校了ノンブル 電子寫...

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●撮影データ シャッター速度:1 /40秒 絞り:f6.3 撮影感度:ISO200 露出補正量:+0.7 ボディ/価格71万5000円。装着レンズはXCD 4/45P/価格14万3000円。 問ハッセルブラッドジャパン☎03-6434-9567 ハッセルブラッド X1D Ⅱ 50C スカンディナヴィア半島生まれ の戀するフォルム! どうだい見てくれこの色気 中判というフォーマットを考えると極めてコンパクトなボデ ィサイズのX1D 50C。アルミブロックから削り出された高 剛性ボディはコンパクトながらずしりとした手応えを感じ、 その北欧らしいデザインはいつまでも眺めていられる。そし て鮮やかな金色がかったオレンジのシャッターボタンがシャ ッターをレリーズするという行為を特別なものと考えさせる 演出をしてくれているのです。 カメラグリップ部分には電源スイッチにAF/MFの切り替え、 ホワイトバランスとISO設定、沈胴してロックするモードダ イヤル、前後のホイールに鮮やかなシャッターボタンだけと いう操作系のミニマリズムに成功したX1D 50C。モデル名 の下に刻まれた「HANDMADE IN SWEDEN」の文字に自 信があふれている。 象使いのタイの兄さんの持つ象使いステッ キが剣呑すぎてカッコイイ! 思わずスナッ プ! そんな小型カメラ的小回り撮影もこな せるX1D 50C。記録形式がJPEGか RAWかもしくはどちらも同時記録という 3 つの記録形式なのですが、5000万画素の中 判カメラらしいJPEGで一枚20メガを軽く超 えるデータ量。その点留意して撮影をエンジ ョイすべし。RAWで追い込む現像も楽しい ですがJPEGでも気軽に高精細高描写です。 17万キロを少し超えた我が愛車はハッセ ルブラッドの生まれ故郷スウェーデンの 御近所さんのドイツ車。コイツが朝イッパ ツ目の右ウインカーがチカチカチカチカ と半角カナハイスピード状態。やがてチッ カンチッカンとなるんですがいったいコ レなにイッヒ? 大丈夫なんでダンケ? 写真と文 織本知之 までも眺めていられるような佇まいを持っています。 そのアルミニウムから削り出された堅牢強固な外装は 高い耐久性能を誇り、質感は手にした写真家へと厚い 信頼となって返ってくるようなのです。 そしてプロフェッショナル向けと言える中判デジタ ルカメラながら、極めてわかり易いインターフェース を備えているのであります。タッチ操作の背面モニタ ーの直感的なピクトグラム表示は初めて本格的デジタ ルカメラを手にするユーザーにも容易に扱え、APS-C サイズやフルサイズクラスを飛ばして最初から中判デ ジタルでデジカメにエントリーするのもアリなのでは ないかと感じる扱い易さ。 この扱い易い操作性と3.6インチのタッチパネルの大 型背面モニターは高精細な236万画素、そして電子ビュー ファインダーは369万画素の有機ELと優れたスペックの ファインダー関連。タッチミスを防ぐ大型モニターと高 精細なファインダーは隅々まで構図と被写体のチェック が行え、自信と責任を持ってシャッターをレリーズでき る安心感。写真を撮るためミスとストレスを感じることを 減らそうとする設計が伺え、ころんとしたどこか愛らしい フォルムとは裏腹に非常にシビアな職業写真家に向けて のカメラであるということが構えた瞬間に伝わります。 そしてそのシビアさはハッセルブラッドXシステム のレンズについても同じであります。 今回テストしたレンズはXCD 4/45P。現在市販されて いる中判デジタル用オートフォーカスレンズとしては最 軽量の320g。35㎜判換算では36ミリにあたるレンズで開 放F値 4 でその描写力は画面の隅々まで行き届いたシャ ープネス。そして軽量コンパクトなレンズながらシャッタ ーを内蔵するレンズシャッター方式。これにより最高 1/2000秒のシャッター全速域でストロボとの同調が可能 になり、あらゆる条件下で効果的な シンクロ発光を行えるのであります。 X1D 50Cのコンパクトなボデ ィとこの軽量なレンズの組み合わ せは中判デジタルカメラを携行し ていることを忘れさせる軽快な組 み合わせです。 ふつうのフォーマットでは満足で きない貴方、中判デジカメは如何? 眞機戀愛 ハッセルブラッドX1D Ⅱ 50C こんな写真に戀をする (スナップ編) 114 気に入りのエッセイ集が一冊、ずいぶんと 長い時間ぼくの本棚の一番いい場所に置い てあります。粗目の麻で編んだような素材 での表装が独特の手触りのとても可愛らしい本です。 奥付から著名な装丁家が手掛けたものだとわかります。 内容は世界のあちこちを旅した作者がさまざまな国で 手に入れたお気に入りの雑貨や小物、普段から愛用し ているちょっと変わったブランドの日用品たちを短い エッセイで紹介している本です。 その本に 1 台の35㎜フィルムカメラが登場します。 かつてはスパイの小道具として有名になったラトビア に端を発するカメラメーカーの小型カメラなのですが、 作者は機能面やレンズの光学的スペックよりもこのカ メラの佇まい、そして鮮やかなオレンジ色の目の覚め るような色合いのシャッターボタンについてのすばら しさを語っていました。学生だったぼくもいつかこん なカメラを手に入れてみたいものだと思ったものです。 やがてぼく自身も写真家になり、これまで色々なカメ ラを手にしてきました。しかし、この本に登場する色 気を感じるようなカメラとはなかなか出会えませんで した。やがてフィルム感材からデジタルシステムへ、記 録方法やカメラメーカーの変化などさまざまな時代の 移ろいでいつしかすっかり忘れていたのですが、今回 このハッセルブラッドX1D Ⅱ 50Cを見た瞬間、かつて 片岡義男氏がエッセイで取り上げた欧州生まれのあの カメラへの思いがまざまざと蘇ってきたのであります。 もちろんこのふたつのカメラに欧州生まれという以 外共通点はありません。メーカーやフォーマットさえ 異なり、時代をも隔てたふたつのカメラが重なって見 えるのは、ボディのデザインから漂うヨーロッパのエ ッセンスのためなのでしょうか……。 このX1D 50Cは5000万画素の中判センサーを搭 載していながらフルサイズミラーレス機とそう変わら ないサイズと650gという質量の美しいボディは、いつ ●撮影データ シャッター速度:1 /400秒 絞り:f8 撮影感度:ISO200 露出補正量:+0.7 なんといってもラージフォーマットの中判デジカ メですから、その圧倒的高精細な画像と描写力を 存分に楽しむにはやはり広大な風景が最適。目の 前の全部を描写したあと『ああ、こんな細かいと こまで写ってるんだ!』とPCの前で驚く醍醐味、 どこまでもトリミングできそうな中判デジカメな らではのアドバンテージを満喫してください。 電子寫 北欧舶来高級中判ミラーレス、   こんな寫眞に戀をする (ランドスケープ編) 115 115 114

