オンライン 英語発音トレーニング access to better...

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発 - 1 - オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発 今 関 雅 夫 1.はじめに 筆者は『帝京大学短期大学紀要第 22 号』(平成 14 1 月発行)で、インターネッ ト上の英語発音関連サイトを 15 ほど調べ、比較検討し、そこからネット利用の 理想的な英語発音トレーニング教材としては以下のような要素を備えていること が重要である、ということを指摘した。 語、単語レベルでは、正しい発音を聞き、反復発音練習を行う。また、学習 者の発音を録音、声紋分析し native speaker のそれと比較できるようにする。 最小対立(minimal pair contrast)、例えば、bag beg、というような 1 音の み異なる音を持った単語、1 音の違いで意味が違ってしまう単語を対比して 発音練習することも重要である。 句・熟語レベルでは、反復練習の他、音の連結 liaisonや同化 assimilationに対する練習も行う。 文レベルでは、反復練習の他、内容語・機能語(内容語は原則強く、機能語 は原則弱く速く発音される)、区切り方、イントネーションに注意して練習 をする。 文章・passage レベルでは、文レベルの内容に加えて、感情等の表現方法の 練習をする。 音声素材の録音に関しては、できれば reading のプロによるものが理想であ る。(今回は、プロではないが、アメリカ西海岸及び中西部出身の男女に模 reading 等をお願いした。また男性は学生時代、放送部のアナウンサーを した経験がある。)

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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オンライン・英語発音トレーニング教材Access to Better English Pronunciationの開発

今 関 雅 夫

1.はじめに

 筆者は『帝京大学短期大学紀要第 22号』(平成 14年 1月発行)で、インターネッ

ト上の英語発音関連サイトを 15ほど調べ、比較検討し、そこからネット利用の

理想的な英語発音トレーニング教材としては以下のような要素を備えていること

が重要である、ということを指摘した。

① 語、単語レベルでは、正しい発音を聞き、反復発音練習を行う。また、学習

者の発音を録音、声紋分析し native speakerのそれと比較できるようにする。

最小対立(minimal pair contrast)、例えば、bagと beg、というような 1音の

み異なる音を持った単語、1音の違いで意味が違ってしまう単語を対比して

発音練習することも重要である。

② 句・熟語レベルでは、反復練習の他、音の連結 (liaison) や同化 (assimilation)

に対する練習も行う。

③ 文レベルでは、反復練習の他、内容語・機能語(内容語は原則強く、機能語

は原則弱く速く発音される)、区切り方、イントネーションに注意して練習

をする。

④ 文章・passage レベルでは、文レベルの内容に加えて、感情等の表現方法の

練習をする。

⑤ 音声素材の録音に関しては、できれば reading のプロによるものが理想であ

る。(今回は、プロではないが、アメリカ西海岸及び中西部出身の男女に模

範 reading等をお願いした。また男性は学生時代、放送部のアナウンサーを

した経験がある。)

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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⑥ 語、熟語、文、そして passageなどの選択にあたっては、ただ単なる発音練

習のための発音に終わることなく、教育的視点から、つまり、学習者の教養

や人間性が高められるような英語表現や英文を選択すべきである。

 今回、筆者自身がオンライン教材を開発できる機会に恵まれたのを機に、上述

した点を念頭に置いて原稿の作成、制作の開始を行い、平成 19年 3月に一応の

完成をみた。このオンライン教材について、開発意図、ユニットそしてセクショ

ンそれぞれの構成意図、今後の課題と改善について述べる。

 

2.開発の背景

 基本的な単語や英語表現を正しく発音できない、英文を自信を持って発音でき

ない大学生が見受けられる。例えば、英作文の授業で、正しい英文を書いたにも

かかわらず、それを読んでもらうと、意味が伝わらないような発音で読む学生が

いる。コミュニケーションの手段としての英語を勉強するとき、語彙力、文法力

はどうしても必要であるが、コミュニケーションにおいて、意味を伝える役割の

大きな部分を音声が担っていることから、イントネーション、強弱、リズムを含

め、英語を正しく発音できるということが大切である。

 この教材は、音声、映像、音声分析ソフトを用いて、正しい英語の発音を、願

わくは飽きずに楽しみながら、習得することを目的に開発された教材で、同時に

また、発音トレーニングをしていく中で、語彙力・表現力も併せて高められるよ

うにも工夫された教材である。

 市販の教材でも、最近では CDを使った

音声教材だけではなく、映像を見ながら発

音練習ができる DVD教材も出てきている

が、ただその多くは、解説付の映像といく

つかの単語と例文の発音練習に終始して

いるようだ。

 オンライン英語発音トレーニング教材

(Access to Better English Pronunciation) の図 1

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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実際の開発・制作は、㈱ユニコンの水谷嘉治氏、帝京大学情報処理センター長・

