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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井) 1 ハンバーガー業界 ~日本マクドナルドとモスフードサービス~ 福田哲也ゼミナール 経済学部 9 期生 飯島 祥子 石井 紘介 岡村 真樹 櫻井 惟那

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

1

ハンバーガー業界

~日本マクドナルドとモスフードサービス~

福田哲也ゼミナール

経済学部 9期生

飯島 祥子

石井 紘介

岡村 真樹

櫻井 惟那

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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目次

1.はじめに ........................................................................................................................3 2.業界概要及び企業概要...................................................................................................5

2‐1.業界概要.................................................................................................................5 2‐1‐1 ハンバーガー業界とは ..................................................................................5 2‐1‐2.ハンバーガー業界の歴史 ............................................................................13 2‐1‐3.ハンバーガー業界の現状 ............................................................................16 2‐1‐4.ハンバーガー業界の取り組み .....................................................................27

2‐2.企業概要...............................................................................................................29 2‐2‐1 売上高シェアランキング ...............................................................................29 2‐2‐2 事業概要 ........................................................................................................30 2‐2‐3.企業の歩み..................................................................................................32

3.経営戦略分析 ...............................................................................................................37 3‐1.財務分析...............................................................................................................37

3‐1‐1.成長性 .........................................................................................................38 3‐1‐2.収益性 .........................................................................................................41 3‐1‐3.安全性 .........................................................................................................57

3‐2.企業分析...............................................................................................................63 3‐2‐1 企業分析 .....................................................................................................63 3‐2‐2 リーダーシップ .............................................................................................67

4.課題と展望 ..................................................................................................................71 4‐1.日本マクドナルド ................................................................................................71 4‐2.モスフードサービス.............................................................................................72

5.終わりに ......................................................................................................................73 参考資料 .............................................................................................................................74 参考文献 .............................................................................................................................83

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1.はじめに

(飯島祥子)

2008 年 12 月 30 日、内閣府は 2002 年 2 月から続いた日本の景気回復局面のピークを 2007

年 10 月とする方向で検討に入った。これが正式に決定すると景気回復は 69 カ月間続き、

いざなぎ景気を超え、戦後 長を記録することになる。しかし、それ以降はアメリカの金

融危機を発端とした世界同時不況、ガソリンや食品の相次ぐ値上げ、円高や株安、日本国

内の人口伸び率の鈍化など先行き不安が強まり、消費者の生活防衛意識が強まってきてい

る。2008 年は景気後退による節約傾向が外食産業にも影響を及ぼしはじめた。また、近年、

産地偽装や賞味期限改ざんによって食の安全性に対しても消費者は不安を抱いており、外

食産業は厳しい環境に立たされている。しかし、ファーストフード協会が発表した市場動

向調査では、2007 年のファーストフードの全店売上高前年度比は 107.5%であり、好調に

売上を伸ばしていることがわかる。また、「外食産業便覧 2008 上巻」によると 2007 年のフ

ァーストフードの売上高は 2 兆 6,245 億円であり、その中でもハンバーガー業界は 6,670億円を占めている。つまり、厳しい環境の中でもファーストフード業界は好調な売上を維

持しており、ハンバーガー業界はその牽引役だといえる。 本論文では、ハンバーガー業界のシェアランキング第 1 位の日本マクドナルドホールデ

ィングス(以下日本マクドナルド)と第 2 位であるモスフードサービスについてとりあげ

る。ハンバーガー業界は、銀座に日本マクドナルドが誕生した約 40 年前と比べ、メニュー、

味、利便性、店舗作りなど様々な面で変化をしてきた。その変化の過程は日本の食文化の

変化の過程と切り離せない関係にあり、当時、日本にとって新しい食文化であったハンバ

ーガーは、今日の私たちの生活に定着し、身近な存在としてよく利用されるようになった

(資料 1‐1)。その中でも、日本マクドナルドは繁華街型の店舗展開を行い、利便性や効率

性を高めることで成長している。その一方で、モスフードサービスは 2 等地への出店、フ

ランチャイズチェーン(以下 FC)展開、日本人に合った味の商品開発など、日本マクドナ

ルドとは異なった戦略をとることにより成長してきたが、近年は成長力が鈍化している。 本論文では、まず業界概要でハンバーガー業界をはじめとするファーストフード業界と

外食産業の位置関係を示し、外食産業が抱える問題点と現状を明らかにする。続いて、ハ

ンバーガー業界の歴史をみていき、近年のハンバーガー業界を取り巻く環境について理解

を深める。そして、企業概要で両社を比較することで特徴を顕著にし、その特徴を構成す

るに至るまでの企業の歩みについてみていく。 後に、財務分析と企業分析の観点から経

営戦略分析を行う。財務分析では企業の現状や強み・弱みを数字で明らかにしていき、企

業分析で企業の経営戦略を示すことによって、企業の課題と展望を提案する。

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(図表 1‐1)よく利用する店・売り場 【調査対象】10 代から 50 代 【調査時期】2002 年 5 月 1 日から 5 月 5 日 【回答者数】11,597 名

よく利用する店・売場

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

(%)

よく利用する売場 54.6% 45.5% 35.1% 33.7% 27.4% 19.7% 17.9% 13.5%

ハンバー

ガー店

コンビニのパン・弁

ラーメン店

ファミリーレ

ストラン

スーパーのパンや

丼物店うどん・そば

弁当・惣菜店

(出所:マイボイスコム)

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2.業界概要及び企業概要

(石井紘介) この章では、業界概要でハンバーガー業界の特徴を明らかにし、ハンバーガー業界の機

会と脅威を示す。そして、企業概要で日本マクドナルドとモスフードサービスが持つ強み

と弱みを示していきたい。そのために、まず外食産業とファーストフードについて特徴を

みていく。次に、どのようにしてハンバーガーは誕生したのか、またどのようにして日本

に広まっていったのかをみていき、ハンバーガー業界の近年の動向をみていく。 後に企

業概要で私たちが取り上げる日本マクドナルドとモスフードサービスについて詳しくみて

いく。

2‐1.業界概要

この節では、ハンバーガー業界と外食産業とファーストフード業界の位置関係を把握し、

特徴や近年の動向を詳しくみていくことで、ハンバーガー業界がどのような業界であるの

か、そして、どのような機会を持ちどのような脅威があるのかを明らかにする。そして、

ハンバーガー業界がそれらに対してどのような取り組みを行っているのかをみていく。 2‐1‐1 ハンバーガー業界とは

日本標準産業分類表(図表 2‐1)によると、外食産業は大きく「給食主体部門」と「飲

料主体部門」の 2 種類に分けることができる。「給食主体部門」を更に細かく分けていくと、

「飲食店」があり、その中の一つに「その他の飲食」がある。ハンバーガー業界をはじめ

とするファーストフード業界はこの「その他飲食」に分類されている。このように、ハン

バーガー業界はファーストフード業界の一部であり、ファーストフード業界は外食産業の

一部であることから、外食産業とファーストフード業界、ハンバーガー業界の特徴は多く

の点で共通している。そのため、この項では外食産業がどのような業界であるのかを説明

し、ファーストフードの特徴をみていくことで、ハンバーガー業界に対する理解を深めて

いく。

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(図表 2‐1) 日本標準産業分類表

国内線機内食等

外食産業

飲食店

事業所

喫茶店・居酒屋

営業給食

集団給食

給食主体部門

病院

学校

社員食堂給食

その他の飲食

食堂・レストラン

料亭・バー等

保育所給食

飲料主体部門居酒屋・ビア

ホール

バー・キャバレー・ナイトク

宿泊施設

料亭

すし店

そば・うどん店

喫茶店

弁当給食

(出所:総務省ホームページ) 外食とは

外食とはそもそもどのようなものなのだろうか。それを知るために、外食の歴史がどの

ように始まったのかということをみていく。外食が始まった時期は歴史的に遡ると、古代

ローマや中国の漢の時代だと言われている。その頃の外食は酒を売る、料理を食べさせる

という行為のみであった。その後、外食はさまざまな地域で発展しているが、食の提供以

外にも違った役割を果たすようになってくる。ここでは、その例として、フランス料理と

中華料理、そして江戸時代の日本料理についてみていく。 まず、外交儀礼時の正餐として採用されることが多いフランス料理をみてみよう。フラ

ンス料理のルーツを辿ってみると、中世の末期にまで遡る。フランス料理は元来王様や貴

族に対してふるまう料理であった。当時のヨーロッパは多数の領国が存在し、その領国同

士の抗争は戦闘によるものもあったが、 も多く用いられたのが毒殺であった。そのため、

フランス料理は、美味しい料理を提供するというだけではなく、王様の安全を確保するた

めの料理という役割が強かったのである。その後、市民革命が起こり、職を失った料理人

が富裕層向けのレストランを作り、王族や貴族にふるまっていたのと同じような食事を提

供したのが次第に広まっていき、現在のようなフランス料理となった。近代社会でフラン

ス料理が外交儀礼時の正餐として採用されることが多いのには、食の安全が大きな理由に

なっている。 次に、中華料理をみてみよう。実は中華料理の 1 つである広東料理は政治の役割が強い。

文化大革命によって、毛沢東が北京に上京し、中国全土に毛沢東主義の支配権が確立する

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と、北京に毛沢東の出身地の料理である広東料理の調理師養成機関が作られた。この調理

師養成機関を卒業した料理人は、中国全土に配置されていく。彼らは料理人であると同時

に優秀な毛沢東理論の実証者なのである。この当時の広東料理は現在のものとは似ても似

つかない。冬瓜のスープの冬瓜の胴に精細な鳳凰が描かれていたり、スープの中に入って

いる銀杏に毛沢東語録が書かれていたりと、味にこだわった料理ではなく、毛沢東に捧げ

るための料理だったのである。 後に、江戸時代の外食についてみていく。日本で 初に外食が社会に広まったのは江

戸時代中期の江戸である。当時の江戸は 3 年に 1 度くらいの割合で大火事が起きており、

その度に復興のための労働需要が大量に発生した。そのため、多くの町人が出稼ぎのため

に江戸にやってきたのだが、そのほとんどが男性の単身赴任であった。その結果、江戸は

単身生活者が多く、女性人口に比べて男性人口の割合が極端に高くなったのである。その

男性の単身生活者の食生活が、外食に依存していたため、江戸で外食の文化が広まってい

った。その時に発明された料理が、今の日本料理として代表されるすし、そば、天ぷらだ。

これらは当時どれも安価で、現在のファーストフードの役割を果たしていた。まず、すし

についてみてみよう。すしは職人が仕事の傍らにつまむものとして重宝されていた。職人

は高い場所で作業をするため、腹を満腹にしたり太ったりして動きを散漫にしてはいけな

かった。そのため、一度に食べる量を減らし、食事の回数を増やしていたのである。すし

は握ればすぐに作れることや、一度に 2 貫ずつ食べることができるので食べる時間も短縮

できたので、職人は仕事の合間に食べるのに適していた。要するに「早さ」がニーズに合

っていたのである。次に、そばについてみてみる。そばは、16 文と価格が固定されていた。

当時の大工の一日当たりの報酬が 330 文から 550 文であったことを考えれば、非常に安か

ったといえる。この「安さ」によって一般の人に広まっていった。 後に「天ぷら」であ

るが、当時は換気の施設がなく、火を店の中で使えなかったため、川にかかる橋の付近で

売られていた。江戸は「御江戸八百八橋」というほど運河によって物流が営まれていた。

そのため、どこかへ行こうとすると橋を渡ることが多くとなる。つまり、橋は人が行き交

う絶好の立地であった。天ぷらは「立地」によって人々に支持されていたといえる。これ

らを踏まえると、江戸時代の外食は「早さ」、「安さ」、「立地」が重要視されていたことが

わかる。そしてこれは現在のファーストフード業界にも求められていることであり、日本

におけるファーストフードの始まりは江戸時代にあったといえる。 以上のことをまとめると、外食の始まりは単なる食の提供であったが、次第に安全の確

保、政治、安さや利便性など食以外の役割を持つようになっていったことがわかる。それ

では、現在外食産業が果たす役割とはどのようなものだろうか。次は外食産業が提供する

ものについてみていく。

外食産業が提供するものとは この項では、現在外食産業は消費者に何を提供する事業であるのかを改めて確認したい。

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外食産業が消費者に提供するものの 1 つは料理であるということは間違いないが、今日に

おいて食事以外の要素が大きくなってきている。消費者が行きたくなる店、2 度と行きたく

ない店の条件をみてみよう(図表 2‐2、2‐3)。行きたくなる店の条件を見てみると、「料

理の味」が 80.6%で 1 位であるが、「店の雰囲気や接客態度」が 65.5%で 2 位になってい

る。2 度と行きたくない店の場合はもっと顕著に現れており、「料理の味が悪い」が 88.0%で 1 位だったが、2 位の「接客態度が悪かった」が 86.5%とわずか 1.5%ほどしか開きがな

かった。そして、3 位に「料理の提供時間」、4 位に「店内の雰囲気」が入るなど、料理以

外にも接客態度や提供時間などのサービス、店の雰囲気が大きな割合を占めていることが

わかる。また、余暇活動参加人口の上位 20 社(図表 2‐4)をみてみると、7,160 万人で日

常的なものを除く外食産業が 1 位となっている。この順位は近年において大きく変動がみ

られないため、恒常的なものになっているのだ。つまり、余暇の過ごし方として も利用

されているのが外食産業であり、レジャーとしての役割が強くなってきたのである。この

他にも、家族の団らんの場や井戸端会議の場、待ち合わせの場などとして利用されている

ことから、外食産業が提供しているものとは、食事と共に、食を通じて時間を楽しく、有

効に過ごすための空間であるということがいえる。 それでは近年における日本の外食産業はどのように成長してきたのだろうか。次は外食

産業の市場規模をみていく。

(図表 2‐2)行きたくなる店の条件 【調査時期】2007 年 12 月 【有効回答者数】2,201 名

行きたくなる店の条件

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

料理の味が良い 価格が安い 店の雰囲気や接客態度 その他

(出所:goo リサーチポータル)

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(図表 2‐3)2 度と行きたくない店の条件 【2007 年 12 月】 【有効回答者数 1,958 名】

2度と行きたくない店の条件

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

料理が美味しくない 接客態度が悪い 料理の提供が遅い 店内が騒がしい その他

(出所:goo リサーチポータル)

(図表 2‐4)2006 年余暇活動参加人口の上位 20 社

(出所:レジャー白書 2007)

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外食産業市場規模の推移

外食産業の市場規模は 2007 年現在で 24 兆 7,009 億円となっている。ここでは外食産業

がどのように成長してきたのかを、市場規模の推移を元にしてみていく。 外食産業の市場規模の推移をみてみると(図表 2‐5)、1975 年に 8 兆 5,773 億円であっ

たものが 1997 年には 29 兆 702 億円まで拡大した。外食産業が短期間でここまで大きく成

長したのは、人々のライフスタイルの変化と、外食産業のビジネスモデルの確立といった 2つの要因がある。 それでは 1 つ目のライフスタイルの変化からみてみよう。高度経済成長によって人々の

生活が豊かになり、ライフスタイルが変化し始めた。生活充実型と呼ばれる生活に質を求

める人が増加し、モータリゼーションによって移動が容易になったことで、外食を利用し

やすくなった。また、女性の社会進出が活発になったことや、核家族が増加したことで、

料理を作らずに外食ですますという人も増えた。このような理由によって外食に対する需

要が急速に高まっていったのである。 続いて外食産業のビジネスモデルの確立についてみてみよう。実は 1980 年に入るまで外

食産業という言葉は一般的ではなく、飲食業は生業的、家業的な経営によって占められて

いた。そこに大きな衝撃を与えたのが 1969 年に起こった第二次資本の自由化である。この

資本の自由化によって外資の参入が相次いで起こり、これを契機に、経営革新の波が業界

全体に押し寄せることとなった。それまで外食産業がビジネスとして確立されなかった

も大きな理由は、同じメニューを同じ味、同じ価格で販売することが難しいとされてきた

からだ。しかし、欧米の技術の模倣と改良を行うことによってこの問題を解消した。 その 1 つは FC である。FC とは、加盟店から一定のロイヤルティーを徴収することを条

件に、商号や商標の使用権、営業上のノウハウ、一定地域での独占販売権を提供する事業

契約である。これによって初期投資の金額が大きく減少するため事業拡大が容易になるう

え、同じメニュー、同じ味、同じ価格を維持することができる。加盟店のメリットとして

も、一定地域での独占販売権のほか、知名度の高い商号や商品の供給を受けることができ、

営業ノウハウを利用できるため、経験が少ない人でも安心して経営が行えるのである。 FC 以外にも、セントラルキッチン・配送センター方式の確立が大きな役割を担っている。

セントラルキッチンとは集中厨房方式のことで、原材料を工場で一括して加工することで、

店舗では焼く・揚げる等の 2 次加工のみで料理を提供できる。また、それと同時に配送セ

ンターの整備を行うことで各店舗への効率的な材料の運搬を行うことが可能となった。セ

ントラルキッチン・配送センター方式を確立することによって以下のようなメリットが生

まれる。1 つ目は食品材料の一括購入が可能となること。2 つ目は店舗での作業が 2 次加工

に限定されるため作業が容易になること。3 つ目は各店の料理の味、質量が均一化されるこ

と。4 つ目は各店舗への供給体制が整備され、チェーン店の設備投資が削減できること。5つ目はスケールメリットによるコスト削減ができることである。 以上のように、元来生業的、家業的であった飲食業界を、FC やセントラルキッチン・配

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送センター方式の確立によって合理化することで、外食産業としてのビジネスモデルを確

立し、それを消費者のライフスタイルの変化に合わせることによって成長してきたのであ

る。 しかし、市場規模は景気減速などによって 1997 年から 2005 年までの 8 年間で 16.1%減

少した。2006 年以降は、景気回復と共に持ち直していたが、再び経済が悪化してきている。

そして、従業員充足率 ※1が外食産業全体で 81.7%と約 2 割下回り、人材不足が懸念されて

いる。さらに、食の安全性に関する事件が頻発していることや原材料価格の高騰など、外

食産業を取り巻く環境は厳しい状況であるため今後も厳しい状況は続くと思われる。外食

産業を取り巻く環境についてはハンバーガー業界の現状で後述する。

(図表 2‐5)外食産業市場規模の推移

外食産業市場規模の推移

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

市場規模(億円)

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

増加率(%)

市場規模

増加率

(出所:外食産業総合調査研究センター)

ファーストフード業界 ここまで外食産業の成り立ちや外食産業の提供するものについて触れてきたが、ここで

はファーストフード業界についてみていきたいと思う。 経済産業省の商業統計によるとファーストフードとは、客単価が 700 円未満、料理提供

※1従業員充足率必要な人数に対してどれだけの人員が確保されているかをみるもの

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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時間が 3 分未満、セルフサービス方式を導入しているという 3 つの条件を満たしているも

のとされている。2007 年度のファーストフード業界の市場規模は 2 兆 6,245 億円(外食産

業便覧 2008 上巻)であった。他業態と比較してみると、ファミリーレストランが 1 兆 5,989億円(外食産業便覧 2008 下巻)、喫茶が 1 兆 4,654 億円(外食産業便覧 2008 下巻)など、

ファーストフードの規模は大きいことが分かる。また、外食産業の 24 兆 7,009 億円と比べ

ると規模が小さく感じるが、2007 年度店舗売上高ランキングをみると(図表 2‐6)、第 1位が日本マクドナルド、5 位が日本ケンタッキー・フライド・チキン、7 位がダスキン、11位がモスフードサービスなど、ファーストフード業界が上位 15 社中 4 社を占めており、や

