セカンドステージ大学「現代史の中の自分史」講義録作にあたってbook-sp.kodansha.co.jp/content/topics/jibunshi/pdf/lecture.pdf ·...

33
セカンドステージ大学「現代史の中の自分史」講義録作成にあたって 本講義録は、2008年4月17日~2008年7月10日 全13回にわたって行 われた立花先生の講義の内容をまとめたものである。 講義の一受講者が授業のたびごとに講義の内容を記録し、先生にご確認いただいて講 義録として発行し、受講者全員で共有したものをベースにしている。 この講義においては、各受講者は受講としながら自分史を書き進め、でき上がった部 分から先生に提出すると、次の講義のとき先生からフィードバックを頂ける進め方とな っていた。本講義の受講者は40数名であった。毎回毎回ほとんどの受講者が自分史を 提出するので、その文書量は膨大であり、それに目を通してフィードバックをつけるの に、先生は徹夜になってしまうことがほとんどであった。そしてそれらのフィードバッ ク内容は講義の中で全員に紹介された。作成途上の自分史を事例として使いながら、自 分史作成の要点が講義されるのは、受講者にとっても非常に納得感が高く、また自分の 自分史作成を加速する意識付けとなった。 講義全体の大きな流れは、自分史作成の着手から完成までの手順に従ったものであっ たが、講義が上記のような進め方であったことから、一つのテーマに関する説明が複数 回の講義で繰り返し取り上げられ、しかもその内容がどんどん深く・細かくなっていく というものだった。また前回講義への補足も頻繁に行われた。このため講義録を単純に 講義順に並べただけでは、一つのテーマに関する内容が複数個所に分散してしまい理解 しづらくなるという問題があった。 それで、本講義録では、自分史作成の着手から完成までの基本的流れにしたがい、全 体を10章に分け、異なる講義回に分散していた類似の内容を章単位にまとめることに より理解しやすくした。但し、あくまでも先生の発言をストレートに残すことが必須な ので、受講しながら作成した講義録の記述をそのまま使い、第何回目の講義での発言な のかを明示するとともに、同じ章内では原則講義回順に並べた。類似した内容が複数回 講義されたことにも意味があるので、文章を一つにまとめるようなことはしなかった。 それから、毎回の授業でいくつもの自分史本文が参照されたが、それはしばしば個人 情報を含んでいたので、講義録には一般化したかたちでしか表現していない。参照され た自分史本文がなくてもフィートバック内容が理解されるように努めた。 なお、講義は7月10日が最終日であったが、完成した自分史の提出締め切りは9月 上旬(夏休み明け)までとされた。多くの受講者が夏休みを使って完成させた。最終講 義日から更に2カ月の努力を重ねて、充実した自分史が完成したことになる。この間も、 期限内完成に向けて、何人もの受講生が先生から個別に御指導御鞭撻を頂いたことを補 足しておきます。

Upload: others

Post on 17-Oct-2019

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

セカンドステージ大学「現代史の中の自分史」講義録作成にあたって

本講義録は、2008年4月17日~2008年7月10日 全13回にわたって行

われた立花先生の講義の内容をまとめたものである。

講義の一受講者が授業のたびごとに講義の内容を記録し、先生にご確認いただいて講

義録として発行し、受講者全員で共有したものをベースにしている。

この講義においては、各受講者は受講としながら自分史を書き進め、でき上がった部

分から先生に提出すると、次の講義のとき先生からフィードバックを頂ける進め方とな

っていた。本講義の受講者は40数名であった。毎回毎回ほとんどの受講者が自分史を

提出するので、その文書量は膨大であり、それに目を通してフィードバックをつけるの

に、先生は徹夜になってしまうことがほとんどであった。そしてそれらのフィードバッ

ク内容は講義の中で全員に紹介された。作成途上の自分史を事例として使いながら、自

分史作成の要点が講義されるのは、受講者にとっても非常に納得感が高く、また自分の

自分史作成を加速する意識付けとなった。

講義全体の大きな流れは、自分史作成の着手から完成までの手順に従ったものであっ

たが、講義が上記のような進め方であったことから、一つのテーマに関する説明が複数

回の講義で繰り返し取り上げられ、しかもその内容がどんどん深く・細かくなっていく

というものだった。また前回講義への補足も頻繁に行われた。このため講義録を単純に

講義順に並べただけでは、一つのテーマに関する内容が複数個所に分散してしまい理解

しづらくなるという問題があった。

それで、本講義録では、自分史作成の着手から完成までの基本的流れにしたがい、全

体を10章に分け、異なる講義回に分散していた類似の内容を章単位にまとめることに

より理解しやすくした。但し、あくまでも先生の発言をストレートに残すことが必須な

ので、受講しながら作成した講義録の記述をそのまま使い、第何回目の講義での発言な

のかを明示するとともに、同じ章内では原則講義回順に並べた。類似した内容が複数回

講義されたことにも意味があるので、文章を一つにまとめるようなことはしなかった。

それから、毎回の授業でいくつもの自分史本文が参照されたが、それはしばしば個人

情報を含んでいたので、講義録には一般化したかたちでしか表現していない。参照され

た自分史本文がなくてもフィートバック内容が理解されるように努めた。

なお、講義は7月10日が最終日であったが、完成した自分史の提出締め切りは9月

上旬(夏休み明け)までとされた。多くの受講者が夏休みを使って完成させた。最終講

義日から更に2カ月の努力を重ねて、充実した自分史が完成したことになる。この間も、

期限内完成に向けて、何人もの受講生が先生から個別に御指導御鞭撻を頂いたことを補

足しておきます。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 1 of 33

- 1 - 1

立花隆

セカンドステージ大学「現代史の中の自分史」講義内容記録(内容別統合)

講義日:2008年4月17日~2008年7月10日 全13回

目次

1. 第1章:自分史作りを始めよう・・・・・・・・・・・・・・・2

2. 第2章:自分史年表を書こう、人間関係関連図をつくろう・・・6

3. 第3章:自分史本文を書き始めよう・・・・・・・・・・・・・9

4. 第4章:社会の一員として現代の記録を残す・・・・・・・・12

5. 第5章:立花隆式文章作法・・・・・・・・・・・・・・・・15

6. 第6章:本文を読み易くする・・・・・・・・・・・・・・・19

7. 第7章:自分を見つめ直す・・・・・・・・・・・・・・・・22

8. 第8章:内容を深く・厚くしていく・・・・・・・・・・・・23

9. 第9章:大きな視点で自分を捉えよう・・・・・・・・・・・28

10. 第10章:仕上げよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・30

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 2 of 33

- 2 - 2

第1章:自分史作りを始めよう

本章は特に記載のある部分以外は第1回講義の内容です

1. 何のための自分史か、

(ア) ファーストステージを見つめなおす為。

(イ) 自分史は「Making of myself 」のストーリーである

2. 自分史の出来上がりイメージ

(ア) 代表的な自分史:日経新聞の「私の履歴書」がベスト

① どのくらいのボリュームか

初期の頃に比べて最近のものは量が多くなっている。初期は10回程度、最

近は30回を越える人もいる。

② 単行本化されたもののいくつかの目次が提示される。

1. 五島慶太(S31年4月掲載) 全部で10回

2. 松下幸之助(S31、S51 年の2回に分けて掲載) 1回目8回、2回目

13回、全部で21回)

3. 本田宗一郎(S37 年掲載)、12回

(イ) この授業での自分史作り

① 授業1回で新聞1回分を書いていくイメージでやれば10回以上書けるので、

それなりの自分史が出来上がることになります。

② 毎回火曜日までに書いたものを提出してください

3. 市販の出版物を見て、自分の今までのことを思い出す

(ア) 世の中の出来事と関連付けて自分の過去のことを思い出すために、年表等出版物

を使う

年表等の出版物を使って、その時々の社会の出来事を思い出す中で、自分自身

の出来事やエピソードを思い出すことが出来る。社会の出来事に自分がどのよう

な考えや感情を持ったかということも、自分のことを思い出すひとつの方法であ

る。

(イ) いくつかの出版物の実物を示しながら、その解説がある

① 日本史年表・地図〔吉川弘文館〕:中学高校の社会科の参考資料として皆使っ

た経験がある資料。毎年改版されている。カテゴリー別に起こったことが整

理されている

② 20世紀全記録(Chronik 1900-1986):一日単位で起きた出来事が記録され

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 3 of 33

- 3 - 3

ている。主要な事件の新聞記事が載っている。分厚い一冊本。

③ 20世紀世界年表:

