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スパズム期?の診断と管理
慈恵ICU勉強会2017/8/22平崎 貴則
本日の流れ
• スパズム期?
• スパズム期の診断
• スパズム期の管理
• まとめ
スパズム期
• SAH(クモ膜下出血)発症後14日目頃までの脳動脈が攣縮する期間
•我々の診療の中でも良く使われる単語
• しかしSAH発症後の虚血性の合併症は必ずしも脳動脈のスパズムによって起こるわけではない、EBI(早期脳損傷)、DCI(遅発性脳虚血)が関連している
DCI
• SAHから2週間で血管収縮は70%に認められるが、DCIと診断されるのは30%程度•血管造影によって変化を示さない血管分布部位で脳梗塞を起こす
• DCIの唯一の改善薬であるニモジピンによる脳血管拡張を血管造影で指摘できない
•血管造影の血管攣縮を治療することが、臨床的・機能的改善に伴うとは限らない
2016年5月24日勉強会スライド改
2016年5月24日勉強会スライド
Critical Care 2016; 20: 21
スパズム期?
• 「スパズム期」は一般的に使われる言葉なのか?
• 「スパズム期」は日本では使われている(インターネットで容易に検索できる)
• 「vasospasmperiod」、「vasospasmphase」という言葉が手元にある文献中(今までの勉強会で使用したものなど)で使用されているかを調べてみた
スパズム期?
•約80の文献の中で4つの文献で使用されていた
2012 SAHASA/AHAguidelineJNeurosurg 2016;125:254–263.Neurocrit Care2016;24:180–188.Stroke 2015;46:37-41.
• 「acutephase」という表現はよくみかけた
• SAH後のクラゾセンタン療法は、血管攣縮の発生率を低下させるのに有効である
• SAH後のクラゾセンタン療法が、DIND(delayedischemicneurologicaldeficit)およびDCI発生率を低下させ、転帰を改善するかどうかを検証
• 4つのRCTのメタアナリシス
Dissociationofvasospasm-relatedmorbidityandoutcomesinpatientswithaneurysmalsubarachnoidhemorrhagetreatedwithclazosentan:ameta-analysisofrandomizedcontrolledtrials. JNeurosurg.2013Jul;119(1):180-9
15.1% 19.8%
11.3%
18.6%13.2%
14.6%
DINDはクラゾセンタン群で少ない
DCIはクラゾセンタン群で少ない傾向がある
治療はクラゾセンタン群で少ない
25.4%28.5%
5.8% 5.7%
GOSはクラゾセンタン群で高い傾向がある
死亡率は2群間でほとんど差がない
ü DCIの発生率を低下させるかもしれないü GOSや死亡率など予後は改善しないü 肺水腫、低血圧、貧血などの合併症が増える
ü 血管攣縮の発生が低下しても予後は改善しない
スパズム期?
•他にもスパズムを予防・治療しても、予後は改善しないという報告はある
• SAHで困るのは神経学的所見の増悪が永続すること、それにはスパズムはあまり関与していないようである
• スパズムはSAH発症後の合併症の一つであるが、予後にあまり影響せず、予後に影響する病態はDCIと考えられている• 「スパズム期」はスパズムを起こしやすい期間であるが、スパズム自体の重要性は低いかもしれない
スパズム期の診断
•総論•画像検査• モニタリング
NoveltheoriesregardingDCIpathogenesis
• EarlybraininjuryInitialphysiologicalchangesCerebraloedemaCerebralautoregulationInflammationandoxidativestress• Cortical spreading depression and DCI• Microthrombosis• Collateralcerebralcirculation
2012年12月28日勉強会スライド
総論
• DCIのスピーディーな診断には、早期に積極的かつシステム化されたアプローチが必要である
• 重症SAH患者は神経学的診察の限界と様々な全身合併症がDCIの診断を難しくしていてしばしばDCIは除外診断となる
• 一時鎮静を中断しwakeuptestを行うことで神経症状を見つけることができるかもしれないが、重症SAH患者で神経所見からDCIを同定する感度は低い• 神経学的所見の有用性は限られている• 様々な神経モニタリングの併用が推奨されているNeurocrit care2011;15:211-40
画像検査
• CTangiography(CTA),CTperfusion(CTP),DSA• MRI,MRA
• Design:systematicreviewandmeta-analysis• Patients: 11の研究、570人• Methods:PubMed、Embase、およびCochraneのデータベースを検索して、CTPとDCIの関係に関する研究を特定。脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均Objective:DCIの予測および診断におけるCT灌流(CTP)の価値を評価• 通過時間(MTT)、およびピーク時間(TTP)について解析
DiagnosingVasospasmAfterSubarachnoidHemorrhage:CTAandCTP
CanJNeurol Sci. 2014May;41(3):314-9.
