スリット式防波堤を利用した 波力発電システム - jst...本研究課題の提案...
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スリット式防波堤を利用したスリット式防波堤を利用した波力発電システム波力発電システム
2011府大・市大新技術説明会
大阪市立大学大学院工学研究科大阪市立大学大学院工学研究科
加藤健司,重松孝昌加藤健司,重松孝昌
吉岡真弥,脇本辰郎吉岡真弥,脇本辰郎
化石燃料の枯渇や地球環境維持などの観点から自然
エネルギーによる発電が注目されている.
日本は海岸線が長大であるため,波力はエネルギー源
として有望である.
日本沿岸の波力エネルギー日本沿岸の波力エネルギー
•• エネルギー密度:エネルギー密度:7kW/m7kW/m•• 総海岸線長:総海岸線長:5,200km5,200km
↓↓
総波力エネルギー:総波力エネルギー: 36GW36GW(風力と同程度.国内全発電(風力と同程度.国内全発電
量の量の1/31/3倍倍)).別の試算では.別の試算では300300~~400GW400GWとの報告もあり.との報告もあり.
背景背景
2011府大・市大新技術説明会
現状技術の例(現状技術の例(Pelamis,UKPelamis,UK))
引用:http://www.pelamiswave.com/
円筒状の浮遊体を結合するジョイント部の屈曲運動を利用して発電を行う.運転開始後,数週間で故障停止.
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環境省「地球温暖化対策技術開発事業」の一環として、2010年よ
り伊豆大島沖での波力発電実証事業がスタートした.2020年ごろ
には数10万kWの発電を目指すとしている.
システム予想図米国社製の波力発電装置「パワーブイ」
我が国の開発例我が国の開発例
現在は,発電実証試験と発電機係留方法の模型実験の段階.
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ジャイロ式ジャイロ式 発電機発電機
神戸大学が開発.波のピッチング運動を軸の回転運動に変換して発電を
行う.現在は株式会社として商用運転を計画中.出力約50kW.
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洋上波力発電システムにおける問題点洋上波力発電システムにおける問題点
・荒天時の安定性,強度や構造,係留方法などのメインテナン
スの問題.
・送電コスト.
・欧米と比較して,低い波のエネルギー密度.
・船舶の航行安全や漁場確保の観点から,海上に浮体や構造物を
設置することの厳しい制限.
現実的な発電システムの構築には,我が国固有の問題に適現実的な発電システムの構築には,我が国固有の問題に適
切に対処しつつ,技術的にも優れた総合的な開発が必要.切に対処しつつ,技術的にも優れた総合的な開発が必要.
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本研究課題の提案本研究課題の提案
我が国では,洋上での大規模構造物による発電は不
向き.長大な海岸線を考慮し,沿岸部での地産地消
を目指したミニ発電が適している.
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既存の構造物であるスリット式防波堤既存の構造物であるスリット式防波堤((総延長総延長1200km)1200km)
に注目し,その内部に設置する波力発電システムを開に注目し,その内部に設置する波力発電システムを開
発する.発する.
スリット式防波堤スリット式防波堤
遊水室
防波堤寸法(大阪南港)
スリット周辺に生じる渦で波を消波する.消波の効率が
高く,建設コストが安価である利点がある.
Slit
Front view
Wave
Waterchamber
Oceanside
Landwardside
Side cross-section
2m
5m
3.2m
1.7m0.5m
0.5m
0.5m
Waterflow
7m
Slit防波堤外観
特徴
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防波堤周辺の水面変位(数値解析結果)防波堤周辺の水面変位(数値解析結果)
陸側 ← → 外海側
周期5秒,波長30m, 波高0.8m
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スリット部における流動スリット部における流動(数値解析結果)(数値解析結果)
←陸側 ↓遊水室 ↓スリット部 → 外海側
周期5秒,波長30m, 波高0.8m,水深0.8m
スリット部に向きの揃った強い往復流が存在する.スリット部に向きの揃った強い往復流が存在する.この流れを利用して水車
を駆動し,発電する.
→システムの実現性について検証するため,模型実験を実施.
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実験装置(実験装置(1/121/12スケール)スケール)
Wave17
0
41713
0
268 40
②
①
③④
⑦
⑤
① Breakwater② Savonius water mill③ Dynamometer④ Amplifier
⑤ PC⑥ Wave height meter⑦ Wave height meter
⑥
A A
35
100
42
40
Cross-sectionA-A
②
Flow
大阪南港の防波堤をモデル
としてその1/12模型を造波
水槽内に設置.
スリット部にサボニウス型水
車を設けて軸を駆動.
軸に動力検出部で摩擦によ
り負荷トルクを加えて,その
トルクと回転角速度,動力を
測定.
波高計⑥でスリット直前の液
面変位を測定.
波高計⑦で波高を測定して
消波率を算出
本手法のメリット本手法のメリット
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・構造物内部を利用することから,設置やメインテナ
ンスが容易である.また,発電機周囲環境の変動も
小さい.
