ブラックホールのリングダウン重力波は 非線形テイ...
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ブラックホールのリングダウン重力波は非線形テイルを持つかもしれない
奥住 聡 (阪上研D1D2)
井岡 邦仁 (KEK)
阪上 雅昭
(arXiv:0803.0501; submitted to Physical Review D)
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2007年度阪上研合宿(2008年4月1日)
Introduction: “ringdown” of black holes
ブラックホール形成後の重力波は、
特徴的な減衰振動(準固有振動、QNM)に支配される。
・・・リングダウン重力波
時空 = 定常BH時空+摂動
QNM: BHの共鳴振動モード
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An Example of Black Hole Ringdown
NS-NS merger to a BH (Shibata & Taniguchi, 2006)
QN ringing
inspiral phase marger phase
R+=h+×(BHまでの距離)
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準固有振動の最も簡単な例
長さΔをもつ弦の振動を考えよう。
( 0<x<Δ )
時間方向にフーリエ変換:
はそれぞれ左向き, 右向きに進む単色波の振幅
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準固有振動の最も簡単な例
(1)左端でのB.C.より、
(2)右端でのB.C.より、
と書けば、
右図のように、境界は部分吸収壁で、x=0,Δで波がそれぞれの割合で反射するとする。
境界条件
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準固有振動の最も簡単な例
実部(中心振動数): 普通の固有振動と同じ。
虚部(減衰/増幅率): <0 減衰振動!
このように、方程式が時間反転対称でも、境界条件のせいで解が時間反転対称でなくなるということはある。
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例:連星BHの合体
M: initial rest mass energy
これは、重力波が放出された時点で、振幅
程度を持っていたことを意味する。
非線形効果が くらいの大きさで
効いている可能性がある!!
リングダウン重力波の放出過程でどのような非線形摂動が生じるかを調べることは、観測上意味がある。
Nonlinearity of BH ringdown通常、ringdown phase の重力波のふるまいは線形摂動論で理解される。
非線形効果(高次摂動の寄与)は本当に小さいのか??
・ 一般相対論の非線形性の検証・ 重力波テンプレートの精度向上
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非線形調和振動子の摂動論
摂動展開:
解:
:線形斉次
:線形非斉次
:非線形
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Ioka & Nakano (2007):
2次摂動が、1次摂動とは異なるQNM(2次QNM)を持ち、その振動数が1次QNMの2倍であることを“予言”。
Wave componets of higher-order origin
LISAで観測できるかも
今日言いたいこと
問: 他には重要な非線形効果は存在するだろうか?
答: ある!! 非線形テイルが存在する(発見した)。しかも、それはおそらく、2次摂動にもかかわらず
late-timeの重力波形を支配するはずである。
If
BHリングダウンにおける非線形(高次摂動)の効果はほとんど調べられていない。
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Perturbation Equations for Schwarzschild BHs
ここで は の2次
First-order perturbation eq:
Second-order perturbation eq:
metric perturbation:
horizon infinity
摂動方程式の(l,m) partは、それぞれ1本のマスター方程式(ポテンシャル項付き波動方程式)に帰着できる:
Regge & Wheeler (1957); Zerilli (1970)
Gleiser et al. (1996)
1次摂動 2次摂動背景時空
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An example of S(2) : l=m=4
重要なのは、(i)1次摂動ψの2次, (ii) 遠方(r大)では、S(2)はr-2に比例。
ドット:t 微分プライム:r微分
11[See Nakano & Ioka (2007)]
Model wave eqs. for 1st & 2nd order perturbations
source termV(x): potential barrier; nonzero around x=0S(t,x) : source term; quadratic in
x
potential barriert
potential term
initial perturbation
f(x), g(x)Initial Conditions:
horizon infinity
我々の方針: 1次+2次摂動の時間発展をできるだけ解析的に解いて、2次にどのような波形成分が現れるかすべて明らかにする。
そのために、摂動方程式を本質を損なわない程度に簡単化する:
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Solutions using the Green’s function
(Leaver 1986, Andersson 1996)
:``flat part’’
:``QNM part’’
The solutions for t>0 are obtained using Green’s function G(t-t’;x,x’):
QNM
(*)
(*)In this study, we neglect the ``branch cut part’’ of the Green’s function, GB.
:QNM freq.