DSAよりもCTAおよびCTPの方が、CVの診断およびDCIへの進行の予測の両方に対して高い感受性および特異性を示す。
v
• Objective:DCIの予測および診断におけるCT灌流(CTP)の価値を評価
• Design:systematicreviewandmeta-analysis• Patients: 11の研究、570人• Methods:PubMed、Embase、およびCochraneのデータベースを検索して、CTPとDCIの関係に関する研究を特定。脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、平均通過時間(MTT)、およびピーク時間(TTP)について解析
CTperfusionanddelayedcerebralischemiainaneurysmalsubarachnoidhemorrhage:asystematicreviewandmeta-analysis
JCereb BloodFlowMetab. 2014Feb;34(2):200-7
Results
入院時のDCI発症患者と非DCI発症患者の灌流パラメータの平均値の差
DCI患者でCBFは減少傾向
DCIの予測には有用でない
スパズム期(SAH発症後4-14日)のDCI発症患者と非DCI発症患者の灌流パラメータの平均値の差
v
v
DCI患者でCBFは有意に減少、MTTは有意に増加
DCIの診断には有用
Results
• Objective:(1)aSAH後72時間以内にMRI-DWI病変を有する患者の割合を分析(2)aSAH後72時間以内にMRI-DWI病変の決定因子(3)aSAH後72時間後~21日にMRIDWI病変を有する患者の割合を分析(4)MRI-DWIが臨床的に悪化した患者のDCI診断に有用かを調べる• Design:SystematicReviewandMeta-Analysis• Patients:13の研究、522人• Methods:2000/1/1-2016/6/28、MRIまたは磁気共鳴およびクモ膜下出血またはSAHまたはDCIまたは遅発性脳虚血またはDINDの組み合わせを用いて、PUBMED、EMBASEおよびWebofScienceデータベースを検索した。
MagneticResonanceImagingandCerebralIschemiaAfterAneurysmalSubarachnoidHemorrhage: ASystematicReviewandMeta-Analysis
Stroke2017Jan;48(1):239-245
72時間以内
比較的良好な臨床グレード(H&H/WFNSI-III)の患者が比較的多い場合、病変の有病率はより低い。
Results
72時間~21日
上記の決定因子を有しても病変の有病率はあまり変わらない
Results
• SAH後の14日でMRI-DWI病変を認めるのは50%程• MRIは、SAH後の異なる段階で脳虚血を診断するために使用できる
• 72時間以内のMRI-DWI病変がその後のDCI発生を予測することを示した研究がある
•発症後4〜14日の間に臨床的に悪化した患者において、MRIがDCIの診断に有用な診断ツールであるかどうかを調べるために、より多くの研究が必要である
Conclusion
• 72時間以内にDWI病変を有する7人の患者のうち6人にDCIに起因する臨床的悪化が生じた
• 72時間以内にDWI病変のない78人の患者のうち8人にDCIに起因する臨床的悪化が生じた
• DCIに対する72時間以内のDWI病変の陽性的中率は86%(95%CI、17%-100%)であり、陰性の予測値は90%(95%CI、69%-100%)であった。
Earlyinfarctiondetectedbydiffusion-weightedimaginginpatientswithsubarachnoidhemorrhage
ActaNeurochir.2010;152:1197– 1205.