はり大きい業界であるといえるだろう。 続いてファーストフード業界の特徴についてみてみる。その特徴は以下の 5 つである。1

つ目は、小規模で画一化した店舗を多店舗展開すること。2 つ目は、取り扱いメニューを少

品種に限定し、大量販売すること。3 つ目は、作業を簡略化、システム化することで注文を

受けてから商品を提供するまでの時間を 小限にし、客の回転率を高めること。4 つ目は、

セルフサービスの形態をとり、テイクアウトも行うこと。5 つ目は、従業員はパート・アル

バイトが主であり(図表 2‐7)、マニュアルも完備しているため未経験者でもすぐに作業が

行えるということだ。これらをまとめると、大量生産と高回転率で販売効率を高める、パ

ート・アルバイトの採用で人件費を抑える、店舗の小型化・画一化で投下資本の効率を高

めるなど、経営の合理化を図っているということが分かる。そしてこれは、客単価が 700円未満という低価格帯での販売や、料理の提供時間を 3 分未満にすることを実現し、それ

を強みにするための特徴であるといえる。 このように、ファーストフード業界は、外食産業の中でも規模の大きい業界であり、合

理化を図ることによって「安さ」や「早さ」を消費者に提供している業界だといえる。 ここまでは外食産業とファーストフードの特徴を主にみてきたが、次はハンバーガー業

界の歴史についてみていくことで、ハンバーガー業界の理解を更に深めていきたい。

(図表 2‐6)2007 年度店舗売上高ランキング 順位 社名 業態 売上高(百万円)

1 日本マクドナルド ファーストフード 494,149 2 すかいらーく 多業態 275,168 3 日清医療食品 集団給食 157,000 4 プレナス 持ち帰り・料理品小売 155,482 5 日本ケンタッキー・フライド・チキン ファーストフード 137,041 6 モンテローザ パブ・居酒屋・バー・料亭 125,580 7 ダスキン ファーストフード 125,332 8 レインズインターナショナル レストラン 124,129 9 本家かまどや 持ち帰り・料理品小売 113,288

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

13

10 ゼンショー 多業態 105,500 11 モスフードサービス ファーストフード 99,500 12 ドトールコーヒー 喫茶 97,914 13 スターバックスコーヒージャパン 喫茶 91,756 14 エームサービス 集団給食 88,500 15 大庄 パブ・居酒屋・バー・料亭 86,352

(出所:2008 年 5 月 14 日, 日本経済流通新聞, 2 頁)

(図表 2‐7)パート・アルバイト割合

パート・アルバイトの割合

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

正社員 8.9% 5.2% 33.5%

パート・アルバイト 91.1% 94.8% 66.5%

外食産業 ファーストフード 全産業平均

(出所:日本フードサービス協会)

2‐1‐2.ハンバーガー業界の歴史

この節では、ハンバーガーの誕生と、発祥の地であるアメリカでハンバーガーが広まっ

た経緯を、米マクドナルドを中心にみていく。そして、日本おけるハンバーガー業界の誕

生と、その後の発展を歴史の流れと共にみていく。

海外におけるハンバーガーの誕生

ハンバーガーの誕生は今から 120 年以上前に遡る。1885 年、ウィスコンシー州で少年が

ミートボールの販売をしていた。多くの人が歩きながら食べるのに苦労していたのを見た

少年は、ミートボールをつぶして 2 枚のパンにはさんで販売することを思い付く。これが

初のハンバーガーである。この当時、多くの人がひき肉を不潔で安全ではないものと考

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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えていたため、ハンバーガーは貧しい人の食べ物であり、イメージの悪いものだった。こ

のイメージが徐々に変わり始めたのは「ホワイトキャッスル」と呼ばれるハンバーガー専

門店の創業がきっかけだった。清潔感のある建物を構え、客の目の前でパティを焼くこと

でひき肉が安全であることを証明し、それによってハンバーガーの見方が変わっていった。 アメリカにおいてハンバーガーが本格的に広まっていったのはモータリゼーションの普

及と合理的なキッチンシステム、FC システムの構築によるものである。ここからは合理的

なキッチンシステムと FC システムの構築に大きく貢献した米マクドナルドを中心にみて

いく。 1930 年代頃、ロサンゼルスでモータリゼーションが普及してきたことで、ドライブイン

食堂が急速に広まった。このビジネスに目を付けたマクドナルド兄弟は、スピーディサー

ビス・システムという調理システムを構築し店を開いた。スピーディサービス・システム

には次の 3 つの特徴がある。1 つ目はメニューを絞ることで、調理の作業を単純化させ誰で

も作業を行えるようにしたこと。2 つ目は、セルフサービスを導入したことで従業員の削減

を行ったこと。3 つ目はスプーンやフォークなどを使用せずに手で食べられる商品のみにし

たことである。これらの特徴により、商品をより早く提供し、費用を安く抑えることに成

功した。このスピーディサービス・システムによって順調に売上を伸ばしたことで、早さ

や効率性を追及した店舗が多く登場した。バーガーキングやタコベルなどもその一部であ

る。 ここでハンバーガーがアメリカに広まったもう1つの要因であるFCシステムの構築につ

いてみていく。当時ミキサーのセールスマンであったレイ・クロック氏(以下クロック氏)

はマクドナルドのスピーディサービス・システムを見て、この事業は成功するということ

を確信した。マクドナルド兄弟は店舗展開をすることは考えてはいなかったが、クロック

氏はマクドナルド兄弟に金銭を払うことを条件にスピーディサービス・システムの使用権

を得た。しかし、クロック氏は資金が不足したため自身で店を開くことができなかった。

そこで考えられたのが新しい FC システムである。これは、事業家が自分の資金でマクドナ

ルドの店舗を新しく開き、クロック氏が経営のノウハウを教え、事業家が経営して得た利

益を分け合うというものである。さらに、看板・店舗・メニュー・味など全てにおいて画

一性を求めた。これにより、店舗によって商品やサービスの質が変わることなく、店舗の

拡大に成功したのである。 その後、ロサンゼルス以外にもモータリゼーションが普及し、それと共にマクドナルド

の店舗が増加していった。クロック氏は 1962 年に 1 人 100 万ドルでマクドナルド兄弟の持

ち分を買い取り、ハンバーガーをアメリカだけではなく世界中に広めた。そして、現在ア

メリカではハンバーガーが年間 130 億個食されるまでになった。

日本におけるハンバーガー業界の誕生とその発展

ここまではアメリカにおけるハンバーガーの誕生をみてきた。次は、ハンバーガー業界

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

15

が日本においてどのように誕生し、発展にしていったかについてみていく。 日本におけるハンバーガー業界の誕生は、1969 年の資本の自由化によるものである。そ

れにより、マクドナルド、ウィンピー、バーガーキングをはじめとする外資系の企業が参

入し、それと同時期にモスバーガー、ロッテリア、ファーストキッチン、森永ラブなど日

本の企業も参入することでハンバーガー業界は誕生した。しかし、マクドナルド以外の外

資系の企業が全て撤退していることから、日本の市場は特殊だったことがいえる。その原

因は主に日本人の味覚とアメリカ人との味覚の違いや、日本はモータリゼーションが未発

達でアメリカとは状況が異なっていたことがあげられる。そのような中で日本マクドナル

ドだけが日本で成功した理由については後述する。その後ハンバーガー業界は高度経済成

長によるライフスタイルの変化を背景に成長していった。 1980 年代前半はハンバーガー業界にとって 1 つの転機となった。それまでハンバーガー

はスナック感覚で食べられており、食事としては考えられていなかった。しかし、この時

期を境に食事として食べられるようになる。その背景には 1980 年に起こった第 2 次オイル

ショックによる成長力鈍化がある。売上を伸ばそうとした各社は、それまでハンバーガー

のパティに使用していたのは牛肉のみであったが、オムレツや鶏肉などを挟むハンバーガ

ーを開発し、ボリュームのあるハンバーガーを販売した。これらの取り組みによって食事

としての需要を獲得し再び成長した。 ハンバーガー業界にとってのもう 1 つの転機は、1987 年の日本マクドナルドによる 390

円セットの発売である。これにより、ハンバーガー業界は価格競争の時代へと突入してい

く。その背景には 1986 年頃から出店競争が激化したことや、土地や人件費が高騰したこと

による利益の圧迫がある。それを打開するために行ったのが低価格戦略である。390 円セッ

トが発売されるまでは単品のメニューのみの販売が主流であったが、ハンバーガー、ポテ

ト、ドリンクをセットにしたことにより割安感を出すことに成功した。日本マクドナルド

に続いてロッテリアが 380円セットを発売するなど他社もセット販売を行うようになった。

しかし、1990 年代にバブルが崩壊すると、消費者の価格に対する意識が高まり、1992 年に

生産量 ※2が初めてマイナス成長した。それを受け、1995 年に日本マクドナルドが主力商品

を 30%から 40%値下げをすることで価格競争が更に激化した。その結果、1996 年には森

永ラブが撤退するなど、価格競争について行けない中小チェーンが撤退することでハンバ

ーガー業界の寡占化が進んだ。さらに、2000 年から日本マクドナルドが平日半額キャンペ

ーンを始めたことで価格破壊が起こった。2002 年にこのキャンペーンが終了し、2003 年以

降、価格競争は落ち着きをみせている。

以上のことをまとめると、資本の自由化によって様々な企業が参入したことでハンバー

ガー業界が誕生したが、日本の市場が特殊だったため、外資系の企業は日本マクドナルド

以外撤退してしまった。その後、食事としての需要の獲得することや、価格競争を行うこ

※2ハンバーガー業界は 1996 年以降は売上高を基準にシェアを算出しているが、1995 年ま

では生産量を基準にしてシェアを算出していた

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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とによって成長してきた。 次からは、ハンバーガー業界の近年の動向についてみていく。 2‐1‐3.ハンバーガー業界の現状 この項では、ハンバーガー業界の現状を、外食産業を取り巻く環境とファーストフード

の近年の動向をみていくことで把握し、それに対してハンバーガー業界がどのような業界

がどのような取り組みを行っているのかをみていく。 業界概要で述べてきた通り、外食産業の市場規模は1997年をピークに減少してきている。

1 世帯あたり平均1ヶ月の外食費用の推移(図表 2‐8)をみても、消費の衰退が明らかに

見てとれる。しかし、その一方で食料品支出に占める外食費の割合は衰えておらず、むし

ろ増加傾向にある。つまり、食料品にかける金額が減少しているため、外食にかける費用

も減少はしているものの、依然として外食を利用する機会は多いと考えることができる。

それでは何故このような状況になっているのだろうか。まずは消費が衰退した理由からみ

ていく。

(図表 2‐8)1 世帯あたり平均1ヶ月の外食費用の推移

(出所:総務省「家計調査」) 消費の衰退 消費の衰退の原因は雇用報酬の減少、少子高齢化、食の安全性に関する問題、外食産業

の相次ぐ値上げの 4 つがあげられる。それでは 1 つ目の雇用者報酬の減少から見ていく。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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雇用者報酬の推移(図表 2‐9)をみてみると、1997 年をピークに減少し、それ以降も横ば

いの状況が続いている。本論文の冒頭において、いざなぎ景気を超える戦後 長の好景気

が 2001 年から始まったと触れたが、その好景気が実感のない好景気と言われていた所以は

ここにある。つまり、好景気により多くの企業が過去 高収益などを出していたにも関わ

らず、それが労働者へ反映されていなかったのだ。このように雇用者への報酬が減少した

ことが、消費の衰退につながっている。 続いて 2 つ目の少子高齢化についてみていく。出生数及び合計特殊出生率の推移(図表 2‐10)をみてみると、出生数と合計特殊出生率は共に低下の一途を辿っている。また、総

人口に占める 65 歳以上の高齢者の割合は、1950 年に 20.2 人に 1 人であったが、2005 年

は 5.0 人に 1 人となり、2050 年の予測は 2.8 人に 1 人となっている。これを人口ピラミッ

ド(図表 2‐11)で見てみると、1950 年から 2005 年で高齢化が進んでいるのは明らかで

あり、2050 年は更に少子高齢化が進むと予想されている。高齢化が進むと、高齢者は消費

が落ち込む(図表‐12)ことや、子供向けや若者向けの商品やサービスも衰退する。また、

消費の停滞のみではなく、従業員不足が深刻な問題となってくることが予想される。 3 つ目食の安全性に関する問題であるが、近年に起こった食に関する事件をまとめた表を

みて欲しい(図表‐13)。中国による残留農薬問題や冷凍ギョーザ中毒事件だけではなく、

国内に関しても偽装、改ざんが多く行われていることが分かる。これらの事件によって消

費者の食の安全に対する意識が高まってきている。農林漁業金融公庫の「食の志向につい

ての調査結果」(資料 2‐14)によると「食の安全に配慮する」が 2008 年 1 月には 20.9%であったのに対し 5 月には 41.3%と冷凍ギョーザ中毒事件の発覚前と比べ、4 ヶ月で 20.4%上昇した。また、今後 52.3%の消費者が配慮したいと回答しており、さらに関心が高まる

ことが予測される。このように、食に対する不信感が広まることで外食を控えるといった

動きや、企業が仕入先を変更するなどのコスト負担増が起こっている。 4 つ目は外食産業の相次ぐ値上げである。近年外食産業の値上げのニュースが頻繁に報道

されているが、その原因は主に穀物価格の高騰によるものである。穀物価格の推移(図表 2‐15)をみてみると、小麦、とうもろこし、大豆の国際価格は 2006 年秋頃より高騰し、2008年に入って史上 高値を更新するなど高水準で推移しており、農林水産省は「当面はこの

水準が続く」と予測している。穀物価格の高騰は、世界人口の増加(図表 2‐16)や世界の

穀物の期末在庫率 ※3(図表‐17)の低下による輸出規制、バイオ燃料などの食用以外の需

要拡大、穀物市場への投機資金流入など多岐にわたっている。穀物の価格が高騰すると、

小麦粉や食用油などの原材料の価格に影響し、それが利益を圧迫しているため外食産業で

は相次いで値上げが起こっているのである。そして値上げをすることによって消費者離れ

を引き起こしている。 以上のように、雇用報酬の減少や少子高齢化、安全性に関する問題や値上げなど、消費

※3期末在庫率は需要に対する期末在庫の割合で、「在庫率」が低いほど需給が逼迫している

ことになり、FAO が定める安全在庫水準は 17~18%である。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

18

者が外食を控える要因は多くあり、外食産業は厳しい状況に立たされている。しかし、前

述したように食料品に占める外食費の割合は増加傾向にある。次はその理由をみていく。 (図表 2‐9)雇用者報酬の推移

雇用者報酬の推移

0

5,000,000,000

10,000,000,000

15,000,000,000

20,000,000,000

25,000,000,000

30,000,000,000

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

(百万円)

0.00

100.00

200.00

300.00

400.00

500.00

600.00

(百万円)

雇用者報酬

一人当たり雇用者報酬

(出所:内閣府「国民経済計算」、総務省「労働力調査」)

(図表 2‐10)出生数及び合計特殊出生率の推移

(出所:厚生労働省大臣官房統計情報局「人口動態統計」)

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(図表 2‐11)人口ピラミッド

(出所:国立社会保障・人口問題研究所)

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(図表 2‐12)世帯主年齢階級別の1世帯当たりの消費支出

(出所:平成 14 年版 厚生労働白書)

(図表 2‐13)食の安全性に関する事件

「雪印食品」牛肉偽装 2001 年

BSE(牛海綿状脳症)問題

「日本ハム」の子会社牛肉偽装 2002 年

中国産の冷凍ホウレン草、冷凍枝豆などから基準値を大幅に超える農薬が検出

鳥インフルエンザ発生のためタイ産鶏肉や加工品の輸入を一時停止 2004 年

国内にも鳥インフルエンザ発生

「不二家」消費期限切れの材料で一部洋菓子の製造

「ミートホープ」の牛肉偽装

「赤福」の消費期限偽装

「石屋製菓」の賞味期限偽装

「船場吉兆」による食べ残しの再提供

2007 年

中国製冷凍ギョーザで食中毒が発生

残留農薬などで汚染された事故米の不正転売

中国の乳製品に有害物質のメラミンが混入

中国製冷凍インゲンから殺虫剤ジクロルボスが検出

2008 年

「サイゼリヤ」の中国製原料に有害物質メラミンが混入

(出所:日本経済新聞、その他)

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(図表 2‐14)食の志向についての調査 【調査時期】2008 年 5 月 【調査対象】国内 20~60 代男女 2,000 人

食の志向についての調査結果

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

(%)

2008年1月 20.9% 36.4% 37.4% 26.6% 12.2% 22.4%

2008年5月 41.3% 35.1% 35.0% 27.2% 25.8% 15.9%

今後 52.3% 23.7% 38.7% 19.8% 24.5% 11.4%

安全志向 手作り志向 健康志向 経済性志向 国産志向 簡便化志向

(出所:農林漁業金融公庫)

(図表 2-15)穀物価格の推移

穀物国際価格の推移

0.0

100.0

200.0

300.0

400.0

500.0

600.0

700.0

1970

1974

1978

1982

1986

1990

1994

1998

2002

2006

(ドル/トン)

小麦

とうもろこし大豆

(出所:農林水産省)

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(図表 2‐16)世界人口の推移

世界人口の推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,0001950

1955

1960

1965

1970

1975

1980

1985

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

(百万人)

(出所:総務省統計局) (図表 2‐17)穀物期末在庫率の推移

穀物期末在庫率の推移

800.0

1,000.0

1,200.0

1,400.0

1,600.0

1,800.0

2,000.0

2,200.0

1970

1972

1974

1976

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

生産量・需要量

(百万トン)

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

期末在庫率(%)

生産量

消費量

期末在庫率

(出所:農林水産省)

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外食に対する需要 食料品に占める外食費用が上昇している主な要因は女性の社会進出と単身世帯数の増加

があげられる。まず、女性の社会進出からみていく。労働力人口比率の推移をみてみると

(図表 2‐18)、女性の労働力人口比率の推移に目立った変化は見られないが、男性の労働

力人口比率は下降傾向にある。これは主に高齢化が進んでいることが原因と考えられ、相

対的にみると女性の労働者は増加しているといえる。また、年齢別労働率をみてみると(図

表 2-20)、女性の 25 歳から 34 歳までの労働率が大きく上昇しており、若い人の社会進出が

進んでいるといえる。 次に単身世帯数の増加をみてみよう。単身世帯数の推移をみてみると(図表 2‐20)、単

身世帯数は増加の一途を辿っており、今後も上昇傾向にあることが見てとれる。年齢別に

みても(図表 2‐21)、全ての世代で単身世帯が増加している。 女性の社会進出や単身世帯が増加すると、手間をかけないで食べようとする食の簡便化

志向が強まり、外食を利用する頻度が増える。そのため、食料品に対する外食費用の割合

は上昇傾向にある。 以上のことから、外食産業を取り巻く環境は厳しく、消費は落ち込んではいるが、その

一方で女性の社会進出や単身世帯の増加により、外食に対する需要は依然としてあるとい

うことがわかった。次にファーストフードの近年の動向についてみていく。 (図表 2‐18)労働力人口比率の推移

労働力人口比率の推移

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

(%)

(出所:総務省統計局「労働力調査」)

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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(図表 2‐19)年齢別労働率

(出所:総務省「国勢調査」)

(図表 2‐20)単身世帯の動向

(出所:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所)

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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(図表 2‐21)年齢階層別人口に占める単身者の割合

(出所:総務省「国勢調査」)

ファーストフード業界の動向 ここまで外食産業を取り巻く環境を主に見てきたが、ここではファーストフード業界の

近年の動向をみていく。ファーストフード業界の全店売上高・既存店売上高・全店店舗数

の推移(図表 2‐22)をみてみると、全店売上は 2003 年を除き 100%を超えており、6 ヵ

年平均では 102.5%とファーストフード業界は成長していることが分かる。特に 2006 年か

ら 2007 年は成長が著しい。また、全店売上が成長傾向にあるのに対し、既存店売上は 2005年までは前年割れしていたため、それまでの成長は新規出店に頼っていたことになるが、