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Page 1: 校了ノンブル 電子寫 眞機戀愛放F値4でその描写力は画面の隅々まで行き届いたシャ ープネス。そして軽量コンパクトなレンズながらシャッタ

校了ノンブル

こんなトコロに戀をする

移ろいでいつしかすっかり忘れていたのですが、今回このハッセルブラッドX1D Ⅱ 50Cを見た瞬間、かつて片岡義男氏がエッセイで取り上げた欧州生まれのあのカメラへの思いがまざまざと蘇ってきたのであります。 もちろんこのふたつのカメラに欧州生まれという以外共通点はありません。メーカーやフォーマットさえ異なり、時代をも隔てたふたつのカメラが重なって見えるのは、ボディのデザインから漂うヨーロッパのエッセンスのためなのでしょうか……。 このX1D Ⅱ 50Cは5000万画素の中判センサーを搭載していながらフルサイズミラーレス機とそう変わらないサイズと650gという質量の美しいボディは、いつ

●撮影データシャッター速度:1 /40秒絞り:f6.3撮影感度:ISO200露出補正量:+0.7

ボディ/価格71万5000円。装着レンズはXCD 4/45P/価格14万3000円。問ハッセルブラッドジャパン☎03-6434-9567

ハッセルブラッドX1D Ⅱ50C

なんといってもラージフォーマットの中判デジカメですから、その圧倒的高精細な画像と描写力を存分に楽しむにはやはり広大な風景が最適。目の前の全部を描写したあと『ああ、こんな細かいとこまで写ってるんだ!』とPCの前で驚く醍醐味、どこまでもトリミングできそうな中判デジカメならではのアドバンテージを満喫してください。

スカンディナヴィア半島生まれの戀するフォルム!

