宇宙の標準モデル - daiichi-koudai.ac.jp超ひも理論による宇宙モデル...

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宇宙の標準モデル 宇宙論における宇宙とは、時間・空間・エネル ギー・物質など、すべてを含む概念。 宇宙初期に、インフレーションと呼ばれる急激 な膨張があった。 瞬時に何十桁,何百桁と急激に大きくなった。 インフレーションの膨張エネルギーが熱エネ ルギーに変わり、宇宙は熱い火の玉となり、 膨張する。これをビッグバンと呼ぶ。 1

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Page 1: 宇宙の標準モデル - daiichi-koudai.ac.jp超ひも理論による宇宙モデル •ブレーンワールド(膜宇宙)と呼ばれている。 •我々の住む3次元空間の世界は、高次元空

宇宙の標準モデル

• 宇宙論における宇宙とは、時間・空間・エネルギー・物質など、すべてを含む概念。

• 宇宙初期に、インフレーションと呼ばれる急激な膨張があった。

–瞬時に何十桁,何百桁と急激に大きくなった。

• インフレーションの膨張エネルギーが熱エネルギーに変わり、宇宙は熱い火の玉となり、膨張する。これをビッグバンと呼ぶ。

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宇宙の進化

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宇宙の大規模構造

← 一点一点が銀河

NASA/SDSS3

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銀河

一点一点が星 →

NASA4

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宇宙進化のシナリオ

• ビッグバンの後、膨張することで温度が下がり、素粒子から物質が構成されていく。

• (暗黒)物質の密度が高い領域に重力でさらに物質が引き寄せられ、星や銀河ができる。

• 星の中での核融合や、星の最後の超新星爆発などによって、重い物質が生成される。

• 超新星爆発で飛散した物質などが、再び重力によって集まり、銀河や惑星ができる。

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宇宙進化と物理理論

①宇宙が創生され、インフレーションで急膨張し、開放された潜熱によって素粒子が作られるまで。 ← 究極理論(超ひも理論?)

②ばらばらに飛び交っていた素粒子が、膨張によって温度が下がることで結合し、原子がつくられるまで。 ← 素粒子物理学

③原子が重力(引力)で引き付け合って集まり、星や銀河や銀河団をつくりながら、宇宙全体が膨張し続ける。 ← 一般相対性理論など

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宇宙進化と宇宙論

①宇宙のはじまり・物質の起源と進化

– 素粒子(論)的宇宙論

• 弦理論的宇宙論

• インフレーション理論

• ビッグバン宇宙論

②宇宙の構造の起源と進化

– 構造形成論

• 量子ゆらぎから宇宙の大規模構造(超銀河団)へ

• 膨張宇宙における暗黒物質の重力不安定性

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宇宙の根源的な謎①

• インフレーションはどのように起こるのか?

–宇宙はインフレーションではじまったという明確な証拠は、まだ得られていない。

• ただし、インフレーションを示唆する証拠は、WMAP衛星の観測などで得られている。

– インフレーション理論にはいろいろなモデルがあり、どれが正しいモデルか判断するための観測データがない。

• したがって、インフレーションがいつどんな理由でどのように起こったのか、判断できる証拠が無い。

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• 宇宙の大部分は正体不明

–全宇宙の9割以上の成分は、正

体不明である。

–銀河を成長させ、形作っている物

質:暗黒物質(DARK MATTER)は何か?

–現在の宇宙の膨張を加速させているエネルギー:暗黒エネルギー(DARK ENERGY)は何か?

–通常の物質(NORMAL MATTER)は数%しかない。

宇宙の根源的な謎②

NASAより

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インフレーションの謎への挑戦

• インフレーション期の宇宙は極めて小さいため、その解明には究極の小さい世界の物理法則が必要。

• しかし、究極の小さい世界の物理法則は、まだ完成されていない。

–最も有望だと思われているのが「超ひも理論(スーパーストリング)」と呼ばれるもの。

– しかし、超ひも理論は実験的には確かめられていない。

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超ひも理論による宇宙モデル

• ブレーンワールド(膜宇宙)と呼ばれている。

• 我々の住む3次元空間の世界は、高次元空間の中に浮かぶ膜のようなものかもしれない。

–超ひも理論は、9もしくは10次元空間で成り立つ理論。

• ビッグバンは、別の膜宇宙との衝突によって起こるのかもしれない。

• 暗黒エネルギーは、近くにある別の膜宇宙による重力の影響なのかもしれない。

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超ひも理論は検証できるか?

