理科教材への「世界史」の導入について · 〔キーワード〕科学教育...

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理科教材への「世界史」の導入について 75 (以下,前号掲載) Ⅰ はじめに 1 研究の学術的背景 2 研究の目的と構成 Ⅱ 1830年代頃までの電磁気学とJoseph Henryの研 究レベル 1 Henryの主要業績と生涯 2 Jacob Green の'Electri-Magnetism'をめぐって 3 Henryの電磁機器改良研究 4 アメリカの国内開発と地磁気研究 Ⅲ 19世紀前半期のアメリカの自然科学 研究の状況 以上の章ではHenryの電磁気学的分野での研究, とりわけ1920年代に実施した初期の研究についてみ てきた。もっとも同時並行的に研究を展開していた Faradayのように,電磁気学の全ての分野をまさに網 羅的に開拓し,いわゆる「Faraday的段階」 1 へ到達し たのとは違って,Henryはその後,電池・電磁石・コ イル・導線の抵抗・電磁誘導諸現象という限定的な 分野で先駆的な研究をいくつか残したに過ぎない。 Henryの研究は最初期の1827~31年から始まり,35年, 38年,40年,42年とやや散発的ともいえる形で推移し ている。 またFaradayとは違ってHenryは「純粋」に電磁気 学的関心を持って研究したというよりは,今日の言葉 でいうなら,より実用的な目的を持った電気工学分野 の基礎研究に徹していた。 Faradayの場合,実用的研究を拒否して物理学の一 分野としての電磁気学研究に邁進したことは著名で ある。とりわけ王立研究所の所員としてのFaradayに とっては,1799年創立の王立研究所の設立趣意書に科 学の普及と産業界の要請にこたえる研究が義務づけら れ,産業界からの要請に追われる研究に明け暮れる苦 痛から脱出してはじめて,本格的な電磁気学研究に打 ち込めたのである 2 こうしたHenryとFaradayの学問的性格の相違は いったいどこからきているのだろうか。むろん個人的 性格の違いとみることもできようが,筆者はこの違い の源泉を,19世紀前半期のアメリカの自然科学分野の 状況と,イギリスのそれとの違いにみる。 1.19世紀前半期のアメリカ社会 Henryが電磁気学的研究に一応の終止符を打つ1840 年代までは,アメリカ史の中でも特異な「合衆国膨張」 の時代であった。ルイジアナ州(1812年),インディ アナ州(1816年),ミシシッピー州(1817年),イリノ イ州(1818年),アラバマ州(1819年),ミズーリ州(1821 年),アーカンソー州(1836年),ミシガン州(1837年), テキサス州(1845年),アイオワ州(1846年),ウィス コンシン州(1848年),カリフォルニア州(1850年), ミネソタ州(1858年),オレゴン州(1859年)といっ た具合に国家的スケールが飛躍的に拡大し,いわゆる フロンティア(西漸運動)が進行した時代といえる。 1850年の第7回センサス・レポート(国勢調査報告書) 3 によると,合衆国総人口2,319万人(40年のそれは1,706 万人),①自由諸州における職業人口約350万人のうち 農民が153万人(43%),労働者88万人(25%),工業 生産者84万人(24%),自由業・官公吏・学生・商人・サー 本論文では理科教材へ社会科とりわけ世界史を取り入れることの意義とその際の留意点や課題等 についての考察を試みる。近年の理科教育や科学技術理解増進活動等を見るときに,科学史の導入 や異分野融合といった取り組みも数多く見られるが,それらは単に天才史観・発明発見史観からの エピソードの紹介であったり,各専門領域を抜け出ていなかったり,奇を衒ったものも多く,必ず しも理科教育に有効なものとなっていない。本稿では人間の歴史の中で科学の発展を具体的にとら えることで,科学をより身近な存在として扱える新たな理科教材の可能性を考察する。今回は前回 取り上げたHenryが行った初期の電磁気学研究の特徴をふまえ,19世紀前半期のアメリカの自然科 学の状況と中学・高校での世界史教育との関わりについて考察し,理科教材として世界史をどのよ うに活用できるかその可能性を探る。 〔キーワード〕科学教育  科学史  世界史  電磁気学史 理科教材への「世界史」の導入について 岡 田   努* ― 19世紀初頭の電磁気学研究とアメリカ史との関わり⑵ ― *:総合教育研究センター教職履修部門

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理科教材への「世界史」の導入について 75

(以下,前号掲載)Ⅰ はじめに 1 研究の学術的背景 2 研究の目的と構成Ⅱ 1830年代頃までの電磁気学とJoseph Henryの研 究レベル 1 Henryの主要業績と生涯 2 Jacob Green の'Electri-Magnetism'をめぐって 3 Henryの電磁機器改良研究 4 アメリカの国内開発と地磁気研究

Ⅲ 19世紀前半期のアメリカの自然科学 研究の状況

 以上の章ではHenryの電磁気学的分野での研究,とりわけ1920年代に実施した初期の研究についてみてきた。もっとも同時並行的に研究を展開していたFaradayのように,電磁気学の全ての分野をまさに網羅的に開拓し,いわゆる「Faraday的段階」 1へ到達したのとは違って,Henryはその後,電池・電磁石・コイル・導線の抵抗・電磁誘導諸現象という限定的な分野で先駆的な研究をいくつか残したに過ぎない。Henryの研究は最初期の1827~31年から始まり,35年,38年,40年,42年とやや散発的ともいえる形で推移している。 またFaradayとは違ってHenryは「純粋」に電磁気学的関心を持って研究したというよりは,今日の言葉でいうなら,より実用的な目的を持った電気工学分野の基礎研究に徹していた。 Faradayの場合,実用的研究を拒否して物理学の一

分野としての電磁気学研究に邁進したことは著名である。とりわけ王立研究所の所員としてのFaradayにとっては,1799年創立の王立研究所の設立趣意書に科学の普及と産業界の要請にこたえる研究が義務づけられ,産業界からの要請に追われる研究に明け暮れる苦痛から脱出してはじめて,本格的な電磁気学研究に打ち込めたのである2。 こうしたHenryとFaradayの学問的性格の相違はいったいどこからきているのだろうか。むろん個人的性格の違いとみることもできようが,筆者はこの違いの源泉を,19世紀前半期のアメリカの自然科学分野の状況と,イギリスのそれとの違いにみる。

1.19世紀前半期のアメリカ社会 Henryが電磁気学的研究に一応の終止符を打つ1840年代までは,アメリカ史の中でも特異な「合衆国膨張」の時代であった。ルイジアナ州(1812年),インディアナ州(1816年),ミシシッピー州(1817年),イリノイ州(1818年),アラバマ州(1819年),ミズーリ州(1821年),アーカンソー州(1836年),ミシガン州(1837年),テキサス州(1845年),アイオワ州(1846年),ウィスコンシン州(1848年),カリフォルニア州(1850年),ミネソタ州(1858年),オレゴン州(1859年)といった具合に国家的スケールが飛躍的に拡大し,いわゆるフロンティア(西漸運動)が進行した時代といえる。1850年の第7回センサス・レポート(国勢調査報告書)3 によると,合衆国総人口2,319万人(40年のそれは1,706万人),①自由諸州における職業人口約350万人のうち農民が153万人(43%),労働者88万人(25%),工業生産者84万人(24%),自由業・官公吏・学生・商人・サー

 本論文では理科教材へ社会科とりわけ世界史を取り入れることの意義とその際の留意点や課題等についての考察を試みる。近年の理科教育や科学技術理解増進活動等を見るときに,科学史の導入や異分野融合といった取り組みも数多く見られるが,それらは単に天才史観・発明発見史観からのエピソードの紹介であったり,各専門領域を抜け出ていなかったり,奇を衒ったものも多く,必ずしも理科教育に有効なものとなっていない。本稿では人間の歴史の中で科学の発展を具体的にとらえることで,科学をより身近な存在として扱える新たな理科教材の可能性を考察する。今回は前回取り上げたHenryが行った初期の電磁気学研究の特徴をふまえ, 19世紀前半期のアメリカの自然科学の状況と中学・高校での世界史教育との関わりについて考察し,理科教材として世界史をどのように活用できるかその可能性を探る。〔キーワード〕科学教育  科学史  世界史  電磁気学史

理科教材への「世界史」の導入について

岡 田   努*

― 19世紀初頭の電磁気学研究とアメリカ史との関わり⑵ ―

*:総合教育研究センター教職履修部門

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2009- 776 福島大学総合教育研究センター紀要第 7号

ビス業者・その他25万人(8%),②奴隷諸州では黒人奴隷320万人,それを所有した大農園支配者27,000人(1.8%),これ以外の全職業人口148万人,そのうち農民82万人(55%),労働者28万人(19%),独立企業家21万人(14%),自由業その他15万人(10%)と圧倒的な農民社会であることが知れる。また工業生産者,独立企業家といってもそのほとんどは鍛冶屋・家具製作者など「小屋掛け」程度のものであった。もっとも1860年代に産業革命を進展させた綿織物工業を中心とする産業資本は自由労働制度をもつ,北部地域を中心にこの時代に成長を遂げたものであった。 こうした状況を反映し,国内地図の整備・作成,自然資源の開発調査,農業の改良問題が積極的に取り組まれる一方,道路建設,運河建設がすすめられ,1830年には蒸気機関車が登場し,ヨーロッパの先進諸国に対して発展途上国としての土台を築きはじめていた。アメリカにおける1840年代後半の電信機の急速な普及の基礎はこの点にあった。

