ジャパン・ブランドの 発信力強化に向けて2017・5 10...

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8 20175 成長戦略を支えるジャパン・ブランドの 発信力強化に向けて 20175 9 特集 依田  産業競争力強化委員会エンターテインメント・ コンテンツ産業部会長/ギャガ会長 産業競争力強化委員会エン よだ          たつみ 中村邦晴 審議員会副議長/住友商事社長 審議員会副議長/住友 なかむら    くにはる ピーター・バラカン ブロードキャスター 高藤悦弘 産業競争力強化委員会ジャパン・ブランド部会長 味の素取締役専務執行役員 産業競争力強化委員会 たかとう    えつひろ 根本勝則 〈司会〉 ねもと かつのり 常務理事 成長戦略 える ジャパン・ブランド 発信力強化 けて

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820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

201759

特集

依田 194692産業競争力強化委員会エンターテインメントコンテンツ産業部会長ギャガ会長産業競争力強化委員会エンよだ          たつみ

中村邦晴審議員会副議長住友商事社長審議員会副議長住友なかむら    くにはる

ピーターバラカンブロードキャスター

高藤悦弘産業競争力強化委員会ジャパンブランド部会長味の素取締役専務執行役員産業競争力強化委員会たかとう    えつひろ

根本勝則〈司会〉

ねもと かつのり

常務理事

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

日本の魅力を世界に向けて展開し国家ブラン

ドとして構築確立する取り組みは製品サ

ービスの魅力を高め世界市場での競争力を強

化していくうえで非常に重要であるなかでも

コンテンツ衣食住地域産品などにスポット

を当てたクールジャパン政策は海外需要の獲

得訪日客の増加や消費額の拡大など成長戦

略の側面支援としての期待が高い日本のソフ

トパワーや文化に関する発信力をどのように強

化すべきかその課題と具体策について多様

な観点から議論する

1020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017511

特集

商社のネットワークを活かして

ジャパンブランド強化に貢献する

コンテンツの海外展開を進め

「日本ブーム」の創出を目指す

「ジャパンブランド」とは

根本

今日本の製品サービスが有する品

質や信頼性という強みに加え文化や風土

おもてなしなど国家のブランド力いわゆ

るジャパンブランドの発信を通じて競争

力強化を図り成長の軸を固めていくことが

必要だという認識が広まりつつありますま

たコンテンツ衣食住日本各地のローカ

ルな産品など日本の文化や魅力を海外へア

ピールするクールジャパン政策は海外需要

の獲得インバウンドの増加など成長戦略

の側面支援としての期待が高まっております

そこで本日はグローバル化の加速産業構

造の転換人口減少などビジネスをめぐる

環境が大きく変化するなか成長戦略の実現

に向け「ジャパンブランド」の発信力を

どのように強化していくべきかご意見を伺

いたいと思います

最初に世界に誇れる日本の魅力「ジャ

パンブランド」をどのようにとらえている

かそれぞれのお考えをお聞かせください

はじめに中村副議長よりこれまでのご

経験を踏まえ「安全高品質信頼性」と

いったジャパンブランドの特質をどのよう

にとらえ海外需要を獲得していくためにそ

の魅力をどのように発信していくかお話し

いただけますでしょうか

中村

商社は国内外でビジネスを展開してい

ますが海外比率がますます高まっています

人口減少に伴う内需の減少を考えた場合ジ

ャパンブランドを海外でどのように売り込

んでいくのかどうやってインバウンドの拡

大につなげていくのかということが重要な課

題になると思います

また最近は「モノからコトへ」といわれ

るように消費者は商品ではなく体験や

サービスなどの目に見えない価値を求めるよ

うになってきていますインバウンドが昨年

2400万人を超え2020年には400

0万人を目指すという政府の観光ビジョンを

踏まえますと日本の魅力という「コト」を

海外に発信し日本を訪れた外国人旅行者が

国に戻ってそこでまた日本の商品あるいは

サービスを求めるというような循環をつく

っていく必要があります

こうしたなか国内外に幅広いネットワー

クを持ちさまざまな産業分野にかかわって

いる商社は魅力溢れる日本の商品やサービ

スを掘り起こし取りまとめ海外展開やイ

ンバウンド消費につなげるなどあらゆる観

点でジャパンブランドの強化に貢献できる

のではないかと考えています

例えば当社は国内で20年以上にわたって

テレビ通販事業を展開しており国内最大手

に成長した「ショップチャンネル」で培った

経験を活かし2013年からタイでも現地

パートナーと共同で同様の事業を開始してい

ますこの事業では「Discover

Japan

」と

称し年に2回終日にわたり日本の製品

だけを取り上げる日を設定しています

また当社が展開するドラッグストア

「Tomods

(トモズ)」の台湾の店舗では取

り扱う商品の約半分は日本製品です現地の

消費者は安全で高品質な日本製品に対する

信頼感を抱いているのです

「モノからコトへ」という観点では商業施

設の開発運営ノウハウなどの面で海外で

は「日本流」への憧れが強いと感じています

例えば中国では近年多くのショッピン

グセンターが新規開業していますが企画

マーケティングが不十分な施設も多く先進

的で質の高い日本の商業施設の開発や運営の

ノウハウに関心が高まっています当社でも

中国企業との合弁で中国市場を対象とした

商業施設開発のコンサルティング会社を20

15年に設立しました

また今年4月20日にオープン予定の銀座

最大級の商業施設「G

INZASIX

」は当社

がJ

フロントリテイリングや森ビルL

キャタルトンリアルエステート(LVMHグ

ループ)と共同で開発したものでインバウ

ンド需要の受け皿として大いに期待されてい

ますこの開発にあたりジャパンブラン

ド推進には日本の伝統文化も大きな武器にな

り得ると考え施設内に能楽堂を誘致するな

ど商品の販売だけでなく日本文化の発信

拠点にしていきたいと思っています

文化の発信ということでは当社は海外

の事業拠点において伝統的な日本文化を紹

介する活動を行っています昨年はガーナの

「日本週間2016」今年はイランの「日本

文化月間」にあわせて社員を現地に派遣し

書道や着物の着付け茶道華道巻きずし

づくりなどのデモンストレーションを行いま

した過去にはベトナムミャンマーなど

でこうした活動を展開しています現地コミ

ュニティーとの良好な関係構築が主な目的で

すが日本文化の発信という面でもお役に

立っているのではないかと思います

このほか日中の相互理解を深めてもらお

うと中国人留学生の支援を行っています

彼らと話をすると日本に興味を持ったきっ

かけは日本の漫画やアニメ小説だという

人が多くやはり日本に来てもらうには

日本の文化コンテンツを積極的に発信し

興味を持ってもらう努力が肝要であると実感

します当社もビジネスあるいは社会貢献

活動を通じてそうした活動を続けていきた

いと思っています

根本

次に依田部会長より日本のコンテ

ンツの海外展開に関する現状と課題等につい

てお伺いしたいと思います

依田

私が「コンテンツ」という言葉を使い

はじめて15年がたちました

20世紀は米国の時代で米国が映画音楽

等の文化面で海外進出を果たし世界規模で

大きなマーケットを築き上げたことは皆さ

んご存じのとおりです韓国では1997

年のアジア通貨危機の際当時の金大中大統

領が「車1台より映画を1本」というスロ

ーガンを掲げコンテンツ産業に政府予算を

投入して韓流ブームの基礎を築き韓国製

台湾トモズ新竹巨城店提供住友商事

ミャンマーでの日本文化紹介活動提供住友商事

1220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017513

特集

ネットで多様な情報発信を

品のブランド力アップアジア市場から世界

に向けての開拓に成功したのです

日本でも周回遅れの感はありますが政

官民が一体となってコンテンツ産業の振興に

向けて取り組みを進めてきました経団連で

は2003年にエンターテインメントコ

ンテンツ産業部会を設置し翌2004年3

月に提言「『知的財産推進計画』の改定に向

けて」を取りまとめ公表しました同年5月

には議員立法による「コンテンツの創造保

護及び活用の促進に関する法律」が成立施

行されコンテンツ産業振興の機運が急速に

高まりました翌2005年6月には経団連

の同提言に基づきVIPO(映像産業振興機

構)が設立されましたVIPOは2012

年に経済産業省と総務省の補助を受けて基金

を造成しJ‐LOP(ジャパンコンテンツ

ローカライズプロモーション支援助成金)

事業を受託しました以来4年間で約282

億円の補助金(J‐LOPJ‐LOP+

JLOP)事業を実施しコンテンツのロー

カライズプロモーション活動支援コンテ

ンツの海外展開促進事業の支援を行ってきま

した現在平成28年度補正予算で60億円の

補助金を「J‐LOP4」として募集中です

このJ‐LOP事業が第2次安倍内閣の発

足と軌を一にして2013年3月から始ま

り同年11月にクールジャパン機構(海外

需要開拓支援機構)が設立されますクール

ジャパン機構は民間投資の呼び水としての

リスクマネーを提供し日本の経済成長につ

なげる海外需要獲得の拠点流通網の整備な

どを展開しており2017年2月現在で19

件455億円余りの投資を行っています

私はジャパンブランドとは日本人の

持つ細やかな気配りや質の高い成果を目指

す真摯な姿勢秩序と礼儀を重んじる道徳観

などがそれぞれの仕事を通じて伝わってく

ることではないかと考えていますコンテン

ツの役割は言語を超えて伝わるという特性

を活かして海外展開を進め日本への親近

感や好感度を高めインバウンドや地域振興

につなげることです2015年の統計です

が日本コンテンツの海外売り上げが約1

7兆円(デジタルコンテンツ白書)でVIP

Oの試算によるとその経済波及効果は3

1兆円訪日客約2000万人のうちコン

テンツに起因した訪日客は約400万人で

その旅行消費額は約7000億円(観光庁

資料)その経済波及効果は14兆円と

いう数字があります他産業との融合が大き

な経済波及効果を生むコンテンツの海外展開

によって日本の魅力を効果的に発信し日

本ブームを創出することができるようもっ

と工夫努力をする必要があると思います

同時にコンテンツ支援策はすぐに目に見え

る結果が出る性質のものではないので国も

腰を据えて着実に取り組むことが必要だと考

えます

根本

クールジャパンを海外へ発信展開し

ていくにあたっては日本のことを熟知して

いる外国の方々の指摘から謙虚に学び日本

の魅力がより伝わるよう努力し続けることが

重要となりますピーターバラカンさんは

日本の魅力を紹介するテレビ番組を通じて実

際に情報発信をされていますがまずジャ

パンブランド日本の魅力をどのようにと

らえていますかまた世界に向けてそれ

らをどのように発信していくのがよいとお考

えでしょうか

バラカン

僕は2003年からNHKワー

ルドで『ジャパノロジー』というテレビ番組

の司会をしています30分の短い番組ですけ

れど週に1回世界に向けて日本のいろい

ろなこと割と初歩的なことを丁寧にわ

かりやすく紹介していますこの番組が注目

され始めたのは3年前ぐらいで視聴者の多

くはテレビではなくインターネットで見

ています

視聴者は多分日本に対する何らかの興

味があってネットで検索したら偶然この番

組が出てきて見たら面白いから立て続けに

何本も見たという人ですFacebook

そういう書き込みが何度もありました日本

から発信することはもちろん重要です加え

て海外の人々が日本に興味を持ったときに

もっとアクセスしやすい状況をつくることが

大事なのではないかとこれらの体験から感

じています

例えばインターネットの普及にあわせ20

年ほど前からラジオ番組のウェブ上での同

時配信サービスが世界中で広まりました日

本では「radiko

」というサービスが2010

年からやっと始まったもののラジオの放送

電波の受信が可能

な範囲では無料で

聞けるのですが

例えば関東の番組

を関西で聞く場合

は有料ですし海

外からは聞けませ

ん世界のどこで

もできることが日

本ではできない

という本当に摩訶

不思議な話なので

根本

日本の放送

法や知的財産など

の規制の問題がか

らんでいるのでは

ないかと思われま

バラカン

例えば『ジャパノロジー』を通

じて僕のことを知った人から「あなたのラジ

オ番組を聞いてみたい」と言われても「ご

めんなさい日本の番組は海外で聞けません」

と答えるしかありませんわざわざVPN

(Virtual

Private

Network

)という仕組みを

使って番組を聞いてくれている人がたまにい

るのですがそこまでしなければいけない

日本のコンテンツ発信している情報をも

っと自由に世界中の人々が受けられるような

インフラを整備しなくてはいけないととて

も切実に感じています

根本

わかりやすい例を挙げてご説明いただ

きありがとうございました日本について

の情報発信を強化するうえで規制緩和が課

題であるということですねところで日本

の紹介番組のなかで特にこのテーマを取り

上げると視聴者の反応が良いという分野はあ

りますか

バラカン

本当にさまざまですね中村副議

長のお話にあったように日本に興味を持つ

人は子どものころに日本の漫画やアニメに

触れていた人が多いのは確かです一度日本

に興味を持ったら例えば『ジャパノロジー』

を見るようになってそのうちに「日本らし

さ」というものに気づくようになります例

えば日本人が非常に細かく気を配ること

httpswww3nhkorjpnhkworldentvjapanologyplus放送日NHKワールドTV(火)2330~2358ほか

BS1(火)330~358(月曜深夜)

