スマートフォンの品質が価格に与える影響 -...

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中央大学商学部久保知一研究室第 5 期卒業論文 1 スマートフォンの品質が価格に与える影響 ―ヘドニック・アプローチを用いた実証分析― 望月一弘 中央大学商学部 久保知一研究室 第 5 E-mail: [email protected] 要約:近年、デジタルカメラ、パソコン、テレビなどデジタル家電産業において顧客 に提示できる他社との違いが価格のみなってしまう「コモディティ化」の問題が指摘 されている。しかしながら、デジタル家電産業におけるスマートフォン市場では価格 下落はそれほど観察されていないように思われる。本論では、「なぜ、スマートフォン 市場では価格下落が起きにくいのか?」というリサーチ・クエスチョンのもと、ヘド ニック・アプローチによる価格分析を行い、各属性が価格に影響を与える要因を考察 した。実証分析の結果、マルチメディア性能が価格に大きな影響を与えていたが、ブ ランド・キャリアは価格に影響を与えていないことが判明した。また、コモディティ 化は生じていないことが実証された。 キーワード:携帯電話端末、スマートフォン、フィーチャーフォン、デジタル家電産 業、コモディティ化、製品差別化、価格下落、ヘドニック・アプローチ、重回帰分析、 主成分分析 1. はじめに 本論は、「なぜ、スマートフォン市場では価格下落がそれほど観察されにくいのか?」と いうリサーチ・クエスチョンに答えるために、ヘドニック・アプローチによる価格分析を行 うことで、スマートフォンの製品差別化の源泉を明らかにすることを目的とする。 近年、デジタルカメラやパソコン、液晶テレビなど、デジタル家電産業において、発売し てから数ヶ月で大幅に価格が下落してしまう現象が指摘されている。発売日から半年が経過

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中央大学商学部久保知一研究室第 5 期卒業論文

1

スマートフォンの品質が価格に与える影響 ―ヘドニック・アプローチを用いた実証分析―

望月一弘

中央大学商学部 久保知一研究室 第 5 期

E-mail: [email protected]

要約:近年、デジタルカメラ、パソコン、テレビなどデジタル家電産業において顧客

に提示できる他社との違いが価格のみなってしまう「コモディティ化」の問題が指摘

されている。しかしながら、デジタル家電産業におけるスマートフォン市場では価格

下落はそれほど観察されていないように思われる。本論では、「なぜ、スマートフォン

市場では価格下落が起きにくいのか?」というリサーチ・クエスチョンのもと、ヘド

ニック・アプローチによる価格分析を行い、各属性が価格に影響を与える要因を考察

した。実証分析の結果、マルチメディア性能が価格に大きな影響を与えていたが、ブ

ランド・キャリアは価格に影響を与えていないことが判明した。また、コモディティ

化は生じていないことが実証された。

キーワード:携帯電話端末、スマートフォン、フィーチャーフォン、デジタル家電産

業、コモディティ化、製品差別化、価格下落、ヘドニック・アプローチ、重回帰分析、

主成分分析

1. はじめに

本論は、「なぜ、スマートフォン市場では価格下落がそれほど観察されにくいのか?」と

いうリサーチ・クエスチョンに答えるために、ヘドニック・アプローチによる価格分析を行

うことで、スマートフォンの製品差別化の源泉を明らかにすることを目的とする。

近年、デジタルカメラやパソコン、液晶テレビなど、デジタル家電産業において、発売し

てから数ヶ月で大幅に価格が下落してしまう現象が指摘されている。発売日から半年が経過

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すると、価格が半額以下にまで下落してしまうケースも多々見受けられる。この現象は、新

聞報道1などで目にする機会があるばかりでなく、すでに「コモディティ化」という文脈で

学術的な研究でも指摘されている。コモディティ化の概念に統一的な定義は存在しないが、

沼上 (2000) は、衰退期の産業において、価格のみに基づいて購買の意思決定が行われるも

のであり、すでに基本性能では製品間の差がつかず、価格以外で差をつけにくくなっている

状態のことであると定義をしている。沼上 (2000) は衰退期のみにおけるコモディティ化の

問題を議論しているが、「旺盛な需要下」でもコモディティ化が発生し、大幅な価格下落が

起こることを指摘する研究もある。伊藤 (2005) は、デジタル家電産業 (デジタルカメラ) を

対象として、旺盛な需要下におけるコモディティ化の発生を実証した。すなわち、コモディ

ティ化は市場のフェーズのいかんに関わらず、起きうる現象であるといえる。

では、コモディティ化の何が問題なのだろうか。楠木 (2006) は、コモディティ化に陥る

と、製品やサービスにおいて競合他社との違いが作りにくくなり、顧客に提示できる他社と

の違いは価格だけになってしまう、という観点から「忌むべきもの」と指摘している。また、

コモディティ化に陥った業界では、継続的に利益を出せる企業はコスト・リーダーシップを

持つ 1 社に限られてしまうとも指摘している。すなわち、コモディティ化に陥ると、企業が

価格競争に巻き込まれ、利益率が低下し、持続的に成長する体力が奪われてしまう。この「価

格下落」と表裏一体の概念である「コモディティ化」という現象は、製造業が GDP の中で

も大きな割合を占める日本においては大変な脅威であり、この現象を放置することは、競争

力の減退や産業の空洞化などのさらなる問題を引き起こし、深刻な問題となりうる。

しかしながら、同様の競争環境をもつデジタル家電産業のなかでも、携帯電話市場におけ

る高機能携帯電話 (以下、「スマートフォン」という) 市場においては、価格下落率がデジタ

ルカメラやパソコンと比較して大きくないばかりか、しばしば下落すらしないという現象が

観察される。実際に、2006 年から 2011 年までに発売されたスマートフォン 145 種類の品番

と価格 (契約時の機種単体価格・一括払い) をピックアップし、発売当初の価格と、3 ヶ月

後の価格を比較したところ、価格下落が起きた機種は 145 機種中 45 機種であり、100 機種

は価格下落が発生しなかった。また、下落した 45 機種についても、下落率の中央値は 36.2%

程度であった。なぜ、スマートフォン市場では価格が下落しにくいのだろうか。製品の市場

への投入サイクルが早いからであろうか。たしかに、年平均 3 回の頻度で新製品が投入され

ることがこの業界の慣習である2。しかしながら、これは急激な価格下落が指摘されている

1 例えば、『日経新聞』 2012 年 10 月 25 日朝刊 1 面において指摘されている。 2 1 年に発売される新機種は、例外があるものの NTT ドコモ、au、SoftBank の場合、夏モデル、秋モ

