悪性リンパ腫...各種がん 131 悪 あくせい 性リンパ腫 しゅ...

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  • あなたの地域のがん相談支援センター 各種がん

    悪性リンパ腫

    131

    国立がん研究センターがん対策情報センター

    より詳しい情報はホームページをご覧ください国立がん研究センターがん対策情報センター〒104-0045東京都中央区築地5-1-1

    「がん相談支援センター」についてがん相談支援センターは、全国の国指定のがん診療連携拠点病院などに設置されている「がんの相談窓口」です。患者さんやご家族だけでなく、どなたでも無料でご利用いただけます。わからないことや困ったことがあればお気軽にご相談ください。全国のがん相談支援センターやがん診療連携拠点病院などの情報は「がん情報サービス(http://ganjoho.jp)」でご確認ください。

    がん相談支援センターで相談された内容が、ご本人の了解なしに、患者さんの担当医をはじめ、ほかの方に伝わることはありません。どうぞ安心してご相談ください。

  • 各種がん 131

    悪あ く せ い

    性リンパ腫し ゅ

    受診から診断、治療、経過観察への流れ

    患 者 さんとご 家 族 の 明日のために

  • この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

     がんの診療の流れ

    「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく早く受診しましょう。

    受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。

    治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

    治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。

    がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。

    検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。

    がんの疑い

    受 診

    検査・診断

    治療法の選択

    治 療

    経過観察

  • がんの冊子 悪性リンパ腫

    がんの診療の流れ1. がんと言われたあなたの心に起こること ........................... 1

    2. 悪性リンパ腫とは .................................................................. 3

    3. 病型分類 ................................................................................. 4

    4. 検査と診断 .............................................................................. 6

    5. 病期(ステージ) .................................................................... 10

    6. 治療 ....................................................................................... 11

    1 薬物療法 ...................................................................... 13

    2 放射線治療 .................................................................... 15

    3 造血幹細胞移植 ............................................................. 15

    4 無治療経過観察 ............................................................. 15

    7. 経過観察 ............................................................................... 16

    8. 再発 ....................................................................................... 17

    診断や治療の方針に納得できましたか? ................................ 18

    セカンドオピニオンとは? ....................................................... 18

    メモ/受診の前後のチェックリスト ....................................... 19

     目 次

  • 1

    1. がんと言われた あなたの心に起こること

    がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。しばらくは、不安や落ち込みの強い状態が続くかもしれません。眠れなかったり、食欲がなかったり、集中力が低下する人もいます。そんなときには、無理にがんばったり、平静を装ったりする必要はありません。

    時間がたつにつれて、「つらいけれども何とか治療を受けていこう」「がんになったのは仕方ない、これからするべきことを考えてみよう」など、見通しを立てて前向きな気持ちになっていきます。そのような気持ちになれたらまずは次の2つを心がけてみてはいかがでしょうか。

    ■ 情報を集めましょうまず、自分の病気についてよく知ることです。病気によっては

    まだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。

    病気のことだけでなく、療養生活のこと、経済的なこと、薬のこと、食事のことのような身の回りに関しては、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などが専門的な経験や視点であなたの支えになってくれます。

    あなたに心がけてほしいこと

  • 2がんの冊子 悪性リンパ腫

    がんと言われたあなたの心に起こること1また、インターネットなどで集めた情報が正しいかどうか

    を、担当医に確認することも大切です。他の病院でセカンドオピニオンを受けることも可能です。「知識は力なり」。正しい知識は考えをまとめるときに役に

    立ちます。※参考 P18「セカンドオピニオンとは?」

    ■ 病気に対する心構えを決めましょうがんに対する心構えは、積極的に治療に向き合う人、治ると

    いう固い信念をもって臨む人、なるようにしかならないと受け止める人など人によりいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためにも、自分の病気のことを正しく把握することが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医から十分に説明を受け、納得した上で、あなたなりの向き合い方を探していきましょう。

    あなたを支える担当医や家族に自分の気持ちを伝え、率直に話し合うことが、信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。