2006 年、2007 年の 2 ヵ年平均は 104.39%と回復傾向にある。外食産業が厳しい環境に立

たされている中、ファーストフード業界が成長している理由については後述する。ここで

注目して欲しいのは全店店舗数の推移である。2005 年までは新規出店に頼って成長してき

たのにも関わらず、2002 年から 2005 年までの 4 ヵ年平均は 101.4%と全店売上高の伸び

率に比べて低い。このことから、ファーストフード業界はスクラップアンドビルドを繰り

返して成長してきたということができる。つまり、不採算店から撤退し、新規出店する場

所を採算が取れる地域に限定することによって、既存店売上の回復を行ったのである。フ

ァーストフード業界が成長傾向にあるのにも関わらず、2006 年、2007 年の全店店舗数も大

きく変化が見られないことから、現在は新規出店が難しく、慎重になっていることが分か

る。2008 年の日本経済流通新聞の調査で、出店がしにくくなったかを聞いたところ、「場所

によっては感じる」が 多の 37%。「全体的に感じる」(32.1%)と合わせると 69.1%が出

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

26

店の難しさを感じており、「感じない」の 28.4%を大きく上回った(2008 年 05 月 16 日、 日本経済流通新聞、 19 項)。これらの背景には賃料高騰や人材不足が考えられる。 また、ファーストフードの全店利用客数と客単価の推移をみてみると(図表 2‐23)、客

単価の 6 ヵ年平均が 99.75%であるのに対し、利用客数は 6 ヵ年平均で 103.03%と客単価

より伸び率が高い。このことから、ファーストフード業界の成長は、客単価の向上ではな

く客数の増加によるものだといえる。この理由であるが、客単価を向上させるとファミリ

ーレストランなどその他の業態と競合してしまうことがあげられる。ファーストフード業

界は安価であることを 大の強みとしているため、そうなると競り負けてしまう可能性が

高い。つまり、ファーストフード業界が成長していくためには、客数を向上させなければ

ならないのである。 以上のことから、ファーストフード業界はスクラップアンドビルドを繰り返すことで、

出店計画の見直しを行い、既存店売上を回復させることで成長してきたということがわか

った。しかし、賃料の高騰や人材不足により現在は新規出店が難しくなってきている。ま

た、ファーストフード業界の成長の鍵は客数の増加によるものだということがわかった。 ここまで、外食産業を取り巻く環境と、ファーストフードの近年の動向についてみてき

たが、ここからはハンバーガー業界が具体的にどのような取り組みをしているかについて

みていく。

(図表 2‐22)ファーストフード業界市場動向調査①

全店・既存店売上、全店店舗数の推移

85%

90%

95%

100%

105%

110%

全店売上高 100.63% 99.56% 101.11% 102.20% 105.43% 107.07%

既存店売上高 94.58% 95.53% 97.95% 99.95% 103.48% 105.30%

全店店舗数 101.50% 101.58% 101.63% 100.89% 100.73% 100.52%

2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度

(出所:日本フードサービス協会)

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

27

(資料 2‐23)ファーストフード市場動向調査②

全店利用客数・客単価の推移

90%

95%

100%

105%

110%

全店利用客数 103.38% 98.40% 98.63% 106.38% 103.70% 107.74%

全店客単価 97.49% 101.19% 102.54% 96.15% 101.73% 99.41%

2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度

(出所:日本フードサービス協会) 2‐1‐4.ハンバーガー業界の取り組み 外食に対する消費が落ち込む一方で、ファーストフード業界の近年の動向では売上を伸

ばしていることがわかった。ハンバーガー業界はファーストフード業界の中でも大きい業

界であるため、売上の増加にはハンバーガー業界の取り組みが大きく関わっている。動向

で前述した通り、ファーストフード業界の売上が増加した原因は客数増加によるものであ

る。この項では、ハンバーガー業界が客数を増加させるために行っている取り組みについ

てみていく。

お得感の演出 ハンバーガー業界が行っている取り組みの 1 つに、お得感の演出があげられる。ハンバ

ーガー業界の歴史で前述した通り、デフレ時のハンバーガー業界は価格競争が激しく、そ

の時期にハンバーガーは安価なものという意識が消費者に定着した。その後デフレから脱

却し、原材料価格の高騰も相俟って値上げが行われたが、値上げをするとハンバーガー業

界の 大の強みである「安さ」が失われてしまう。そこで、お得感を演出することによっ

て安価なイメージの維持を図っている。その主な取り組みとして以下の 3 つが挙げられる。 1 つ目はケータイクーポンの実施である。以前から紙を使ったクーポンを配布するという

ことは行っていたが、近年は携帯電話を使ったケータイクーポンが多く利用されている。

ケータイクーポンの認知と利用経験をみると(図表 2‐24)、ケータイクーポンを知っている

という人は 84.7%と認知度が高いことが分かる。また、ケータイクーポンを利用したこと

があると答えた人の中で便利だと感じている人は 82.2%と多い。2 つ目は低価格商品の販

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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売である。バーガー類やセットの販売価格は概ね上昇しているため、低価競争が激化して

いた頃のように商品全体の価格が下がっているわけではない。ここでいう低価格商品とは

目玉商品のことで、100 円程度の商品の販売を行っていることである。3 つ目は期間・時間

別のプロモーションの実施である。期間別のプロモーションでは 1 ヶ月単位や、週末のみ

の期間限定で行う値下げを行い、時間別のプロモーションでは朝食時間の販売を強化する

ことや、ティータイム限定でのセット販売や割引サービスを行っている。 これらの取り組みによってお得感を演出し、敷居を低くすることで気軽に利用できるよ

うになることや、低価格志向の需要を取り込むことにより客数を向上させている。 (図表 2‐24)携帯クーポンの認知と利用経験

携帯クーポンの認知と利用経験

54.0%

30.7%

15.3% 知っており、利用したことがある

知っているが利用したことはない

知らない

(出所:ネットエイジアリサーチ)

「食べる」から「過ごす」へ ハンバーガー業界が行っている取り組みのもう一つに食事目的以外での利用の増加があ

げられる。日本経済新聞社の消費者調査 ※4によると、ファーストフード店に来店する時間

帯をたずねたところ、「昼食時」が 66.2%と 多だったが、「食事以外」が 13.8%で 2 位で

あり、「夕食時」の 11.0%より多かった。また、「同僚・仲間とのんびりしたいとき」にフ

ァーストフードを利用する人のうち、31.0%がファーストフード店に行く頻度が「増えた」

と答えており、「一人でのんびりしたいとき」の人も 25.0%が「増えた」としている。これ

は来店頻度が「増えた」と答えた人が全体で 19.3%だったのに比べて高いことがわかる。

※4調査日:2008 年 4 月 11 日、調査方法:インターネット、調査対象:全国 20 歳から 60歳の男女約 1,000 人

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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この調査の結果から、食事目的以外での利用が増えているといえる。ハンバーガー業界は

食事以外の需要を取り込むため、デザートなどのサイドメニューを拡充し、歓談の場とし

て使いやすくしている。また、店舗に無線LANを導入し、カウンター席を増やすなど改装

を行うことで、サラリーマンがメールチェックの場として使えるようにするなど、様々な

取り組みを行っている。また、前述したようにお得感の演出を行うことによって、敷居を

低くし店舗を利用しやすくしているのも「過ごす」場としての利用を促している。 このように、食事以外の利用を促すと、昼のピーク帯以外の時間における売上の増加や

店舗の効率利用につながる。外食産業の消費が衰退しているなか、食事以外の需要を創造

し、客数を向上させることが重要となってくる。 ここまで業界概要をみてきた。それにより、外食の提供するものとは食事だけではなく

空間も提供していること、ファーストフード業界は合理化をすることによって安さやスピ

ードを強みとしていることがわかった。また、外食産業は消費が衰退しており厳しい状況

に立たされているが、その一方で女性の社会進出や単身世帯の増加により依然として外食

に対する需要がある。そして、客数の向上が成長するうえで重要だということがわかった。

ハンバーガー業界は客数を向上させるため、お得感を演出することや、食事目的以外の利

用を促すなどの取り組みを行っている。 次は日本マクドナルドとモスフードサービスについてみていく。 2‐2.企業概要

(飯島祥子) この節では、私たちがとり上げる日本マクドナルドとモスフードサービスの両社につい

て売上高シェアランキングや事業内容、各企業の歩みの観点から比較し、企業の強みを明

確にする。 2‐2‐1 売上高シェアランキング

1996 年から 2006 年までの過去 11 年間のハンバーガー業界売上高シェアランキング(図

表 2‐25)の推移から日本マクドナルドとモスフードサービスの動きをみてみる。 日本マクドナルドは売上高シェアランキング第 1 位である。2007 年のシェアは 71.1%で

あることから、ハンバーガー業界で日本マクドナルドは圧倒的なシェアを持っている企業

だといえる。1996 年と比較すると 11 年間で 24.0%シェアを伸ばしており成長している企

業であるといえる。 一方、モスフードサービスは売上高シェアランキング第 2 位である。11 年間で 26.8%か

ら 15.9%までシェアを減少させている。また、モスフードサービスと売上高シェアランキ

ング第 3 位のロッテリアのシェアは減少しているがファーストキッチンやフレッシュネス

は、あまり変化がみられない。つまり、モスバーガーやロッテリアのシェアを奪うことで

日本マクドナルドはシェアを伸ばしてきたといえる。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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以上のことから、日本マクドナルドは圧倒的なシェアを持ち、モスフードサービスはシ

ェアを減少させていることがわかった。次では、なぜこのような違いが生まれたのかを各

企業について詳しくみて探っていく。 (図表 2‐25)

売上高シェアの推移

0%

20%

40%

60%

80%

100%

日本マクドナルド 47.7% 51.6% 55.9% 57.9% 61.4% 62.4% 66.8% 67.5% 68.4% 70.1% 71.7%

モスフードサービス 26.8% 25.5% 23.6% 22.9% 20.7% 20.9% 17.7% 18.8% 18.8% 17.4% 15.9%

ロッテリア 14.6% 13.1% 11.9% 10.7% 9.4% 9.0% 8.0% 8.2% 7.0% 6.6% 6.2%

ファーストキッチン 2.2% 2.1% 2.0% 1.9% 1.9% 1.9% 1.9% 2.1% 2.0% 1.8% 1.8%

フレッシュネス 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 1.2% 1.4% 1.6% 1.6% 1.7%

ウエンコジャパン 5.4% 4.9% 4.5% 1.7% 1.6% 1.4% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%

その他 3.3% 2.8% 2.1% 4.9% 5.0% 4.7% 4.2% 2.1% 2.2% 2.5% 2.7%

1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年

(出所:市場占有率 1998 から 2008)

2‐2‐2 事業概要

(図表 2‐26)

社名 日本マクドナルドホールディング

ス株式会社

株式会社モスフードサービス

東京都新宿区西新宿 6-5-1 京都品川区大崎 2-1-1 所在地

新宿アイランドタワー ThinkPark Tower 4 階

代表者 原田 泳幸 櫻田 厚

設立日 1971 年 5 月 1 日 1972 年 7 月 21 日

資本金 241 億 1,387 万円 114 億 1,284 万円

事業内容 ハンバーガー・レストラン・チェ

ーンを中心とした飲食店の経営及

びそれに関連する事業を営む会社

の株式を所有することによるグル

ープ連結経営の立案と実行

フランチャイズチェーンによるハ

ンバーガー専門店「モスバーガー」

の全国展開、その他飲食事業など

社員数(連結) 5,244 人(2008 年 6 月現在) 907 人(2008 年 3 月現在)

直営店 2,832 店 直営店 90 店 店舗数

FC店 996 店 FC店 1,299 店

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連結子会社 日本マクドナルド株式会社 モスバーガー事業 8 社

株式会社エブリデイ・マック その他飲食事業 3 社

The JV 株式会社 その他事業 4 社

(出所:各社ホームページ) 上記の表(図表 2‐26)は私たちが今回取り上げている日本マクドナルドとモスフードサ

ービスの事業内容を記したものである。これから、両社を比較し、各企業の特色を明らか

にする。 まず、両社の設立日をみてみる。日本マクドナルドは 1971 年であり、モスフードサービ

スは 1972 年である。売上高シェアには大きな差があったが、設立日は 1 年間しか変わらな

い。しかし、資本金を見ると日本マクドナルドが 241 億 1,387 万円なのに対しモスフード

サービスは 114 億 1,284 万円と、約 128 億円もの差があり両社の規模の違いがわかる。設

立日に、あまり変わりはないものの、資本金に差がある理由は、日本マクドナルドはアメ

リカで誕生した企業であり資本の自由化により参入した企業だが、モスフードサービスは

日本で誕生した企業であるからだ。 次に、事業内容と連結子会社をみてみる。モスフードサービスの事業内容に、「その他飲

食事業」とある。モスフードサービスはモスバーガー事業以外にも、摘みたて紅茶とオリ

ジナルスイーツの「マザーリーフ」や、自家製ハンバーグとオムライスの「ステファング

リル」などの経営を行っている。その他にも連結子会社をみてみると、中華そば「ちりめ

ん亭」など中華業態の経営を行っている「トモス」や、金銭貸付・保険代理を行っている

「株式会社モスクレジット」などの連結子会社があり、積極的に多角化経営を行っている

ことがわかる。それに対し日本マクドナルドの連結子会社をみてみると、ハンバーガーに

関連する事業のみを行っている。 そして、両社の店舗数をみてみる。両社の店舗数を比較してみると大きな差があり、売

上高シェア上位 4 社(資料 2‐27)と比較しても、日本マクドナルドの店舗数は多いことが

わかる。また、日本マクドナルドは直営店を中心に経営を行っており、モスフードサービ

スは FC 中心に経営を行っていることもわかる。 後に、社員数をみてみる。日本マクドナルドの社員数はモスフードサービスと比較す

ると約 4,300 人も多い。この差は、店舗数の違いも要因の 1 つであるが、直営店中心経営

と FC 中心経営という店舗経営の違いが影響している。 FC とは、前述したようにノウハウや営業権を提供する代わりにロイヤルティーを支払う

ことであるため、費用は、全てオーナー側が負担する。つまり、人件費もオーナー側が負

担するため FC 店のオーナーは、その企業の社員数に含まれない。このことから、FC 店を

中心に経営を行うモスフードサービスの社員数は少なく、直営店中心に経営を行っている

日本マクドナルドは社員数が多くなっている。 以上のことから、日本マクドナルドは社員数や店舗数、資本金などから規模の大きな企

業であることがわかった。一方モスフードサービスは、ハンバーガー事業以外にも多角化

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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経営を行い、拡大を図っていることがわかった。それでは、どのようにして日本マクドナ

ルドやモスフードサービスは今日まで発展してきたのだろうか。次から、両社の歩みをみ

ていく。

(図表 2‐27)

売上高シェアランキング上位4社の店舗数

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

(店)

店舗数 3,828 1,389 587 136

日本マクドナルドモスフードサービ

スロッテリア ファーストキッチン

(出所:各社ホームページ) 2‐2‐3.企業の歩み

事業概要では、両社の規模の違いや特色の違いを述べた。この項では、そのような違い

が、どのようにして生まれたのかを各企業の歩みを振り返ることで明確にする。

日本マクドナルド 1971 年 5 月 藤田田氏がアメリカのマクドナルドからのフランチャイズ権を獲得し創業 1971 年 7 月 銀座三越店内に日本第 1 号店が開店 1975 年 配送システムを整備 1977 年 ハンバーガー業界で初のドライブスルー店舗を開始 1982 年 POS システムの導入を開始 1982 年 全店年間売上高が 702 億円を超え、外食産業第 1 位になる 1987年 「サンキューセット」を発売

「ハッピーセット」を発売 1990 年 POS システムを全店舗に導入 1995 年 4 月 ハンバーガーの販売価格の大幅な値下げ(210 円から 130 円) 1995 年 10 月 すべてのバーガー類を今までの販売価格から 30~40%値下げ

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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2000 年 2 月 平日半額キャンペーン開始 2002 年 2 月 平日半額キャンペーン終了 2002 年 創業以降初めての赤字 2003 年 3 月 創業者である藤田田氏が代表取締役会長を解任 2004 年 2 月 代表取締役に原田泳幸氏が就任 2007 年 1 月 「メガマック」発売

11 月 FC 店の消味期限改ざん 2008年 残業代未払い訴訟

3 月 「プレミアムローストコーヒー」発売

1971 年 5 月に藤田商店社長の藤田田氏(以下藤田氏)が出資比率 50 対 50 でアメリカの

マクドナルドから FC 権を獲得し創業した。その際、藤田氏はアメリカのマクドナルドとは

異なる日本マクドナルドとしての経営方法を考え実行した。 アメリカのマクドナルドと大きく異なる点として、出店方法と直営店中心経営の 2 点が

挙げられる。まず、1 点目の出店方法であるが、アメリカは郊外型の店舗展開を中心に行っ

ていた。しかし、日本は繁華街型の店舗展開を中心に行い、1971 年 7 月 20 日に第 1 号店

を、銀座三越店内に開店した。なぜなら、銀座は、その当時流行の発信地であり話題性も

ある土地だったからである。また、この年の 5 月に銀座が歩行者天国になったことも理由

として挙げられる。その後も、地価や出店に際してのコストは高いが、利便性を重視した

ため駅の近くや街の中心部といった繁華街へ出店を続けた。その結果、日経産業消費研究

所が 10 代後半から 40 代までの女性を対象に実施した、利用したいファーストフード店調

査において、「自宅や勤め先、学校の近くにある」という利用者の評価項目で 20 チェーン

中、日本マクドナルドは も高い評価を受けた。(1999/09/18, 日経流通新聞, 1 ページ) 次に 2 点目の、直営店中心経営であるが、アメリカが FC 店中心経営であったのに対し、

日本では直営店中心で店舗展開を行った。FC 店に比べ店舗の標準化が行いやすく、収益が

得やすいため藤田氏は直営店を中心に経営を行った。 その他にも、日本マクドナルドの特色として徹底した経営効率の改善が挙げられる。ま

ず、1975 年に配送基地に一括納品し、各店舗が必要量をそこに注文する配送システムを整

備した。その後、1982 年には POS システムの導入を始め、1990 年には全店舗に導入した。

POSシステムとは、30分ごとの売上データを蓄積し、それを元に販売数の予測を行うため、

適正仕入れが可能になるシステムのことである。さらに、従業員の出退勤データの管理、

分析も可能になり、時間帯別の客数、売上などから適正な人員の配置モデルを得られるの

で、人件費の削減にもつながる。また、その他にも仕入システムをグローバル・パーチェ

シング・システムに変更した。グローバル・パーチェシング・システムとは世界 120 カ国

に約 2 万 8,000 店舗を構えるマクドナルドだからこそ可能にしたシステムである。パソコ

ンで、食材のひとつひとつについて、各国の市場価格や、関税、日本までの輸送コストな

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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ど、仕入れ段階で価格が自動計算できるため、その時点で も安く仕入れられる国が瞬時