どうだい見てくれこの色気

中判というフォーマットを考えると極めてコンパクトなボディサイズのX1D Ⅱ 50C。アルミブロックから削り出された高剛性ボディはコンパクトながらずしりとした手応えを感じ、その北欧らしいデザインはいつまでも眺めていられる。そして鮮やかな金色がかったオレンジのシャッターボタンがシャッターをレリーズするという行為を特別なものと考えさせる演出をしてくれているのです。

カメラグリップ部分には電源スイッチにAF/MFの切り替え、ホワイトバランスとISO設定、沈胴してロックするモードダイヤル、前後のホイールに鮮やかなシャッターボタンだけという操作系のミニマリズムに成功したX1D Ⅱ 50C。モデル名の下に刻まれた「HANDMADE IN SWEDEN」の文字に自信があふれている。

象使いのタイの兄さんの持つ象使いステッキが剣呑すぎてカッコイイ! 思わずスナップ! そんな小型カメラ的小回り撮影もこなせるX1D Ⅱ 50C。記録形式がJPEGかRAWかもしくはどちらも同時記録という3つの記録形式なのですが、5000万画素の中判カメラらしいJPEGで一枚20メガを軽く超えるデータ量。その点留意して撮影をエンジョイすべし。RAWで追い込む現像も楽しいですがJPEGでも気軽に高精細高描写です。

17万キロを少し超えた我が愛車はハッセルブラッドの生まれ故郷スウェーデンの御近所さんのドイツ車。コイツが朝イッパツ目の右ウインカーがチカチカチカチカと半角カナハイスピード状態。やがてチッカンチッカンとなるんですがいったいコレなにイッヒ? 大丈夫なんでダンケ?

写真と文 織本知之

までも眺めていられるような佇まいを持っています。そのアルミニウムから削り出された堅牢強固な外装は高い耐久性能を誇り、質感は手にした写真家へと厚い信頼となって返ってくるようなのです。 そしてプロフェッショナル向けと言える中判デジタルカメラながら、極めてわかり易いインターフェースを備えているのであります。タッチ操作の背面モニターの直感的なピクトグラム表示は初めて本格的デジタルカメラを手にするユーザーにも容易に扱え、APS-Cサイズやフルサイズクラスを飛ばして最初から中判デジタルでデジカメにエントリーするのもアリなのではないかと感じる扱い易さ。 この扱い易い操作性と3.6インチのタッチパネルの大型背面モニターは高精細な236万画素、そして電子ビューファインダーは369万画素の有機ELと優れたスペックのファインダー関連。タッチミスを防ぐ大型モニターと高精細なファインダーは隅々まで構図と被写体のチェックが行え、自信と責任を持ってシャッターをレリーズできる安心感。写真を撮るためミスとストレスを感じることを減らそうとする設計が伺え、ころんとしたどこか愛らしいフォルムとは裏腹に非常にシビアな職業写真家に向けてのカメラであるということが構えた瞬間に伝わります。 そしてそのシビアさはハッセルブラッドXシステムのレンズについても同じであります。 今回テストしたレンズはXCD 4/45P。現在市販されている中判デジタル用オートフォーカスレンズとしては最軽量の320g。35㎜判換算では36ミリにあたるレンズで開放F値 4でその描写力は画面の隅々まで行き届いたシャープネス。そして軽量コンパクトなレンズながらシャッターを内蔵するレンズシャッター方式。これにより最高1/2000秒のシャッター全速域でストロボとの同調が可能になり、あらゆる条件下で効果的なシンクロ発光を行えるのであります。X1D Ⅱ 50Cのコンパクトなボディとこの軽量なレンズの組み合わせは中判デジタルカメラを携行していることを忘れさせる軽快な組み合わせです。 ふつうのフォーマットでは満足できない貴方、中判デジカメは如何?

電子寫 眞機戀愛デ ン シ シ ャ シ ン キ レ ン ア イ

北欧舶来高級中判ミラーレス、  ハッセルブラッドX1D Ⅱ 50C夜第

五十七

こんな写真に戀をする(スナップ編)

こんな寫眞に戀をする(ランドスケープ編)