デル、冬モデル (場合によって「冬春モデル」) の 3 つである。

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デジタルカメラやパソコンの年平均 3 回と同じである。では、市場が成長期であり、かつ需

要が旺盛3だからであろうか。たしかに、それも 1 つの要因として考えられるが、需要や市

場のフェーズのいかんに関わらず、コモディティ化が生じうることは先にも述べた通りであ

る。価格下落が起きにくい、または「起きない」という現象が観測される本業界は、コモデ

ィティ化を検討する上でとても興味深い業界である。本当にこの市場ではコモディティ化が

起きていないのかを、価格下落のみで結論づけるのは早計である可能性もある。価格が下落

していない代わりに、品質が飛躍的に向上しているとすれば、それは実質的なコモディティ

化だからである。したがって、この点を明らかにするためにも、実証分析が不可欠である。

かくして本論では、スマートフォン市場では、類似するデジタル家電産業とは異なり「な

ぜ価格下落が起きにくいのか?」、「本業界ではどういった属性が価格に影響を与えるか」、

「本当にコモディティ化は起こっていないのか」という 3 つのリサーチ・クエスチョンをも

とに研究を進める。このリサーチ・クエスチョンに答えるために、本研究ではヘドニック・

アプローチを用いて研究を行う。詳しい技法については次節以降で後述する。

本論は以下のように構成される4。第 2 節では、対象とする産業をより明確にし、本論の

位置づけを確認にするために先行研究をレビューする。また、分析枠組であるヘドニック・

アプローチについても言及する。第 3 節では、本研究において明らかにしたい現象をより明

確にするために、仮説を提唱する。第 4 節では、データセットの構築方法と調査設計を説明

する。つづく第 5 節において分析結果と解釈を述べた後、第 6 節で本研究から得られる知見

をまとめる。

2. 先行研究レビュー

本節は、対象とする産業を明確にした上で本研究の位置づけを明示することを目的とし、

携帯電話端末市場についての競争関係を分析した先行研究、スマートフォンの定義、ヘドニ

ック・アプローチについての先行研究、携帯電話市場についてヘドニック・アプローチを用

いて分析した先行研究についてレビューを行う。

2-1 携帯電話端末市場について

携帯電話端末市場について網羅的に分析を行った文献5は数少ないが、大﨑 (2007) は、日

3 総務省『情報通信白書』 (2012) によると、スマートフォンの世界市場は 2011 年の 4 億 7,000 万台

から 2016 年には 13 億台に平均 22.5%での成長が予測されている。 4 補論としてフィーチャーフォンの推計結果を示している。 5 スマートフォンが携帯電話端末市場に登場してから、携帯電話端末市場について網羅的に分析を行

った文献は、筆者の知りうる限りでは存在しない。

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本製の携帯電話端末が、日本の得意分野として広く認知されている軽薄短小の電子機器であ

るにもかかわらず、国際市場において強い影響力を発揮できないのはなぜか、という問題提

起の下に、キャリア、端末メーカーを対象としたフィールドワークによる研究を行っている。

影響力を発揮できない要因で主要なものをいくつか紹介する。第 1 に「通信規格の相違」が

挙げられる。第 2 に「キャリアの端末開発への関与」が挙げられる。高度な技術力を要する

キャリアは海外では特異な存在であり、CDMA6等の技術開発において、メーカーではなく

キャリアが主導権を握っているため、メーカーが大きなリソースを割いて対応しなければな

らない点が特異であると指摘している。他に、日本の端末はキャリアによって完全に流通を

支配されている点や、海外大手キャリアとの関係性を構築できていない、海外での広告露出

が少ない、端末が高価である、といった指摘がなされている。

また、日本メーカーの端末事業を取り巻く競争環境について、技術面についてはモジュー

ル化や規格の標準化、市場環境においてはグローバル化やコモディティ化が起こりつつある

ことを指摘し、こうした状況から携帯電話端末産業の構図は、日本のエレクトロニクス産業

全体にあてはまりうることを指摘している。

2-2 スマートフォン及びフィーチャーフォンの定義

「スマートフォン」に統一的な定義は存在しないが、総務省が情報通信白書を作成するに

あたって調査を委託したガートナー社7は、スマートフォンとは、①仕様の全部もしくは使

用の一部を公開している OS を採用している端末であること、②ソフトウェア開発者に対し

て、API8を利用可能なソフトウェア環境が提供されている OS を採用している端末であるこ

と、③移動体通信網に対応する端末であること、を満たすものであると定義している。また、

総務省 (2012) がこれとは別に示した定義では、携帯情報端末の機能を併せ持った携帯電話

で、音声通話以外にウェブ閲覧・電子メールの送受信、文章ファイルの作成・閲覧などがで

き、かつ利用者が自由にアプリケーションソフトを追加することが可能な端末としている。

一方、フィーチャーフォンはこれに該当しない端末であり、ユーザーインターフェースが画

面を指でタッチするタイプのものではないキーボード型、テンキー型の端末を想定している。

以下、総務省 (2012) の「スマートフォン」の定義に従い、研究を進める。

6 携帯電話の無線通信に用いられる方式の 1 つである。 7 米国に本社を置く IT 分野の市場調査会社である。 8 Application Programing Interface の略で、アプリケーションの開発者が、他のハードウェアやソフト

