カイロプラクティックで治療した突発性難聴の一例※...2016/06/01  ·...

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日本カイロプラクティック徒手医学会誌Vol.1(2000) |症例報告: カイロプラクティックで治療した突発性難聴の一例※ 竹谷内宏明*’ Acasereportinidiopahticsuddendeafnessbychiropractictreatment HiroakiTAKEYACHI 概要 本報告書は突発性難聴と診断され、最終的には検査のみの通院で経過観察をされていた初診時9才8カ 月の女児に、カイロプラクティック治療を試みて聴力検査がどのような経過をたどったかを観察したも のである。 患者の頚椎に後方回施(サブラクセーション)を認めたため、最初は週に1回のアジャストメントを 行った結果、30回を過ぎた頃から改善がみられ始め、50回で聴力検査がほぼ正常範囲に回復した。 この一例を以ってカイロプラクティックが突発‘性難聴に有効であるというつもりはまったくないが、 身体障害者の認定を受けた患者の聴力がカイロプラクティックの治療がきっかけで回復したのは否定で きない事実である。 キーワード:カイロプラクティック、アジャストメント、サブラクセーション、突発性難聴 1.はじめに 1895年、,.Dパーマーがハーヴェイ・リラー ドの脊椎を矯正して、彼の聴力を回復させたことがカ イロプラクティック創始の契機になったことは、関係 者には周知の逸話である。けれども、その後、カイロ プラクティック療法によって難聴を回復させたという 報告は、筆者の知る限りはない。当然のことであるが 難聴はカイロプラクテイックの適応症ではない。しか しながら、難聴の患者の治療を一度は試みてみたいと 思ったカイロプラクティック関係者は著者だけではな いのではないか。 筆者はたまたま、この度、突発性難聴と診断された 患者を一定期間、カイロプラクティックで治療する機 会に恵まれ、経過を観察することができたので報告す る。 難聴は、外耳から中耳伝音系までの障害による伝音 性難聴と鯛牛およびそれより中枢側の障害による感音 性難聴、両者の混合性難聴そして心因'性難聴に分類さ れている。そして、伝音性難聴は振動系の障害による 原稿受付平成12年1月14日 ※日本カイロプラクティック徒手医学会第一回学術 講演会(平成11年10月)にて一部発表 *1東京カイロプラクティックセンター (〒107-0061東京都港区北青山3-5-9) -44- 伝音損失という「比較量的」な難聴に対し、感音性難 聴は感音器の障害による感受性の低下に伴う「量的、 質的」な難聴である。 伝音性、感音性の種類を問わず、難聴の程度を軽度、 中等度、高度に大別している。 軽度難聴は、I0~3OdBレベルを云い、社会的 適応性があると判断され、また聴力改善のための手術 を行う場合、3OdB以内に改善できるかどうかが手 術成否の判定基準と云われている。中等度難聴は、3 1~6OdBレベルで、会話中の聞き落としがあり、 やや不自由を感ずるが、対面しての会話は可能とされ ている。けれども6OdBになると大声でなければ通 じないと云われている。高度難聴は、61~9OdB レベルを云い、聞き落としが多く、会話は殆ど不可能 で、耳元に口をつけて話す必要がある。 なお、9OdB以上の難聴を「ろう」(聾)と云い、 言語音、一般環境音は聴取不能である。 現在の耳鼻科領域の見解では、急‘性に発症する感音 性難聴の中から原因が不明の一群の疾患に対して、特 に突発性難聴と呼んでいる。通常、感音性難聴の臨床 上の特徴は、その原因が明確か否かに関わらず、患者 自身が難聴の発病日時をはっきりと陳述しがたいこと であると云われている。 もともと健康であった人が、ある時突然に原因・誘

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  • 日本カイロプラクティック徒手医学会誌Vol.1(2000)

    |症例報告:

    カイロプラクティックで治療した突発性難聴の一例※

    竹谷内宏明*’

