シニアボランティアから世代をつなぐ 居住文化体験...

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シニアボランティアから世代をつなぐ 居住文化体験プログラムの実践 -大阪くらしの今昔館の町並み展示を活用したアクティブラーニングー 直樹 (大阪くらしの今昔館) 碓田 智子 (大阪教育大学) 服部 麻衣 (大阪くらしの今昔館) 大阪くらしの今昔館町家衆

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シニアボランティアから世代をつなぐ

居住文化体験プログラムの実践 -大阪くらしの今昔館の町並み展示を活用したアクティブラーニングー

谷 直樹 (大阪くらしの今昔館)

碓田 智子 (大阪教育大学)

服部 麻衣 (大阪くらしの今昔館)

大阪くらしの今昔館町家衆

大阪市立住まいのミュ-ジアム(愛称 大阪くらしの今昔館)は、 2001年開館した、住まいの歴史と文化の専門ミュ-ジアムです。 来館者数は、年間26万人(2013年度)から35万人(2014年度)に 増加しています。 常設展示室では、江戸時代の大坂の町並みを実物大で再現 しています。この町並み展示が、居住文化体験プログラムの 実践の場です。

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

伝統的工法を用い、実物大で再現した江戸時代の大坂の町並み展示

町会所、薬屋、風呂屋、本屋、裏長屋、共同便所、通り土間、仕舞屋、路地、土蔵 火の見櫓

大坂町三丁目の町並み

「大坂町三丁目」と名付けられた町並み展示は、10棟の 建物で構成されています。 江戸時代の伝統的工法を用いた、本物の建築空間です。

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館 穂積和夫 画

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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鬼 瓦 座敷飾り 季節のしつらい

(夏建具の座敷)

格子とばったり床几 土蔵としっくい壁

町並み展示の中の建築デザインと匠の技

かまど

本物の伝統工法で作られた町並み展示の中には、様々な建築デザインと匠の技があります。 Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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町家の建具替え 座敷のお作法

年中行事(ひな飾り) 祭りの賑わい

町並み展示の中では、建具替え、座敷のお作法、ひなかざり、お祭りなど、四季折々の暮らしの

行事があり、観覧者は居住文化を体験的に学ぶことができます。 Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

町並み展示で体験する居住文化(くらしと社会)

今昔館の町並み展示の概念図

デザイン

技術

設計

意匠

匠の技

社会

生活文化

年中行事

町並み

コミュニティ

くらし

今昔館の展示 「大坂町3丁目の 町家と町並み」

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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今昔館の多彩な居住文化体験メニュ-と担い手

学芸企画特別企画プログラム

町家ツア-町の解説

季節の風物詩・生活文化体験

ものづくり文化体験

小学生

中学生

高校・大学生

一  般

高齢者

外国人

主な担い手 学芸員 町家衆(ボランティア)

今昔館の

初もうで

書初め・餅つき

ひな飾り昔遊び

お彼岸の屋台

肝試し

南京玉すだれ

着物体験(特に外国人)

おじゃみ

お面

和とじ本

からくり玩具

はたきづくり

など

(大阪のまちと

町家を学ぶ)

土・日曜日

定期開催

予約随時

でも対応

(特別企画)

子どもあきんど体験

大工体験 など

伝統工法(軸組模型体験)

落語

上方舞、狂言

お茶会など

留学生向け

居住文化体験

昔のくらし体験学習

対象

今昔館の町並み展示で学ぶ居住文化は、「建築デザイン」「くらし」「社会」「技術」に関わるものです。 観覧者の対象別に多彩な居住文体験メニュ-を用意し、その多くを町家衆(ボランティア)が担って います。 観覧者がボランティアと一緒に体験しながら学ぶ、アクティブラ-ニングが特色です。

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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居住文化を伝えるシニアボランティアの活動

季節の風物詩を伝える 町家ツア-で伝える町家のしくみ

居住文化を「伝える人」の存在

町並み展示の建築空間

町家衆による商いの再現

約170名のボランティアの大部分が、豊かな生活経験を持つシニア層です。 シニアボランティアは、町並み展示の中で、各種体験メニュ-通じて、日常的に観覧者と関わり、居住文化を「伝える人」の役割をしています。

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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居住文化を伝えるシニアボランティアの活動 - 外国人観覧者への対応 -

・外国人観覧者は12万人を突破(2014年) ・アジア圏からの外国人が中心

着付けを通じた

ボランティアと外国人の交流

タブレットを使った外国人との コミュニケ-ション

外国人向けパンフレットの配布割合

今昔館では、韓国や中国などのアジア圏からの外国人観覧者が急増しています。外国人に大人気の和服体験では、着付けをシニアボランティアが担当し、身振り手振りでコミュニケーションを図っています。タブレットを使って、外国人とコミュニケ-ションをとるボランティアもいます。

12,548

39,875

61,572

123,672

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2011年 2012年 2013年 2014年

外国人観覧者数の推移(単位; 人)

ハングル

パンフ

レット, 48.5% 中国語パ

ンフレッ

ト, 38.5%

英語パン

フレット, 13.0%

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ホ-ルでの体験学習

小学校教員へのアンケ-ト調査を 踏まえたプログラム

明かりの体験(あんどん)

