マイクロフムィルムの 知られざる特性と情報の保存 ·...

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1 マイクロフムィルムの 知られざる特性と情報の保存 元富士フイルム 野中 ーデジタルとの共存を目指してー フィルム はじめに 現在のデジタルの時代にフィルムはいかに 画像性能が良い、保存性に優れている フィルムを見直してみましょう マイクロフィルムを中心として話を進めます フィルム システム依存性 マイグレーション (世代管理) セキュリティ対策 管理経費 デジタル媒体は アナログ媒体は システム独立性 自己完結型 (一貫性) 互換性 長期保存性 将来的にも「長期・安全保存」と「利用環境」を保証するメディア 媒体やデータを管理する システム(ハード、ソフ ト)が無くなったらどう しますか!! 媒体自体の寿命やデータ形 式の違いで、次期システム のデータ形式や媒体に変換 する必要があります。 不正アクセスやウイル ス・ワームよるデータの 漏洩や破壊の為の対策が 必要。 これらの対策にはお 金がかかります。 時間とともに「不確実性・リスク・コスト」が増大するメディア 「デジタル媒体」と「アナログ媒体」の保存特性の比較

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Page 1: マイクロフムィルムの 知られざる特性と情報の保存 · ーデジタルとの共存を目指してー フィルム はじめに 現在のデジタルの時代にフィルムはいかに

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マイクロフムィルムの知られざる特性と情報の保存

元富士フイルム野中 治

ーデジタルとの共存を目指してー

フィルム

はじめに

■現在のデジタルの時代にフィルムはいかに

■画像性能が良い、保存性に優れている

フィルムを見直してみましょう

■マイクロフィルムを中心として話を進めます

フィルム

システム依存性マイグレーション(世代管理)

セキュリティ対策 管理経費

デジタル媒体は

アナログ媒体は

システム独立性自己完結型(一貫性)

互換性 長期保存性

将来的にも「長期・安全保存」と「利用環境」を保証するメディア

媒体やデータを管理するシステム(ハード、ソフト)が無くなったらどう

しますか!!

媒体自体の寿命やデータ形式の違いで、次期システムのデータ形式や媒体に変換

する必要があります。

不正アクセスやウイルス・ワームよるデータの漏洩や破壊の為の対策が

必要。

これらの対策にはお金がかかります。

時間とともに「不確実性・リスク・コスト」が増大するメディア

「デジタル媒体」と「アナログ媒体」の保存特性の比較

Page 2: マイクロフムィルムの 知られざる特性と情報の保存 · ーデジタルとの共存を目指してー フィルム はじめに 現在のデジタルの時代にフィルムはいかに

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フィルムの種類

■マイクロフィルム■ミニポジフィルム■ジアゾフィルム■ベシキュラーフィルム

■一般白黒フィルム■カラーネガフィルム■カラーリバーサルフィルム■レントゲンフィルム■映画用フィルム

フィルム

マイクロフィルム

主に文書撮影用として使われる

一般撮影用フィルムより解像力が高い

フィルムのサイズ一杯に撮影するため

フィルム送り用の穴(パーフォレーション)