モニタリング
• TCD(経頭蓋超音波ドプラ波)• cEEG(持続脳波モニタリング)• PtiO2(脳組織酸素分圧)• CMD(脳内微小分析)• ICP、CCP
CriticalCare2016;20:277
TCD(方法)
日臨麻会誌 2005Vol25No.125-32
TCD(trigger)
•平均中大脳動脈血流速度(meanFVMCA)が24時間を超えて50cm/sより高い• MeanFVMCA>200cm/s• FVMCA/FIVCA>6
• Objective:TCDで認める血管攣縮がSAH患者のDCIの予測として有用かを検証
• Design:systematicreviewandmeta-analysis• Patients:2014/9までの17の研究、2870人• Methods:「くも膜下出血」「動脈瘤」「動脈瘤」「脳血管攣縮」「TCD」をキーワードに検索。 TCDの感受性、特異性、正および負の予測値はDerSimonianとレアードランダム効果モデルによってプール。
VasospasmontranscranialDopplerispredictiveofdelayedcerebralischemiainaneurysmalsubarachnoidhemorrhage:asystematicreviewandmeta-analysis
JNeurosurg 2016;124:1257–1264.
v
• TCDによって血管攣縮を認めない場合、DCIが除外できる可能性は高い
• TCDモニタリングが患者予後に及ぼす影響はさらなる研究が必要
Results
cEEG(持続脳波モニタリング)
•血管攣縮やDCIを予測する所見α波の減衰、α/δ比の低下•重症SAH患者の予後を予測する脳波所見PLEDs(periodiclateralizedepileptiformdischarge)electrographicstatusepilepticustheabsenceofsleeparchitecture
Neurocrit Care2006;4:103-12
• Objective:昏睡状態のSAH患者におけるDCIの検出に最も感受性であり特異的な定量的EEG(qEEG)パラメータを同定すること
• Methods: DCI患者および非DCI患者におけるqEEGパラメータの変化率を比較
• Results:34例中9例(26%)がDCIを発症。α/δ比(ADR)は、DCIとの最も強い関連を示した。 DCI患者のADRの減少の中央値は24%であり、DCIのない患者より3%増加(P<0.0001)した。臨床的に有用なカットオフは、ベースラインから>10%のADR低下(感度100%、特異度76%)および>50%の減少(感度89%、特異性84%)
• Conclusion: ADRの減少は、DCIを検出する有用な方法であり得る。qEEGパラメータは、悪性度のSAH患者における臨床試験を補足し、DCIの検出に有用であることが判明する可能性がある。
Quantitative continuous EEG for detecting delayed cerebralischemia in patients with poor-gradesubarachnoid hemorrhage.
Clin Neurophysiol 2004:Dec;115(12):2699-710.
• Objective:定量的EEG(qEEG)特徴が臨床的または放射線学的所見の前にDCIを検出できるかどうかを調べること
• Methods:前向きコホート研究。持続脳波(cEEG)が記録されたaSAH患者において、qEEGが変化した時点を、臨床的劣化が生じた時点またはCTで新たな虚血が認められた時点と比較。
• Results:SAH患者20人中11人がDCIを発症。 α/δ比(ADR)は対照群(中央値+27%)と比較して、DCI群(中央値-62% )における経時的な変化の有意差を示した(p=0.013)qEEGの変化と臨床的DCI診断との間の経過時間は7時間(中央値)であった。 QEEGとCTスキャンの変化の遅延は44時間(中央値)であった。
• Conclusion: CTでの虚血性変化が明白であり、臨床的劣化が認められる前に、ADRがDCI発症を検出。 SAH患者におけるcEEGの実施はおそらくDCIの早期検出を改善することができる。
Continuous EEG Monitoring for Early Detection of Delayed Cerebral Ischemia in SubarachnoidHemorrhage:A Pilot Study.
Neurocrit Care 2016Apr;24(2):207-16.
2016年5月24日勉強会スライド
LPR(乳酸/ピルビン酸比)>40グルタミン酸>40
ICP(頭蓋内圧)、CCP(脳灌流圧)
• 高ICP(>20mmHg)は脳の代謝が著しく低下し、GOS(GlasgowOutcomeScale)、死亡率が増悪
JNeurosurg 2009;111(1):94–101• CCP<70mmHgでは、代謝障害およびBTH(脳組織低酸素)を起こし、死亡率およびSAH後の不良な機能予後と関連
Stroke2011; 42(5):1351–6• 重症SAH患者の場合ICP、CCPが正常範囲内でも脳代謝異常が起こりうるため、必ずしも脳代謝を反映しないことが示唆
Neurosurgery 2011;69:53–63
• Objective: aSAH後のICP上昇に関連する臨床因子を特定し、ICPと転帰との関係を調べる• Design:前向きに収集されたデータ分析• Setting:イタリアの神経科学ICU単施設、2005/7-2012/2• Patients:aSAHでICPモニタリングされた患者116人• Methods:ICP20mmHg以上を少なくとも5分間持続する事象、および12時間間隔ごとの平均ICPを分析。ICPに関連する項目を分析。死亡率および6ヶ月の予後(GOS:グラスゴーアウトカムスケール)を多変量ロジスティックモデルで解析。
Intracranial pressureaftersubarachnoidhemorrhage.