宮地利彦教授、Aileen Zevely氏(音声素材の録音)、James Leveck氏(音声素材

の録音)、Norman Farrell, Jr.氏(英会話文の校閲)に協力を仰ぎ、2006年夏から

始まった。

 音声分析ソフトに関しては、市販のものは多機能であるが有料にせざるを得な

くなるため、今回は主に波形と声紋(フォルマント表示)、イントネーションに

特化して、スウェーデンの Royal Institute of Technology が開発したオープン・ソー

ス・ソフトウェアのWaveSurferを用いることにした。(図 1)学習者は、教材の

Unit 1 Section 5に書かれている指示に従い、自分のパソコンにダウンロード、イ

ンストールすることで自己の発音を

分析することが可能となる。

 図 2は、アメリカ人の Levick 氏に

“right” と “light” を発音してもらい、

声紋分析したものであるが、その違い

が画像を見て、目で確認できる。

 一方、次ページの図 3と図 4はそれ

ぞれ学生 S君と F君の発音を表示したものであるが、S君は綴りと意味の異なっ

た単語を発音したにもかかわらず、両者をほぼ同じに発音していることが分か

る。また、F君の発音は、声紋は Leveck氏の声紋とよく似ていることから、正

しく /l/ と /r/ を発音していることが確認できる。ただし、声紋模様が薄いことか

ら、Leveck氏と比較すると呼気の出が弱いと言える、つまり横隔膜を使った英

語の正しい発声法で発音が行われていないということである。

 このように、音声分析ソフトの利用も可能になったことで、音声学の 3つの

フィールドのうち、2つを使って発音法の指導ができることになった。ひとつは、

口のどの部分をどう使うかといった伝統的な英語発音法である調音音声学であ

り、他のひとつは、空気中を伝わった音をマイクで拾い、音声分析ソフトで分析

するとその音はどのような周波数で構成されているのかといった立場から音声を

研究する音響音声学である。これら 2つの音声学の領域を扱うことで、より正確

に発音法を指導することが可能になった。(残りのひとつは聴覚音声学であるが、

図 2

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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この領域も Unit 21 の「マガーク効果」の実験例で触れている。)

3.教材 Access to Better English Pronunciationの構成

 オンライン教材の学習開始の手順は次のとおりである。

 ブラウザーのアドレス欄に URLである https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/~abep/

auth/〉 を入れ、次の画面で「ユーザ ID」と「パスワード」欄に帝京大学が発行

する IDとパスワードを入れるか、または帝京大学八王子キャンパスのローカル・

ページ(〈 http://www.main.teikyo-u.ac.jp/〉)中央下段の「授業のホームページへ(先

生名で検索)」から「今関雅夫先生」、「Access to Better English Pronunciation」と

順にクリックしていくことで学習画面に辿りつける。

3-1.「はじめに」

 教材のホームページ最下段に、「はじめに」、「基本練習 (Pre-Unit)」、「発音トレー

ニング (Unit 1 ~ Unit 21)」の 3つのリンクが用意されている。

 「はじめに」では、なぜ発音学習が重要かを説き、この教材の特色、学習方法、

専門用語の解説を扱っている。発音学習の重要性については、「言語の本質は音

声であり、またコミュニケーションにおいて、意味を伝える役割の大きな部分を

音声が担っていることから、音声学習は何にも増して重要であり、イントネーショ

ン、強弱、リズムを含め、英語を正しく発音できるようになることを軽んじては

いけない」と記した。

 学習の仕方の注意点は以下のとおりである。

図 3 図 4

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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1. 発音の解説を読み、ネイティブの口の動きを参考に発音練習する。できれば、