    情報をどう集めたらいいか、病気に対してどう心構えを決めたらいいのかわからない、そんなときには、巻末にある「がん相談支援センター」を利用するのも1つの方法です。困ったときにはぜひご活用ください。

    ● 肉腫とは胃がんや肺がんなどは、体や臓器の表面をおおう細胞(上皮細胞)から発生する「がん」です。それに対して「肉腫」は、骨や筋肉などの細胞から発生する「がん」で、胃がんや肺がんとは発生する組織が異なります。

    では、これから悪あくせい

    性リンパ腫しゅ

    について学ぶことにしましょう。

  • 3

    2. 悪性リンパ腫とは

    悪性リンパ腫は、血液細胞に由来するがんの1つです。血液細胞は、白血球、赤血球、血小板などに分類されますが、白血球の1種であるリンパ球ががん化した病気を悪性リンパ腫と呼びます。全身のいずれの場所にも病変が発生する可能性があり、多くの場合は頸

    け い ぶ

    部、腋え き か

    下、鼠そ け い

    径などのリンパ節の腫は

    れが起こりますが、消化管、眼

    が ん か

    窩(眼球が入っている骨のくぼみ)、肺、脳などリンパ節以外の臓器にも発生することがあります。

    発症の原因はまだ明らかではありませんが、細胞内の遺伝子に変異が加わり、がん遺伝子が活性化することで発症すると考えられています。また、一部にはウイルス感染症が関係することや、免疫不全者に多いことが知られています。

    悪性リンパ腫とは2

  • 4がんの冊子 悪性リンパ腫

    3病型分類3. 病型分類

    悪性リンパ腫はがん細胞の形態や性質によって70種類以上に細かく分類されていますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分類されます(図1)。発症頻度は欧米と異なりわが国ではホジキンリンパ腫は少なく、多くは非ホジキンリンパ腫です。

    どのタイプに分類されるかによって治療方針が異なるため、病変部から組織を採取する「生検」を行い、顕微鏡による病理学的検査により正確に診断を行うことが重要です。

    図1.悪性リンパ腫の病型分類

    日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013 年版」(金原出版)より作成

    古典的ホジキンリンパ腫

    結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫

    成熟 T/NK 細胞由来

    前駆リンパ系由来● B 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫● T 細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫

    非ホジキンリンパ腫 成熟 B 細胞由来

    ● 濾胞性リンパ腫● MALT リンパ腫● リンパ形質細胞性リンパ腫● マントル細胞リンパ腫● びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫● バーキットリンパ腫 など

    ● 末梢性 T 細胞リンパ腫● 成人 T 細胞白血病・リンパ腫● 節外性 NK/T 細胞リンパ腫、鼻型● 皮膚のリンパ腫 (菌状息肉症、セザリー症候群)など

    悪性リンパ腫

    ホジキンリンパ腫

  • 5

    非ホジキンリンパ腫の臨床分類

    1)低悪性度リンパ腫年単位で緩やかに進行します。腫

    しゅよう

    瘍量が少ない場合は、経過観察も可能です。代表的な病型として、濾

    ろほうせい

    胞性リンパ腫、Mまると

    ALTリンパ腫などがあります。

    2)中悪性度リンパ腫週~月単位で進行します。したがって、診断された時点で、腫

    瘍に対する治療が必要となります。代表的な病型として、びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫があります。

    3)高悪性度リンパ腫日~週単位で急速に進行します。病状によっては、この診断

    を疑われた時点で緊急入院をすることもあります。高悪性度リンパ腫では、ほかのリンパ腫と異なり、入院を必要とする強力な化学療法を行います。代表的な病型として、バーキットリンパ腫やリンパ芽

    がきゅうせい

    球性リンパ腫があります。

    ● 悪性リンパ腫の症状首や腋

    わき

    の下、足の付け根などリンパ節の多いところに通常は痛みのないしこりとしてあらわれます。数週から数カ月かけ持続的に増大して縮小せずに病状が進むと、このしこりや腫れは全身に広がり、進行するに従って全身的な症状がみられるようになります。全身的な症状としては発熱、体重の減少、盗