④ テレビ博物誌:出来事、代表的テレビ番組、流行語等が年代毎に整理されて

いる

⑤ テレビ番組の40年

⑥ その他にも多くの年表類がある。授業アシスタントの方が調べてくれた一覧

表ではリストだけで2ページ以上ある。このうち10数冊の現物が提示され

たが、一冊が大型・厚手なので、教壇の上からあふれるぐらいになる。

⑦ 映像が語る20世紀の歴史。DVD版で、全部で20数巻。米国大統領1~

2名で一巻を構成している。〔日本の首相とは違い、米国大統領の1期は長い〕。

ちなみに日本の総理大臣を記憶思い出しのトリガーにすることも出来る。

⑧ 写真を使って歴史をまとめたもの

⑨ 号外を使って歴史をまとめたもの、などもある

4. 昔の写真アルバムをみて、過去のことを思い出す

① 自分の写真を見ることで、色々なことが思い出される。

② 写真はその頃の社会の状況を写しこんでいる

③ 自分の写真を使って、手短に自分のことを語ってみる。

④ 皆さんの子供のころは写真を撮ること自体少なかったと思いますので、残っ

ている写真の枚数は少ないと思いますが、ぜひそれを探し出してください。

⑤ 自分史の中に写真をはめ込むことで訴える力が大変と増します。写真一枚が

多くのことを語ってくれます。

5. 思い出したことをまとめて年表をつくる

① 自分が生まれたときから今時点までの期間で自分の年表を作る

② 自分の記憶を呼び戻す為に先ず自分の年表を作るのが良い。思い出したこと

を年表に書き落していくと、他のことも思い出されてくる

③ 歴史は4次元(3次元空間+時間)というが、自分史の年表はこのような4次

元ではなく、別の視点での4次元〔多次元〕でまとめる

1. 人間関係の視点

人は人間関係の海の中で生きている。この人間関係が時間とともに変

わる。人間関係という視点〔次元〕がひとつある。人間関係の最初は親、

更には先祖代々の人である。Making of myself において、先祖代々の人

の影響をどの様に受けて来たかと言うところも自分史に入ってくる。

2. 自分の内面形成の視点

Making of myself の自分と言うとき、勿論自分の身体という視点もあ

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 4 of 33

- 4 - 4

るが、より大事なのは自分の内面〔Mind:心、精神〕がどのように形成

されてきたかと言うことが重要である。マインドは、知・情・意とも言い

表せる。自分史はマインドを語ることが重要である。

(ア) 情は五感を通して刺激されて心の中に起こる。目で見てきたことの

大きな思い出、印象に残る音など。

(イ) 知では、本との出合い、どんな本を読んできたか、なども重要であ

る。

3. 空間移動の視点

どこに住んでいたか、それは自分にどのような影響を与えてきたか。

以上、自分の歴史を整理してみるのに多様な軸〔次元〕がある。軸別に分類し

た、自分の歴史年表を作ってください。

6. 重要なエピソードを洗い出す

① 自分の歴史〔思い出〕の中に核になるものがある。自分にとって重要なエピ

ソード。エピソードを洗い出していく。この授業が終わるまでに、エピソー

ドをいくつか重ねて、そして全体を統合すると自分史になる。

② 生きるということは、人間関係の海を泳ぎ続けるということ。自分史はその

航海日誌と言える。航海は船出から始まる。自分史は生まれ・育ちから始まる。

最初の一回目として、生まれから、小学校卒業あたりまでの自分史を書いて

みて提出してください。

③ 書こうとして書けなければ、語ってみるのも1つの方法です。ちなみに日経

新聞の私の履歴書は本人が書いたものは少なくて、多くの場合は本人が語っ

て日経の記者がそれを文章にして、最後に本人がチェックして出来上がると

いうようになっています。

7. 自分史は誰のために書くのか (第5回講義)

(ア) 自分のために書く

① 自分のことを語っているうちに自分のことがより良く分かってくる。書き込

めば書き込むほど内容が濃くなっていき自分にとってより多くの気づきを得

られる。

② 自分と自分の親との関係のことを書くうちに自分の親のことがより良く分か

ってくる。「自分の親の自分史を書くことになっていると気づいた」と感想を

寄せてくれた方がある。それがまた自分の今後を考えるのに繋がる。

(イ) 自分の子孫のために書く

① 自分の“子供の頃のこと”は自分では良く分からない。自分の親族〔先祖〕

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 5 of 33

- 5 - 5

のことも親から聞かないと分からない。しかも知りたいと思い始めるのは年

を取ってからである。子供のために、このような情報を残しておく。これが

自分史を書く2つ目の目的である

(ウ) 自分の子供世代の人々、孫世代の人々のために書く

① 例えば戦争体験。此処にいる人は年齢により差があるが、皆凄い戦争体験を

持っている。これは伝えなければ、残らない。

② 旧家も同じ。旧家が持つ色々な事を総合すると、その時代のことが見えてく

る。

③ 自分史の各事柄の中にそのようなことが当然入っている。

8. 参考図書の紹介

(ア) 二十歳(はたち)のころ 立花ゼミ『調べて書く』共同製作 1 及び 2

立花隆・東京大学教養学部立花隆ゼミ 共著

(イ) 思索紀行 ぼくはこんな旅をしてきた

立花先生の本。一部が紹介される。

まさに立花先生の自分史の一部。

9. 参考図書、DVDの追加 (第6回講義)

(ア) 「シズコさん」 佐野洋子著

著者が自分の母親のことを書いた本。

なお佐野洋子さんはベストセラー絵本「100万回生きたねこ」の著者

(イ) DVD あの日、あの時・・・なつかしの昭和

2年ごとに一巻 ニュース映画を編集したもの

(ウ) 昭和二万日の全記録

一日刻みで、何が起きたか書いてある。2~3年で一巻

10. これから自分史を書いていくための為の準備

(ア) この授業では毎回自分史を書いていく、自分史を書く為のデータを集めて紙の上

に残していくことも当然出てくる。これら作業の用紙はA4 サイズに統一しておく

と便利。

(イ) 作ったものはクリアーファイルに差し込んで整理していくと良い。薄めのものを

用意すること。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 6 of 33

- 6 - 6

第2章:自分史年表を書こう、人間関係関連図をつくろう

1. 自分史年表の形式のバリエーション (第2回講義、一部第3回講義)

(ア) “自分史年表”の作成例をいくつか紹介。形式としては

① 表形式のもの

② 年月の流れを軸に、そこから枝を出して出来事/エピソードを記入したもの

③ 横軸を時間軸にし、該当する時代のところを頭にして、出来事等を記入した

ものなど、いろいろと工夫あり。

④ 日本/世界で起きたことをそのまま書くのではなく、「自分にどの様に影響を

与えたか」まで記述するようにする

⑤ 自分史年表の中に「当時の自分の分析」と言う項を設けたもの、人間の成長・

発達の視点で見た自己分析という欄を追加する。

⑥ 全体的充実度と言う欄を設け、その時々の充実感度合いを書いてみる。

⑦ 「半径5m以内の人」というような親密な人を示す欄を設ける。

⑧ 自分、家族、周囲の人、日本の出来事、世界の出来事のように分類する。

など

(イ) 自分史年表の必須項目

年齢も入れる。自分の住んだところ、学校も入れること。

その上で、記載内容を自分なりに工夫する。工夫した例が紹介される

① その時々の、自分の人的ネットワークについて記載

② その時身につけた能力スキルを棚卸する。

(ウ) 自分史年表を作ることで、自分の歴史、エピソード一覧が見えるようにすること。

また、自分史全体の目次が見えてくるように作ること。

2. 記憶の構造、記憶されていることをどの様に引き出すか (第3回講義)