が無い⇒画像サイズを広く使いたいため

フィルム

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ジアゾフィルム

デュープ用フィルム

マイクロフィルムのコピーに使われる

白黒銀塩フィルムと違い画像は染料

アンモニアガス現像

銀塩フィルムと比較して安価

光に弱く、強く当てると画像消失

フィルム

ベシキュラーフィルム

デュープ用フィルム

マイクロフィルムのコピーに使われる

白黒銀塩フィルムと違い画像は泡

⇒凹凸による不透明さで文字判断

熱現像

銀塩フィルムと比較して安価

熱に弱く、熱により画像消失の可能性

フィルム

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フィルムの作り方

■フィルムはどうやってできるの

■乳剤番号

■フィルムの表裏の区別

フィルム

フィルムの製造

塗布機 幅 110cm~120cm

長さ 1200m~3000m

スリット 35mm、16mmの幅

加工 30.5m、61mの長さ

⇒カールが問題

フィルム

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乳剤番号・スリット番号

フィルムのケース、フィルムの先頭に記載

615-016

乳剤番号ースリット番号

フィルム

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フィルムの中身は

■フィルムの組成

■各層の役割は

■ベースの種類は

フィルム

フィルムの組成フィルム

■保護層

■感光乳剤層

■ハレーション防止層

■安全性ベース

■帯電防止層

フィルム

各層の役割

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保護層

フィルムにキズが付かないように保護膜

指紋等ゴミが付きにくいようにする

フィルム

感光乳剤層

ハロゲン化銀粒子をゼラチンに分散

⇒ハロゲン化銀は乳剤に使用される

感光材料

露光されると目に見えない潜像になる

現像処理すると銀画像になる

フィルム

ゼラチン

乳剤として使用される物質

ハロゲン化銀の粒子はゼラチンのなかに

拡散して浮いている

骨、獣皮等などを原料とする動物性

たんぱく質から成る

ゼリーなどの食用ゼラチンと基本的には

同じだが純度が高い

フィルム

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乳剤の厚み

マイクロフィルム 4μ(ミクロン)

一般白黒フィルム 8~9μカラーフィルム 14~15μレントゲンフィルム 20μ以上

⇒高解像力

⇒銀回収

フィルム

ハレーション防止層

感光乳剤層とべースの間の染料の層

ベースからの光の反射を防止

フィルム

フィルムの組成フィルム

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ベースの変遷

1889 ナイトレートベース (可燃性)

1954 TACベース(難燃性⇒Safety film)1958 NCベースからTACベースへ全面変更

1973 PETベース(TAC/PET併用)

1991 TACベースの劣化(加水分解解明)

1993 マイクロフィルムはPETベースへ

全面変更

(富士フイルムデータ参照)

フィルム

ナイトレートベース

ニトロセルロースのベース

映画用フィルムとして使用

非常に燃えやすい⇒映画館の火事

経年変化で黄変し、大きく収縮する

バインダーのゼラチンが剝がれやすい

消防法第5類第1種 指定数量 10Kg

フィルム

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トリアセテートベース

NCベース(可燃性)に代わって登場

TACベース(難燃性)

高湿度、経年変化(30年以上)で加水分解

⇒ビネガーシンドローム(酢酸臭)

フィルム

ポリエステルベース

ポリエチレンフタレート(PETベース)

無機質の薄い素材

寸法安定性が良い

⇒PETボトル

フィルム

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TACとPETベースの見分け方

TACベースは手で簡単にちぎれる

光を通して見ると

TACベースは黒っぽく見える

PETベースは明るく見える

TAC/PET判定器(ニチマイ製)

⇒明治期刊行図書

フィルム

帯電防止層

静電気で感光層に影響しないようにする

⇒静電気を溜めて徐々に除去する

適度な滑りにする

フィルム

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フィルムの組成フィルム

フィルムの表裏の区別

フィルムの画像側とベース側の区別

斜めに見て黒がにぶい方が画像で

画像が浮き上がって見える

斜めに見て黒く光っている側がベース

わかりにくい場合は折って見て比較

すると簡単に判別できる

フィルム

フィルムの画質は

■フィルムの現像処理は

■フィルムの解像力は

■フィルムの画質は

フィルム

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フィルムの現像処理

マイクロフィルム

カラーネガフィルム(C-41処理)

カラーリバーサルフィルム(E-6処理)

フィルム

マイクロフィルム現像

自動現像機 10分/100ft

⇒乳剤の厚みが薄いため高速処理

明室処理 フィルムの感度が低いため

ロールフィルム現像 長尺フィルム処理

フィルム

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C-41処理

カラーネガフィルム処理

発色現像

露光し潜像の部分にカプラー

漂白定着

ハロゲン化銀にし除去

フィルム

E-6処理

カラーリバーサルフィルム現像

第一現像 白黒現像 金属銀

第二露光 露光 潜像 カブリ現像

発色現像 カプラー

漂白定着 ハロゲン化銀にし除去

フィルム

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フィルムの組成フィルム

実技解像力比較

マイクロフィルム 180本/mm

カラーマイクロフィルム 120本/mm

カラーリバーサルフィルム 60本/mm

カラーネガフィルム 40本/mm

カラーペーパー 20本/mm

<参考>

デュープ 120本/mm⇒100本/mm

フィルム

実技解像力

解像力=本/mm

本=2a

a a

1本

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フィルムの保存は

■ベースの劣化

■バインダーの劣化

■フィルムの画像の劣化

フィルム

ベースの劣化

高温・高湿による影響

経年変化(30年以上)