    とうかん

    汗(顕著な寝汗)を伴うことがあり、これらの3つの症状を「B症状」といいます。その他には、体のかゆみや皮膚の発疹、腫

    しゅりゅう

    瘤により気道や血管、脊せきずい

    髄などの臓器が圧迫されると、気道閉塞、血流障害、麻ま ひ

    痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。

    1

    病型分類3

  • 6がんの冊子 悪性リンパ腫

    検査と診断44. 検査と診断

    悪性リンパ腫と診断し治療方針を決めるためには、さまざまな検査を行います。検査の目的は診断や病気の広がり(病期)を調べること、治療を安全に行うことができるかどうか全身状態の確認などがあります。

    1 病理検査

    悪性リンパ腫の診断と病型分類を決定するために最も重要な検査で、リンパ節生検や腫瘍生検を行います。麻酔を行い、しこりのあるリンパ節(可能ならば頸部リンパ節)あるいは腫瘍の一部を切り取り顕微鏡で観察します。リンパ腫細胞の形や性質を詳しく評価して、細かく分類されている病型のうちどのリンパ腫なのかを決定します。このとき切り取られた組織の一部は、染色体検査や遺伝子検査に使われることがあります。

    2 病期(ステージ)や全身状態を調べる検査

    悪性リンパ腫は血液細胞に由来するがんで、全身のいずれの場所にも病変ができる可能性があるため、治療開始前にどの程度病気が広がっているのか、慎重な評価が行われます。

    また、全身療法である化学療法が主な治療となるため、治療を行うことが可能な全身状態かを評価する目的もあります。

  • 7

    1)血液検査全身状態を評価するために、血液検査や尿検査を行います。血

    液検査では主に肝臓や腎臓の機能を確認し、これからの治療に耐えられる状態か、またどのような副作用に注意が必要かなどを判断します。

    2)画像検査X線検査は、一般的なレントゲン写真による検査です。超音波

    検査は、体内における超音波の反響を利用し腫瘤の位置や大きさ、分布などを調べます。また化学療法を行う前には心臓の超音波検査を行い、心臓の機能が化学療法に耐えられるかどうかを評価します。

    その他、X線を用いたCT 検査や磁気を用いたMRI 検査で体の内部を描き出し、病変の大きさや広がりを調べます。

    3)PET検査放射性物質を含んだブドウ糖液の薬剤を注射し、薬剤が臓器

    や組織に取り込まれた状態(体内分布)を特殊なカメラで映像化します。他の検査に比べて小さな(早期の)病変を検出できるため、悪性リンパ腫では治療効果の判定にも積極的に用いられています。

  • 8がんの冊子 悪性リンパ腫

    4検査と診断4)骨髄検査悪性リンパ腫はしばしば骨

    こつずい

    髄の中まで浸しんじゅん

    潤していることがあるため、骨髄検査で腫瘍細胞の有無を確認します。腰の骨に針を刺して骨髄液を吸引する骨

    こつずいせんし

    髄穿刺や、少量の組織を採取する骨髄生検で骨髄中の細胞や組織の検査を行います。

    5)消化管内視鏡検査悪性リンパ腫はしばしば消化管に浸潤していることがありま

    す。このため、内視鏡検査で腫瘍の有無を確認します。主に胃の内視鏡検査が行われ、胃の内部を直接観察して病変の有無を調べたり、組織を採取したりします。MALTリンパ腫はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染が発症に関連していることが多いため、感染の有無についても検査を行います。マントル細胞リンパ腫など、高い割合で大腸への浸潤を起こしやすいリンパ腫では、必要に応じて大腸内視鏡検査を行います。

