『コーパスに基づく言語学教育研究報告』 no.9 (2012) ア...

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-203- 『コーパスに基づく言語学教育研究報告』 No.9 (2012) アジアの視座からの言語学を目指して:タイ 語研究を例に 峰岸 真琴 (東京外国語大アジア・アフリカ言語文化研究所) 要 旨 本稿は,グローバル COE プログラム「コーパスに基づく言語学教育研究拠点」(略称 CbLLE プログラム)の一環として,筆者の研究グループの行って来たタイ語の研究活動と その成果を具体例として紹介することにより,語彙論,形態論,統語論,談話分析の各レ ベルでの,言語研究の現状と今後の方向性を検討するものである。過去 5 年にわたるタイ 語の研究プロジェクトは,タイ日対照言語学を志向してきたが,その際孤立語であるタイ 語と膠着語である日本語の形態類型上の違いを克服するために,主として機能主義的な観 点からの対照を行ってきた。中でも本稿で取り上げた主題卓立型言語,必須要素の省略 (pro-drop) といった特徴は,タイ語と日本語だけでなく,広く東南アジア大陸部から東アジ ア諸言語に共通する一方で,近代西洋語には見られない地域特徴である。これらの地域特 徴を念頭に対照研究を行い,さらに東南・東アジアを俯瞰する言語類型地理論へと発展さ せることによって,将来的にはこれまで欧米を中心に確立されてきた西洋的言語観,言語 理論に対して,アジアの視座からの言語研究と理論化が期待される。 はじめに 言語とコミュニケーションのあり方が重大な関心事となっている現代社会において,今 や言語の運用に正面から取り組む研究が求められている。峰岸 (2011) では,20 世紀の言 語学の大きな流れを概観し,近代言語学に取り残された課題が,大きく言語運用に関わる ものと,複数の記号システムの併存に関わるものとに大別されることを示し,今後の言語 研究の方向性が,コーパスに代表されるような言語の運用データに基づく経験主義的な研 究にあることを論じた。理想としての言語研究は帰納的な経験科学であり,意味と言語機 能の問題を射程におくものである。また音声を基盤とする認知システムの一環として言語 を捉えることにより,言語を取り巻く周辺諸科学との協働を可能にすべき研究であること も期待される。 以上のような抽象的に表現された方向性は,仮に総論としては受け容れられるにせよ, その方向性に沿った言語研究が研究教育の実践の場で,どのように行われるのか,具体的

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『コーパスに基づく言語学教育研究報告』 No.9 (2012)

アジアの視座からの言語学を目指して:タイ

語研究を例に

峰岸 真琴

(東京外国語大アジア・アフリカ言語文化研究所)