    Acasereportinidiopahticsuddendeafnessbychiropractictreatment

    HiroakiTAKEYACHI

    概要

    本報告書は突発性難聴と診断され、最終的には検査のみの通院で経過観察をされていた初診時9才8カ

    月の女児に、カイロプラクティック治療を試みて聴力検査がどのような経過をたどったかを観察したものである。

    患者の頚椎に後方回施(サブラクセーション)を認めたため、最初は週に1回のアジャストメントを

    行った結果、30回を過ぎた頃から改善がみられ始め、50回で聴力検査がほぼ正常範囲に回復した。

    この一例を以ってカイロプラクティックが突発‘性難聴に有効であるというつもりはまったくないが、

    身体障害者の認定を受けた患者の聴力がカイロプラクティックの治療がきっかけで回復したのは否定できない事実である。

    キーワード:カイロプラクティック、アジャストメント、サブラクセーション、突発性難聴

    1.はじめに

    1895年、,.Dパーマーがハーヴェイ・リラー

    ドの脊椎を矯正して、彼の聴力を回復させたことがカ

    イロプラクティック創始の契機になったことは、関係

    者には周知の逸話である。けれども、その後、カイロ

    プラクティック療法によって難聴を回復させたという

    報告は、筆者の知る限りはない。当然のことであるが

    難聴はカイロプラクテイックの適応症ではない。しか

    しながら、難聴の患者の治療を一度は試みてみたいと

    思ったカイロプラクティック関係者は著者だけではな

    いのではないか。

    筆者はたまたま、この度、突発性難聴と診断された

    患者を一定期間、カイロプラクティックで治療する機

    会に恵まれ、経過を観察することができたので報告す

    る。

    難聴は、外耳から中耳伝音系までの障害による伝音

    性難聴と鯛牛およびそれより中枢側の障害による感音

    性難聴、両者の混合性難聴そして心因'性難聴に分類さ

    れている。そして、伝音性難聴は振動系の障害による

    原稿受付平成12年1月14日

    ※日本カイロプラクティック徒手医学会第一回学術講演会(平成11年10月)にて一部発表

    *1東京カイロプラクティックセンター(〒107-0061東京都港区北青山3-5-9)