ウェアの提供している機能を利用するためのプログラム上の手続きを定めた規約の集合 (総務省, 2012)。

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2-3 ヘドニック・アプローチ

本節では、本研究の枠組となるヘドニック・アプローチについて説明を行い、その理論的

基礎となる Lancaster モデル、Rosen モデルについて説明を行う。

ヘドニック・アプローチは、価格を従属変数として、複数の製品属性を説明変数とした重

回帰分析を行い、個々の製品属性が価格に及ぼす係数を計算することにより、製品の品質を

金額という絶対的な数字に置きかえるものである。ここでいう「品質」あるいは「属性」と

は、太田 (1980) によると 2 つの意味で定義される。1 つは「財の客観的な特質」を指すも

のであり、垂直的属性 (vertical attributes) と呼ばれる。財 1 単位に含まれる属性の数量また

は性質によって示されるものであり、携帯電話であれば、 大待受時間 (単位: 時間)、液晶

サイズ (単位: インチ)、カメラ画素数 (単位: 万画素) といったものが該当する。この定義

では、財 1 単位に含まれる属性の水準のベクトルが全く同じ財の品質は同じであり、これが

異なると違う財ということになる。この定義における「品質」は客観的かつ普遍的である。

もう 1 つは「財の特質に対する評価」を指すものであり、水平的属性と呼ばれる。この評価

は主としてその財の使用者が行う使用者の価値基準による主観的なものである。

ヘドニック・アプローチでは、所与の製品を「属性の束」と捉え、構成するそれぞれの属

性に分解できると考える。統計的技法を用いて「属性の束」を分解することで、各属性が価

格に与える客観的な指標を利用して、製品を個別の機能・性能の総和として財を評価するこ

とができる。このアプローチを採用する 大のメリットは、品質という主観的な評価に関し

て恣意性を極力排し、機能・性能をあらわす客観的な指標に判断基準を求める点にある (白

塚, 1994)。また、実際に市場に出回る製品は同じ製品であっても性能や品質は絶えず変化す

る。同じ価格であっても、性能が向上すれば、実質的には値下げと同じ意味をもつ。このよ

うな状況を正確に把握し、価格指数を算出することが可能な点も、ヘドニック・アプローチ

のメリットである。

○Lancaster モデル

ヘドニック・アプローチに経済理論的な基礎を与えているのは Lancaster モデルに基づく

消費者行動理論である (白塚, 1994)。通常のミクロ経済学での消費者均衡と、Lancaster モデ

ルでの消費者均衡はそれぞれ、図表 1、図表 2 のように示される。

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図表 1 予算制約のもとでの効用 大化 (通常のミクロ経済学)

通常のミクロ経済学においては、消費者は図表 1 の右下がりの直線である予算制約線のも

とで消費選択を行っていると仮定され、消費者は予算制約線上でもっとも効用が高い点であ

る無差別曲線 U2と交わる E 点の消費計画を選ぶように行動すると考えられている。ミクロ

経済学での消費者行動理論と Lancaster モデルを分かつ上で重要になるのは、通常のミクロ

経済学においては品質が少しでも異なる財は全く別の財として取り扱われることである。そ

れゆえ、製品 A と製品 B は別々の財として定義づけられる。この通常のミクロ経済学のモ

デルでは、同じ製品カテゴリーに属する製品の品質変化や財の多様化・差別化を説明するの

は困難である。Lancaster モデルに基づく消費者行動理論はこの点を修正したモデルである。

図表 2 Lancaster モデルでの消費者均衡

Lancaster モデルの文脈では、消費者が効用を得る対象は、個々の財ではなく、その財が持

っている各々の属性である。Lancaster モデルに基づく消費者行動理論では、品質変化や財の

多様化・差別化を説明するために、消費者の選好を消費する財の数量ではなく、財の消費に

属性 2

無差別曲線

製品 1

製品 2

0 属性 1

E

製品 B

0

U3

U2

U1

無差別曲線

製品 A

E

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よって取得される属性の量に対して定義する (Lancaster, 1991; 白塚, 1994)。図表 2 では、製

品 1・製品 2 は、属性 1・属性 2 の組み合わせであるベクトルの方向で表される。また、ベ

クトルの長さは消費者の所得を製品単価で除した値に等しくなることと、製品の無限分割可

能性が仮定されていることから、消費者の実行可能集合 (feasible set) は 2 本のベクトルで囲

まれた三角形となる。消費者の選好は属性の数量に対して定義されるので、消費者均衡は右

下がりの直線である予算集合と無差別曲線の接点 E となる (白塚, 1994)。

○Rosen モデル

Rosen (1974) のモデルはヘドニック関数が諸属性に関する需要と供給の市場均衡価格曲

線として導出されることを示すモデルである。Lancaster モデルとの違いは、価格も製品属性

とともに無差別曲線を形成する1要素となる点にある。

図表 3 Rosen の製品差別化モデル

図表 3 の効用曲線 I は、買い手の無差別曲線9を示しており、買い手にとっての交換コスト

(価格) とベネフィット (効用) をもたらす製品属性とのトレードオフを示している。関数

p(z1,z2*,z3

*,・・・) は、様々な水準の属性 z1に対応する 小水準の価格を規定しており、製品属

性と価格とのトレードオフを示している10。

点 E は効用曲線 I と関数 p(z1,z2*,z3

*,・・・) との接点であり、入手可能な財のうちでこの買い

手に も選好される取引点となる。買い手によって効用曲線は異なるので、別の買い手は同

9 Rosen はこの曲線のことを「価値関数」と呼んでいる。「買値関数」と呼ぶことも一般的である。 10 すなわち、関数 p(z1,z2

*,z3*,・・・) は多様な売り手が有する余剰ゼロの曲線の包絡線となるため、フロ

ンティアとなる。

p

p*

0 Z1* Z1

p(z1,z2*,z3

*,・・・)

IE

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様に関数 p(z1,z2*,z3

*,・・・) との別の接点を選好する。こうして、多様な売り手が有する凹状の

余剰ゼロ曲線の包絡線である関数 p(z1,z2*,z3

*,・・・) は、多様な買い手が有する凸状の効用曲線

の包絡線となる。よって、図表 4 のように取引点が1本の曲線にしたがって無数に存在する。

したがって、この関数は、属性と実勢価格との関数関係を観測するヘドニック価格関数に対

応している (小野, 1998)。

図表 4 ヘドニック関数11

2-4 ヘドニック・アプローチと競争戦略

ヘドニック・アプローチを企業の競争戦略の文脈で論じた先行研究に伊藤 (2008) がある。

伊藤 (2008) は、製品差別化が消費者行動から見てどのように行われてきたかについて、イ

ンクジェット・プリンタ産業を取り上げ、分析を行っている。ヘドニック・アプローチを用

いて研究を進めた理由として、製品の様々な属性を価格に換算できれば、各属性の価格への

影響を測定することにより、企業の製品差別化の成否が定量的に分析可能であることを挙げ

ている。また、品質が同等とした場合の価格であるヘドニック物価指数 (品質調整済み物価

指数) と実際の価格とを比較することで、製品付加価値活動の推移を推定し、新たに付加さ

れた属性が品質の向上にどのように貢献し、消費者に受け入れられているかについて、価格

変化を品質の代替指標として検討を行っている。

2-5 携帯電話端末市場におけるヘドニック・アプローチの適用

ヘドニック・アプローチを用いて携帯電話端末市場を分析した研究としては、ドイツの携

帯電話端末市場について分析を行った Dewenter, Haucap, Luther, and Rötzel (2004)、日本の携

11 太線がヘドニック関数を示している。

p

0 Z

p1(z1,z2*,z3

*,・・・)

p2(z1,z2*,z3

*,・・・)

p3(z1,z2*,z3

*,・・・)

I1

I2

I3

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

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帯電話端末市場について分析を行った藤原 (2005a, 2005b)、イランの携帯電話端末市場につ

