを使用した作品作り

情報活用の実践力に関する比較

7月 11月

り評価を行った。生徒が作成したデータをプレゼンテーションソフトに貼り付けてプロジェクタで投

影した。生徒はスクリーンと印刷した作品を見ながら発表活動に取り組み,聴衆の生徒は発表を聞き

評価活動に取り組んだ。

6 研究のまとめ

6.1 研究の成果

英語の授業と情報活用能力育成の接点をいかに見出す

かが本研究の目標であった。英語の授業の中で生徒が

ICT 機器を活用する場面を設定するため,Writing Plus

の授業において英作文の作成をキーボードで行わせた。

作成した英作文の発表では,作品を印刷した用紙とスク

リーンに映した作品の両方を見ながら生徒が発表を行っ

た。授業実践を行った結果,情報活用の実践力の項目に

おいて,キーボードでの英文入力とプレゼンテーション

ソフトを使用した発表に関する項目で,それぞれ 7月に

比べ 24ポイント,20ポイントの向上が見られた(図 13)。情報の科学的な理解の項目については,収

集・整理した情報について累積し,それについて自己評価したり修正したりする方法について,16ポ

イントの向上が見られた。この点については生徒自身が英作文を作成する際,文章を作成する題材を

整理・修正を行って完成させた点,さらにそれを用いて発表したことによるものと考える。

次に,生徒の授業後の感想において,単語の発音練習と文章の音読練習について,「画面に画像が映

るので意味や単語のイメージがつかみやすかった」,「教科書と違いとても見やすかった」,「音読練習

で色が変わるので読む速さを合わせやすかった」などの感想があった。また生徒の ICT 活用について

の効果として次の点が挙げられる。

①キーボードでの英文入力は初めてだったが,綴りを

覚えながら打ち方も練習できること。

②慣れると手で書くよりも速く打ち込むことができ,

結果的に速く仕上がること。

教員の ICT 活用に関しての感想は,以下の点が挙げら

れる。

①単語の音読練習の際にその単語をイメージ化した画

像を準備したので,生徒は理解しやすいと感じたこと。

②音読練習において文字の色を適度な速さで変えたこ

とにより,全体と読む速さを合わせやすかったこと。さ

らに,生徒に評価の観点を意識させたことによって,情

n=75

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英語の授業において生徒の情報活用能力を育成するための一試み

- TG10 -

報活用能力の 1つである「受け手の状況を踏まえた発信・伝達」を意識させることができた。事後の

感想には,「聞いていてとても分かりやすかった」,「みんなゆっくり話していて聞きやすかった」とい

う感想が多かった。この点で発表者が,自分の声やスクリーンを介して,聴衆にとって聞きやすい発

表ができたことは,次回につながる成果と考える。

生徒が ICT 機器を使用して学習課題に取り組むことで,情報活用能力の一端を向上させることがで

きることが分かった。また教員がインプット活動で ICT 機器を使用することにより,単語や文章の音

読で生徒の反応が向上し,より意欲的な取組となった。

6.2 今後の課題

教員の ICT 活用における単語の発音練習の際,プレゼンテーションのスライドを(例えば単語が5

つならば5枚というように)1セットしか準備していなかった。そのため最後のスライドにいくとま

た最初まで戻すための時間がかかった。予めスライドを複数セット作成しておくことで時間の短縮が

可能であった。

文章の音読練習では色が変わる速さを遅めに設定することによって大部分の生徒はしっかり練習で

きていたが,本時の授業では色が変わっていく速さについていくことができない生徒も若干名いた。

文章の長さと生徒の実態を事前に分析し,生徒の実態に合わせ速さの異なったスライドを複数枚用意

しておく対策も必要であると考える。

また,授業時に次の活動を教員が指示する際に,モニターに単語の意味イメージの映像を写したま

まにしておいたため,指示が伝わりにくい場面があった。余計な情報をモニターに映したままにせず

に,必要な情報を必要な時だけ映すことの重要性を感じた。

さらに,ノート活用と ICT 機器活用のバランスが悪かった。ICT 機器を活用するメリットは,対象

を大きく提示し視覚的に分かりやすく伝えることができること,反復が容易なことや即時性があるこ

とである。一方デメリットは有形として残らないことである。ノートを活用させることにより学習の

ポイントや成果が形として残り,家庭学習や復習において有効に活用できると考える。ICT 機器の活

用とノート活用のバランスが取れた授業が展開できるよう十分に検討しなければならない。

次に,機器整備の課題が挙げられる。ICT 機器を積極的に活用した授業を展開するため,無線 LAN

やコンピュータ,プロジェクタなどハード面の充実を図ることは重要である。予算が大きく関わる問

題であるため,状況の改善には時間が必要と思われる。現実には,工夫により改善できることを実施

することが求められると考える。具体的には,教室内での暗幕の使用やコンピュータを介さない投影

手段を講じるといった対策である。

最後に,研究そのものに関わる課題としては,英語の授業と情報活用能力の関わりをより深く追究

して,授業に反映させていくことである。本研究では英作文という非常に狭い学習活動においての ICT

機器活用を行ったが,英語の学習活動は英作文だけではない。幅広くコミュニケーション能力の基礎

を高めるため,4技能をバランス良く学習することが必要である。教科書の構成に従って,ICT 機器

を積極的に活用する場面の多い授業を計画しなければならないと考える。そのためには,ICT 機器を

活用する利点である即時性と視認性を積極的に生かすために,単元と ICT 機器の活用の関わりをより

深く追究していくことが必要であると考える。

これらの課題を克服するため,今後は授業における ICT 機器活用の場面設定をより深く検討してい

くことと,単元と情報活用能力との関わりをさらに検討していかなければならない。その上で,英語

の授業における単元の目標達成と情報活用能力の伸長を図る効果的な ICT 機器活用の在り方を,より

深く検討していきたいと考える。

主な参考文献

[1]文部科学省:「教育の情報化に関する手引」 2010

[2]総務省:「情報通信白書」,「平成 25年 通信利用動向調査」 2013

[3] 大修館書店:「英語デジタル教材作成・活用ガイド」 唐澤博・米田謙三 2014