要 旨

本稿は,グローバル COE プログラム「コーパスに基づく言語学教育研究拠点」(略称

CbLLE プログラム)の一環として,筆者の研究グループの行って来たタイ語の研究活動と

その成果を具体例として紹介することにより,語彙論,形態論,統語論,談話分析の各レ

ベルでの,言語研究の現状と今後の方向性を検討するものである。過去 5 年にわたるタイ

語の研究プロジェクトは,タイ日対照言語学を志向してきたが,その際孤立語であるタイ

語と膠着語である日本語の形態類型上の違いを克服するために,主として機能主義的な観

点からの対照を行ってきた。中でも本稿で取り上げた主題卓立型言語,必須要素の省略

(pro-drop) といった特徴は,タイ語と日本語だけでなく,広く東南アジア大陸部から東アジ

ア諸言語に共通する一方で,近代西洋語には見られない地域特徴である。これらの地域特

徴を念頭に対照研究を行い,さらに東南・東アジアを俯瞰する言語類型地理論へと発展さ

せることによって,将来的にはこれまで欧米を中心に確立されてきた西洋的言語観,言語

理論に対して,アジアの視座からの言語研究と理論化が期待される。

はじめに

言語とコミュニケーションのあり方が重大な関心事となっている現代社会において,今

や言語の運用に正面から取り組む研究が求められている。峰岸 (2011) では,20 世紀の言

語学の大きな流れを概観し,近代言語学に取り残された課題が,大きく言語運用に関わる

ものと,複数の記号システムの併存に関わるものとに大別されることを示し,今後の言語

研究の方向性が,コーパスに代表されるような言語の運用データに基づく経験主義的な研

究にあることを論じた。理想としての言語研究は帰納的な経験科学であり,意味と言語機

能の問題を射程におくものである。また音声を基盤とする認知システムの一環として言語

を捉えることにより,言語を取り巻く周辺諸科学との協働を可能にすべき研究であること

も期待される。

以上のような抽象的に表現された方向性は,仮に総論としては受け容れられるにせよ,

その方向性に沿った言語研究が研究教育の実践の場で,どのように行われるのか,具体的

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な研究のあり方を想起することは困難であろう。

本稿の第一の目的は,筆者の研究グループが CbLLE プログラムの一環として行ってきた

タイ語の機械辞書開発と,それに関わるタイ語研究を例として,語彙論,形態論,統語論,

談話分析とその各関連分野における今後の研究の方向性について検討を行うことである。

タイ語は東南アジア大陸部の主要言語の一つで,以下のような類型上の特徴をもっている。

1. 基本語順:2 項をとる構造は SVO (AVP),1 項をとる構造は SV, 修飾関係は被修飾語

である主要部 (head) に修飾語が後置される (NA)。

2. 動詞の多くは 2 項動詞あるいは 1 項動詞であるが,まれに 3 項をとるものもある。

3. 主題卓立的言語: topic prominent language とされ,文頭の名詞句あるいは副詞句が,

文全体の主題をなす。Li & Thompson (1976) を参照のこと。

4. 主語,目的語の「省略」:いわゆる pro-drop 言語であり,談話,会話において,指示

対象 (referent) が特定可能な場合,主語や目的語などのいわゆる「必須要素」が明示

されない1。

5. 形容詞は用言類:形容詞はヨーロッパの言語のように名詞類には含まれず,動詞類の

下位分類である。Prasithrathsint (2000) を参照のこと。

6. 単音節性:音節は声調の弁別を伴い,語は一音節,あるいは接頭辞を含む二音節を基

調とするが,語彙的には古くからインドの影響を受け,パーリ語,サンスクリット語

からの多音節の借用語を多く取り入れている。

7. 孤立語性:現代では「分析的言語」(analytic language)とも呼ばれる。わずかに派生接

辞(prefix と,クメール系の借用語に見られる infix のみで,suffix はない)があるの

みで,派生形態論は貧弱である。

8. 動詞連続: serial verb construction あるいは verb serialization と呼ばれる,名詞(句)

を挟んで,多くの動詞が語形変化なしに連続する構造を持つ。Bisang (1991) を参照の

こと。

これらの特徴のうち,1,2 は西欧近代語にも存在する特徴である。3,4,5 は東アジア

ならびに東南アジアの諸言語に共有される地域特徴である。6,7,8 は東南アジア大陸部の

地域特徴であるが,6 は中国語など東アジア諸言語の多くにも認められる特徴である。

以下でみるように,CbLLE のタイ語研究プロジェクトは,タイ語と日本語との対照研究

の観点からのものであり,両言語に共通する主題卓立型言語,必須要素の省略 (pro-drop) と

いう特徴に関して,主として機能主義的な観点からの対照を行ってきた。これらの特徴は,

タイ語と日本語だけでなく,広く東南アジア大陸部から東アジア諸言語に共通する一方で,

近代西洋語には見られない地域特徴である。従って,これらの地域特徴を念頭に対照研究

を行い,さらに東南・東アジアを俯瞰する言語類型地理論へと発展させることによって,

1 本来 pro-drop という用語は主語,目的語という統語上の「必須」構成素が明示されない場合に,音形を伴わな

い構成素を統語構造上に導入する必要から生まれた用語である。生成文法に限らず,特定の言語理論上の「解釈」

を前提とする用語を類型論上の「記述」に使うことは不適切であるが,他に適当な用語が見つからないために本

稿でも用いることにする。「省略」も同様に「あるべきものがない」という解釈を含んでいる表現である。同様に

不適切な例として,「非対格」「非能格」というように,本来意味論レベルの現象について,統語構造上の「元来

の位置」という解釈を含む用語がある。

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将来的にはこれまで欧米を中心に確立されてきた西洋的言語観,言語理論に対して,アジ

