セレンナノワイヤを 用いた省電力 室温動作型ガスセンサー - …...t.someya et...

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1 セレンナノワイヤを 用いた省電力 室温動作型ガスセンサー 岡山理科大学 工学部 電気電子システム学科 教授 秋山宜生

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セレンナノワイヤを 用いた省電力

室温動作型ガスセンサー

岡山理科大学 工学部

電気電子システム学科

教授 秋山宜生

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アプリケーション 一般的なガスセンサの用途(これまで)

(1)爆発性ガス・揮発性有機化合物(VOC) (2)排気ガス

(3)呼気アルコールの検出

エタノール検出

ベンゼン、トルエン、ホルムアルデヒド等の検出

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アプリケーション(最近の注目)センサの小型化・高性能化に伴う新分野

(4) 病気診断、ガンなどの非接触検出・アセトン---糖尿病、肥満

・アセトアルデヒド------飲酒、食道がん、咽頭ガン、シックハウス症候群

(5) 災害ロボット、宇宙探査用微小センサ人体ガス検出ヒーター不要--- 微小電力動作可能

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良く用いられる物質:酸化スズ、酸化亜鉛系

1. PN接合型ガスセンサ

・P型半導体とN型半導体の接合型

(ZnO/CuO)

2. 金属酸化物焼結型センサ(ex.新コスモス)

・吸着酸素とガスとの酸化反応による

伝導度の変化を利用 (ex. SnO2 、ZnO)

高温(400℃)に保つ必要有り

<< 酸素吸着を容易(感度向上)のため>>

従来技術1-代表的な有機ガスセンサとその構造-

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P型半導体

N型半導体

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従来技術の問題点-有機ガスセンサ-

PN接合型・金属酸化物焼結型ガスセンサ

(1) PN接合型 : P型とN型の半導体が必要

・半導体の組み合わせ方による感度のばらつき発生

・コストおよび製造工程の複雑さ

(2) バルク結晶:検出感度の確保には、ある程度の大きさが必要

・センサ部のコンパクト化が不可能

・ガス検知応答性に欠ける

共通の問題点:

ヒーターによる高温(400℃)の検出動作が必要

・室温安定性に欠ける(感度向上に必要)

・多くの消費電力を必要

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ナノワイヤー ・ ナノチューブの実用化

ガスセンサが注目されている

表面積の増大

半導体の性質を利用

セレン ナノワイヤーのSEM画像

L.Valentini et al. Diamond Relat.,13,1301 (2004)P.Candeloro et al. Technol. B 23, 2784 (2005)

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(3) カーボンナノチューブ型センサ

ナノ材料による有機ガスセンサの問題点

(3.1) アルコールの検出できる種類が少ない。

・アルコールの炭素数が

増えると 検出感度は減少

T.Someya et al. Nano Letters 3, 877 (2003)

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(3.2) ヒーターによる高温の検出動作(165℃)必要

・空気中では、ガス反応後の回復に長時間を要する

リカバーに必要

・酸素と湿度の影響を受けないようにするため

(3.3)大掛かりで複雑な製造装置が必要T.Someya et al. Nano Letters 3, 877 (2003)

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本発明の概要1-有機ガスセンサの基本構造-

■ガスセンサの電流-電圧特性

①有機ガスの種類判別能力を有し、②室温動作、③安価でコンパクト なガス センサおよびそのためのガス感受性材料、を提供する。

・室温下

■ガスセンサの構造

1

10

100

1000

I (A

)

0.1 1 10V (V)

SCLCOhmicIV 1.8

IV

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本発明の概要2-微結晶セレンの製造プロセス-

(1)アモルファスセレン

(3)有機溶媒との接触 (ex. 室温х10日間)

(4)微結晶セレン(六方晶系) (4)微結晶セレン(単斜晶系)

(針状。繊維状:セレンナノワイヤ) (粒状)

溶媒の比誘電率ε≧4.0 (アセトン、ピリジン等)

溶媒の比誘電率ε<4.0 (ベンゼン、トルエン等)

(a)

(b) (c)

■ 製造プロセスと形態

本発明のポイント1

(2)微粉末化 (粒径:20~30μm)

平均径:

約258nmφ平均径: 10μm

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(a)

(b)

(c)

アモルファスセレン

微結晶セレン(六方晶系)

微結晶セレン(単射晶系)

微結晶セレンの形状・サイズ等 は、①有機溶媒の種類、②有機 溶媒への接触の仕方、③作業 環境、等によって制御できる。

本発明の概要3-微結晶セレンの結晶構造とモルフォロジー-

セレンナノワイヤ

アモルファス構造と単射晶構造が混在

本発明のポイント1

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本発明の概要4-ガスセンサの基本動作-

■ガスセンサの基本動作(電流値検出)■ガスセンサの基本動作測定系

・微結晶セレンとして、六方晶系(セレンナノワ イヤ)を用いた場合

Gas導入

Gasストップ

・室温

・導入ガス: Ethanol gas

カーボンテープ

微結晶セレン

電極

電極(銅板)

ガス検知部

ガスセンサエポキシ樹脂基板

エポキシ樹脂基板

電流値測定部

金薄膜

銅板

カーボンテープ

微結晶セレン

電極

電極(銅板)

ガス検知部

ガスセンサエポキシ樹脂基板

エポキシ樹脂基板

電流値測定部

金薄膜

銅板

Ethanol含有空気

(b)(b)

・右上図より、有機ガスとの接触により、速やかに抵抗上昇して電流値が減少することがわかる。

素早い応答性、回復性、再現性がある

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I0 = 2πr2JSCImin = 2π(r -Δr)2JSC.