27HairdressingThe customers eyes and nose arecovered with a towel to protect fromsplashes and to aid relaxation

提供NHK

5Breakfast

1420175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017515

特集

食に対する「こだわり」が

味の素のジャパンブランド

ネット時代の情報発信に

あわせた制度改革が必要

物を丁寧につくることとかですねそうする

とさらに日本に興味を持って「一度行

ってみたい」という人が出てくるそういう

人たちからもよくSNSで連絡をいただき

ます

ですから何を発信するかということより

多様なものを発信することそして興味を持

った人がさらにアクセスしやすい環境をつく

ることむしろそういうことが大事なのでは

ないかという気がします「日本製品は質

が高くて壊れない」ということは世界中です

でによく知られていますだからこれに加

えて日本の文化など多様な情報をわかりや

すく発信し続けることが一番大事だと思いま

根本

それでは別の切り口からご意見を伺い

ます日本人の伝統的な食文化として「和

食」がユネスコの無形文化遺産(世界遺産)に

登録されましたその際にも料理だけでは

なく食にまつわる文化「自然を尊ぶ」とい

う日本人の気質に基づいた「食」に関する

「習わし」に対して非常にユニークな評価

がなされました高藤部会長グローバルビ

ジネスのご経験を通じて世界の人々から見

た和食文化の価値や魅力さらにはジャパ

ンブランドへのお考えについてお聞かせく

ださい

高藤

一口に「日本食」といってもその定

義は定まっておらず人それぞれの考え方

意見があるだろうと思います仮に日本食

を定義するため日本のわびさびを表す懐

石料理を右端にその対極にラーメンを置く

としてその間には天ぷらすしすき焼

きしゃぶしゃぶあるいは洋食などが入っ

てきますラーメンはもともと古来の日本食

ではありません洋食も欧米にはない料理で

すこれらは外のものを取り入れて日本的

なものにアレンジしてしまうという日本人

の長所を非常によく表していると思います

また北海道から九州までそれぞれの土地

のラーメンが存在するということも日本独

自の食文化といえるでしょうこのように

外国人からすると驚くほどの幅広さと奥深さ

があることが日本食の大きな魅力になって

いるのだと思います

とはいえ食の分野でグローバルにビジネ

スを展開しているとどうしても文化の壁に

ぶつかりますいかに日本食が素晴らしいか

らといって世界中の人が朝昼晩日本食

を食べるようになることはまずあり得ませ

んやはりその土地に合った食べ物その

土地の人が好む味があるわけです

当社では調味料の「味の素」を世界中で

販売していますがそれ以外の調味料につい

てはそれぞれの土地に合ったネーミング

プランニングで展開していますただ世界

中どこでも同じ考え方で商品をつくっていま

すそれは品質の高さ安心安全おいし

さへのこだわりですもちろんおいしさは

地域によって異なってきますからその地域

の人が一番おいしいと感じるのはどのような

ものか徹底的にこだわってつくっています

これは当社で働く従業員例えば日本

ブラジル米国タイインドネシアフラ

ンスと国籍はさまざまですが全員が共有し

ている考え方ですこの考え方を根っこにし

て全世界で商品をつくり全世界の消費者

にお届けしている当社でいえばこの「こ

だわり」がジャパンブランドであるとい

うことになろうかと思います

根本

先ほどバラカンさんから「海外では日

本のラジオ番組がネットで聞けない」という

お話がありました著作権の問題など海外

に日本のコンテンツを発信するときにさま

ざまなご苦労があると思いますがいかがで

しょうか

中村

当社も日本の映画やテレビ番組など

を買い付けて海外に販売するビジネスを展

開していますシンガポールの現地法人で

25年前から毎週1時間日本を紹介するテレ

ビ番組の枠を持ちこの12年間は日本の旅番

組を放映していますあまり観光客が行かな

いような場所を紹介しているのですが非常

に人気があってシンガポールを中心に30カ

国ほどで放映されていますシンガポールの

リーシェンロン首相が家族旅行で北海道に

いらした際定番の観光ルートではない場所

に関心を持たれたそうですのでこの番組が

きっかけだったかもしれませんこの事業は

ビジネスとして採算が取れていますが定常

的な人気番組となるにはある程度の時間と

コストがかかりますより積極的に日本のコ

ンテンツを海外に展開するにはやはり何ら

かの支援が必要ですこれについては20

13年にBEAJ(放送コンテンツ海外展開

促進機構)が設立されさまざまな支援が受

けられるようになりました現在では官民

連携により日本を紹介する番組が現地放

送局と日本の放送局との間で共同制作され

約40件の番組がASEAN6カ国で放送され

ていますそれらのコンテンツが日本に興味

を持ってもらうきっかけになりインバウン

ドにつながるということを考えるとさらに

一層官民が連携して取り組むべきだと考えま

依田

海外で事業を展開する場合何もない

所へ出ていくわけですから具体的な活動拠

点をつくる(地上戦)と同時にコンテンツが

先兵となり情報発信をしていく(空中戦)とい

う戦略が必要です情報発信にはインターネ

ットが不可欠ですがそこにはどうしても著

作権の問題が出てきますわが国では特定

困難な権利者にまで使用許可申請が必

要な期間が長く続きました一部改善

は見られるものの依然制約のなかで

活動しているのが現状です権利者の

権利制限フェアユースなど権利者

との対話と相互理解を深めもっとス

ピードを上げて解決し諸外国並みの

コンテンツの活用環境を創出していく

必要があると思います

根本

バラカンさんいかがでしょう

バラカン

情報発信ということに関し

て訪日した人たちから「いつどこ

でどんなコンサートが行われているか

を知りたい」という声をよく耳にしま

すがそうした情報の提供はほとん

どが日本語でなされています多言語

で発信するのが理想ですが少なくとも英語

での発信は必須だと思います

例えばロンドンには「

TimeOut

」とい

うイベント情報誌がありこの東京版が渋谷

駅のインフォメーション等に置いてあります

とてもわかりやすい英語で書かれたフリーペ

ーパーなのですが3カ月に1回の刊行で

ウェブサイトもありますが情報が限られて

いますコンサートに限らず能や歌舞伎

文楽などの伝統芸能も含めて幅広く情報を取提供映像産業振興機構

1620175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017517

特集

「コフェスタ」を世界的な

イベントに育てたい

「モノからコトへ」の時代

文化の力が果たす

役割は大きい

「食」をコンテンツの1つとして

アピールしていきたい

り上げしかも毎日更新されるような多言

語のサイトがあれば重宝されると思います

このような取り組みは莫大なお金がかかる

ものではありませんが民間だけで賄うのは

難しいかもしれません政府が予算を確保し

て外国語ネイティブのスタッフと組んでつ

くるべきだと思います

依田

バラカンさんがおっしゃるとおりイ

ンバウンド向けに日本国内のイベントコン

サート日本食等のジャパンブランドの情

報発信を拡充させていくことは非常に重要で

す英語での発信については10年前に経団

連が中心となって立ち上げたコンテンツポー

タルサイト「JAPACON(ジャパコン)」

のウェブサイトがありますジャパコンは

日本のコンテンツ情報権利者情報を海外に

発信することを目的に設立されましたジャ

パコンのウェブサイトをベースにして政府

から資金を継続的に提供していただければ

言語バリアの解決が早まると思います

成長戦略としての

クールジャパン政策への期待

根本

クールジャパンの推進は成長戦略の

なかで海外の成長市場の取り込みに向けた

施策として位置付けられています政府は

クールジャパン戦略について「情報発信」

「海外への商品サービス展開」「インバウン

ドの国内消費」の各段階をより効果的に展開

し世界の成長を取り込むことで経済成長

につなげるブランド戦略であるとしています

が依田部会長今後クールジャパン政策

を進めるにあたってどのような課題がある

とお考えですか

依田

まず日本の情報が海外に的確に伝わ

っていないという問題があります私たちが

外国に行きますとたくさんのチャンネルか

らさまざまな情報が入ってきますが例え

ばホテルのテレビで視聴できる日本の情報

はNHKの国際放送ぐらいしかありません

そうすると情報番組にしてもドラマにして

も芸術性が高い作品はまだしもポップカ

ルチャーなど大衆的な情報はほとんど得ら

れません在外公館ジャパンハウスJ

ETRO(日本貿易振興機構)など公的機関が

民間企業と連携して情報発信力の強化コ

ンテンツの海外販路開拓にもっと注力して

いく必要があると思います

一方訪日外国人をいかにもてなすかい

かに日本の魅力を知ってもらうかというこ

とも考えなければいけませんこれまで団体

旅行が主流だった中国人観光客も徐々に個

人旅行が増え個人で予定を組んで日本の(食

を含めた)文化歴史おもてなしを楽しむ

ようになってきました地方創生という意味

では素晴らしい傾向ですしかし日本に足

りないのは国際会議場展示場ホテル

ショッピングモール映画上映設備などを備

えた拠点いわゆるMICE(M

eetingIn-

centivetour

Convention

Exhibition

Event

)に対応できる拠点がほとんどないと

いうことです

アジアでは釜山上海香港シンガポー

ル欧州ではカンヌベネチアロンドン

ケルン米国ではロサンゼルスシカゴなど

それぞれ海や川に面したグローバル水準のM

ICE拠点を持っていますコンテンツを含

むさまざまな日本の魅力を一体的に発信する

ためにそうした拠点を構築する必要がある

と思いますしかしながらMICEが話題

になって5〜6年たつと思いますがその後

トーンダウンしあまり動いていない印象があ

ります

一方2007年から毎年秋に「JAPA

N国際コンテンツフェスティバル」通称

「コフェスタ」が開催されています映画

音楽ゲームアニメテレビ番組などエ

ンターテインメントコンテンツおよびファ

ッションデザイン等コンテンツと親和性の

高い産業の総合イベントですこのコフェ

スタを有名な「ミラノサローネ」に匹敵す

るような世界的な多業種融合型イベントに育

てるために日本のコンテンツ産業のみなら

ず多くの産業界で構成される経団連が旗振

り役となり経済界全体が力を結集し政府

と一体となって長期的に取り組んでいかなけ

ればならないと思っています

根本

依田部会長からMICEに関するお話

がありました中村副議長住友商事では特

に海外でそうしたプロジェクトにかかわって

こられたと思いますがいかがでしょうか

中村

確かに依田部会長が挙げられたよう

なMICEの拠点は日本にはないと言わざる

を得ません今後もっとインバウンドを呼

び込むためにはそうした施設ハード面で

の拡充が必要です

一方で先ほど申しあげた「モノからコト

へ」という観点から見ると例えば東京は

地下鉄など公共の交通機関が発達しており

非常に便利なのですが外国人には複雑すぎ

ます表示や案内の多言語化を含めたハード

面のバリアフリー化を進める必要がある一方

で「親切な日本人が地下鉄の乗り方を教え

てくれた」という体験の方が旅の醍醐味と

いう意味では価値のあることなのかもしれま

せんそう考えると教育を含めたソフト面

の充実も大切だと思います

単に「モノを買っていただく」という考え

方ならば日本製の質の高い商品を並べてお

けばよかったわけですが「モノからコトへ」

という時代には体験であるとかおもてな

しの精神であるとか文化の力が果たす役割

が大きいのではないでしょうか文化を発信

して日本の魅力を伝えるという面でもイン

バウンドを迎えるという面でもまだまだや

るべきことがあると思っています

根本

高藤部会長各国大使館あるいは大使

公邸などを使って日本食を紹介するイベント

が多く見られるようになってきましたし食

をテーマにした2015年のミラノ万博では

日本館は大盛況であったと伺っています食

の分野における情報発信で何か課題はあるで

しょうか

高藤

おっしゃるとおり各国の日本大使館