鏡を用意し、自分の口の動きを確認しながら練習する。

2. 各ユニットのセクション 3と 4では、写真をクリックし、音声を聞き、発音

練習をする。

3. ネイティブの発音と自分の発音を音声分析ソフトで分析し比較する。学習者

自身の日本語での声紋も知っておいたほうがよいので、母音(ア、エ、イ、オ、

ウ)を録音し、それぞれの声紋の特徴をつかんでおく。単語レベルでは声紋、

文レベルでは波形やイントネーション機能を使うとよい。

4. 比較練習では、そのユニットの当該音声とそれによく似た音声を比較し、発

音練習をする。

5. Test のセクションでは、発音された単語をクリックして、正しく聞き取れる

かをテストする。特に、/l/ と /r/ のように日本人にとって難しい音については、

完璧に音の識別ができるまで繰り返しこの比較テストを受けることが重要で

ある。

6. 発音練習では、単語レベルから熟語・短文レベル、文レベル、会話レベルへ

と、聞いて発音するという練習をする。また、単語、表現は使用頻度の高い

ものを多く用意したので、何回も発音練習し自分のものにすることが重要で

ある。

 専門用語の解説では、音声分析ソフトで表示される周波数強度の記録である

spectrogram (スペクトログラム)とそこに現れる formant(フォルマント)、母音

と子音、有声音と無声音、音節などを取り上げ、解説を加えた。

3-2.「基本練習(Pre-Unit)」

 ここでは、まずアルファベットの発音練習を行う。ただし、よくある ABC順

ではなく、発音の特徴から以下の 7つのグループに分けた alphabet の発音練習で

ある。

 

 ・/iy/ B, C, D, E, G, P, T, V, Z

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 ・/e/ F, L, M, N, S, X

 ・/ei/ A, H, J, K

 ・/ju:/ Q, U, W

 ・/ai/ I, Y

 ・/ou/ O

 ・/a:r/ R

 

 慣れ親しんだ順ではなく、発音の特徴から分けた、普段とは違う発音練習をす

ることも重要である。次に、曜日、月、季節、挨拶等の常套句の発音練習へと続

く。ここでも、単語だけの発音練習にならないように、曜日には on Sunday のよ

うに on をつけて、月や季節には in January や in spring のように in をつけて発音

練習をすることにした。最後に 17の常套句 (How do you do? から I'm sorry. まで)

の発音練習をして、いよいよ本編に入っていく。

3-3.発音トレーニング (Unit 1 ~ Unit 21)

 本教材のメインである。学習ユニッ

ト数は全部で 21あり、内訳は、母音

の発音練習が 9ユニット、子音の発

音練習が 11ユニット、音連結や同化、

イントネーションなどの解説・練習、

これからの学習方法についてのアド

バイスが 1ユニットという構成になって

いる。(図 5)

 

目次

 Unit 1: /iy/ and /i/ Unit 5: /ɑ:/ and /ɔ:/

 Unit 2: /e/ and /ey/ Unit 6: /u:/ and /u/

 Unit 3: /æ/ and /ɑ/ Unit 7: /ay/ and /ɔy/

 Unit 4: /ʌ/ and /ə/ Unit 8: /au/ and /ou/

図 5

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 Unit 9: /ɑ:/ and /ɚ/ Unit 16: /ʃ/ and /ʒ/

 Unit 10: /l/ and /r/ Unit 17: /tʃ/ and /dʒ/

 Unit 11: /p/ and /b/ Unit 18: / / and /ð/

 Unit 12: /t/ and /d/ Unit 19: /w/ and /y/ and /h/

 Unit 13: /k/ and /g/ Unit 20: /m/ and /n/ and /ŋ/

 Unit 14: /f/ and /v/ Unit 21: より英語らしい発音を目指して

 Unit 15: /s/ and /z/

4.各ユニットの構成

 各ユニットは概ね 12のセクション

からなり、学習者は以下のようなス

テップで発音の学習をしていく。以

下、簡単に、ユニットの構成を説明す

るため、Unit 6 を例に、各セクション

を紹介する。

 Section 1 は、そのユニットのタイトルページであり、ユニットで取り上げられ

る音と発音記号が示されている。(Unit 6では、/u:/ と /u/ ) 発音記号の右にある

スピーカー印をクリックすると音声が流れる。(図 6)

 Section 2 では、まず発音解説を読

み、次に再生ボタンを押すと音声と共

にネイティブの口の動き(正面からの

ものと横からのもの)が動画で示され

る。これを参考に発音練習を繰り返し

行う。Unit 6の留意点は、/u:/ につい

ては「唇を丸くし、「ウー」と音を出しながら、さらに唇を丸く突き出していく。(緊

張音)そのとき、舌の後ろが少し上がっていく」、/u/ については「口は少し開け、

軽く前に突き出し、短く「ウ」と発音する(弛緩音)」となっている。学習者の

理解を助けるため、このように日本語で発音を示すこともある。(図 7)