2.当該時代のアメリカの科学者の特徴 さてHenryと直接・間接に交流を持った19世紀前半期の科学者の多くは,Harvard College, College of New Jersey ( 後 のPrinceton), University of Penn-sylvaniaなどの出身かもしくはそこに在職した人々であった。いうまでもなくこれらは北部の大都市へと成長をはじめたBoston, New York, Philadelphiaの諸都市の大学である。合衆国の拡大にともなって,東海岸沿いの大学が,やがてCleaveland, Ohio, Cincinnati, Michiganの諸大学が,フロリダの併合(1819年)の後にはフロリダ半島のMiamiに総合大学や医療大学も設立された,教育機関としての大学の形がつくられる。したがってHenryが直接・間接に交流をもった「自然科学者」はこうしたアメリカの大学の草創期の教育者たちでもあった。本論文末にこの時期の主要な研究者たち64名のリスト4を掲げておいた。これによれば,現在では考えられないことではあるが,必ずしも正規の大学教育を受けずに大学に職を得たり,専門研究職に就く者も多く,草創期の実力主義,フロンティア精神にあふれている状況がうかがえる。もっとも大農場主,富裕な商工業者・軍人・官吏・聖職者の子弟たちを中心とした教養教育であったから自然科学が組織的・体系的に教育されたわけではない。多くの教師が私費を投じて,研究を行い教育を行う状態は19世紀末まで続いた。だから時代の要請にこたえるために,技術系・医療系の教育機関はこれとは別につくられた。例えば Rensselaer Polytechnic Instituton(New York) National Academy of Design(1829年設立,初代会長 Morse) American Academy of Arts and Science(1800年

前後) Arts and Manufacture(1800年前後) Harvard, Albany, Castleton, Fairfield, Vermont, Berkshireの各医療学校などがそれにあたる。特に医療部門の新設は多く,医療系の研究機関や大学では流行病の研究が盛んに行われ,19世紀を通じて流行病の防止に公衆保健規制が定着していく。これらは単純な検疫の規定に始まったが,非常に多様な衛生規定にまで拡大し,後には都市計画にまで及んでいる。5 この時代,科学に関心のある人々や科学的・専門職業的集団にとって,教育は科学そのものを目的としたというよりは,むしろ先にも述べた資源開発(→地質調査・地図製作),農業開発(→育種・機械化…),工業化(→機械工業,兵器産業…)などの「実際問題の解決」6にこそ大きな関心が向けられていた。

3.当該時代のアメリカのAcademy 19世紀,特に前半期のアメリカでは大学教育を補完するまだ他にも多くの,例えばHenryが4年間学んだAlbany Academyをはじめ, A.D.Bache(国立科学アカデミー初代会長)の学んだUnited States Military AcademyやA.Eaton(著名な地質学者)の学んだ Rensselaer Polytechnic Instituton,植物学者A.Grayの学んだ Fairfield Academyなどがあった。 New York州Albany市にあったAlbany Academyに設けられたInstitutionについてふれるなら,The Society for the Promotion of Useful ArtsとAlbany Lyceum of National Historyが併合し,科学と文芸の振興をめざして1824年に設立されたものであった。ここは第1部門が物理科学・技術部門,第2部門が自然誌部門,第3部門が歴史および一般文学部門の3部門からなっていた。7会長をはじめとする各役員は会員の投票によって選出された(Henryは1820年会員となった)。また前身となったふたつの協会が所有していた博物館をはじめ図書館とその文献も引き続き学会に引き継がれて運営された。そして学会の定期的な会合には州議会議事堂内の部屋が使用され,さらに研究論文の発表・出版についてもHenryらの尽力によって,1830年'Transactions of Albany Institute'の第1巻が出版された(Henryが1827年に報告した「電磁機器の改良について」が含まれている)。 Henryは1826年9月このAcademyの物理学と数学の教授に就任するのだが,本論分の第Ⅱ章でもふれたように,この就任演説8にアメリカの自然科学系・技術系教育の特徴がよく語られている。それによれば「ヨーロッパの技術者の退屈で大変費用のかかる方法はアメリカ人の活動的な性格と経済状態には合わないので,(そうでなくても)大きな結果が得られるようにしなければならない」とし,「この国で用いられる

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技術の実践的・科学的原理を教えること」がAlbany Academyの数学・物理学教授としての自分の重要な職務なのだというのである。そのためには自然科学などで用いられる実験が最も効果があると言明している。 こうした各地での大学やそれを補うAcademyが設立される一方,各種の学会も組織される。 Association of American Geologists and Naturalists(1840年設立), Cincinnati Astronomical Society(1842年設立), Boston Society of Natural History(1840年代),そして1846年にスミソニアン研究所が設立され,1848年にはアメリカ科学振興協会が,そして1863年には国立科学アカデミーが設立されるなど,科学研究体制も一応整う。

4.アメリカの科学者のヨーロッパ留学 さて,アメリカにとっての先進諸国ヨーロッパとの交流はどのようであったろうか。末尾に掲げた資料の中からその傾向をうかがうことができよう。それを整理すると以下のようになる。

 この留学の数は決して多い数ではない。本格的なヨーロッパとの交流は1860年代以後のことである。それにしても渡欧した研究者の分野は医学や化学,地質

学にかたより,また実験機器・書籍購入のためのものも多い。明らかに実用学が重視され,いわゆる基礎理学への研究関心が薄いことがみてとれよう。この点は当時の主要な64人の研究者の分野にも明瞭にみてとれる。例えば生物学と医学,植物学と薬剤師,化学と薬学,化学と鉱物学,化学と食品化学,昆虫学と農学などというように「応用科学」としての性格が色濃く出ている。さらに地形学,測地学,地質学,鉱物学,気象学などに極端にかたよりをみせている。この分野ではようやく博物学,自然誌の段階をぬけて,近代的な学問の体裁をとりはじめた頃であり,合衆国諸州が競って重用したのであった。 以上のように,当該時代の科学者の諸活動を追っただけでも,自然科学研究とその時代の密接な関わりを見ることができた。

Ⅳ 中学校社会科および高等学校世界史 における当該時代の取り扱いについて  ―理科教材としての活用の可能性について―

 前章ではHenryが電磁気学研究を行った19世紀前半期のアメリカの自然科学研究の状況をHenryと直接間接的に交流の会った科学者たちの活動を通して概観した。そこには単に科学者の発明発見のエピソードをトピックス的に扱うだけではすまされない歴史的・社会的背景を考察することができた。 しかし筆者はこうした科学史研究の成果の一部を即学校教育(小学校・中学校・高等学校)での理科教育に活用せよというわけではない。自然科学だけでなく政治,経済,産業,文化などこれらの歴史事象を有機的に結びつけ教育に活用することは児童・生徒の発達段階を考慮すれば,安易に実施できないからである。 本稿では,主に中学校と高等学校の「理科」の教材として「世界史」をどの程度導入し,活用できるのかについてひとまず前章までの内容であるHenryの初期の電磁気学研究と当該時代のアメリカの状況について考察する。 そこで中学校の社会科および高等学校世界史での当該時代の扱われ方についてその特徴を見てみることにする。

1.中学校社会科における当該時代の取り扱いについて 学習指導要領の中学校社会の歴史的分野の中で本論分で扱った時代に関わる部分を見ておこう。10  まず「1 目標」の⑶に「歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ,我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに,他民族の文化,生活などに関心をもたせ,国際協調の精神を養う。」とある。 また「2 内容」については「5近現代の日本と世

表1.留学・渡欧状況9

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2009- 778 福島大学総合教育研究センター紀要第 7号

界」の「ア 市民革命や産業革命を経た欧米諸国のアジアへの進出を背景に,開国とその影響について理解させる。」が該当する箇所となる。 「3 内容の取り扱い」については,「⑴ 内容の取扱いについては,次の事項に配慮するものとする」の中で ア 生徒の発達段階を考慮し,抽象的で高度な内容

や複雑な社会構造などに深入りすることは避けるとともに,各時代の特色を表す歴史的事象を重点的に選んで指導内容を構成することにより,細かな知識を記憶するだけの学習に陥らないようにすること。なお,年代の表し方や時代区分についても基本的な理解を得させるようにすること。

 イ 世界の歴史については,我が国の歴史を理解する際の背景として我が国の歴史と直接かかわる事柄を取り扱うにとどめること11

と記載されている。 本論文で取り扱う内容に関しては小学校までの学習内容や生徒の発達段階を考慮した上で「我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに,他民族の文化,生活などに関心をもたせ,国際協調の精神を養うこと」や「日本の歴史を理解する上での背景として」のみの記述となっている。 したがって中学校社会科の教科書でも本稿で扱う時代および内容についての記載はほとんどない。 福島県内の多くの中学校で使用されている『新編 新しい社会 歴史』(東京書籍2005年検定済)では「第5章 開国と近代日本の歩み」の「1 欧米の進出と日本の開国」「②産業革命と欧米諸国」中に次の記述があるのみであった。