にわかるというものである。このような仕入システムにしたことで仕入れコストの削減と

効率化を行うことに成功した。また、円高の影響による海外からの仕入が安くなったこと

もあり、低価格商品の販売が可能となった。 低価格戦略の先駆けは、1987 年に日本マクドナルドが発売した、サンキューセットと呼

ばれる 390 円のセットである。このセットの販売は成功し、価格競争のきっかけとなった。

その後も、日本マクドナルドは断続的に値下げのキャンペーンを行った。中でも、サンキ

ューセットに続き業界に大きな影響を与えたものは 1995年 4月に行ったハンバーガーの販

売価格を 210 円から 130 円にした大幅な値下げだ。そして、同年の 10 月までにすべてのバ

ーガー類を今までの販売価格から 30~40%値下げした。さらに、2000 年 2 月からは平日

はハンバーガーをはじめとする特定のバーガー類を半額に値下げして提供する、平日半額

キャンペーンを開始した。これにより不況の影響を受けていたサラリーマンの需要をつか

むことに成功した。このように、低価格戦略を継続することにより、「デフレの勝ち組」と

言われるようになった。また、規模の小さい中小チェーンは値下げに対応できず淘汰され、

ハンバーガー市場は寡占市場となっていった。 日本マクドナルドが断続的な値下げを行っていた一方で、地価の高騰により出店コスト

は増加していった。さらに、円安によって仕入れ価格が上昇したことや、BSE 問題も重な

ったため、2002 年 2 月に 2 年間行った平日半額キャンペーンを終了した。その後、再び低

価格戦略として、ハンバーガーの販売価格を 1 個 59 円まで値下げしたが、消費者は低価格

に慣れ、インパクトが軽減したため売上は伸びなかった。2002 年には創業以降初めての赤

字を記録し、日本マクドナルドは新規出店を大幅抑制し、不採算店の閉店を初めて行った。

そして、2003 年 3 月に創業者である藤田氏を代表取締役会長から解任させ、2004 年 2 月

に現在の代表取締役である原田泳幸氏が就任した。 日本マクドナルドは、1987 年の「ハッピーセット」の販売や、低価格商品の販売、短い

提供時間などから若者や、サラリーマン、家族などをメインターゲットにしている。現在

もメガマックやプレミアムローストコーヒーなどの商品をメインターゲット向けに発売し

ている。 日本マクドナルドの歩みを振り返ると、日本マクドナルドは繁華街型店舗展開、直営店

中心経営、経営効率の改善によるコスト削減、低価格戦略といった強みを武器に日本のハ

ンバーガー業界を牽引してきたことがわかる。このような取り組みの影響もあり、1982 年

に全店年間売上高が 702 億円を超え、外食産業売上高第 1 位となり、2008 年現在でも 1 位

を維持している。しかし、消味期限改ざんや残業代未払いなどの問題が発覚し、今後の対

策が重要になってくる。 では、業界 2 位のモスフードサービスはどのような戦略や強みを持ち現在にいたるのだ

ろうか。次から、モスフードサービスの歩みをみていく。

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モスフードサービス 1972 年 7 月 櫻田慧氏がモスフードサービス創業 1973 年 5 月 「テリヤキバーガー」を発売 1973 年 11 月 名古屋市新瑞に FC1 号店を開店 1985 年 フランチャイズ初の店頭登録 1986 年 8 月 中華そば「ちりめん亭」を開店 1987 年 ハンバーガー業界で店舗数第 1 位となる 1987 年 12 月 「モスライスバーガー」を発売 1988 年 8 月 「なか卯」に資本参加 1991 年 2 月 台湾台北市にモスバーガー初出店 1993 年 シンガポールにもモスバーガー店舗を出店 1992 年 売上高シェアランキングでロッテリアを抜き業界第 2 位となる 1997 年 創業者である櫻田慧が他界 1998 年 社長が相次いで入れ替わる 1998 年 12 月 代表取締役社長に櫻田厚氏就任 2002 年 12 月 株式会社「なか卯」を株式会社ニチメンに経営権を移譲 2007 年 4 月 割引クーポン導入 日本マクドナルドの創業から 1年後の 1972年 7月に櫻田慧氏がモスフードサービスを創

業した。モスフードサービスは 200 万円という少ない資本で創業したため、1 等地に出店す

ることができず、地価が安い 2 等地に店舗を構える 2 等地戦略をとっていた。しかし、当

時 2 等地に出店している企業は珍しく競合店が少なかったこともあり、売上は好調であっ

た。それに加え、2 等地に出店していたことにより、1980 年代後半の地価高騰の影響も軽

減することができた。また、モスフードサービスは少ない資本で規模を拡大していくため、

資本投下が少なく迅速な出店が可能な FC による店舗展開を行った。櫻田慧氏の考えに共鳴

したオーナーが多数いたため、条件が厳しいにも関わらず、応募数が多かった。それによ

り、迅速な出店が可能になり 1987 年には店舗数でハンバーガー業界第 1 位となった。 その他にも、モスフードサービスは地域密着で日本人に合う味ということを念頭に商品

開発を行い、女性をメインターゲットにした「テリヤキバーガー」を 1973 年 5 月に発売、

「モスライスバーガー」を 1987 年 12 月に発売した。これらの日本人に合う味の商品は、

注文を受けてから作るので提供時間はかかるものの、当時の需要に合致し、日経産業消費

研究所が 10 代後半から 40 代までの女性を対象に実施した、利用したいファーストフード

店調査の結果によると、「好きなメニューがある」、「料理がおいしい」といった項目で高い

評価を得た。(1999 年 9 月 18 日、日経流通新聞、 1 頁) しかし、モスフードサービスは今後の成長力鈍化に懸念を抱き、多角化を行った。まず、

1986 年 8 月に中華そば「ちりめん亭」をオープンし、1988 年 8 月には「なか卯」に資本

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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参加するなど多角化を行った。その後も、モスフードサービスは成長力の維持のために、

ファーストフードを前提に和・洋・中の 3 部門での多角化を進めていった。また、モスバ

ーガー事業では、日本だけではなく海外市場へも目を向け、出店地域を拡大し、1991 年 2月に台湾台北市に初出店を果たした。

1987 年頃には、ハンバーガー業界で価格競争が起こった。他の企業が低価格戦略へ移行

していく中、モスフードサービスは値下げを行わず、モスフードサービス独自の戦略で他

企業の低価格戦略に対抗した。例えば、デフレの影響で費用が下がった分、値下げではな

く、品質を向上させ消費者に提供したり、24 時間営業店舗の増加を行ったりと集客力向上

を目指した。このようなモスフードサービス独自の戦略は成功し、着実に規模を拡大させ、

成長していった。 ここまで順調に成長していたモスフードサービスだが、成長に陰りがみえはじめた。1997年に創業者である櫻田慧氏が他界し、翌年の 1998 年には社長が相次いで入れ替わったこと

や、2 等地にも競合店が増えてきたことにより、FC 店からの求心力を失った。同年の 12月には櫻田慧氏の甥である櫻田厚氏が代表取締役社長に就任したものの FC 店からの求心

力は回復しなかった。また、日本マクドナルドの低価格戦略によって価格に対する不信感

が消費者に広まったことなどにより、モスフードサービスの成長力は鈍化していった。さ

らに業績不振の影響で 2002 年 12 月には「なか卯」の経営権を株式会社ニチメンに移譲し

た。 近年、消費者の低価格志向は強まり、それに対応するためモスフードサービスは 2007 年

4 月に初めて割引クーポンを導入した。クーポンを導入することで、一定の増収効果はあっ

たものの、実施しない時期は売り上げが失速してしまい、利益を押し下げる要因になった。

このことから、モスフードサービスは消費者の低価格志向への対応に苦戦していることが

わかる。 モスフードサービスの歩みを振り返ると、モスフードサービスは 2 等地戦略、FC 店舗展

開、日本人に合う味、多角化経営を強みとして日本マクドナルドとは異なる、独自の戦略

を行ってきたことがわかる。この戦略は成功し 1992 年に売上高シェアランキングで 2 位と

なった。近年のモスフードサービスをみると、前述したように成長力が鈍化していること

がわかるが、各企業の近年の戦略については経営戦略分析で述べる。 この節では、私たちがとりあげる日本マクドナルドとモスフードサービスの両社につい

て各企業の事業内容や歩みなどから強みを明確にした。次の章では、財務分析と企業分析

の観点から両社の経営状態や近年の戦略をみていく。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

37

3.経営戦略分析

(岡村真樹) 経営戦略とは、経営目標を達成するためにどのような事業を営むべきかを示すことで、

外部に対して企業が効果的に対応するための基本的な方針、また顧客が何を求めているの

かを明確化することが重要である。経営戦略の策定にあたっては、外部の環境条件の変化

のなかに機会と脅威を見出すとともに、自社が持つ資源・能力の強みと弱みを的確に捉え

る必要がある。 業界概要では機会と脅威をみてきて、企業概要により両社の歴史を追うことで強みと弱

みをみてきた。これらを踏まえ本論文では財務分析と企業分析の 2 つにより、経営戦略

分析を行う。財務分析では各企業の財務諸表を用い、企業の成長性、収益性、安全性の 3つの視点から分析していく。また企業分析では、各企業の戦略分析を行ったうえで、リー

ダーシップをみていく。経営戦略分析により両社がとっている戦略をみることで、機会と

脅威に対し自社の強みを活かせているか、また弱みをどのように改善しているかみていき

たいと思う。 3‐1.財務分析 財務分析とは企業の財務状態を分析し、その良否を判断することである。 この節では 2002 年から 2007 年の連結財務諸表を用いて、日本マクドナルドとモスフー

ドサービスを見ていきたいと思う。財務分析では、企業の将来性、競争力を検証する分析

である成長性分析、投下した資本からどれだけの利益が獲得されたかという関係をみる収

益性分析、企業の財務健全性を評価するための安全性分析の 3 つの観点からみていく。 財務分析方法について、以下の 3 つが挙げられる。1 つ目は、比較法である。これは、2

期またはそれ以上の財務諸表を比較して変化を知る時間的比較法と、合計額を 100 として

各項目を百分率で示す構成的比較法とがある。2 つ目は比率法である。これはもっとも広く

用いられる分析方法であり、各項目相互間の比率を算出して良否を判断するものである。3つ目は趨勢法である。これは、2 期以上の財務諸表をとり、 初の年度の金額を 100 とし、

その後の年度の金額を指数の推移でみるものである。本論文では前述した 3 つの分析方法

のうち、比較法の時間的比較法と比率法を用い分析していく。 なお、企業の評価方法であるが、標準化というものを用いる。標準化とは、様々な単位

で扱われている数字を、単位のない無次元数に変換し、平均値が 0 、標準偏差が 1 であ

る正規分布にする計算方法である。つまり、数値を単純に比較するのが難しいため、外食

産業の平均値を 0 として、それより良いか悪いかを判断していく。それでは、成長性から

みていく。

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3‐1‐1.成長性 成長性分析とは、企業の過去のデータを基礎に業績の推移(過去の成長状況)を測定し、

今後も順調に伸びていくかどうかを分析することである。企業の将来を予測するには、ど

のように成長しているかを把握していく必要がある。そこで日本マクドナルドとモスフー

ドサービスの成長性分析を行うことで両社の過去の成長状況を知り、将来予測の 1 つの判

断材料としていく。 この項では総資本、売上高、営業利益、経常利益を用いて説明していく。それでは、業

界第 1 位である日本マクドナルドからみていく。

(図表 3‐1)

日本マクドナルド 成長性分析

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

総資本・売上高

(百万円)

02,0004,0006,0008,00010,00012,00014,00016,00018,000

営業利益・経常利

益(百万円)

総資本 213,312 208,130 190,909 190,370 193,206 201,303

売上高 320,713 299,823 308,079 325,655 355,696 395,061

営業利益 3,944 2,842 7,244 3,210 7,380 16,733

経常利益 2,050 1,896 7,277 2,859 5,708 15,616

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

(図表 3‐1)は日本マクドナルドの過去 6 年分の総資本、売上高、営業利益、経常利益

をまとめたものである。 日本マクドナルドは売上高、経常利益ともに順調に伸びている。売上高は 2002 年から

2007 年まで年率約 4.6%で伸びており、2007 年における経常利益は 2005 年比約 446%増

(12,757 百万円増)となっている。特に 2007 年は、売上高が 355,696 百万円から 395,061百万円に伸び、前年度比で 11%増となった。その要因は、社長が藤田氏から原田氏に代わ

り政策転換したことである。原田氏の具体的な政策とは、メガマックの販売、100 円マック

の強化、24 時間営業の強化による営業時間の延長、店舗改装などによるものである。この

ことから、日本マクドナルドは成長傾向にあることが分かる。続いて業界第 2 位のモスフ

ードサービスをみる。

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39

(図表 3‐2)

モスフードサービス 成長性分析

0

20,000

40,000

60,000

80,000

総資本・売上高

(百万円)

05001,0001,5002,0002,5003,0003,500

営業利益・経常利

益(百万円)

総資本 57,524 56,776 48,337 46,139 46,568 45,479

売上高 65,668 58,676 59,346 58,217 59,891 62,302

営業利益 2,329 2,115 2,046 2,316 1,381 753

経常利益 2,605 2,522 2,616 3,195 2,191 1,278

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

(図表 3‐2)はモスフードサービスの過去 6 年分の総資本、売上高、営業利益、経常利

益をまとめたものである。 モスフードサービスの売上高は 2002 年から 2007 年で年平均 0.85%減であるため、ほぼ

横ばいの動きをしている。その一方で、営業利益と経常利益は 2005 年以降急激に減少して

おり、2007 年における経常利益は 2005 年比約 60.0%減となっている。売上高が横ばいで

あるのに対し、営業利益・経常利益が減少している原因としては販売費及び一般管理費の

増加による収益の圧迫や、その他飲食事業が 7 億円の赤字を計上したことが原因だと考え

られる。また、総資本をみてみると、2002 年から 2005 年にかけて年平均で 4.8%減少して

いる。これは、ストックオプションのために自己株式を取得したことによるものである。 ここで、2003 年から 2006 年のチェーン全店売上高 ※5 に注目してほしい(図表 3‐3)。

モスフードサービスチェーン全店売上高は 2003 年から 2006 年にかけて 90.98%のマイナ

ス成長であることが分かる。この、モスフードサービスのチェーン全店売上高の減少の理

由は、優位性が低下したため客数が減少したことである。この優位性の低下については後

述する。 また、2006 年から 2007 年にかけてチェーン全店売上高は 101.92%と成長しているが、

これはクーポンを実施し、客数増加したことが要因であるといえる。 両社の成長性を見てきた所で、標準化を用い評価していきたいと思う。

※5 全店売上高:直営店と FC とモスフードサービスが運営しているその他の飲食事業の売

上高の合計

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40

(図表 3‐3)

モスフードサービス チェーン全店売上高

90,000

95,000

100,000

105,000

110,000

(百万)

売上高 107,418 105,985 102,485 97,726 99,607

2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

成長性評価 成長性の評価に用いる指標は総資本、売上高、経常利益、営業利益の 4 つであり、伸び

率を用いて評価する。伸び率は以下のようになった(図表 3‐4)。

(図表 3‐4) 日本マクドナルド モスフードサービス

伸び率 伸び率

総資本 -5.63% -20.94%

売上高 23.18% -5.13%

経常利益 661.76% -50.94%

営業利益 324.26% -67.67%

続いて、各指標を標準化したものが以下の表である(図表 3‐5)。

(図表 3‐5)

日本マクドナルド モスフードサービス

伸び率 伸び率

総資本 -0.19 -2.19

売上高 2.19 0.19

経常利益 1.97 -0.03

営業利益 1.85 -0.15

合計 5.82 -2.18

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ここで、売上高はと経常利益は他の指標より重要だと考えたためそれぞれを 2 倍する。 すると以下のようになる(図表 3‐6)。

(図表 3‐6)

日本マクドナルド モスフードサービス

伸び率 伸び率

総資本 -0.19 -2.19

売上高 4.37 0.37

経常利益 3.94 -0.06

営業利益 1.85 -0.15

合計 9.98 -2.02

成長性をまとめると、日本マクドナルドは総資本こそマイナスの評価であるが、他の指

標において大きく成長していることがわかる。今後も 100 円マックや 24 時間営業、店舗改

装の他にも新たな政策を取り入れこの成長を維持していくことが理想である。一方モスフ

ードサービスは、売上高のみ成長している。しかし、連結でみると成長していてもモスバ

ーガーチェーンの売上高をみると衰退しているため、この 4 つの指標全てにおいて衰退傾

向であるといえる。その中でも特に、利益の大幅な減少が見受けられるので今後改善の必

要がある。 3‐1‐2.収益性

収益性分析とは、企業がどれくらい利益をあげているかを検討するものである。一般に

企業が存続発展していくためには利益をあげていかなければならない。そのため、企業の

損益状態を調べる収益性分析が必要である。 この項では、総資本経常利益率(ROA)を大元の指標として(図表 3‐7)、そこから売

上高経常利益率と総資本回転率に分解する。分解し見えてくる比率の値が何故高いのか、

あるいは低いのかを検証する為にそれをさらに分解していきたいと思う。

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42

(図表 3‐7)

(図表 3‐8)

総資本経常利益率(ROA)

0.00%

2.00%

4.00%

6.00%

8.00%

10.00%

日本マクドナルド 0.96% 0.91% 3.81% 1.50% 2.95% 7.76%

モスフードサービス 4.53% 4.44% 5.41% 6.92% 4.70% 2.81%

外食産業業界平均 9.08% 8.19% 5.89% 5.71%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

総資本経常利益率(図表 3‐8)とは経常利益を総資本で除したものである。企業が運用

している全ての資産がどれほど経常利益に結びついているかを見る指標で、この比率が高

いほど全体的な資本投下の収益性が良好であるといえる。経常利益は企業の営業活動に金

融・財務活動を加えたものであるため、経常的な収益性をみることができる。 総資本経常利益率では 2005 年から 2007 年の両社の動きに注目してもらいたい。日本マ

クドナルドが上昇傾向であるのに対し、モスフードサービスは下降傾向であり、2006 年か

ら 2007 年にかけては総資本経常利益率が逆転している。収益性分析ではこの総資本経常利

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益率がなぜ逆転しているのかを中心に、原因を探っていきたいと思う。 まず日本マクドナルドを見てみる。日本マクドナルドは 100 円マック、24 時間営業の店

舗の増加、メガマックの好調な売り上げなどにより、2007 年の総資本経常利益率は 2005年比で 417.3%増となった。また、2002 年から 2007 年の年平均の伸び率は 117.05%であ

るため良好であると言える。一方モスフードサービスは 2005 年までは自己株式の取得によ

り総資産が減少していたため総資本経常利益率は伸びていたものの、2007 年は 2005 年比

で▲59.39%となった。また、両者ともに外食産業平均より低い値にあることが多い。 この項ではこの総資本経常利益率を、利幅を見る売上高経常利益率と効率を見る総資本

回転率に分解し、総資本経常利益率の逆転理由、外食産業平均より低い値にある原因につ

いて分析していく。

(図表 3‐9)

売上高経常利益率

0.00%

2.00%

4.00%

6.00%

8.00%

日本マクドナルド 0.64% 0.63% 2.36% 0.88% 1.60% 3.95%

モスフードサービス 3.97% 4.30% 4.41% 5.49% 3.66% 2.05%

外食産業業界平均 7.09% 6.25% 4.55% 4.63%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

売上高経常利益率(図表 3‐9)とは経常利益を売上高で除したもので利幅を見る指標で

ある。企業の売上高に対して経常利益が占める割合を示す指標で、事業活動全体を通じて

企業が創造した価値を表す。この比率が高いほど、企業の経常的な生産・販売・財務の活

動が活発であることを意味する。 売上高経常利益率を見ると両社とも総資本経常利益率と類した動きをしていることが分

かる。それでは、両社についてみていく。 まず日本マクドナルドをみてみる。日本マクドナルドは、100 円マック、24 時間営業の

店舗の増加、メガマックの好調な売り上げなどにより、2007 年は 2005 年比で 348.6%増と

なった。これは、前述した総資本経常利益率の上昇理由と同様である。一方モスフードサ

ービスは販売費及び一般管理費が増加したため 2007 年は 2005 年比で▲62.65%となった。

モスフードサービスにおいても、前述した総資本経常利益率の下降理由と同様である。ま

た、総資本経常利益率と同様に外食産業平均に比べ日本マクドナルド、モスフードサービ

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ス共に売上高経常利益率が低く、指標の動きも類している。このことから、総資本経常利

益率の逆転の理由、総資本経常利益率において両社とも外食産業平均より低い値にある原

因共に利幅が大きく影響していることがわかる。続いて総資本経常利益率を分解した、も

う一方の指標にあたる効率をみる総資本回転率を用い分析していく(図表 3‐7)。 (図表 3‐10)

総資本回転率

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

日本マクドナルド 1.50 1.44 1.61 1.71 1.84 1.96

モスフードサービス 1.14 1.03 1.23 1.26 1.29 1.37

外食産業業界平均 1.28 1.31 1.30 1.23

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

総資本回転率(図表 3‐10)とは売上高を総資本で除したものである。企業が調達したす

べての資本がどれだけ売上高に結びついているかを示す指標で資本運用上の効率を表す。

この数値が高いほど、効率的に資本を運用していることを意味する。 日本マクドナルドは 2002 年から 2007 年において年平均で約 5.1%伸びているため良好

である。モスフードサービスも日本マクドナルドと回転率の差はあるものの、2002 年から

2007 年において年平均で 3.36%伸びていて良好であるといえる。業界平均については、日

本マクドナルドとモスフードサービスの間の値を推移している。このため、総資本経常利

益率で提起した、外食産業平均より低い値にある原因については、効率ではなく利幅にあ

るといえる。では次に、売上高経常利益率と総資本回転率を視覚化した SPM をみていく。

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(図表 3‐11)