図 6

図 7

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 Section 3 及び Section 4では、写真

をクリックしながら単語の発音練習

をする。導入部でもあるので楽しみな

がら発音練習してもらえるよう、写真

をクリックすると音声が聞けるとい

う形をとった。ここでの単語は基本的

なものに限り、写真の下に単語の綴り

と日本語の意味を入れた。また、当該発音は単語の文字を赤字または青字にする

ことで示した。(図 8)

 Section 5 及び Section 6 では、音声

分析ソフト WaveSurfer を用いて、ネ

イティブの発音と学習者の発音を比

較する。そのために、学習者は自分の

PCにこのソフトをインストールして

おくことが前提となる。また、自分の

発音を録音するためマイク付きヘッ

ドフォンが必要となる。当該音を発音するためには再度解説を読むことが重要と

考え、Section 5で少し詳しい解説を付した。(図 9)

 Section 7 では、minimal pair contrast

を用い単語の比較練習をする。Unit 6

では、pool - pull, suit - soot など、/u:/

と /u/ の違いを反復練習しながら習得

していく。音と spelling の関係に注意

を払ってもらいたいため、赤と青の字

を用いている。ここに出てくる単語も

概ね基本的な単語だが、minimal pair contrastを作るためどうしても頻出語彙では

ない語も含まれているが、語彙を増やす目的もあるので、力のある学生は積極的

図 8

図 9

図 10

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にこれらの語も覚えてもらいたいと考えている。(図 10) Unit 6 のこのセクショ

ンでは具体的には以下のように minimal pair contrastを示した。

 /u:/ /u/

pool 水たまり -- pull 引くsuit スーツ -- soot すす

Luke ルーク(人名) -- look 見るnuke 核兵器 (nuclearより) -- nook (人目につかない)隅fool ばか者 full いっぱいの

/u:/ /ɔ:/goon まぬけ、暴力団員 -- gone go の過去分詞cool 涼しい -- call 呼ぶboot ブーツ -- bought buy の過去形、過去分詞

上記の中では、nuke、nook、goon などが少し難しい語の例として挙げられるで

あろう。

 Section 8 では、聞き取りのテストを

行う。 Section 7で発音練習した語を用

い、どちらの単語が発音されたかを当

てる二者択一の小テストで、「設問開

始」の「設」または「問」のどちらか

の語をクリックすることで、異なった

答えがでるように工夫されている。特に、/l/ と /r/ 、/dʒ/ と /ʒ/ の識別練習には役

立つだろうと考えている。(図 11)

 Section 9 から Section 12 までは、単

語レベルから文レベルまでの発音練

習をすることになるが、ここでもま

た、当該ユニットで学習している発

音の部分が赤字または青字で示され、

図 11

図 12

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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spelling との関連に注意を払うようになっている。図 12が Section 9 のウェブペー

ジであり、その内容は以下のとおりである。

 /u:/ /u/

smooth 滑らかな、すべすべした look 見るloose ゆるい、ルーズな wool 羊毛

revolution 革命 push 押すrude 無礼な should ~すべきであるrule ルール cookbook 料理の本

include 含む good-looking かっこいいintroduce 紹介する football フットボール

cute かわいい curious 好奇心の強いsoup スープ nutrition 栄養(物)grew 成長した growの過去形

 Section 10 では、熟語・短文レベル

の発音練習を行う。ウェブページ上部

のスピーカー印を押すと熟語や短文

の音声が順番にポーズ付きで流れる。

それに対し、各熟語や短文の前に付い

ているスピーカー印を押すとその箇

所だけの音声が流れるようになって

いる。スピーカー印を押すとすぐに音声がでてくるよう反応をよくしているので、

ストレスなく繰り返し練習が可能である。(図 13)Unit 6 の Section 10 で学習す

る熟語や短文は以下のとおりである。

 

 Good afternoon. こんにちは。

 at school 学校で

 I like pop music. 私はポピュラー音楽が好きです。

 look up to ~を尊敬する

 look down on ~を軽蔑する

図 13

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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 I'm no good at arithmetic. 私は算数が不得手だ。

 She's in a bad mood. 彼女は不機嫌だ。

 That's good news. それは吉報です。

 He'll get over it soon. 彼はまもなく立ち直るだろう。

 Section 11では、文レベルの発音練

習をする。Section 10と同様、全体

用のスピーカー印と各文用のスピー

カー印を用意し、反復練習ができるよ

うにした。(図 14)また、ここで採用

された文は発音練習のための文では

あるが、日常会話でもよく使われる英

語であることも採用の条件であった。Unit 6 の Section 11 で学習する文は以下の

とおりである。

 

 China's economy is booming. 中国の経済は景気がいい。

 The book has definitely given me food for thought.

