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都市データ分析 第8回 課題書 2012年6月7日
ネットワーク分析
担当 鈴木 勉 (システム情報系)
TA 高森 賢司(システム情報工学研究科)
都市計画の分野では,空間をネットワークとして表現し,分析することが多い.そこで,この課題で
は,道路ネットワークデータを例として,地域施設までのアクセシビリティ評価を通して,ネットワー
クデータを用いた分析方法を修得する.
1.ネットワークデータの構造
都市分析で用いられるネットワークの代表的なものは道路や鉄道などの交通ネットワークであろう.
ネットワークは,ノード(点)とリンク(線)で構成される.空間情報の場合,ノードはその位置情報
(座標)という属性値を持ち,リンクは2つの端点の情報(座標またはノード番号)を持つ.しかし,
これらの情報だけでは,ネットワーク分析を行うためには不便であるので,通常は,以下のような構造
を与える.こうしたデータを「構造化されたデータ」と呼ぶ.これによって,ノートデータとリンクデ
ータの関連づけが行われ,相互参照が可能となる.
ノードデータ: リンクデータ:
ノードNo.,座標,接続するリンクNo. リンクNo.,始点ノード,終点ノード,属性
2.施設からの直線距離とネットワーク距離
距離にはいろいろな定義があるが,都市分析においては直線距離を用いることも多い.直線距離と道
路距離の間には巨視的には比例関係が成り立つことがわかっているので,それで十分な場合もある. しかし,厳密には道路や鉄道上の距離が必要となることもある.例えば,ある地点からある地点まで
行くのにどのくらい時間がかかるのかを考えると,実際に移動する際に通過する道路に沿った距離を計
測した方が正確である.加えて,道路や鉄道には階層構造があり,自動車を用いる際はその道路の種類
によっても速度が異なる.したがって,所要時間を算出したいときは,道路ネットワークを用いた距離
計測が重要となる. ここでは,つくば市の商業施設までの距離を道路ネットワークを用いて算出し,直線距離と比較して
みよう. 2.1 ファイルの準備
以下のファイルをHPよりダウンロードする.
http://www.risk.tsukuba.ac.jp/~tsutomu/public_html/Lec/FH41%20064%20Spatial%20Data%20Analysis%20Home%20Page.htm ・第8回課題書 (pdf形式) ・第8回課題回答用紙 (word形式) ・つくば市道路ネットワーク・商業施設GISデータ(GISdata_Tsukuba.zip)
そしてGISdata_Tsukuba.zipを解凍し,以下のファイルがあるか確認する. ・tsukuba.shp ・tatemono.shp ・mizu.shp ・zyouti.shp ・tsukubaroad.shp ・つくば市商業店舗.csv
ArcMapを開き,上記のshpファイルおよびcsvファイルを追加されているか確認する.
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2.2 主要道路の抽出
tsukubaroad.shpの属性テーブルを開き,「NAME」列で並びかえる.そして,「NAME」列に名
前のある行(国道・県道のように名称がある道路)を選択する.そして,tsukubaroadを右クリックし,
「データ」「データのエクスポート」を選び,選択フィーチャーに「tsukuba_mainroad」と名前を付
けてエクスポートする.
2.3 施設ポイントデータの作成
コンテンツのソースに別リスト を選択する.つくば市商業店舗.csvを右クリックし,「xyデータの
表示」を実行する.「X:fX」「Y:fY」を選択し,座標系として「GCS_JGD_2000(Geographic
Coordinate Systems→Asia→JGD2000)」を選択する.「つくば市商業施設.csv イベント」とい
うファイルが作成されるので,これを右クリックし,「データ」「データのエクスポート」を実行して
「tsukuba_shop」という名前で保存し,マップに追加する.「つくば市商業施設.csv イベント」は削
除する.
2.4 バッファリングによる施設からの直線距離を用いた等距離線図の作成
対象とする図形から等距離にある地点をつなげることによってできる図形を生成させることを「バッ
ファリング(buffering)」と呼ぶ.これを用いて商業施設からの等距離線を描く.
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まず,Toolbox の「解析ツール」「近接」「多重リングバッファ」を選択する.