蔵の仕組み(蔵の鍵)

ボランティアは、小学生向け『昔のくらしの体験学習』の生きた解説者

町並み展示での学習

(ボランティアが小学生に伝える昔のくらし)

年間約240校、1万6,000人の小学生が今昔館で昔のくらしを学んでいます。生きた解説者として、子どもたちに「昔のくらし」を伝えているのが、シ ニアボランティアです。

昔の道具などを使った体験学習

江戸時代の町並みでの空間体感

シニアボランティアの生きた解説

ワ-クシ-トを使った学習

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『匠の技に一日入門』(特別企画プログラム)

シニアボランティアから世代をつなぐ居住文化体験プログラム

左官技術を持つボランティアの指導 夏休みなどに実施する各種の特別企画プログラムには、大学生も参加し、ボランティアと協働してプログラムを運営しています。 『匠の技に一日入門』では、子どもたちが大学生と一緒に展示室の町家を探検。 ボランティアに教えてもらいながら、鉋がけ、釘打ち、土壁塗りなど、親子一緒に匠の技にチャレンジします。

鉋がけにチャレンジ

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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シニアボランティアから世代をつなぐ居住文化体験プログラム

町家の暮らしを体験 『子どもあきんど体験』 (特別企画プログラム)

『子どもあきんど体験』は、商いの町 大阪ならではのプログラム。 子どもたちが町並み展示の中で丁稚さんの姿になり、町家の暮らしとあきんどの仕事を一日体験します。 ボランティアがお店のだんなさん。あきんどの暮らしや商品の扱い、接客を子どもたちに教えます。館内通貨は本物の一文銭で、臨場感たっぷりです。

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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お茶会体験(ベトナム人の子ども)

障子貼り体験(日本語専門学校学生) ボランティアの指導で琴の体験

町家の座敷で書道体験

留学生や外国ル-ツの子ども向け 『むかし・くらし体験』 (特別企画プログラム)

留学生や外国ル-ツ子どもたちにも、日本の居住文化を学んでもらいます。 Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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【教育上の工夫】 居住文化を次世代につなぐ仕組み

シニアボランティアから大学生へ

ボランティア(町家衆)

大学生

居住文化の伝承

世代間交流

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ボランティアによる障子貼りの指導

座敷のお掃除の指導 特別企画プログラムでは、大阪教育大学や大阪市立大学の学生に協力してもらい、居住文化を次世代につなぐ仕組みをつくっています。 まず、シニアボランティアから大学生に、生活文化や技術を指導してもらいます。つぎに、子どもに年齢が近い大学生が橋渡し役になって、子どもたちに教わったことを伝えます。 シニアボランティア→大学生→子どもたちへ、世代を超えて居住文化を伝えていきます。

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子ども

居住文化の

伝承 世代間交流

大学生

【教育上の工夫】 居住文化を次世代につなぐ仕組み

障子貼りを伝える

昔遊びを伝える

大学生から子どもたちへ

大工仕事を伝える

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「夏休みあきんど体験」 学習指導案 (堀内)

1.日時 平成22年8月22日 11:10~17:00

2.学習目標

(1)江戸時代の商人の暮らしと住まいを知ることができる。

(2)商いの仕組みを知り、自ら主体的に取り組むことができる。

3.指導計画

①事前学習

時間 学習活動 学習目標 指導上の留意点 準備物

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①紙芝居を見る。 ・江戸時代の商人の生活やお金

の仕組みを理解することができ

る。

・これから自分たちが行うあき

んど体験に興味を持ち、意欲的

に取り組むことができる。

紙芝居

②弟子入り

時間 学習活動 学習目標 指導上の留意点 準備物

①自分のでっち

名を考える。

②自己紹介する。

同じグループの仲間と親しみを

込めて、でっち名で呼び合うこ

とができる。

名前シー

③接客練習

時間 学習活動 学習目標 指導上の留意点 準備物

①接客の見本を

見る。

②見本にならっ

て接客練習をす

る。

おもてなしの心を知り、大きな

声で元気よく「おいでやす。」「お

おきに。」を言うことができる。

④昼食

時間 学習活動 学習目標 指導上の留意点 準備物

①メニューの説

明を受ける。

②食べる。

これからグループとしてともに

活動する仲間との親睦を深める

ことができる。

【教育上の工夫】学習指導要領に基づく指導案作成

特別企画プログラムは、学習指導要領を踏まえた指導案を作成

・わが国や郷土の伝統や文化の理解

・伝統文化を継承・発展させる教育

・他国の文化の尊重

学習指導要領「伝統文化の尊重」

特別企画プログラムでは、小学校から高校までの学習指導要領を踏まえつつ、学習指導案を作成しています。 現行の学習指導要領の柱の一つに、「伝統文化の尊重」が記載されています。この部分で今昔館での学習が対応しています。 さらに、特別企画プログラムでは、学習ノートやワークシートをつくり、子どもたちが振り返り学習ができるようにしています。 Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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学年 なまえ

大阪くらしの今昔館

【教育上の工夫】学習ノ-トなどの教材開発

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館

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今昔館へおこしやす

Copyright ©2015 大阪くらしの今昔館