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印確認印ネーム・体裁確認 印画像確認

駐在チェックWPPチェック

2020-0716MM_114-115_dejicame.indd 114 2020/06/21 16:17

校了ノンブル

気に入りのエッセイ集が一冊、ずいぶんと長い時間ぼくの本棚の一番いい場所に置いてあります。粗目の麻で編んだような素材

での表装が独特の手触りのとても可愛らしい本です。奥付から著名な装丁家が手掛けたものだとわかります。内容は世界のあちこちを旅した作者がさまざまな国で手に入れたお気に入りの雑貨や小物、普段から愛用しているちょっと変わったブランドの日用品たちを短いエッセイで紹介している本です。 その本に 1 台の35㎜フィルムカメラが登場します。かつてはスパイの小道具として有名になったラトビアに端を発するカメラメーカーの小型カメラなのですが、作者は機能面やレンズの光学的スペックよりもこのカメラの佇まい、そして鮮やかなオレンジ色の目の覚めるような色合いのシャッターボタンについてのすばらしさを語っていました。学生だったぼくもいつかこんなカメラを手に入れてみたいものだと思ったものです。やがてぼく自身も写真家になり、これまで色々なカメラを手にしてきました。しかし、この本に登場する色気を感じるようなカメラとはなかなか出会えませんでした。やがてフィルム感材からデジタルシステムへ、記録方法やカメラメーカーの変化などさまざまな時代の

移ろいでいつしかすっかり忘れていたのですが、今回このハッセルブラッドX1D Ⅱ 50Cを見た瞬間、かつて片岡義男氏がエッセイで取り上げた欧州生まれのあのカメラへの思いがまざまざと蘇ってきたのであります。 もちろんこのふたつのカメラに欧州生まれという以外共通点はありません。メーカーやフォーマットさえ異なり、時代をも隔てたふたつのカメラが重なって見えるのは、ボディのデザインから漂うヨーロッパのエッセンスのためなのでしょうか……。 このX1D Ⅱ 50Cは5000万画素の中判センサーを搭載していながらフルサイズミラーレス機とそう変わらないサイズと650gという質量の美しいボディは、いつ

●撮影データシャッター速度:1 /400秒絞り:f8撮影感度:ISO200露出補正量:+0.7

なんといってもラージフォーマットの中判デジカメですから、その圧倒的高精細な画像と描写力を存分に楽しむにはやはり広大な風景が最適。目の前の全部を描写したあと『ああ、こんな細かいとこまで写ってるんだ!』とPCの前で驚く醍醐味、どこまでもトリミングできそうな中判デジカメならではのアドバンテージを満喫してください。

までも眺めていられるような佇まいを持っています。そのアルミニウムから削り出された堅牢強固な外装は高い耐久性能を誇り、質感は手にした写真家へと厚い信頼となって返ってくるようなのです。 そしてプロフェッショナル向けと言える中判デジタルカメラながら、極めてわかり易いインターフェースを備えているのであります。タッチ操作の背面モニターの直感的なピクトグラム表示は初めて本格的デジタルカメラを手にするユーザーにも容易に扱え、APS-Cサイズやフルサイズクラスを飛ばして最初から中判デジタルでデジカメにエントリーするのもアリなのではないかと感じる扱い易さ。 この扱い易い操作性と3.6インチのタッチパネルの大型背面モニターは高精細な236万画素、そして電子ビューファインダーは369万画素の有機ELと優れたスペックのファインダー関連。タッチミスを防ぐ大型モニターと高精細なファインダーは隅々まで構図と被写体のチェックが行え、自信と責任を持ってシャッターをレリーズできる安心感。写真を撮るためミスとストレスを感じることを減らそうとする設計が伺え、ころんとしたどこか愛らしいフォルムとは裏腹に非常にシビアな職業写真家に向けてのカメラであるということが構えた瞬間に伝わります。 そしてそのシビアさはハッセルブラッドXシステムのレンズについても同じであります。 今回テストしたレンズはXCD 4/45P。現在市販されている中判デジタル用オートフォーカスレンズとしては最軽量の320g。35㎜判換算では36ミリにあたるレンズで開放F値 4でその描写力は画面の隅々まで行き届いたシャープネス。そして軽量コンパクトなレンズながらシャッターを内蔵するレンズシャッター方式。これにより最高1/2000秒のシャッター全速域でストロボとの同調が可能になり、あらゆる条件下で効果的なシンクロ発光を行えるのであります。X1D Ⅱ 50Cのコンパクトなボディとこの軽量なレンズの組み合わせは中判デジタルカメラを携行していることを忘れさせる軽快な組み合わせです。 ふつうのフォーマットでは満足できない貴方、中判デジカメは如何?

電子寫 眞機戀愛デ ン シ シ ャ シ ン キ レ ン ア イ

北欧舶来高級中判ミラーレス、  ハッセルブラッドX1D Ⅱ 50C

こんな寫眞に戀をする(ランドスケープ編)

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