その本は私に考える材料を与えてくれた。

 Who's in charge? 責任者は誰ですか。

 He has an attitude problem. 彼は態度に問題がある。

 We're all rooting for you. 私たちは皆あなたを応援している。

 That can't be true. 本当であるはずがない。

 You look pale. 顔色が悪いよ。

 My left foot hurts. 左足が痛む。

 This is as good as that one. これもあれと同じくらいよい。

 If I were you, I wouldn't buy that cookbook.

もし私があなたなら、その料理本を買わないだろう。

 Section 12では、会話レベルの発音練習をする。(図 15)ここではスピーカー

図 14

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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印を 3つ用意し、1つは全体を通しで

聞くためのもの、あとの 2つは role

play練習用のもので、必要な間がとっ

てあり、ネイティブと擬似会話練習

ができるようになっている。Unit 6 の

Section 12 で学習する会話は以下のと

おりである。

 

Secretary: Woody Mart Corporation. May I help you?

Man: Yes, I'd like to speak to Mr. Wood, please.

Secretary: We have two Woods here. Do you know his first name?

Man: Oh, I don't know his first name. I met him at the timber exhibit in New York

last month. I promised to contact him when I came to Japan.

Secretary: Then, it must be Jack Wood, our president. I'm sorry, but he's on another line

now. Can you wait, or shall I have him call you back?

Man: I'll call him back in 15 minutes.

Secretary: All right. May I ask who is calling?

Man: This is Luke Smith.

Secretary: Mr. Luke Smith. I'll tell Mr. Wood that you'll call back in 15 minutes.

Man: Thank you.

Secretary: You're welcome. Good-bye.

 また、英語の歌を歌うことも発音向上につながることから、Units 8、9、19、

20 の各セクション 12では、よく知られた英米の歌 (My Grandfather's Clock、

Home on the Range、The Water Is Wide) を用意した。現段階では歌入りの音楽は

このオンライン教材では用意されていないが、ネイティブの発音を何回か聞い

たところで、聞くそばから、影のように後から追いかけて口に出す英語学習法

shadowing で発音練習をし、その後、ネット上の推奨MIDI(ミディ)を用いて歌っ

てもらえればと考えている。歌を入れたのは、学習のマンネリ化を防ぐねらいも

図 15

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あるが、英語の歌を発音練習で使うことにメリットが多くあるからでもある。個々

の単語の発音練習や大きな声を出すトレーニングにもなると同時に、強弱をつけ

ての練習、リンキング(音の連結)とは実際どういうものであるか等も学べる。

また、英語はリズム(音楽)のあることばであるという観点からも、音楽(歌)

を使うことは、ことばがリズムや音と結びつき、英語の自然な発音を身に付けよ

うとする学習には打って付けの教材と考える。

 Unit 1 から Unit 20 までは同じセクション構成をとっているのに対し、Unit 21

は別構成とした。この Unit 21では、「より英語らしい発音を目指して」と題し、

より英語らしい発音を身に付けていくためのこれからの学習方法やコツなどにつ

いて以下の 5つのセクションに分け、述べた。

 Section 1: 日本語と英語の音の構造に注意する

 Section 2: 英語の強弱と内容語・機能語について

 Section 3: 音の変化について

 Section 4: イントネーションについて

 Section 5: これからの学習方法について

 付録: マガーク効果

 Section 1では、日本語と英語の音の構造に対する注意点を述べた。つまり、日

本語の音は原則、母音または子音+母音で成り立っているのに対し、英語の場合、

その特徴として、母音を介入させずに子音が連続して現れるということが挙げら

れる。日本人学習者は子音連続にもかかわらず、ややもすれば不必要な母音を入

れがちで、そうして発音されたことばは意図していた意味に解釈されないことと

なる。例えば、Mr. Smith の Smith は、/sumi u/ ではなく、/smi / であること、など。

 Section 2では、内容語と機能語からみた英語の強弱について触れた。どの語も

同じ強さ、同じ長さに発音されるのではなく、原則、内容語は強く、機能語は弱

く素早く発音されるのである。

 Section 3 では、「同化」と呼ばれる、音が変化する現象について扱った。何故、

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sent だけなら /sent/ であるのに、re がついて resentとなると /rizent/ (憤る)にな