• この「ひも」は物質を構成する最も基本的な要素とされており、非常に小さなものである。

• 小さなものを観測するときほど、大きいエネルギーを必要とする。

• この小さな「ひも」を観測できるほど、大きなエネルギーを人工的につくることはできない。

• ビッグバンのエネルギーは十分に大きいが、直接観測するのは極めて困難である。

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ビッグバンはどこまで観測できるか

• 電磁波(光)で観測できる最も古い(最も遠い)宇宙の姿は、ビッグバンから約40万年後に光が直進できるようになったとき(宇宙が晴れ上がったとき)の姿である。– WMAP衛星やプランク衛星は、このときの電磁波を観測するものである。

• それより前の宇宙を観測するためには、重力波などで観測する必要があるが、技術的に極めて困難である。

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高次元空間は検証できるか?

• 超ひも理論は高次元空間を必要とする理論である。

• 昨年稼動し始めた巨大加速器(LHC)では、空間が3次元以上ある可能性なども検証しようとしている。

–稼動してすぐに故障し、修理調整中。今年後半には再開予定。

• 最新の状況は「LHCアトラス実験グループオフィシャルブログ」http://lhcatlasj.exblog.jp/等参照。

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正体不明な成分の謎への挑戦

• 暗黒物質の正体

–いくつかの具体的な候補が考えられている。

–近い将来LHCなどの加速器実験で検出されるかもしれない。

• 暗黒エネルギーの正体

–実証的なレベルでは、まったく分かっていない。

–最先端の物理理論(場の量子論)でも説明できない。

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暗黒エネルギーへのアプローチ

• 物理学の究極理論(超ひも理論?)を完成させる。

–究極理論が明らかになれば、おのずと説明できるかもしれない。

• 前提条件を疑う。

–一般相対性理論を変更するべきなのか?

• 変更を促すような観測データはほとんど無い。

• 変更の仕方は無数にあり、説得力が無い。

–一様等方性の仮定が間違っているのか?

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新たな物理学への幕開けか

• 現代宇宙論は、今までの科学では説明できそうもない大きな難問に直面している。

• 現代宇宙論の謎の解明は、新たな物理学への幕開けとなるかもしれない。

• 難問を打開する斬新なアイデアと、新しい観測技術が求められている。

• 困難が予想されるが、飛躍の可能性がある時でもある。

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新たな宇宙観への幕開けか

• 今の物理学を使って説明しようとすれば、今までの宇宙の状態についての前提条件を見直す必要がある。

–理論的可能性は無数にあるが、宇宙の状態についての仮定は観測で可否を明らかにできる可能性がある。

–暗黒エネルギーなどを説明するためには、いずれにしても何らかの大転換が必要と思われる。

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暗黒エネルギー

• 宇宙の約70%を占めている。

• 他のいかなる成分とも違う「何か」で、宇宙の膨張を加速させている。

• いまだその正体は謎のままである。

– 1998年、遠方の超新星を観測することで、宇宙の膨張が加速していることが発見された。

–それまでは、重力は引力なので、宇宙膨張は減速していると誰もが信じていた。

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暗黒エネルギーに関する一つの説

• 宇宙原理を放棄すれば、不可解な暗黒エネルギーは必要ないとする説がある。

–十分広い範囲では、宇宙は一様等方であると仮定する「宇宙原理」は、現代宇宙論の前提条件となっている。

–一方、暗黒エネルギーの条件を満たすものは、物理学(素粒子)の標準モデルには存在しない。

– この奇妙でありそうにない暗黒エネルギーの存在を結論するにいたった前提を再検証する試み。

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プランク衛星が始動

• 2009年5月、欧州宇宙機関(ESA)のプランク衛星が打ち上げられた。

• NASAのWMAP衛星とともに、宇宙論の観測的探求の集大成となることが期待されている。

• 公式ページ(英語):http://www.rssd.esa.int/index.php?project=PLANCK

Image : ESA21

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プランク衛星に期待できること

• 数あるインフレーション理論うち、どれが正しいか分かるかもしれない。

– インフレーション理論は初期重力波の存在を予言するが、宇宙初期に重力波がどれだけ存在していたかの指標になるBモード偏光が観測できる。

• 宇宙原理を見直すことができるかどうかがわかるかもしれない。

–不可解な暗黒エネルギーが幻である可能性を調べる。

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究極の物理理論と宇宙観測

• 究極理論を検証するための実験は、必要なエネルギーが高すぎて、実現できそうにない。

–ブレーンワールド(膜宇宙)などが本当か、実証できない。

• 宇宙観測の面では、プランク衛星以降も大きな計画が進行中であり、期待が持てる。

• 理論物理学の進展のためにも、ビッグバンに迫る観測技術の進展が必要である。

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今後の観測技術

• 電磁波による観測では、「宇宙の晴れ上がり」(ビッグバンから約38万年後)以降の姿しか観測できない。

• 宇宙の晴れ上がり以前の宇宙を観測するためには、重力波などを使う必要がある。–重力波は、まだ直接検出できていない。

• 世界ではじめに本格的な観測を開始したのは、国立天文台のTAMA300である。http://tamago.mtk.nao.ac.jp/spacetime/index_j.html

• 現在アメリカなどが、感度の良い検出器を持っている。

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