(ア) 記憶は時系列的に積み重なっている。年表を書くことで記憶されていたことを引

き出すことが出来る。

(イ) 上記とは別に、エピソード記憶がある。一定の容量制限があるので、新しいエピ

ソードが入っていくと、古いものが埋もれてしまう。その埋もれたものは何らか

のとっかかりが有ると、引き出される。

例:マルセル・プルースト 失われたときを求めて 〔7分冊の大作〕。マドレ

ーヌを食べたことが取っ掛かりとなり、子供の頃マドレーヌを食べたときのこと

が思いだされ、そしてそこから次から次と記憶が引き出されて、人間関係が思い

出されていく・・・・という内容

(ウ) 先ずは年表を作ること。年表を作れば、客観的に色々なことが見えてくる。

(エ) 自分の居る空間を移してみる。例えば故郷へ帰る。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 7 of 33

- 7 - 7

(オ) 自分の周りにあるもの(古いもの)に注意を向ける。そのものの来歴から記憶を

引き出す。ペットもこのうちの1つ。

(カ) 病気・怪我を思い出す。これ自体がエピソードだが、そこから芋づる式に記憶が

たぐりだせる。

(キ) 自分の感情(喜怒哀楽)に結びついたものが、より強く記憶されているから、自

分の喜怒哀楽史を振り返ってみる。

3. 人間関係の関連図〔クラスターマップ〕を作ってみる。 (第3回講義)

自分に大きな影響を与えた人を、分野別に分類し、実際の名前を入れて、マップを作

親族

**、##

家族

**、##

学びの師

**、##

自分

友人

**、##

仕事での人間関係

**、##

本を通じて影

響を与えた人

① 職場でOJDをやってくれた人も入れるように。:仕事の人間関係にいれても

良いし、師のところに入れても良い

② これも記憶である。重要な人を思い出す方法、年賀状、住所録、電話番号帳

いまどきは携帯端末の中に入っているが、昔は紙。

③ 実際に作業することが大事。自分なりの方法で作成し、提出してください

4. 人間関係クラスターマップを作って、自分史に出てくる周囲の人を確認する (第4

回講義)

クラスターマップのバリエーションの紹介

受講生の提出物を使っての具体例の紹介と先生のコメント、アドバイスです。

(ア) 前回説明された基本どおりに作ったもの。形は色々あり。

(イ) 人間関係の分類(グループ分け)に工夫を加えたもの

例:アルバイト仲間、仕事のつながりの人脈と社会人としての師弟関係の人脈を

分けたもの

(ウ) 人名に加えて、自分への影響の度合いや内容を区別したもの

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 8 of 33

- 8 - 8

例:重大な影響を与えた人に◎を付加

例:影響の内容により人を分類したもの。**になる夢を与えた人に◎印、++

になる夢を与えてくれた人:□印

(エ) 人間関係から影響を受けてどのような自分が形成されたか(将来の夢、価値観、

信条など)をマップの自分の所に書き込んで、周囲と自分の相関が解るようにし

たもの

(オ) 関係のある人のグループごとに定義を記入したもの

(カ) 友人、知人を「良い人」[悪い人]に分けて表現。それらの人が本文に出てくる

(キ) どのような影響を与えてくれたかをクラスターマップの中に簡単な文で書き込ん

だもの

(ク) その人と関係したエピソードのキーワードを表中に書き込んだもの。それが自分

史年表のエピソードの一つに対応しており、本文記述にリンクしていく。

(ケ) 自分に影響を与えた本を、10 代から、50 代まで、10 年ごとに区分して記入

(コ) 図表形式にはせず、文章形式にして、人名とその人が自分に与えてくれた影響を

手短に書いてある人。その内容が書き込まれて自分史本文になっていく。

(サ) 上記と同じような形式で、一人毎にかなり詳しく書き込んだもの。それはもう本

文になっている。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 9 of 33

- 9 - 9

第3章:自分史本文を書き始めよう

1. 自分史本文の書き方 (第3回講義)

(ア) 自分に起こったイベント/エピソード一覧

これは自分史の目次になる。

(イ) 先ずはエピソードごとに箱を作り、そこにエピソードを示す文を書き込む。最初

の段階としてはこれでOK。自分史はエピソードが核である。これが出来れば、

次にエピソード間をつなぐ文章を作っていけばよい。

(ウ) 最初から一気に完成形を書こうとは思わないでよい。最初は少しでよい。それを

読んでいると、書き足したいことが思い出されてくる。追加部分を加えてゆけば

よい。そうすると最初は10枚のものが100枚になっていく。

(エ) 記憶の良い人は、1つのエピソードのところで深く入り込み、次へなかなか進め

ないことが起きてしまう。このような人は

① 強制的にストップして、別のところへ進む。

② 今のところから、新たな方向新たな視点に展開してみる

2. 自分史全体の流れ (第4回講義)

① 自分史は書くに値するエピソードをつないでいくことになるが、その時いつ

も同じ調子で書くのではなく、メリハリをつけることが必要

3. 自分史全体の構成(今までとは異なった新たな方法)(第4回講義)

(ア) 自分史全体を複層(3 層とか 4 層)で書きたいが、どうすればよいかという質問が

ありました。これに対する答えは

① このような書き方をするには次のような方法がある

1. 本文のそれぞれの塊ごとに、複層の間を行き来して書く

2. 本文の流れの中に、枠をとって、そこに他の層を入れていく

② 自分史を複層で見るという視点は誰にでも必要

4. 自分史に含める内容について (第2回、第3回、第4回講義)

(ア) 自分史は、知、情、意をカバーするようにすること

(イ) 写真、イラストを本文中に挿入すると良い

写真、イラストはそれだけで多くの情報を持っている。文章中に入れることで訴

える力が増す。

(ウ) 出来事、エピソードを書くときは、2 つの視点で書くことで、分かり易くなる。

① そのときの自分の見た内容(自分の目、子供のときであれば、子供の目でみ

た内容)

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 10 of 33

- 10 - 10

② 上記に、客観的に表現することを追加する(客観の目)

(エ) 挿入した写真には、短いコメントを入れるとより生きてくる。

(オ) 自分の周りの人で、人間的に魅力ある人は、書き甲斐ある人といえる。そのよう

な人との会話などを具体的に書き込むと良い。

(カ) 本文の中に挿入するのは写真とは限らない。イラストも良い。通信簿の先生のコ

メント欄とか、性格の評価欄なども自分を示す良い材料。通信簿は多くの人がと

ってあるのではないか。

(キ) 子供の頃に家族(たとえば母)との連絡ノートのようなものを作った人は、これ

を使うと、家族内のことがよく分かってよい。使いたい部分を生で使うとリアル。

(ク) 家族が自分に残してくれた文章・手紙なども上記と同様である。

(ケ) 自分史は自分の書きたいところを書けばよい。

(コ) 自分史はそれぞれ自分に合わせて作ればよい。要は何でも有り。例えば、普通に

は親のこと、自分の子供の頃から始めるが、子供の頃が思い出せない人は、成長

したところから書いてよい。但し、子供の頃をただ単に記述しないのではなく、「自

分は子供の頃のことは記憶に残っていない」と書けば良い。それが自分の1つの

面を示したことになる

(サ) 記憶の中には“動く絵”として記憶されているものがある。その映画の中で、自

分は主役だが、これに加えて、自分が映画監督になって、それからカメラマンに

なってみて、場面を見てみよう。そうすると書いてないことがあるのに気づける。

そのとき**さんはどうしていたのか、□□の場所はどうなっていたか、など。

(シ) 初恋の話:すでに何人か書き込んでいるが、これはエモーション(情動)が強い

ものだから、訴える力が強い

(ス) 自分が好きなことを書き込むことは訴える力が強い。たとえば車に入れ込んでい

る人は、「自分の車好きの歴史」を書き込む。

(セ) 社会人になってからの大失敗、困りに困ったと言う経験は、たいていの人にある

はず。記憶に刻み込まれていると思う。これも大事なエピソード。

(ソ) 家族との葛藤、家族との関係で自分の気持ちを大きく揺さぶられたこと、等も自

分史の中に入ってくる重要なこと。家族との関係で心を動かされる話も勿論自分

史の対象。尚、家族との葛藤を書くことは、自分自身のカタルシスにもなる。

(タ) 自分が愛着を持っていたものにまつわる話も良い。

5. 引き出しの奥から昔のものを取り出してきて、自分史に活用する (第6回講義)