るのか、ということに関してである。

 Section 4 では、音声の高低であるピッチの変化、イントネーションについて説

明した。これも英語らしい発音を身につけるためには避けては通れない分野であ

る。声紋分析で用いたWaveSurfer というソフトにはピッチを検出する機能もあ

り、ネイティブの発音をピッチ曲線(イントネーション)で見ることができる。

これと学習者のイントネーションを比較することも重要であり、多くの場合、日

本人学習者のイントネーションはフラット(平ら)に現れることが多い。

 Section 5 では、これからの学習方法として、音読練習の継続と passageレベル

の英文の発音練習をすることの重要性を説いている。特に後者では、英文の内容

を理解していることが分かるように発音することが重要であり、そのために感情

などが音声で表現できるかが大切となる。

 最後に付録として、「マガーク効果」の実験を載せた。有名な /ba/ と /ga/ がペー

ジに載っているが、学習者はどのような音と判断するであろうか。実は、/ba/ と

/ga/ 以外ではどうであろうかと疑問を持ち、さまざまな音を録音したので、いつ

かそれらについてもウェブページにアップできればと考えている。

5.期待される効果

 このオンライン教材を各ユニットにおよそ 1時間費やし学習を継続すると以下

のことが達成できると期待される。

1. 単語から文、会話レベルまでの発音が向上する。

2. 会話や role play(役割演習)で擬似会話練習ができ、会話力が向上する。

3. 音声分析ソフトを使うことで、学習者の発音を分析し、画面上に表示された

自分の発音とモデル(native speaker)の発音のそれとを比較することで、客

観的に学習者の発音を評価することができる。ネイティブの声紋画像と(ほ

ぼ)同じになることを目指し、実際にそのようになれば自信にもつながる。

4. 英語の歌も 3曲用意してあり、歌うことを通して英語の強弱やリズムを楽し

く修得することができる。

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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5. 発音練習を通して、語彙力を高め、英語特有の表現が身に付く。概算で、単

語数は 1,080、熟語・短文数は 180、文は 200ほど習得することが可能である。

6.今後の課題

 オンライン教材は本来、学習者の自主性に期待し、大学であれ、自宅であれ、

自身の学習時にインターネットを利用して学習することが理想である。しかし、

開発者として『言語文化Ⅰ』という英語学関係の授業の中でも利用したが、英語

学の諸分野について教える授業のため、英語の発音法だけに時間を割くわけには

いかず、時間的な制約もあり、全ユニット・全セクションを学習することは不可

能であった。教室で学習者は音声分析ソフトが入ったパソコンに向かい、マイク

付きのヘッドフォンを使用して学習した。Section 3や 4の写真をクリックしての

学習、また音声分析に関心を示したが、単語や文の発音練習は、時間の関係で 1

回程度しかできず、重要な反復練習もそれほどできなかったため、練習量の足り

なさを毎回感じた。自宅でも学習できるオンライン教材の特性を活かし、大学で

の学習後も自宅で学習を継続し、反復練習してもらう何らかの策を講じねばなら

ないと考えている。

 例えば、その策のひとつとして、学生に勉強を促す animation を多用するとか、

one point corner や advice corner を設け、関心度を高める工夫もしたいと考えてい

る。画像、映像、音声が使えるということから、場合によっては、筆者や外国人

の画像や音声を出し、激励することも可能と考える。

 また、多くの学生が持っているデジタル・オーディオ・プレイヤーに取り込む

ことができればとも考えている。オンラインの長所のひとつに paperless がある

が、手元に置いて確認したい学生向けに、本などの印刷物も必要かもしれない。

 教材内容に関しては、音質の向上、各素材の再吟味等を行い、ヴァージョン・アッ

プを図りたい。その折には、今回、文章・パッセージレベルとしては歌しか入れ

られなかったが、Section 12 のいくつかの会話を、学習者の知的・内面的な成長

を高められるようなことば(例えば、ことわざ、名文と言われるもの)、文章(パッ

セージ)、そして感情移入ができるような短編小説などに変更したいと考えて

いる。

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オンライン・英語発音トレーニング教材 Access to Better English Pronunciation の開発

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本稿は、私立大学情報教育協会主催「平成 19年度大学教育・情報戦略大会」に

おいて口頭発表した内容を基に、加筆・修正したものである。