アの視座からの言語研究とそれに基づく理論化が期待される。

本稿の第二の目的は,そのような対照研究から言語類型地理論への展開を目指す試みと

して,東南アジア,さらに東アジア,東ユーラシアの言語の特徴を概観するような視座の

獲得が可能かどうかについて考えることである。

1. 語彙論的研究:コミュニケーション分析ツールと電子辞書の開発

従来の言語研究が文を分析の対象とする狭義の「文法」を中心になされてきたことは言

うまでもない。ある言語の語彙を扱う語彙論や,語彙を具体的なデータとして分類,整理

し,情報の形で使用可能にした辞典や語彙データベースは,理論的な研究の対象であるよ

りは,言語教育を中心とした実用的な開発として行われることが多い。しかし,文法が語

彙に含まれる大量の語(形態素)の配列・用法に一定の規則性を与え,効率的なコミュニ

ケーションを可能にする点で重要であることは当然であるにせよ,談話・テキストにおい

て圧倒的な情報量を持つのは実際には語彙であることから分かるように,文法研究と語彙

研究は言語研究を進める上での両輪である。また語彙の記述のあり方が文法記述のあり方

を規定するという相互依存性を持っていることからも,語彙論研究の重要性を改めて認識

する必要がある。

CbLLE では,研究目的に応じた言語分析のツールの開発を進めつつ,語彙研究の成果を

言語教育に応用するために,電子辞書の開発とその web 上での公開を進めてきた。これら

の研究開発は言語研究ならびに外国語教育の発展のためには不可欠であるが,個人の研究

としては進めることが困難であり,教育研究拠点として組織的に取り組むことが望ましい

と考える。

1.1. MDAS の開発

言語を認知システムの一環と考えてコミュニケーションの具体的な運用例を分析するた

めには,言語形式の一レベル,たとえば統語レベルだけを対象にするだけでは不十分であ

る。むしろ言語の具体的な現れである音声情報と,形態,統語,談話,機能レベルの情報

を相互に参照しながら分析を行えることが望ましい。

理想的には,身振りなどの非言語的コミュニケーションレベルの情報を参照しながら分

析を行うことが考えられようが,連続的な身振りを分節し,ダンスに関するようなアノテ

ーションを与える言語研究は,手話記述以外の分野では一般化していない。現状では,少

なくとも言語の具体的な現れである音声情報と,形態,統語,談話,機能レベルの分析を

相互に参照できるようなシステムが必要である。言語のさまざまなレベルを相互参照する

ことの必要性は,例えば語彙レベルで形態素とされる単位が連続して「音韻論上の語」,例

えば日本語でいう「文節」を形成し,文節を単位にアクセントが付与されること,さらに

は動詞を核として接辞や助動詞が複合し,形態論上のひとまとまりの「用言複合体」とな

るが,これは統語レベルでは異なる単位に分析されるなど,言語の本質として,各レベル

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の単位の境界区切りがずれることからも裏付けられよう。このような単位相互の本質的「ず

れ」は,言語運用において,あるレベルの情報が何らかのノイズにより欠損した場合,他

のレベルの情報から類推して補われる,といった際に有効に働いている可能性も考えられ

るため,各レベルを横断して分析できるツールの開発が望まれるのである。

日本語の自然言語処理の分野では,茶筅 (ChaSen) を始めとして形態素分析や品詞付与

のためのさまざまな分析ツールが実用化され,他の言語へと応用する開発も進んでいるが,

その多くはテキスト情報を分析するためのもので,音声データまでを総合的に扱うものは,

一般化していないようである。また,ChaSen の品詞定義,活用定義,連接表定義といった

処理以前の作業工程を正しく行うことは,一般の人文系のユーザーにとっては敷居が高い。

そこで,複数の分析レベルを参照し,さらには特定の機能に関する分析を行う,といっ

た言語コミュニケーション分析上のアイデアをできるだけ容易に実現するために,佐藤大

和グローバル COE プログラム特任教授(音声情報工学)を中心に進めてきたのが,MDAS

(Multi-Dimensional Annotation System) の開発である。その開発の詳細については,佐藤・峰

岸 (2011a), (2011b) を参照していただきたいが,このようなツールの開発には,開発に携わ

る工学分野の研究者に対して,言語研究者の側から,どのような動機で分析を行うのかを

できるだけ明確に示す必要があり,いわゆる文理共同研究が不可欠となる。

1.2. 電子辞書の開発

CbLLE では,赤木攻グローバル COE プログラム特任教授を中心に,紙媒体の辞書である

冨田 (2003) を電子化して web サイトで公開している。電子化と web 版の公開については

峰岸・赤木 (2009),Minegishi & Akagi (2009) を参照のこと。

一方,タイ国学士院版のタイ語辞典の語彙に基づいたタイ日辞典である冨田 (1997) をデ

ータベース化し,これを利用しながらタイ語の音韻,語形成,意味分析などの語彙論的研

究も進めている。具体的な研究成果としては,Minegishi (2011) を参照していただきたい。

1.3. 語彙論研究上の問題

言語の語彙には,社会の変動に従って常に新語が追加される。より本質的な問題として,

ある言語形式を多義的な一語とみなすか,同音異義語とみなすかには決定的な判断基準が

存在しないため,見出し語の認定と登録の問題は,どの言語にも存在する大きな問題であ

る。技術的には,電子辞書,より正確には機械可読辞書 (Machine Readable Dictionary, MRD)