(ア) 母親が書いて残してあった“育児日記”を見つけ出して、自分史に使った方がい

る。育児日記に何と書いてあったかを、自分史本文の中に転記して、それと対比

させながら自分史を書き進めている。育児日記を見つけたことで、自分史の中に

母親の目、母親の心が入ってきており、それに応じて自分で書き込んだ部分も深

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 11 of 33

- 11 - 11

く、詳細になっている。

(イ) 育児日記と自分史を種に、作成者本人と母親が話をすることも書かれている。母

親の書いた育児日記が、何十年も経って子供のために役立っている。これはまさ

に子孫のために自分史を残すことの重要さを示している。

(ウ) 育児日記には、育児にかかった諸経費が詳しく残されていた。これもその当時の

社会の状況を伝えてくれる貴重な資料である

(エ) 父親が残してくれた「従軍記録」もおなじように訴える自分史作りに繋がる。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 12 of 33

- 12 - 12

第4章:社会の一員として現代の記録を残す

「現代史の一部としての自分史」に関する講義をこの章にまとめています。

1. 誰にでも自分史を書く意味はある (第5回講義)

① ある受講生が、「自分はその他大勢の一人として人生を歩んできた。だから特

段に自分史を書くようなことはない」といっていたが、その後、その方が、「我

ら、その他大勢の人が日本の発展を支えてきた」と書いてきてくれた。

② 今瞬間で見れば、その他大勢ではない特別な人もいるが、その人も20年・

30年経てばその他大勢の人になる。

③ 一人一人の自分史と別に現代史があるのではない。現代史の一部として夫々

の人の自分史がある。自分史の全体がその時代のその社会の歴史を示すのだ。

2. 事例その1(第3回、第4回講義)

(ア) 自分史がある事柄についての歴史そのものになっているということがある。たと

えば、ある経理マンの自分史は、日本の経済発展の中での、経理システム発展の

歴史を示している。自分史と経理システム発展史の両方の視点で、具体的な話を

更に書き込んでいけば本当に面白くなる。

(イ) ある地方で起こっていた文化運動の記述は貴重。書き込む価値がある。

(ウ) 複数の方が三池炭鉱のことを書いていた。このように、1 つの社会的出来事が、複

数の目で語られるので、それを総合することで、新たなことが見えてくる、

3. 事例その2 (第6回講義)

次のような例は、その時代を伝えてくれる貴重な内容である

(ア) ある地域の、特に特定の産業に密接した地域(例えば炭鉱の町)の、生活の描写。

生活を介して、その地域の風土、文化も伝えてくれる

(イ) 高度成長を支えたエピソード

(ウ) その頃の仕事の仕方

“一台の車を売る”という仕事の描写も、書き込んでいくと、その当時の”販売“を

伝えるものとなる。

(エ) その頃の食べ物のこと

(オ) その頃の自然の描写

(カ) 入院したことを書くとき、自分の病気のことだけでなく、病院の様子など病院の

ことまで書くと、その頃の“病院”を伝えることになる

4. 同じ仕事でも、昔のやり方、中間時点でのやり方、今のやり方、の対比を示すと、ま

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 13 of 33

- 13 - 13

さに現代史の中の自分史になる。 (第7回講義)

(ア) 同じ種類の仕事でも、そのやり方はどんどん変わってきている。仕事を取り巻く

環境もどんどん変わってきている。

(イ) そのようなことを書き込むことは、今からの人にとって大切な情報になる。

5. 事例その3 (第9回講義、)

(ア) 社会の裏側を書くことは、社会の実体を伝えると言う意味で『現代史の中の自分

史』作成の意図に沿っている

(イ) 疎開日記のなかで、大本営発表に喜ぶ社会の描写と「日本軍の損害は?」と心配

する気持ちが書かれていたが、大本営発表の大戦果(実際には嘘だったが、その

時は大戦果のまま通し続けてしまった)を一国民はどう見ていたのかを伝える貴

重な内容である。

(ウ) 現代史の中の大きな出来事(例えば全共闘活動)の真ん中にいた人は、現場にい

た人しか分からないことを知っている。それを書き込んで欲しい。

6. 事例その4 (第10回講義)

(ア) 工業地帯開発のその現場の中に自分がいた

(イ) 外資の日本進出で自分の会社も当事者になった。

7. 自分史を書くことが現代史作りに寄与する (第11回講義)

(ア) 現代の社会の仕組みについての教科書的理解は世の中に広く公開されている。し

かし具体的にどうなっているかは、それぞれのことが、それぞれのセクターの中

に閉じ込められてしまっていて、一般には分からない。具体的に書いてもらうこ

とで、それが広く理解できるようになり、「現代史の中の自分史」の意味が出てく

る。

(イ) 仕事を通じて知った「社会的に重いことがら」、そのような事柄は一般にはそのセ

クターの中に閉じ込められてしまっていて、社会全体として共有されていない。

自分史の中にそのようなことを書くことは、その事柄を社会として共有していく

ことに繋がる。

8. 現代史の中に自分を位置づける (第11回講義)

(ア) 団塊の世代は狭く捉えれば1946~47年生まれであるが、広く捉えれば、そ

の前後5~6年を加えてよい。この団塊世代は日本の社会の中心にいて、移動す

るごとに周りに影響を与えてきた。

(イ) 現代史を見るときは、100年単位の大きな流れの中で見る必要がある。20世

紀はどういう世紀だったか、世界はどうだったか、日本はどうだったか、21世

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 14 of 33

- 14 - 14

紀はどうなっていくか。そのような中に自分を位置づけよう。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 15 of 33

- 15 - 15

第5章:立花隆式文章作法

1. 基本(第2回講義、第3回講義)

(ア) パソコン(ワープロソフト)で書くか、手書きで書くか

① 多くの人はPCで作成している。手書きの方も少しいる。

② PC利用で、原稿用紙フォーマットを使った例が紹介される。

縦書き、升目のある原稿用紙フォーマットを使用。非常に見やすい。でもこ

こまでやらなくても良い。

(イ) 文章の全体が見易くなるように書く

① 切りの良いところで改行する。文章を分かち書きにする。段落を作る。小見

出しをつける。このようにすると文章が読みやすくなる。隙間無く文字が並

んでいる文章は駄目。

② 複数の章に分けても良い。

③ ひとつの文をあまり長くしない。ある程度の長さで区切る。長い文章は意味

が読み取りにくくなる。

(ウ) より訴えるように書く

① そのときの音・匂いや感覚的な印象などを書いていくと、情景が良く分かっ

て非常に良い。たとえば、新潟地震の時の表現、「空気までもゆがんだ」、こ

れは良い表現だ。

② エピソードの中に出てくる会話は、直接会話の形で表現するのが良い。リア

ルになる。具体的になんと言ったか正確に記憶していなくても、会話の内容・

雰囲気が伝わればよい。

③ 書く内容は概念的な表現で終わりにするのではなく、具体的に書くこと。

たとえば

○○先生が自分を変えてくれた⇒内容を具体的に書き込む。

右往左往した⇒どのように右往左往したのか、具体的に示す。

(エ) より分かり易く書く

① 特定の地域の人にしか分からない用語(たとえば地域の行事などに関する言

葉)、特定の職業・特定の業界の人にしか分からない用語がある。これらは、

一般用語に置き換える、文で表現する、固有名詞的なものには何を示す言葉

なのか説明をつける、などの工夫を行うこと。

② 読めない単語が出てくると、思考がそこで止まってしまうので、読みが難し

い漢字はひらがなのほうが良い。普通には読めない固有名詞は漢字で書いて

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 16 of 33

- 16 - 16

読みをつける(ルビを振る)。

③ 最近市町村の名称にひらがなが使われるようになったが、文章の中に入れる

と前の助詞などとの区切れが分かりにくくなることがあるので、文章作りの

時に注意が必要。

(オ) 作った文章を他人の目で読んでみて、理解されるかチェックすること。

2. 自分史本文作成時に陥り易い誤りとそれを避ける方法 (第4回講義)