メカニズム-有機ガス吸着による電流値減少-

Se ナノワイヤ (p type)キャリア(正孔)

有機(電子供与性)ガスが 接触

注入電子

■ 有機ガス吸着による電流変化

Se ナノワイヤの半径をr、 I0 を初期電流値、 Imin を最 小電流値、JSC を空間電荷制限電流領域での電流密度 とすると、センサ応答Sは、

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・注入電子が正孔と結合することで、Seナノワイヤの半径がΔr分だけ 減少することで、Seナノワイヤの表面積が減少し、電流値が減少する。

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25

20

15

10

5

I (

80006000400020000Time (s)

1butanolethanol gas on gas on

gas off

gas off

00

min0

II

IIIS

センサ応答 S

I0

IImin

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本発明の概要5-セレン結晶構造の違いとセンサ応答-

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I0 : 有機ガス接触前の電流値、 I: 有機ガス接触による電流値変化量

(a) 有機ガス: アセトン (b) 有機ガス: ベンゼン

(1)微結晶セレン (六方晶系)

(2)微結晶セレン (単斜晶系)

(3)アモルファス セレン

・アモルファスセレンを使用した場合に比べ、微結晶性セレンの方がセンサの応答速度大。

Gas導入

Gasストップ

・印加電圧V=5V

・室温

・印加電圧V=5V

・室温

性能良

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本発明の概要6- 有機溶媒種と微結晶セレンの形状-

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本発明の概要7- 微結晶セレンの寸法とセンサ応答-

■ガスセンサ動作

・披検(有機)ガス:

ベンゼン220ppm

(a)

(b)

(c)

・印加電圧V=5V

・室温

・セレンナノワイヤの径が細くなるに つれて、有機ガスに対する動作速度 (センサ感度)も大。

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効果の大きさ2- 有機ガスの比誘電率とセンサ感度-

■ 有機ガスの比誘電率εとセンサ感度

・微結晶セレン(六方晶系)

・印加電圧V=5V

・室温下

・有機ガス種類の比誘電率の違いで、センサ感度が異なる

0.8

0.6

0.4

0.2

0.0

S403020100

r

piperidine

methanolethanol

acetonediethyl ether

toluenebenzene

cyclohexane

pyridine

expt.

A0.75 2.15

formaldehyde1butanol

■ シミュレーション結果をプロット

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第一級アルコール CnH2n+1OH

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効果の大きさ1- 有機ガス濃度とセンサ感度-

・有機溶媒:(R)-(+)-2-ヘプタノール

・微結晶セレン(六方晶系):D=233nmφ

・微結晶セレン(六方晶系)

・印加電圧V=5V

・室温下

・有機溶媒:(R)-(+)-2-ヘプタノール

・微結晶セレン(六方晶系):D=233nmφ

・微結晶セレン(六方晶系)

・印加電圧V=5V

・室温下

Assumption of Freundlich isotherm

■エタノールガス濃度とセンサ感度 ■他の有機ガス濃度とセンサ感度

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メタノールガスに対するセンサ応答の再現性

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実用化に向けた課題

*単体型ガスセンサの欠点:

同じセンサ強度のガス種を

特定できない!

例) アセトンとベンゼン

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解決方法: 新たなセンサの開発

センサの大きさ 数ミリ角 でありながらガス種の特定&多成分分析能力をもつ(特許出願中)

ガス種特有の時間差を利用したガス分析

アセトンとベンゼンの混合ガスの分析例

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想定される業界分析能力を有するセンサの将来性

1.持ち運び可能なガス分析機器(室温動作、小型軽量、省エネタイプ)

医療分野、 化学分析分野

2. ガスクロマトグラフィーに代わる分析機器の可能性

3. ロボットなどへの搭載

4. 宇宙技術への可能性

ガス検知器メーカー簡易医療器具メーカーロボットメーカー

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企業への期待

分析能力も備わったセンサの高機能化 により、実用化としての付加価値が増し たことにより、ターゲットガスへ向け、企 業との取組が不可欠であろう。

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本技術に関する知的財産権• 発明の名称 : 微結晶セレンからなるガス感受性

材料及びそれを用いたガスセンサ

• 出願番号 : PCT/JP2010/069614JST支援による本出願 本年5月

(日) 特願2011-539381(米) 13-508292(独) 11 2010 004 279.9(韓) 10-2012-7014191

• 出願人 : 学校法人加計学園

• 発明者 : 秋山宜生、大谷槻男

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お問い合わせ先

岡山理科大学

学外連携推進室

産学連携コーディネーター 安井茂男

横溝精一

TEL 086-256 - 9730FAX 086-256 - 9732e-mail renkei@office.ous.ac.jp