Crit CareMed 2015 Jan; 43(1):168-76
• ICP20mmHg以上の患者は36%• ICP20mmHg以上であることは、初期の神経学的状態、動脈瘤再出血、CTスキャンでの血液量、および虚血性病変と有意に関連
• 平均ICPが20mmHgより高い患者は、死亡率が有意に高かった。
• ICPは、早期脳損傷の重症度および死亡率に関連する
Results
スパズム期の管理
•薬物療法•血行動態• その他
薬物療法
• シロスタゾール• クラゾセンタン• エイコサペンタエン酸(EPA)• エリスロポエチン• ファスジル• ヘパリン• ニモジピン• マグネシウム• メチルプレドニゾロン• シンバスタチン
シロスタゾール
•退院時のmRS(脳梗塞判定基準)を改善したCerebrovascDis2011;32:89–93
• 6ヶ月後のmRSの改善は認めなかったが、症候性および血管造影性血管攣縮の発生率が有意に減少した
JNeurosurg2013;118:121–30• CTで認めた症候性血管攣縮や脳梗塞の発生率が低下した
Acta Neurochir Suppl 2015;120:147–52
クラゾセンタン
•中等度または重度の血管造影血管攣縮の用量依存的に減少する
Stroke2008;39:3015–21(CONSIOUS-1)•死亡率、罹患率また脳梗塞・DCIの発生率を減少しない
LancetNeurol2011;10:618–25(CONSIOUS-2)•肺水腫、低血圧、貧血などの合併症が増える
エイコサペンタエン酸
•心臓および脳血管の保護に有効NEngl JMed2011;364:2439–50
•長期使用により、再発性脳卒中のリスクが20%低下する
Stroke2008;39:2052–8• クリッピング後患者への投与は、症候性血管攣縮および脳梗塞の発生率、mRSは改善しない
WorldNeurosurg 2014;81:309–15
エリスロポエチン
•血管痙攣の重篤度を軽減することが示唆されている
WorldNeurosurg 2010;73:500–7•脳の自己調節の回復と抗炎症作用がメカニズムとして仮定されている
BMCNeurol 2012;12:32
ファスジル
•症候性血管攣縮の相対発生率を30%、血管造影血管攣縮を38%減少させた
JNeurosurg1992;76:571–7• ファスジルとニモジピンの比較試験では、臨床的な血管痙攣の発生率・CTの所見は有意差なし、グラスゴー転帰尺度で測定した1ヵ月後の臨床転帰はファスジル群で良好であった
Neurol MedChir (Tokyo)2011;51:679–83
ヘパリン
•抗凝固作用に加えて、内皮機能不全に影響を及ぼす抗炎症作用はDCI予防に有効かもしれない•症候性血管攣縮の発生率はヘパリン群で9%、対照群では47%という報告もある
JNeurosurg2013;119:1611–9
ニモジピン
•脳虚血イベントを減らし予後を改善するBrMedJ1989;298:636–42
•脳血管攣縮を減少させるJ Neurosurg 1996;84:405-14
• DCIにおいて皮質拡散虚血(Corticalspreadingdepression)に拮抗し、皮質拡散抑制にゆうこうかもしれない
Neurosurgery2002;51:1457-65
マグネシウム
•生理学的カルシウム拮抗薬として血管拡張作用がある
•脳虚血発生率を低下させるCrit CareMed2010;38:1284–90
• 3か月後のmRSによって測定された臨床転帰に有益な効果を示さなかった
Lancet2012;380:44–9(MASH-2)•脳梗塞の発生、臨床転帰は改善せず
JNeurosurg 2016;124:18–26
メチルプレドニゾロン
•高用量投与で1年後の機能的予後を改善した、血管攣縮の発生率は変化なし
JNeurosurg2010;112:681–8
シンバスタチン
•動物研究では脳血流(CBF)を増加させることが示されている
Stroke2002;33:2950–6•脳血管攣縮の発生、臨床転帰に影響を与えなかった
BrJNeurosurg2013;27:181–6• 6ヵ月後の臨床転帰、死亡率、DINDの罹患率を改善しなかった
LancetNeurol2014;13:666–75(STASH)
薬物まとめ
•予防として有効なのはニモジピン
CriticalCare2016;20:277
血行動態
• いわゆるtriple-H療法(hypervolemia,hypertension,haemodilution)は機能的予後を改善するエビデンスに乏しく、現在は推奨されていない
• DCIへの最初の手段としてCBF増加のため生理食塩水の急速投与が考慮されるが、hypervolemiaやhaemodilutionはむしろ心不全、肺水腫など合併症のリスクをあげるため、正常血管内容量を目指す
2016年5月24日勉強会スライド