提供映像産業振興機構

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

1020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017511

特集

商社のネットワークを活かして

ジャパンブランド強化に貢献する

コンテンツの海外展開を進め

「日本ブーム」の創出を目指す

「ジャパンブランド」とは

根本

今日本の製品サービスが有する品

質や信頼性という強みに加え文化や風土

おもてなしなど国家のブランド力いわゆ

るジャパンブランドの発信を通じて競争

力強化を図り成長の軸を固めていくことが

必要だという認識が広まりつつありますま

たコンテンツ衣食住日本各地のローカ

ルな産品など日本の文化や魅力を海外へア

ピールするクールジャパン政策は海外需要

の獲得インバウンドの増加など成長戦略

の側面支援としての期待が高まっております

そこで本日はグローバル化の加速産業構

造の転換人口減少などビジネスをめぐる

環境が大きく変化するなか成長戦略の実現

に向け「ジャパンブランド」の発信力を

どのように強化していくべきかご意見を伺

いたいと思います

最初に世界に誇れる日本の魅力「ジャ

パンブランド」をどのようにとらえている

かそれぞれのお考えをお聞かせください

はじめに中村副議長よりこれまでのご

経験を踏まえ「安全高品質信頼性」と

いったジャパンブランドの特質をどのよう

にとらえ海外需要を獲得していくためにそ

の魅力をどのように発信していくかお話し

いただけますでしょうか

中村

商社は国内外でビジネスを展開してい

ますが海外比率がますます高まっています

人口減少に伴う内需の減少を考えた場合ジ

ャパンブランドを海外でどのように売り込

んでいくのかどうやってインバウンドの拡

大につなげていくのかということが重要な課

題になると思います

また最近は「モノからコトへ」といわれ

るように消費者は商品ではなく体験や

サービスなどの目に見えない価値を求めるよ

うになってきていますインバウンドが昨年

2400万人を超え2020年には400

0万人を目指すという政府の観光ビジョンを

踏まえますと日本の魅力という「コト」を

海外に発信し日本を訪れた外国人旅行者が

国に戻ってそこでまた日本の商品あるいは

サービスを求めるというような循環をつく

っていく必要があります

こうしたなか国内外に幅広いネットワー

クを持ちさまざまな産業分野にかかわって

いる商社は魅力溢れる日本の商品やサービ

スを掘り起こし取りまとめ海外展開やイ

ンバウンド消費につなげるなどあらゆる観

点でジャパンブランドの強化に貢献できる

のではないかと考えています

例えば当社は国内で20年以上にわたって

テレビ通販事業を展開しており国内最大手

に成長した「ショップチャンネル」で培った

経験を活かし2013年からタイでも現地

パートナーと共同で同様の事業を開始してい

ますこの事業では「Discover

Japan

」と

称し年に2回終日にわたり日本の製品

だけを取り上げる日を設定しています

また当社が展開するドラッグストア

「Tomods

(トモズ)」の台湾の店舗では取

り扱う商品の約半分は日本製品です現地の

消費者は安全で高品質な日本製品に対する

信頼感を抱いているのです

「モノからコトへ」という観点では商業施

設の開発運営ノウハウなどの面で海外で

は「日本流」への憧れが強いと感じています

例えば中国では近年多くのショッピン

グセンターが新規開業していますが企画

マーケティングが不十分な施設も多く先進

的で質の高い日本の商業施設の開発や運営の

ノウハウに関心が高まっています当社でも

中国企業との合弁で中国市場を対象とした

商業施設開発のコンサルティング会社を20

15年に設立しました

また今年4月20日にオープン予定の銀座

最大級の商業施設「G

INZASIX

」は当社

がJ

フロントリテイリングや森ビルL

キャタルトンリアルエステート(LVMHグ

ループ)と共同で開発したものでインバウ

ンド需要の受け皿として大いに期待されてい

ますこの開発にあたりジャパンブラン

ド推進には日本の伝統文化も大きな武器にな

り得ると考え施設内に能楽堂を誘致するな

ど商品の販売だけでなく日本文化の発信

拠点にしていきたいと思っています

文化の発信ということでは当社は海外

の事業拠点において伝統的な日本文化を紹

介する活動を行っています昨年はガーナの

「日本週間2016」今年はイランの「日本

文化月間」にあわせて社員を現地に派遣し

書道や着物の着付け茶道華道巻きずし

づくりなどのデモンストレーションを行いま

した過去にはベトナムミャンマーなど

でこうした活動を展開しています現地コミ

ュニティーとの良好な関係構築が主な目的で

すが日本文化の発信という面でもお役に

立っているのではないかと思います

このほか日中の相互理解を深めてもらお

うと中国人留学生の支援を行っています

彼らと話をすると日本に興味を持ったきっ

かけは日本の漫画やアニメ小説だという

人が多くやはり日本に来てもらうには

日本の文化コンテンツを積極的に発信し

興味を持ってもらう努力が肝要であると実感

します当社もビジネスあるいは社会貢献

活動を通じてそうした活動を続けていきた

いと思っています

根本

次に依田部会長より日本のコンテ

ンツの海外展開に関する現状と課題等につい

てお伺いしたいと思います

依田

私が「コンテンツ」という言葉を使い

はじめて15年がたちました

20世紀は米国の時代で米国が映画音楽

等の文化面で海外進出を果たし世界規模で

大きなマーケットを築き上げたことは皆さ

んご存じのとおりです韓国では1997

年のアジア通貨危機の際当時の金大中大統

領が「車1台より映画を1本」というスロ

ーガンを掲げコンテンツ産業に政府予算を

投入して韓流ブームの基礎を築き韓国製

台湾トモズ新竹巨城店提供住友商事

ミャンマーでの日本文化紹介活動提供住友商事

1220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017513

特集

ネットで多様な情報発信を

品のブランド力アップアジア市場から世界

に向けての開拓に成功したのです

日本でも周回遅れの感はありますが政

官民が一体となってコンテンツ産業の振興に

向けて取り組みを進めてきました経団連で

は2003年にエンターテインメントコ

ンテンツ産業部会を設置し翌2004年3

月に提言「『知的財産推進計画』の改定に向

けて」を取りまとめ公表しました同年5月

には議員立法による「コンテンツの創造保

護及び活用の促進に関する法律」が成立施

行されコンテンツ産業振興の機運が急速に

高まりました翌2005年6月には経団連

の同提言に基づきVIPO(映像産業振興機

構)が設立されましたVIPOは2012

年に経済産業省と総務省の補助を受けて基金

を造成しJ‐LOP(ジャパンコンテンツ

ローカライズプロモーション支援助成金)

事業を受託しました以来4年間で約282

億円の補助金(J‐LOPJ‐LOP+

JLOP)事業を実施しコンテンツのロー

カライズプロモーション活動支援コンテ

ンツの海外展開促進事業の支援を行ってきま

した現在平成28年度補正予算で60億円の

補助金を「J‐LOP4」として募集中です

このJ‐LOP事業が第2次安倍内閣の発

足と軌を一にして2013年3月から始ま

り同年11月にクールジャパン機構(海外

需要開拓支援機構)が設立されますクール

ジャパン機構は民間投資の呼び水としての

リスクマネーを提供し日本の経済成長につ

なげる海外需要獲得の拠点流通網の整備な

どを展開しており2017年2月現在で19

件455億円余りの投資を行っています

私はジャパンブランドとは日本人の

持つ細やかな気配りや質の高い成果を目指

す真摯な姿勢秩序と礼儀を重んじる道徳観

などがそれぞれの仕事を通じて伝わってく

ることではないかと考えていますコンテン

ツの役割は言語を超えて伝わるという特性

を活かして海外展開を進め日本への親近

感や好感度を高めインバウンドや地域振興

につなげることです2015年の統計です

が日本コンテンツの海外売り上げが約1

7兆円(デジタルコンテンツ白書)でVIP

Oの試算によるとその経済波及効果は3

1兆円訪日客約2000万人のうちコン

テンツに起因した訪日客は約400万人で

その旅行消費額は約7000億円(観光庁

資料)その経済波及効果は14兆円と

いう数字があります他産業との融合が大き

な経済波及効果を生むコンテンツの海外展開

によって日本の魅力を効果的に発信し日

本ブームを創出することができるようもっ

と工夫努力をする必要があると思います

同時にコンテンツ支援策はすぐに目に見え

る結果が出る性質のものではないので国も

腰を据えて着実に取り組むことが必要だと考

えます

根本

クールジャパンを海外へ発信展開し

ていくにあたっては日本のことを熟知して

いる外国の方々の指摘から謙虚に学び日本

の魅力がより伝わるよう努力し続けることが

重要となりますピーターバラカンさんは

日本の魅力を紹介するテレビ番組を通じて実

際に情報発信をされていますがまずジャ

パンブランド日本の魅力をどのようにと

らえていますかまた世界に向けてそれ

らをどのように発信していくのがよいとお考

えでしょうか

バラカン

僕は2003年からNHKワー

ルドで『ジャパノロジー』というテレビ番組

の司会をしています30分の短い番組ですけ

れど週に1回世界に向けて日本のいろい

ろなこと割と初歩的なことを丁寧にわ

かりやすく紹介していますこの番組が注目

され始めたのは3年前ぐらいで視聴者の多

くはテレビではなくインターネットで見

ています

視聴者は多分日本に対する何らかの興

味があってネットで検索したら偶然この番

組が出てきて見たら面白いから立て続けに

何本も見たという人ですFacebook

そういう書き込みが何度もありました日本

から発信することはもちろん重要です加え

て海外の人々が日本に興味を持ったときに

もっとアクセスしやすい状況をつくることが

大事なのではないかとこれらの体験から感

じています

例えばインターネットの普及にあわせ20

年ほど前からラジオ番組のウェブ上での同

時配信サービスが世界中で広まりました日

本では「radiko

」というサービスが2010

年からやっと始まったもののラジオの放送

電波の受信が可能

な範囲では無料で

聞けるのですが

例えば関東の番組

を関西で聞く場合

は有料ですし海

外からは聞けませ

ん世界のどこで

もできることが日

本ではできない

という本当に摩訶

不思議な話なので

根本

日本の放送

法や知的財産など

の規制の問題がか

らんでいるのでは

ないかと思われま

バラカン

例えば『ジャパノロジー』を通

じて僕のことを知った人から「あなたのラジ

オ番組を聞いてみたい」と言われても「ご

めんなさい日本の番組は海外で聞けません」

と答えるしかありませんわざわざVPN

(Virtual

Private

Network

)という仕組みを

使って番組を聞いてくれている人がたまにい

るのですがそこまでしなければいけない

日本のコンテンツ発信している情報をも

っと自由に世界中の人々が受けられるような

インフラを整備しなくてはいけないととて

も切実に感じています

根本

わかりやすい例を挙げてご説明いただ

きありがとうございました日本について

の情報発信を強化するうえで規制緩和が課

題であるということですねところで日本

の紹介番組のなかで特にこのテーマを取り

上げると視聴者の反応が良いという分野はあ

りますか

バラカン

本当にさまざまですね中村副議

長のお話にあったように日本に興味を持つ

人は子どものころに日本の漫画やアニメに

触れていた人が多いのは確かです一度日本

に興味を持ったら例えば『ジャパノロジー』

を見るようになってそのうちに「日本らし

さ」というものに気づくようになります例

えば日本人が非常に細かく気を配ること

httpswww3nhkorjpnhkworldentvjapanologyplus放送日NHKワールドTV(火)2330~2358ほか

BS1(火)330~358(月曜深夜)

27HairdressingThe customers eyes and nose arecovered with a towel to protect fromsplashes and to aid relaxation

