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ヒトの味感覚を培養細胞で知る!
‐新しい味覚センサー細胞の構築‐
東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科
准教授 岩槻 健
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はじめに
• 味細胞は再生を繰り返す細胞である。ごく最近まで、味細胞の培養は困難であるとされてきたが、マウスにおいて我々は味幹細胞の特定に成功し、続いて味幹細胞の培養系(味蕾オルガノイド培養系)の構築に成功した。
• 味蕾オルガノイドは幹細胞を含み、すべての系列の味細胞に分化させることができるので、原理的にはすべての味質を感知することができる。
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従来技術とその問題点
これまで、げっ歯類を用いた味細胞の解析が多かったが、げっ歯類とヒトの味覚感受性は異なることが最近明らかとなった。
げっ歯類と霊長類では、
• 甘味、うま味については受容体の特異性が異なる
• 苦味については受容体の数と特異性が異なる
上記の問題があり、ヒトの味細胞モデルとしては不適切。
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従来技術とその問題点
ヒト ニホンザル ワオキツネザル
げっ歯類
アスパルテーム・ネオテーム
スクラロース(甘味)・キニーネ(苦味)・グルタミン酸ナトリウム(うま味)
霊長類
うま味受容体が受容するアミノ酸
約10種類(マウス)
35個(マウス)
マウス
苦味受容体
2種類(ヒト)
26個(ヒト)
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培地成分の検討
培養開始
舌サンプリング
EGFNogginWnt+α
6ヶ月間継代
酵素処理
舌
増幅、凍結
味蕾オルガノイド形成確認 呈味物質に対する応答解析
味細胞マーカーの発現確認
うま味 塩味甘味 酸味苦味
甘味応答うま味応答
+matrigel
Gustducin
PLCb2
T1R1
T1R3
① ② ③ ④
G3PDH
PLCb2タンパク質の発現
遺伝子発現
①②: 味蕾オルガノイド③④: コントロール
新技術:霊長類味蕾オルガノイドの作製
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった、甘味料に対してヒトと同じ反応をする味細胞を生み出すことに成功した。
• 従来は一種類の味覚受容体に結合する物質の味覚強度を推定するだけであったが、原理的に塩味、酸味、苦味、うま味、甘みの5基本味全てを測定できる細胞を作製した。
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新技術の特徴・従来技術との比較
↑
4 mM
aspartame
↑
0.25 mM
kinine
アスパルテーム
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想定される用途
• 本技術を用いることで、これまでヒトの官能評価に頼っていた部分を味細胞に置き換えることで「客観的な味の評価」が可能である。
• 上記以外に、霊長類味蕾オルガノイドは再生医療へ向けた基礎研究に利用されることが想定される。
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絵:中川
霊長類味蕾オルガノイド
新しい味物質、調味料の開発へ
再生医療へ
想定される用途
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実用化に向けた課題
• 現在、霊長類味蕾オルガノイドの作製に成功し、様々な味質に応答することが確認された段階にある。
• しかし、細胞の品質管理(QC)およびハイス
ループットスクリーニング系の構築など課題も多い。
• 今後、細胞のQCについて実験データを取得し、スクリーニング時の条件設定を行っていく。
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企業への期待
• 未解決のQCについては、培養方法の検討により克服できると考えている。
• 新規調味料・新規呈味物質を開発中の企業、再生医療の分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :霊長類由来の味蕾オルガノイドの培養方法及び該味蕾オルガノイドを用いた呈味物質のスクリーニング方法
• 出願番号 :特願2017-007181
• 出願人 :学校法人東京農業大学
• 発明者 :岩槻 健、大石 祐一
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お問い合わせ先
東京農業大学
かのう あさこ
総合研究所 加納 朝子
TEL 03-5477-2532
FAX 03-5477-2634
e-mail nri@nodai.ac.jp