入力フィーチャーを「tsukuba_shop」,出力フィーチャーを「Buffer」とし,距離には1から7まで
を入力,距離の単位を「Kilometers」とし実行する.
Bufferシェイプがマップに追加されるが,下のレイヤの地図が見えないので,レイヤのプロパティで
「表示」「透過表示」を選択し,透過度を50%程度に設定する.
これによって,施設間での距離が1km間隔(時速60km/hで1分かかる距離)で判別可能となる.
課題1:バッファリングにより,つくば市における商業施設からの等距離線図を作成し,その結果につ
いて考察せよ.地図には縮尺およびスケールバーを記載すること.
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2.5 ネットワークデータの構築
2.5.1 道路属性の追加
tsukubaroad.shpの属性テーブルを開き,新規フィールドの追加を行う,フィールドの名前を
「Meters」,タイプを「Double(倍制度型)」に設定する.同様に「Minutes」というフィールドも追加
する.こちらも種類を「Double(倍制度型)」に設定する.
Meter列に,ラインの長さを計算して結果を記入する.Meter列を選び,「ジオメトリ演算」で「長さ」
「メートル(m)」を選択して計算を行う.
次に,Minutes列にラインの通過時間を計算して記入する.Minutes列を選び,「フィールド演算」
でラインの長さ(m)「Meters」列とラインの制限速度(km/h)「sokudo」列を用いて,通過時間の計算
を行う.
2.5.2 ネットワークデータセットの構築
「カスタマイズ」の「エクステンション」を開き,「Network Analyst」にチェックが入っているこ
とを確認する.ArcCatalog を開き,tsukubaroadが入っているフォルダを指定する.
次に,tsukubaroadを選択し,「新規ネットワークデータセット」を選ぶ.ファイル名を
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「tsukubaroad_ND」とし,ターンソース,接続性,エベレーションは初期値のままにする.属性に関
しては「Meters」「Minutes」があり,使用タイプが「Cost」,単位が同じになっているか確認する.
ディレクションの設定も初期値のままとして, 後に完了を押し実行する.「今すぐ構築しますか?」
というウィンドウが表示されるので,「はい」を選択する.
同フォルダに「tsukubaroad_ND」が作成されたことを確認する.
2.6 ネットワーク分析によるネットワーク距離を用いた等距離線図の作成
「カスタマイズ」「ツールバー」「Network Analyst」でツールバーを表示する.表示されたら「Network
Analyst」「新規到達圏」を選択する.
そして, ボタンでNetwork Analystウィンドウを表示し,「施設」の「ロケーションの読み込み」
を選択し,「tsukuba_shop」を読み込む.その際,フィールドを「FID」でソートする.
解析の詳細な設定をするため,下図のように「到達圏プロパティ」を開く.そして,解析の設定タブ
で区切りとなる時間(デフォルトのブレーク値)をカンマ区切りで設定する(1,2,…).ここでは,2分
から10分まで2分間隔で設定する.また,ディレクション(移動方向)は「施設へ」を選択する.選択
したら「OK」とし,ツールバーから「解析の実行」を行う.解析には少し時間がかかるので,PCの無
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理な操作は行わないこと.
計算が終わると,以下のような結果が出力される.
結果が見づらい場合は,レイヤの「ポリゴン」のプロパティを開き,「シンボル」タブの「カラーラ
ンプ」を変更すれば色パターンが変更される.
課題2:つくば市における商業施設までの所要時間を表したものを作成し,その結果について考察せよ.
また,課題1と比較し,その結果の差について考察せよ.
3.アクセシビリティ
寄りの施設までの距離や時間は上述の作業から知ることができるが,施設の利便性を評価するには,
施設の規模や魅力,あるいは 寄りの施設以外の施設がどれくらいあるかなども考慮しなければならな
い.商業施設を例にすれば,購買機会の良し悪しを評価するためには,アクセシビリティの概念が重要
となる.重力モデルを用いたアクセシビリティは以下の式のように定義される.