いて分析を行った Nazari and Kalejahi (2011) が挙げられる。

Dewenter et al. (2004) は、携帯電話端末市場での競争はとても激しく、絶えず市場シェア

が変動しているにも関わらず、携帯電話端末についての実証研究がほとんど行われていない

というギャップを埋めるために、ドイツでの携帯電話端末に対するヘドニック分析を試みて

いる。Dewenter et al. (2004) によると、携帯電話端末についてのヘドニック・アプローチの

適用はそれまで行われたことがなく、彼等が 初の研究である。説明変数として、図表 5 に

示される変数が用いられている。

図表 5 Dewenter et al. (2004) で用いられた変数

変数 単位

2003 年 12 月からの経過月数 月数

重量/連続通話時間 グラム/時間

電磁波の影響 SAR 値

体積 cm3

プリセットされている着信音 個

WAP ダミー

MMS ダミー

MP3 ダミー

Bluetooth ダミー

メーカー ダミー

分析の結果、電磁波の影響が非有意になり、消費者は電磁波の影響を考慮して携帯電話端

末を購入していないということ、月数を経るにしたがって携帯電話端末の価格が下がってい

ることを示している。

藤原 (2005a) は、①携帯電話12の価格指数の算出、②携帯電話会社の端末展開と価格指数

の関連を研究するために、日本で発売されている携帯電話端末の初期費用13についてヘドニ

ック・アプローチを用いて研究を行っている。この研究では、図表 6 に示される変数が用い

られている。

12 フィーチャーフォンを指す。 13 藤原 (2005a) では店頭で支払う携帯電話端末の購入価格と通信事業者から初回請求時に請求され

る新規加入料の合計と定義している。

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図表 6 藤原 (2005a) で用いられた変数

ディスプレイサイズ インチ

データ転送速度 Kbps

呼出音の和音数 和音数

カメラ ダミー

アプリケーション ダミー

四半期ごとの発売時期 ダミー

発売経過日数 日数

新製品であるか ダミー

店舗が大阪か東京か 東京/大阪

メーカー ダミー

分析の結果、分析期間に実際に発売された端末価格はやや上昇ぎみであるものの、基準点

から大きく離れることがなかったのに対して、性能や品質の変化による影響を除いた価格は

4 分の 1 程度に下落し、性能や品質に関しては向上が著しかったことを示している。特に、

分析期間の中頃に「着うた」サービスの開始があったことで、マルチメディア端末の原型が

形成され、新たな属性が導入されていったことが強調されている。また、普及の初期段階で

あったため、マルチメディアについての属性を分析に組み込めず、今後の研究課題としてい

る。

Nazari and Kalejahi (2011) はイランの携帯電話端末市場を対象に、ヘドニック・アプロー

チを用いて分析を行っている。イランの携帯電話端末市場は全て、海外からの輸入で成り立

っているため、輸入業者が消費者にとってより価値がある属性をもつ端末を輸入できれば、

高いマーケットシェアを得ることができると指摘している。

現在、携帯電話端末市場を取り巻く環境は、先行研究が行われた時点に比べ、スマートフ

ォンの登場により、端末に搭載されている機能が大幅に変化している。性能や品質の変化に

よる変動要素を取り除き、価格推移を考察できるヘドニック・アプローチを用いて、コモデ

ィティ化を考察するのが本研究の視座である。また、技術革新によって、先行研究で採用さ

れた説明変数が現在では十分に説明力がある変数ではなくなっている可能性も考えられる。

そこで、本研究では、冒頭のリサーチ・クエスチョンに答えることを目的に、先行研究が扱

ってこなかった「スマートフォン」についてヘドニック・アプローチに基づき、属性が価格

に影響を与える変数を推計する。本論の新規性は、①スマートフォンが携帯電話市場に登場

して初めてのヘドニック分析であること、②スマートフォンのヘドニック分析を通じて端末

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

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の競争力を考察することにある。

3. 仮説の提唱

本論では、スマートフォン産業は類似するデジタル家電産業とは異なり、「なぜ価格下落

が起きにくいのか?」、「本業界ではどういった属性が価格に影響を与えるか」、「本当にコモ

ディティ化は起こっていないのか?」という問いに答えることが目的である。分析の方針を

明確にするために、リサーチ・クエスチョンをもとに仮説を提唱する。

藤原 (2005a) は 2000 年代初頭に携帯電話端末のマルチメディア化の原型が形成されたこ

とを指摘したが、スマートフォンは、様々な技術革新を経て、音楽や画像、動画などのマル

チメディアを取り扱うことを強みとしている。また、スマートフォンは価格下落やコモディ

ティ化が指摘されるデジタルカメラ、携帯音楽プレイヤー、などの機能を多数内蔵し、それ

の代替となりえる。よって、以下の仮説を提唱する。

仮説 1: マルチメディア機能は価格に も大きな正の影響を与える。

仮説 2: スマートフォンはコモディティ化に陥っていない。

4. データセットと調査設計

携帯電話の価格に影響を与えている変数ならびに価格下落を推計するために、重回帰分析

を行った。本研究においては、携帯電話の機種、属性、価格に関するデータが必要となる。

データセットの作成手順は図表 7 に示される。

まず、日本の携帯電話市場で発売された機種 (2006 年から 2012 年) をピックアップし、

携帯電話の機種を特定するために、株式会社カカクコム「価格.com」内の「携帯電話・スマ

ートフォン」の項目より、今までに発売されたスマートフォンの機種名を入手した。また、

同サイトより品質に関するデータも得られるため、機種名と属性データを結合した。掲載さ

れていない属性データに関しては適宜、キャリアのウェブサイトや端末メーカーのウェブサ

イトを確認してデータを補った。

価格については、市場に流通しているほぼすべての機種名、価格データを定期的 (毎週) に

調査し、公開しているインプレス社「ケータイ Watch 価格調査」より、価格.com にて得ら

れた機種名を用いて機種ごとの「発売 1 週間後の新規一括価格」を検索して価格データを採

用した。発売 1 週間後の新規一括価格を採用した理由としては、発売 1 週間後に極端な値引

きによるセール価格となることは通常であればなく、その機種が市場でどのような評価を受

けているのかについて、機種本体の価格そのものを色濃く反映しており、分析に適している

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と考えられるからである。

データベースの分析期間は価格データと機種名が入手可能な 2006 年から 2012 年 12 月ま

でとした。

図表 7 データセットの作成手順

価格.com 機種名の抽出

品質データの抽出

キャリアウェブサイト 価格.com で得られなかった欠損データの補填

端末メーカーウェブサイト