• Objective:PiCCOによる血行力学的モニタリングを用いて、SAH患者における肺水腫の発生率および原因を調べる• Design:多施設前向きコホート研究• Setting:日本の9施設、2008/10-2012/4• Patients:SAH患者204人• Methods:SAH後の様々な血行動態パラメータの変化を統計的に分析した。
Amulticenterprospectivecohortstudyofvolume managementaftersubarachnoidhemorrhage:circulatory characteristicsofpulmonaryedemaaftersubarachnoidhemorrhage
JNeurosurg 2016;125:254–263.
v
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v
Results 左側(黒): PE(肺水腫)群、右側(白):対照群
• 肺水腫を発症した患者は52人(25.5%)• DCIを発症したのは44例(21.6%)• ELWI(平均肺血管外水分系数)は、研究期間中、
PE(肺水腫)群では非PE群より有意に高かった• CI(心係数)、PVPI(肺血管透過性系数)も有意差があるときもあった。
• 初期にはPE群で水分バランス多い
PiCCOでのモニタリングによるELWI、CIおよびPVPIの測定は、SAH患者の肺水腫を同定するのに有用である。
Conclusion
Results
血行動態
•輸液負荷に反応がなかった場合、極端な高血圧や心機能に問題を認めなければ血圧は高めに管理する
•血圧を上昇させるためにはノルアドレナリンなどを使い少しずつ調整する。また血圧を上げるごとに神経所見を確認する
•血圧を高く保っても神経症状が残存ずる場合は、救援治療として血管形成術や血管拡張薬の動注が効果があるかもしれない
2016年5月24日勉強会スライド
• Objective:DCIを発症したSAH患者における脳血流(CBF)に及ぼす高血圧誘発の影響を評価した。
• Design:RCT• Setting:ヨーロッパ多施設、2009-2015• Patients:aSAH患者でDCIを発症した患者36人• Methods:高血圧誘導群と対照群に無作為に割り付け、2群間の平均動脈血圧を比較、またDCI発症時および24〜36時間のCBFをCTPを用いて評価した。誘発群の昇圧はノルアドレナリン使用、MAP130またはSBP230mmHgまで、対照群はMAP80mmHg以上になるように管理。
EffectsofInducedHypertensiononCerebralPerfusioninDelayedCerebralIschemiaAfterAneurysmal SubarachnoidHemorrhage
Stroke.2015Nov;46(11):3277-81
• CTP1(DCI発症時)とCTP2(DCI発症後24-36時間)の間では、高血圧群で平均12mmHg(95%信頼区間、8.6-14.5mmHg)が対照群より高かった。
• 全体としては介入によって脳血流量は改善しない。• ただ灌流が最も少ない部分では介入によって血流が改善される傾向があった。
Results
CriticalCare2016;20:277
その他
•貧血• DVT•体温•低Na• Highvolumecenter
貧血
• SAH患者ではHb 8.0 g/dlが閾値、DCI患者ではHb 9.0-10.0 g/dlが閾値
Neurocrit Care 2011;15(2):211–40• 貧血はSAH患者の50%以上にみられ、不良な予後と関連している
Neurocrit Care2009;10(2):157–65Neurocrit Care2011;15(2):342–53
• 輸血は合併症、不良なアウトカム、死亡率を高くするNeurosurgery 2010;66(2):312–8CritCare Med2008;36(7):2070–5
DVT
• SAH患者はDVT予防をするべき、IPCは全患者で行うべき
•未治療や手術予定の時は低分子ヘパリン投与を慎むべき
•術後24時間以降は低分子ヘパリンを使用できる•未分画ヘパリン、低分子ヘパリンの使用は、頭蓋内操作行う前後24時間は慎むべき
Neurocrit Care2011;15:211-40
• Objective: SAHの亜急性期患者がDVTを発症するリスクが最も高いという仮説が検証
• Design:後ろ向きコホート• Setting:アメリカ単施設、2008/4~2012/3• Patients:脳動脈瘤破裂と診断された患者198人• Methods:入院と退院の間に5.2±3.3日ごとに超音波スクリーニングを実施。関心のある期間におけるDVT発生率を比較。
Timingofdeepveinthrombosisformationafteraneurysmalsubarachnoidhemorrhage
JNeurosurg 2015;123:891–896.