 19世紀の欧米諸国 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  アメリカ合衆国では,ヨーロッパからの移民を大量に受け入れて,農業と工業が発達しました。しかし,自由貿易や奴隷制をめぐる対立から国が分裂し,1861年に南北戦争が始まりました。この内戦を克服したアメリカは,大西洋から太平洋にまたがる大陸横断鉄道を建設し,資本主義大国として,急成長をとげました。12

 前述のとおり,無理に社会科と理科の学習内容をこじつける必要はないが,中学2年で学習する「電磁気学」分野との関わりで,アメリカの国内開発や領土の拡大に関して,情報伝達のための通信手段(Henry, Morseらの電信機)が登場し発展したことに触れることが可能であるとの指摘にとどめておく。

2.高等学校地歴科における当該時代の取り扱い

 高等学校学習指導要領(文部科学省平成21年3月)の「第2節地理歴史」13の部分で本稿に係る箇所を概観しておこう。 第1款目標,第2款各科目,第1 世界史の「1 目標」には次のように記述されている。  近現代史を中心とする世界の歴史を諸資料に基づき地理的条件や日本の歴史と関連付けながら理解させ,現代の諸課題を歴史的観点から考察させることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。 14

(下線筆者) 目標の下線部分のように,中学社会科からはよりいっそう日本の歴史との関連付けや,現代諸課題を歴史的観点から考察させるという歴史学の基本的な内容が明記されている。 さらに,「内容」の「⑵ 世界の一体化と日本」には

  近現代世界を理解するための前提として,ユーラシアの諸文明の特質に触れるとともに,16世紀以降の世界商業の進展及び資本主義の確立を中心に,世界が一体化に向かう過程を理解させる。その際,世界の動向と日本とのかかわりに着目させる。  

(中略)

 ウ ヨーロッパ・アメリカの工業化と国民形成  産業革命と資本主義の確立,フランス革命とアメリカ諸国の独立,自由主義と国民主義の進展を扱い,ヨーロッパ・アメリカにおける工業化と国民形成を理解させる。 15

さらに「3 内容の取扱い」は次のとおりである。⑴ 内容の全体にわたって,次の事項に配慮するものとする。 ア 1の目標に即して基本的な事項・事柄を精選し

て指導内容を構成するとともに,各時代において世界と日本を関連付けて扱うこと。また,地理的条件とも関連付けるようにすること。

 イ 年表,地図その他の資料を積極的に活用したり,文化遺産,博物館や資料館の調査・見学を取り入れたりするなどして,具体的に学ばせるように工夫すること。 16(下線筆者)

 ここで注目すべきは「内容の取り扱い イ」の下線に見られる資料の活用,資料館等の施設の調査・見学を取り入れると明記されていることである。 資料の収集はともかく,施設利用については全国にある博物館・資料館の類の設置数とその種類を考えるとほとんどごく限定的にしか利用できないと思われるが,ここに発展学習として理科との関わりを活用できる教材化の可能性があるのではないかとひとまず指摘

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理科教材への「世界史」の導入について 79

しておこう。 以下,同様に「第2 世界史B」についても,目標・内容等について記載しておく。

 1 目標  世界の歴史の大きな枠組みと展開を諸資料に基づき地理的条件や日本の歴史と関連付けながら理解させ,文化の多様性・複合性と現代世界の特質を広い視野から考察させることによって,歴史的思考力を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。

  (中略)

 ⑷ 諸地域世界の結合と変容  アジアの繁栄とヨーロッパの拡大を背景に,諸地域世界の結合が一層進展したこととともに,主権国家体制を整え工業化を達成したヨーロッパの進出により,世界の構造化が進み,社会の変容が促されたことを理解させる。

 ウ 産業社会と国民国家の形成   産業革命,フランス革命,アメリカ諸国の独立

など,18世紀後半から19世紀までのヨーロッパ・アメリカの経済的,政治的変革を扱い,産業社会と国民国家の形成を理解させる17

 続いて数ある高校の世界史のうち福島県内で使用されている教科書から東京書籍「世界史A」(2008年)「世界史B」(2007年)の当該部分を見ておこう。 「世界史A」では第4章「大西洋世界の変容とその波及」「2ヨーロッパの動乱の波及」「①ラテンアメリカ諸国の独立」の中で「合衆国の拡大」が取り上げられている。そこには独立後の1803年のルイジアナ購入,それにともなうミシシッピ川以西の広大なフロンティアの拡大18について10行程度ではあるが諸資料とともに掲載され,さらに「第5章産業化社会の拡大と成熟」では「2 国民国家への道」の「②アメリカ合衆国の発展と南北戦争」のなかで,米英戦争以後の領土拡大(フロリダ,テキサス,カリフォルニア)と西部開拓の意義が記述されている。ここには開拓の推進力のひとつとして「鉄道建設」が上げられているが,本稿における当該時代の電磁気学研究と発展との関わりでいえば,その関係も世界史と理科をつなぐ教材のひとつとして活用できるだろう。 さらに「⑤成熟する社会」では「科学や学問の発展」の項目が設けられており,そこには自然科学諸分野だけでなく歴史学,哲学等の長命な人物と業績が記載されている。 本稿との関わりで電磁気学分野についてみるとオームの法則のオーム,電磁気学の研究として著名なファラデーが記載されている。さらに電信機で著名なモー

ス(モールスMorse)も記載されている。 当時の自然科学研究状況と発展とのかかわりではどうしてもヨーロッパの科学者が多くを占めることにはなるが,電信機のモースを通して電信機の実用化とアメリカの拡大と国内開発にふれることは可能であろう。 さらに「受験への対応を考慮した詳しい記述」19を狙いとした「世界史B」(2007年)では,「世界史A」の同じ部分と比較すると,「アメリカ合衆国の領土拡大」の項目で,「モンロー主義のもと西漸運動という領土拡大を進めることになった」「アメリカ=メキシコ戦争によって1848年にはカリフォルニアを獲得・・・ここに金鉱が発見されると一気に移住者がおしよせた(ゴールドラッシュ)」さらには,西部自営農民などの支持を得て,選挙権の拡大や経済の自由化など民主主義の発展に貢献した「ジャクソニアン=デモクラシー」20等記述も内容も詳細になっている。 繰り返すが,前述のHenryが国内開発に係る地磁気研究への関心から電磁気研究へ研究対象を発展させていくのはまさにこの時期であり,自然科学と人間の歴史,さまざまな営みとの深い関連を見ることがきるのである。

おわりに

 本論では理科教材へ社会科とりわけ世界史を取り入れることの意義とその際の留意点や課題等についての考察を試みた。近年の理科教育や科学技術理解増進活動等を見るときに,科学史の導入や異分野融合といった取り組みも数多く見られるが,それらは単に天才史観・発明発見史観からのエピソードの紹介であったり,各専門領域を抜け出ていなかったり,奇を衒ったものも多く,これらの取り扱いについてはより多くの議論と検討の余地が残されているだろう。 各教科にまたがる「学習の手段としての表現」活動の意義について述べたもの21,理科読み物の活用から国語と理科の関連を勧めるもの22,数量関係の取り扱いから数学と理科との関連を重視したもの23,大気と水などを地学,公民科,地歴科との関連からアプローチしたもの24,発明教室等でアイデア工作を通した理科と技術の関連に取り組むもの25など枚挙に暇がないが,教科指導への障害になりはしないか,あるいは授業で日常的に取り組めるのかなど課題も多い。 おそらくそれはトピックとして取り扱っていることも原因のひとつで,実際には教科の枠を超えた関連性を教材として扱うには教師側に幅広い知見と専門性が求められるからなのであろう。 本稿では人間の歴史の中で科学の発展を具体的にとらえることで,科学をより身近な存在として扱える新たな理科教材の可能性を考察すべく,その具体的な事

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2009- 780 福島大学総合教育研究センター紀要第 7号

例のひとつとして19世紀初頭のアメリカの状況と初期の電磁気学研究の関わりをJoseph Henryの研究から見てきた。 理科教育の視点からいえば,VoltaやFaradayなど著名な科学者の研究のエピソードが教科書等でもとらげられてきた一方で,学校教育の理科においては高校の物理を選択しなければ,ふれることのない「自己誘導現象」の発見者として著名なHenryの研究はほとんど知られることはない。 しかし電磁気学研究が本格的に始まる1820年代においてアメリカで行ったHenryの研究はいわゆる基礎科学研究というよりはそれを実用的な問題に適用していくような,いわば工学的基礎研究といった側面が強かったことをみてきた。それは実用的な課題の解決が科学的な原理の解明よりも重要視されていた時代のアメリカの特徴であることは第Ⅲ章で述べて来たとおりである。 本稿で扱ったHenryの電磁気学研究の特徴を語るときに,再現実験などから得られた,当該時代の素材等の物質的な基盤,技術,文化等の歴史的背景との関わりなど多角的な視点をもつことは,学校教育における理科と社会(歴史)さらには技術との密接な関連をとらえる上で有効な手段となると思われる。26  教科相互の調和と関連について,小中学校および高等学校の教育は専門教育ではなく一般普通教育であり,その究極の狙いが人格の完成を目指しての人間形成であり,そこに「人格的な統一と調和」があって,それを目指しながら教科の指導目標である「より高度な専門的分化」に向かうという矛盾に悩まされ続けてきたという指摘がある。27本稿での試論がそれに対する答えのひとつとなろう。 また過年度大きな問題となった高校における「世界史」未履修問題と関わって,なぜ世界史を学ぶ必要があるのか,あるいは逆に科学や技術の発展が人間の歴史において様々な事象と密接に関わっていることを示すという点でも有効な手法となるのではないだろうか。 本研究の成果を理科あるいは世界史教育に効果的に組み込む方法などについては今後の課題としたい。

※本稿は科研費(20500772)の助成を受けたものであ  る。

注1 井原聰「19世紀物理学史の構造的把握のための試論」『東京工業大学人文論叢』1975年, p.126.2 D.K.C.MacDonald, 'Faraday, Maxwell and Kelvin', 1964.  『ファラデー,マクスウェル,ケルビン』,原島鮮訳,1968年,pp.22-89.