SPM

-1

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0 0.5 1 1.5 2 2.5

総資本回転率(回)

売上

高経

常利

益率

(%

日本マクドナルド

モスフードサービス

業界平均

SPM(図表 3‐11)とは総資本経常利益率と総資本回転率をグラフで表し視覚化したも

のである。縦軸は利幅を表す売上高経常利益率、横軸は効率を表す総資本回転率となって

いる。左上に位置している場合、企業の活動により創造される価値が高い高付加価値型の

企業であることを意味し、右下に位置している場合、資本を効率的に使用している高効率

型の企業であることを意味している。右上にいくほど理想とされる。 日本マクドナルドは右下に位置しているので高効率型の戦略を取っていることがわかる。

2006 年から 2007 年にかけて総資本回転率、売上高経常利益率ともに上昇傾向で右上に向

かっているため、理想的な伸び方をしている。一方モスフードサービスは、業界平均辺り

を推移していたが、効率はよくなってきたものの、2006 年から 2007 年にかけて売上高経

常利益率が大きく減少したため利幅は低下してきており、以前に比べ付加価値の高い商品

が提供できていないことがわかる。また外食産業の平均と比較してみると日本マクドナル

ド、モスフードサービス両社とも平均値の右側に位置しており、ハンバーガー業界自体が

高効率型の傾向にある。その原因については後述する。 総資本回転率でも前述したが、SPM をみて分かる通り日本マクドナルド、モスフードサ

ービス共に効率は伸びてきている。そのため、総資本経常利益率が逆転した理由は利幅を

みる売上高経常利益率にあるといえる。 ここで、提起した問題を再確認するとともに、売上高経常利益率、総資本回転率、SPM

を分析し明確になったことを整理してみる。ここまで総資本経常利益率の逆転理由、総資

本経常利益率が外食産業平均より低い値にある原因について分析してきた。そこで明確に

なったことは、提起した問題のどちらも原因は利幅にあるということである。 ここからは、売上高経常利益率をさらに分解することで、これらの原因をより細かく分

析していく。また、効率については両社とも順調に伸びているが、両社の値には開きがあ

るので、これらについて分析していく。それでは、総資本経常利益率の逆転理由、外食産

業平均より低い値にある原因を探るために、売上高原価率をみてみる。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

46

(図表 3‐12)

売上高原価率

0.00%

20.00%

40.00%

60.00%

80.00%

100.00%

日本マクドナルド 87.74% 87.34% 86.45% 88.55% 87.17% 83.79%

モスフードサービス 57.85% 58.28% 56.69% 57.31% 56.28% 55.57%

外食産業業界平均 39.13% 38.22% 37.16% 37.69%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

売上高原価率(図表 3‐12)とは売上原価を売上高で除したものである。製品の製造にか

かる費用を見ることができる。この比率が上昇しているほど、利益を確保しにくくなって

いる状況を示す。 日本マクドナルドに注目してほしい。日本マクドナルドの売上原価率は 2005年から 2007年の 3 年間で約 4.76%改善されている。売上原価をみてみると(資料 3‐2)、2007 年の売

上原価は、2004 年比 24.29%増となっている。このように、売上高の増加に伴い、原価自

体は上がってはいるものの、原価率でみると改善されていることから、費用を抑えられて

いることが分かる。 また、外食産業業界平均と比べると両社共に原価率は高い。その理由としては販売価格

を低く抑えており、製品に付加価値をつけられていないことがあげられる。このことが、

総資本経常利益率が外食産業平均に比べ低い原因だといえる。 日本マクドナルドの売上高原価率は 80%から 90%を推移していており、モスフードサー

ビスと比べ売上の多くが原価であることがわかる。しかし日本マクドナルドの原価には店

舗売上高や人件費などが含まれているため、モスフードサービスとの開きがある。日本マ

クドナルドは 2002 年から 2007 年において減少傾向にあったが、やや改善されてきている

といえる。 日本マクドナルドの売上原価率は 2005 年から 2007 年にかけて改善されていると前述し

たが、さらに分解し分析することで、改善要因を探る(図表 3‐7)。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

47

(図表 3‐13)

日本マクドナルド 売上原価と直営店売上原価

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

(百万円)

売上原価 266,339 288,362 310,049 331,020

直営店売上原価 243,968 268,439 290,033 309,358

2004年 2005年 2006年 2007年

(図表 3‐14)

売上高材料費率と売上高労務費率

20.00%

22.00%

24.00%

26.00%

28.00%

30.00%

32.00%

売上高材料費率 28.13% 30.36% 29.89% 29.52%

売上高労務費率 26.36% 28.05% 27.76% 26.47%

その他 24.70% 24.02% 23.89% 22.31%

2004年 2005年 2006年 2007年

ここでは、日本マクドナルドの売上高原価率を分解した売上高材料費率と売上高労務費

率(図表 3‐14)をみていく。まず、売上高材料費率をみてみる。売上高材料費率は 2005年から 2007 年にかけ 0.84%改善されている。また売上高労務費率は 2005 年から 2007 年

にかけ 1.58%改善されており、売上高材料費、売上高労務費率共に改善されてきているこ

とがわかる。

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48

今までみてきたことから日本マクドナルドの総資本経常利益率の上昇理由として以下の

2 つのことが挙げられる。1 つ目は、売上高の上昇であり、2 つ目は売上高材料費率、売

上高労務費率などの売上高原価率が改善されたことであるといえる。一方、モスフードサ

ービスの総資本経常利益率の下降原因は原価にはなかった。引き続き、モスフードサービ

スの総資本経常利益率の下降原因を探っていくため次では売上高販管費率をみていく。 (図表 3‐15)

売上高販管費率

0.00%

10.00%

20.00%

30.00%

40.00%

50.00%

60.00%

70.00%

日本マクドナルド 11.03% 11.71% 11.20% 10.47% 10.76% 11.97%

モスフードサービス 38.60% 38.11% 39.86% 38.71% 41.42% 43.22%

外食産業業界平均 53.72% 55.46% 58.21% 57.56%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

売上高販管費率(図表 3‐15)とは、販売費および一般管理費を売上高で除したものであ

る。販売費及び一般管理費は、企業の販売活動と一般管理業務に関して発生した費用で、

売上原価と共にみることで、収益を得るために発生した費用をみることができる。この比

率が低いほど営業活動や会社運営体制上の効率性が良い。 ここでは、モスフードサービスをみていく。モスフードサービスの売上高販管費率は 2005

年から 2007 年にかけて 4.51%上昇している。企業概要でクーポンの導入により販管費が増

え、利益を圧迫していると述べたが、それが販管費率に大きく反映していないのは、モス

フードサービスはFC経営が主であり、販管費を負担しているのもFC店であるためである。 また、外食産業の平均と比べてみると両社とも低い値であるため良好である。 以下では前述したモスフードサービスの売上高販管費率の上昇の原因をさぐるため分解

した売上高人件費率をみてみる。

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49

(図表 3‐16)

売上高人件費率

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

日本マクドナルド 2.23% 2.44% 2.20% 2.15% 2.07% 2.01%

モスフードサービス 12.19% 11.79% 11.57% 11.47% 12.87% 13.67%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

売上高人件費率(図表 3‐16)とは人件費を売上高で除したものである。売上高に占める

人件費の割合のことで、企業の人件費がどれくらい売上高に結びついたかみる指標である。

人件費にはパート・アルバイトの給料や福利厚生費が含まれる。 モスフードサービスは 2005 年から 2007 年にかけて 2.2%上昇している。このことから、

売上高販管費率の上昇の原因は売上高人件費率にあることがいえる。 モスフードサービスの従業員数の推移をみてみると(図表 3‐17)、従業員数は増加して

いる。この従業員数の増加が売上高人件費率上昇の原因であるといえる。従業員数が増加

した理由はスーパーバイザー(エリアマネージャー)の増加と、連結子会社の増加である。 モスフードサービスは総資本経常利益率がなぜ 2005 年から 2007 年にかけて減少したか

見てきたが、これらのことから、モスフードサービスの総資本経常利益率が減少した理由

は人件費率が上昇しているのに、それが売上高に結びついていないことであると分かった。 ここまで利幅の増減理由についてみてきたが、次から効率を表す回転率についてみてい

く。総資本回転率は前述したように効率をみるものであり、比較的短期間に現金化できる

資産の回転率をみる流動資産回転率と長期間拘束される資産の回転率をみる固定資産回転

率に分解することができる(図表 3‐7)。前述したように効率面では、総資本回転率の両社

の順調な伸びと両社の開きの要因を探るために分解し分析する。それでは流動資産回転率

からみていく。

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50

(図表 3‐17)

従業員数推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

(人)

01002003004005006007008009001,000

(人)

日本マクドナルド 5,446 5,370 4,871 4,334 4,546 4,897 5,115

モスフードサービス 821 834 606 539 528 841 890

2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

(図表 3‐18)

流動資産回転率

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

日本マクドナルド 9.21 8.86 12.60 11.40 11.81 12.29

モスフードサービス 2.90 3.18 3.11 3.48 3.48 3.73

外食産業業界平均 5.34 5.21 5.41 4.75

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

流動資産回転率(図表 3‐18)とは売上高を流動資産で除したものである。流動資産が有

効活用されているかをみることができる指標であり、この比率が高いほど流動資産が効率

よく使えているか見ることができる。 日本マクドナルドは年平均 22.24%の伸びで、業界平均に比べても高い数値を示しており

上昇傾向である。一方モスフードサービスは年平均 21.4%の伸びで、外食産業の業界平均

の値を下回っているものの上昇傾向である。これをみてわかるように日本マクドナルドと

モスフードサービスの流動資産回転率の差が総資本回転率の差に大きく関わっているとい

える。では流動資産回転率の差はどこから生まれているのだろうか。流動資産回転率をさ

らに分解した売上債権回転率を見ていきたいと思う。

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51

(図表 3‐19)

売上債権回転率

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

日本マクドナルド 35.29 38.46 39.69 38.75 42.14 43.65

モスフードサービス 12.96 14.94 14.78 14.34 15.29 14.19

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

売上債権回転率(図表 3‐19)とは売上高を売上債権で除したもので、売上債権の回収が、

どの程度効率的に行われているかを示す指標である。この数値が低いほど債権回収に時間

がかかることを意味しており、売上が発生した直後から売上債権として資金が拘束される

期間が長いことを意味している 日本マクドナルドは 40 回前後の値を推移している。一方モスフードサービスは 15 回前

後の値を推移しおり、両社の間で開きがあることがわかる。これらのことから、総資本回

転率に開きがある原因は、売上債権回転率に差があることである。売上債権回転率の両社

に開きがある理由としては、日本マクドナルドが主に直営店の経営であるのに対し、モス

フードサービスは FC を中心に経営しているからである。FC では、本部とフランチャイジ

ー間の食材の取引は掛けで行うことが多い。そのため売上債権を多く所有しており、回転

率が下がっているといえる。続いて長期間拘束される資産である固定資産の回転率につい

てみていく。

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52

(図表 3‐20)

固定資産回転率

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

日本マクドナルド 1.80 1.72 1.85 2.01 2.18 2.34

モスフードサービス 1.88 1.53 2.03 1.98 2.04 2.12

外食産業業界平均 1.69 1.75 1.67 1.67

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

固定資産回転率(図表 3‐20)とは売上高を固定資産で除したもので、固定資産が有効活

用されているかどうかを判断する指標である。高いほど効率よく固定資産が使われている

ことになる。 日本マクドナルドは年平均で 21.67%の伸びがみられる。一方、モスフードサービスは年

平均 18.79%の伸びであり、2003 年を除き上昇傾向である。また、外食産業業界平均と比

べると、モスフードサービスの 2003 年を除き、高い値であるので、両社とも固定資産を効

率よく使えているといえる。 この両社の開きをみてみるとあまり差がないといえる。このことから、総資本回転率に

差がある要因は固定資産回転率にはなく、流動資産回転率にあるということが明確になっ

た。以下では、固定資産回転率の上昇要因を探るために、固定資産回転率を分解した有形

固定資産回転率と、無形固定資産回転率、投資・その他の資産回転率についてみていく。

まず有形固定資産回転率をみてみる。

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53

(図表 3‐21)

有形固定資産回転率

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

7.00

日本マクドナルド 4.15 4.12 4.39 4.72 4.65 4.84

モスフードサービス 3.10 2.76 5.51 6.49 5.72 5.95

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

有形固定資産回転率(図表 3‐21)とは売上高を有形固定資産で除したもので、有形固定

資産が有効活用されているかどうかを判断する指標である。この指標が高いほど効率よく

有形固定資産が使われていることになる。 日本マクドナルドの 2007 年の有形固定資産回転率は、2002 年に比べ 116.63%伸びてい

る。一方、モスフードサービスは 2003 年において 2002 年比 89.03%減少しており、これ

が 2003 年の固定資産回転率の減少の 1 つの原因であると考えられる。また、2003 年から

2004 年にかけて 199.64%の伸びがみられる。これは地価下落傾向にあり、時価が著しく下

落していたため、帳簿価格と賞味売却価格が乖離しており、その差を埋めるため 11,261 百

万から 6,992 百万まで減額したためである。2005 年も有形固定資産が減少し、回転率が前

年比 117.79%となった。これにより、モスフードサービスは日本マクドナルドより効率よ

く有形固定資産を使えるようになった。2006 年については有形固定資産が増加したため回

転率が低下している。固定資産回転率の上昇要因として、2006 年の回転率の低下を除く有

形固定資産回転率の年平均 31.99%の増加が挙げられる。続いて無形固定資産回転率につい

てみてみる。

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54

(図表 3‐22)

無形固定資産回転率

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

50.00

60.00

70.00

80.00

日本マクドナルド 59.22 54.15 60.30 61.20 65.63 40.37

モスフードサービス 71.15 55.26 34.97 35.60 34.55 35.95

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

無形固定資産回転率(図表 3‐22)とは売上高を無形固定資産で除したもので、無形固定

資産が有効活用されているかどうかを判断する指標である。この指標が高いほど効率よく

無形固定資産が使われていることになる。 日本マクドナルドは 2006 年までは年平均約 22.16%伸びているが、2007 年は前年比

61.51%にまで減少した。その理由として売上高は増加したが、効率向上のためシステムイ

ンフラの再構築を行っており、ソフトウェアを 5,585 百万で購入し、結果として無形固定

資産が約 4,300 百万増加したからである。このソフトウェアの購入理由としてはキッチン

システムの能力の向上のためである。これは 2008 年に投入したクォーターパウンダーの販

売や、他のメニュー展開につなげるための導入である。一方モスフードサービスは 2004 年

において、2002 年比 49.15%と大幅に低下し、固定資産回転率に負の影響を与えており、

2004 年以降モスフードサービスの無形固定資産回転率は年平均 102.8%とわずかに成長し

ている。続いて投資・その他の資産回転率についてみていく。

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55

(図表 3‐23)

投資・その他の資産回転率

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

日本マクドナルド 3.35 3.13 3.38 3.72 4.38 5.08

モスフードサービス 5.15 3.67 3.53 3.10 3.49 3.63

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

投資・その他の資産回転率(図表 3‐23)とは売上高を投資・その他の資産で除したもの

で、投資・その他の資産が有効活用されているかどうかを判断する指標である。この指標

が高いほど効率よく無形固定資産が使われていることになる。 日本マクドナルドの投資その他の資産回転率は 2003 年から 2007 年にかけ、年平均で

25.27%増加しており固定資産回転率の上昇に大きく影響しているといえる。一方モスフー

ドサービスは 3.5 回前後を推移していて、2005 年のみ 3.10 回で前年に比べて約 12.2%の減

少となっている。これらのことから、モスフードサービスより、日本マクドナルドの方が

投資その他の資産を有効に活用できているといえる。 固定資産回転率を分解し、有形固定資産回転率、無形固定資産回転率、投資・その他の

資産回転率の 3 つについてみてきたことをまとめると、日本マクドナルドは 2007 年の無形

固定資産回転率を除いては全体的に上昇傾向であるといえる。2007 年の無形固定資産回転

率が低下しているが、主に投資・その他の資産回転率により相殺されている。またモスフ

ードサービスの 2003 年の固定資産回転率の低下については、分解した指標全ての減少によ

るものであるが、それ以降の回復は主に有形固定資産回転率の大幅な上昇、投資・その他

の資産回転率の 2005 年から 2007 年にかけての上昇であるといえる。 収益性評価 収益性は売上高経常利益率と総資本回転率の 6 ヵ年平均と伸び率を用いて評価する。6 ヵ

年平均と伸び率は以下のようになった(図表 3‐24)。

(図表 3‐24) 日本マクドナルド モスフードサービス

平均 伸び率 平均 伸び率

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56

売上高経常利益率 1.97% 518.4% 3.98% -48.3%

総資本回転率 1.68 30.5% 1.22 20.0%

続いて標準化した数値用いたものが(図表 3‐25)である。

(図表 3‐25) 日本マクドナルド モスフードサービス

平均 伸び率 平均 伸び率

売上高経常利益率 -3.65 1.95 -1.65 -0.05

総資本回転率 1.74 6.51 -0.26 4.51

合計 -1.91 8.46 -1.91 4.46

ここで、6 ヵ年平均と比べて、伸び率の重要度が低いと判断したため、伸び率を 2 分の 1

にして計算する。また、高付加価値型の企業は不況の煽りを受けにくいとされており、売

上高経常利益率の重要度が高いと判断したため 2 倍で計算する。すると(図表 3‐26)にな

る。

(図表 3‐26) 日本マクドナルド モスフードサービス

平均 伸び率 平均 伸び率

-7.29 0.98 -3.29 -0.02

1.74 3.25 -0.26 2.25

-5.56 4.23 -3.56 2.23

-1.33 -1.33

収益性分析では、2005 年から 2007 年にかけての総資本経常利益率の逆転理由と、外食

産業平均との両社の差についてみてきた。この理由は両方共利幅にある。総資本経常利益

率の逆転については、日本マクドナルドは売上高の上昇に伴い売上原価率が改善されたこ

とで、モスフードサービスは従業員数の増加に伴い、それが売上に結びついていないため、

人件費率が上昇し利益が圧迫されたことである。また、外食産業平均との両社の差につい

ては売上原価率が高いことが理由であった。一方効率においては総資本回転率の両社の差

についてみてきた。この原因は売上債権回転率の差にある。 この結果、日本マクドナルド、モスフードサービス共に収益性の評価は▲1.33 であり、

収益性を改善する必要がある。しかし、日本マクドナルドは改善傾向が見られるのに対し、

モスフードサービスは 2005 年以降付加価値の減少が目立つ。 日本マクドナルドは利幅、効率共に上昇傾向であるので、今後もこの成長を維持してい

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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くことが必要である。一方モスフードサービスはこの収益性の悪化に歯止めを掛けるため

に、販管費の改善が必要である。スーパーバイザーが増加したことで人件費が圧迫してい

るが、スーパーバイザーを導入したところで現在ではまだ売り上げに結びついていないと

いえる。 これらのことから、収益性において日本マクドナルドの方が上位にくると考えられる。

3‐1‐3.安全性 安全性分析とは、企業が安定した財務基盤をもっているかを分析するものであり、企業

の短期的な支払い能力や、いざという時の長期的な安全性について見ていく。 (図表 3‐27)

流動比率

0.00%

50.00%

100.00%

150.00%

200.00%

250.00%

日本マクドナルド 62.65% 54.47% 50.88% 55.53% 50.21% 49.76%

モスフードサービス 201.28% 175.30% 168.05% 182.45% 182.29% 207.76%

外食産業業界平均 83.71% 98.14% 84.87% 98.49%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