の開発を進める一方で,文学作品や社会に流通する膨大なテキストデータを収集し,MRD

を用いて単語切り出し,スペルチェックなどの処理を行えば,未登録の語彙を機械的に抽

出した上で,新規の見出し語として登録するかどうかを吟味することが可能となる。ただ

し,CbLLE の研究では,具体的にその段階まで研究は進んではいない。一方,タイではチ

ュラーロンコーン大学を中心としてタイ語の電子コーパス化が進み,コーパスに基づく語

彙研究も急速に進展しており,最近の研究動向としては,意味論,統語論などの分野で,

コーパス研究が実を結びつつある。CbLLE 企画段階での定義に基づけば,今やタイ語は電

子辞書と国家レベルでのコーパスを持つ点で,「大言語」に属するのである。

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上記の見出し語の新規登録といった一般的な問題の他に,タイ語電子辞書の開発には孤

立語特有の問題が存在する。それは品詞の認定および各品詞の下位分類である。語が形態

変化を持たない孤立語においては,ある語が動詞であるか,名詞であるかといった品詞の

分類を行うには,当該の語の意味・機能(例えば名詞は対象を指示する参照機能を,動詞

は指示対象についての何らかの叙述を行う叙述機能を持つ)の他,どのような言語形式と

共起するかという形態・統語環境を基に行うことになる。例えば,タイ語と同系統であり,

ほぼ同様の類型特徴を持つラーオ語の名詞類と動詞類の区別について,Enfield (2007:3,

Table 1) は,主語の機能を果たす名詞句の主要部になれるか,所有を示す構造の「所有者」

になれるか,関係節を修飾語としてとれるか,あるいは関係節の修飾要素になれるか,叙

述機能において直接否定可能か,という分類基準を挙げている。

タイ語の名詞類と動詞類との区別はラーオ語と同様に可能であるとして,次に問題にな

るのは pro-drop 性である。日本語を含む多くのアジアの言語について問題になるように,

話し手と聞き手の間で了解可能な指示対象についてはタイ語はいちいち明示的に示すこと

はない。その結果として,意味論的には,2 項をとる「他動詞」が,談話,テキストにおい

ては目的語を伴わずに現れることがある。いわゆる「他動詞だが目的語が省略されている」

場合である。人間の解釈に基づく分析としてはこれで良いかもしれないが,電子辞書,特

にテキストの分析ツールとしての MRD ではこのままではいけない。言語学的には,どの

ような統語・談話環境において他動詞が目的語を伴わずに出現するのかを,また MRD の

品詞分類の観点から,ある動詞が出現した場合,どのような指示対象が目的語として想定

されているのかを明らかにしなければならない。さらによく考えてみれば,「必須要素の省

略」が可能であるというのが概念上矛盾しているのではないだろうか。そもそも自動詞・

他動詞という動詞の下位分類が non pro-drop な言語で確立された分類ではないか。

このような問題意識に基づいて,峰岸 (2007) および Minegishi(第 20 回東南アジア言語

学会口頭発表,チューリッヒ大学 2010 年),Minegishi (2012) では,タイ語動詞の意味上の

対立における「随意性・不随意性(自発性)」の重要性を主張した2。詳しくは同論文を参

照していただきたいが,随意性・不随意性は,目的語(補語)の存在,不在に関わらずそ

の判断が可能である点で,他動・自動の区別よりも本質的であること,さらにタイ語には

他の言語では自動詞であるような知覚,感情を表す動詞のうち,SVO 構造「補語(付加語)」

をとるものが多いこと,これらは直接目的語をとる「他動詞」というよりは,「位置 locus」

や知覚,感情の「刺激の位置 locus of stimulus」を意味役割として持つ補語をとる「自発動

詞」と考えるべきであることを主張するものである3。これらの知覚・感情動詞はまた,典

2 「随意」 (voluntary) に対する「不随意」 (involuntary) は,日本語でいえば「する」と「なる」に対応する対立

概念であるが,「不随意」は意志でコントロールできない「不随意筋」 (involuntary muscle) からの連想による命

名である。さらに,植物の成長,動物の生死など,そもそも人間の意志と関係のない現象に用いられる動詞の意