    -44-

    伝音損失という「比較量的」な難聴に対し、感音性難

    聴は感音器の障害による感受性の低下に伴う「量的、

    質的」な難聴である。

    伝音性、感音性の種類を問わず、難聴の程度を軽度、

    中等度、高度に大別している。

    軽度難聴は、I0~3OdBレベルを云い、社会的

    適応性があると判断され、また聴力改善のための手術

    を行う場合、3OdB以内に改善できるかどうかが手

    術成否の判定基準と云われている。中等度難聴は、3

    1~6OdBレベルで、会話中の聞き落としがあり、

    やや不自由を感ずるが、対面しての会話は可能とされ

    ている。けれども6OdBになると大声でなければ通

    じないと云われている。高度難聴は、61~9OdB

    レベルを云い、聞き落としが多く、会話は殆ど不可能

    で、耳元に口をつけて話す必要がある。

    なお、9OdB以上の難聴を「ろう」(聾)と云い、

    言語音、一般環境音は聴取不能である。

    現在の耳鼻科領域の見解では、急‘性に発症する感音

    性難聴の中から原因が不明の一群の疾患に対して、特

    に突発性難聴と呼んでいる。通常、感音性難聴の臨床

    上の特徴は、その原因が明確か否かに関わらず、患者

    自身が難聴の発病日時をはっきりと陳述しがたいこと

    であると云われている。

    もともと健康であった人が、ある時突然に原因・誘

  • (症例報告)竹谷内宏明

    因がないままに高度な感音性難聴が生ずるこの疾患

    は、昭和48(1973)年に厚生省から難病として

    「特定疾患」の指定を受け調査研究班が組織された。

    その研究班の報告の診断基準によれば、(1)突然の

    難聴、(2)高度な感音性難聴、(3)原因が不明、ま

    たは不確実の3つの主症状を伴い、副症状として耳鳴

    り、舷量、吐気、堰吐を随伴することもあるとされて

    いる。

    突発性難聴の病因は、現在まで多くの研究者により

    多大な努力がなされているにも拘らず、殆ど解明され

    ていないが、循環障害、内リンパ水腫、ウイルス感染、

    外リンパ痩、アレルギー、中毒等が挙げられている。

    この疾患の発生率は、昭和50(1975)年の報

    告では、人口100万人に対し、25~30で、年間

    発生総数は約3,000~5,000人と推定されて

    いた。けれども、平成5(1993)年度の調査では、

    約24,000人と増加の傾向にある。

    小児における頻度は成人と比較して少ないようで、

    全突発性難聴のl~5%と考えられており、成人と同

    様に著明な男女差は認められていない。

    また、成人の場合、反対側の聴力は、年齢平均聴力

    よりも低下している症例が29%に認められ、その多

    くが4000や8000ヘルツの高音域の闘値の上昇

    であったとの報告がある。けれども小児では、反対側

    の聴力は正常な場合が多いようである。

    また、両側'性の同時発症例は非常に稀であり、昭和

    51(1976)年度の厚生省の調査では、2,41

    8例中41例で1.70%で、その後の調査では減少

    傾向にあるようである。

    平成7年6月30日、この患者は、難聴の専門病院

    でもある国立の身体障害者リハビリテーションセンタ

    ーを訪問した。

    当初は心因性の難聴を疑われ、そのための検査、1

    週間から10日間のみの投薬、そしてカウンセリング

    で経過観察の結果、最終的には突発性難聴と診断され

    ている。そして、その後は投薬もされず、カウンセリ

    ング以外は検査のみの通院であった。

    平成7年7月25日、患者は難聴を主訴に東京カイ

    ロプラクティックセンターを訪れた。

    初診時、昭和60年生まれの9才8カ月の女子で、

    既往歴には特記すべきことはなく、身長は132セン

    チ、体重は31キロであった。

    §蛎参の結果、この患者の頚椎上部に右後方回旋、第

    3、4頚椎の左後方回旋の存在を認めた。

    4.方法

    突発'性難聴は難病であり、またカイロプラクティッ

    ク治療の適応症では無いことを充分に説明した上で、

    最初の頃は週に1回、主として頚椎のアジャストメン

    トをすることで治療を開始した。

    5.結果

    (1)図lに平成7年6月30日の、この患者の最初

    の聴力検査の結果を示す。

    この患者は、両側‘性で、左右とも6OdB以上で、

    高度難聴に属している。○印が右側、×印は左側の聴

    力を表わしている。

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    2.目的

    突発性難聴と診断された女子が、医療機関で適切な

    治療を受けず、聴力検査のみで放置されていたため

    カイロプラクティック療法で、どのように聴力検査が

    変化し、いかなる経過をたどったかを観察した。

    3.症例

    平成7年4月、家族と患者の意志の疎通が徐々に悪

    化し、またチック様症状が出現したことが契機になっ

    て、両親はカウンセリングが必要と考え、某病院を訪

    問した結果、難聴と診断された。患者の話では、7才

    の頃から聞こえにくくなってきたとのことであるが。

    敢えてテレビの音を大きくしたりはしなかったそうで

    ある。それまで、家族は難聴とは気付かず、心理的要

    因が原因と思っていたようである。

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    図1平成7年6月30日の検査結果

    -45-

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  • (症例報告)竹谷内宏明

    (5)図5の11月10日の検査では進行は止まり、

    やや安定した所見が見られる。これまでに12回の治

    療をしている。

    (2)図2の7月17日の検査でも特に変化はなく左

    側は、依然として8000ヘルツでは100dBである。

    尚、カイロプラクティック治療は7月25日から開始

    ししたので、これらの検査は、治療以前のものである。

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    図2平成7年7月17日の検査結果 図5平成7年11月10日の検査結果

    (3)図3の8月4日の検査では、左側は変わらず右

    側もやや進行している。この日、第2回目のアジャス

    トメン卜を行っている。

    (6)図6の平成8年1月12日の検査結果も安定し

    た状態で、左側も9OdBまで改善されている。13

    回目の治療後の所見である。

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    (4)図4の8月31日の検査では左右とも2000

    -4000ヘルツではI1OdBにも達している。こ

    の時点では8回の治療がすんでいる。125250500100021)()04()()0

    ま、左右とも高音域で

    4回目の治療の後の検

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  • (症例報告)竹谷内宏明

    (11)図11の11月14日の検査では、左右とも2

    000ヘルツ以上の高音域で進行が見られた。20回

    目の治療後の結果で、この頃患者に久し振りにチック

    が出現した。】252505”10“20α)40008Ⅸ刃

    (8)図8の3月19日の検査は左右とも60~70

    dB以内で比較的よい状態で安定している。前回の検

    査の後も治療はしていない。

    これ以降、聴力検査は3カ月に1度になった。患者

    は平成8年4月8日付けで、感音↓性難聴(左右とも7

    OdB)の障害名で、東京都から身体障害者6級の認

    定を受けている。】 25Z印知1函…4岬…

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    l平成8年11月14日の検査結果平成8年3月I9日の検査結果

