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70 AUTOCAR 01/2012 FIAT フィアット大研究 単なる実用車に止まらせないイタリアの情熱 19世紀もあと2年と押し迫った1899年、イタリアの北にある街トリノで 9人の名士によって、ひとつの自動車メーカーが立ち上げられた。 Fabbrica Italiana Automobili Torino=トリノ・イタリア自動車製作所。 その会社は頭文字を取ってF・I・A・T、フィアットと呼ばれることになる。 創業者の中で異彩を放っていたジョバンニ・アニエリが手腕を発揮することで 自動車だけでなく、製造業や金融業など幅広い分野で成功を収め フィアットがイタリアを動かしていると言われるほどの大企業へと成長するのだ。 FIAT S.p.A フィアットS.p.A 資本金:63億7700万ユーロ(2010年12月31日現在) 設立年月日:1899年7月11日 従業員数:13万7800人(2010年12月31日現在) Sergio Marchionne セルジオ・マルキオンネ FIATS.p.A.および フィアットグループオートモビルズS.p.ACEO 1952年にイタリアのキエーティで生まれ、カナダとイタ リアの二重国籍を有する。トロント大学で卒業後、ウイ ンザー大学でMBAを取得した。法廷および事務弁護 士、公認会計士。 1983年からカナダで会計士および租税専門家とし て、財務や法務関係を中心に勤務。Algroup、ロンザ グループLtd.、SGSグループなどでCEOに就く。 2003年5月にフィアットS.p.A.に取締役として入社し、 2004年6月にCEOに就任する。2005年2月にはフィ アットグループ オートモビルズのCEOに就く。2009 年6月にはクライスラー・グループL L CのC E O、さらに 2011年9月に会長に就任している。 写真はマルキオンネ(右)とルカ・モンテゼモーロ(左)

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Page 1: FIAT Sergio Marchionne - AUTOCAR JAPAN...Sergio Marchionne セルジオ・マルキオンネ FIAT S.p.A.および フィアット グループ オートモビルズS.p.A CEO 1952年にイタリアのキエーティで生まれ、カナダとイタ

70 AUTOCAR 01/2012

FIAT フィアット大研究単なる実用車に止まらせないイタリアの情熱

19世紀もあと2年と押し迫った1899年、イタリアの北にある街トリノで9人の名士によって、ひとつの自動車メーカーが立ち上げられた。

Fabbrica Italiana Automobili Torino=トリノ・イタリア自動車製作所。その会社は頭文字を取ってF・I・A・T、フィアットと呼ばれることになる。

創業者の中で異彩を放っていたジョバンニ・アニエリが手腕を発揮することで自動車だけでなく、製造業や金融業など幅広い分野で成功を収め

フィアットがイタリアを動かしていると言われるほどの大企業へと成長するのだ。

FIAT S.p.AフィアットS.p.A資本金:63億7700万ユーロ(2010年12月31日現在)設立年月日:1899年7月11日従業員数:13万7800人(2010年12月31日現在)

Sergio Marchionneセルジオ・マルキオンネFIAT�S.p.A.およびフィアット�グループ�オートモビルズS.p.A�CEO

1952年にイタリアのキエーティで生まれ、カナダとイタリアの二重国籍を有する。トロント大学で卒業後、ウインザー大学でMBAを取得した。法廷および事務弁護士、公認会計士。1983年からカナダで会計士および租税専門家として、財務や法務関係を中心に勤務。Algroup、ロンザグループLtd.、SGSグループなどでCEOに就く。2003年5月にフィアットS.p.A.に取締役として入社し、2004年6月にCEOに就任する。2005年2月にはフィアット�グループ�オートモビルズのCEOに就く。2009年6月にはクライスラー・グループLLCのCEO、さらに2011年9月に会長に就任している。写真はマルキオンネ(右)とルカ・モンテゼモーロ(左)

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第二次世界大戦後は小型車を中心へのメーカーに生まれ変わる

フィアットが歩んできた112年の軌跡イタリアを代表する巨大企業は9名の発起人の手によってトリノで産声を上げた

■1866年 ・�ジョバンニ・アニエリ誕生

■1953年 ・�イタリア乗用車初のディーゼルを1400に搭載

■1901年 ・�フィアット初の4気筒モデル12HPを発表

1899年■・�ファブリーカ・イタリアーナ・アウトモビリ・トリノ社が設立。それぞれの頭文字を取ってフィアット(FIAT)社と呼ばれる・�フィアット第1号車、3�1/2HP誕生