味を含めるには,「不随意」よりも「自発」(spontaneous) の方が対立を積極的に表現する(不随意は,intransitive 同様,消極的な命名である)点で,適切かもしれない。 3 動詞と名詞句(あるいは副詞)が連続する場合に,その名詞句が動詞の直接目的語であるか,付加語 (adjunct) であるかには,通言語的な決定的基準が存在しない。筆者は SVO タイプの孤立語については,「補語」(complement) という両者を含みうる用語がより適切ではないかと考えている。これは中国語文法でいう「賓語」,「客語」にほ

ぼ相当する。補語とすることで,ある構造が「他動詞+目的語」か,あるいは「自動詞+付加語」かを決定する

問題を回避することができる。Takahashi (2008) を参照のこと。

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型的な SVO 構造の場合にそうであるように,S による動作への積極的関与が被動作者で

ある O (P) に影響を及ぼすのではなく,逆に O から知覚・感情の主体である S へと影響

が及ぶと考えられる。受影性 (affectedness) の概念とそれを用いた日本語の分析については,

今泉 (2001) を参照していただきたい。

2. 形態論的研究:複合語形成の問題

語彙論の問題と関連する孤立語特有の問題は,複合語形成の問題である。孤立語には,

動詞の定形,非定形(例えば分詞,不定詞)といった形態上の区別がない。また形容詞は

独立した品詞ではなく,動詞類の下位分類である「自発動詞」あるいは「状態動詞」であ

る。従って,動詞が名詞を修飾して複合名詞を形成する場合,名詞 N2 が名詞 N1 を修飾す

る場合 (N1+N2) と同様に,N+V で複合名詞となる。一方,自動詞(1 項動詞)の場合,

主語名詞と述語動詞は N+V の語順となる。さらに他動詞(2 項動詞)の場合,タイ語は複

合名詞の主要部が修飾部分の主語機能を担うような構造を許すため,N1+V+N2 という構

造がある場合,原理的には形態論的な複合名詞(N1 を V+N2 が修飾する)なのか,統語上

の他動詞構文なのかの区別がつけられないことになる。この問題については,N1-N2-V 構

造を例にとって,統語論の節で考えてみることにする。

孤立語であるタイ語の形態論については,わずかに派生形態論についての記述はあるが,

もとより動詞の屈折が存在しないため,形態論の理論研究者の関心を引くことがないよう

である。形態論の標準的な教科書である Spencer (1991) でも,孤立語についての言及,特

に複合 (compounding) に関する記述はほとんどない。形態論の理論家の関心は,主として

複雑な派生接辞や形態統語論に向けられているようである4。

あらゆる現象を統語論的な枠組みから検討する近年の傾向は,孤立語研究にだけ認めら

れるわけではなく,いわゆる膠着語であり,接辞による複雑な用言構成法を持つ日本語研

究においても同様である。先に述べたように,音韻,形態,統語といった各レベルの単位

の境界は必ずしも一致するものではないことを考えると,孤立語の形態論と統語論につい

ても,どのような区別が可能か,改めて検討すべきであろう。

3. 統語論的研究:複合語形成と統語構造

Minegishi(口頭発表,ケンブリッジ大学 2011 年)では,日本語の「象は鼻が長い」に相

当するタイ語の N1-N2-V 構造に注目し,同構造が形態論でいう複合語に相当すると同時に,

統語上の文にも相当する現象を「同形態性」(isomorphism) として捉えて,それがいかなる

場合に複合語と見なされ,あるいは文と見なされるかについて検討したものである。

4 峰岸 (2006) で論じたように,形態論と統語論の区別は実は容易ではない。アメリカ構造主義言語学では,かつ

て拘束形式に関する記述を含むのが形態論であり,自由形式相互の関係を論じるのが統語論であるという区別 (Bloomfield 1935) があったが,これによれば理想的な孤立語には接辞がないために,形態論が存在しないことに

なる。

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語彙の全ての言語形式が自由形式である理想的な孤立語においては,形態上明らかな形