    (12)図12の如く11月21日にも検査を行い、再び

    改善が見られた。21回目の治療が終っている。

    (9)図9の5月20日の検査では、低音域から高音

    域までやや改善されている。これまで16回目のアジ

    ャストメン卜をしている。

    】2525050010mZOO()40“80(XjIl 】25Z50500100020叩400080mHz

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    図9平成8年5月20日の検査結果 2平成8年11月2I日の検査結果

    (13)図13の12月10日の検査結果も右側が40

    00ヘルツの高音域で少々進行している。22回目の

    治療をしている。1252505冊1咽2皿40伽皿HZ

    (10)図I0の8月9日の検査でも進行が見られず、

    安定している。18回目の治療がすんでいて、この頃¥

    患者は補聴器を授業中だけ使用し、家ではしていない。

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    図 I

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    3平成8年12月10日の検査結果図I0平成8年8月9日の検査結果

    -47-

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  • (症例報告)竹谷内宏明

    (14)図14の平成9年1月7日の検査では、やや改

    善がみられる。23回目の治療後の検査結果である。

    (17)図17の12月19日の検査結果も良好で、左

    右ともかなり良い状態で安定している。これまでに3

    4回治療した。

    】25Z505“l咽2咽4咽8”}{Z

    1252印5”10”2m4函8”HZ

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    図14平成9年1月17日の検査結果 図17平成9年12月19日の検査結果

    (15)図15の3月25日の検査では、低音域から高

    音域まで左右とも著明な改善がみられる。26回目の

    治療している。

    (18)図18の平成10年3月16日の検査でも、や

    や左右差はあるものの、更に改善されている。37回

    治療している。患者は特に支障もなく通常の中学に進

    学した。

    125Z50知1咽2(脚4唖…HZ1252釦知1咽20m4m…HZ

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    図15平成9年3月25日の検査結果 図18平成10年3月16日の検査結果

    (16)図16の、前回の検査から約5カ月後の、8月1

    9日の検査では、更に改善され、左右に少々バラツキ

    がみられるが、高度から中等度難聴の範晴に入ってい

    る。これまでに30回のアジャストメントをしている。

    (19)図19の8月24日の検査では、軽度難聴の範

    嬬に属するまで改善した。この時点で43回目の治療

    を行っている。

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    図16平成9年8月19日の検査結果 9平成10年8月24日の検査結果

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  • (症例報告)竹谷内宏明

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    図 2l平成7年6月30日の検査結果図20平成11年4月7日の検査結果