3 山本幹雄,「アメリカ合衆国の発展」(『世界歴史』20,1971年所収)pp.395-396.4 N.Reingold,ed., 'The Papers of Joseph Henry' Vol.1(1972)-5(1985), Smithsonian Press および 'Dictionary of American Biography', Vol.1~10より作成。5 ドン・K・プライス,中村陽一郎訳,『政府と科学』,みすず書房,1967年,p.9.6 Ibid., p.9.7 "Minutes, Albany Institute. May 5th 1824", 'Papers', vol.1, pp.65-72.8 Joseph Henry, "Inagural Address of the Albany Academy", 'Papers', vol.1.pp.163-178.9 文末の資料より作成。10 文部科学省ホームページ  『中学校学習指導要領』(平成10年12月)第2節社会より  http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301c/990301c.htm11 文部科学省『中学校学習指導要領 解説 社会編平成20 年7月』2008年,p.107.12 『新編 新しい社会 歴史』,東京書籍,2005年,p.127.13 文部科学省『高等学校学習指導要領』平成21年3月,pp.18-26.14 Ibid.,p.18.15 Ibid.16 Ibid.17 Ibid., p.20.18 『世界史A』東京書籍,2008,p.81.19 東京書籍ホームページ高校「世界史B」にこの記載がある。  http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text2008/kou/chireki/index.htm (2009年4月8日現在)20 『世界史B』東京書籍,2007年,p.265-266.21 中山迅「理科教育における『表現』の意義と役割」『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.16-19.22 柴山元彦「理科の中で国語を利用しよう」『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.20-22.23 隅山裕志「理科における数量関係の扱いについて」『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.23-25.24 間々田和彦「理科(地学)と社会・公民科との関連」『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.26-28.25 鈴木清三郎・赤坂剛志「動くしくみやICを利用したアイデア工作―『理科』と『技術』との関連を図った取り組み―」 『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.33-37.26 岡田努「科学史の再現実験の手法を取り入れた科学教育プログラムの実践―社会科・理科・技術かとの関わり―」『福島大学総合教育研究センター紀要』第2号,2006年で指摘している。27 新藤公夫「教科相互の調和と関連」『理科の教育』vol.44, No.2, 1995年pp.8-11.

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理科教材への「世界史」の導入について 81

資料:Henryと直接・間接的に交流のあった1830

年代前後のアメリカの自然科学者 

(N.Reingold,ed.,�The Papers of Joseph Hen‑

ry�Vol.1~5, 1972~1985, Smithsonian. 

 �Dictionary of American Biography�, Vol.1

~10より作成) 

Adrain, Robert 

①1775‑1843②数学者⑤1809年,Queen's College

(後にRutger Colle‑ge)の数学教授 (New Jersey

州New Brunswick)1813年,Columbia College(後

にColumbia Un‑iversity,New York City)の教授 

Alexander, Stephen 

①1806‑1883②天文学③Union College(New Jerse

y州)のacademic co‑urse(14‑18才)⑤College 

of New Jersey⑥天体観測,主に太陽.1860年の

太陽観測⑦United States Coast and Geodetic S

urvey Report of 1860⑧妹のHarrietがHenryと

結婚.College of New Jerseyの評議員のときHe

nryを招く.Iowa州Ottuwaに日食観測のための委

員会を組織するため  National Academy of Scie

nceによって指名され,委員会  のchairmanに就

任. 

Bache, Alexander Dallas 

①1806‑1867②物理学者③United States Militar

y Academy(1821‑1825)⑤United States Military

 Academyの助教授(~1828.8)  Pennsylvania Un

iversityの物理学・化学の教授(1828.9.16‑1842) 

  Girard Collegeの初代学長(1836) Smithsonia

n Institutionの理事(1846) National Academy 

of Scienceの初代会長(1863)⑥1830年,Gaussと

Weberの影響を受け,地磁気研究を開始⑧B.Frank

linの子孫.自然科学研究奨励のため42000ドル

の遺産を残す.(Bache基金) 

Beck, Lewis Caleb 

①物理学者,化学者②1798‑1853③1817年,Union

 CollegeからA.B.degree授与⑤Berkshire Medic

al Institutionで生物学講師(1824年)Rensselae

r Polytechnic Institution(New York州Troy)

で動物学・生物学・鉱物学の助教授(1825年)  Ve

rmont Academy of Medichineの生物学・化学の教

授に  就任(1826年)  Rutger Collegeの化学と

物理学教授(1830年) New York Universityの教

授(1836年)Albany Medical Collegeの化学・薬

剤学の教授(1840年) 

Bigelow, Jacob 

①1787‑1879②生物学者,医者③Harvard College

卒業(1806年)University of Pennsylvaniaの医

療部門に入学(1809年)生物学者・医学者のB.S.

Bart‑onに師事⑤Harvard Medical Schoolのmate

ria medicaの教授(1815年) 

Bowditch, Nathaniel 

①1773‑1838②天文学者,数学者③Harvard Unive

rsityのM.A.(文学修士)(1802年) 

Cleaveland, Parker 

①1780‑1858②数学・物理学/鉱物学・化学教育 

③Harvard College卒業(1799年)⑤Harvard Co

llegeの数学と物理学の助手(1803‑05)  Bowdoin

 College(Maine州Brunswick)の数学と物理学の

教授( ~没年)⑥化学教育・鉱物学に関する興味 

⑦�Elementary Treatise on Mineralogy and Ge

olory�1816年)(この分野におけるアメリカで

最初の研究.ヨーロッパで受け入れられる) 

  �Agricultural Queries�(1827年) 

Dana, James Freeman 

①1793‑1827②化学者/地質学,鉱物学③Harvard 

College(1809‑13)  (A.B.degree)John Gorhamに

化学を師事④Corporation of Harvardに選ばれ

て,新たに創設される  化学部門の準備のためイ

ギリス留学.当時ヨーロッパで  1線級の実験化

学者Frie‑drich Accum に師事(1815年)⑤Harv

ard College,助教授.Dartmouth Collegeで化学

・鉱物学の教授(1820‑1826)⑥Harvard College

卒業後,化学・地質学の研究.⑦�On a New For

m of Electric Battery��On the Effect of Va

por on Flame��On the Theory of the Action 

of Nitrous Gas in Eudiometry� 

De Kay, James Ellsworth 

①1792‑1851②博物学者,③Guilford(Connectic

ut州)で医学を学ぶ④Edinburgh Collegeへ留学

(1818年), M.D.取得(1819年)⑤Lyceum of N

atural History(Samuel Latham Mitchillら  に

より設立されたこの種の学会としてはアメリカで

4番  目の学会)⑥Lyceum of Natural History

で紀要の編集,科学論文の収集 

Dewey, Chester 

①1784‑1864②聖職者,教育家/数学・物理学・化

学・地質学③Williams College卒(1806年)⑤Wil

liams College助手Williams Collegeの数学と物

理学の教授(1810‑1827)後のCollegiate Instit

ution(New York 州Ronchester)(1836‑1850)Uni

versity of Rochesterの設立に際し ,化学と物

理学  の教授(  ~1861)⑥Williams College時

代に物理学・化学研究.博物館のコレクションの

ために地質学・植物学研究 

De Witt, Simeon 

①1756‑1834②地形学,気象学,物理学③Queen's 

College(後のRutgers College)⑤University o

f the State of New York(1798‑1834)American P

hilosophical Societyの会員になる(1790年) 

Society for the Promotion of Agricultureの

会員 Arts and Manufactures設立(1793年,New 

York州).第2代会長(1813年)(Society for 

P.A.はLyceum of Natural Historcyと合併し,A

lbany Instituteになる)⑥New YorkとPennsylv

aniaの境界を調査,New York州の地図を作成.(1

786‑87,1802年出版) 気象観測⑦�Observation

s on the Eclipse of the Sun, June 16, 1806, 

at Albany�(1809, Transaction of A.P.S.)�A 

Table of Variations of the Magnetic Needle�

�Observation on the Function of the Moon, D

educed from the Eclipse�(Transactions of A

lbany Institution) 