  • 9

    6)脳のうせきずいえき

    脊髄液検査リンパ腫が脳や脊髄に広がっていると疑われる場合、腰

    ようつい

    椎の間に細い針を刺して脳脊髄液を採取する検査を行います。腰ようついせんし

    椎穿刺ともいいます。

    3 原因となる危険因子を調べる検査

    ウイルス感染が悪性リンパ腫の原因となる場合もあり、治療に伴う合併症も起こりやすくなるため、ウイルス感染の有無を調べます。

    4 病状の進行や治療効果を予測する検査

    血液検査の中に病気の勢いを示す指標として、血清LDH(乳

    にゅうさんだっすいそこうそ

    酸脱水素酵素)、CRP(C 反応性蛋たんぱく

    白)、可溶性インターロイキン2 受容体(sIL-2R)などがあります。ただし、これらの検査結果のみで悪性リンパ腫の病状の進行を正確に評価したり、悪性リンパ腫と診断したりすることはできません。

    検査と診断4

  • 10がんの冊子 悪性リンパ腫

    病期(ステージ)5

    病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「Stage(ステージ)」ともいいます。ローマ数字が使われ、悪性リンパ腫ではⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の4つに分類されます(表1)。進行の程度によって治療法や予後が変わってくるため、検査結果を用いて病期を正確に把握することがとても重要です。

    表 1.悪性リンパ腫の病期分類

    日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013 年版」(金原出版)より作成

    5. 病期(ステージ)

    I 期リンパ腫がリンパ節またはリンパ組織の 1 カ所に限られている状態。もしくは、リンパ外臓器にリンパ腫がある場合でも 1 カ所に限られている状態

    II 期

    リンパ腫が 2 カ所以上のリンパ節にあるが、横隔膜を境にして上半身か下半身のどちらかに限られている状態。または、リンパ外臓器に 1 カ所とリンパ節にも 1 カ所以上あるが、横隔膜を境にして上半身か下半身のどちらかに限られている状態

    III 期 リンパ腫が 2 カ所以上のリンパ節に、横隔膜を境にして上半身と下半身の両側にある状態IV 期 リンパ腫がリンパ外臓器にも広範に広がっている状態AおよびB分類(症状)それぞれの病期は以下の全身症状の有無によって、A(症状なし)または B(症状あり)のいずれかに分類される。①発熱:38℃より高い理由不明の発熱②寝汗:寝具(掛け布団、シーツなど)を替えなければならないほどのずぶ濡れ

    になる汗③体重減少:診断前の 6 カ月以内に通常体重の 10%を超す原因不明の体重減少

  • 11

    6. 治療

    治療方針は、適切な病理診断と病期分類に基づき、全身状態を考慮して決定されます。主な治療法は化学療法と放射線治療です。治療効果が十分でない場合は、さらに強い化学療法や造血幹細胞移植などが行われます。

    図 2 と図 3 は悪性リンパ腫の病期と大まかな治療の流れを示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。

    図2. ホジキンリンパ腫の治療

    ホジキンリンパ腫

    ・限局期(Ⅰ・Ⅱ期)・B 症状なし・巨大腫瘍なし

    ・進行期(Ⅲ・Ⅳ期)・B 症状または巨大腫瘍 があるⅠ・Ⅱ期

    化学療法放射線治療

    化学療法

  • 12がんの冊子 悪性リンパ腫

    治療6図3. 非ホジキンリンパ腫の治療

    低悪性度リンパ腫の主な治療

    非ホジキンリンパ腫

    2 つの病変の距離が近い

    2つの病変の距離が離れている

    *Ⅰ期の胃の MALT リンパ腫ではヘリコバクター・ピロリの除菌が第一選択になります。

    中悪性度リンパ腫の主な治療

    Ⅰ、Ⅱ期

    高悪性度リンパ腫の主な治療

    ** CD20 抗原陽性例

    Ⅲ、Ⅳ期

    Ⅰ期* Ⅲ、Ⅳ期

    放射線治療

    (+リツキシマブ)**化学療法

    (+リツキシマブ)**化学療法(+リツキシマブ)**化学療法

    化学療法 + 放射線治療

    (+リツキシマブ)**化学療法

    経過観察

    圧迫症状部位への放射線治療

    Ⅱ期

  • 13

    1 薬物療法

    中心的な治療は薬物療法です。細胞障害性抗がん剤(抗がん剤)や分子標的薬を注射や点滴または内服することにより、がん細胞を消滅させたり小さくすることを目的として行います。薬剤は全身に行き渡るため、腫瘤のある部分だけではなく、別の部分に発生した検査ではわからないような小さな病変にも効果があります。