(ア) 自分史の既に書いた部分に出てきた人や事柄を、例の・・、あの・・と表現した

くなるが、読む人が一気に読んでいるとは限らないので、重複にはなるが、簡単

にその内容を示す言葉を付ける。

(イ) 上記のような事情がなくても、文章が分かりにくいと言う例がある。つまらない

ところで引っかかってしまう例もある。一般の人に分かって貰える表現になって

いるだろうかと、注意しながら読み直してみること。そして分かってもらえるよ

うに書き込むこと。

(ウ) 人間関係などが非常に複雑になっている人もいる。それを正確に書いてくれてい

るが、それでも読んでみて、よく分からない。分かりやすくするためには、

① 登場人物ごとに分けて記述し、登場人物が理解できるようにする。

② 細部まで正確に細かく記述しようとすると、複雑になってしまう。本質が伝

わることが重要なので、細かい所はカットすることも有りうる。

等、分かりやすくなるように工夫してください。

(エ) 読んで分かり易くするには、ある程度纏めることが必要。しかし纏めすぎると分

からなくなってしまうので注意が必要。既に上手にやっている方もいる。今のと

ころは、書きすぎの人よりも、書き足りない人のほうが多い。他の人の書いたも

のを読んでみて、参考にして欲しい。

3. 文を上手に区切る方法 及び 上手に繋げる方法

(ア) 文を上手に区切る

だらだらと長く続いてしまう文がある。そのような文になってしまうのは

① 改行をしない

② 連用形を多用し、連用形と読点(、)で文章をつないでしまう。

―――起き、―――着て、――――食べ、――――出かけ、―――

③ 文章を切らず、不要な接続詞でつないでしまう。 など。

こうならないように

① 文は句点(。)で切る。改行を入れる。

② 段落にわけ、小見出しをつける。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 17 of 33

- 17 - 17

③ パソコン画面を見て文章を作っていると気づきにくい。プリントしてみると

拙いことがすぐ分かる。

(イ) 前の段落と次の段落を上手に繋げる

① 前の段落と次の段落のつながりが全くないと、そこで引っかかってしまう。

② つなぐ為に、文章が必要かというと必ずしもそうではない。

③ 上手なつなぎ方。段落の頭に短い一言を入れるだけで上手に繋げることが出

来る。日経の「私の履歴書」の中に出てくる、シンプルなつなぎ方について

紹介。

3. こうして、・・・

4. そうこうしているうちに、・・・

5. とくに

6. さて、・・・

7. 当時・・・

8. その頃の・・・

9. 次に・・・

10. それから・・・

11. だが、・・・

12. ところが、・・・

13. ひるがえって、・・・

(ウ) 文章のリズムを意識する

週間読書人2008年 5 月 9 日号に掲載されていた、ジェラルド・カーティスさ

んと手嶋龍一さんの対談の中に、日本語のリズムについて話し合う部分がある。

リズムに乗った文章になるように書く、という話が、紹介された。

4. わかり易い文章、読み易い文章、訴える文章にするには (第6回講義)

(ア) 語尾を統一する

文章の終わり方(語尾)が不統一だと読みづらい。例えば「です・ます」調と

「である」調の混在は読みづらい。完璧に統一せよとは云わないが、基本的には

どちらかで統一するのが良い。

(イ) 主語述語の関係が分かるように書く

① 主語と述語の関係が成立しているか確認すること。日本語は頭に主語が有り、

述語は末尾と離れている。主語と述語の間に色々と書いているうちに、注意

しないとこの対応が分からなくなってしまうことが生じる。そのような文章

が時々ある。読んでみれば分かる問題なので、読んでチェックすること。

② 日本語では主語を省略することも出来る。主語を省略しても、読む人にとっ

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 18 of 33

- 18 - 18

て主語がどれかが明確であるときは問題ない。しかし長い文章でその中に主

語述語の対が複数あるようなとき、特にその主語が変わってくるときは注意

が必要である。その主語を省略すると読み手にとってこの述語に対する主語

は誰なのか、分からなくなってしまう可能性があるので、そのような時は主

語を省略せず、ちゃんと明示すること。

(ウ) 対比を上手に使う。対比される双方の事柄が、どちらも鮮やかに浮き上がってく

る。

(エ) 大事なところを「 」で括って強調するときには、極力、ピンポイントで指定

する。

5. 日本語文章作成時に注意しておきたい「日本語の語法」 (第8回講義)

(ア) 主語に付ける助詞の“は”、と“が”の働き方の違いを正しく理解し、使い分ける

こと。

① ○○は(が)―――――――。の形の文章を作るとき、“は”を使うか、”が“を

使うかで、文の意味が変わってくる。

② “は”は文末の結びに係る(係り結びという)が、“が”は係り結びにはなら

ない。

③ これが狂うと、日本語としてなんとなくおかしくなってしまう。いわゆる座

りが悪い文になってしまう。

④ 気にせずちゃんと出来ている人もいる。そのような人は気にすることは無い。

気にして、筆が進まなくなってしまわないようにして欲しい。

⑤ (講義録作成者補足:講義では作成中の自分史の中から文章例が提示され、

それを使って説明されましたが、講義録ではそこまで記述していませんので、

上記説明だけでは分かりにくいと思います。係り結びの詳細については、辞

典、インターネットなどでご確認ください)

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 19 of 33

- 19 - 19

第6章:自分史本文を読み易くする

1. 自分の仕事を分かり易く書くには (第6回講義)

(ア) 自分のやっている仕事を、そのことだけ書いても、読む人には分からない。

① 社会全体、経済全体の中で、その仕事に関連したことは、どのような流れに

なっているか

② その全体の中で、自分の属する企業は何をやっており

③ 自分の部署は何をやっており

④ そして自分は何を分担したか

⑤ という構造になっているので、まず全体を示して、つぎに全体の中で自分は

何をやっているかを書くと分かり易くなる。

(イ) 仕事の成功、失敗も、全体の流れの中で説明すると分かり易くなる

(ウ) 仕事の成果を書くとき、それが新聞等に出たときは、その記事そのものを自分史

の中に貼り付けると、読む人に訴える力が増す。特に三大紙、日経などに載った

ものは。

(エ) 仕事を書くときに参考になる本の紹介

① 「仕事」スタッズ・ターケル著、中山容 他 訳

世の中に何万とある仕事について解説した本

(オ) 社会の大きな出来事の現場にいた人は、そこをしっかり書き込んで欲しい。

(カ) 書き込まないとその世界にいた人にしか分からない内容になってしまいます。

2. より良い文章を書くために (第7回講義)

(ア) 一工夫した見出しを入れる。

ただ単に見出しをつけるのではなく、より興味をそそる見出し、内容を反映する

見出しにする。

例えば、先生をやられていた方が、「私の二十四の瞳」という見出しをつけた。

内容を良く表しており、また引き付ける表現である。

(イ) 写真、イラストでアクセントをつける。

直接関係したものが望ましいが、文章の内容に直接関係した写真が残っていない

場合は、何らかの関連があるものであれば、使って良い。

自分の人生に影響を与えた本の写真、新聞記事の写真、なども良い

(ウ) 事柄と気持ちと両方を書く。

事柄を省略して、気持ちだけ書くと、浮いた文章になってしまう。

気持ちを省略して短くしたら、つまらない文章になってしまう。

(エ) 数字を入れると説得力が出る。

① 「増えた」とだけいうのではなく、「○○倍に増えた」、「以前は○○、自分が

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 20 of 33

- 20 - 20

やって□□になった」等、数字を入れると説得力がでる。

② これを、表形式で示すと一層分かり易い。

(オ) 言葉(単語)の使い方は、細かく気にすること

(カ) 自分が読んで分かれば良いというのではなく、他人が読んだときに分かり易いこ

とが必要である。

3. 正確に、そして読み易く (第8回講義)