Dod, Albert Baldwin 

①1805‑1845②数学者,長老協会の会長③College 

of New Jersey卒業(1822年)Princeton Theolo

gical Dominion⑤College of New Jerseyの助手

(1827年)College of New Jerseyの数学教授(1

830‑45)⑧同僚のJ.Henryの示唆で建築学の講義

を設けた 

Durand,  lie Magloire(通常Elias Durand) 

①1794‑1873②薬剤師,植物学者③化学者と薬剤師

として有名なM.Chevallierのもとへ徒弟に出さ

れた(1808年)④Parisで科学を学ぶ⑤French A

rmyで薬剤師(1813年)Philadelphia Academy o

f Natural Scienceの会員に選出される(1825年)

College of Pharmacyへ(1825年,1844年同大学

の副学長)  American Philosophical Societyに

入会(1854) 

Eaton, Amos 

①1776‑1842②科学者,教育学/地質学・植物学 

③Williams College卒業(1799年,法律)  Yal

e CollegeのIvesとSillimanに自然科学を師事

(生物学,地質学,化学)⑤CastletonのMedica

l Schoolの自然史の教授(1820年)Rensselaer 

School(後のRensselaer Polytechnic Instituti

on)の教授(1824‑42)⑥Amherst, Northampton, 

Middlebury, New Eng‑landの町で公開講義を始

める(1817年)  Stephen Van Rensselaerの後援

でAlbanyの地質・農業調   査(1820‑21) Erie

運河の調査(Henryも加わる)⑦植物学の講義に

関する小冊子を出版(1810年)�A Manual of Bo

tany for the Northern States�(1817年) 

Emmons, Ebenezer 

①1799‑1863②地質学者,内科医,教師③William 

College卒(1826年)この間Rensselaer Institu

te(Troy)に入学⑤William Collegeの化学講師

(1828年)Rensselaer Instituteの助教授(183

0年) Medical School(Castleton)で講師Albany 

Medical Schoolで化学の教授⑥Amos Eatonの影

響で地質学へ 新たに組織されたNew York州の地

質調査団に地質学者として指名される(1835年) 

New Yorkの地質調査(~1842年) 

Farrar, John 

①1779‑1853②数学者,内科医,天文学者③Harva

rd College(1803年,B.A.,1805年M.A.)⑤Har

vard Collegeでギリシア語の講師(1805年)Hol

lis Proffessor(数学・物理学.1807‑36)Ameri

can Academy of Arts and Scienceの会員に選出

(1808年)recording secretary(1811‑23), 副会

長(1829‑31)⑥ヨーロッパの天文学と数学の文献

を翻訳�arithmetic of Lacroix�(1818)�the a

lgebras of Euler�(1818)�the sperical trigo

nometry of Lacroix and B zout�(1820)�the 

algebras of Lacroix�(1825)�the geometry of 

Legendre�2nd, ed. (1825)�Elements of Elect

ricity�(1826)�An Experimental Treatise on 

Optics�(1826)Biot,�Pr cis El mentaire de 

Physique�より天文学の部分(1827)�A tract on 

comets from Arago�(1832) 

Fitch, Asa 

①1809‑1879②昆虫学者③Rensselaer School(Tro

y, 1826‑ ) Vermont Academy of Medicine卒(18

29年)AlbanyのMarsh博士に師事,研究を行う 

⑤Rensselaer Instituteの自然誌の助教授(183

0)New York州Fort Millerで医者を開業(1831‑3

8)New York州の昆虫学者に指名される(1854‑187

1)⑥Rensselaer InstituteからErie湖までの調

査(1830年)昆虫学と農業に関する興味American 

Quarterly Journal of Agriculture and Science 

  Transactions of the New York State Agricul

tural Societyに論文の発表(1845年~)昆虫と

農作物への被害について 

Gray, Asa 

①1810‑1888②植物学者③Fairfield Academy(Her

kimer Country)James Hadleyに自然科学を学ぶ

(1825‑  )Fairfield Medical SchoolでJ.Hard

leyに師事(1829‑31,M.D.取得)L.C.Beck, John T

orreyらと知り合う④ヨーロッパ旅行(Univ. of 

Michiganの本の購入,植物の  標本についての知

識を得るため.1838.11.イギリス,フ  ランス,

イタリア,オーストリア,バイエルン,スイス) 

  1850‑51,1855,1868‑69,1880‑81,1887 

⑤Bartlett's High School(Utica)でTorreyの助

手として講  師となる(1832‑35)University of M

ichiganの生物学の教授American Academy of Ar

ts and Sciencesの会長  (1863‑73)American As

sosiation for the Advancement of Scienceの

会長(1872‑  )Smithsonian Institutionの評議

員(1874‑88)⑥BrewsterのEdinburgh Encyclopad

iaの植物学の問題への興味Amos Eatonの�Manua

①生没年 

②分類 

③学歴 

④留学先 

⑤主な所属大学・研究機関 

⑥主な研究 

⑦出版物 

⑧その他 

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2009- 782 福島大学総合教育研究センター紀要第 7号

l of Botany�⑦�Botanical Text‑Book�出版(1

842年)⑧Harvard Collegeに植物学部門を創設. 

National Academy of Science の創設者のひとり. 

Green, Jacob 

①1790‑1841②化学者,植物学③Unversity of Pe

nnsylvania④ヨーロッパ旅行(1828年),M.Fara

day, J.Doltonらと会見.⑤College of New Jers

eyの物理学のHenry Vethakeの助手 (1816‑1818) 

  同大学に新たに設けられた化学と実験物理学の

教授 (1818‑1822)PhiladelphiaでJefferson Med

ical Collegeの設立PhiladelphiaのMedical Sc

oolで化学の教授(1825‑41).この間Jefferson大

学とEatonのいるLafayette大学で化   学の講義

をする.⑥化学の普及活動.生物学・植物学への

興味.独学.サンショウウオ,三葉  虫の研究 

⑦�An Epitome of Electricity and Galvanism

�(1809)�A Catalogue of the Plants Indigeno

us to the State of New York�(1814)�Astrono

mical Recreations�(1824)�Electro‑Magnetism

�(1827)�Text‑Book of Chemical Philosophy�(1

829)�Notes of a Traveller, During a Tour Th

rough England, France, and Swizerland, in 18

28, 3vols.�(1830)�Consolations in Travel, 

or the Last Days of a Philosopher ‑Sir Humph

ry Davy‑  with a Sketch of the Author's Life,

 and Notes, by Jacob Green�(1830)�A Monogr

aph on the Trilobites of North America� (18

35)�Syllabus of a Course in Chemistry�(183

5)�Chemical Diagrams�(1837) 

Gummere, John 

①1784‑1845②数学者⑤New Jersey州のBurlingt

onで私立のbording schoolを開設(1814年)Am

erican Philosophical Societyの会員に選出New

 Jersey州のRancocasで教師(60年間)新設され

たHarverford Schoolで数学講師(1833年)⑥ア

メリカで最も優れた数学者のひとりといわれる.

さらにフランス・ドイツの数学を学ぶ. 

Hare, Robert 

①1781‑1858②化学者③James Woodhouseに化学

を師事⑤University of Pennsylvaniaの化学教

授(1816年)⑥酸水素吹管(oxy‑hydrogen blow‑p

ipe)の発明(1801年)電気に関する興味  calori

motorの発明(1819年)deflagratorの発明(182

1年) 

Hassler, Ferdinand Rudolph 

①1770‑1843(スイス生まれ)②測地学者,数学者 

③University of BernでJohann Georg Tralles

に数学と測地学を師事⑤West Pointで数学教授

(1807年)Union Collegeで数学と物理学の教授 

⑥アメリカ沿岸の測量調査 

Henderson, Thomas 

①1743‑1824②医師③College of New Jersey卒

(1761年)⑤New Jersey Medical Society(アメ

リカ初の医学系の学会)の会員(1766年) 

Hodge, Hugh Lenox 

①1796‑1873②産科医/医学,解剖学③College o

f New Jersey(1812‑1814)University of Pennsyl

vaniaのCasper Wister博士に医学を師事(1818

年卒業)④経済的理由によりヨーロッパ留学を断

念⑤University of Pennsylvania College of Ph

ysiciansの奨学金給費研究員American Philosop

hical Societyの会員⑥University of Pennsylv

aniでWilliam E Hor‑ner教授に代わり解剖学を

講義する婦人病の研究 

Horsford, Eben Norton 

①1818‑1893②化学者/食品化学③Rensselaer Po

lytechnic Institute卒(New York州Troy,1838

年)④ドイツ留学.GiessenのLiebigに分析化学

を師事(1844‑46)⑤Albany Female Academyの数

学と物理学の教授(1840‑44)Lawrence Scientif

ic Schoolで化学の講義を,Harvard Collegeの化

学部門で16年間研究を行う.⑥工業化学の研究に

従事する(1863~)オリジナルの論文を発表.リ

ン酸塩に関する研究.コンデンスミルク,アルコ

ール飲料の発酵について,医学のためのリン酸に

関する研究.食品化学への関心.⑦�The Theory 

and Art of Breadmaking�(1861)⑧Lawrence Sci

entific Schoolは個々の学生に分析化学を体系

的に教えるために組織されたアメリカで最初の機

関のひとつで,アメリカの分析化学の発展に大き

な影響を与えた. 