■1902年 ・�ジョバンニ・アニエリが正式に代表取締役に就く

 ・�フィアット初のレースカー専用マシン、24HPコルサを送り出す

■1903年 ・�アメリカへの輸出を開始 ・�船舶用エンジンの生産開始

■1905年 ・�自動車会社のアンサルディを傘下に収める

■1908年 ・�アメリカ、オーストラリア向け専用モデル、35/45HPを開発 ・�航空機用空冷V型8気筒エンジン、SA8/75の製造開始

1920年■ジョバンニ・アニエリが取締役から解かれ、会長に就任

1921年■・�ポーランドにフィアット-ポルスキー設立・�フィアット最初で最後の12気筒乗用車、520スーパー・フィアット登場

1922年■当時の欧州最大級のリンゴット工場稼動

■1911年 ・�14L直4エンジンを積んだS .74コルサがアメリカGP、フランスGPで優勝

 ・�フィアット史上最大排気量28Lの4気筒エンジンを積んだレコードブレーカー、S.76登場

■1919年 ・�501デビュー、7年間で4万5000台を販売する大ヒット作となる

■1912年 ・�フィアット最初の大量生産モデル、ゼロ発売

■1955年 ・�リアエンジン・リア駆動の600発売

■1956年 ・�600ベースのモノスペース、600ムルティプラ登場

■1957年 ・�ヌオーバ・チンクエチェントこと、2代目500がデビュー

■1959年 ・�1800/2100発表

1965年■・�600の後継車となる850がデビュー・�フィアットとしては初めて年間販売台数100万達成

■1966年 ・�ジョバンニ・アニエリの孫、ジャンニ・アニエリが社長に就任

 ・�シリーズ合計で200万台を販売した124がデビュー

 ・�フェラーリとコラボによって生まれたフィアット・ディーノをトリノショーで発表

■1967年 ・�アウトビアンキ社を吸収

■1968年 ・�シトロエンと開発、生産、販売において協力関係を結ぶ

■1969年 ・�フェラーリの株を50%取得し、資本参加

 ・�ランチアを傘下に収める ・�フィアット初のFFモデル、128デビュー

■1971年 ・�アバルト社を買収

■1972年 ・�2シーター・ミドシップ・スポーツ、X1/9誕生

■1977年・�131アバルトでWRCメイクスチャンピオン獲得

■1978年 ・�VWゴルフ対抗馬のCセグメントハッチバック、リトモ発売

1955 1960 1965 1970 1975 1980

1865 1900 1905 1910 1915 1920

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日本ではあまり知られていないが、フィアットはその辺に有り体な自動車メーカーとは

大きく異なる。私たちが日本で接しているフィアットやアルファロメオ、ランチアといった乗用車はフィアット・グループ・オートモビルズS.p.A.という会社が製造したもので、その上に関連会社を束ねるフィアットS.p.Aという会社が存在する。この会社の下には数多くの関連企業がずらりと並ぶ。大型トラックやトラクター、船舶用エンジンを作る企業もあれば、グループ内には新聞や金

融といった自動車とはまったく畑違いの会社もある。かつては鉄道や航空機の製造も手掛けていた。ただし、鉄道と航空機に関してはそれぞれ、2000年にアルストム社と2003年にフィンメカニカ社に売却し、今は傘下にない。またとっくの昔になくなってしまったが、フィアット製の家電なんていうものも販売されていた時期がある。つまり、フィアットは日本で言うところの三菱グループに近い存在なのだ。自動車もあるし、重工もあるし、銀行もある。ただ、三菱自動車はグ

ループの中でメインストリームではないが、フィアットの乗用車製造部門であるフィアット・グループ・オートモビルズS.p.A.はグループ全体の売り上げの半分を稼ぎ出す大黒柱だというのが大きな違いだ。 1899年に9人の有志によって立ち上げられた自動車会社がここまで大きく成長したのはひとりの男の手腕によるところが大きい。彼の名前はジョバンニ・アニエリ。9人の有志のひとりである。フィアットやそのグループのクルマたちはいずれ

FIAT[フィアット大研究]