ケータイ Watch 発売 1週間後の新規一括価格データの抽出

データベース

4-1 モデルの定式化

本研究においては、白塚 (1994) をはじめ、先行研究でもデータへのフィットがよいとし

て用いられている線形モデル14を用いて推計を行う。式は以下の通りである。

上式において、Priceitは第 i 財の t 時点における発売 1 週間後の新規一括価格、xijtは t 時点

における第 i 財の j 番目の属性、dijtは第 i 財の t 時点における時点ダミー (発売季節ごと)、

uitは第 i 財の t 時点における誤差項を表している。

14先行研究においては、価格の対数をとる「半対数型 (片側対数型)」、価格と属性値のどちらも対数

をとる「両対数型 (両側対数型)」が用いられることが多い。しかし、本研究では半対数型、両対数型

のどちらも選択しなかった。その理由は、ヘドニック回帰式には先験的な制約は存在しないので、

もあてはまりのよいモデルを選択すればよいからである。実際に、①半対数型、②両対数型を試行し

て分析を行ったが、 もあてはまりが良かったモデルは、価格、属性ともに対数をとらないモデルで

あった。

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

13

4-2 変数の選択と記述統計量

財の属性が価格に与える影響についてヘドニック・アプローチを用いて推計する際には、

説明変数の選択が問題になる。太田 (1980) はヘドニック・アプローチの短所として、財の

属性についての詳細なデータが必要であるが、詳細なデータが得られる財は限られているこ

とを挙げている。また、白塚 (1994) は対象とする製品の機能に結びついた価格説明力の高

い属性である、「成果変数 (携帯電話の場合、使いやすさ、フィット感、利便性など)」を説

明変数として利用すべきであるが、実際に利用可能な属性は「物理変数 (携帯電話の場合、

待受時間、重量、高速通信など)」であると指摘している。

ヘドニック・アプローチは重回帰分析を行う以上、説明変数間での多重共線性の問題にも

注意を払わなければならない。さらに、発売されたスマートフォンの機種数が限られ、サン

プルサイズを増やすことができないため、説明力が高いモデルを構築するためには変数を厳

選しなければならない。一方で、説明変数が少なすぎると、各属性が価格15に与える推計値

を正確に捉えることができなくなる。そこで、本研究では変数の選択にあたって、①携帯電

話各キャリアが配布している「総合カタログ」を参照し、機種ごとの大きなショウアップ写

真とともに表示されている属性 (すなわち、顧客がカタログを参照したときに真っ先に目に

入る属性) はどのようなものが多く用いられているかを判断し、②事前に複数回の分析16を

行って有意になる変数の組み合わせが多くなるよう試行し、変数を厳選するという作業を行

った。このように選ばれた説明変数であったが、CPU や ROM、RAM などの処理性能にま

つわる説明変数間に多重共線性の問題が生じる恐れがあった。そこで、モデルのあてはまり

をよくするために主成分分析を行い、因子負荷量の多かった順に「液晶サイズ」「CPU コア

数」「ROM+RAM17」の 3 つの変数をまとめ、「グラフィック処理性能18」という説明変数を

作成した。第 1 主成分の寄与率は 37.912%であった。

属性に関する説明変数は図表 8 に示されている。

15 価格 (非説明変数) の平均値は 60461.544、標準偏差は 18995.088 である。 16 本作業の分析結果は図表 14 を参照のこと。 17 通常、ROM と RAM は異なるものであるから別々の変数で分析するのが望ましいが、機種によっ

ては ROM と RAM に関するデータを分けて公開しておらず、ROM+RAM にて表示している機種も多

くあった。そのため、本論では全ての機種の ROM と RAM を加算し、1 つの変数として扱った。 18 液晶サイズが大きければ大きいほど、グラフィックを扱いやすくなる。CPU や ROM+RAM の多寡

はグラフィックを扱う際の前提となる性能指標であるため、「グラフィック処理性能」と命名した。

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望月一弘

14

図表 8 採用された説明変数 (属性)

説明変数 説明 単位 平均値 標準偏差

グラフィック

処理性能

液晶サイズ・CPU コア数・

ROM+RAM

主成分分析

により合成 - -

大待受時間 待受時間 時間 387.056 158.442

重量 端末の重さ グラム 144.343 55.147

メインカメラ

画素数 カメラの画素数 万画素 741.928 323.327

物理キーボード テンキーなどの

物理キーボード有無 ダミー変数 - -

TFT 液晶以外 TFT 液晶以外の

高画質な液晶か ダミー変数 - -

3D 3D に対応しているか ダミー変数 - -

次世代高速通信 次世代高速通信に

対応しているか ダミー変数 - -

Bluetooth Bluetooth に

対応しているか ダミー変数 - -

テザリング モデムとして利用可能か ダミー変数 - -

撮影用フラッシュ 撮影用フラッシュが

ついているか ダミー変数 - -

防水機能 防水機能があるか ダミー変数 - -

おサイフケータイ おサイフケータイに

対応しているか ダミー変数 - -

ワンセグ ワンセグ放送受信に

対応しているか ダミー変数 - -

展開色数 何色展開しているか 色数 2.378 1.403

価格に影響を与えている変数を考慮する際、図表 8 に示される「属性」のみを基準に消費

者は選択をしているとは考えにくい。どのキャリアから発売されているか、ということも価

格に影響を与えている可能性がある。Dewenter et al. (2004) によれば、キャリアダミーを説

明変数に組み込む理由として、消費者は携帯電話端末を単体で買うのではなく、「電話サー

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

15

ビスのパッケージとしての端末」を購入するため、キャリアダミーを入れるべきであるとし

ている。そのため、ここではディズニー・モバイルを基準にキャリアダミーを組み入れた。

また、どのメーカーの製品であるか、ということも価格に影響を与えている可能性が高い。

ここでは、ブランドの影響を推計するために、メーカーダミーも説明変数に加えることにし

た。変数の選択にあたっては、調査期間内に 5 機種以上を発売していることを条件に、13

社を「その他メーカー19」を基準にメーカーダミーとして説明変数に採用した。なお、途中

で M&A などでメーカーが統合されている場合には、発売当時のメーカーがどこであったか

に関わらず、統合後の企業とした。図表 9 中の「LG+パンテック」に関しては、M&A など

は行われていないが、「5 機種以上」という条件をパンテックが満たしていなかったため、

パンテックを LG と加算して説明変数に組み込むことにした。この作業の狙いは、近年、日

本市場への参入が相次いでいる韓国メーカーがどの程度価格に対して影響を持っているの

かを調べるためである。

図表 9 採用された説明変数 (メーカーダミー)

