アンチエイジング物質の効率的な スクリーニング方 …1...
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アンチエイジング物質の効率的なスクリーニング方法
長崎大学 医学部 医学科
准教授 千葉卓哉
長崎大学 医学部 医学科
教授 下川 功
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研究背景
老化の防止は永遠のテーマであり、その実現による医療・社会への波及効果は大きい
単純な生物では老化の制御が可能となっている
インスリンの働きの調整と、食事カロリー制限による寿命延長効果は生物種を問わず見られる
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カロリー制限による抗老化作用:(進化生物学的視点)
食物不足による飢餓の危機( カロリー制限)
代謝の適応
限られたエネルギー利用の振り分け
体細胞の維持 生殖, 成長, 熱産生
抗老化、寿命延長作用
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0.00
0.25
0.50
0.75
1.00
0 50 100 150 200
Age (weeks)
(tg/-)-AL(tg/-)-CR
0.00
0.25
0.50
0.75
1.00
0 50 100 150 200
Age (weeks)
(-/-)-AL(-/-)-CR
生存曲線
-/- rats(野生型)
tg/- rats
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免疫抑制剤 ラパマイシン
IGF-I阻害剤 イソフラボン
抗糖尿病薬 メトフォルミン
抗高脂血症薬 フィブレート
PPAR活性化剤 ロジグリタゾン
解糖阻害剤 2-デオキシ-D-グルコースNPY活性化剤 グレリン
アンチエイジング物質(カロリー制限模倣物)の候補
化合物の役割 化合物名等
抗肥満ホルモン アディポネクチン
サーチュイン活性化剤 レスベラトロール, SRT1720
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従来技術とその問題点
既に実用化されているものには、SIRT1を活性化する物質を試験管内で探索する方法等があるが、
蛍光色素によるアーティファクトが知られている
試験管内と生体内での作用が異なる
標的分子は他にも存在する
等の問題がある
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新技術の基となる研究成果・技術
これまでの我々の研究成果を踏まえ、新たなアンチエイジング物質の探索法を開発した
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成長ホルモン/インスリン様成長因子-I(GH/IGF-I)シグナルの抑制による長寿命動物にカロリー制限(CR)を行うとさらに寿命が延長する
Shimokawa I et al., FASEB J, 2003DF: Ames dwarf mice tg/-: GH-antisense tg ratBartke A et al., Nature, 2001
この時、何が関わっているのか?
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56 (発現上昇)
43 遺伝子の上流を解析
Tsuchiya T et al., Physiol Genomics, 2004
DF: dwarfCR: calorie restriction
GeneChipをもちいて成長ホルモン抑制マウスの肝臓における遺伝子発現の解析結果
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43遺伝子の上流に共通して見られる特異的配列を4種類同定した
Motif1(43/43=100%)
Motif2(35/43=81%)
Motif3(32/43=74%)
Motif4(28/43=65%)
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DFCR-RE1 DFCR-RE2 DFCR-RE3 DFCR-RE4
*
**
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
タンパク質無し
CHO細胞
マウス肝臓
Motif 1 AGACCAGGCTGGCC T
Motif 2 AGCACTTGGGAGGCAGAGGCAGGGGGAG DFCR
Motif 3 CTGCCTCTGCCTCCC
Motif 4 AGTGAGTTCCAGGCCAGCCAG
モチーフを計算上最も良く表現する配列を合成しEMSAを行った
*タンパク/DNA複合体
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モチーフ2を上流に持つ遺伝子群と長寿マウスでの発現増加率
タンパク質品質管理、解毒、糖・脂質代謝、酸化ストレス耐性などに関する遺伝子発現が長寿マウスで上昇した(PGC-1/HNF-4が関与?)
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0
2
4
6
8
10
12
Rre
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cont HNF HNF+
PGC
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0
1
2
3
4
AL CR
細胞 マウス
肝細胞核抽出タンパク
** P<0.05
IP: HNF-4 IB: PGC-1
IB: PGC-1
IB: HNF-4
DFCR-RE2はHNF-4/PGC-1によって活性化された
reporter construct (sensor)
DFCR-RE2
HNF-4
SIRT PGC-1FoxO
SEAP
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来は試験管内で実施後、細胞あるいは動物実験を行っていたが直接、動物を使ってスクリーニングができるようになった
• そのため毒性や副作用、代謝様式なども含めて候補物質の探索が行えるようになった
• 本技術の適用により、スクリーニングに要する時間、および実施コストが大幅に削減できると期待される
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想定される用途
• 本技術の特徴から、創薬候補や、機能性食品成分の探索に効果的と考えられる
• カロリー制限の効果に着目すると、代謝疾患だけでなく、ガンや神経変性疾患に対する治療薬開発にも展開可能と思われる
• 上記以外に、アンチエイジングをキーワードとして、化粧品開発などへの応用も期待される
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想定される業界
• 利用者・対象医薬品、食品、化粧品関連メーカー
ペットフード、家畜飼料メーカー
品種改良、農業試験場関連
• 市場規模アンチエイジング製品・サービスの世界市場、20兆円規模
サプリメントの世界市場、8兆円国内市場、1.8兆円のうちアンチエイジング関連、0.5兆円コエンザイムQ10 450億円、レスベラトロール 200億円
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実用化に向けた課題
• 現在、1系統のトランスジェニックマウス(SEAP分泌型センサー)を開発済み
• 今後、ポジティブコントロールをもちいて実験データを取得し、大規模スクリーニングに向けた条件設定を行っていく
• 実用化に向けて、検出感度・精度を向上させる必要性も考えられる
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企業への期待
• 候補物質探索の共同研究• 候補物質、化合物ライブラリーの提供• 補助金の共同申請
アンチエイジング関連商品を開発中の企業、
当該分野への展開を考えている企業には、
本技術の導入が有効と思われる
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将来的に共同試験を検討
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:カロリー制限模倣物のスクリーニング方法
• 出願番号 :特願2009-189136• 出願人 :長崎大学
• 発明者 :千葉卓哉、他2名
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産学連携の経歴研究課題の採択
• 2010年-2011年 JST A-STEP探索タイプ• 2010年-2011年 九州産業技術センター九州地域
戦略産業イノベーション創出事業
• 2010年 長崎県科学技術奨励賞
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お問い合わせ先
長崎大学大学 知的財産本部
技術移転スペシャリスト 梅津照彦
TEL 095-819-2230
FAX 095-819-2189
e-mail terume61@nagasaki-u.ac.jp