Houghton, Douglass 

①1809‑1845②地質学③Rensselaer Polytechnic 

Institute卒(New York州Troy, 1829年)⑤Amo

s Eatonの下,化学と自然誌の助教授University 

of Michiganで地質学と鉱物学の教授(1838‑184

5)Detroit市長(1842,43)⑥Mississipiの水源

発見のためHenry R. Schoolcraftの下,組織され

た遠征隊の外科医・生物学者として参加.(1831

年)Michiganの地質調査を計画.(1837年,行わ

れなかった.アメリカの未開の地の地質・鉱物・

地形・磁気調査を想定していた) 

Jackson, Charles Thomas 

①1805‑1880②化学,地質学③Harvard Medical S

choolM.D.(医学博士)を取得(1829年).Boyls

ton賞受賞④フランス,Sorbonneで医学を, co

le des Mi‑nesで地質学  と鉱物学を学ぶ.有名

な地質学者,L. lie de Beaumont  たちと知り合

う.Vesuvius, Etna, the Lipari Islands, Auve

rgne地区を訪問.スイス,バイエルン,イタリア,

オーストリア訪問.John Fergus, Johannes Glai

snerらと出会う.⑤Maine州議会により州の地質

調査団が創設され,地質学者に選ばれる.(1837

年) 

Bostonで化学の講師.合衆国の地質学者に就任 

(1847年,他にJ.D.Whitney, J.W.Foster) 

⑥Bostonで開業(1832年)Maine州,Massachuse

tts州共同の地質調査に加わる.(1837年)Rhod

e Island(1840年発表), New Hampshire(1841‑

44年発表)の地質調査Sperior湖調査(1847年,

トラブルのため戻る)⑧鉱物学への興味は流氷中

の片岩の破片の中の空晶石(紅柱石の横断面に炭

素質の十字形模様のあるもの)の発見による. 

*ヨーロッパ旅行中電気機器を多数購入.帰りの

船でS.F.B.Morse と電気の新たな発展につい

て議論.後にMorse   が1840年に取得した電

信機の特許は,その原理は自分が指摘したもの

だと主張.優先権論争へ*C.F.Sch nbeinと綿

火薬についての論争(1846) 

*W.T.G.Mortonとの優先権論争.(1846.9.30,ク

ロロホル  ムのアルコール溶液,一酸化二窒素

(nitrous oxide:麻  酔剤の作用の研究) 

Locke, John 

①1792‑1856②内科医,科学者/植物学者,電磁気

学,地磁気測定器制  作者③Yale CollegeでM.D.

取得⑤Yale CollegeでSillimanの化学講義の助

手(1815年)New Hampshire州Keeneで植物学の

研究を続けながら,医学を学ぶ.アメリカ海軍の

外科医助手(1819年,Columbia川の調査)  Harva

rd Collegeで植物学の主事Kentucky州Lexigton

の女子学校の教職Ohio州Cinncinnati Female Ac

ademy設立(~1835年)CinncinnatiのMedical 

College of Ohioの教授(1835‑1853)⑥1835年頃

から興味は物理学へ地質,旧石器時代の研究(18

35‑40).Ohio州,合衆国共同の地質調査.(Iow

a, Illinois, Wisconsin, 1840,1844年に議会に

発表)1840年以降,地磁気と電気の研究へ.息子

と測定器などの設計・作製⑦�Outlines of Bota

ny�(1819)⑧主な発明品,調査のためのコンパス,

水準器,太陽系儀  電磁クロノグラフ, 時計付き,

自動記録, 100分の1秒  の事象も記録可能.経

度決定技術を完全に変えた.国家の通信システム

に接続して,どこでも天体観測がキーの簡単な押

し下げで,取り付けられた装置で時間を記録する

ことができた.1848年,海軍の観測所に設置され,

1849年議会から1000ドルを与えられた. 

Loomis, Elias 

①1811‑1889②数学者,天文学者③Yale  College

卒(1830年)④フランス留学,ParisでArago, B

iotに師事(1836‑37)⑤Yale Collegeでラテン語,

数学,物理学の講師(1833年)Western Reserve 

College で数学と物理学の教授(1836‑44年)Uni

versity of the City of New Yorkの数学と物理

学の教授(1844‑60)Yale College でD.Olmsted

の後任(~1889年)National Academy of Scienc

eの会員(1873年)⑥1833年にYaleへ移って 

  天文学への興味,磁針の変化の研究,West Poi

ntのAlexander C. Twiningと一連の流星の高度

の観測(1834年)Denison Olmstedと近日点へ戻

るHalley彗星を再発見(1835年)⑦北極光に関

する論文(American Journal of Science, 1859.1

1,1861.9.)�Contributions to Meteorology�   

(23本の論文,1874.7‑1889.4) 

Mitchel, Ormsby Macknight 

①1809‑1862②天文学者③United States Militar

y Academy卒(1829)⑤Cincinnati Collegeの数

学・天文学・哲学の教授(1836.1819年に設立さ

れ1835年に再建)Albany市のDudley Observato

ryの所長(1859)⑥Harvard Observatory, Naval

Observatoryの設立Cincinnati Astronomical So

ciety設立(1842)Sidereal Messenger(天文学

の普及のための最初の雑誌)の出版(1846‑1848) 

Mitchell, Elisha 

①1793‑1857②地質学者・植物学者③Yale Colleg

e卒(1816)⑤University of North Carolinaの

数学・物理学の教授(1817)Yale Collegeの科学

・地質学・鉱物学の教授(1825)⑥数学教授の傍

ら植物学への興味. 地質調査・地質図製作⑦�Ag

ricultural Speculations�(1825)�Report on t

he Geology of North Carolina�(1827)  �Elem

ents of Geology�(1842) 

Mitchell, John Kearsley 

①1793‑1858②内科医・化学者・生理学者③Unive

rsity of Pennsylvania卒(1819.M.D.)⑤Phila

delphia Medical Institute,医学・生理学(182

4)Flanklin Institute,化学(1833‑38)Jeffer

son Medical College(Philadelphia)理論医学実

践医学(1841‑58)⑦�On the Cryptogamous Ori

gin of Malarious and Epidemical Fevers�(184

9) 

Mitchell, Maria 

①1818‑1889②天文学者③独学(Laplace・Gauss

の文献)⑤American Academy of Arts and Scien

cesの名誉会員(1848)Vassar Collegeの数学教

授American Philosophical Societyの会員に選

ばれる(1869)⑥天体観測.新しい彗星の発見(1

847).Denmark王から金メダル授与 

Mitchell, Samuel Augustus 

①1792‑1868②地質学者・地質学研究書・論文等の

出版⑥Philadelphiaで教科書,地図,地質年報等

の執筆・出版  年間40万部以上の売れ行き⑦�A 

New American Atlas�(1831)アメリカ各地域の地

図,宿場,運河,蒸気船のルート�Tourist's Pocke

t Maps�の出版開始(1834) 

Mitchell, Thomas Duch  

①1791‑1865②内科医/医学者・化学③Carson Ac

ademy, Friends' Academy  Adam Seybert博士の

化学研究所で化学を学ぶ  University of Pennsy

lvania学位授与(1812)⑤St. John's College

の動物生理学・植物生理学の教授Ohio Universit

y,化学教授(182?)Miami University,化学教

Page 9: 理科教材への「世界史」の導入について · 〔キーワード〕科学教育 科学史 世界史 電磁気学史 理科教材への「世界史」の導入について

理科教材への「世界史」の導入について 83

授(1831) Medical Instituteの化学教授(1837),

薬物学・治療学  の教授(1839‑49)Philadelphi

a College of Medicine,理論・実践医学,産科学,

法医学の教授(1849)Jefferson Medical Colleg

eの薬物学教授⑥医療化学⑦�Medical Chemistry

;…�(1819)�Elements of Chemical Philosop

hy�(1832)�Materia Medica and Therapeutics

�(1850) 

Mohr, Charles Theodre 

①1824‑1902(独生まれ)②植物学者③Polytechn

ic high school卒(1854)(ドイツ,Stuttgart) 

⑥薬学・植物学の研究Alabamaの植物・鉱物研究 

⑦植物学に関する論文100本以上発表⑧ドイツ人,

1848年の革命後アメリカCincinna‑tiへ 

Monette, John Wesley 

①1803‑1851②内科医・歴史家/医学者③Transyl

vania University,M.D.卒(1825)⑦�An accou

t of the Epidemic of Yellow Fev‑er that occu

rred in Washington, Mississip‑pi, in the Aut

umn of 1825�(1834)�Observations on the E

pidemic Yellow Fever of Natchez abd of the S

outhwest�(1842) 

Morfit, Campbell 

①1820‑1897②化学者③Collumbian College(現G

eorge Washington Univ.)⑤Univ. of Maryland,

応用化学教授(1854‑58)⑥工業化学の必要性悟り

1851年,個人費用で大学の医療部  門に応用化学

の学校の設立を申し出る⑦ふん化石,塩,砂糖,

炭,ゴム,グリセリンについての論文を Frankli

n Journal of Science,American Journ  al of 

Sciencへ発表 

Morris, Caspar 

①1805‑1884②医学者③University of Pennsylva

nia卒(1826)⑤National Academy of Science

の会員(1829‑38)American Philosophical Soci

ety(1851‑60)⑥House of Refugeで医学者とし

て(1830 ー 34)⑧House of Refugeの創設者の一

人Philadelphia Medical Institute設立 

Morse, Samuel Finley Breese 

①1791‑1872②発明家・芸術家③Yale College卒

(1810)④1811年,イギリス,Royal Academyで

B.Westらに芸術を師事1829年,イタリア・フラ

ンス⑤National Academy of Design,初代会長(1

826‑42)Univ. of the City of New York,芸術教

授⑥電信機研究.Henry, Galeから助言を受ける1

837年,Alfred Vailが加わる(金銭面)1843年,

Washington‑Baltimore間の電信実験,議会可決.