Apple

シャープ

富士通東芝

サムスン

Sony

京セラ

HTC

Huawei

NEC カシオ

パナソニック

LG+パンテック

Research in Motion

図表 10 採用された説明変数 (キャリアダミー)

au by KDDI

19 価格.com にて「その他メーカー」として紹介されていた端末である。具体的には、キャリア主導

で開発された au の INFOBAR がこれに該当する。

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望月一弘

16

NTT ドコモ

SoftBank

WILLCOM

イー・モバイル

さらに時点ダミーも説明変数に含めた。時点ダミーを組み込んだ理由は、時点ごとの価格

変動を推定するためである20。所与の時点で市場全体に何かしらの変動が起った事象を推計

するために説明変数に含めた。また、ヘドニック・アプローチを援用して財の品質が価格に

与えるパラメータを推計している先行研究でも、時点ダミーを用いて分析を行っている。時

点ダミーを用いるのは、ヘドニック物価指数を算出する際に容易であるという理由からであ

り、ヘドニック・アプローチを用いる際は時点ダミーが説明変数に採用されている。しかし

ながら、ヘドニック・アプローチを用いて携帯電話を対象財として行われた研究では、藤原

(2005a, 2005b) 以外の研究においては用いられておらず、スマートフォンの時点ごとにパラ

メータを算出している研究は存在しないため、時点ダミー21を説明変数として用いた。時点

ダミーは 1 年を四半期ごとにわけて変数として用い、期間は 2006 年第 3 四半期から 2012 年

第 4 四半期までとした。

5. 分析結果

スマートフォンのヘドニック分析を行い、各属性が価格に与える影響を推計した結果、図

表 11 に示される結果となった。F 検定の結果、F 値は 6.812、p 値は 0.00 であったので、1%

水準で有意であった。これより、算出されたモデルには意味があると判断できる。また、こ

のモデルの自由度調整済み決定係数は 0.641 であったので、このモデルは従属変数の変動の

うち、64.1%を説明できている。

図表 11 ヘドニック分析推計値

F 6.812

p 0.00

Adj R2 0.641

分散分析の自由度 124

n 180

20 時点ダミーの推計値は品質調整済み価格の推移を表すため、コモディティ化に陥っているかを判断

する指標となる。 21 分析結果では時点ダミーは略記で示した。例えば、20063Q は 2006 年第 3 四半期を示している。

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

17

品質属性が与える影響

β t

(定数) 1.798**

グラフィック処理性能

(液晶/CPU コア/ROM/RAM) 0.500 3.356***

大待受時間 -0.183 -2.399**

重量 0.089 0.816

メインカメラ画素数 0.106 0.966

物理キーボード -0.087 -0.842

TFT 液晶以外 0.154 1.880**

3D 0.060 0.968

次世代高速通信 0.123 1.564

Bluetooth -0.343 -3.025***

テザリング -0.044 -0.539

撮影用フラッシュ 0.073 1.050

防水機能 -0.183 -2.074**

おサイフケータイ 0.177 1.735*

ワンセグ 0.157 1.879*

展開色数 -0.720 -1.183

メーカー・キャリアダミーの影響

β t

Apple 0.034 0.432

シャープ 0.149 1.223

富士通東芝 0.090 0.963

サムスン -0.057 -0.675

Sony 0.079 1.017

京セラ 0.027 0.395

HTC 0.177 1.768*

Huawei -0.053 -0.761

NEC カシオ 0.176 2.211**

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望月一弘

18

パナソニック 0.124 1.842*

LG+パンテック 0.115 1.558

Research in Motion 0.024 0.277

au by KDDI -0.135 -1.022

NTT ドコモ -0.453 -3.170***

SoftBank -0.123 -0.947

WILLCOM 0.115 0.881

イー・モバイル -0.072 -0.737

時点ダミーの影響

β t

20063Q -0.018 -0.276

20064Q 0.006 0.088

20073Q 0.006 0.097

20081Q 0.169 2.195**

20082Q 0.096 1.458

20083Q 0.373 3.285***

20084Q 0.414 2.747***

20091Q 0.250 3.113***

20092Q 0.294 3.180***

20093Q 0.193 2.530**

20094Q 0.275 2.961***

20101Q 0.155 1.895*

20102Q 0.139 1.105

20103Q 0.114 1.148

20104Q 0.418 1.960*

20111Q 0.383 2.073**

20112Q 0.524 2.392**

20113Q 0.631 2.624***

20114Q 0.640 2.158**

20121Q 0.751 2.292**

20122Q 0.387 2.107**

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

19

20123Q 0.721 2.292**

20124Q 0.452 1.903*

注) ***:1%水準で有意、**:5%水準で有意、*:10%水準で有意

5-1 結果の解釈

調整済み決定係数が 0.641 であったため、本モデルはスマートフォンの価格の 64.1%を説

明できるものであるが、モデルにあらわれない 35.9%に相当する部分については、今回の分

析に組み込むことができず、ヘドニック・アプローチによる分析では推計が極めて困難な「デ

ザイン性」、「質感」、といった消費者が主観的に感じる価値である「意味的価値22」といった

ものが含まれていると考えられる。

品質属性については、グラフィック処理性能 (+) 、 大待受時間 (-)、TFT 液晶以外 (+)、

Bluetooth (-) 、防水機能 (-)、おサイフケータイ (+)、ワンセグ (+) が有意となった。「グラ

フィック処理性能」、「TFT 液晶以外」が有意になったことから、マルチメディアに特化した

属性の性能が高ければ高いほど、価格に有意な正の影響を与えていることがわかった。これ

は、藤原 (2005) が指摘していた携帯電話端末のマルチメディア化傾向を裏付ける結果とな

った。携帯電話のグラフィックやマルチメディアに関する持続的な処理性能のイノベーショ

ンは、価格に正の影響を与えると言える。よって、仮説 1 は採択されるといえる。