流動比率(図表 3‐27)とは流動資産を流動負債で除したもので短期的に現金化される流

動資産が、短期的な現金支払義務のある流動負債に比較してどの程度あるかをみる指標で

ある。この指標が高いほど、良好であると判断され、200%以上が理想的とされているが、

130%から 140%ほどでも良好とされる。 このグラフを見るとモスフードサービスは 2007 年には流動比率が 200%に到達し、短期

的な支払能力が高いと言える。それに対し、日本マクドナルドは 50%から 60%前後を推移

していて、短期的支払能力が低いといえる。続いて流動比率よりも、支払い能力をより厳

しく見ることができる当座比率をみていく。

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58

(図表 3‐28)

当座比率

0.00%

50.00%

100.00%

150.00%

200.00%

日本マクドナルド 41.01% 37.98% 33.55% 39.02% 33.39% 32.59%

モスフードサービス 187.74% 160.05% 143.64% 124.87% 128.68% 177.01%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

当座比率(図表 3‐28)とは、当座資産を流動負債で除したもので、当座資産 ※6を用い

ることによって、支払い能力をより厳しくみる指標である。この指標は 100%以上であるこ

とが望ましいとされる。 日本マクドナルドは、毎年 35%前後で推移していて、短期的な支払能力は低いといえる。

一方モスフードサービスは自己株式取得による有価証券の大幅な減少(図表 3‐29)、売上

債権の減少により、2003 年から 2005 年にかけて当座比率が減少した。 モスフードサービスの当座比率は減少したものの 100%以上を保ち、当座比率は高いとい

える。次で、当座比率よりもさらに厳しく支払能力を見る現金預金比率をみていく。

(図表 3‐29)

有価証券の推移

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

(百万円)

有価証券 11,210 6,830 5,368 2,369 1,945 1,050

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

※6現金、預金、受取手形、売掛金、一時所有の有価証券などで、流動資産から即座には資

金化しにくい棚卸資産を除いたもの

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59

(図表 3‐30)

現金・預金比率

0.00%

20.00%

40.00%

60.00%

80.00%

100.00%

120.00%

日本マクドナルド 23.83% 25.43% 17.39% 21.87% 18.90% 18.58%

モスフードサービス 43.05% 57.80% 60.89% 54.77% 66.53% 98.11%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

現金・預金比率(図表 3‐30)とは現金・預金を流動負債で除したもので、現金・預金比

率が高いほど短期的な支払能力が大きいことを示す。即支払が可能な現預金のみで支払余

力を測定するため、有価証券や売掛金など現金化に時間を要する当座資産を用いている当

座比率よりもさらに厳しく支払能力を見たい場合に利用される。 日本マクドナルドは短期的支払能力が低く、モスフードサービスは短期的支払能力が高

いことは前述したが、2007 年にモスフードサービスの現金・預金比率が 31.58%増加して

いる理由として、自社株を売却したことがあげられる。この自社株は 2003 年から、ストッ

クオプションのために買い入れていたものである。続いて長期的安全性について自己資本

比率を用いてみていく。 (図表 3‐31)

自己資本比率

0.00%

20.00%

40.00%

60.00%

80.00%

100.00%

日本マクドナルド 70.73% 67.75% 73.42% 71.39% 67.32% 66.19%

モスフードサービス 77.44% 78.94% 73.52% 76.01% 74.31% 77.45%

外食産業業界平均 50.35% 49.84% 45.79% 47.79%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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自己資本比率とは(図表 3‐31)自己資本を総資本で除したもので、財務面での長期的な

安全性を評価するためのものである。企業が集めた資金が、どれだけ返済する必要のない

自己資本で賄われているかを表す。一般的にこの比率が高いほど、資本構成が安定してお

り経営の安全度が高いことを示す。 外食産業業界平均は 50%以下であるが、日本マクドナルドは 70%前後、モスフードサー

ビスは 75%前後を推移しており、非常に良好といえる。また、両社の自己資本比率を比べ

てみるとあまり差はない。続いて固定比率をみていく。

(図表 3‐32)

固定比率

0.00%

50.00%

100.00%

150.00%

200.00%

日本マクドナルド 118.31% 123.59% 118.76% 119.06% 125.39% 126.95%

モスフードサービス 78.30% 85.53% 82.39% 83.85% 84.89% 83.40%

外食産業業界平均 150.67% 150.05% 166.02% 154.91%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

固定比率とは(図表 3‐32)固定資産を自己資本で除したもので、固定資産のうちどの程

度が自己資本で賄われているかを示す指標である。この比率が低いほど、長期的にわたっ

て資金が拘束される固定資産投資の資金調達が、返済しなくてもよい自己資本を中心にま

かなわれていることを示す。100%以下であることが望ましい。 日本マクドナルドは 120%前後を推移しているものの、外食産業業界平均が 150%から

170%であることと比較すると一概に危険とは言えない。また、モスフードサービスは 80%から 85%で推移しているため非常に良好だと言える。

両社の固定比率を比べてみると約 40%の開きがある。これは建物・構築物や土地の所有

割合によるものであり、2007 年の総資本に占める建物・構築物と土地の割合をみてみると、

日本マクドナルドは 30.76%でありモスフードサービスは 17.66%である。なぜモスフード

サービスの建物・構築物と土地の割合が低いかというと、モスフードサービスの出店が主

に FC であるためである。2007 年では FC の割合が 93.5%であるが、FC の場合、建物・

構築物や土地はモスフードサービスの資産には含まれない。そのため固定資産を抑えられ

ているといえる。続いて固定資産の資金を自己資本に限定せず、短期的な返済の必要がな

い固定負債も含めて検討する固定長期適合率をみていく。

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61

(図表 3‐33)

固定長期適合率

0.00%

20.00%

40.00%

60.00%

80.00%

100.00%

120.00%

140.00%

日本マクドナルド 113.16% 119.37% 116.52% 116.47% 124.09% 123.74%

モスフードサービス 75.38% 82.87% 79.14% 79.58% 79.11% 78.45%

外食産業業界平均 109.06% 102.86% 107.66% 102.76%

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

固定長期適合率(図表 3‐33)とは固定資産を自己資本と長期借入金を足したもので除し

た指標で、固定資産のうちどの程度が自己資本と長期の借入金で賄われているかを示す。

長期的にわたって資金が拘束される固定資産投資を、返済期限のない自己資本と返済期間

が長い長期固定負債を足したもので調達するのが望ましいとされる。日本企業の場合、銀

行からの長期借入や社債発行による長期借入が多いため、健全性の分析にはこの指標が適

している。固定長期適合率は、一般に低ければ低いほど良い。 日本マクドナルドは 2006 年、2007 年と 120%を上回り、外食産業業界平均と比較して

も高く、危険だと言える。一方モスフードサービスは 80%前後を推移しているので安全だ

と言える。また両社には差があるといえる。これは、日本マクドナルドは直営店を中心、

モスフードサービスは FC 中心に経営を行っていることから生まれたものである。

安全性評価 安全性の評価は流動比率、自己資本比率、固定長期適合率の 6 ヵ年平均と伸び率を用い

て評価する。6 ヵ年平均と伸び率は以下のようになった(図表 3‐34)。

(図表 3‐34) 日本マクドナルド モスフードサービス

平均 伸び率 平均 伸び率

流動比率 0.54 -0.21 1.86 0.03

自己資本比率 0.69 -0.06 0.76 0.00

固定長期適合率 1.19 0.09 0.79 0.04

ここで、6 ヵ年平均と比べて、伸び率の重要度が低いと判断したため、伸び率を 2 分の 1

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にして計算する。すると(図表 3‐35)になる。

(図表 3‐35) 日本マクドナルド モスフードサービス

平均 伸び率 平均 伸び率

流動比率 -0.57 -3.21 1.43 -1.21

自己資本比率 6.17 -0.41 8.17 1.59

固定長期適合率 -0.67 -5.73 1.33 -3.73

合計 4.94 -9.36 10.94 -3.36

安全性をまとめると、日本マクドナルドは自己資本比率の値が良好であるが、他の指標

は良くなく、伸び率に関しても悪化してきている。そのため自己資本比率以外の指標につ

いて、建物・構築物や土地などの固定資産が多い傾向にあるので、FC を積極的に取り入れ

るなど、見直す必要がある。一方モスフードサービスの安全性は良好な値にあるものの、

成長性が悪化の傾向にあり、更に収益性も悪化してきているので、その影響をうける可能

性がある。現在の良好な値を維持するためにも、成長性、収益性を見直す必要があるとい

える。

総合評価 ここまで成長性、収益性、安全性をみてきたが、その結果を単純合計し、総合評価する

と(図表 3‐36)になる。

(図表 3‐36) 日本マクドナルド モスフードサービス

成長性 9.98 -2.02

収益性 -1.33 -1.33

安全性 0.26 9.26

合計 8.91 5.91

日本マクドナルドは成長性、収益性は成長傾向である。現在取り入れている 100 円マッ

クや、24 時間営業、店舗改装などの戦略によりその高い成長力を維持し、新たな戦略を取

り入れることによりさらに成長をしていくことが望ましい。また、原価率の改善により収

益性が改善されている。しかし、安全性においては悪化しているため流動資産をふやすこ

とや、固定資産を減少させるなどといった改善が必要である。 一方、モスフードサービスは、安全性においては良好である。しかし成長性、収益性が

悪化している影響を受ける恐れがある。成長性においては、売上高を伸ばすとともに、人

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件費を見直し、利益を改善していくことが必要であり、収益性においてはスーパーバイザ

ーを導入することにより販管費が増加したが、これが売上高に結びつくよう改善する必要

がある。続いてそれぞれの企業がどのような戦略を取ってきたのか企業分析でみていく。 3‐2.企業分析

(櫻井惟那) 前節では財務面から日本マクドナルドとモスフードサービスを分析し、両社の現状が浮

き彫りとなった。この節では企業概要で明らかとなった特徴を踏まえ、近年企業がどのよ

うな戦略を行っているのかを明確にしていき、両社の創業者と現在の社長のリーダーシッ

プについてみていく。 3‐2‐1 企業分析

この項では両社が近年どのような戦略を行っているのかを具体的にみていくことで現在

の経過から課題と展望を見出す糸口を探り出す。まずは日本マクドナルドの企業分析につ

いてみていく。 日本マクドナルド 企業概要で前述したように日本マクドナルドの特徴は繁華街型の店舗展開、直営店舗中

心の経営、経営効率の改善、断続的な低価格戦略の 4 つの特徴で 1982 年から外食産業第 1位を維持し続けた。しかし、2002 年に平日半額キャンペーンを打ち切ると、経営は悪化し、

2002 年決算には創業して以来、初めての赤字を計上した。そこで、2004 年に原田氏が代表

取締役副会長に就任し、今までの戦略だけでなく、新しい戦略を取り入れることで業績の

回復を図った。これからその戦略についてみていく。 日本マクドナルドがとった戦略の 大の目的は客数の向上だ。日本マクドナルドが優先

させるべきは客数を伸ばすことである。これ以降はその具体的な取り組みについてみてい

く。 日本マクドナルドは客数を伸ばすための戦略としてブランドを生かしたグローバリゼー

ション戦略、低価格戦略、時間帯別戦略の 3 つを行っている。ブランドを生かしたグロー

バリゼーション戦略では「世界から日本へ」という日本マクドナルド独自意味合いを持つ。

具体的な取り組みとしてはメイド・フォー・ユー※7 というキッチンシステムにすべて入れ

替え、マネジメントなどトレーニングシステムの採用や人材の確保、情報システムやサプ

ライチェーンなどのインフラの構築、「メガマック」や「マックグリドル」などの実際に世

界でヒットした商品を日本に投入したことはその一環である。 2 つ目の低価格戦略では、100 円マックやクーポンを行い、また期間限定で人気商品を値

下げすることで、定価を意識させないことでお得感を演出する。これにより、客数を増加

※7作り置きであったハンバーガーを注文が入ってから作るというシステム

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させることに成功した。これらはメニューの積極的な取捨選択や不採算店の撤退を行うこ

とでコストを改善し、低価格戦略を可能とする。 3 つ目の時間帯別戦略では、24 時間営業の店舗を増加させることで深夜の売り上げを伸

ばした(図表 3‐37)。また、「サラダマリネベーグル」、「マックグリドル」など朝食メニ

ューの拡充を行うことで朝食時間帯の売り上げを伸ばそうとした。そして、「スナックタイ

ム」という午後 2 時からのサイドメニューとドリンクのセット割引によって午後 2 時から

夕方にかけてのアイドルタイムにカフェの需要をつかもうと試みた。 以上 3 つの戦略が結果として客数を向上させ、売り上げに結びつけることに成功した。 客数向上のための取り組み以外にも直営店を FC 店へ転換する FC 店舗転換戦略を行っ

ている。日本マクドナルドの直営店割合が全店舗の 7 割を占めていたが、FC 店舗の割合を

世界のマクドナルドの水準に合わせて 2010 年までに 7 割に増やす。FC 店への店舗転換を

行うと、次のような変化がある。直営店の場合は売上高がそのまま計上されるが、FC 店は

主にロイヤルティーが売上高として反映される。売上高は減少してしまうものの、企業概

要で前述したように、FC 店で発生する費用は FC オーナーが負担するため、費用削減につ

ながり、収益性の改善が見込める。また、FC 店の建物・構築物や土地は日本マクドナルド

の資産には含まれないため、固定比率や固定長期適合率が改善される。このように直営店

から FC 店への転換を行うことで、財務分析で課題にあがった収益性と安全性の改善を行

うことができる。 FC 店舗転換以外では e-マーケティングが大きな取り組みとしてあげられる。e-マーケテ

ィングはインターネットを利用したマーケティングでは 2007 年 9 月に 500 万人を超える

ケータイクーポンの会員を利用して行う。今は携帯電話を利用してクーポンの配信や、さ

まざまな情報の提供を行う。さらに、将来的には顧客別のクーポンの配布、店外予約をで

きるようなシステムの開発することでマーケティングの質とスピードや効率の向上につな

げる。 以上のことから日本マクドナルドは客数の向上と FC 店舗転換と e-マーケティングに取

り組んでいる。客数の向上では従来の戦略に加え、ブランドを生かしたグローバライズ戦

略、低価格戦略、時間帯別戦略といった新しい取り組みを取り入れることで客数の向上に

成功した。FC 店舗転換では今まで財務面での課題である原価率の改善と多くの固定資産削

減を一度に行うことか可能で、これにより収益性や安全性を改善していく。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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(図表 3‐37)24 時間営業の推移

24時間営業店舗数の推移

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

店舗数 220 466 1,244 1,312 1,443

2006年6月末 2006年12月末 2007年6月末 2007年12月末 2008年6月末

(出所:日本マクドナルドホームページ)

モスフードサービス ここでは、近年のモスフードサービスの経営戦略をみていく。

企業概要で前述したようにモスフードサービスの日本人に合う味、2 等地戦略、FC 店舗展

開、多角化といった4つの特徴で他のハンバーガー業界とは差別化を図ってきた。それに

より、1992 年に売上高シェアランキングでハンバーガー業界第 2 位となった。ところが今

まで開発してきた商品は日本人に合うこだわった商品が多く、味の優位性を守るためにメ

ニューを減らさなかった。2009 年 1 月現在で日本マクドナルドのハンバーガー(限定商品

除く)の種類は 12 種類に対し、モスのハンバーガー(ライスバーガー含む)は 22 種類で

ある。しかし、増えすぎたメニューは効率を重視するこの業界では足かせとなってしまっ

ている。2 等地戦略も競合店が増加してしまった。FC 店舗展開はオーナー離れと高齢化が

懸念される。多角化は 2008 年 3 月期で約 7 億円の営業赤字を計上した。これらのことか

ら、競合他社とは違う優位性であったモスフードサービスの特徴は薄れており、優位性が

低下してしまった。モスフードサービスは優位性を回復させるためにどのような取り組み

をしてきているのかをみていく。 モスフードサービスが行った大きな取り組みに 2005 年 4 月から開始した 3 ヵ年の中期

経営計画「V.I.P.21」(Value Innovation Plan21)がある。これはモスバーガー事業

の業態変化と推進、関連事業の黒字化、海外市場の開拓を軸に行ってきた。具体的な取り

組みについてはこれからみていく。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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まずモスバーガー事業の業態変化と推進では、看板が赤色である従来の店舗「赤モス」

からファストカジュアル業態 ※8の「安心、安全、環境」を象徴する色として緑色の店舗「緑

モス」への転換をしている。具体的には緑モスの店舗では高級ハンバーガー「匠味」、「モ

スのごはん」などの限定メニューの販売や禁煙、分煙などを徹底している。 2 つ目の取り組みである関連事業の黒字化は多角化事業が不振であるため、赤字を削減し、

将来収益源にするためのものである。そのための取り組みとして主には不採算店の撤退を

進めていくことで黒字化を図ろうとしている。 3 つ目の海外市場の開拓は「日本のモスからアジアのモスへ」というキャッチフレーズ

で日本だけでなく、台湾、シンガポール、香港、タイ、インドネシアなどの海外にモスバ

ーガーを出店している。 しかし、「V.I.P.21」は現在のところ海外市場の開拓以外は成功していない。「緑モス」

の「匠味」により高級なイメージを定着させ、敷居を高くしたことで、1 品だけ注文したい

人やカフェとして利用する消費者を遠ざけた。さらに、全席禁煙の店舗が増加したことで

喫煙客が離れていった。また、多くの費用をかけて「緑モス」の店舗に改装したが、売り

上げが伸び悩み、負担が大きくなったので FC 店のオーナーの不満が高まった。「V.I.P.21」の失敗を受け、2007 年度からは新中期経営計画を発表している。

2007 年度からは新中期経営計画としてモスフードサービスはモスバーガー事業の益々の

発展、事業の第二、第三の柱を確立、海外の新市場開拓、グループ経営の推進、個人株主

数 5 万人という 5 つの目標を掲げている。本論文ではこの中のモスバーガー事業の益々の

発展とグループ経営の推進の 2 つの目標についてみていく。 1 つ目のモスバーガー事業の益々の発展で行う取り組みは主力バーガーの刷新とマルチ

業態戦略である。2007 年 4 月に主力ハンバーガーである「モスバーガー」と「テリヤキバ

ーガー」のハンバーグを創業当時と同じ合い挽き肉に変更し、さらにパンやソースもハン

バーグに合わせて改良し、刷新を行った。そして商品の認知度と客数増加を狙い創業以来、

クーポンを初めて導入した。マルチ業態戦略ではモスバーガーオリジナル、モスバーガー

ファクトリー、モスバーガーデリバリーキャビンなどの店舗形態を立地に応じてハンバー

ガーを主力商品とする展開し、「緑モス」の出店条件に当てはまらないSC内や狭小商圏立

地への展開を強化する。これにより店舗の多様化を図っている。 2 つ目のグループ経営の推進では運営本部内の関連事業本部にあった販売会社営業機能

を移管し、さらにスーパーバイザーを大幅に増員して店舗に対する指導力を強化する狙い

がある。 今までの「V.I.P.21」に代わる新中期経営計画はブランド価値の向上と業績の回復に

努めるためのものだ。主力ハンバーガー刷新の際のクーポンにより既存店売上高は一次的

※8 ファストカジュアルとはファーストフードとファミリーレストランの中間業態のことで、

ファーストフードより高価格で注文からの時間は長く、ファミリーレストランより低価格

で待ち時間を少なくしたものである。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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に増加した。しかし、効果は限定的で結果として費用が増加してしまい、FC 店のオーナー

の負担がさらに増加することとなった。マルチ業態戦略では、出店競争の激化で好立地で

の出店が困難となっている。多角化事業でも、2007 年度の決算で関連事業が 7 億円の赤字

を計上した。海外の新市場開拓は 2008 年 3 月には海外売上高比率が 11%となり、期待は

大きい。グループ経営の推進のためにスーパーバイザーを増加させたが、財務分析でみる

と売上高に結びついていないことが明白である。 以上のことから、モスフードサービスは優位性の回復のために 2005 年から「V.I.P.21」を行ってきた。さらに、2007 年からは新中期経営計画を行うことで優位性の回復に努