■1925年 ・�ファイナンス会社サバ設立、509が最初のクレジット販売車となる

1932年■・�2年間で4万台以上を販売した大ヒット作508、通称バリラがデビュー

1934年■・�フランスにノックダウン工場のシムカを設立

■1936年 ・�トッポリーノの愛称でお馴染みの初 代 5 0 0 デビュー、1955年までに約51万台を販売

■1939年 ・�ミラフィオーリ工場完成

1949年■・�スペインに設立されたセアト社に資本参加

1950年■・�フィアット初のモノコックボディを採用した1400登場

■1979年 ・�ジウジアーロが手掛けたベーシックカー、パンダ登場

 ・�自動車部門がフィアット・オート株式会社として独立

■1993年 ・�ウーノの後継モデルのプントがデビュー、1995年のカー・オブ・ザ・イヤーに輝く

 ・�マセラティ社を傘下に収める

■1994年 ・�個性的なデザインをまとったFFクーペ、クーペ・フィアット登場

■1995年 ・�ブラーボ/ブラーバ発表、プントに次いで2年連続でカー・オブ・ザ・イヤー受賞

■1999年 ・�世界初の量産車用2ペダルM/T、セレスピード発売

■2000年 ・�GMと提携

■2003年 ・�2 世 代目パンダがデビュー、2004年のカー・オブ・ザ・イヤー受賞

2004年■セルジオ・マルキオンネ氏がCEOに就任

2005年■GMとの提携解消、約16億ユーロの違約金を受け取る

■2007年 ・�3世代目500デビュー、2008年のカー・オブ・ザ・イヤーに輝く

■2008年 ・�500を日本市場に導入

■2009年 ・�クライスラーに資本参加、株式の20%を得る

■1983年 ・�ウーノがデビュー、1984年のカー・オブ・ザ・イヤーに輝く

■1985年 ・�サーブ、ランチア、アルファロメオとの共同プロジェクト、ティーポ4から生まれたクロマがデビュー

■1986年 ・�アルファロメオを買収

■1987年 ・�世界初の乗用車用直噴ディーゼルエンジンを開発

■1988年 ・�画期的な共通コンポーネントを用いたティーポ登場、1989年のカー・オブ・ザ・イヤー受賞

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

1920 1925 1930 1935 1940 1945 1950

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も、愛好家の琴線に触れるものが多いが、実はアニエリ自身はクルマを愛してやまないがゆえにフィアット社の立ち上げへ参画したわけではなかった。アニエリの頭の中にあったのは、フィアット社をライバルたちに勝るとも劣らない大きな会社へと育てること。船舶や航空機、鉄道へと事業を拡大していったのも、「陸に、空に、海に」というアニエリが掲げた理想に基づくものだ。 アニエリが第二次世界大戦の影響でフィアット社を追放されたあと、社長の椅子に座ったのもアニエリの孫であるジャンニ・アニエリである。ちなみに、本名は祖父と同じジョバンニだが区別するためにジャンニと呼ばれることが多い。ジャンニもまたフィアットに大きな繁栄をもたらす。その影響力は国をも動かすとささやかれるほど

で、企業という形態を超えた存在になっていった。フィアットは長い間、良くも悪くもふたりのアニエリという男によって行き先を決められていたのだ。 そんなフィアットに大きな転機が訪れる。2003年1月、ジャンニ・アニエリがこの世を去るとともに、ひとりの男が入社した。彼の名はセルジオ・マルキオンネ。現在、グループトップのフィアットS.p.Aおよびフィアット・グループ・オートモビルズS.p.A.のCEOを務めるあの男だ。 マルキオンネはジャンニ・アニエリがこの世を去った4ヶ月後の2003年5月にフィアットS.p.Aの取締役からフィアットでの経歴をスタートさせる。その頃のフィアットは大幅な赤字が続き、いずれはフィアット本体と切り離して傘下に入ってしまっ

てもいいという思いで提携したGMとの関係も暗礁に乗り上げ、すっかりグループのお荷物になっていた。 そんな大ピンチのなか、マルキオンネは財務畑で培った知識と経験をフルに生かし再建計画を実行する。もちろん、2003年に発売した2代目パンダの成功やGMとの提携破談の際に手に入れた巨額の違約金などのラッキーな面もあった。しかし、彼は長年アニエリ一族、とくにジョバンニとジャンニに集中していた権力を分散させるとともに、車両の開発をアウトソーシングするなど、経営面から技術面に至るまで手を入れ、カルロス・ゴーンが日産で見せたV字回復を彷彿させる立て直しをやってのけたのだ。 さらに彼は2009年に驚くべき決断を下す。経

ミラフォリオ工場(イタリア) メルフィ工場(イタリア)

ティヒ工場(ポーランド)

フィアット・インド・オートモビルズ・リミテッド工場(インド)

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イタリアを中心に東欧、ロシア、南米、インドなど幅広く展開