    1)化学療法抗がん剤には、たくさんの種類があり、悪性リンパ腫の病型に

    よって通常4 ~ 5種類の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が行われます。入院や外来治療で、通常3 ~ 4週間を1コースとし数コース行います。

    ● 化学療法の副作用について抗がん剤治療の目的は、がん化してふえたがん細胞を減らすことですが、正常な血液細胞もダメージを受けて、一時的に減少します。一般的な副作用は、骨髄抑制や吐き気、嘔

    お う と

    吐、下痢、口内炎、脱毛、発熱などです。予測される副作用に対して対策を立てて治療を行います。

  • 14がんの冊子 悪性リンパ腫

    治療62)分子標的療法分子標的薬はがん細胞に特徴的な分子を標的とした薬剤で

    す。従来の抗がん剤と組み合わせて投与することもあります。代表的な分子標的薬は、B細胞の表面にある「CD20」 という分子を標的とするリツキシマブです。リツキシマブはCD20に結合することで、直接的に腫瘍細胞を破壊するだけでなく、腫瘍細胞を標識することで免疫細胞の働きを借りて腫瘍細胞を破壊します。CD20は、B細胞に由来するリンパ腫細胞の表面に存在するため「CD20陽性のB細胞非ホジキンリンパ腫」の治療に使用されます。

    分子標的薬は、従来の抗がん剤に比べて吐き気や脱毛などの副作用は少ないとされていますが、リツキシマブの場合、投与して間もなくアレルギー症状のような副作用のインフュージョンリアクションが起こることがあります。また肺障害や心臓障害にも注意が必要です。

  • 15

    2 放射線治療

    放射線治療には、高エネルギーのX線を体の外から照射してがん細胞を破壊し、損傷させてがんを消滅させたり小さくする効果があります。病巣が1カ所で小さい場合(Ⅰ期)や早期のリンパ腫(Ⅰ期または隣接するⅡ期)などに単独で行ったり、短期間の化学療法と併用して行うことがあります。

    3 造血幹細胞移植

    造血幹細胞移植とは、大量の化学療法や全身への放射線治療などを行った後に、骨髄機能を回復させるため事前に採取した造血幹細胞を投与する治療です。標準的な化学療法や放射線治療を行っても再発する可能性が高い場合、または、再発した場合などに行われます。

    4 無治療経過観察

    悪性リンパ腫の中でゆっくりと進行する病型の場合、何年間も症状がない状態で経過することがあります。このような場合は、治療を行う利点がないこともあり、定期的な診察や画像検査を継続し、腫瘍が増大したり何らかの症状が出たりした時点から治療を行います。

    ● 放射線治療の副作用ついて主に放射線が照射された部位に皮膚炎や粘膜炎などが起こります。全身症状としてはだるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球減少などがあります。いずれも個人によって程度が異なり、症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが、通常は治療後2 ~ 4週くらいで改善します。

    治療6

  • 16がんの冊子 悪性リンパ腫

    7経過観察7. 経過観察

    治療後の通院の間隔は病型(病気の種類)や病期、 治療の内容とその効果、継続して行う治療の有無、合併症や副作用の内容、治療後の回復の程度など患者さんの状態によって異なります。

    一般的には、体の状態や悪性リンパ腫の状態を見ながら通院間隔を決めます。完全奏効(見かけ上、がん細胞が認められなくなること)が得られ、合併症がなく、副作用が回復傾向にあるか、回復している場合には、3~6カ月ごとに診察を受け、再発や全身状態を調べます。ただし、普段と異なる症状がある場合は、次の受診を待たずに担当医に連絡し、相談することが大切です。