(キ) 精密で正確なものを先ずは書く。それから読む人にとって読み易くなるように工

夫を入れる。

(ク) 正確に、精密に書いていけば、量が増える。

(ケ) 過去の世の中のことはインターネットで調べて確認すると良い。

出版業界には校正係という役割の人がいる。著者の原稿を見て、関連情報を調べ

て送ってくれる。その校正係の人が使っているのがインターネット検索である。

自分史の場合は自分でインターネット検索を使って確認しよう。

(コ) でも、読む人にとっては大変になる。それで、読み易くなるように工夫を入れる

ことが必要になる。

(サ) 先祖の話は書き込むとファミリー史の規模に膨らんでいく。正確に書こうとする

と、複雑になっていく。そうなると読むほうには分かりづらい。そのような時は

先ずは系図の概略図(主要な人だけ出てくる)を作って先ずそれを説明する。こ

れは古代史研究者が良く使う手法である。

4. 受講生の書いたものの良い例、改善が必要な例の紹介

(ア) わかり易い自分史にするために(第 9 回講義)

① 社会の大きな出来事が、自分の仕事に大きく関係しているときはその関係の

説明があると分かり易い。

② 仕事内容をもう少し具体的に書いて欲しいと感じるものもある。仕事内容が

分かってくると、仕事上のエピソードも理解し易くなる。

③ 仕事を説明するときに図を有効に使って欲しい

④ 集合写真を使うときは、自分はどこか、分かるようにして欲しい

⑤ 段落の頭は一文字下げること

(イ) 自分の気持ちを書き込む。気持ちがハイのときと、ローのときと、その変化がわ

かるように書き込むと、対比して見えて、読み手に印象深く伝わる。(第 12 回講

義)

(ウ) 子供さんが書いた「僕のお父さん」と言う作文を使った方があった。多くの人に

使える方法である。(第 12 回講義)

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 21 of 33

- 21 - 21

5. 更にレベルアップ (第 13 回講義)

(ア) 自分の文体を大事にする。人間としての独特さを反映した文章を書く。

① ある方の文章。文章の最後に自分の気持ちを“す~”と滑り込ませるように

書き込んである。最初は違和感があって、チェックをつけたが、読んでいて

自然にわかるようになった。この文章を整理して書き直すと文字数が多くな

ってしまうので、この書き方でよいと思う。

② 別の方の例。人間として独特なものを持っている。その独特さを文章に書き

現して、素晴らしい文章になっている。

③ (講義録作成者補足:この部分は授業で提示された文章例や、それを書かれ

た方の日頃の語り口を知らないと、具体的には理解しづらいと思いますが、

先生の伝えたいことは理解していただけると思いますので、この形で残しま

した。)

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 22 of 33

- 22 - 22

第7章:自分を見つめ直す

1. 自分史作成を通じての気づき (第7回講義)

(ア) 自分史作成を通じてある事柄について振り返り、そして今になって・・・に気づ

いた、ということを書き込む。

(イ) 例えば家族との関係ではこのようなことが起き得る。「若い頃は親のことを、□□

□と思っていた。しかし自分が、この歳になって、振り返ってみると、親は○○

○だったことに気づいた。」というようなこと。

(ウ) これはまさに自分史を書く目的のひとつである。

(エ) 若い頃何故そのように思っていたのだろうか、そこを掘り下げて気づいたことを

書く。例えば、「親のことを、先入観を持ってみていた。その先入観の原因は△△

△にあった。今それに気づいた。」

(オ) このようなこともぜひ書き込んで欲しい項目である。

2. 自分を見つめ直す (第9回講義)

(ア) ある人が前書きに書いてくれた。「自分史を書き始める前はあまり書きたいとは思

っていなかったが、書くことで、自分の生い立ちに始めて正面から向かい合った。」

(イ) 自分史を書くということは、書きながら自分を今までとは違う目で見つめ直して

みること。そうすることで自分が一皮むけてくる。自分の芯が見えてくる。更に

進めば芯の芯が見えてくる。最もここまでいけば、文学の領域である。

(ウ) 上記のようにする方法として、

① 自問自答的な部分を入れてみる。

② 今まで書いてきたことをちょっと違う視点で見てみる。客観的な視点で見て

みる。

(エ) 別のある人が、「自分中心で自分勝手なことを書いている。これでよいのだろう

か?」と疑問を投げかけてくれたが、これは健全なことである。

① 誰もが自分の目で世界を見ている。そしてそれは人により非常に異なってい

る。

② 更に目で見た結果を頭の中でその人なりに処理して認識している。結果とし

て、どの様に見えたかは人により大きく異なっているのだ。

③ その結果を受けて、人は自分を中心にして行動する。これは当たり前のこと。

3. 自分史作成を通じて自分にも分からない事柄について自問自答する (第11回講義)

(ア) 自分史を書いていて、「何故そうなっているのか、自分でも良く分からない。」と

いうことが出てくる。そのような時は、それで終わりにするのではなく、自問自

答して少しでも答えに近づく可能性を探って欲しい。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 23 of 33

- 23 - 23

第8章:内容を深く・厚くする

1. 自分史を書き込んでいく (第5回講義)

(ア) 人生の岐路を書き込む

① 誰にでも人生で何回か岐路に立つ。いくつかの選択肢がある中で、どれかを

選び、他は捨てる。何故それを選んだのか、何故他を選ばなかったのか、そ

のときの判断や感情を書くことが自分史では重要である。

(イ) 自分の人生にとって大事なシーンを書き込む

① その場面〔空間、時間〕に戻って、五感を働かせて、そのシーンを明確にす

る。

② そのとき自分の頭に去来したことは何だっただろうか、思い出してみる。

③ 書いていて複雑になってしまったら、それは捨てて、全く違う書き出しで始

めてみる。

④ 社会的に起こったことで、今でもよく分からないということもある。例えば、

全共闘の活動。あれはなんだったのか、今でもよく分からない。何かエネル

ギーがあふれていたことは確か。そして、そのエネルギーがそのあと日本の

高度成長を支えた。

⑤ 個人に起きたことでも、今も良くわからない、でもそれがその後の自分の人

生に大きな影響を与えていたということが大いに有りうる。

(ウ) 書いたものは少し時間がたってから読み直してみる。そうするとどこが分かりづ

らいか判ってくる。

(エ) 自分史年表(エピソード一覧)や人間関係マップを元に、自分の思考に制約をつ

けず自由に考えて、自分を振り返り、気づきを得、そして自分史を書き込んでい

って欲しい。

2. 「書き込む、新たな気づきを得る、また書き込む」を繰り返す (第6回講義)

(ア) 以前提出されたものと、書き込みを行い再提出されたものを比較すると、格段に

良くなっている。そのような方が何人もいる。そして内容が具体的で、分かり易

く、読み易くなるだけでなく、書き込みの過程で、自分について新たな気づきを

得、それが自分史の中に新たに書き込まれている。まさに自分のために自分史を

書くことが実現されている。

(イ) 上記のような経緯を、自分史目次の前に、前書き/緒言のような形で示してくれ

た方もいる。

(ウ) 読んでいる人に共感を起こさせるぐらいに書き込んで欲しい。但し書き過ぎは好

ましくないので注意が必要。

(エ) 人によって書きたいところは違う。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 24 of 33

- 24 - 24

(オ) 書いているうちに気持ちが変わってくることがあるが、それで良い。最初に作っ

た目次に拘らないこと。

3. 書き込むということ (第8回講義)

(ア) 実例を書く、中身を書く、掘り下げて書く

例(良い例、今一歩の例を示しながら)