1844年5月24日実験⑧1827年James Freemanの

電気学についての講義を受ける(Sturgeonの電磁

石).この講義をJ.Henry, L.D.Galeらも受講Va

ssar Collegeの創設者の一人 

Morton, Samuel George 

①1799 ー 1851②医学者/地質学者・化石③Univer

sity of Pennsylvania, M.D.(1820)④Edinburg

h Univ., M.D.(1823)⑤Academy of Natural Sc

iences of Philadelph‑iaの会員(1820‑1851) 

Pennsylvania College, 解剖学教授(1843)⑥医

学・地質学・脊椎動物の化石学・動物学. 人間の

頭蓋骨の比較研究,人類学へ⑦�An analysis of 

tabular spar from Bucks County, Pennsylvania

�(1829) 

Mott, Valentine 

①1785‑1865②外科医/解剖学③Columbia Colleg

e医療部門(1806)④ロンドン留学Astley Coope

rに解剖学を師事⑤Columbia Collegeの解剖学教

室で実演講義  College of Physicians and New 

York(1813 ー 26)Univ. of the City of New Yor

kの医療部門設立に貢献,外科・解剖学教授(183

0's)⑥解剖学⑦�New Elements of Operative S

urgery�(1847)⑧Medical Magazineの編者(18

14‑15)Medical and Surgical Reportの編者(181

8‑20)  

Mussey, Reuben Dimond 

①1780‑1866②外科医③Dartmouth College(1803) 

  同大学医学部門(1805)Univ. of Pennsylvani

a,医学博士(1809)④ParisとLondonへ⑤Dartm

outh College,解剖学・外科学教授(1822)Bowdo

in College, 解剖学・外科学教授(1831 ー 35)  

College of Physicians and Surgeons, 外科学教

授(1836 ー 38)Medical College of Ohio, 外科学

教授(1838 ー 52)American Medical Association 

会長(1850)⑥Miami Medical College(Cincinn

ati)設立(1852)⑦�Health, Its Friends and 

Foes�(1862)�Essay on Ardent Spirits and 

Its Substit‑utes as a Means of Invigorating 

Health�(1835) 

Newberry, John Strong 

①1822‑1892②地質学・古生物学③Western Reser

ve College(1846)Cleveland Medical School(1

849)④Paris留学.医療学校・地質学⑤Columbia

n University,地質学・古生物学教授(1866 ー 92)

Smithsonian Institutionへ入る(1866)Ohio州

の地質学者(1869 ー 74)National Academy of Sc

ience会員(1867)American Association for th

e Advancement of Scienceの会長Geological So

ciety of American副会長(1889) International

 Geological Congress会長(1891)⑥地質調査・

気象調査に加わる⑦Ohio州の古生物調査が最も

有名�Report of the geological survey of Ohi

o� vol.1, part.2, 1873, vol.2, pqrt.2, 1875,

 他多数⑧London地質学会からMurchisonメダル

を授与(1888) 

Nichols, Charles Henry 

①1820‑1889②内科医・精神医学③University of 

the City of New York  University of Pennsylv

ania(1843)⑧Wasington, D.C. の精神異常者のた

めのGove‑rment Hospitalの院長(1852年就任)

として最もよく知られる. 

Nichols, James Robinson 

①1819‑1888②化学者・薬物学者③Dartmouth Col

legeの医療学校で化学を学ぶ1867年 M.D.授与 

⑥BostonでJ.R.Nichols&Company設立(薬剤の

調合)ソーダ製造機Boston Journal of Chemis

try and Pharmacy創刊(1866‑1881)(後にBost

on Journal of Chemistry and Pop‑ular Scien

ce Reviewへ,さらにThe Popular Science Ne

ws and Boston Journal of Chemis‑tryへ,没

年まで編者) 

  1877年,Merrimac Public Library設立 

  1878年,州のBoard of Agricultureに 

  1873‑78,Vermont & Canada Railroadの社長 

  1873‑88,Boston & Maine Railroad 

North, Elisha 

①1771‑1843②内科医③University of Pennsylva

nia(1793年入学)⑥1801年,アメリカで最初の

牛の�疱瘡�を発見1807年,発疹チフス  1812

年,Connecticut 州New Londonでアメリカで最初

の眼科診療所設立  1813年,Connecticut Medica

l Society,M.D.授与⑦1811,�A Treatise on M

alignant Epidemic Commonly Called Spotted Fe

ver�1829,�The Rights of Anatomists Vindica

ted�1829, �Outlines of the Science of Life 

; Which  Treats Physiologically of Both Body

 and Mind� 

Nott, Josiah Clark 

①1804‑1873②内科医・人種学③South Carolina 

College(1824年卒) University of Pennsylvan

ia(1827年卒)④Paris(1835年)⑤University 

of Louisiana,解剖学教授(1857‑58)  Medical 

College of Alabama,外科教授(1858‑)⑥Mobile 

Medical Society設立に尽力  黄熱病,手術学,

催眠,人種学に関する研究  解剖学,神経組織と

生理的機能に関する研究⑦Contributions to Bon

e and Nerve Surgery(1866)�animal magnetis

m�(1846)�magnetic influences�(1846)�T

ypes of Mankind�(1854, G.R.Gliddonとダーウ

ィン理論について) 

Nuttall, Thomas 

①1786‑1859②植物学者・鳥類学者③Philadelphi

aの植物学者B.S.Bartonに師事⑤Linnean Societ

y of Londonの会員(1813)American Philosophi

cal Societyの会員(1817)  Academy of Natural

 Sciences of Philadelphia(1817)  Harvard U

niversityの植物園で研究(1822) ⑦�A Manual

 of the Ornithology of the Unit‑ed States an

d Canada�(1832)�Remarks and Inquiries Co

ncerning the Birds of Massachusetts�(1833) 

Olmsted, Denison 

①1791‑1859②化学者・教師/地質学者・天文学 

③Yale College(1813)⑤Yale College,講師Un

iversity of North Carolina,化学教授(1817)

州の地質学者・鉱物学者に就任  Yale College,

数学,物理学(自然哲学),天文学教授. 

⑦�Compendium of Natural Philosophy�(1833) 

  �Introduction to Astronomy�(1839) 

  �A Compendium of Astronomy�(1839) 

Orton, Edward Francis Baxter 

①1829‑1899②地質学者③Hamilton College(184

8年卒)⑤Delaware Literary Institute Antioch

 Collegeの自然誌教授College off Agriculture

 and Mechanics(新設)の地質学教授(1873,18

78年州立大学になる)⑥J.S.NewberryのOhio州

調査の助手として参加 

Otto, John Conrad 

①1774‑1844②内科医③College of New Jersey(1

792)University of Pennsylvania(1796) 

⑤Philadelphia Dispensaryの内科医(1798) 

  Pennsylvania Hospitalの内科医(1813) 

  College of Physicians(1819) 

⑥てんかんの研究.⑦�An Account of an Hemor

rhagic Disposition Existing in certain Famil

ies�(1803) 

Owen, David Dale 

①1807‑1860②地質学者③Ohio Medical College

(1832‑36)④London Universityで化学と地質学

を学ぶ(1831)⑤Indiana州の地質学者に指名され

る(1837)合衆国の地質学者に指名される(1847)

Kentucky州の地質学者に指名される(1854) 

Arkansas州の地質学者に指名される(1857) 

⑥New Harmonyで化学分析などの研究所設立 

  WisconsinとIowaの地質調査 

Page, Charles Grafton 

①1812‑1868②物理学・電気実験家③Harvard Col

lege(1828‑32)医学を学ぶ⑤アメリカ特許局の調

査員(1841)Collombia Collegeの医療部門の化

学教授(1844,後のGeorge Washington Universi

ty)⑥水平方向と垂直方向に往復運動する小さな

電磁エンジン  を発明(1846).往復する電磁エ

ンジンの特許を得る(1854.6.31, No.10480)この

ふたつのエンジンを持つ機関車の製造(1850‑51)

Washington‑Bladensburg間(5マイル)を時速1

9マイル(約30km/h)J.J.Greenough, C.L.Fleis

chmannらとWashingtonで�American Polytechni

c Journal�を創刊(1852)⑦�History of Indu

ction : The American Claim to Ind    uction 

Coil and its Electro‑Static Developments�(1

867)⑧Henry のカロリモータを使ってスパークや

衝撃を起こす.Henry よりも強力な誘導装置を作

る.Ruhmkorffコイルの改良,今日の誘導コイル

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2009- 784 福島大学総合教育研究センター紀要第 7号

に. 