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イタリアの愛が溢れるクルマたちはここから生まれる

フィアット生産工場ガイド

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営破たんしたクライスラーの救済だ。業界関係者に関わらず多くの人が耳を疑ったはずだ。「助けて欲しいはずのフィアットがどうやってクライスラーを助けるのか」と。 しかし、そんな回りの声を掻き消すかのようにマルキオンネはさらに前へ進む。撤退を余儀なくされた中国への再上陸を締結という対外的なこともさることながら、工場の閉鎖や労働組合との対決など、内側へメスの入れ方も今まで以上に大胆になる。さらに今年の初めには、「本社をアメリカに移すかも」と発言。これは明らかにイタリア政府へ改革を迫るもの。フィアットの本社がイタリアから出て行ったら政府にとっては大きな痛手だ。税金は取れなくなるし、将来的には雇用にも不安が残る。もちろん、マルキオンネは

■フィアット・ブランド生産工場

フィアット・オートモビルズS.A.工場(ブラジル)

国名 番号 工場名 生産製品

イタリア 1 カッシーノ ブラーボ、クロマ

2 メルフィ プント・エヴォ

3 ミラフォリオ(トリノ) ムルティプラ、イデア

4 ポミリアーノ・ダルコ パンダ

5 フォッジャ エンジン、クランクシャフト

6 ミラフォリオ トランスミッション

7 プラートラ・セッラ エンジン

8 プレニャーナ・ミラネーゼ エンジン

9 テルモリ エンジン、トランスミッション

10 トリノ エンジン、トランスミッション

11 ヴェッローネ トランスミッション

12 ヴァルディ・サングロ デュカト

13 グルリアスコ 乗用車

フランス 14 リュ・サン・タマン スクード、スクード・パノラマ

ポーランド 15 ティヒ パンダ、パンダ4×4、パンダ・クロス、500

16 ビェルスコ・ビャワ 1.3Lコモンレール式ディーゼルエンジン、ツインエア・ガソリンエンジン

セルビア 17 クラグイェヴァツ プント

トルコ 18 ブルサ ドブロ、パリオ、アルベア、リネア、フィオリーノ

ロシア 19 エラブガ デュカト、リネア

20 ニジニ・ノヴゴロド デュカト

21 ナーベレジヌイェ・チェルヌイ パリオ、アルベア、ドブロ

22 ウラジオストク デュカト

メキシコ 23 トルーカ フリーモント、500

アルゼンチン 24 コルドバ シエナ、パリオ、ギアボックス、サスペンション

ブラジル 25 ベチン パリオ、シエナ、マレア、ミッレ、ウーノ、ドブロ、スティーロ、フィオリーノ、ストラーダ、イデア

26 ペルナンブコ 乗用車

27 セッテ・ラゴアス デュカロ

28 カンポ・ラルゴ ガソリンエンジン

中国 29 上海大衆汽車有限公司�南京分公司� パリオ、パリオ・ウイークエンド、シエナ

30 広汽菲亜特汽車有限公司� リネア、エンジン

31 重慶長安鈴木汽車有限公司 セディッチ

32 上汽菲亜特紅岩動力総成有限公司 商用車エンジン

33 菲亜特動力総成(重慶)軽型柴油機有限公司 軽型ディーゼルエンジン

インド 34 マハーラーシュトラ パリオ、リネア、グランデプント、エンジン、トランスミッション

ベトナム 35 ホーチミン デュカト

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FIAT[フィアット大研究]

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イタリア一色から伊米連合軍へ

フィアット グループ オートモービルズ相関図

FIAT◎フィアット

1898年創業社の直系正式名称フィアット�グループ オートモービルズS.p.A.。1898年に設立されたフィアット社直系の自動車メーカー。本業はフィアット車の開発、製造だが、アルファロメオ、ランチア、アバルト、フィアット�プロフェッショナルをはじめとする各ブランドの統括という役割も担う。上記した4ブランドについては、フィアットS.p.A.ではなく、この会社が100%を出資している。第二次大戦以前は大型乗用車も多数手掛けていたが、現在はコンパクトカーが多い。幾度となく経営難に陥ったが、歴史を途絶えることなく、現在に至る。

FIAT500 FIAT�BRAVO

FIAT ROFESSIONAL◎フィアット・プロフェッショナル

名前の通り、プロユース車両部門ライトバンや小型トラックの開発、製造を行うフィアットの商用車部門。フィアット本体とは、ブランドだけでなく会社も別になっており、社名はフィアット�ライト�コマーシャル�ヴィークルS.p.A.という。フィオリーノやドブロなどの専用車のほかに、パンダやムルティプラのリアを改造し、バンに仕立てたモデルなども手掛けている。 FIAT�QUBO