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Evolution of the perturbations
= (2nd-order QNM) + (t-1 tail) + (1st-order QNM)
wave components of 2nd-order origin
: 定数 ∝ (1st order QNMの励起振幅)
たしかに2次QNMが存在することがわかった。おまけに、1/tで減衰する非線形テイルが存在することも発見!
= (1st-order QNM)
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ソース項分布(1次QNM)
非線形テイルの出所=1次QNMのwavefront
×
||
一定
パルスの軌跡上では振幅は一定なので、
QNM(ソース)はwavefront近傍でのみ大きな振幅を持つパルス ∝ δ(t-x)で近似してみる
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Analytical & numerical results
black:2次の数値解
数値計算をすると、2次摂動の(近似)解析解と数値解は驚くほどよく合う。
red:2nd order QNMs + tail
blue: 2nd order tailのみ
black:1次の数値解
red:1st order QNM
time time
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Breakdown of perturbation theory?
2次のテイルは、2次QNMよりも全時刻で卓越観測的にはこっちのほうが重要そう
だが、この結果は(late-timeにおける)
摂動論の破綻を示唆しているように見える。
1次: 指数関数で減衰2次: 1/t のべきで落ちる
2次が1次を必ず追いつく!!
本当にこの結果は正しいのだろうか?
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Nonlinear field model for BH pert.
さっきのモデル摂動方程式を“生成”するような非線形波動方程式を考える:
linear term quadratic term
やはり、full nonlinear な計算で確認するしかない。本当は数値相対論をやらないといけないが、大変なので、もうすこし簡単な方法をとる。
として摂動展開すると、たしかにモデル摂動方程式が得られる。
この非線形方程式の初期値問題を数値的に解いて、摂動計算が破綻しないかどうか確かめてみた。
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Comparison between full nonlinear & perturbative calculations
black:full nonlinear
red:1st blue:2nd
green:1st+2nd
orange:2nd order QNMs (least damped)
time1次卓越 2次卓越
驚くべきことに、2次摂動が1次摂動を追い越すが、2次摂動は非線形解のふるまいを正しく追い続ける。
→ late timeのふるまいは本質的に非線形!!19
まとめと今後期待される進展BH ringdownの非線形な時間発展のふるまいを、解析的に解けるモデルを用いて明らかにした。
● Ioka & Nakano によって予言されていた2次QNMの存在を証明● 非線形テイルの発見
しかも、この非線形テイルは、late time で必ず1次摂動を追い抜き、非線形発展を支配することが示唆された。
非線形テイルの振幅のより現実的な計算 もとの2次摂動方程式をより現実的な初期状態のもとに(数値的に)解いて、観測可能かどうか議論 (with 中野さん@Rochester Inst. Tech.)
例: head-on collision of equal-mass black holes (Price & Pullin 1994; Gleiser et al. 1996)
tailの観測法 おそらく、開発しないといけない。 (西澤さん、お願いします。) データ解析: tailのあるなしでfake eventと真のシグナルを区別できるか?
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Appendix A: Origin of the 2nd-order tail
昔 最近
未来の観測者の見る面
ソース分布(=1次QNM)
BH
観測者
ソースの端(=1次QNMのwavefront)が非振動な2次摂動を生成 tail成分
BHの手前のソース分布が減衰振動的な2次摂動を生成 2次QNM成分
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Appendix B: 1次元完全流体の2次摂動
音速点より十分上流の“平坦”領域では、速度ポテンシャルの2次摂動 の波動方程式は
``音のブラックホール”から示唆(妄想)は得られないだろうか!?
ソース項:
: 濃縮度
: Mach数
遷音速流さえあればQNMは作れる。(SO & Sakagami, 2007)
振幅がtに比例危険な項
Appendix B: 1次元完全流体の2次摂動
これより、マッハ数の2次摂動は、
u=t-xのみの関数
安全な項
1次元完全流体の非線形厳密解(simple wave solution)は
として と展開。
さらに、 とすると、
さっきの の中の「危険な項」とぴったり一致!!
Appendix B: 1次元完全流体の2次摂動
「危険な項」の物理的意味は? 実は衝撃波形成と深い関連!
よく知られているように、simple wave solution は有限の時刻で多価関数となって、解としてこわれる。(こわれたあとは、実際には衝撃波になる。)
このことから、さっきの「危険な項」の「危険さ」は、fullに非線形な解の破綻を意味していることがわかる。
Appendix B: 1次元完全流体の2次摂動
「危険な項」の物理的意味は? 実は衝撃波形成と深い関連!