提供NHK

5Breakfast

1420175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017515

特集

食に対する「こだわり」が

味の素のジャパンブランド

ネット時代の情報発信に

あわせた制度改革が必要

物を丁寧につくることとかですねそうする

とさらに日本に興味を持って「一度行

ってみたい」という人が出てくるそういう

人たちからもよくSNSで連絡をいただき

ます

ですから何を発信するかということより

多様なものを発信することそして興味を持

った人がさらにアクセスしやすい環境をつく

ることむしろそういうことが大事なのでは

ないかという気がします「日本製品は質

が高くて壊れない」ということは世界中です

でによく知られていますだからこれに加

えて日本の文化など多様な情報をわかりや

すく発信し続けることが一番大事だと思いま

根本

それでは別の切り口からご意見を伺い

ます日本人の伝統的な食文化として「和

食」がユネスコの無形文化遺産(世界遺産)に

登録されましたその際にも料理だけでは

なく食にまつわる文化「自然を尊ぶ」とい

う日本人の気質に基づいた「食」に関する

「習わし」に対して非常にユニークな評価

がなされました高藤部会長グローバルビ

ジネスのご経験を通じて世界の人々から見

た和食文化の価値や魅力さらにはジャパ

ンブランドへのお考えについてお聞かせく

ださい

高藤

一口に「日本食」といってもその定

義は定まっておらず人それぞれの考え方

意見があるだろうと思います仮に日本食

を定義するため日本のわびさびを表す懐

石料理を右端にその対極にラーメンを置く

としてその間には天ぷらすしすき焼

きしゃぶしゃぶあるいは洋食などが入っ

てきますラーメンはもともと古来の日本食

ではありません洋食も欧米にはない料理で

すこれらは外のものを取り入れて日本的

なものにアレンジしてしまうという日本人

の長所を非常によく表していると思います

また北海道から九州までそれぞれの土地

のラーメンが存在するということも日本独

自の食文化といえるでしょうこのように

外国人からすると驚くほどの幅広さと奥深さ

があることが日本食の大きな魅力になって

いるのだと思います

とはいえ食の分野でグローバルにビジネ

スを展開しているとどうしても文化の壁に

ぶつかりますいかに日本食が素晴らしいか

らといって世界中の人が朝昼晩日本食

を食べるようになることはまずあり得ませ

んやはりその土地に合った食べ物その

土地の人が好む味があるわけです

当社では調味料の「味の素」を世界中で

販売していますがそれ以外の調味料につい

てはそれぞれの土地に合ったネーミング

プランニングで展開していますただ世界

中どこでも同じ考え方で商品をつくっていま

すそれは品質の高さ安心安全おいし

さへのこだわりですもちろんおいしさは

地域によって異なってきますからその地域

の人が一番おいしいと感じるのはどのような

ものか徹底的にこだわってつくっています

これは当社で働く従業員例えば日本

ブラジル米国タイインドネシアフラ

ンスと国籍はさまざまですが全員が共有し

ている考え方ですこの考え方を根っこにし

て全世界で商品をつくり全世界の消費者

にお届けしている当社でいえばこの「こ

だわり」がジャパンブランドであるとい

うことになろうかと思います

根本

先ほどバラカンさんから「海外では日

本のラジオ番組がネットで聞けない」という

お話がありました著作権の問題など海外

に日本のコンテンツを発信するときにさま

ざまなご苦労があると思いますがいかがで

しょうか

中村

当社も日本の映画やテレビ番組など

を買い付けて海外に販売するビジネスを展

開していますシンガポールの現地法人で

25年前から毎週1時間日本を紹介するテレ

ビ番組の枠を持ちこの12年間は日本の旅番

組を放映していますあまり観光客が行かな

いような場所を紹介しているのですが非常

に人気があってシンガポールを中心に30カ

国ほどで放映されていますシンガポールの

リーシェンロン首相が家族旅行で北海道に

いらした際定番の観光ルートではない場所

に関心を持たれたそうですのでこの番組が

きっかけだったかもしれませんこの事業は

ビジネスとして採算が取れていますが定常

的な人気番組となるにはある程度の時間と

コストがかかりますより積極的に日本のコ

ンテンツを海外に展開するにはやはり何ら

かの支援が必要ですこれについては20

13年にBEAJ(放送コンテンツ海外展開

促進機構)が設立されさまざまな支援が受

けられるようになりました現在では官民

連携により日本を紹介する番組が現地放

送局と日本の放送局との間で共同制作され

約40件の番組がASEAN6カ国で放送され

ていますそれらのコンテンツが日本に興味

を持ってもらうきっかけになりインバウン

ドにつながるということを考えるとさらに

一層官民が連携して取り組むべきだと考えま

依田

海外で事業を展開する場合何もない

所へ出ていくわけですから具体的な活動拠

点をつくる(地上戦)と同時にコンテンツが

先兵となり情報発信をしていく(空中戦)とい

う戦略が必要です情報発信にはインターネ

ットが不可欠ですがそこにはどうしても著

作権の問題が出てきますわが国では特定

困難な権利者にまで使用許可申請が必

要な期間が長く続きました一部改善

は見られるものの依然制約のなかで

活動しているのが現状です権利者の

権利制限フェアユースなど権利者

との対話と相互理解を深めもっとス

ピードを上げて解決し諸外国並みの

コンテンツの活用環境を創出していく

必要があると思います

根本

バラカンさんいかがでしょう

バラカン

情報発信ということに関し

て訪日した人たちから「いつどこ

でどんなコンサートが行われているか

を知りたい」という声をよく耳にしま

すがそうした情報の提供はほとん

どが日本語でなされています多言語

で発信するのが理想ですが少なくとも英語

での発信は必須だと思います

例えばロンドンには「

TimeOut

」とい

うイベント情報誌がありこの東京版が渋谷

駅のインフォメーション等に置いてあります

とてもわかりやすい英語で書かれたフリーペ

ーパーなのですが3カ月に1回の刊行で

ウェブサイトもありますが情報が限られて

いますコンサートに限らず能や歌舞伎

文楽などの伝統芸能も含めて幅広く情報を取提供映像産業振興機構

1620175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017517

特集

「コフェスタ」を世界的な

イベントに育てたい

「モノからコトへ」の時代

文化の力が果たす

役割は大きい

「食」をコンテンツの1つとして

アピールしていきたい

り上げしかも毎日更新されるような多言

語のサイトがあれば重宝されると思います

このような取り組みは莫大なお金がかかる

ものではありませんが民間だけで賄うのは

難しいかもしれません政府が予算を確保し

て外国語ネイティブのスタッフと組んでつ

くるべきだと思います

依田

バラカンさんがおっしゃるとおりイ

ンバウンド向けに日本国内のイベントコン

サート日本食等のジャパンブランドの情

報発信を拡充させていくことは非常に重要で

す英語での発信については10年前に経団

連が中心となって立ち上げたコンテンツポー

タルサイト「JAPACON(ジャパコン)」

のウェブサイトがありますジャパコンは

日本のコンテンツ情報権利者情報を海外に

発信することを目的に設立されましたジャ

パコンのウェブサイトをベースにして政府

から資金を継続的に提供していただければ

言語バリアの解決が早まると思います

成長戦略としての

クールジャパン政策への期待

根本

クールジャパンの推進は成長戦略の

なかで海外の成長市場の取り込みに向けた

施策として位置付けられています政府は

クールジャパン戦略について「情報発信」

「海外への商品サービス展開」「インバウン

ドの国内消費」の各段階をより効果的に展開

し世界の成長を取り込むことで経済成長

につなげるブランド戦略であるとしています

が依田部会長今後クールジャパン政策

を進めるにあたってどのような課題がある

とお考えですか

依田

まず日本の情報が海外に的確に伝わ

っていないという問題があります私たちが

外国に行きますとたくさんのチャンネルか

らさまざまな情報が入ってきますが例え

ばホテルのテレビで視聴できる日本の情報

はNHKの国際放送ぐらいしかありません

そうすると情報番組にしてもドラマにして

も芸術性が高い作品はまだしもポップカ

ルチャーなど大衆的な情報はほとんど得ら

れません在外公館ジャパンハウスJ

ETRO(日本貿易振興機構)など公的機関が

民間企業と連携して情報発信力の強化コ

ンテンツの海外販路開拓にもっと注力して

いく必要があると思います

一方訪日外国人をいかにもてなすかい

かに日本の魅力を知ってもらうかというこ

とも考えなければいけませんこれまで団体

旅行が主流だった中国人観光客も徐々に個

人旅行が増え個人で予定を組んで日本の(食

を含めた)文化歴史おもてなしを楽しむ

ようになってきました地方創生という意味

では素晴らしい傾向ですしかし日本に足

りないのは国際会議場展示場ホテル

ショッピングモール映画上映設備などを備

えた拠点いわゆるMICE(M

eetingIn-

centivetour

Convention

Exhibition

Event

)に対応できる拠点がほとんどないと

いうことです

アジアでは釜山上海香港シンガポー

ル欧州ではカンヌベネチアロンドン

ケルン米国ではロサンゼルスシカゴなど

それぞれ海や川に面したグローバル水準のM

ICE拠点を持っていますコンテンツを含

むさまざまな日本の魅力を一体的に発信する

ためにそうした拠点を構築する必要がある

と思いますしかしながらMICEが話題

になって5〜6年たつと思いますがその後

トーンダウンしあまり動いていない印象があ

ります

一方2007年から毎年秋に「JAPA

N国際コンテンツフェスティバル」通称

「コフェスタ」が開催されています映画

音楽ゲームアニメテレビ番組などエ

ンターテインメントコンテンツおよびファ

ッションデザイン等コンテンツと親和性の

高い産業の総合イベントですこのコフェ

スタを有名な「ミラノサローネ」に匹敵す

るような世界的な多業種融合型イベントに育

てるために日本のコンテンツ産業のみなら

ず多くの産業界で構成される経団連が旗振

り役となり経済界全体が力を結集し政府

と一体となって長期的に取り組んでいかなけ

ればならないと思っています

根本

依田部会長からMICEに関するお話

がありました中村副議長住友商事では特

に海外でそうしたプロジェクトにかかわって

こられたと思いますがいかがでしょうか

中村

確かに依田部会長が挙げられたよう

なMICEの拠点は日本にはないと言わざる

を得ません今後もっとインバウンドを呼

び込むためにはそうした施設ハード面で

の拡充が必要です

一方で先ほど申しあげた「モノからコト

へ」という観点から見ると例えば東京は

地下鉄など公共の交通機関が発達しており

非常に便利なのですが外国人には複雑すぎ

ます表示や案内の多言語化を含めたハード

面のバリアフリー化を進める必要がある一方

で「親切な日本人が地下鉄の乗り方を教え

てくれた」という体験の方が旅の醍醐味と

いう意味では価値のあることなのかもしれま

せんそう考えると教育を含めたソフト面

の充実も大切だと思います

単に「モノを買っていただく」という考え

方ならば日本製の質の高い商品を並べてお

けばよかったわけですが「モノからコトへ」

という時代には体験であるとかおもてな

しの精神であるとか文化の力が果たす役割

が大きいのではないでしょうか文化を発信

して日本の魅力を伝えるという面でもイン

バウンドを迎えるという面でもまだまだや

るべきことがあると思っています

根本

高藤部会長各国大使館あるいは大使

公邸などを使って日本食を紹介するイベント

が多く見られるようになってきましたし食

をテーマにした2015年のミラノ万博では

日本館は大盛況であったと伺っています食

の分野における情報発信で何か課題はあるで

しょうか

高藤

おっしゃるとおり各国の日本大使館

提供映像産業振興機構

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

1220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017513

特集

ネットで多様な情報発信を

品のブランド力アップアジア市場から世界

に向けての開拓に成功したのです

日本でも周回遅れの感はありますが政

官民が一体となってコンテンツ産業の振興に

向けて取り組みを進めてきました経団連で

は2003年にエンターテインメントコ

ンテンツ産業部会を設置し翌2004年3

月に提言「『知的財産推進計画』の改定に向

けて」を取りまとめ公表しました同年5月

には議員立法による「コンテンツの創造保

護及び活用の促進に関する法律」が成立施

行されコンテンツ産業振興の機運が急速に

高まりました翌2005年6月には経団連

の同提言に基づきVIPO(映像産業振興機

構)が設立されましたVIPOは2012

年に経済産業省と総務省の補助を受けて基金

を造成しJ‐LOP(ジャパンコンテンツ

ローカライズプロモーション支援助成金)