・スリット通過後の,流速が大きくエネルギー密度の
高い流れを利用できる.
・沿岸部に設置するため,送電コストが低い.
・長大な防波堤に多数のミニ発電機を設置することに
より,大きな電力の供給も可能.
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サボニウス型水車サボニウス型水車
往復流に対して一定方向に
回転する.
水車の駆動が安定している.
ただし効率はそれほど高くな
い.
サボニウス水車の特徴13
0mm
35mm
水流
水車の回転方向
水車翼 滑らかに回転するよう,羽
根の取り付け角の位相を
120度ずつずらした3段構
造とした.
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動力検出部動力検出部
①光電センサ
②ひずみゲージ
③トルク検出用薄板
⑤
⑥
④摩擦付加部
⑤回転軸
⑥軸受け
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水車の駆動〔動画〕水車の駆動〔動画〕
周期
C=1.44s
波形勾配
γ=0.03
↓スリット
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測定値(液面変位,回転角速度,負荷トルク,動力)の時系列データ
-60-40-20
0204060
h m
m
0
5
10
15
20ω
ra
d/s
0100200300400500600
T
μN
m
012345678
0 1 2 3 4 5 6
P
mW
Time s
(a) スリット直前の液面変位
(b) 回転角速度[平均 12.8 rad/s]
(c) トルク[平均 249μNm]
(d) 動力[平均 3.2 mW]
変位最大時にスリットに流入,最小時に流出する流れが生じる.
周期C=1.44s波形勾配γ=0.03
流入,流出時に回転角速度,トルク,動力が大きくなる.
スリットへ流入
流出
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負荷トルクによる回転角速度と動力の変化負荷トルクによる回転角速度と動力の変化
0
5
10
15
20
25
30
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
0 100 200 300 400 500 600 700
ωa
rad/s
Pa mW
ωa r
ad/s
Pa
mW
Ta μNm 平均負荷トルク
平均
回転
角速
度
平均
動力
回転角速度ωaはトルクTaの増大とともに単調に減少する.
動力Paは一旦増大した後,減少する.Ta=249μNmで最大値Pamax=3.2mW
周期C=1.44s
波形勾配γ=0.03
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水車の効率,実スケールにおける動力水車の効率,実スケールにおける動力
・流体の運動エネルギー量:Lk=約120mW (速度の3乗に比例)
・水車動力 : Lw = 3.2mW↓
効率 : Lw / Lk = 2.7% ↓
実スケールで約19W(マイクロ水車と同程度)
水車の効率および実スケールにおける出力
周期C=1.44s, 波形勾配γ=0.03
現状の模型実験装置の問題点
上記効率は,一般的なサボニウス水車の効率15%程度よりかなり小さい.今回はシステムの実現可能性の確認を目標としたため,水車の設置位置,形状,工作精度について十分な検討を行っていない.今後,効率を現在の5倍程度,さらに運動エネルギーが上記の5倍程度の位置に水車を設置することにより,実スケールで数百Wの出力の達成を目指す.
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下図に省抵抗型水車の作動原理を示
す.流れが羽根に動力を与える位相を
赤,抵抗になる位相を青で表示.赤の
位相では (1)や(4)の右側のように羽根
が閉じ,抵抗となる青の位相では(1)左のように開いた羽根が流れから隠れ,
(2)から(4)で閉じるように工夫されてい
る.水流の向きが反転した場合でも,
同様の機構で同方向の回転動力が得
られる.
ダリウス水車(揚力型,高効率)
省抵抗型水車模型
他の形式の水車他の形式の水車
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発電機
スリット
水流
他のメカニズムによる発電-他のメカニズムによる発電-ベルト伸縮式発電システムベルト伸縮式発電システム
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日本全体での防波堤の多くが高度成長期に建造され,建設後
50年以上経過したものの割合が増大している.再生可能エネル
ギーへの要望が高まる中,既存の防波堤内への発電システムの
設置に加え,これらの更新に際して新たな機能を付加すること
は十分に実現性がある.防波堤の総延長距離の50%について,
本研究の発電機を取り付けた場合を想定すると,総発電量とし
て50万kW程度が見込まれ,年間約200万トンのCO2排出量削減に
相当する.本システムは,地域分散型エネルギーの供給源とし
て期待ができる.
まとめと展望まとめと展望
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企業への期待企業への期待
・本手法は,消波機能と発電を一体化して考える
技術であり,沿岸部に新たな設備を設置するこ
となく地産地消型の発電システムを可能にする
ものである.
・流体機械に関する技術を有し,地産地消型の発
電事業に興味を持つ企業との共同研究を希望.
発明の名称:波力発電システム
出願番号:特願2011-136156
出願人:大阪市立大学
発明者:加藤健司、重松孝昌、脇本辰郎、吉岡真弥
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本技術に関する知的財産権本技術に関する知的財産権
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大阪市立大学 産学連携推進本部
新産業創生研究センター
産学連携コーディネーター 若林 寿夫
TEL 06-6605-3550
FAX 06-6605-2058
E-mail [email protected]
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