態論と統語論の区別がつけられない。このため,タイ語について機能主義的な観点から両

者の定義を試みた。すなわち,言語コミュニケーションにおいては,「何について述べるの

か」を指示する参照 (reference) 機能と,「それが何であるか,どのようであるか」を述べ

る叙述 (predicaton) 機能は普遍的に存在すると考えられるため,「ある言語で参照機能を担

うための適格な構造を形成するための規則の集合」を形態論が扱い,「形態レベルで適格に

形成された構造を用いて何らかの叙述を行うための規則の集合」を統語論が扱う,と定義

するものである。この定義により,言語形式の出現の自由度とは無関係に形態論と統語論

とを区別することが可能になる。

「象は鼻が長い」のような N1-N2-V 構造,さらには「彼女は旧姓が田中だ」のような

N1-N2-N3 構造は,Li & Thompson (1976) がこれに相当する中国語や日本語の例文を挙げて

「主題卓立性」を論じたために,またこれらに相当する構文が多くの近代西洋語に存在し

ないために,典型的な主題卓立構文と見なされている。これらの例文に関して Chafe (1976)

が指摘したように,他の構造からその一部の名詞あるいは副詞を前置した左方転位 (left

dislocation) により作られる構造は,主題化 (topicalization) されたものとされ,元々の位置

に主題を持つ (WH in situ に倣って topic in situ と呼ぶことにしよう)構文とは区別されて

いる。Topicalization はドイツ語やロシア語などでも一般的な現象であり,もっぱら談話機

能の観点から説明されてきた。

本稿では詳しい検討はしないが,(1a) の随意選択要素である関係詞 thîi を含むタイ語の

構造は,関係節により修飾された「性格の良い先生」という意味の名詞句である。

(1a) aacaan (thîi) nísǎy dii

teacher (Rel) nature good [N1-(Rel)-N2-V]

‘The teacher(s) who is/are good-natured.’

ここで第一に注目すべき点は,タイ語の N1-(Rel)-N2-V の N1 は,形態・統語レベルに

おいて,関係節の主名詞になれる点である。このことは,「主題は談話レベルの概念である」

という一般的な理解とは矛盾する。もちろんタイ語にも左方転位による主題化は存在する

し,それは談話レベルの現象として理解できるが,N1-N2-V は,形態上あるいは統語上の

構成物なのであり,同様に形態上あるいは統語上の構成物である他動詞構文 N1-V-N2 との

比較において,大まかに,前者は N1 の指示対象の持つ一般的な特質や比較的恒常的な状態

を示すのに対して,後者は N1 が関わる動作,事態を表すと言うことができる。これは,日

本語の「N1 は N2 が~だ」が,主題マーカー「は」の存在により,多様な構成素の左方転

位を示すのとは大きく異なるタイ語の(さらにはラオ語,クメール語,ベトナム語などの

東南アジア大陸部の孤立語の)特徴である。

一方,thîi のない構造 (1b) は「性格の良い先生」という形態論上の複合名詞であると同

時に,「(あの)先生は性格がいい」という文にもなりうる。実は,これは日本語と同様,

タイ語の aacaan(先生)が,一般名詞としてだけでなく,敬称として指示機能を担うこと

によるものである。

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(1b) aacaan nísǎy dii

teacher nature good

‘The teacher(s) is/are good-natured. / good-natured teacher(s)’

細かい検討は別稿に譲るが,N1-N2-V が,名詞句ではなく文にしかなれないのは, N1

の指示対象が「固有名詞,代名詞,類別詞+決定詞,名詞+類別詞+決定詞」の場合であ

ることが分かった。このことから,動詞の定形・非定形の区別のないタイ語の文形成にお

いては,述語動詞部分ではなく,むしろ名詞の指示対象が特定化されていることが重要な

機能を果たしていると考えられる。

タイ語の統語構造については,N1-N2-V だけでなく,さらに自動詞構文 N1-V(例:食

べ物が残っている/残った食べ物), 他動詞構文 N1-V-N2(例:先生が英語を教える/英

語を教える先生)を始め,基本構造の多くについて,一般名詞を主要部とする複合名詞と

しての解釈が可能である5。

4. 談話研究:pro-drop の機能

タイ語を始め,東南アジアや日本語の特徴の一つとして pro-drop が挙げられる。このこ

とは,上記の (1b) が実際の会話において指示対象が特定されている場合,(1c) のように

現れることによって示される。

(1c) nísǎy dii (na)

nature good (FP)

‘(He is) good-natured’