(アクセシビリティ)=Σi(i の魅力度)/(i までの距離)α
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商業施設のアクセシビリティを考える場合,その商業施設の規模を考慮する必要がある.たとえば,
近所のコンビニエンスストアと大型ショッピングセンターを比較した場合,後者のほうが多くの人が利
用すると考えられるためである.そこで,商業施設の魅力度としては,売場床面積などがよく用いられ
る.
本課題では,この重力モデルを用いた商業施設のアクセシビリティ評価を行う.
3.1 短距離行列の計算
ある地点のアクセシビリティを評価するためには全ての施設までの 短距離を求める必要がある.そ
こで,アクセシビリティを計測する地点(ここでは町丁目とする)ごとに,目的地までの距離を 短距
離行列(ここでは「町丁目数」×「商業施設数」の数の距離行列となる)として作成する.
3.1.1 町丁目重心点の計算
まず,需要点となる各町丁目の重心点を作成する.
「tsukuba」の属性テーブルを開き,「エクスポート」を行う.このとき,名前を「重心」,ファイ
ルの種類を「dBASEテーブル」とする.マップに追加するか尋ねられるので,そのまま追加を行う.
次に,「重心」を右クリックし,「XYデータの表示」を行う.Xフィールドに「X_CODE」,Yフィ
ールドに「Y_CODE」を入れ,座標系は変更せずOKを押す.
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「重心 イベント」という点ができるので,「データ」「データのエクスポート」を選び,
「tsukuba_demand」という名前で保存する.
3.1.2 ODコスト・マトリックスの計算
ツールバーのNetwork Analystから「新規ODコスト マトリックス」を選択する.
Network Analystツールバーで,「起点」を右クリックし,「ロケーションの読み込み」を選択する.
読み込むシェイプファイルは「tsukuba_demand」である.並び替えを「FID」で行い,ロケーション
解析プロパティの「Name」列のフィールドを「MOJI」にしてOKをクリックする.
同様に,「終点」を右クリックし,「ロケーションの読み込み」を選択する.読み込むシェイプファ
イルは「tsukuba_shop」であり.並び替えを「FID」で行い,ロケーション解析プロパティの「Name」
列のフィールドを「施設名」にし,OKを押す.読み込みが完了したら,「ODコストマトリックス プ
ロパティ 」を選択し,「解析の設定」タブを選ぶ.その際,インピーダンスを「Meters(メートル)」
に,デフォルトのカットオフ値を「20000」にしてOKを押し,解析の実行 をクリックする.
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解析が終了するとラインが出力される.ラインの属性テーブルを開いて,エクスポートを選び,ファ
イル名を「ODMatrix.txt」,種類を「テキストファイル」としてエクスポートする.
完了したらマップには追加せず,ArcMapは 小化しておく.
3.2 重力モデルを用いたアクセシビリティ評価
次に,以下の式により各町丁目のアクセシビリティ評価を行う.
3.2.1 アクセシビリティの計算
Excelを起動し,先に作成したODMatrix.txtを開く.その際ファイルの種類を「テキストファイル」と
し,カンマ区切りで開く.
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ここに各施設の店舗面積の情報を加えていく.DestinationIDの順番は「つくば商業店舗.csv」の施設
の順番に一致しているので,それに合わせて面積のマッチングを行う.同時に, 初に用いた「つくば
商業店舗.csv」を開く.そこから「施設名」列と「店舗面積」列をコピーする.
ODMatrixのファイルに新規シートのB,C列にコピーした列を貼り付ける.A列にIDを1から順番に
加えて,以下のようなデータを作成する.
ODMatrixシートに戻り,D列のDestinationIDを元にG列に面積の情報を加える.G1を「Menseki」
とする,マッチングはVlookup関数を用いる.
検索値:マッチングする情報.ここではDestinationIDのD列
範囲:マッチングしたいデータが入っているテーブル全体を選択.ただし,マッチング対象が一番左の
列になるように選択する.ここでは「Sheet1!A:C」とする.
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列番号:マッチングしたいデータが入っているテーブルの中でほしい情報が左から何番目の列にあるか
を記述.ここでは「3」番目となる.
検索方法:完全に一致する値を検索するか近似値を含めた値を検索するかを選択.完全一致の「False」
とする.