ABARTH◎アバルト

カルロの志を今も受け継ぐ1949年にカルロ・アバルトが設立したアバルト&C.社が由来。アバルト社は当初、レース車両の製作やパーツの製造・販売などを行っていた。その後、フィアットやシムカ、ポルシェなどのチューニングを手掛けたのち、1971年にフィアット社に買収される。傘下に入ってからは、フィアット内でアバルト131ラリーといったモータースポーツ車両の開発やそれにともなうレースやラリー活動を行っていたが、その後、事実上活動を休止する。しかし、2007年にフィアットのいちブランドとして復活。500をはじめとするフィアット車をベースにしたスペシャルモデルのブランドとなった。

ABARTH500C

ABARTH�PUNTO�EVO

LANCIA◎ランチア

今後は欧州だけのブランドにヴィンチェンツォ・ランチアによって1906年に創業。1955年に倒産の憂き目に遭うが、新しい経営者の元で一度は再建される。しかし、再び状況が悪化。1969年にフィアットに買収された。その後は、フィアットの高級車部門という位置づけになる。ランチアで有名なのはラリー。ストラトスなどで数多くのWRCタイトルを獲得した。日本にも、ガレーヂ伊太利亜やマツダの手により正規輸入されていたが、1998年以降は滞っている。クライスラーとキャラクターが被るため、このあとクライスラーと統合化が図られ、残念ながら、ランチア・ブランドは欧州のみでの展開となる予定だ。

LANCIA�YPSILON

LANCIA�DELTA

ALFA ROMEO◎アルファロメオ

スポーティ部門を担当1910年創業。会社はフランス・ダラック社のイタリア工場を買収する形でスタートする。1933年に国営化されるが、1986年にフォードからの買収を阻止するため、アニエリが傘下に収めることを決断。フィアットが100%出資する会社となった。社名はフィアット同様、ロンバルダ自動車製造株式会社という名称の頭文字を取っている。モータースポーツにも積極的に参加。とくに第二次世界大戦後のGP&F1での活躍は有名だ。フェラーリの創始者エンツォもかつてはアルファロメオのワークスドライバーだった。フィアットのスポーティ部門というのが現在のポジションに立つ。

ALFA�ROMEO�MiTO ALFA�ROMEO�GIULIETTA

1898年創業社の直系

FIAT S.p.A

100%出資

100%出資

100%出資

100%出資 100%出資

100%出資

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そんなことは百も承知の発言。こうなると駆け引きといったら聞こえはいいが、体のいい脅迫と受け取られても仕方ない。 このようなマルキオンネの行動は再建へ向けたふりかまわぬ行動に見える。しかし、すべては計算済みのこと。もちろん、そんなことは冷静に判断できる人ならお見通しだ。 なぜマルキオンネはそこまでやるのか。それは彼が立ち向かっているのはフィアットではなく、

実はアニエリだからではないだろうか。別にアニエリの霊と対決するといったオカルトな話をするつもりはない。フィアットには、いやフィアットという会社だけではない、従業員やそれを取り巻く環境や、そして長い間手に手を取り合ってきた政府のなかに、いまだアニエリ支配時代の名残が染み付いている。それを振り払おうと必死になっているような気がしてならない。クライスラーとの提携も、スケールメリットやフィアットの

アメリカ進出など得るものは大きいだろう。しかし、本当の目的はフィアット純潔の血を薄めることが目的のように思えて仕方ないのだ。 フィアットのことを調べれば調べるほど、ふたりのアニエリの影響力と、そして、その跡を受け継ぐことになったマルキオンネの強固なまでの政策が浮き彫りになった。形式だけではなく、それを作り出す内側が変わってこそはじめて、フィアットの新しい扉が開かれるのではないだろうか。

FIAT[フィアット大研究]

FIAT NORTH AMERICA LLC◎フィアット ノース アメリカ LLC

CHRYSLER GROUP◎クライスラー グループ

最も新しい5つの仲間2009年に破綻したのち、フィアット傘下に入る。事実上、アルファロメオやランチアなどと同じフィアット�グループ オートモービルズS.p.A.の一員だが、経営上はフィアット�ノース�アメリカLLCというフィアットとクライスラーで作った合弁会社がワンクッション入っている。ブランドは高