① 「面接を受けて合格した」だけに終わらせない。何人受けたのか、競争率は、

面接でどのようなやり取りがあったのか、自分のそのときの気持ちは、面接

官の様子は、他の受験生の様子は、など。このようなことを書き込んでいけ

ば、面接を(自分の大きな節目を)印象深く伝えることが出来る。

② 「子育てと仕事の両立で苦労した」人は、それを具体的に書く。大変さを伝

える為には、毎日のスケジュールを分単位で示す、周りの人がどの様にサポ

ートしてくれたかを示す、などを書く。

③ 「女性の総合職進出の苦労」も、それにまつわる話が具体的に書いてあると、

印象が深くなる。

(イ) 一人の人が書くことは、その人だけの問題ではなく、その当時の多くの人に共通

したテーマ。だから他の人にも訴えるし、自分史として残し伝える意味もある。

(ウ) 自分の周りの人を書くときはその人の人間像を書き込んでいく。

(エ) 誰でも就職した最初の仕事のことは良く覚えているものである。

赴任地のこと、職場の全体像、そこにいた人々のこと(群像)、最初に受けた教育、

などの細部を書き込んで欲しい。

(オ) 全体を平均的に詳しくしていくのではなく、「ここぞ」、と思うところにアクセン

トをつけて、詳しく書き込む。

(カ) 増えた、減ったとだけ表現するのではなく、○○%増えたなど、具体的に数字を

書くと印象が強くなる。

(キ) 文章だけでなく、図解を活用する。

4. 書き込みは新たなテーマを生み出す (第7回講義)

(ア) 書いた分を読み直して、書き込みを進めていくと、その部分がどんどん膨らんで

いく。それはそれで良い。

(イ) 例えば、先祖の話。これがどんどん広がり、ファミリー史(○○家の歴史)にな

っていく。旧家には旧家なりの色々な風習があった。それを残すのも意味あるこ

とである。

(ウ) 例えば、疎開生活日記。戦争当時の庶民の暮らしはどんどん忘れられてきている。

そのような話を自分史の中に入れて書くことには意味がある。

(エ) 一般の著作で考えれば、そのように膨らんだところを取り出して、別の一冊にま

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 25 of 33

- 25 - 25

とめるということになる。(勿論最初に考えていたテーマの本は、それはそれで出

す。)このように最初に考えていた一冊で終わるのではなく、そこからテーマが広

がり、何冊の本にもなっていく、そうやって出した本がある。

(オ) エピソードを具体的に、ユーモラスに書く。難しい内容が続いた後に、ユーモラ

スな話が出てくるようにすると良い。(この部分第10回講義)

(カ) 自分史の中に、RSSC応募論文をそっくり入れた方がいる。それが、全体の流

れの中に、ピッタリとはまっている。(この部分第10回講義)

5. 人生を変えた出来事から書いていく (第7回講義)

(ア) 自分史は年代順に書いていかなければならないという訳ではない。ある期間を飛

ばして、自分の人生を変えた出来事から書いていくというのも一手である。

(イ) その出来事のどのような面が、そして、その出来事に対する自分の対応のどのよ

うなポイントが、その後の自分の人生をどの様に決定付けたのかを書き込むのが

重要である。

(ウ) 人生を変えた出来事が、現代史の中の一場面(多くの人が知っているような一場

面)と関係している時は、それとの関係を示しながら記述すると、訴えるものに

なる。

6. 仕事の成功談と失敗談を対で書くと、成功も失敗もより浮かび上がる (第7回講義)

(ア) 成功談はぜひ書き込んで欲しい。

(ウ) でも、成功談だけでなく、失敗談も書くと、その対比から、気づくこともでてく

るし、伝えたいこともクリアーになっていく。

(エ) 成功談も失敗談も、どちらも、高度成長期を支えた皆の苦労を伝えるものである。

(オ) 仕事のことを書くときは、その仕事のことを知らない人にも分かるように書くこ

とが必要である。(前回の講義で紹介された事柄が再度簡単に説明される。内容は

第6章第 1 項をご参照下さい)

7. 人生におけるメンター(人生の師)との出会いを書く (第7回講義)

(ア) メンターと出会えた人は、自分とその人の関係だけでなく、その人の人柄等その

人のこと自体を書き込むのが良い。書き込むことで、その人が大事なメンターで

あったこと、自分の人生おいて如何に大切な人だったかが、自分史を読んだ人に

良く伝わることになる。

(イ) メンターは、学生時代の恩師の場合もあるし、仕事に就いてから出会った人であ

ることもあるし、本を通じて出会った人(その本の著者や本の主人公など)の場

合もある。どちらかというと仕事で出会った、特に仕事に就いた始めの頃に出会

ったケースが多い。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 26 of 33

- 26 - 26

(ウ) 勿論、メンターとの出会いは人により濃淡がある。残念ながらメンターに出会え

なかった人もいる。出会えた人はぜひ自分のメンターのことを書いて欲しい。

(エ) 自分史は事柄を羅列して書くことが目的ではない。メンターのことは徹底的に書

き込んで欲しい。

8. メンターとは逆の人(ひどい人)との出会いの記述について (第7回講義)

(ア) 自分に影響を与えた、このような人との出会いも自分史の中では書かなければな

らないことになる。

(イ) 人の話に限らないが、ひどい話は読んでいる人に不快感を与えるまで書くことは

良くない。

(ウ) でも、先ず全て書いてみよう。

(エ) その後、一読者として読んでみて、表現等に修正を入れよう。立場を変えてみれ

ば、表現を少し弱めることができるかもしれないし、違う視点でのプラス面での

評価も出てくるかも知れない。あまり細かく言わず、丸めて表現しよということ

も有りうる。

(オ) しかしそうやって修正を入れていくと、つまらないものになってしまうことが多

い。文章はところどころ角が立っているくらいが良い。適正なところを見つける

のがポイントである。難しいが。

(カ) 今時点では、先ずはどんどん書いていく。中身を増やすことが大事。

9. 立花式書き込み作法 (第4回講義、第9回講義)

(ア) 立花先生の文章作りの手順が、実物を使いながら紹介された。

① ステップ 1:手書きで原稿を書き、それに何回か手を入れる。

② ステップ 2:原稿をワープロ書きにし、それにまた何回か手を入れる。

③ ステップ 3:入稿して、そのあとまた校正する

(イ) 良い文章を作るには何回も何回も読み込み、そして書き込んでいくことが必要。

読み込んだ文章かそうでないかはすぐに分かる。

(ウ) ある人から次のような質問があった

「先生は、最初手書きで書いて、それに何回か直しを入れて、あとでワープロ化

するという手順でやっているというお話でしたが、何故最初は手書きなのです

か?」

(エ) 自分がそのようにやっている理由は

① 自分はワープロ入力より、手書きのほうが早い。

② 直しを入れるとき、手書き原稿でやるときは、変更前が残っている。最初ど

の様に書いて、それをどの様に直して言ったか、紙の上に記録が残っている。

更に手を入れていくとき、その経緯が残っていることは非常に役立つ。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 27 of 33

- 27 - 27

ワープロだと、直しを入れると、前のものが消えてしまい、直しの記録が残

らない。

③ 編集者がワープロ化のサポートをしてくれる。自分は特殊な条件下にいる。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 28 of 33

- 28 - 28

第9章:大きな視点で自分を捉える

1. 人間関係クラスターマップを作る意味(空間的広がり) (第5回講義)

(ア) 人は誰でも自分に関係した人を 1000人以上持っている。

(イ) この 1000人は何を意味するか? 1000人(103:10の 3乗)という数の、数の

重さは?⇒世界中のどの 2 人も、1000人のクラスタを 6 つ経由すれば繋がるとい

われている。

1,0006(1000の 6乗)=1018=一兆の更に百万倍:地球の総人口(100億に達

していない)の 1億倍以上。

世界の人は壮大な人間マップの中で繋がっている。

(ウ) 世界全体で考えなくても、例えばこのセカンドステージ大学に来ている人も、入

学前は直接には知らなかった人の間でも、友達の友達であった可能性はある。知

らなくても繋がりはあるのだ。

2. 時間軸(過去、現在、未来)でみた繋がり。血縁の繋がり (第5回講義)

(ア) 自分から見て、例えば 10代さかのぼると、10代前の人は何人いるか?