めてきた。ところが、どちらの取り組みも海外事業以外では不振であり、モスの特著から

外れた取り組みを行っていることからモスフードサービスの戦略が迷走している。 3‐2‐2 リーダーシップ

前項では日本マクドナルドとモスフードサービスが近年どのような経営戦略を行ってい

るのかをみてきた。この項では両社の創業者と現在の社長のリーダーシップについてみる。

まずは、日本マクドナルドの創業者である藤田氏のリーダーシップについてみていく。 日本マクドナルド 藤田田

1926 年生まれ、大阪府大阪市出身である。幼少の頃から外国人と交流があり、英会話能

力と国際感覚を身につけた。また、学生時代にしていたGHQでの通訳のアルバイトで知り

合ったユダヤ人軍曹と親しくなり、利殖術 ※9とビジネス哲学を学んだ。幼少期に身に付け

た英会話能力と国際感覚、GHQでアルバイト中に学んだ利殖術とビジネス哲学を基に、雑

貨輸入業を開始すると大きな利益を手にした。さらに、東大在学中である 24 歳の時に藤田

商店を設立した。これらのことから藤田氏は若い時から商才を発揮していたことが伺える。 1969 年に資本が自由化したことで、米マクドナルドが参入を検討していた。しかし、米

マクドナルドのクロック氏は交渉先であった大手スーパーや有名商社の本社に逐一確認を

取る日本の商習慣に辟易していた。その折、藤田氏は友人の紹介でクロック氏と交渉する

機会を得た。藤田氏はクロック氏と交渉した際、5 つの無謀な条件を提示した。その条件と

は、1 つ目は合弁会社の出資比率は 50 対 50 だが、経営権、人事権は全て藤田氏に帰属す

るということ、2 つ目は米本社からの助言は受けるが命令は受けないということ、3 つ目が

ロイヤルティーは 1%ということ、4 つ目が収益は全て日本での再投資に回すということ、

5 つ目が契約期間は 30 年とし、満期時の再契約に際して選択権は藤田氏にあるといったも

のだった。それにもかかわらず、クロック氏と意気投合し、米マクドナルドと提携するこ

とができた。これより、藤田氏が行ってきた戦略をそれぞれの逸話に加え、米マクドナル

ドの戦略と比較しながら見ていく。 ※9利子・配当金などによって資産を増やすこと

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日本マクドナルドは米マクドナルドと違い繁華街型の店舗展開を行ってきた。そのエピ

ソードとして『日本のモータリゼーションはいまだ端緒に着いたばかり。外来文化という

のは、その国の中心から入っていかないと普及しない。常識を逸脱したモノでも、銀座で

ヒットさせれば全国が注目する。1 号店はなんとしてでも銀座でなければならない』と藤田

氏が言い、米マクドナルドの反対を押し切って第 1 号店を銀座に出店した。 また、米マクドナルドは FC 店舗展開を行っていたが、日本マクドナルドは直営店中心に

店舗展開を行ってきた。直営店を中心に経営していくことに藤田氏は『こんなに儲かるも

のを他人にやらせるのはもったいない』と考えていた。 その他に、藤田氏は低価格戦略に踏み切った。役員が反対したのもかかわらず低価格戦

略を行ったのは日本が今後デフレ経済へと進むことで消費者の低価格志向が進むというこ

とと、円高や円安などの為替変動を読み切り、原価を下げる自信があったためである。 その上、藤田氏は現場優先主義をモットーとし、毎週土・日には、日本マクドナルドの

店舗で自社の商品を買うだけでなく、競合店やコンビニでも頻繁に客の立場で買い物を行

った。現場である店舗に自分で向かい、確認し、競合店などにも足を運ぶことで自社の長

所短所を見極めるだけでなく、消費者の目線に立つことも忘れなかった。 以上のことから、藤田氏は有利な条件で米マクドナルドから FC 権を獲得し、自由な経営

を行うことで、米マクドナルドとは異なる独自の戦略で日本マクドナルドを作りあげた。

しかし、それは同時に藤田氏が独裁的な経営を行うことで成功してきたということである。 次に現在の代表取締役である原田氏についてみていく。

原田泳幸 1948 年生まれ、長崎県佐世保市出身である。大学進学の際にわずかな金しかなかった。

そこで農家の納屋の2階に間借りし、生活費を稼ぐため、さまざまなアルバイトに励んだ。

『このときに見てきた世界や経験が後に役に立ち、成長するための礎になった』と本人は

語っている。1972 年東海大学工学部卒業後、日本 NCR、 1980 年に横河・ヒューレット・

パッカード、1990 年にアップルコンピュータジャパンを経て、2004 に年日本マクドナルド

ホールディングス副会長兼 CEO に就任した。そして翌 2005 年には、会長兼 CEO となる。

これからは原田氏の考え方や戦略の取り組みをみていく。 1つ目に、原田氏はブランドを生かしたグローバリゼーション戦略に取り組んだ。原田

氏は世界のマクドナルドの仕組みや技術、商品などを日本のマクドナルドに取り入れてい

る。グローバリゼーションについて原田氏は『まずビジネスインフラを整備する。次はブ

ランド。お客様が 初に何を食べようかと考えた時にマクドナルドをイメージするほどの

素晴らしい実績がある。もっと高まるよう注力していきたい』と考えており、ここに藤田

氏と原田氏との考え方の相違が見える。 2つ目に、原田氏も客数を伸ばすために低価格戦略を行う。さらに期間限定の値下げや

クーポンを行うことで効果を伸ばし、お得感を演出する。業界概要で前述したように客数

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を伸ばすことで売り上げを伸ばす業界なので、原田氏は業界の特徴に合った取り組みを行

ったといえる。 3つ目に、直営店中心の店舗展開を行ってきた藤田氏と違い、原田氏は FC 店舗転換に力

を入れている。原田氏は財務分析・経営戦略分析で前述したように直営店を FC 店へ転換す

ることで財務面での改善を狙う。 以上のことから、藤田氏とは多くの点で異なった戦略をとっていることがわかった。ま

たそれは、現在の日本マクドナルドの好調を要因となっている。それでは、続いてモスフ

ードサービスの創業者である櫻田慧についてみていく。

モスフードサービス 櫻田慧

1937 年生まれ、岩手県出身である。日本大学経済学部を卒業後日興證券に就職するが、

学歴社会により冷遇されたので、部下 2 人を連れて日興證券時代の取引相手の革靴問屋に

転職をしたが、そこでも約束を反故にされた。そこで櫻田慧氏は『3 人で理想とする会社を

作ろうではないだろうか。経営者も従業員と同じような価値観を持ち、同じことに喜びを

感じ、心が通じ合うグループを作りたい』という思いを抱き、ハンバーガーを生業とした

起業を決意した。開業資金の 800 万円は銀行からの融資が受けられなかったため、友人知

人からの借金などで工面し、その資金で渡米しハンバーガーの研究に充てた。ビジネスの

方向性を櫻田慧氏は『日本人は多少高くてもおいしかったと満足できるものを選ぶ。私た

ちは品質を上げることで価値を高めていこう』と思い、モスフードサービスという社名で

1972 年に創業した。 モスフードサービスは日本人に会う味の商品を提供していた。櫻田慧氏は店頭で提供す

る商品について『アメリカのハンバーガーの味は日本人の口にはパサパサしすぎる。この

パサパサを解消するため野菜を多くし、ソースを多めにかけよう』、『作りだめは絶対にし

ない。多少お客さまを待たせても、注文を受けてから調理しよう』と考えていた。味と鮮

度にこだわり、日本人に合う味のハンバーガーを目指した結果、現在の看板メニューでも

あるモスバーガーが誕生した。 また、櫻田慧氏は出店に関しては日本の繁盛店を参考にした。『繁盛店はみな路地裏の小

さい店だ。それらは店づくりが良く、雰囲気が良く、サービスが良く、特に商品が良い。

この日本流の商売繁盛の秘訣を導入しよう。われわれには資金が少ないから 1 等地に出店

することはできない。あえて 2 等地、3 等地を選び、その小さい店で格別に美味しい商品を

いい雰囲気で提供しよう』ということから 2 等地戦略を行ってきた。 さらに、モスフードサービスは少ない資金で経営しなければいけなかったので FC 店舗展

開を行ってきた。櫻田慧氏は FC 店舗展開の理念を「フィロソフィーは感謝の気持ち。共有

すべき唯一の価値観は愛だ」(1997 年 5 月 27 日, 日経流通新聞)と説き、経営理念に共感

してくれる人たちと加盟店契約を行った。FC 店のオーナーは企業理念に共感しただけでな

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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く、櫻田慧氏への人望で加盟した人も多かったため、加盟店と本部との同志的な結びつき

を作り、強めることができた。 以上のことから、櫻田慧氏が作り出したモスフードサービスの特徴は日本マクドナルド

とはまったく異なるものであり、それらの特徴には櫻田慧氏の理念が根付いており、それ

がモスバーガーを成功へ導いた。それでは、この項の 後では現在の代表取締役社長の櫻

田厚氏についてみていく。

櫻田厚 1951 年生まれ、東京都出身で創業者である櫻田慧氏の甥である。1970 年、都立羽田高校

卒業後、中央広告社入社、しかしすぐに辞め、21 歳から高卒アルバイトとしてモスフード

サービスに勤務し、1977 年には社員となった。その後、1994 年には取締役、1998 年に代

表取締役社長に就任した。ここでは「V.I.P.21」と新中期経営計画を行っている櫻田厚

氏の取り組みに沿ってみていく。 企業分析で前述したように海外事業の業績が好調である。2008 年 3 月には海外売上高比

率が 11%を超え、今後の期待は大きい。その理由として、日本と同様、先に進出していた

他社との差別化を図ったことが好調な要因である。また、櫻田厚氏は過去に海外事業部長

を務めており、海外進出に携わっていた影響もあるといえる。 しかし、「V.I.P.21」と新中期経営計画の取り組みにおいてモスバーガー事業、多角

化事業、スーパーバイザーの増加はうまくいっていない。モスフードサービスの優位性は

低下し続けている。特にファストカジュアル業態への転換では高級なイメージを植えつけ

てしまい、客数が減少した。主力ハンバーガーの刷新の際に行った割引クーポンも優位性

とは矛盾した取り組みで FC 店の収益を圧迫した。これらのことから櫻田厚氏が行ってい

る戦略は戦略に一貫性がない。 以上のことから、櫻田厚氏は海外事業に対しては強みを持つが、優位性の回復のための

取り組みに関しては迷走している状態でモスフードサービスを支える FC 店との結びつき

が弱まり、オーナーの信頼を失いつつある。 リーダーシップでは、4人の経営者を見てきたが、それぞれ異なった戦略をとっている

ことがわかった。日本マクドナルドは藤田氏が日本独自の経営を行っていたのに対し、原

田氏はグローバルな戦略を行ったことで、企業の戦略が大きく転換した。また、モスフー

ドサービスは櫻田慧氏の思想が企業の特徴に大きく反映されており、櫻田厚氏はこの特徴

をうまく活かしきれずにいる。このように、経営者の考えは企業の戦略に色濃く反映され

ていることがわかった。

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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4.課題と展望

(岡村真樹) 業界概要により機会と脅威が明確になった上で、企業概要により両社の歴史を追うこと

で強みと弱みをみた。そして戦略分析では、機会と脅威に対し両社のとっている戦略がど

のように強みを活かし弱みを改善していくのかをみてきた。この項では、これらを踏まえ

た上で両社の課題を明確にし、展望を述べる。 4‐1.日本マクドナルド 日本マクドナルドは財務分析をみて分かるように成長性、収益性共に好調である。しか

し、社会情勢をみてみると景気減速により外食産業の市場規模が 8 年連続で減少し、現在

は景気回復と共に持ち直しているものの、再び経済が悪化してきている。また少子高齢化

も進行しているため今後も厳しい状況は続くものと思われる。そこで、どのような取り組

みをしていくかが今後の成長を左右する。現在日本マクドナルドは 2006 年時点の国内売上

高シェアが 70.7%と圧倒的である。一般の企業の場合、さらに成長するために海外進出に

よりシェア拡大が見込める。しかし、日本マクドナルドの場合アメリカのマクドナルドか

ら FC 権を獲得し創業した企業であるので海外進出という選択肢はなく、国内で事業拡大し

ていかなければならないということがいえる。そこで、国内で事業拡大するためには現在

利用している人の利用頻度を増やすといった、顧客の囲い込みが必要であると私たちは考

える。

また、成長性、収益性は好調ではあるが、FC 店や社員に大きな負担がかかっているのが

現状である。これを映し出す事件として 2007 年に起こった FC 店の賞味期限改ざんや 2008年の残業代未払い訴訟などが起こっている。お得感を出す戦略を取っているため、このよ

うな事件が起こってしまっているが、今後 FC 店、社員にかかっている負担を軽減していか

なければ同じような問題が起こり、ブランド価値の低下や、人材不足になることが予想さ

れる。これらのことから、私たちが考える日本マクドナルドの課題とは顧客の囲い込みを

しつつ、FC 店や社員にかかっている負担を軽減していくことである。 この課題を解消するための 1 つとしてポイントカード制度の導入を挙げたいと思う。日

本マクドナルドは外食産業初の e マーケティングを導入しており、進んだ技術がある。そ

れをさらに応用すれば、ケータイクーポンだけではなくポイント制度の導入が可能だと思

われる。ポイント制度の導入効果をみてみよう。2005 年 5 月に実施された男女 2,936 人を

対象にしたアンケート(博報堂調べ)によると、現在ポイントサービスを利用している人

は 99%にのぼる。さらに、ポイントサービスがお店選びに影響するかというアンケートに

対しては影響している人が 65.7%であることから 3 人に 2 人が、ポイントが貯まるように

普段から買う店、買い方を選んでいることがわかる。このことからポイント制度導入によ

って利用頻度を増やすことが可能であり、私たちが挙げた顧客の囲い込みという課題を解

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ハンバーガー業界~日本マクドナルドとモスフードサービス~ (飯島・石井・岡村・櫻井)

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消できることが予測される。しかし、この取り組みはあと 1 つの課題として挙げている FC店や社員にかかっている負担を軽減することに矛盾が生じているが、このポイントによる

割引額をホールディングス負担にすれば FC 店や社員にかかっている負担を軽減できる。日

本マクドナルドは残業代未払い問題が起こって以来直営店の給与体系が変わり、報酬制度

になった。そのため、直営店に関してはポイントカードが売上に結びつけばそれに見合っ

た報酬を受けることができ、FC 店に関しても、売上が伸びれば直接店に入るお金が増える

こととなる。これらのことから、FC 店や社員にかかっている負担が軽減できる取り組みで

あるといえる。 今回課題に対し、私たちが提示した対策としてポイントカードの導入を挙げたが、これ

は一例であり、この様に課題を解消しつつ負担を軽減できる戦略を打ち出して行けるかが、

日本マクドナルドの今後のさらなる成長の鍵となるだろう。 4‐2.モスフードサービス

(飯島祥子) モスフードサービスは日本人に合う味や、2 等地店舗、FC 展開、などの優位性が活かせ

たため、以前は価格が高くても利用する消費者は多かった。 しかし、外食にかける消費の低迷や、2 等地に多くの競合店が増加したことなどから、モ

スフードサービスの優位性を活かしていくことは難しくなった。そのため、モスフードサ

ービスはファストカジュアル化を行い、高級グルメバーガーの販売や完全禁煙店舗への転

換などを行ったが、消費者に高級感を与えてしまったことや、喫煙者の利用が減少してし

まったことなどにより、客数は減少した。 ハンバーガー業界の特徴の 1 つとして客単価が低いことやお得感を演出が重要であるこ

とは、業界概要で述べた。客数を向上させることにより売上を伸ばすことが必要であるが、

モスフードサービスは、ファストカジュアル化を行うことで高級感を与えてしまったため、

成長性や収益性は悪化した。 客数向上のために、モスフードサービスはクーポンを導入した。企業の歩みでも述べた

ように、クーポン導入により一定の成果を上げ、1 年間で既存店売上高は 2%伸びた。しか

し、結果的には利益を押し下げることになった。なぜなら、クーポンを実施しない時期は

売り上げが失速したことや、クーポン導入によって FC 店舗の負担が増加したことなどが原

因にあげられる。クーポン導入は失敗してしまったが、客数を向上させることはモスフー

ドサービスの成長につながるため、他の方法で客数向上を目指すことがモスフードサービ

スの課題となる。 この課題を解消するため、私たちは期間限定値下げを提案する。そのためには、まずメ

ニューを絞ることが必要である。戦略分析で、モスフードサービスは日本マクドナルドと

比較してもメニューが多いことを述べたが、メニューを絞ることにより使用する食材が減

少しコスト削減が行え、作業効率もあがる。そして、コスト削減に成功したら、期間限定

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値下げを行うのである。期間限定値下げとは毎月 1 種類のセットの価格を値下げすること

である。クーポンでは、何種類もの商品を値下げしていたが、期間限定値下げは毎月 1 種

のみのためクーポンと比較しても FC 店の負担が軽減される。また、クーポンを行っている

時期の集客効果はあったため期間限定値下げに対しても客数は増加すると予測できる。そ

の他にも、毎月値下げを行う商品が入れ替わるため、毎月異なるセットを食べることでモ

スフードサービスの多くのメニューを食べることになる。そうすることで、新規顧客を採

り入れることや、固定客の増加も狙える。 今回の課題に対し、私たちが提示した対策として期間限定値下げを挙げたが、これは一

例であり、このようにコストを削減し FC 店の負担を軽減しつつお得感を演出する戦略を行

うことが、今後のモスフードサービスの成長の鍵となるだろう。

5.終わりに

(飯島祥子) 私たちは、この研究をはじめた当時、よくハンバーガー店を利用していることや、メデ

ィアで頻繁にとり上げられていることなどから身近な業界だと考えていた。しかし、調べ

ていくと、ハンバーガーは日本に到来してから約 40 年しかたっておらず急成長してきたこ

とや、外食産業が大きな産業であることなど知らないことが多くあった。また、ハンバー

ガー業界においても、外食産業で日本マクドナルドが売上高ランキング第 1 位であること

や、モスフードサービスは優位性が低下していることなど、やはり知らないことが多く驚

かされた。 本論文では、日本マクドナルドとモスフードサービスについて業界概要や企業概要、経

営戦略分析など様々な観点から分析を行った。その結果、綿密に練られた戦略や規模の大

きさ、現在の財務状態などから私たちはハンバーガー業界を牽引していく企業は、日本マ

クドナルドだと考えた。 これまで、多くの戦略をうちだしてきたハンバーガー業界だが、今後ハンバーガー業界

は少子高齢化や外食費の減少により客数の減少が起こることが予想され更に厳しい状況に

立たされると思われる。そのような状況下で日本マクドナルドとモスフードサービスは、

どのような戦略をとり対応していくのだろうか。今後も両社に注目していきたい。

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参考資料

日本マクドナルド 貸借対照表 (百万円)

2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年

区分

(資産の部)