    箪縮による狭窄や閉塞が、限局‘性の急激な内耳障害を

    起こすとされている。頚椎のアジャストメントが結果

    的に内耳動脈の血管掌縮を回復させたのかもしれな

    い。

    また、突発性難聴の発生率は、1972年度の調査

    に比べて1987年度、1993年度と顕著に増加し

    ている。それが、受診率の増加によるものか、あるい

    は、環境的要因、社会的因子の変化など、ストレスの

    増加が関与していることも推定される。様々なストレ

    スに対してカイロプラクティック治療が効果をあげて

    いることは関係者なら経験上、十分に認識しているこ

    とである。

    いずれにせよ、その原因が不明である以上、頚椎の

    アジャストメン卜が何故、この症例の高度な難聴を回

    復させることができたのかの解明は現在では困難であ

    る。

    本症の予後は、早期に治療を開始する程よいとされ

    ていて、最近では十分に早期に治療を開始すれば成人、

    小児に拘らず50~60%は改善するという報告があ

    る。一方では、1カ月を経た症例の予後は極めて悪く、

    聴力はほぼ固定した状態になるので、通常著しい改善

    は望めないとも云われている。また、難聴が高度であ

    ればある程、予後が悪いとされている。そして感音性

    難聴は一般に高度レベルが低下し、回復も低音レベル

    から始まる傾向にあると云われているが、本症例には

    そのような傾向は特にはみられなかった。

    本症例は診断から治療開始まで2カ月間経過してお

    り、特に、17日以降に治療開始してその程度が60

    dBを越えていた場合、完全回復はないと断定する報

    告もあるが、この症例は7OdB以上であり、極めて

    予後の悪い範晴に属するものであった。

    (20)図20の平成11年4月7日の検査結果は、ほ

    ぼ正常範囲となった。これまでに合計50回の治療を

    行った。

    この検査の後、患者は今後聴力検査は1年に1度で

    よいと云われている。

    図21はこの患者の最初の聴力検査である。図20

    と比較するために再度提示した。

    6.考察

    突発'性難聴は古くからその存在が注目され、原因の

    究明が長年の努力にも拘らず、未だに解明されていな

    いのは、この疾患が致命的ではないので、新鮮例での

    病理解剖のみならず、病理組織学的にも病因を解明す

    ることが不可能だからとされている。幾つか挙げられ

    ている原因の中で、現在比較的支持を受けているのは

    内耳のウイルス感染説と内耳血液循環障害説である

    が、どちらも決定的な証明はなされていない。

    このl症例の経験を以て、本症に対してカイロプラ

    クティックのアジャストメン卜が有効か否かを議論す

    ること自体、意味のないことは十分に承知している。

    けれども、高度難聴を訴えて来院した患者が、カイロ

    プラクティックの治療を契機に聴力が回復したのは否

    定できない事実である。

    内耳が原因の難聴のメカニズムは、刺激感受障害と

    興奮伝達障害が考えられている。

    刺激感受障害は、ラセン器の感覚細胞の異常により

    音刺激を正常に感受できない場合で、有毛細胞や蓋膜

    の病変により起こる。一方、興奮伝達障害は、刺激は

    感受できても、それを正常に伝達できない場合で、嵩

    牛神経の源であるラセン神経節の病変や神経における

    興奮伝達を阻害するような状態の|際に起こるとされて

    いる。このような状況下でカイロプラクティック治療

    が何らかの手助けをしたのかも知れない。

    原因がウィルス感染説では、ウィルスが何であれ、

    カイロプラクティックの効果が期待できる余地は殆ど

    ない。内耳血液循環障害説によれば、内耳動脈の血管

    7.結語

    突発‘性難聴と診断されて2カ月経過した9才の女子

    の頚椎後方回旋のアジャストメン卜を4年間に約50

    -49-

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  • 回行った結果、高度難聴がほぼ回復した。

    このl例を以て、カイロプラクティックが本症に有

    効であるというつもりはないし、適応症に入れるべき

    であるとも思わない。けれども、突発'性難聴と診断さ

    れ、身体障害者と認定されても、この患者は30回の

    アジャストメン卜が終了した頃から顕著な聴力の改善

    がみられ始めた。それ故、頚椎にサブラクセーション

    が認められた場合、本人、家族に充分納得する説明を

    して理解を得た上で、過度な期待感を与えずに、治療

    を試みることも必要であると考えている。

    その際に、最も重要なことは、治療する者と患者、

    家族の信頼感を如何に確立するかにあると思う。

    筆者は今後も同じような患者に遭遇したらやはり治

    療を試みてみたいと思う。そして、今回のような改善

    例が今後数多く報告されれば、突発‘性難聴とサブラク

    セーションとの関係を耳鼻科領域の学会でも発表でき

    るのではないかと考えている。

    なお、この患者は、平成12年7月現在、まだ月に

    -50-

    (症例報告)竹谷内宏明

    一度、通院中であるが、その後の経過は良好である。

    最後に、聴力検査表を'快く提供して下さった病院関

    係者の方には篤く御礼申し上げます。

    参考文献

    (1)大迫成人:小児心因'性難聴JOHNSvol.6no.1(1990)PP,7982.

    (2)岡本牧人他:突発性両側性感音'性難聴JOHNSvol.6

    no.1(1990)PP.75-78.

    (3)野村恭也:急性高度難聴JOHNSvol.10no.7(1994)PP、861-863.

    (4)平出文久他:突発'性難聴の病因・病理J○HNSvolj屡

    no.7(1994)PP.864-872.

    (5)設楽哲也他:突発'性難聴の臨床JOHNSvol.10no.7

    (1994)PP、875880.

    (6)立木孝他:突発1性難聴の治療JOHNSvol.10no.7

    (1994)PP.881-885.

    (7)平出文久他:小児の突発'性難聴JOHNSvol.10no.7

    (1994)PP.887-893.

    (8)立木孝:新難聴の診断と治療(1986)PP.1-14PP.102-

    107中外医学夢社

    (9)森満保他:臨床聴力検査(1983)PP.1-9文光堂

    (10)柳田則之:突発性難聴の正しい取り扱い(1997)金原出版

    株式会社