一方で、 大待受時間は価格に負の影響を与えていた。 大待受時間は、機能数が多い端

末、グラフィック処理性能に優れている端末ほど、バッテリーを消費し、 大待受時間が短

くなる傾向にある。よって、 大待受時間が短いということは、高機能な端末やマルチメデ

ィアに特化した属性を消費者がより重視しているということの裏返しであるともいえる。消

費者は待受時間よりも、多機能であったり処理速度が速い端末であることの方が重要である

と判断していると考えられる。

おサイフケータイ、ワンセグ、Bluetooth といったフィーチャーフォンに搭載され、スマー

トフォンにも搭載されている属性については有意な結果となった。スマートフォン市場にお

いてもフィーチャーフォンに搭載されてきた機能を引き継ぐことが有益であると示唆され

る。一方で、Bluetooth がマイナスの影響を与えている。価格にマイナスの影響を与えるとい

うことは理解しがたいが、端末搭載率を考慮すると、おサイフケータイ、ワンセグが全体の

5 割ほどの搭載率であったが、Bluetooth は 8 割以上の端末に搭載されていた。つまり、フィ

22 延岡 (2010) は、顧客が商品に対して主観的に意味づけすることによって生まれる価値のことを

「意味的価値」と定義し、客観的に価値基準が定まった機能的な評価によって決まる「機能的価値」

と対比させている。

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望月一弘

20

ーチャーフォンから機能をいたずらに引き継ぐのではなく、市場が求めている機能を見極め

て製品に搭載し、標準化された機能については搭載すべきか否かを考慮することが求められ

る。

一方で、重量、メインカメラ画素数、物理キーボード、3D、次世代高速通信、テザリン

グ、撮影フラッシュ、は非有意となった。メインカメラ画素数、撮影フラッシュは、マルチ

メディア化に反する結果であるが、カメラについての性能向上が頭打ちになっている可能性

が考えられる。事実、メインカメラ画素数は 20124Q 時点において、平均 1,000 万画素を超

えているため、一般的なデジタルカメラの平均的な画素数と大差ないレベルであるといえる。

3D、次世代高速通信、テザリングについては近年になって搭載されるようになった 新機

能であるが、非有意という結果になった。これらの機能が搭載されたのは近年であるため、

消費者が現在時点では重視していないということが理由として考えられる23。

つづいて、メーカーとキャリアの影響を考察する。分析の結果、HTC (+) 、NEC カシオ (+)、

パナソニック (+) 、NTT ドコモ (-) が有意な結果となった。有意な変数が少なかったため、

スマートフォン市場においては端末のメーカーがどこであるか、キャリアがどこであるかは

あまり価格に影響を与えていないことが示唆される。メーカー、キャリアの影響が大きくな

いということは、メーカーやキャリアが提供する補完財があまり効果的でないことや、消費

者が製品選択時にメーカーではなく「属性」を重視して購入しているということを示唆する。

今後、海外などからの新規参入があった際には、品質面の条件さえ合えば、日本製を選ぶ特

別な理由がないということであるため、ブランド面で差別化を図っていくことよりも、機能

面で差別化を図っていくことが重要であると示唆される。

時点ダミーについては、ほとんどの時点において正の影響を与えていることがわかった。

時点ダミーはヘドニック物価指数 (品質調整済み価格) を示す変数であるため、属性の変動

を統制しても、価格が下落していると結論づけることができない結果であった。コモディテ

ィ化をヘドニック・アプローチにより実証している研究ではいずれも、コモディティ化に陥

っている財の場合は負の符号を示すことから、他のデジタル家電産業とは異なり、価格下落

の問題は生じていないと結論づけることができる。しかしながら、多重共線性を示す VIF が

10 を超える時点もいくつかあったため、さらなる分析の精緻化が必要であろう。

以上の分析結果により、マルチメディア化に関する仮説 1、コモディティ化の実証に関す

る仮説 2 はともに支持される結果となった。

23 図表 14 のモデルの中には有意となり、価格に正の影響を与えているモデルもある。

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

21

6. 結論

本論の知見は、①スマートフォン価格の 4 割は消費者が主観で判断を下す「意味的価値」

が含まれている可能性があること、②マルチメディア化と処理速度の持続的なイノベーショ

ンは価格に正の影響を与えること、③フィーチャーフォンに搭載されていた機能は概ね価格

に正の影響を与えるが、場合によっては価格にマイナスの影響を与えることがあること、④

ブランド・キャリアは価格にほとんど影響を与えないこと、⑤スマートフォン端末市場にお

いては価格低下が起こりにくいことが実証されたこと、の 5 点である。

以上の結果から、今後の端末開発において重要となることは、性能向上の持続的イノベー

ションには引き続き力点をおいていくべきであろうが、ある機能を搭載するか否か、という

場合には慎重な判断が求められる。場合によっては思い切って機能を省いてみることも重要

となる。また、ブランドやキャリアの影響がほとんどないため、現在日本の市場に存在しな

いプレイヤーの参入によって、市場での勢力図が今後も大きく変動することが十分に考えら

れる。事実、米国の Apple や韓国勢の参入は日本の携帯電話端末市場の市場シェアの変動に

大きな影響を与えたり、SoftBank の新規参入は、NTT ドコモや au by KDDI から顧客が

SoftBank へ多数流出するといった、新規参入者の市場参入の成功によって「ブランドやキャ

リアの影響がほとんどない」ということを物語っている。このような、「いまだ見えぬ外的」

から身を守るためには、機能面での差別化はもちろんのこと、キャリア内やメーカー内で顧

客を囲い込む戦略が重要であると示唆される。実際、キャリアはサービス面で、メーカーは

補完財の充実などを通じて顧客を囲い込む取り組みを行っているが、この戦略の有効性は実

証されたので今後も継続していくことが重要であるといえる。

本研究は、先行研究が扱ってこなかったスマートフォンについてヘドニック・アプローチ

を用いて分析を行った初の試みであった。今後の研究課題として、より正確な分析結果を求

めるためにもデータベースのさらなる精緻化が求められる。そのためには、サンプルサイズ

を増やすことが重要であるが、現在までに発売されてきた端末数を鑑みると、自ずと制約が

生じてしまう。そのため、今後も定期的に分析を重ねて行く必要があると考えられる。ある

程度のサンプルの蓄積があれば、先行研究にて用いられている近接 2 期推定などを行うこと

ができ、より精緻な分析が可能になるだろう。しかしながら、スマートフォンを対象とした

実証研究は筆者の知りうる限りでは存在せず、先駆的な研究として有為なものであるといえ

る。

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望月一弘

22

補論 フィーチャーフォンの推計

○変数の選択と記述統計量 (フィーチャーフォン)