Ⅰ流動資産

現金及び預金 13,241 15,799 8,355 11,251 11,338 12,005

売掛金 9,087 7,796 7,762 8,403 8,440 9,050

有価証券 460 - - 416 250 -

たな卸資産 2,855 2,701 2,721 2,858 2,559 2,871

繰延税金資産 2,098 2,867 788 1,148 1,845 2,555

その他 72 4,784 4,910 4,567 5,756 5,729

貸倒引当金 ▲ 170 ▲ 105 ▲ 94 ▲ 80 ▲ 75 ▲ 69

流動資産合計 34,818 33,843 24,444 28,564 30,115 32,143

Ⅱ固定資産

1.有形固定資産

(1)建物及び構築物 93,568 89,521 88,036 89,987 93,288 94,728

減価償却累計額 51,169 49,392 49,601 51,046 50,894 50,094

(2)機械装置及び備品 17,442 17,262 17,960 18,384 19,815 21,363

減価償却累計額 7,429 7,957 8,692 9,795 10,314 10,690

(3)工具器具及び備品 22,446 21,077 20,386 20,128 20,749 21,932

減価償却累計額 14,310 14,539 14,818 15,530 13,577 13,811

(4)土地 16,569 16,840 16,820 16,820 17,277 17,277

(5)建設仮勘定 135 25 118 61 106 910

有形固定資産合計 77,254 72,838 70,209 69,009 76,452 81,615

2.無形固定資産

営業権 779 1,018 1,063 1,327 1,271 -

のれん - - - - - 1,387

その他 4,636 4,519 4,046 3,993 4,149 8,398

無形固定資産合計 5,416 5,537 5,109 5,321 5,420 9,785

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3.投資その他の資産

投資有価証券 6,589 8,808 7,902 6,908 4,968 3,784

長期貸付金 763 94 99 68 37 19

繰延税金資産 54 4,027 3,787 3,615 2,583 2,613

再評価に係る繰延税金資産 1,992 1,926 1,925 1,925 - -

敷金・保証金 83,890 77,284 72,153 69,898 67,441 67,441

その他 5,120 5,695 6,447 6,131 7,251 8,111

貸倒引当金 ▲ 2,586 ▲ 1,927 ▲ 1,170 ▲ 1,074 ▲ 1,064 ▲ 835

投資その他の資産合計 95,823 95,910 91,145 87,474 81,217 77,758

固定資産合計 178,493 174,287 166,465 161,805 163,090 169,159

資産合計 213,312 208,130 190,909 190,370 193,206 201,303

(負債の部) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年

Ⅰ流動負債

支払手形及び買掛金 16,028 16,647 16,125 16,953 19,497 12,596

短期借入金 - - 5,000 3,500 3,000 5,000

1 年以内返済予定長期借入金 8,000 5,000 1,250 - - -

未払金 13,322 22,867 11,660 14,760 12,171 19,605

未払費用 6,912 6,532 6,640 8,164 9,965 9,830

未払法人税等 189 207 105 185 883 5,996

繰延税金負債 - - 50 - - -

賞与引当金 684 860 1,600 1,143 1,694 2,021

店舗閉鎖損失引当金 4,931 646 - - - -

関係会社事業整理損失引当金 - 800 - - - -

その他 5,503 8,564 5,609 6,733 12,768 9,549

流動負債合計 55,571 62,126 48,042 51,441 59,979 64,599

Ⅱ固定負債 -

長期借入金 250 1,750 500 500 500 500

繰延税金負債 1,249 - - - - -

退職給付引当金 654 1,001 874 1,347 1,653 2,007

役員退職慰労引当金 2,490 42 76 50 77 99

預り保証金 - - 1,240 1,126 - -

再評価に係る繰延税金負債 - - - - 508 508

その他 2,226 2,193 - - 420 340

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固定負債合計 6,871 4,986 2,692 3,023 3,158 3,455

負債合計 62,443 67,113 50,734 54,464 63,138 68,055

(資本の部)

資本金 24,113 24,113 24,113 24,113 - -

資本剰余金 - 42,124 42,124 42,124 - -

資本準備金 42,124 - - - - -

再評価差額金 ▲ 2,745 - - - - -

連結剰余金 84,182 - - - - -

利益剰余金 - 73,070 72,760 68,832 - -

土地再評価差額金 - ▲ 2,808 ▲ 2,806 ▲ 2,806 - -

その他有価証券評価差額金 3,193 4,518 3,983 3,641 - -

Ⅵ自己株式 ▲ 0 ▲ 0 ▲ 0 ▲ 0 - -

資本合計 150,868 141,017 140,174 135,905 - -

負債及び資本合計 213,312 208,130 190,909 190,370 - -

(純資産の部)

Ⅰ株主資本

資本金 - - - - 24,113 24,113

資本剰余金 - - - - 42,124 42,124

利益剰余金 - - - - 66,393 70,224

自己株式 - - - - ▲ 0 ▲ 0

株主資本合計 - - - - 132,631 136,462

Ⅱ評価・換算差額等

その他有価証券評価差額金 - - - - 2,639 1,937

繰延ヘッジ損益 - - - - 38 1

土地再評価差額金 - - - - ▲ 5,240 ▲ 5,240

評価・換算差額合計 - - - - ▲ 2,563 ▲ 3,302

Ⅲ少数株主持分 - - - - - 88

純資産合計 - - - - 130,067 133,247

負債純資産合計 - - - - 193,206 201,303

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損益計算書 (百万円)

2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年

区分

Ⅰ売上高 320,713 299,823 308,079 325,655 355,696 395,061

Ⅱ売上原価 281,402 261,876 266,339 288,362 310,049 331,020

売上総利益 39,311 37,946 41,740 37,292 45,646 64,040

Ⅲ販売費及び一般管理費 35,366 35,104 34,496 34,082 38,266 47,307

営業利益 3,944 2,842 7,244 3,210 7,380 16,733

Ⅳ営業外収益

受取利息 98 105 86 72 83 100

未回収商品券収入 521 141 169 270 116 238

受取配当金 - - 115 109 108 37

持分法による投資利益 - - 50 7 27 11

受取休業補償金 - 230 - - 173 588

受取保険金 - - 231 182 139 109

その他 1,118 1,002 889 755 459 407

Ⅴ営業外費用

1.支払利息 462 110 52 19 16 22

2.持分法による投資損失 140 593 - - - -

3.貸倒引当金繰入額 776 79 132 - 58 -

4.店舗用固定資産除去損 1,597 1,311 1,051 1,626 2,593 2,176

5.その他 655 329 273 102 111 410

経常利益 2,050 1,896 7,277 2,859 5,708 15,616

Ⅵ特別利益

貸倒引当金戻入益 111 66 - 60 - 143

賞与引当金戻入益 240 - - - - -

過年度未回収商品券収入 929 - - - - -

店舗移転補償金 160 136 66 238 167 236

前期損益修正益 - 309 26 - - -

店舗閉鎖損失引当金戻入益 - 880 224 - - -

関係会社事業整理損失引当金戻入益 - - 273 - - -

固定資産売却益 - 17 26 - - -

投資有価証券売却益 - 55 228 - - -

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その他 32 - - - - -

Ⅶ特別損失

償却有形固定資産の残存価額一時償却額 606 - - - - -

土地売却損 187 - - - - -

固定資産除去損 491 975 448 410 79 408

投資有価証券評価損 55 - - - - -

関係会社事業整理損失 311 2,461 - - - -

店舗閉鎖損失引当金繰入額 4,931 - - - - -

前期損益修正損 - 44 - - - -

鳥インフルエンザ及び BSE に伴う損失 - - 865 - - -

地区事務所閉鎖に伴う損失 - - 81 - - -

役員保険積立金譲渡損 - 121 - - - -

希望退職者特別退職金 - 3,553 - - - -

経営役務契約解約金 - 6,249 - - - -

マック・ビジョン事業撤退に伴う損失 - 1,221 - - - -

BSE 対策費用 - 160 - - - -

福利厚生施設処分損 - 299 - - - -

新勤務時間管理方式の導入に伴う損失 - - - 2,604 - -

減損損失 - - - - 2,292 46

キャンペーン商品回収に伴う損失 - - - - 131 -

取引契約解約損 - - - - - 369

店舗閉鎖損失 - - - - - 1,288

その他 159 322 54 - - -

税金等調整前当期純損失 3,217 ▲ 12,046 6,672 143 3,372 13,883

法人税、住民税及び事業税 1,328 1,618 170 87 827 6,297

法人税等調整額 ▲ 2,209 ▲6,542 2,821 ▲ 4 995 ▲ 231

少数株主損失 - - - - - 1

当期純損失 2,335 ▲7,121 3,680 60 1,549 7,819

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モスフードサービス 貸借対照表 (百万円)

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

(資産の部)

Ⅰ流動資産

現金及び預金 4,848 6,081 6,905 5,023 6,273 7,878

売掛金 5,067 3,928 4,016 - - -

受取手形及び売掛金 - - - 4,059 3,916 4,391

有価証券 11,210 6,830 5,368 2,369 1,945 1,050

たな卸資産 732 833 2,199 2,750 2,824 2,198

繰延税金資産 608 375 283 1,701 966 296

その他 983 816 808 1,191 1,637 1,309

貸倒引当金 ▲ 800 ▲ 420 ▲ 521 ▲ 361 ▲ 372 ▲ 439

流動資産合計 22,643 18,443 19,057 16,730 17,190 16,683

Ⅱ固定資産

1有形固定資産

建物及び構築物 6,576 12,965 11,883 8,952 10,321 11,190

減価償却累計額 - 6,013 6,412 4,304 4,730 5,336

機械装置及び運搬具 37 183 170 16 312 309

減価償却累計額 - 160 163 13 129 159

工具器具及び備品 1,268 3,371 3,744 4,587 5,362 5,515

減価償却累計額 - 2,161 2,290 2,263 2,911 3,418

土地 13,213 13,072 3,748 1,968 2,186 2,179

建設仮勘定 107 19 81 25 62 53

有形固定資産合計 21,200 21,277 10,761 8,968 10,474 10,333

2無形固定資産

その他の無形固定資産 923 1,062 1,697 1,635 1,733 1,536

無形固定資産合計 923 1,062 1,697 1,635 1,733 1,536

3投資その他の資産

投資有価証券 4,937 8,641 4,750 7,373 5,283 5,430

長期貸付金 2,141 1,884 1,956 3,360 3,743 3,337

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差入保証金 4,306 4,542 4,769 5,024 5,878 5,733

繰延税金資産 1,124 795 3,696 487 289 789

その他 1,002 929 2,373 3,341 2,892 2,684

貸倒引当金 ▲ 451 ▲ 497 ▲ 424 ▲ 480 ▲ 424 ▲ 413

投資損失引当金 ▲ 300 ▲ 300 ▲ 300 ▲ 300 ▲ 490 ▲ 632

投資その他の資産合計 12,757 15,994 16,821 18,806 17,171 16,927

固定資産合計 34,881 38,333 29,279 29,409 29,379 28,796

資産合計 57,524 56,776 48,337 46,139 46,568 45,479

(負債の部)

Ⅰ流動負債

買掛金 5,203 5,094 5,060 - - -

支払手形及び買掛金 - - - 3,885 3,810 3,392

短期借入金 1,914 1,314 1,234 1,825 1,881 1,688

未払法人税等 1,044 560 856 126 171 258

賞与引当金 534 398 372 378 400 388

繰延税金負債 - - - - - -

その他 2,554 3,156 3,819 2,956 3,168 2,304

流動負債合計 11,249 10,521 11,340 9,170 9,430 8,030

Ⅱ固定負債

長期借入金 52 38 29 448 782 521

退職給付金引当金 20 69 68 11 33 38

役員退職慰労引当金 371 8 5 - - -

繰延税金負債 - - - - 37 62

その他 1,281 1,320 1,354 1,424 1,680 1,604

固定負債合計 1,725 1,436 1,456 1,882 2,531 2,224

負債合計 12,974 11,957 12,797 11,052 11,961 10,254

(少数株主持分)

少数株主持分 382 - 1 15 - -

(資本の部) - -

Ⅰ資本金 11,413 11,413 11,413 11,413 - -

Ⅱ資本剰余金 11,101 11,101 11,101 11,101 - -

Ⅲ利益剰余金 23,257 23,565 15,262 15,911 - -

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Ⅳその他有価証券評価差額金 ▲ 144 261 311 442 - -

Ⅴ為替換算調整勘定 ▲ 527 ▲ 712 ▲ 832 ▲ 62 - -

Ⅵ自己株式 ▲ 551 ▲ 808 ▲1,715 ▲3,733 - -

資本合計 44,549 44,819 35,538 35,072 - -

負債、少数株主持分及び資本合計 57,524 56,776 48,337 46,139 - -

Ⅰ株主資本

1.資本金 - - - - 11,413 11,413

2.資本剰余金 - - - - 11,101 11,101

3.利益剰余金 - - - - 14,865 13,833

4.自己株式 - - - - 3,305 ▲1,312

株主資本合計 - - - - 34,074 35,034

Ⅱ評価・換算差額等

1.その他有価証券評価差額金 - - - - 479 18

2.為替換算調整勘定 - - - - ▲ 14 ▲ 39

評価・換算差額等合計 - - - - 464 ▲ 21

Ⅲ新株予約権 - - - - 41 106

Ⅳ少数株主持分 - - - - 28 106

純資産合計 - - - - 34,607 35,225

負債純資産合計 - - - - 46,568 45,479

損益計算書 (百万円)

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

Ⅰ売上高 65,668 58,676 59,346 58,217 59,891 62,302

Ⅱ売上原価 37,990 34,198 33,643 33,364 33,705 34,624

売上総利益 27,678 24,478 25,703 24,853 26,185 27,678

Ⅲ販売費及び一般管理費 25,349 22,363 23,657 22,537 24,805 26,925

営業利益 2,329 2,115 2,046 2,316 1,381 753

Ⅳ営業外収益

受取利息 95 74 67 90 124 97

受取配当金 21 11 11 22 29 27

社債償還差益 0.45 - - - - -

有価証券売却益 - - - - - -

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賃貸収入 1,002 1,404 1,535 1,662 1,521 1,652

キャンペーン協力金 563 489 719 833 819 558

持文法による投資利益 43 65 99 65 - 67

雑収入 - 276 263 212 234 283

その他 174 - - - - -

計 1,899 2,319 2,694 2,883 2,728 2,684

Ⅴ営業外費用

支払利息 40 7 5 7 20 26

賃貸経費 1,327 1,670 1,819 1,782 1,727 1,935

持文法による投資損失 - - - - 31 -

雑支出 - 236 300 215 138 198

その他 256 - - - - -

計 1,623 1,912 2,124 2,004 1,917 2,159

経常利益 2,605 2,522 2,616 3,195 2,191 1,278

Ⅵ特別利益

固定資産売却益 2 16 79 664 36 12

投資有価証券評価益 - - - 292 - -

関連会社株式売却益 - - - - 116 -

貸倒引当金戻入益 73 248 - 73 32 -

役員退職慰労引当金戻入益 - 7 - - - -

子会社株式売却益 770 - - - - -

償却済債権取立益 11 - - - - -

その他 - - 3 5 - -

計 855 272 81 1,035 184 12

Ⅶ特別損失

固定資産売却損 0.69 125 46 11 47 6

固定資産除去損 527 372 346 242 270 380

減損損失 - - 346 218 415 387

投資有価証券評価損 522 - - - - -

関係会社株式評価損 3 - - - - -

リース契約解約損 - - - 106 - -

関係会社清算損 - - - 637 - -

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会員権評価損 9 - - 19 - -

店舗什器入替費用 - 140 - - - -

投資損失引当金繰入 - - - - 190 142

その他 - - 87 57 42 111

計 1,061 636 11,740 1,290 964 1,026

税金等調整前当期純利益 2,399 2,158 ▲9,043 2,939 1,411 264

法人税、住民税及び事業税 1,495 768 1,134 130 141 214

法人税等調整額 ▲ 174 303 ▲1,694 1,718 1,074 384

少数株主利益 20 - - - 5 9

当期純利益 1,059 1,087 ▲7,348 1,092 202 ▲ 325

参考文献

エリック・シュローサー、チャールズ・ウィルソン、『おいしいハンバーガーのこわい話』、

草思社、2007 年 大西 雄之進、『これから本番!!外食産業・急成長の秘密』、こう書房 1978 年 「外食産業を創った人びと」製作委員会、『外食産業を創った人びと』、株式会社商業会、

2005 年 下野武司、島崎豊彦、島崎規子、『実例で学ぶ経営分析入門』、中央経済社、2004 年 中山新一郎、『マクドナルド市場独占戦略』、ぱる出版、2001 年 日経産業新聞編集部、「市場占有率」、日本経済新聞出版社、1996~2008 年版 日本経済新聞出版社、「経営指標」、日本経済新聞出版社、2004~2008 年版 茂木信太郎、『外食産業の時代』、財団法人農林統計協会、2005 年 日本経済新聞、1981 年 10 月 22 日、3 頁 日本経済新聞、1982 年 4 月 18 日、15 頁 日本経済新聞、1990 年 2 月 25 日、11 項 日本経済新聞、2004 年 2 月 21 日 13 頁 日本経済新聞、2005 年 6 月 18 日 11 頁 日本経済新聞、2008 年 5 月 9 日、31 頁 日本経済新聞、2008 年 5 月 26 日、17 頁 日本経済新聞、2008 年 9 月 3 日、12 頁 日本経済新聞、2008 年 9 月 20 日、17 頁 日経産業新聞、1979 年 3 月 27 日、15 頁 日経産業新聞、1985 年 1 月 23 日、21 頁

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日経産業新聞、1986 年 1 月 6 日、18 頁 日経産業新聞、2007 年 11 月 28 日、28 頁 日経産業新聞、2008 年 7 月 4 日、12 頁 日経産業新聞 2008 年 12 月 8 日 20 頁 日経流通新聞、1987 年 5 月 25 日、1 頁 日本流通新聞、1997 年 5 月 27 日、7 項 日本流通新聞、1999 年 9 月 18 日、1 項 日経流通新聞、1999 年 1 月 26 日、13 頁 日経流通新聞、2004 年 2 月 7 日、2 頁 日経流通新聞、2004 年 2 月 17 日、7 頁 日経流通新聞、2004 月 3 月 2 日、1 頁 日経流通新聞、2004 年 5 月 20 日、15 頁 日経流通新聞、2006 年 11 月 10 日、19 頁 日経流通新聞、2007 年 2 月 12 日、15 頁 日経流通新聞、2007 年 5 月 16 日、15 頁 日経流通新聞、2007 年 5 月 25 日、19 頁 日経流通新聞、2008 年 8 月 6 日、15 頁 日経流通新聞、2008 年 8 月 11 日、15 頁 日経流通新聞、2008 年 9 月 5 日、19 頁 日経流通新聞、2008 年 9 月 24 日、19 頁 日経流通新聞、2008 年 11 月 12 日、15 頁 読売新聞東京、1994 年 11 月 23 日、9 頁 日本マクドナルドHP(http://www.mcdonalds.co.jp/) 日本マクドナルドホールディングズ株式会社HP(http://www.mcd-holdings.co.jp/) 株式会社モスフードサービスHP(http://www.mos.co.jp/index.html) 株式会社モスフードサービス 社会・環境報告書 2005(http://www.ecosearch.jp/pdfdata/mosb0500.pdf)

飲食業界用語集(http://www.sis-pros.co.jp/fj/yogo.html#ti) 外食産業総合調査研究センター(http://www.gaishokusoken.jp/) 株式会社ロッテリアHP(http://www.lotteria.jp/index.html) 企業家人名図鑑(http://www.kigyouka.sakura.ne.jp/contents/fujita.html) 厚生労働省 HP(http://www.mhlw.go.jp/index.html) 国立社会保障・人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp/) 社団法人日本フランチャイズチェーン協会(http://jfa.jfa-fc.or.jp/)

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総務省統計局(http://www.stat.go.jp/) 総務省ホームページ(http://www.soumu.go.jp/) 内閣府「国民経済計算」(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html) 日経ネット Plus 今、若者たちへ-君に伝えたい私の経験-<広告企画> (http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/advproject/young/young/you080423.html) 日本工業標準調査会HP(http://www.jisc.go.jp/international/isoiec.htm) 日本フードサービス協会(http://www.jfnet.or.jp/) 農林漁業金融公庫(https://www.afc.go.jp/index.html) 農林水産省(http://www.maff.go.jp/) ファーストキッチン株式会社HP(http://www.first-kitchen.co.jp/) ファイナンシャル・リテラシー(http://www.ifinance.ne.jp/glossary/account/acc083.html)フードビジネス総合研究所(http://www.fb-soken.com/) 富士通HP(http://jp.fujitsu.com/about/journal/tips/study/study048.shtml) 平成 14 年版 厚生労働白書(http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/) exBuzzwords(http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_558.html) Financial JAPAN 対談レポート(http://www.pro-bank.co.jp/report/200706.html GLOBIS MANAGEMENT SCHOOL HP(http://gms.globis.co.jp/dic/00323.php) TOWA HP(http://www.towa-meccs.co.jp/seihin/sonota/point/pp88/index.html yahoo辞典

(http://100.yahoo.co.jp/detail/%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%88%A6%E7%95%A5/) yahoo 百貨事典 (http://100.yahoo.co.jp/detail/%E8%B2%A1%E5%8B%99%E5%88%86%E6%9E%90/)