TACベースの加水分解(酢酸臭)

ベースの収縮、ゼラチンを溶かし画像消失

⇒ビネガーシンドローム

PETベースの接着 高湿下において

フィルム

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フィルムキープウェル

湿度を一定に保ってくれる。

シリカゲルのような乾燥剤ではない

バインダーの劣化1839 支持体(銀板、紙などに直接画像作成)

1848 卵白

1851 コロジオン(湿板写真)

1871 ゼラチン

ゼラチンは湿度の影響を受けやすく、高湿で

は水を含み、低湿では水分を放出して寸法

変化が大きい。また高湿ではカビの発生があり重ねておくと接着を起こしやすい。低湿ではゼラチンの収縮でひび割れを起こしやすい。

湿度30~40%程度が非常に安定している。

フィルム

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画像の劣化

傷 : 取り扱い

カビ : 高湿での保存

接着 : 高湿での保存

ひび割れ: 極低湿での取り扱い

収縮: 経年変化、温湿度変化、ベースの劣化

TACベースの劣化: ベースの加水分解、変色

マイクロスコピックブレミッシュ: 酸化性ガス

銀鏡反応: 経年変化、高湿での保存

フィルム

マイクロスコピックブレミッシュ

AgX→露光・現像→Ag→酸化→Ag⊕

金属銀画像の局地的酸化によって発生

発生原因は高温、高湿、過酸化水素、コピー

マシンからのオゾン、二酸化窒素、油性塗料、

有機溶剤

赤あるいは黄色の微小な斑点

フィルム

フィルムAgガード

現像処理時に対応する

画像安定化変退色防止水滴ムラ防止

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画質比較 (A4サイズ比較)

カラーマイクロフィルム 1,500dpi 19,800万画素

デジタルカメラ 350dpi 1,078万画素

フォトCD 300dpi 792万画素

カラーペーパースキャナー 200dpi 352万画素

フィルムスキャナー 400dpi 1,408万画素

フィルム

アナログとデジタルの違い

デジタル化

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解 像 度

本/mm dpi

ドット

画 素 数 比 較

400 dpi 262 dpi

A4(8×11in)の画素数は

(dpi)2×(8×11)

(400×8)×(400×11)

1,408万画素 600万画素

デジカメ

まとめ

■フィルムは生き残れるの

■フィルムの周辺機材はどうなるの

■デジタルとの共存は

フィルム

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現在フィルムメーカーは1社のみ

カラーはカラーリバーサルフィルムのみ

マイクロフィルムも1品種にしぼられるか

特殊フィルムは生き残る

フィルム

フィルムは生き残れるの

フィルムの周辺機材は

マイクロカメラ、現像機は?

リーダー、リーダープリンターは?

フィルム

デジタルとの共存は

フィルム関係の周辺機材がなくなる

フィルムからデジタル化して利用する

保存用にフィルムを使う

⇒デジタルデータからフィルムへ

フィルム

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デジタルの問題点①

システム依存性(ハード・ソフト・メディア・OS・フォーマット)

コピーが容易(権利問題)

ITトラブル(過失・故意)

デジタルの問題点②

「保存性能」が劣る(致命的な宿命)

永久に「不完全」な技術(革新的な技術)

「目視コントロール」が出来ない(不可視性)

デジタル技術の「光と影」

ネットワーク性

再現性

検索性

改変容易性

長期・安全保存

題エントリー問

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デジタル フィルム+ = 活用プログラム

商用プログラム

保存プログラム

最先端技術(黎明期・開発途上)

ネットワークグループワーク

既存技術(成熟・完成領域)

スタンダロン

新しいアプリケーションの創出・提供

「デジタル フィルム ハイブリット システム」