事業を受託しました以来4年間で約282

億円の補助金(J‐LOPJ‐LOP+

JLOP)事業を実施しコンテンツのロー

カライズプロモーション活動支援コンテ

ンツの海外展開促進事業の支援を行ってきま

した現在平成28年度補正予算で60億円の

補助金を「J‐LOP4」として募集中です

このJ‐LOP事業が第2次安倍内閣の発

足と軌を一にして2013年3月から始ま

り同年11月にクールジャパン機構(海外

需要開拓支援機構)が設立されますクール

ジャパン機構は民間投資の呼び水としての

リスクマネーを提供し日本の経済成長につ

なげる海外需要獲得の拠点流通網の整備な

どを展開しており2017年2月現在で19

件455億円余りの投資を行っています

私はジャパンブランドとは日本人の

持つ細やかな気配りや質の高い成果を目指

す真摯な姿勢秩序と礼儀を重んじる道徳観

などがそれぞれの仕事を通じて伝わってく

ることではないかと考えていますコンテン

ツの役割は言語を超えて伝わるという特性

を活かして海外展開を進め日本への親近

感や好感度を高めインバウンドや地域振興

につなげることです2015年の統計です

が日本コンテンツの海外売り上げが約1

7兆円(デジタルコンテンツ白書)でVIP

Oの試算によるとその経済波及効果は3

1兆円訪日客約2000万人のうちコン

テンツに起因した訪日客は約400万人で

その旅行消費額は約7000億円(観光庁

資料)その経済波及効果は14兆円と

いう数字があります他産業との融合が大き

な経済波及効果を生むコンテンツの海外展開

によって日本の魅力を効果的に発信し日

本ブームを創出することができるようもっ

と工夫努力をする必要があると思います

同時にコンテンツ支援策はすぐに目に見え

る結果が出る性質のものではないので国も

腰を据えて着実に取り組むことが必要だと考

えます

根本

クールジャパンを海外へ発信展開し

ていくにあたっては日本のことを熟知して

いる外国の方々の指摘から謙虚に学び日本

の魅力がより伝わるよう努力し続けることが

重要となりますピーターバラカンさんは

日本の魅力を紹介するテレビ番組を通じて実

際に情報発信をされていますがまずジャ

パンブランド日本の魅力をどのようにと

らえていますかまた世界に向けてそれ

らをどのように発信していくのがよいとお考

えでしょうか

バラカン

僕は2003年からNHKワー

ルドで『ジャパノロジー』というテレビ番組

の司会をしています30分の短い番組ですけ

れど週に1回世界に向けて日本のいろい

ろなこと割と初歩的なことを丁寧にわ

かりやすく紹介していますこの番組が注目

され始めたのは3年前ぐらいで視聴者の多

くはテレビではなくインターネットで見

ています

視聴者は多分日本に対する何らかの興

味があってネットで検索したら偶然この番

組が出てきて見たら面白いから立て続けに

何本も見たという人ですFacebook

そういう書き込みが何度もありました日本

から発信することはもちろん重要です加え

て海外の人々が日本に興味を持ったときに

もっとアクセスしやすい状況をつくることが

大事なのではないかとこれらの体験から感

じています

例えばインターネットの普及にあわせ20

年ほど前からラジオ番組のウェブ上での同

時配信サービスが世界中で広まりました日

本では「radiko

」というサービスが2010

年からやっと始まったもののラジオの放送

電波の受信が可能

な範囲では無料で

聞けるのですが

例えば関東の番組

を関西で聞く場合

は有料ですし海

外からは聞けませ

ん世界のどこで

もできることが日

本ではできない

という本当に摩訶

不思議な話なので

根本

日本の放送

法や知的財産など

の規制の問題がか

らんでいるのでは

ないかと思われま

バラカン

例えば『ジャパノロジー』を通

じて僕のことを知った人から「あなたのラジ

オ番組を聞いてみたい」と言われても「ご

めんなさい日本の番組は海外で聞けません」

と答えるしかありませんわざわざVPN

(Virtual

Private

Network

)という仕組みを

使って番組を聞いてくれている人がたまにい

るのですがそこまでしなければいけない

日本のコンテンツ発信している情報をも

っと自由に世界中の人々が受けられるような

インフラを整備しなくてはいけないととて

も切実に感じています

根本

わかりやすい例を挙げてご説明いただ

きありがとうございました日本について

の情報発信を強化するうえで規制緩和が課

題であるということですねところで日本

の紹介番組のなかで特にこのテーマを取り

上げると視聴者の反応が良いという分野はあ

りますか

バラカン

本当にさまざまですね中村副議

長のお話にあったように日本に興味を持つ

人は子どものころに日本の漫画やアニメに

触れていた人が多いのは確かです一度日本

に興味を持ったら例えば『ジャパノロジー』

を見るようになってそのうちに「日本らし

さ」というものに気づくようになります例

えば日本人が非常に細かく気を配ること

httpswww3nhkorjpnhkworldentvjapanologyplus放送日NHKワールドTV(火)2330~2358ほか

BS1(火)330~358(月曜深夜)

27HairdressingThe customers eyes and nose arecovered with a towel to protect fromsplashes and to aid relaxation

