ヒト脂肪幹細胞の、低酸素下における 増殖促進メカ...
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2015年10月13日
学校法人 関西医科大学
報道機関 各位
※1…2013年時点で31,500本掲載
1928年創立の私立医科大学、学校法人 関西医科大学(大阪府枚方市 理事長・山下敏夫、学長・
友田幸一、以下「本学」) 形成外科学講座・覚道奈津子(かくどうなつこ)助教、楠本健司(く
すもとけんじ)教授らの研究グループは、低酸素環境でヒト脂肪幹細胞を培養すると増殖が促進さ
れること、及びそのメカニズムに低酸素誘導因子(HIF-1α)を介した線維芽細胞増殖因子(FGF-2)
の作用が関与していることを解明しました。
本研究の成果によって、これまで未解明であった脂肪幹細胞の低酸素応答メカニズムの一部が明
らかになるとともに、脂肪幹細胞の大量生産技術として低酸素培養法が有効である可能性が生まれ、
再生医療への応用に役立つことが期待されます。
なお、この研究成果は10月14日(水)(米国東部時間・東部現地時間)、米国のオンライン科
学誌『 PLOS ONE』に掲載されます。
<発表論文>著者:Natsuko Kakudo, Naoki Morimoto, Takeshi Ogawa,Shigeru Taketani, Kenji Kusumoto論文題目:Hypoxia enhances proliferation of human adipose-derived stem cells via HIF-1α activation.ヒト脂肪幹細胞の低酸素下におけるHIF-1αを介した増殖促進効果論文雑誌:http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0139890
<本件に関するお問合せ> ※個別のレクチャーをご希望の際は、以下の連絡先までご一報ください。
学校法人 関西医科大学 法人事務局総務部広報課 担当:田村、岡田、小森
〒573-1010 大阪府枚方市新町2-5-1
TEL:072-804-2126 FAX:072-804-2547 E-MAIL:[email protected]
PRESS RELEASE
本学形成外科学講座・覚道奈津子助教らの研究チーム
論文掲載数世界一(※)の米国オンライン科学誌『PLOS ONE』に掲載
ヒト脂肪幹細胞の、低酸素下における
増殖促進メカニズムを解明
■本研究成果のポイント
・低酸素環境下での、 ヒト脂肪幹細胞の増殖促進効果を確認した。
・幹細胞の増殖促進機構には、
低酸素で誘導された線維芽細胞増殖因子が関与した。
・低酸素培養は、再生医療における
脂肪幹細胞の新たな大量生産技術として期待される。
楠本健司 教授 覚道奈津子 助教
報道解禁日
10/15(木)
AM 4:00
2015年10月13日
学校法人 関西医科大学
<本件に関するお問合せ> ※個別のレクチャーをご希望の際は、以下の連絡先までご一報ください。
学校法人 関西医科大学 法人事務局総務部広報課 担当:田村、岡田、小森
〒573-1010 大阪府枚方市新町2-5-1
TEL:072-804-2126 FAX:072-804-2547 E-MAIL:[email protected]
別 添 資 料
<本件研究の概要>
背景:近年、ヒト皮下脂肪組織中に存在する脂肪幹細胞( Adipose-derived Stem Cells: ASCs)の存在が知ら
れるようになり,骨髄由来幹細胞に代わる幹細胞として再生医療への応用が期待されています。少量のドナーサ
イトから多量の幹細胞を得るためには、細胞の大量生産技術が求められているとともに、その増殖分化制御シス
テムを解明することは科学の進歩に貢献するだけでなく、治療の効果や安全性を高めるのにも役立ちます。
一方、酸素濃度の変化が種々の細胞の増殖性をはじめとする生理活性に影響を与えることが報告されています
が、その ASCs への影響については未解明でした。本研究では低酸素培養における ASCs の増殖効果を検討し、
そのメカニズムについて解明を試みました。
研究手法:ヒト下腹部の正常脂肪組織を採取し、コラゲナーゼ処理により ASCs を調製しました。低酸素下、
通常酸素下にて培養を行って、細胞増殖度を検討しました。低酸素培養下における各種タンパク発現を Western
blot 法で測定して、 VEGF と FGF-2 の mRNA の発現とタンパク産生量を RT-PCR と ELISA で測定しま
した。 ASCs での HIF-1αの結合する低酸素応答性領域を調べて、 HIF-1αの発現低下が与える影響を検討し
ました。
結果:ASCs の細胞増殖は低酸素培養にて促進し、培養 7 日目では通常培養の 1.6 倍の細胞数に増加しました
(図1)。その増殖効果はシグナル伝達系の阻害剤で抑制される一方、低酸素下ではこれらの活性化に伴う、
HIF-1αの増加が認められました。低酸素培養下では VEGF と FGF-2 の mRNA 発現と細胞外分泌量は促進
しましたが、両者の増殖因子のうちで ASCs の増殖に影響を与えたのは FGF-2 であることを明らかにしまし
た。 FGF-2 遺伝子の HIF-1α結合部位を明らかにして、 HIF-1αのノックダウンは FGF-2 の mRNA を低下
させることをみつけました。従って、脂肪幹細胞の低酸素下の増殖促進機構には HIF-1αの発現を介した
FGF-2 の作用が関与することを解明しました(図 2)。
今後の展開:本研究から、 低酸素下における脂肪幹細胞の増殖促進機構が明らかになりました。低酸素下の脂
肪幹細胞は増殖が促進し、FGF-2 や VEGF などの増殖因子も多量に分泌することがわかりました。これらの
培養法や増殖因子が分泌された培養上清は、今後の再生医療応用への利用に役立つものと考えられます。今後、
研究をさらに発展させ、低酸素環境が脂肪幹細胞形質の維持や分化の調節などにおいて影響を与えるかどうかを
検討していく予定です。