Peirce, Benjamin 

①1809‑1880②数学者・天文学者③Havard Colleg

e(1829)⑤Harvard Universityに49年間籍を置

く:College の数学講師1833‑42:数学・天文学

教授1842‑80:数学・天文学のPerkins教授1847

:スミソニアン設立のための草案を作成する委員

に指名される(AAASにより)1863:National Aca

demy of Scienceの設立者のひとり.数学・物理

学のチェアマン 以下の協会・学会等の会員 

  1842:American Philosophical Society 

  1850:Royal Astronomical Society(London) 

  1858:American Academy of Arts and Science 

  1861:British Association for the Advance‑

ment of London 

  1867:Royal Society of Edinburgh 

  1867:Royal Society of Sciences(G ttingen) 

⑥Laplaceの�Trait  de M canique�(1829‑3

9)の翻訳.Harvard天文台の設立に尽力する 

⑦1852:�Peirce's criterion�(地質調査・数

学など) 

1853:�Table of Moon� 

1856:�Tables of the Moon's Parallax� 

1881:�Ideality in the Physical Sciences� 

⑧Peirceの論文は数学・天文学の分野が4分の3 

Redfield, William C. 

①1789‑1857②気象学/技術者⑤Aerican Associa

tion for the Advancement of  Scienceの初代

会長(1848)⑥嵐の性質などを記録・詳述した.

これら問題の重要性を早くから提唱していた. 

鉄道・蒸気船への関心. New York‑Albany間の鉄

道敷設⑦�Remarks on the Prevailing Storms o

f Atl‑antic Coast of the North American Stat

es�(1831,風・嵐などの性質の基本的な概念を

示す) 

Renwick, James 

①1792‑1863②教師・技術者③Columbia College

(1807)Columbia College,A.M.(1810) 

⑤政府の地形学の技師(1814)Columbia College

の評議員(1817)Columbia Collegeの自然哲学(物

理学)と実験化学の教授(1820‑53)Columbia Co

llegeの最初の名誉教授に(1853)⑥次のような

ヨーロッパの文献をアメリカで出版Parkes,�Ru

diments of Chemistry�(1824)Lardner,�Popu

lar Lecture on the SteamEngine�(1825) 

Daniell,�Chemical Philosophy�(2vols.,1840) 

⑦�Outlines of National Philosophy�(2vols, 

1822‑23)�Treatise on the Steam‑Engine�(1

830)�Applications of the Science of Mec

hanics to Practical Purposes�(1840) 

⑧Franklin Instituionからメダル授与(1826) 

Rogers, Henry Darwin 

①1808‑1866②地質学者③父から教育を受ける④R.

D.Owenと渡欧,Geological Society of Lon‑don

でDe la Beche, Lyellらと会見⑤BaltimoreのM

aryland Instituteで化学講義(1828)Dickinson

 College(Pennsylvania州Carlisle)の化学・物

理学の教授(1830)Franklin Instituteで地質学

講義(1833)University of Pennsylvaniaの地質

学・鉱物学教授(1835)University of Grasgow

で自然誌の教授(1855‑66)⑥New Jersey州の地

質調査(1835‑38)Pennsylvaniaの地質調査(183

6)⑧兄,William Barton 

Rogers, William Barton 

①1804‑1882②地質学者③父から教育を受ける⑤C

ollege of William and Maryで父の後を継ぎ物

理学・化  学の教授(1828)University of Virg

iniaの物理学教授(1835)州の地質調査隊が組織

され,その地質学者となる(1835)Massachusett

s Institute of Technology初代会長(1862‑70,

再任1878‑81)Association of American Geologi

sts and Na‑turalistのチェアマン(1845, 47) 

American Academy of Arts and Sciences会長(1

863‑69)National Academy of Science会長(187

8‑82)⑥Massachusetts Institute of Technolog

y設立(1861年)⑦�A Reprint of Annual Repo

rts and Other Papers on the Geology of the V

irginias�(1884)⑧弟,Henry Darwin 

Silliman, Benjamin 

①1779‑1864②化学者・雑誌編集者③Yale Colleg

e(1792‑1796)④Yale Collegeの本・実験機器購

入のため渡欧(1805,イギリス・ウェールズ・スコットランド・オラ

ンダ).イギリスでH.Davy, D.Brewster, J.Murra

y, T.Hopeらと会見(Hopeから地質学を学ぶ) 

⑤Yale College化学・自然誌教授(1802‑1853) 

 化学・自然誌が新設.  Yale Medical School化

学教授(1813)Boston Society of Natural Hist

oryへ招かれる(1835)⑥Philadelphiaの医療学

校で化学・植物学・解剖学・外科学などを講義(1

803‑04)Yaleで初めての化学実験講義(1804) 

American Philosophical Societyの会員(1805) 

Yale Medical Schoolの設立に尽力する(1813設

立)各地で地質学の講義を行う(New York, Ne

w Haven, New England)1838年に設立したLow

ell Instituteで地質学・化学講義.1500人の

聴衆を集める.実験. American Journal of Sc

ience創刊(1818),初代編者Association of 

American Geologistsの初代会長(1840) 

  National Academy of Scienceの創設者の一人 

⑦�The Elements of Experimental Chemistry� 

  (2vols. 1814)�Elements of Chemistry�(2

vols. 1830)⑧19世紀前半期のアメリカの自然科

学に最も影響を与えた人物のひとり 

Smyth, William 

①1797‑1868②数学者③Bowdoin College(1820‑2

2)⑤Bowdoin College数学教授(1828)⑥数学の

教科書を執筆.アメリカで広く読まれる.⑦�El

ements of Algebra�(1830)�Elements of Ana

lytic Geometry�(1830)など⑧教育への関心 

Sullivant, William Starling 

①1803‑1873②植物学者③Yale College(1823) 

⑦�A Catalogue of Plants, Native and Ohio�(1

840)�Musci Alleghanienes�(2vols. 1845‑4

6)�Contributions to the Bryology and Hepa

t‑icology of North America�(1848‑49)⑧ア

メリカの鮮苔学の基礎を築く 

Tanner, Henry Schenck 

①1786‑1858②地理学,地図製作者⑤Philadelphi

aのVallance, Kearny & Company入社.⑥31の

地図を製作.⑦�A New and Elegant General At

las Contain‑ing Maps of Each of the United S

tates�(1812)�Memoir on the Recent Survey

s, Observati‑ons, and Internal Improvements,

in the United States, With Brief Notices of 

the New Countries, Towns, Villages, Canals a

nd Railroads…�(1829)⑧彼が作成した様々な

地図は多くの科学者に用いられた 

Torrey, John 

①1796‑1873②植物学者・化学者③College of Ph

ysicians and Surgeon,M.D.(1818)⑤United S

tates Military Academyの化学・鉱物学・地質学

の教授(1824)College of Physicians and Surg

eon化学教授(1827‑55)College of New Jersey

の化学・自然誌教授(1830)New York州の植物学

者になる(1836)以下の学会等の会員  Linnean 

Society of London(1839)American Academy of 

Arts and Sciences(1841)National Academy of 

Sciences(1863)⑥College of Physicians and 

SurgeonのS.L.MitchillのもとLyceum of Natur

al History設立(1817)国内の植物調査⑦�A Ca

talogue of Plants Growing Spontaneo‑usly Wit

h in Thirty Miles of the City of New York�1

819,これは�Torrey's Catalogue�として知られ

る) 

�Flora of the State of New York�(2vols. 1

843)⑧植物学の図書館設立.1860年に Columbia

Collegeへ. 1899年には,Neew York Botanical 

Gardenが設立される.ここにはTorreyの手で描

かれた様々な種の植物のスケッ  チが多数ある. 

  Torreyを記念して生前にはTorrey Botanical 

Club(1867)が,そしてBulletin of the Torrey

 Botanical Club  が建てられた. 

Twining, Alexander C. 

①1801‑1884②天文学に関する発明家・技術者 

③Yale College(1820)⑤Yale College物理学・

数学の講師(1823‑24)United States Military 

Academy(West Point)へ(数学・物理学)Middl

ebury College(Middlebury)数学・物理学教授(1

839‑49)⑥Denison Olmstedと独立に流星の理論

提出鉄道の工学に従事する(1834‑39,Haryford 

& New Hav  en Railroad Company)⑧(発明家と

して…)氷の製造法(1853.11.8,特許No.10221).

商業用へ 

Walker, Sears Cook 

①1805‑1853②数学者・天文学者③Harvard Colle

ge(1825)⑤United States Naval Observatory

(Washington, D.C.)の天文学分野のスタッフと

なる(1845)⑥Philadelphia High Schoolとアメ

リカで最初の天体観測  所のひとつを設立(1837)

 天文学雑誌の創刊.Proceedings and Transacti

ons of the Ameri‑can Philosophical Society,

創刊.視差の表を作成(1834)1846年9月23日に

発見された星が,1795年5月に Lalande によっ

て2度目撃されたものと同一であることを発表.