提供NHK

5Breakfast

1420175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017515

特集

食に対する「こだわり」が

味の素のジャパンブランド

ネット時代の情報発信に

あわせた制度改革が必要

物を丁寧につくることとかですねそうする

とさらに日本に興味を持って「一度行

ってみたい」という人が出てくるそういう

人たちからもよくSNSで連絡をいただき

ます

ですから何を発信するかということより

多様なものを発信することそして興味を持

った人がさらにアクセスしやすい環境をつく

ることむしろそういうことが大事なのでは

ないかという気がします「日本製品は質

が高くて壊れない」ということは世界中です

でによく知られていますだからこれに加

えて日本の文化など多様な情報をわかりや

すく発信し続けることが一番大事だと思いま

根本

それでは別の切り口からご意見を伺い

ます日本人の伝統的な食文化として「和

食」がユネスコの無形文化遺産(世界遺産)に

登録されましたその際にも料理だけでは

なく食にまつわる文化「自然を尊ぶ」とい

う日本人の気質に基づいた「食」に関する

「習わし」に対して非常にユニークな評価

がなされました高藤部会長グローバルビ

ジネスのご経験を通じて世界の人々から見

た和食文化の価値や魅力さらにはジャパ

ンブランドへのお考えについてお聞かせく

ださい

高藤

一口に「日本食」といってもその定

義は定まっておらず人それぞれの考え方

意見があるだろうと思います仮に日本食

を定義するため日本のわびさびを表す懐

石料理を右端にその対極にラーメンを置く

としてその間には天ぷらすしすき焼

きしゃぶしゃぶあるいは洋食などが入っ

てきますラーメンはもともと古来の日本食

ではありません洋食も欧米にはない料理で

すこれらは外のものを取り入れて日本的

なものにアレンジしてしまうという日本人

の長所を非常によく表していると思います

また北海道から九州までそれぞれの土地

のラーメンが存在するということも日本独

自の食文化といえるでしょうこのように

外国人からすると驚くほどの幅広さと奥深さ

があることが日本食の大きな魅力になって

いるのだと思います

とはいえ食の分野でグローバルにビジネ

スを展開しているとどうしても文化の壁に

ぶつかりますいかに日本食が素晴らしいか

らといって世界中の人が朝昼晩日本食

を食べるようになることはまずあり得ませ

んやはりその土地に合った食べ物その

土地の人が好む味があるわけです

当社では調味料の「味の素」を世界中で

販売していますがそれ以外の調味料につい

てはそれぞれの土地に合ったネーミング

プランニングで展開していますただ世界

中どこでも同じ考え方で商品をつくっていま

すそれは品質の高さ安心安全おいし

さへのこだわりですもちろんおいしさは

地域によって異なってきますからその地域

の人が一番おいしいと感じるのはどのような

ものか徹底的にこだわってつくっています

これは当社で働く従業員例えば日本

ブラジル米国タイインドネシアフラ

ンスと国籍はさまざまですが全員が共有し

ている考え方ですこの考え方を根っこにし

て全世界で商品をつくり全世界の消費者

にお届けしている当社でいえばこの「こ

だわり」がジャパンブランドであるとい

うことになろうかと思います

根本

先ほどバラカンさんから「海外では日

本のラジオ番組がネットで聞けない」という

お話がありました著作権の問題など海外

に日本のコンテンツを発信するときにさま

ざまなご苦労があると思いますがいかがで

しょうか

中村

当社も日本の映画やテレビ番組など

を買い付けて海外に販売するビジネスを展

開していますシンガポールの現地法人で

25年前から毎週1時間日本を紹介するテレ

ビ番組の枠を持ちこの12年間は日本の旅番

組を放映していますあまり観光客が行かな

いような場所を紹介しているのですが非常

に人気があってシンガポールを中心に30カ

国ほどで放映されていますシンガポールの

リーシェンロン首相が家族旅行で北海道に

いらした際定番の観光ルートではない場所

に関心を持たれたそうですのでこの番組が

きっかけだったかもしれませんこの事業は

ビジネスとして採算が取れていますが定常

的な人気番組となるにはある程度の時間と

コストがかかりますより積極的に日本のコ

ンテンツを海外に展開するにはやはり何ら

かの支援が必要ですこれについては20

13年にBEAJ(放送コンテンツ海外展開

促進機構)が設立されさまざまな支援が受

けられるようになりました現在では官民

連携により日本を紹介する番組が現地放

送局と日本の放送局との間で共同制作され

約40件の番組がASEAN6カ国で放送され

ていますそれらのコンテンツが日本に興味

を持ってもらうきっかけになりインバウン

ドにつながるということを考えるとさらに

一層官民が連携して取り組むべきだと考えま

依田

海外で事業を展開する場合何もない

所へ出ていくわけですから具体的な活動拠

点をつくる(地上戦)と同時にコンテンツが

先兵となり情報発信をしていく(空中戦)とい

う戦略が必要です情報発信にはインターネ

ットが不可欠ですがそこにはどうしても著

作権の問題が出てきますわが国では特定

困難な権利者にまで使用許可申請が必

要な期間が長く続きました一部改善

は見られるものの依然制約のなかで

活動しているのが現状です権利者の

権利制限フェアユースなど権利者

との対話と相互理解を深めもっとス

ピードを上げて解決し諸外国並みの

コンテンツの活用環境を創出していく

必要があると思います

根本

バラカンさんいかがでしょう

バラカン

情報発信ということに関し

て訪日した人たちから「いつどこ

でどんなコンサートが行われているか

を知りたい」という声をよく耳にしま

すがそうした情報の提供はほとん

どが日本語でなされています多言語

で発信するのが理想ですが少なくとも英語

での発信は必須だと思います

例えばロンドンには「

TimeOut

」とい

うイベント情報誌がありこの東京版が渋谷

駅のインフォメーション等に置いてあります

とてもわかりやすい英語で書かれたフリーペ

ーパーなのですが3カ月に1回の刊行で

ウェブサイトもありますが情報が限られて

いますコンサートに限らず能や歌舞伎

文楽などの伝統芸能も含めて幅広く情報を取提供映像産業振興機構

1620175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017517

特集

「コフェスタ」を世界的な

イベントに育てたい

「モノからコトへ」の時代

文化の力が果たす

役割は大きい

「食」をコンテンツの1つとして

アピールしていきたい

り上げしかも毎日更新されるような多言

語のサイトがあれば重宝されると思います

このような取り組みは莫大なお金がかかる

ものではありませんが民間だけで賄うのは

難しいかもしれません政府が予算を確保し

て外国語ネイティブのスタッフと組んでつ

くるべきだと思います

依田

バラカンさんがおっしゃるとおりイ

ンバウンド向けに日本国内のイベントコン

サート日本食等のジャパンブランドの情

報発信を拡充させていくことは非常に重要で

す英語での発信については10年前に経団

連が中心となって立ち上げたコンテンツポー

タルサイト「JAPACON(ジャパコン)」

のウェブサイトがありますジャパコンは

日本のコンテンツ情報権利者情報を海外に

発信することを目的に設立されましたジャ

パコンのウェブサイトをベースにして政府

から資金を継続的に提供していただければ

言語バリアの解決が早まると思います

成長戦略としての

クールジャパン政策への期待

根本

クールジャパンの推進は成長戦略の

なかで海外の成長市場の取り込みに向けた

施策として位置付けられています政府は

クールジャパン戦略について「情報発信」

「海外への商品サービス展開」「インバウン

ドの国内消費」の各段階をより効果的に展開

し世界の成長を取り込むことで経済成長

につなげるブランド戦略であるとしています

が依田部会長今後クールジャパン政策

を進めるにあたってどのような課題がある

とお考えですか

依田

まず日本の情報が海外に的確に伝わ

っていないという問題があります私たちが

外国に行きますとたくさんのチャンネルか

らさまざまな情報が入ってきますが例え

ばホテルのテレビで視聴できる日本の情報

はNHKの国際放送ぐらいしかありません

そうすると情報番組にしてもドラマにして

も芸術性が高い作品はまだしもポップカ

ルチャーなど大衆的な情報はほとんど得ら

れません在外公館ジャパンハウスJ

ETRO(日本貿易振興機構)など公的機関が

民間企業と連携して情報発信力の強化コ

ンテンツの海外販路開拓にもっと注力して

いく必要があると思います

一方訪日外国人をいかにもてなすかい

かに日本の魅力を知ってもらうかというこ

とも考えなければいけませんこれまで団体

旅行が主流だった中国人観光客も徐々に個

人旅行が増え個人で予定を組んで日本の(食

を含めた)文化歴史おもてなしを楽しむ

ようになってきました地方創生という意味

では素晴らしい傾向ですしかし日本に足

りないのは国際会議場展示場ホテル

ショッピングモール映画上映設備などを備

えた拠点いわゆるMICE(M

eetingIn-

centivetour

Convention

Exhibition

Event

)に対応できる拠点がほとんどないと

いうことです

アジアでは釜山上海香港シンガポー

ル欧州ではカンヌベネチアロンドン

ケルン米国ではロサンゼルスシカゴなど

それぞれ海や川に面したグローバル水準のM

ICE拠点を持っていますコンテンツを含

むさまざまな日本の魅力を一体的に発信する

ためにそうした拠点を構築する必要がある

と思いますしかしながらMICEが話題

になって5〜6年たつと思いますがその後

トーンダウンしあまり動いていない印象があ

ります

一方2007年から毎年秋に「JAPA

N国際コンテンツフェスティバル」通称

「コフェスタ」が開催されています映画

音楽ゲームアニメテレビ番組などエ

ンターテインメントコンテンツおよびファ

ッションデザイン等コンテンツと親和性の

高い産業の総合イベントですこのコフェ

スタを有名な「ミラノサローネ」に匹敵す

るような世界的な多業種融合型イベントに育

てるために日本のコンテンツ産業のみなら

ず多くの産業界で構成される経団連が旗振

り役となり経済界全体が力を結集し政府

と一体となって長期的に取り組んでいかなけ

ればならないと思っています

根本

依田部会長からMICEに関するお話

がありました中村副議長住友商事では特

に海外でそうしたプロジェクトにかかわって

こられたと思いますがいかがでしょうか

中村

確かに依田部会長が挙げられたよう

なMICEの拠点は日本にはないと言わざる

を得ません今後もっとインバウンドを呼

び込むためにはそうした施設ハード面で

の拡充が必要です

一方で先ほど申しあげた「モノからコト

へ」という観点から見ると例えば東京は

地下鉄など公共の交通機関が発達しており

非常に便利なのですが外国人には複雑すぎ

ます表示や案内の多言語化を含めたハード

面のバリアフリー化を進める必要がある一方

で「親切な日本人が地下鉄の乗り方を教え

てくれた」という体験の方が旅の醍醐味と

いう意味では価値のあることなのかもしれま

せんそう考えると教育を含めたソフト面

の充実も大切だと思います

単に「モノを買っていただく」という考え

方ならば日本製の質の高い商品を並べてお

けばよかったわけですが「モノからコトへ」

という時代には体験であるとかおもてな

しの精神であるとか文化の力が果たす役割

が大きいのではないでしょうか文化を発信

して日本の魅力を伝えるという面でもイン

バウンドを迎えるという面でもまだまだや

るべきことがあると思っています

根本

高藤部会長各国大使館あるいは大使

公邸などを使って日本食を紹介するイベント

が多く見られるようになってきましたし食

をテーマにした2015年のミラノ万博では

日本館は大盛況であったと伺っています食

の分野における情報発信で何か課題はあるで

しょうか

高藤

おっしゃるとおり各国の日本大使館

提供映像産業振興機構

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

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成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

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特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