距離をキロメートルに換算する.H1を「kirometer」とし,F列のメートルをキロメートル(1/1000)
にする.次にアクセシビリティを計算する.I1を「ACC」とし,「[面積]/[距離の二乗]」を計算する.
各ODのアクセシビリティが計算できたら,それを町丁
目で集計する.集計にはピボットテーブルを用いる.
C~I列を選択し,「挿入」タブの「ピボットテーブル」
を選び,そのままOKを押す.
右端のフィールドリストのうち,「OriginID」にチェックを入れる.リストの中の「ACC」を値の枠
にドラッグする.その後,「値フィールドの設定」を「合計」にする.
結果として,OriginIDごとにACCが集計される.これは,FIDに対応している.これを「tsukuba.shp」
に結合させ,各町丁目のアクセシビリティを評価する.
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ピボットテーブルで計算した結果をコピーし,新しいシートのA2に値で貼り付ける.A1には
「OriginID」,B1には「Total_ACC」と入力する.
ArcMapでこの後結合を行う「tsukuba」のFIDを見ると0から始まっており,OriginIDは1から始ま
っているため,番号を揃える必要がある.そのためB列に新しい行を挿入し,B1に「Origin_1」と入力
し,A列の「OriginID-1」を計算する.そしてそのシートをcsvで出力する.「ファイル」「名前を付け
て保存」で,ファイル名を「ACC.csv」ファイルの種類を「CSV(カンマ区切り)」として保存する.
メッセージが出るので,どちらも「はい」とする.
保存したらExcelを閉じる.このとき「ファイル」「名前を付けて保存」で,ファイル名を「ACC計
算.xlsx」,ファイルの種類を「Excelブック」として保存する.
3.2.2 アクセシビリティの計算結果と町丁目shpの結合
「ACC.csv」をArcMapに追加する。「tsukuba」を右クリックし,「属性の結合とリレート」「結
合」を選択する.
結合に利用するフィールドに「FID」,結合対象を「ACC.csv」,マッチングフィールドに「Origin_1」
を選択する.
「tsukuba」プロパティの「シンボル」タブを選び,「数値分類」「等級色」を選択する.そしてフ
ィールドの値を「Total_ACC」とする.もっと細分化したい場合は「分類」の数を増加する,カラーラ
ンプを変更する等を行う.完了すると以下のようなアクセシビリティの図ができる.
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課題3:つくば市で商業施設のアクセシビリティを図示し,その結果について考察せよ.また,課題2
の結果と比較し考察せよ.
余力のある人は以下の課題にも取り組むこと.
*課題4:つくば市で商業施設以外の施設(例えば病院や小学校など)の施設分布を用い,課題1,2と
同様に直線距離&所要時間の比較を行いその結果について考察せよ.
(参考)住所からXY座標を取得する方法
東京大学空間情報科学研究センターのCSVアドレスマッチングサービスを用いれば,表形式のデータ
に一括でXYデータを加えることができる.
・住所が入ったデータを「CSV(カンマ区切り)」で保存する.
・東京大学空間情報科学研究センターのCSVアドレスマッチングサービスのホームページを開く.
http://newspat.csis.u-tokyo.ac.jp/geocode-cgi/geocode.cgi?action=start ・住所が入ったデータを「CSV(カンマ区切り)」で保存する.
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・対象範囲として適切な座標系(茨城県街区レベル・世界測地系)を選択し,住所を含むカラム番号(何
列目か?)を入力する.
・出力ファイルのフォーマットとしては,csvフォーマットを選択する.参照…で先に保存したcsvファ
イルを選択し,「送信」で変換を実行する。変換されたファイルが送り返されてくるので,保存して終
了する.
・保存したcsvファイルのfX,fY列に座標が入っているので,ArcGISに取り込んで「xyデータの表示」,
座標系は「GCS_JGD_2000(Geographic Coordinate Systems→Asia→JGD2000)」を行えば
ポイントとして出力される.
課題10提出先
提出期限:2012年6月14日(水)17:00まで
提出先:システム情報エリア支援室レポートボックス