フィーチャーフォンの変数の選択にあたっては、スマートフォンの場合と同様の基準によ

って変数を選択したが、選択可能な変数がスマートフォンほど多くなかったため、品質属性

に関する変数の選択においてはステップワイズ法を行うことで機械的に変数を選択した。採

用された変数は図表 12 に示される24。

図表 12 採用された説明変数

説明変数 (単位) 平均 標準偏差

液晶サイズ (インチ) 2.905 0.385

タッチパネル (ダミー変数) - -

Wi-Fi (ダミー変数) - -

指紋認証 (ダミー変数) - -

パケット通信速度 (Kbps) 26.077 32.445

GPS - -

ワンセグ - -

2007 - -

2008 - -

2009 - -

2010 - -

au by KDDI - -

SoftBank - -

○フィーチャーフォンの分析結果

フィーチャーフォンのヘドニック分析を行い、各属性が価格に与える影響を推計した結果、

図表 13 に示される結果となった。

F 検定の結果、F 値は 78.372、p 値は 0.000 であったので、1%水準で有意であった。これ

より、算出されたモデルには意味があると判断できる。また、このモデルの自由度調整済み

決定係数は 0.702 であったので、このモデルは従属変数の変動のうち、70.1%を説明できて

いる。

24 価格 (非説明変数) の平均は 41922.56、標準偏差は 25281.51 であった。

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スマートフォンの品質が価格に与える影響

23

図表 13 ヘドニック分析推計値

F 78.372

p 0.000

Adj R2 0.702

分散分析の自由度 415

n 429

β t

(定数) -3.661***

液晶サイズ 0.269 6.601***

タッチパネル 0.079 2.414**

Wi-Fi 0.153 4.655***

指紋認証有無 -0.105 -3.654***

パケット通信速度 -0.070 -2.029**

GPS 0.141 4.287***

ワンセグ 0.125 3.493***

2007 -0.222 -5.864***

2008 0.285 7.692***

2009 0.203 5.262***

2010 0.113 2.996***

au by KDDI -0.124 -2.915***

SoftBank 0.293 7.153***

注) ***:1%水準で有意

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��14�'�,��D`[N

β t β t β t β t�<G� 21.112*** 6.965*** 4.860*** 3.130***

�*"��6VB\ 0.729 10.464*** 0.453 3.643*** 0.427 2.813*** 0.348 2.741***J;A8Hf -0.406 -6.576*** -0.356 -5.481*** -0.283 -3.779*** -0.272 -4.291***cd 0.197 2.175** 0.216 2.060** 0.253 2.754***

&�. &*YZG 0.069 0.652 0.116 0.962 0.134 1.317UV�0$0� -0.120 -1.648 -0.095 -1.275 -0.158 -2.229**

TFTSI4: 0.092 1.512 0.123 1.450 0.154 2.606**3D 0.191 3.348*** 0.186 3.031*** 0.135 2.079** 0.150 2.558**

P13hba5 0.145 2.003** 0.168 2.063** 0.156 2.317**Bluetooth -0.323 -4.695*** -0.371 -4.175*** -0.331 -3.566*** -0.346 -3.129***��+.� -0.202 -3.150*** -0.178 -2.499** -0.157 -2.121** -0.178 -2.652***

E@W"*��) 0.113 1.847* 0.095 1.399 0.109 1.834*gQO\ -0.005 -0.058 -0.075 -0.814 -0.064 -0.808

���"�0�� 0.265 4.196*** 0.224 2.218** 0.199 1.873* 0.240 2.531**-.�� 0.099 1.185 0.194 2.151** 0.056 0.710>e^G -0.080 -1.293 -0.054 -0.825 -0.046 -0.781

Apple 0.095 1.165�(0# -0.003 -0.021=9aL_ -0.037 -0.399�%�. -0.093 -1.093

Sony -0.032 -0.4122�* 0.010 0.141HTC 0.192 2.181**

Huawei 0.002 0.026NEC �� 0.049 0.595!����� 0.075 1.037

LG+!.��� -0.029 -0.360Research in Motion -0.068 -0.863

au by KDDINTT��'

SoftBankWILLCOM

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20063Q20064Q20073Q20081Q20082Q20083Q20084Q20091Q20092Q20093Q20094Q20101Q20102Q20103Q20104Q20111Q20112Q20113Q20114Q20121Q20122Q20123Q20124Q

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Adj R2

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17.610 11.840 7.652 11.462

M1 M2 M3 M4

0.454 0.476 0.501 0.5510.000 0.000 0.000 0.000

R��***:1%QT�KC�**:5%QT�KC�*:10%QT�KC

180 180 180 180173 164 152 158

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β t β t β t β t β t2.305** 2.076** 1.826* 2.088** 1.798*

0.357 2.644*** 0.328 2.139** 0.449 2.825*** 0.405 2.811*** 0.500 3.356***-0.284 -4.233*** -0.216 -2.928*** -0.245 -3.186*** -0.184 -2.592** -0.183 -2.399**0.241 2.436** 0.259 2.462** 0.207 1.857* 0.159 1.573 0.089 0.8160.146 1.427 0.170 1.449 0.135 1.152 0.134 1.216 0.106 0.966-0.113 -1.118 -0.126 -1.703* -0.044 -0.399 -0.180 -2.562** -0.087 -0.8420.168 2.714*** 0.164 1.981** 0.227 2.648*** 0.109 1.373 0.154 1.880*0.145 2.377** 0.106 1.692* 0.088 1.386 0.076 1.251 0.060 0.9680.164 2.299** 0.168 2.184** 0.139 1.710* 0.123 1.652 0.123 1.564-0.288 -2.647*** -0.374 -3.316*** -0.342 -2.847*** -0.353 -3.290*** -0.343 -3.025***-0.186 -2.751*** -0.162 -2.276** -0.176 -2.484** -0.033 -0.417 -0.044 -0.5390.085 1.369 0.122 1.787* 0.083 1.175 0.078 1.157 0.073 1.050-0.063 -0.767 -0.178 -1.922* -0.182 -1.943* -0.191 -2.191** -0.183 -2.074**0.184 1.839* 0.172 1.708* 0.134 1.279 0.215 2.192** 0.177 1.735*0.114 1.358 0.108 1.231 0.161 1.806* 0.113 1.377 0.157 1.879*-0.055 -0.929 -0.029 -0.464 -0.036 -0.564 -0.066 -1.114 -0.072 -1.183

0.050 0.639 0.020 0.246 0.064 0.871 0.034 0.4320.109 0.902 0.098 0.782 0.168 1.402 0.149 1.2230.051 0.557 0.055 0.566 0.120 1.347 0.090 0.963-0.088 -1.070 -0.134 -1.558 -0.002 -0.030 -0.057 -0.675-0.016 -0.211 0.024 0.305 0.073 0.973 0.079 1.0170.040 0.576 0.056 0.798 0.029 0.437 0.027 0.3950.145 1.544 0.245 2.305** 0.175 1.956* 0.177 1.768*-0.012 -0.183 -0.009 -0.138 -0.051 -0.728 -0.053 -0.7610.108 1.363 0.115 1.398 0.192 2.491** 0.176 2.211**0.108 1.577 0.102 1.448 0.146 2.210** 0.124 1.842*0.038 0.504 0.040 0.536 0.125 1.678* 0.115 1.558-0.064 -0.836 -0.038 -0.415 0.047 0.621 0.024 0.277

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7.044 7.878 6.040

M5 M6

0.585

6.8120.000

M9M7 M8

180

8.6680.000 0.000 0.000 0.000

1461410.562 0.559

180

0.619 0.641

180 180

���***:1%������**:5%������*:10%�����

129 141 124180

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中央大学商学部久保知一研究室第 5 期卒業論文

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