1420175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017515

特集

食に対する「こだわり」が

味の素のジャパンブランド

ネット時代の情報発信に

あわせた制度改革が必要

物を丁寧につくることとかですねそうする

とさらに日本に興味を持って「一度行

ってみたい」という人が出てくるそういう

人たちからもよくSNSで連絡をいただき

ます

ですから何を発信するかということより

多様なものを発信することそして興味を持

った人がさらにアクセスしやすい環境をつく

ることむしろそういうことが大事なのでは

ないかという気がします「日本製品は質

が高くて壊れない」ということは世界中です

でによく知られていますだからこれに加

えて日本の文化など多様な情報をわかりや

すく発信し続けることが一番大事だと思いま

根本

それでは別の切り口からご意見を伺い

ます日本人の伝統的な食文化として「和

食」がユネスコの無形文化遺産(世界遺産)に

登録されましたその際にも料理だけでは

なく食にまつわる文化「自然を尊ぶ」とい

う日本人の気質に基づいた「食」に関する

「習わし」に対して非常にユニークな評価

がなされました高藤部会長グローバルビ

ジネスのご経験を通じて世界の人々から見

た和食文化の価値や魅力さらにはジャパ

ンブランドへのお考えについてお聞かせく

ださい

高藤

一口に「日本食」といってもその定

義は定まっておらず人それぞれの考え方

意見があるだろうと思います仮に日本食

を定義するため日本のわびさびを表す懐

石料理を右端にその対極にラーメンを置く

としてその間には天ぷらすしすき焼

きしゃぶしゃぶあるいは洋食などが入っ

てきますラーメンはもともと古来の日本食

ではありません洋食も欧米にはない料理で

すこれらは外のものを取り入れて日本的

なものにアレンジしてしまうという日本人

の長所を非常によく表していると思います

また北海道から九州までそれぞれの土地

のラーメンが存在するということも日本独

自の食文化といえるでしょうこのように

外国人からすると驚くほどの幅広さと奥深さ

があることが日本食の大きな魅力になって

いるのだと思います

とはいえ食の分野でグローバルにビジネ

スを展開しているとどうしても文化の壁に

ぶつかりますいかに日本食が素晴らしいか

らといって世界中の人が朝昼晩日本食

を食べるようになることはまずあり得ませ

んやはりその土地に合った食べ物その

土地の人が好む味があるわけです

当社では調味料の「味の素」を世界中で

販売していますがそれ以外の調味料につい

てはそれぞれの土地に合ったネーミング

プランニングで展開していますただ世界

中どこでも同じ考え方で商品をつくっていま

すそれは品質の高さ安心安全おいし

さへのこだわりですもちろんおいしさは

地域によって異なってきますからその地域

の人が一番おいしいと感じるのはどのような

ものか徹底的にこだわってつくっています

これは当社で働く従業員例えば日本

ブラジル米国タイインドネシアフラ

ンスと国籍はさまざまですが全員が共有し

ている考え方ですこの考え方を根っこにし

て全世界で商品をつくり全世界の消費者

にお届けしている当社でいえばこの「こ

だわり」がジャパンブランドであるとい

うことになろうかと思います

根本

先ほどバラカンさんから「海外では日

本のラジオ番組がネットで聞けない」という

お話がありました著作権の問題など海外

に日本のコンテンツを発信するときにさま

ざまなご苦労があると思いますがいかがで

しょうか

中村

当社も日本の映画やテレビ番組など

を買い付けて海外に販売するビジネスを展

開していますシンガポールの現地法人で

25年前から毎週1時間日本を紹介するテレ

ビ番組の枠を持ちこの12年間は日本の旅番

組を放映していますあまり観光客が行かな

いような場所を紹介しているのですが非常

に人気があってシンガポールを中心に30カ

国ほどで放映されていますシンガポールの

リーシェンロン首相が家族旅行で北海道に

いらした際定番の観光ルートではない場所

に関心を持たれたそうですのでこの番組が

きっかけだったかもしれませんこの事業は

ビジネスとして採算が取れていますが定常

的な人気番組となるにはある程度の時間と

コストがかかりますより積極的に日本のコ

ンテンツを海外に展開するにはやはり何ら

かの支援が必要ですこれについては20

13年にBEAJ(放送コンテンツ海外展開

促進機構)が設立されさまざまな支援が受

けられるようになりました現在では官民

連携により日本を紹介する番組が現地放

送局と日本の放送局との間で共同制作され

約40件の番組がASEAN6カ国で放送され

ていますそれらのコンテンツが日本に興味

を持ってもらうきっかけになりインバウン

ドにつながるということを考えるとさらに

一層官民が連携して取り組むべきだと考えま

依田

海外で事業を展開する場合何もない

所へ出ていくわけですから具体的な活動拠

点をつくる(地上戦)と同時にコンテンツが

先兵となり情報発信をしていく(空中戦)とい

う戦略が必要です情報発信にはインターネ

ットが不可欠ですがそこにはどうしても著

作権の問題が出てきますわが国では特定

困難な権利者にまで使用許可申請が必

要な期間が長く続きました一部改善

は見られるものの依然制約のなかで

活動しているのが現状です権利者の

権利制限フェアユースなど権利者

との対話と相互理解を深めもっとス

ピードを上げて解決し諸外国並みの

コンテンツの活用環境を創出していく

必要があると思います

根本

バラカンさんいかがでしょう

バラカン

情報発信ということに関し

て訪日した人たちから「いつどこ

でどんなコンサートが行われているか

を知りたい」という声をよく耳にしま

すがそうした情報の提供はほとん

どが日本語でなされています多言語

で発信するのが理想ですが少なくとも英語

での発信は必須だと思います

例えばロンドンには「

TimeOut

」とい

うイベント情報誌がありこの東京版が渋谷

駅のインフォメーション等に置いてあります

とてもわかりやすい英語で書かれたフリーペ

ーパーなのですが3カ月に1回の刊行で

ウェブサイトもありますが情報が限られて

いますコンサートに限らず能や歌舞伎

文楽などの伝統芸能も含めて幅広く情報を取提供映像産業振興機構

1620175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017517

特集

「コフェスタ」を世界的な

イベントに育てたい

「モノからコトへ」の時代

文化の力が果たす

役割は大きい

「食」をコンテンツの1つとして

アピールしていきたい

り上げしかも毎日更新されるような多言

語のサイトがあれば重宝されると思います

このような取り組みは莫大なお金がかかる

ものではありませんが民間だけで賄うのは

難しいかもしれません政府が予算を確保し

て外国語ネイティブのスタッフと組んでつ

くるべきだと思います

依田

バラカンさんがおっしゃるとおりイ

ンバウンド向けに日本国内のイベントコン

サート日本食等のジャパンブランドの情

報発信を拡充させていくことは非常に重要で

す英語での発信については10年前に経団

連が中心となって立ち上げたコンテンツポー

タルサイト「JAPACON(ジャパコン)」

のウェブサイトがありますジャパコンは

日本のコンテンツ情報権利者情報を海外に

発信することを目的に設立されましたジャ

パコンのウェブサイトをベースにして政府

から資金を継続的に提供していただければ

言語バリアの解決が早まると思います

成長戦略としての

クールジャパン政策への期待

根本

クールジャパンの推進は成長戦略の

なかで海外の成長市場の取り込みに向けた

施策として位置付けられています政府は

クールジャパン戦略について「情報発信」

「海外への商品サービス展開」「インバウン

ドの国内消費」の各段階をより効果的に展開

し世界の成長を取り込むことで経済成長

につなげるブランド戦略であるとしています

が依田部会長今後クールジャパン政策

を進めるにあたってどのような課題がある

とお考えですか

依田

まず日本の情報が海外に的確に伝わ

っていないという問題があります私たちが

外国に行きますとたくさんのチャンネルか

らさまざまな情報が入ってきますが例え

ばホテルのテレビで視聴できる日本の情報

はNHKの国際放送ぐらいしかありません

そうすると情報番組にしてもドラマにして

も芸術性が高い作品はまだしもポップカ

ルチャーなど大衆的な情報はほとんど得ら

れません在外公館ジャパンハウスJ

ETRO(日本貿易振興機構)など公的機関が

民間企業と連携して情報発信力の強化コ

ンテンツの海外販路開拓にもっと注力して

いく必要があると思います

一方訪日外国人をいかにもてなすかい

かに日本の魅力を知ってもらうかというこ

とも考えなければいけませんこれまで団体

旅行が主流だった中国人観光客も徐々に個

人旅行が増え個人で予定を組んで日本の(食

を含めた)文化歴史おもてなしを楽しむ

ようになってきました地方創生という意味

では素晴らしい傾向ですしかし日本に足

りないのは国際会議場展示場ホテル

ショッピングモール映画上映設備などを備

えた拠点いわゆるMICE(M

eetingIn-

centivetour

Convention

Exhibition

Event

)に対応できる拠点がほとんどないと

いうことです

アジアでは釜山上海香港シンガポー

ル欧州ではカンヌベネチアロンドン

ケルン米国ではロサンゼルスシカゴなど

それぞれ海や川に面したグローバル水準のM

ICE拠点を持っていますコンテンツを含

むさまざまな日本の魅力を一体的に発信する

ためにそうした拠点を構築する必要がある

と思いますしかしながらMICEが話題

になって5〜6年たつと思いますがその後

トーンダウンしあまり動いていない印象があ

ります

一方2007年から毎年秋に「JAPA

N国際コンテンツフェスティバル」通称

「コフェスタ」が開催されています映画

音楽ゲームアニメテレビ番組などエ

ンターテインメントコンテンツおよびファ

ッションデザイン等コンテンツと親和性の

高い産業の総合イベントですこのコフェ

スタを有名な「ミラノサローネ」に匹敵す

るような世界的な多業種融合型イベントに育

てるために日本のコンテンツ産業のみなら

ず多くの産業界で構成される経団連が旗振

り役となり経済界全体が力を結集し政府

と一体となって長期的に取り組んでいかなけ

ればならないと思っています

根本

依田部会長からMICEに関するお話

がありました中村副議長住友商事では特

に海外でそうしたプロジェクトにかかわって

こられたと思いますがいかがでしょうか

中村

確かに依田部会長が挙げられたよう

なMICEの拠点は日本にはないと言わざる

を得ません今後もっとインバウンドを呼

び込むためにはそうした施設ハード面で

の拡充が必要です

一方で先ほど申しあげた「モノからコト

へ」という観点から見ると例えば東京は

地下鉄など公共の交通機関が発達しており

非常に便利なのですが外国人には複雑すぎ

ます表示や案内の多言語化を含めたハード

面のバリアフリー化を進める必要がある一方

で「親切な日本人が地下鉄の乗り方を教え

てくれた」という体験の方が旅の醍醐味と

いう意味では価値のあることなのかもしれま

せんそう考えると教育を含めたソフト面

の充実も大切だと思います

単に「モノを買っていただく」という考え

方ならば日本製の質の高い商品を並べてお

けばよかったわけですが「モノからコトへ」

という時代には体験であるとかおもてな

しの精神であるとか文化の力が果たす役割

が大きいのではないでしょうか文化を発信

して日本の魅力を伝えるという面でもイン

バウンドを迎えるという面でもまだまだや

るべきことがあると思っています

根本

高藤部会長各国大使館あるいは大使

公邸などを使って日本食を紹介するイベント

が多く見られるようになってきましたし食

をテーマにした2015年のミラノ万博では

日本館は大盛況であったと伺っています食

の分野における情報発信で何か課題はあるで

しょうか

高藤

おっしゃるとおり各国の日本大使館

提供映像産業振興機構

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

1620175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017517

特集

「コフェスタ」を世界的な

イベントに育てたい

「モノからコトへ」の時代

文化の力が果たす

役割は大きい

「食」をコンテンツの1つとして

アピールしていきたい

り上げしかも毎日更新されるような多言

語のサイトがあれば重宝されると思います

このような取り組みは莫大なお金がかかる

ものではありませんが民間だけで賄うのは

難しいかもしれません政府が予算を確保し

て外国語ネイティブのスタッフと組んでつ

くるべきだと思います

依田

バラカンさんがおっしゃるとおりイ

ンバウンド向けに日本国内のイベントコン

サート日本食等のジャパンブランドの情

報発信を拡充させていくことは非常に重要で

す英語での発信については10年前に経団

連が中心となって立ち上げたコンテンツポー

タルサイト「JAPACON(ジャパコン)」

のウェブサイトがありますジャパコンは

日本のコンテンツ情報権利者情報を海外に

発信することを目的に設立されましたジャ

パコンのウェブサイトをベースにして政府

から資金を継続的に提供していただければ

言語バリアの解決が早まると思います

成長戦略としての

クールジャパン政策への期待

根本

クールジャパンの推進は成長戦略の

なかで海外の成長市場の取り込みに向けた

施策として位置付けられています政府は

クールジャパン戦略について「情報発信」

「海外への商品サービス展開」「インバウン

ドの国内消費」の各段階をより効果的に展開

し世界の成長を取り込むことで経済成長

につなげるブランド戦略であるとしています

が依田部会長今後クールジャパン政策

を進めるにあたってどのような課題がある

とお考えですか

依田

まず日本の情報が海外に的確に伝わ

っていないという問題があります私たちが

外国に行きますとたくさんのチャンネルか

らさまざまな情報が入ってきますが例え

ばホテルのテレビで視聴できる日本の情報

はNHKの国際放送ぐらいしかありません

そうすると情報番組にしてもドラマにして

も芸術性が高い作品はまだしもポップカ

ルチャーなど大衆的な情報はほとんど得ら

れません在外公館ジャパンハウスJ

ETRO(日本貿易振興機構)など公的機関が

民間企業と連携して情報発信力の強化コ

ンテンツの海外販路開拓にもっと注力して

いく必要があると思います

一方訪日外国人をいかにもてなすかい

かに日本の魅力を知ってもらうかというこ

とも考えなければいけませんこれまで団体

旅行が主流だった中国人観光客も徐々に個

人旅行が増え個人で予定を組んで日本の(食

を含めた)文化歴史おもてなしを楽しむ

ようになってきました地方創生という意味

では素晴らしい傾向ですしかし日本に足

りないのは国際会議場展示場ホテル

ショッピングモール映画上映設備などを備

えた拠点いわゆるMICE(M

eetingIn-

centivetour

Convention

Exhibition

Event

)に対応できる拠点がほとんどないと

いうことです

アジアでは釜山上海香港シンガポー

ル欧州ではカンヌベネチアロンドン

ケルン米国ではロサンゼルスシカゴなど

それぞれ海や川に面したグローバル水準のM

ICE拠点を持っていますコンテンツを含

むさまざまな日本の魅力を一体的に発信する

ためにそうした拠点を構築する必要がある

と思いますしかしながらMICEが話題

になって5〜6年たつと思いますがその後

トーンダウンしあまり動いていない印象があ

ります

一方2007年から毎年秋に「JAPA

N国際コンテンツフェスティバル」通称

「コフェスタ」が開催されています映画

音楽ゲームアニメテレビ番組などエ

ンターテインメントコンテンツおよびファ

ッションデザイン等コンテンツと親和性の

高い産業の総合イベントですこのコフェ

スタを有名な「ミラノサローネ」に匹敵す

るような世界的な多業種融合型イベントに育

てるために日本のコンテンツ産業のみなら

ず多くの産業界で構成される経団連が旗振

り役となり経済界全体が力を結集し政府

と一体となって長期的に取り組んでいかなけ

ればならないと思っています

根本

依田部会長からMICEに関するお話

がありました中村副議長住友商事では特

に海外でそうしたプロジェクトにかかわって

こられたと思いますがいかがでしょうか

中村

確かに依田部会長が挙げられたよう

なMICEの拠点は日本にはないと言わざる

を得ません今後もっとインバウンドを呼

び込むためにはそうした施設ハード面で

の拡充が必要です

一方で先ほど申しあげた「モノからコト

へ」という観点から見ると例えば東京は

地下鉄など公共の交通機関が発達しており

非常に便利なのですが外国人には複雑すぎ

ます表示や案内の多言語化を含めたハード

面のバリアフリー化を進める必要がある一方

で「親切な日本人が地下鉄の乗り方を教え

てくれた」という体験の方が旅の醍醐味と

いう意味では価値のあることなのかもしれま

せんそう考えると教育を含めたソフト面

の充実も大切だと思います

単に「モノを買っていただく」という考え

方ならば日本製の質の高い商品を並べてお

けばよかったわけですが「モノからコトへ」

という時代には体験であるとかおもてな

しの精神であるとか文化の力が果たす役割

が大きいのではないでしょうか文化を発信

して日本の魅力を伝えるという面でもイン

バウンドを迎えるという面でもまだまだや

るべきことがあると思っています

根本

高藤部会長各国大使館あるいは大使

公邸などを使って日本食を紹介するイベント

が多く見られるようになってきましたし食

をテーマにした2015年のミラノ万博では

日本館は大盛況であったと伺っています食

の分野における情報発信で何か課題はあるで

しょうか

高藤

おっしゃるとおり各国の日本大使館

提供映像産業振興機構

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

1820175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017519

特集

口コミが最も効き目がある

日本のコンテンツは

「韓流」を超えられるか

でパーティーやイベントを開いて日本食を

味わってもらうような機会は増えていて当

社が商品を提供することも少なくありません

また安倍総理も外国を訪問される際要

人を招いて日本食を振る舞うなど先頭を切

ってアピールしてくださっています以前と

比べると食文化を発信する場と数は急速に

増えたのではないでしょうか

ただビジネス関係者を対象とする大型の

フェアをもっと定期的に開催すべきだと思

います日本文化を発信するフェアのなかで

も食が1つのコンテンツとして大きな存在

感を示すことができるよう私たち食品分野

の企業も引き続き努力していかなくてはな

りませんそうしたフェアを定期的に行うこ

とが海外展開の大きな源泉になると思いま

すま

た私は直近ではタイに3年ほど駐在

しておりましたが各県の知事が特産品をア

ピールされていました東南アジアでは例

えばリンゴの「ふじ」などは日本ブランドの

果物として広く認知されていますまだまだ

現地では高級品ですが中間層が増えるにつ

れて手に取る人も多くなっています日本

の農産物のおいしさ安心安全は世界に誇

り得るものだと思いますその意味で今後

のアグリビジネスには大きなチャンスがある

とみています

根本

バラカンさんは日本のクールジャパ

ン政策をどのようにご覧になっています

バラカン

僕は本来クールジャパンとい

うのは日本人が自分で言うのではなく相

手が勝手に感じてくれるものだと思っていま

すおそらく英国のブレア政権が打ち出し

た「クールブリタニア」に影響を受けている

のだと思いますがいろいろと疑問に思うと

ころはありますやはり政策的なトップダ

ウンではなく個々人がSNSで発する口コ

ミが最も効き目があると思うのですネット

から自分で見つけてきて「おこれは面白

いじゃない」というのが一番効く

中村副議長から日本の公共交通は便利だ

けれど複雑すぎるというお話がありましたが

今はいろいろなアプリがあるのでかなりわ

かりやすくなってきたとは思いますただ

英語の情報に関してはいろいろと問題があ

る例えば電車のアナウンス英語が増え

てきたのはよいのですがイントネーション

などが極めて不自然で電車に乗るたびにス

トレスを感じます

あるいはエスカレーターで「大変危険で

すから身を乗り出さないよう注意してくだ

さい」と日本語だけでなく英語でもアナウン

スがあります英語圏の人は「子どもではな

いのだからそんなこと言われたくないよ」

と感じる人が多いのではないでしょうか何

を言うべきか文法やイントネーションは正

しいかもっと考えた方がよいと思います

「行きがまもなく参ります」というのを

ldquoBound

for

rdquo

と流していますldquoA

trainiscomingrdquo

などもっと自然な英語の

言い方があるにもかかわらず日本語を直訳

しているだけというケースが多すぎるのです

もっとも表示板もあるので英語で言う必要

は特にありません鉄道会社によってアナウ

ンスは異なりますのできちんと英語ネイテ

ィブのチェックを受けているかどうか英語

話者にはわかってしまいますこういうこと

こそ当たり前にやるべきことではないでし

ょうか

あるいはレストランのメニューの英語表

記でもスペルや言い方が違うことも多いの

です海外旅行した日本人から「こんな変な

日本語があった」という話をよく聞きますが

身の回りに同じことが起こっていますやる

ならばもっと徹底的に正しい英語であっ

てほしいのです

少し脱線してしまいましたが海外から来

た人に日本の良さを伝えることはとても大事

だと思いますその方法として残念ながら

日本語では伝わりませんから伝える側が語

学力を上げるということが1つありますも

う1つ逆に日本人が海外の文化に興味を

持つことも必要だと思います僕が1970

年代に日本に来たころはそういう方が多か

った依田部会長はよくご存じだと思います

が最近洋画を見る人あるいは洋楽を聞

く人が確実に減っていると感じていますこ

れはJ‐POPができたあたりからですね

日本のFM局はほとんどJ‐POPしかか

けなくなった民放はお金のある方向に行く

わけですから宿命的に仕方のないことかも

しれませんが結果的に最近の若い人は

ビートルズの名前ぐらいは知っているけれど

楽曲はあまり知らないようです

自国の良さを人に伝えるには自分の国だ

けではなくて他国のことにも興味を持つ方

が断然良いのですしかしなかなか強制で

きるものでもないしここまで内向きになっ

てしまった日本をどうやって変えていった

らよいのか非常に難しいと思っています

依田

J‐POPの普及自体は素晴らしい

ことだと思います長い間欧米の音楽文化

に浸ってきた日本が洋楽と歌謡曲をミック

スしてJ‐POPを生み出した日本の音楽

産業も大きく発展しました今度はそれを

海外にどうやって打ち出していくかが課題で

す韓国は非常に積極的に韓流ブームを創出

しました日本もさまざまな施策を行って

いるのですがその成果はいまだ実っていな

いと思います

中村

日本のアイドルグループなどが東南ア

ジアや台湾などに行くとすごい人気ですよ

ねその人気にコンテンツがついていってい

ないという感じがします

依田

J‐POPを国外に広めるには欧米

国内外に幅広いネットワークを持ち多様な産業分野に進出している総合商社はジャパンブランドの強化にさまざまな面で貢献できる例えば当社ではタイでテレビ通販事業に参画しており台湾でもドラッグストアなどで日本製品を積極的に取り扱っているまた日本のコンテンツの海外展開も手がけており日本を紹介するテレビ番組はシンガポール25年の歴史を持つ民間主導でここまできたがコンテンツの海外展開は宣伝やローカライズにおける資金面での支援や規制緩和人材育成など政府のサポートも必要である (中村邦晴)