(1c) は決して複合名詞にはなれないこと,つまり文としてしか解釈されないことに,改

めて注目したい。これは形態論上の主要部の名詞が存在しないから当然であるが,逆に考

えると,話題の人物が特定されているから主題 N1 が「省略」されているというだけではな

く,「N1 が省略されていることによって,N2-V が(複合名詞ではなく)文である」ことが

明確化されていると言うことができる。つまり,pro-drop 現象とは,「何かが省略されて,

欠けている断片」ではなく,N1 の欠如により,N2-V が統語上の構成物であることが明示

される現象であると考えられる。言い換えれば,孤立語であるタイ語の文を統語レベルで

成り立たせる条件は,「主題 N1 の指示対象が特定化されていること」である。

上記のような談話レベルの問題を考えるには,単に作例の語句を基に検討するのでは不

十分であり,実際の会話コーパスデータの収集とデータベース化による研究が不可欠であ

る。しかし CbLLE プロジェクトの実施期間内では,辞書の電子化と語彙論的,形態論的な

研究にまでは着手したが,談話コーパス作成や分析にまで研究を進めることはできなかっ

た。今後の課題として,タイ語母語話者による研究の発展を期待したい。

5 N1-V-N2 の複合語については,日本語や英語の場合とは異なり,N1 が V-N2 の動作主である例が多く存在する。

(日本語でも「神隠し」は,神が誰かを隠すのであって,神を隠す訳ではない。)タイ語の「英語を教える先生」

を無理に直訳すれば「先生であって,英語を教える人(の)」とでも訳せようか。日本語でいえば「鳥の焼いたの

=焼き鳥」という感覚に近いのかもしれない。そう考えると,日本語の「鳥の焼いたの」の統語上の主要部であ

る形式名詞「の」に対して,形態レベルの構成素の主要部を実質名詞である「鳥」と考えることも可能であろう。

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5. 結論および理論的な展望

本稿では,まず CbLLE プログラムの一環であるタイ語研究プロジェクトにおける研究の

概要と主な成果を報告した。主な成果としては,語彙レベルでは電子辞書の開発,意味論

的な「随意性・自発性」の重要性の指摘,形態レベルでは複合語形成の問題,機能主義的

な観点からの孤立語の形態論と統語論との区別の定義,統語レベルでは複合語と文との区

別,談話レベルでは主題およびその形式上の欠如が文を文たらしめているという指摘が挙

げられる。

以上各レベルでの分析の過程では,東南アジア大陸部の孤立語であるタイ語の地域特徴

に加え,主題卓立性,pro-drop といった東アジアの中国語,日本語にも共通する特徴を念

頭に対照研究を行ってきた。これらの東南・東アジアの地域特徴は,いわゆる標準的な近

代西洋語 (Standard Average European, SAE) には見られない特徴である。今後中国語を初め

とする東アジアの言語や他の東南アジアの言語に関するデータを比較・分析し,総合的な

分析を行うことによって,将来的には東アジア,さらには東ユーラシア(ロシア語も含め

て)の視座からの俯瞰的研究が可能になると期待できよう。

以下では今後の言語研究を展望するために,本稿で紹介したタイ語の研究成果が日本語

や言語類型地理論,一般理論の研究にどのような意義を持ちうるかについて述べることに

する。

第一は,東アジア,東南アジアに共通する言語特徴の比較検討を通じての,「アジア的言

語観」を確立する可能性についてである。言うまでもなく,近代言語学は SAE のデータ

と SAE 話者の言語観によってデータの収集分析がなされ,理論化が行われてきた。筆者は

その言語観を「標準ヨーロッパ語の言語観」(SAE perspective)あるいは「西洋の言語観」

(Western perspective) と呼ぶが,それは典型的には「SVO (/SOV)という他動構文に見られる

ような人間の動作・イベント中心の言語観」である。その結果として,本稿で取り上げた

N1-N2-V のような属性・状態を主に表す構文には十分な検討が行われてこなかった。主題

卓立性についての通言語的研究が Li & Thompson (1976) 以来大きな進展を見せてこなか

ったことの一因は,この西洋の言語観にあると筆者は考えている。

一方,日本語の研究者は,「ハ」と「ガ」の区別に関わる構文,意味について広汎かつ詳

細な研究を展開してきたが,これに相当する東アジア,東南アジアの言語の構文を比較し,

アジアの諸言語を俯瞰する研究には至っていない。本稿のタイ語と日本語のデータのみか

ら地域特徴を語ることは早計だが,主題マーカーを持つ日本語(あるいは豊富な屈折を持

つロシア語)ではさまざまな要素の主題化が可能であるのに対し,孤立語であるタイ語で

は属性,状態の表現に限定されること,主題化は日本語では談話レベルの構造として理解

されるが,タイ語では統語レベルだけでなく,形態レベルにも存在する基本的構造の一つ

であることが分かる。同じ N1-N2-V 構文の意味・機能が異なること,また同じ pro-drop 言

語といっても,pro をどこまで省略できるかには,文脈だけでなく言語によっても相違が

あることから,今後同様の観点から,より広汎に分布する諸言語のデータを集めることに

意義があると期待される。

第二は,孤立語研究を発展させることを通じての,「文法観」の深化の可能性についてで

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ある。豊かな屈折を持つ古典インド・ヨーロッパ語の文法学,文献学に起源を持つ西洋的