DVTの発生はSAH後2週間が多い、5-9日目がピーク化学予防がDVT発生を減らす
Results
体温
• モニターすべき、常に感染症は念頭に置く• DCIリスクの期間は発熱をコントロールすべき•解熱剤の有効性は低いが、治療の選択肢になる•体表、血管内冷却装置は効果的•冷却装置を使う場合は皮膚障害、DVTに注意する• シバリングに対するモニター、治療を行う
Neurocrit Care2011;15:211-40
低Na
• 低ナトリウム血症を是正するための輸液制限は脳虚血のリスクをあげる
AnnNeurol.1985;17(2):137–40• 低ナトリウム血症患者は、輸液制限がなくても脳虚血を発症するリスクが高い
AnnNeurol.1990;27(1):106–8• 高Na尿症、低Na血症の場合に限り、hydorocortisone,fludrocortisoneは早期治療に使える• バソプレシン受容体アンタゴニストを使用する際は低血管内容量に注意する
Neurocrit Care2011;15:211-40
HighVolumeCenters
•急性脳障害の長期予後は、nerologic/neurosurgicalICUでの管理で飛躍的に改善する。特にSAHの予後は、症例数に影響され病床数の病院の方が予後が良いという結果がある
NEngl JMed2002;346:1128–1137Stroke.2013;44:6447-52
• Objective:頭蓋内動脈瘤の治療後の長期死亡率と病院の規模との関係を調べること
• Patients/Methods:デンマーク、ノルウェー、スウェーデン患者登録簿から2002年から2010年に頭蓋内動脈瘤治療を受けた患者を同定し、各国の人口登録による死亡1年分のデータにリンクさせた。Cox回帰モデルを使用して、病院の規模を死亡リスクに関連づけ、潜在的な交絡因子(年齢、性別、治療年、Charlsonの同時罹患率指標、国および外科治療)を調整した。
Hospitalvolumeand1-yearmortalityaftertreatmentofintracranialaneurysms:astudybasedonpatientregistriesinScandinavia
JNeurosurg 2015;123:631–637.
より規模が大きい病院で予後が改善するという結果にならなかった
より大きい規模の病院の方が死亡率が高い
より大きい規模の病院の方が死亡率が低い傾向がある
Results
まとめ
• スパズムはSAH発症後の合併症の一つであるが、予後にあまり影響せず、予後に影響する病態はDCIと考えられおり、「スパズム期」の管理にはそのことを意識すべきである
• CT、MRIはDCIの診断に有用であるが、予測に有用かはさらなる研究が必要
•診断おいて神経学的診察には限界があり、神経学的マルチモニタリングが推奨される
まとめ
•管理は今までと変わらない•予防として有用なのはニモジピン及び循環の維持•血圧は可能なら高めが良い•輸液はhypervolemia、hypovolemiaを避ける、PiCCOを指標にするのが良いかもしれない•貧血は良くないが、輸血も良くない• DVT、体温、低Na管理をする• HighVolumeCenterが予後を改善しないという報告もある