日本の魅力を海外に伝えるためには何を伝えるかという中身の議論も大事だが多様な情報にアクセスしやすい環境をどう整備するかという視点が重要ネット上の口コミ効果は大きく人々は自分で情報を探し出す場合が多い興味を持つきっかけをつくることが大切だ英語をはじめ多言語での情報発信が不可欠だがその内容が正確かつ適切に伝わるよう編集等にもっと外国語ネイティブを関与させるべき私が来日した1970年代と比べて日本人は内向きになってしまった自国に興味を持ってもらうには自らが他国に興味を持つことも大事だ

(ピーターバラカン)

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

2020175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017521

特集

日本食の基礎が学べる

養成機関を海外に

コンテンツに通じたビジネス人材

弁護士の育成が急務

もさることながらまずはアジアにターゲッ

トを絞ることも重要です世界的にパッケー

ジではなかなか買ってもらえなくなっていま

すねアーティストが海外へ進出しイベン

トやコンサートを通してグッズ曲映像を

売るという時代になってきていますですか

ら音楽に関してはあと5年もすると日

本のアーティストの大半は海外に行って演奏

活動をするようになると思います一方映

画やテレビ番組など音楽以外のコンテンツに

関してはわれわれがそのビジネスモデルを

どのように組み立てていくかという課題があ

りすでに新しい動きも始まっております

すなわち米国の映画映像ビジネスは世界

80億人のマーケットに向けて創出されていま

す日本も海外マーケットへの展開は必然の

戦略です

根本

中村副議長住友商事ではかなり実

践されてきたのではないでしょうか

中村

海外へ日本のコンテンツを持っていく

場合さまざまな規制がありますそれに加

えて翻訳などのローカライズ費用人気が

出るまでの広告代などかかりますがそれら

を十分ペイできる収入が得られるかというと

まだまだ厳しいと言わざるを得ませんやは

り固定的な日本ファンをつくる必要がありま

すまた日本の映画テレビ番組は基本

的に日本のマーケットをベースにつくられる

ため制作費が限られますハリウッド映画

などは初めから海外のマーケットを視野に

制作費をかけて大作をつくることができます

そういう意味ではもっとコストをかけてコ

ンテンツがつくれるようにそれなりの対価

が得られるような販売力をつけていく必要が

あると思います

ジャパンブランドを

担う人材その育成

確保のあり方

根本

ジャパンブランドを維持強化して

いくうえで将来にわたる人材の育成確保

は欠かすことができませんそこでジャパ

ンブランドを担う人材に求められる資質や

その育成確保に向けた取り組み等について

それぞれのお立場からのご意見を伺いたいと

思います

はじめに高藤部会長にお伺いします現在

世界全体で約8万軒の日本料理店があるとい

われていますが日本食のクオリティーを維

持するために必要な人材の育成についてお

考えをお聞かせください

高藤

これからの日本食をこれまでのよう

に日本人中心で担っていくのかそれともそ

の国の人が担っていくのかと考えるとそ

の国の人が担っていくというのが最終的に目

指すところなのではないかと思っています

もちろんその国に根差した日本人が担って

もかまわないわけでそこはあまり固く考え

る必要はないでしょう

ではどうやって人材を育成すればよいの

かすでに日本国内でもいわゆる徒弟制度

のようなやり方は前時代的なものとなってお

りクリナリースクール(料理学校)のような

養成機関で基礎を学びある一定のレベルに

達したうえでレストラン割烹料亭など

の現場で腕を磨くという道が一般的ですそ

うした道を海外でもつくっていく必要がある

でしょう

そうした養成機関をつくっていくのは日

本人でも日本をよく知るその国の人でもよ

いと思いますが行政ではなく民間でビジ

ネスとしてやるべきでしょう日本が全部や

るという考え方ではなく現地でそれぞれに

発展していくよう促すという考え方が大切だ

と思います

根本

依田部会長コンテンツ産業の海外展

開に求められる人材像また人材育成に必

要な政府支援施策に関してどのようにお

考えですか

依田

日本人が言語や文化の異なる海外に

行ってどうやってコンテンツを売り込むか

というとき先ほどバラカンさんが指摘され

た語学力の問題が1つもう1つ日本のコ

ンテンツ業界にはビジネスアフェアーズに長

けた人材が圧倒的に不足しているという問

題があります今世界中のマーケットでコ

ンテンツが取引されていますがそうした場

で例えば海外の企業のトップと通訳なしで

心が通い合う交流ができる人材の早急な育成

が必要不可欠です

これに加えてコンテンツ専門の弁護士を

育成することも重要です日本の弁護士は優

秀かもしれませんがハリウッドのネットワ

ークには入り込めません法科大学院の設置

で弁護士数は増えましたが海外の弁護士資

格を持っている人はいまだ少ないと思います

そうした人材を増やして国際交渉力をアッ

プさせていくことが喫緊の課題です

日本のコンテンツ産業には小規模の事務

所や個人のクリエーターたちが支える非常

に属人性の高い構造がありますそうした人

たちをバックアップし海外に出ていくため

のインセンティブを与える必要があります

わが国は国内のコンテンツ市場規模が大きく

無理に海外進出しなくても国内のマーケッ

トで十分でコンテンツの海外展開が進ま

なかったという経緯もありますが今後は海

外市場を念頭に置いた人材育成が重要です

またクリエーターの育成には海外留学

も効果的な手段です例えば映画業界でいえ

ば米国の南カリフォルニア大学ニューヨ

ーク大学スティーブンスピルバーグをは

じめ多くの映画人を輩出したアメリカンフ

ィルムインスティテュートなどがあります

そうした学校に日本人が入学志願しても狭き

門ですまず言葉の壁がありますそれを

乗り越えて合格したとしても今度は資金が

私が「コンテンツ」という言葉を使いはじめて15年がたつ「韓流ブーム」を起こし韓国製品のブランド力アップを成功させた韓国と比較すると周回遅れの感はあるものの現在日本でも政官民一体の取り組みが進みつつある言語を超えて伝わりやすいコンテンツの特性を活かし海外展開を進め日本ブームを創出することで日本の製品サービスのブランド力を高めインバウンドの拡大につなげたいそのためにはコンテンツに精通したビジネス人材と著作権をめぐりグローバルなネットワークを持ち交渉力がある弁護士の育成が急務である (依田 194692)

一口に「日本食」といっても日本伝統の「わびさび」を器の上に表現した懐石料理から外国料理を日本風にアレンジしたラーメンまで非常に幅が広いその多様性こそが日本食の魅力であろう「食」をコンテンツの1つとしてとらえ海外で定期的にフェアを開催するなど食品業界を挙げて発信に取り組んでいきたい当社にとっての「ジャパンブランド」とは品質の高さ安心安全おいしさへのこだわりという考え方そのものであるこの考え方は国内外を問わず当社の従業員全員に共有されている

(高藤悦弘)

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文

2220175

成長戦略を支えるジャパンブランドの発信力強化に向けて

2017523

特集

日本の英語教育は英語が苦手な

子どもを増やしている

人との触れ合いが

目利き耳利きを育てる

ない大企業には人材育成のシステムがあり

ますが個人弱小企業の多いコンテンツ業

界ではやはり国の支援が必要ですしかも

それほど大きな額である必要はありません

根本

バラカンさん依田部会長のお話をお

聞きになっていかがでしょうか

バラカン

お話を聞きながらずっとうなずい

ていましたけれど教育が大きな課題ですね

やはり欧米よりもアジアに集中させた方が

日本の文化が受け入れられやすいかもしれま

せんとはいえアジアだけが世界ではない

のでどうしても外国語を習得する必要は出

てきます別に英語が良いとは言いませんが

国際言語なのでできた方がよい

ただ日本は小学校3年生から英語教育を

始めるというのですが英語を苦手だと考え

る生徒は増え続けていますこれは永遠に続

く課題かもしれません僕自身の経験からい

えば語学は向き不向きではなくやる気が

あり努力すればできるもの楽器を習うの

とすごく似ていますですからどうやっ

てやる気を持たせるかがとても大事で面白

く楽しくやることが一番だと思いますこ

の点人材育成という意味ではすべての面

で関係してくると思います

根本

語学を含めた人材育成という部分は

総合商社が得意としてきたことではないでし

ょうか中村副議長グローバルビジネスの

陣頭指揮を執るお立場から世界で通用する

ビジネス人材をどのようにお考えでしょうか

中村

商社は人材がすべてといってもよいと

思います人がビジネスをつくり大きくし

ていくしたがって人材育成は最重要課題

として取り組んできています

最近使われる「グローバル人材」の要件を

考えてみると確かに語学力は重要な要素で

はありますが言語はコミュニケーションの

ツールにすぎませんできるに越したことは

ないけれどそれがすべてだと考えるのは大

きな間違いですその土地にインサイダーと

して入り込み歴史や文化習慣までを理解

できるような人材を育成する必要があります

一方で自国の歴史や文化をきちんと理

解しておくことも大切です例えば当社では

400年の歴史を持つ住友グループのルーツ

である別子銅山跡の登山研修を行っています

初めは理事以上常務以上と経営幹部に対し

て行っていましたが今は若手にも門戸を開

いて希望者を募って行うようになりました

研修を終えた人は日本の歴史のなかで住友

グループが果たしてきた役割を理解しあら

ためて当社のDNAを体験から刻み込むよう

です

海外スタッフに対しても定期的に日本に

呼び寄せて研修を行っていますが別子の登

山研修等を盛り込み日本の文化や当社グル

ープの歴史を学んでもらっています研修後

にインタビューすると「別子の研修がよか

った」という声が圧倒的に多いのです自分

たちの会社のルーツ事業精神を理解できた

と感じてくれているようです

また日本の質の高いインフラを輸出する

場合例えば鉄道のプロジェクトで線路を

敷いて車両を売って終わりではなくメン

テナンスを含めて現地の人が自分たちで運

営できるようなノウハウを継承し現地人材

を育成することが重要です実際にミャン

マーで鉄道の保線作業訓練を行ったり電気

工事技術者を養成する職業訓練教室を開設し

たりしています

それから日本から海外に留学する人が少

なくなっていることを非常に危惧しています

当社では「TOMODACHI住友商事奨学

金プログラム」を実施しており交換留学生

として米国へ1年間留学する学生に対して1

人150万円の奨学金を支給していますた

だお金を出すだけではなくニューヨークの

オフィスに集まってもらいネットワーキン

グを兼ねた研修を行っていますまた現地

の家庭でホームステイをしてもらったりワ

シントンで識者と話をしてもらったりと米

国を理解し日本の良さを伝えられる人材と

なるよう支援しています

根本

バラカンさん皆さんのお話をお聞き

になってどのような感想を持たれましたか

バラカン

高藤部会長から「徒弟制度は前時

代的なものとなった」というお話がまた中

村副議長から「ルーツを理解してもらうこと

が大切だ」といったお話がありましたその

とおりだと思います小学校英語の話も同じ

なのですが教育というのはなぜこれをや

らなければならないのかちゃんと説明して

理解してもらうことが大切だと思います皆

さんのお話を聞いてあらためてそれを痛感

しました

依田

やはり「己を知る」ということは大切

です自分の国自国の文化を知りそれを

伝えようとするときに言葉で苦労するわけ

です苦労しなければ伝えるスキルが身に付

かないという意味で最近の若者が海外に行

きたがらないことは大きな問題ですテレ

ビやインターネットであらゆる情報が入手で

きますからねそれで事足りてしまうのでし

ょうか

中村

確かにネットを通じて情報が氾濫して

いますが私たちビジネスの世界からすると

それは生きた情報とはいえません誰でも手

に入る情報はすでに死んだ情報なのです

やはり自分で飛び込んでいって自分の持

っているものを売り込んで相手の持ってい

るものを引き出すそういう人間と人間の関

係が最終的には重要になってくると思いま

バラカン

情報よりも体験ですね今はネ

ットを通じてすべてのことをバーチャルで済

ませることもできそうな気がしますが実際

に海外へ行って違う空気を吸いながら

違うご飯を食べ違うお酒を飲み違う音楽

を聞きながら人と話すことで得られるもの

はすごく大きい自分の国の良さを他国の

人に訴えるためにはギブアンドテーク

の関係がどうしても必要ですからね

依田

そうやって目を養い耳を養い感覚

を養うことによって海外進出リテラシーを

上げコンテンツ産業に必要な目利き耳利

きが育つともいえますね

根本

本日は貴重なご意見をありがとうござ

いました

(2017年3月2日

経団連会館にて)

撮影工藤裕文