な言語観と,それに基づく言語理論には,「文法接辞,特に定動詞こそが文の領域を定め,

領域内の他の構成素を支配する」という強固な思いこみがある。このような観点から孤立

語を分析した例として,コレージュ・ド・フランスで初めて東洋語としての中国語を教授

した Abel-Rémusat の教科書 Abel-Rémusat (1857) が挙げられよう。同書では,中国語の文

においては最後の動詞がヨーロッパ語の定動詞に相当し,他は分詞に相当すると述べられ

ている。Harden & Farrelly (eds.) (1997) によれば,このような分析に対し,フンボルトは一

つの文に一つの定動詞が存在するのはヨーロッパ言語の特徴であり,中国語はそうではな

いと考えていた。Minegishi (2011) を参照のこと。

筆者の考えでは,中国語(普通話)はおそらく北方の SOV タイプの言語の影響を深く

受けているため,孤立語を代表する言語とは言いがたい。むしろ東南アジア大陸部の諸言

語の方が,典型的な孤立語に近い。東アジアから東南アジアにかけて分布する諸言語の言

語類型地理論の可能性については,橋本 (1978) を参照のこと。タイ語を始めとする東南ア

ジア諸言語を研究することは,本稿でその一部を論じてきたように,個別言語の記述分析

を深めるためだけでなく,アジア的言語観を確立するために重要な意義を持っている。

よく知られているように,西洋の言語においては,典型的な文には定動詞が必須であり,

動詞が修飾語,修飾節として用いられる場合には,分詞,不定詞のように,フルスペック

の動詞の文法カテゴリー(人称,時制など)を一部欠いた「ダウングレード」された形を

とらねばならない。さらに言語によっては,従属節に典型的に現れる接続法といった動詞

の形式が用意されている。一方,本稿でタイ語について提案したように,「形態上適格な構

造」を「文」として用いるためには,形態上の主要部である N1 の指示対象が特定されれ

ばよく,会話者の了解さえあれば,それは形式上省略も可能である。これは,複合語が文

に「アップグレード」される要件を示している。このような分析の提案が妥当なものかど

うかは,今後の更なる研究に俟たねばならないが,仮に妥当な分析であるとすれば,文法

接辞などの機能語,形式に依存しない「非西洋的な言語観」を将来的に確立するための手

がかりとなるものであろう。

このような分析は単に「西洋語的な意味での文法を持たない」東南アジアの孤立語に限

らず,例えば日本語動詞の終止形が,歴史的には連体形に起因するものであること,従っ

て終止形は西洋語的な定動詞とは異なるものであることを想起させるものである。このよ

うな見方を発展させることにより,日本語を始めとした東アジア諸言語の文法構造,ひい

ては文法そのものの考え方の見直しにつながれば,将来的に「アジア的言語観」の確立の

ための期待を抱かせるものとなろう。

第三は,形態論,統語論という言語分析のレベルの再検討についてである。本稿で提案

した形態論と統語論の機能的定義は,孤立語の動詞連続も形態論レベルの分析の対象とす

る「大きな形態論」と,形態論で適格に形成された句の配列を扱う「小さな統語論」とを

考える,という提案につながるものである。本稿では触れなかったが,機能的定義に従っ

て見ると,タイ語の複合名詞形成は,動詞連続構造や受け身構文を含む,複雑でダイナミ

ックなものとなる。これは,従来の「貧弱な形態論を持つ孤立語」という見方を覆すもの

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である。

同様に,近年の統語論一辺倒の分析とは一線を画し,日本語の用言複合体の考察を形態

統語論の観点から再検討することにも意義があろうと考える。

謝 辞

筆者らのタイ語研究において,タイ語例文データベース作成を担当してくれた太田ワラ

ンヤ氏,ナリン・タップホン氏の両氏に感謝します。本稿の分析内容に誤りがあるとすれ

ば,もちろん筆者の責任によるものです。

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口頭発表

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