    また、薬物治療、放射線治療の最終治療から一定以上の期間を経てから、晩期毒性(二次がんや心血管障害など)が問題になる場合もあるため、経過観察が重要です。

  • 17

    8. 再発

    再発とは、治療によって検査上ではがんが認められなくなった後、再びがんが出現することをいいます。治療後は、定期的に通院して経過をみることが大切です。

    悪性リンパ腫の再発の場合、前回とは違った病型になっている可能性があるため、再発してできた腫瘍の生検を再び行います。その結果によって、前回と同じ化学療法あるいは前回とは異なる化学療法を行い、奏効を目指します。65 歳以下で可能であれば、造血幹細胞移植を行うこともあります。治療効果が得られない場合は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した治療を行うことになります。

    再発8

  • 18

    診断や治療の方針に納得できましたか?/セカンドオピニオンとは?

    がんの冊子 悪性リンパ腫

    診断や治療の方針に納得できましたか?

    治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、患者さん自身が満足できる方法が一番です。まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、

    担当医に何でも質問してみましょう。治療法は、病状によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

    セカンドオピニオンとは?

    担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。これを「セカンドオピニオンを聞く」といいます。ここでは、①診断の確認、②治療方針の確認、③その他の治療方法の確認とその根拠を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当医に伝えましょう。

    担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませんが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく相談してみましょう。

  • 19

    メモ/受診の前後のチェックリスト

    メモ (    年   月   日)● リンパ腫の病型 [                ]● 最大腫瘍径 [       ]cm位● 病期(ステージ) [       ]期

    受診の前後のチェックリスト□ 後で読み返せるように、医師に説明の内容を紙に書いてもらったり、自分でメモをとったりするようにしましょう。

    □ 説明はよくわかりますか。わからないときは正直にわからないと伝えましょう。

    □ 自分に当てはまる治療の選択肢と、それぞれのよい点、悪い点について、聞いてみましょう。

    □ 勧められた治療法が、どのようによいのか理解できましたか。□ 自分はどう思うのか、どうしたいのかを伝えましょう。□ 治療についての具体的な予定を聞いておきましょう。□ 症状によって、相談や受診を急がなければならない場合があるかどうか確認しておきましょう。

    □ いつでも連絡や相談ができる電話番号を聞いて、わかるようにしておきましょう。

    □ 説明を受けるときには家族や友人が一緒の方が、理解できて安心だと思うようであれば、早めに頼んでおきましょう。

    □ 診断や治療などについて、担当医以外の医師に意見を聞いてみたい場合は、セカンドオピニオンを聞きたいと担当医に伝えましょう。

    参考文献:日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版;金原出版日本血液学会、日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月(第1版);金原出版日本リンパ網内系学会教育委員会編:レベルアップのためのリンパ腫セミナー 2014年6月;南江堂

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    がんの冊子 各種がんシリーズ 悪性リンパ腫

    編集・発行 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター印刷・製本 図書印刷株式会社

    2008 年 9 月 第 1 版第 1 刷 発行2017 年 3 月 第 3 版第 1 刷 発行

    がんの冊子各種がんシリーズ 肺がん/胃がん/大腸がん/肝細胞がん/乳がん/他小児がんシリーズ 白血病/リンパ腫/脳腫瘍/神経芽腫/他がんと療養シリーズがんと心/がんの療養と緩和ケア/もしも、がんと言われたら/他社会とがんシリーズがん相談支援センターにご相談ください/家族ががんになったとき/身近な人ががんになったときがんを知るシリーズ 科学的根拠に基づくがん予防がんと仕事のQ&A

    患者必携がんになったら手にとるガイド普及新版*別冊 『わたしの療養手帳』もしも、がんが再発したら*

    国立がん研究センターがん対策情報センター作成の冊子

    協力者(五十音順):飛内 賢正(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科) 蒔田 真一(国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科) 丸山 大  (国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科) 山本 一仁(愛知県がんセンター中央病院血液・細胞療法部) 国立がん研究センターがん対策情報センター 患者・市民パネル