210≒1,000人になる。更に遡ると

20代前まで遡れば 100万人

30代前まで遡れば 10億人:これは既に現在の日本の人口をも越えている。

40代前まで遡れば 1兆人

(イ) これを逆に子孫の広がりに考えれば、子供が2人として、上記の数の広がりにな

る。結果として、われわれの殆どの人は先祖を介して横のつながりを持っている

3. 自分史とIT技術の進歩 (第5回講義)

(ア) 日本の戦後を支えてきた人は億のオーダーである。1億=108

(イ) 一方、例えばUSBメモリーでは最近ギガバイトを越える物が出ている。8Gバイ

ト、64Gバイトなど。1G=109

手のひらに乗る小さなメモリースティックに入れようと思えば、戦後を支えてき

た数億人の名前を全て入れられる時代になった。

(ウ) スーパーコンピュータのメモリーは今はテラ(10の 12乗)の時代である。自分史

の総合が時代の歴史であるということを現実に処理しうる時代になりつつある

4. 宇宙の歴史と人間の寿命 (第12回講義)

(エ) 宇宙の歴史(詳細は省略)は最近ようやく分かってきた。誕生があって、膨張し

て、いずれ消滅する。宇宙には物理的輪廻転生があるともいえる。

(オ) 人間の寿命は長くて120年といわれている。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 29 of 33

- 29 - 29

(カ) ここに集まった人は年齢にばらつきが有り、また寿命も違ってくる。でも宇宙の

歴史、地球の歴史、日本の歴史というスケールで見れば皆同時代人。

(キ) 年齢感覚を持つ

孔子の言った言葉、40歳:不惑 50歳:知天命 60歳:耳順

今の寿命に当てはめると、それぞれ+10歳ぐらいだろう

(ク) 参考図書 山本風太郎 『人間臨終図巻』

現在入手可能なものは、文庫本タイプ 3分冊構成

5. 日本の近現代史を100年単位の大きな流れの中で捉える (第13回講義)

歴史を見るときは、100年単位の大きな時の流れを掴んで欲しい。大きな目で見

て欲しい。

(イ) 今を仮に明治年号で表現すると約140年(講義録作成者注:2008年は明治

141年に相当します)。この140年を大きく分ければ、明治憲法の時代と昭和

憲法の時代に分かれる。

2.26から1945年までの間は2つの政治権力の争いがあった。

(ウ) われわれは大きくいえば20世紀人。20世紀冒頭に共産主義が台頭し、20世

紀末に崩壊した。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 30 of 33

- 30 - 30

第10章:仕上げよう

1. 細部にわたる配慮 (上 2 項目:第 9 回講義、下3項目:第10回講義)

完成したと言える人が出始めた。何人かは終わりに近づいている。このような人は細

部に気を配って完成度を上げよう。例えば

(ア) 写真に吹き出しをつけて、自分や話題の人が良く分かるように

(イ) 見出しの付け方を更に工夫する

(ウ) 先ず、前書きと、後書きを書く。

前書きは、あたかも本文執筆の前に書いたように見せているが、実際は最後に書

くものである。

後書きには、総括、感想などを入れる。

(エ) 本文のブラッシュアップの基本は、書いたものを自分でじっくり読むことである。

(オ) 文集作成、出版まで考えると、ブラッシュアップは2フェーズになる。

① 自分の為、自分の子孫の為の自分史(以下自分の為の自分史と呼ぶ)として

のブラッシュアップ

② 他人に読んでもらう為の自分史(以下出版の為の自分史)にする為のブラッ

シュアップ

2. 自分史作成をスピードアップしよう (第10回講義、第11回講義)

(ア) 一つの事柄のところで時間がかかっていた人も、その部分を完了できると、その

後は一気に書くスピードが上がっている。一気に進んだ方が何名かいる。

(イ) 完成に向けて進捗を自主管理すること

いくつかの管理票フォーマットを例示。どのようなやり方でも良いから、自分

で進捗管理すること

(ウ) 小冊子にしてみる

本文に前書き、後書きをつけて、全部揃えて印刷し、綴じて本にしてみること。

ページ数は人によりまちまちだが、比較的少ない人、たとえば20~30ページ

ぐらいの人は、サイズを1/2にして、ページ数を2倍にすると、本らしくなる。

3. 最後のまとめ、ブラッシュアップでやること (第12回講義)

(ア) 前書き、後書きをつける

前書き・後書きで、自分史を書いた自分の気持ちを残す。

(イ) どこかで「今までの人生全体への総括的振り返り」をすること

(ウ) 書き足りないところを書き足す。書きすぎているところは削る

(エ) 文章の細部に拘る

① テンポの良い文章にする。

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 31 of 33

- 31 - 31

② 時制をそろえる。

現在形で書くのが良いか、過去形で書くのが良いかチェックする。

書いているときは現在形表現のほうが良いように思われても、読むときはそ

うではないときがある。

③ 「てにをは」の使い方を確認する。

④ 形式(縦書きか、横書きか、サイズをどうする、など)は自由。ボリューム

が少ない人は、サイズを半分にして、ページを倍にすると、見栄えが良くな

る。

4. ブラッシュアップのポイント (第13回講義)

(ア) 感情の表現について

① 書いていると気が乗ってきて、どんどん書き進めようになる。このような時

は、むき出しの感情がどんどん出てきて、それが書き込まれていく。読む人

も巻き込んでいくようになる。

② 感情の主要なものは喜怒哀楽。このうち、喜と楽は問題ないが、怒がむき出

しで書き込まれるのは問題。

③ 書いて直ぐ直しにかかるよりは、少し時間を置いてから手を入れるのが良い。

(イ) 自慢話

以前自慢話を書くことは健全と言ったが、自慢たらたらはやはり拙い。人間は

押し付けられると不快感を持つ。

(ウ) 自分史を大きな流れの中に位置づける

個人のことは、現代史という大きな流れの中で起こった一つの小さなこと(事実)

である。自分史を書くということは、この小さなこと(事実)を書き綴っていく

ことになっているが、そのような自分史の中に、時々、全体的な大きな話を入れ

ると良い。全体的な大きな話を入れるということは、長い時間の視点に立った見

方を入れるということである。

(エ) 誰にでもわかるよう、言葉の使い方に留意する

その業界の人にしか分からない言葉、特定の地域だけで使われている表現はチェ

ックして、誰にでも通じる表現にする。

(オ) 書き込む

もっと書き込んで欲しいと言うところが残っている人がまだまだいる。何があっ

たのか、どんな工夫をしたのか、など、残された期間で書き込んで欲しい。

5. 今後は自分史の使い方に合わせてカスタマイズしよう (第11回講義)

(ア) 自分のため、子孫のための自分史

(イ) 配布先限定の自分史(例えばクラス内及びセカンドステージ大学の先生限定)

最終印刷日時:2013/11/15 20:23:00 Page 32 of 33

- 32 - 32

自分の為の自分史を少し削ればできる。ぜひこの2つは作って欲しい

(ウ) 一般の人に読んでもらうために出版する自分史

① 出版するとなると色々と手を入れることが必要になる。例えば、自分史の中

に出てくる家族、その家族が読んだらどのように思うか、そのようなことも

考えて、内容を吟味する必要がある。この判断は書いた本人しか出来ない。

② 書きあがった自分史のボリュームは人によってまちまち。それを一律のボリ

ューム量に合わせることは難しい。

③ 素材を出版社に提供して、出版に値する素材か判断を仰ぐことになる。

④ 自費出版という方法もあるが、費用がかかる。

6. 最終完成品のまとめ方 (第 7 回講義)

(ア) この講義の終わりまでいったとき、成果をどうまとめるか?最終的な形として2

つの案がある

① 出来上がった自分史を集めて、内々の自分史集を作る。先生、受講生など限

定して保有する。

② 「自分史の書き方と実際」という形に纏めて本にして出版する。

1. 自分史を整理する為に作成した図表等の作り方について、受講生から新

しいアイディアを入れたやり方のものが出されており、それらも組み込

んで自分史の書き方を纏めていけば良いものが出来る

2. 立花先生が東大でやった授業では、結果を纏めて本にして出版した。立

花先生と受講者の連名で。10万冊レベル売れた本もある。