級志向のクライスラー、数多くの4WDを輩出しているジープ、スポーティ性を高めたダッジ、ライトからヘビーデユーティーまで幅広くトラックをラインナップに持つラム、クライスラー・ベースのチューンドカーを手掛けるモパーの5つから成り立っている。

FERRARI◎フェラーリ

泣く子も黙るスーパーカーブランド言わずもがなの世界を代表するスーパーカーブランド。創業は意外と新しく1947年。立ち上げたのはご存知の通り、エンツォ・フェラーリ。レース活動を行う資金を得るために市販車の製造・販売を開始したというのは有名な話だ。フェラーリから資金が投入されたのは1969年。50%株

式が譲渡された。ちなみに、現在は90%まで増資されている。フィアット傘下に入ったものの独自性は保たれ、今もなお、世界を驚愕させるスーパースポーツカーを作り続けている。

FERRARI�458SPIDER FERRARI�FF

MASERATI◎マセラティ

紆余曲折を経て1914年に創業された高級スポーツカー・メーカー。第二次世界大戦を挟み、数多くの著名なモデルを送り出すとともに、レースでも活躍を収めた。1965年にシトロエン傘下に入ったのち、プジョーと提携。その後、1975年にデ・トマソに買収され、1993年にはフィアット傘下に収まることになる。しかし、それだけでは終わらず、同じくフィアット傘下に収まるフェラーリの戦略にマセラティを組み込むべく、1997年にフェラーリ傘下に移籍。そして2005年、再びフィアットの元に戻ることになった。現在も1000万円オーバーの高級・高性能スポーツクーペ&セダンで生計を立てている。

MASERATI�QUATTROPORTE

MASERATI�GRANCABRIO

CHRYSLER�300C

JEEP�RUBICON

RAM1500

DODGE�CHALLENGER�SRT8�392

IVECO◎イヴェコ

働くクルマ大集合小型から大型までのトラックやバスを手掛ける商用車ブランド。1975年にいくつかの企業が合併してできた若い会社だ。小型トラックはフィアット・ブランドでも販売されている。2011年にイヴェコのほか、産業用車両や建設部門がフィアットS.p.A.から切り離されたフィアット・インダストリアルS.p.A.へと移行した。

産業用車両や建設部門がフィアットS.p.A.から切り離されたフィアット・インダストリアルS.p.A.へと移行した。

マルキオンネによって新しい扉は開かれるだろうか

FIAT S.p.A

IVECO�SERIES

100%出資

100%出資

53.5%出資

90%出資

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Europe

数字で知る、フィアットもっとも売れている国は地元イタリアではない!クライスラーを傘下に収め、さらなる規模の拡大を図るフィアット。現在の販売状況はどうなっているのだろうか。強い地域、弱い地域、売れてるモデル、元気のないモデル。販売台数からフィアットの現状を探ってみる。text:Kazuki Arai(新井一樹)

(注)同じ項目でも数値が異なるのはデータソースの違いによるものです。

2 009年に資本参加し、事実上、クライスラーを傘下に収めたフィアット。これによ

り、グローバルな販売台数は飛躍的に増え、2010年現在、フォードに次ぐ第7位。欧州でしのぎを削るプジョー&シトロエンのPSA連合を上回る数字を記録している。ひと昔前にもてはやされた400万台クラブには残念ながら及んでいないが、これだけの販売台数を記録する規模になれば、いろいろなスケールメリットも拡大するし、会社的にはひと段落といったところかもしれな

い。ただし、不安な一面もある。2010年の2009年に対する伸びが市場の平均と比べると鈍い。フィアット・ブランドに至ってはオペル&ヴォクゾールとともに数少ないマイナス成長を記録しているのだ。 それはフィアット・オートモビルズ・グループの地域別販売台数の表を見ればその原因がわかる。フィアットが販売台数の半分を稼ぐ主力市場は欧州。その欧州で大きく数字を落として

いるのがマイナスの要因だ。リーマンショック以降、現在の欧州市場が不安定なのは周知の事実。フィアットに限らず、欧州市場最強のフォルクスワーゲンですら2010年は前年割れを喫している。したがって、欧州での不振はフィアットだけが責められる事象ではない。 問題はそのマイナスをほかの市場でフォローできていないことだ。フィアットにとって欧州に次いで2番目に大きな市場であるブラジルではそこそこ稼げている。しかし、世界のメーカーがこぞって台数を稼ぐアメリカと中国市場をはじめ、意外と手をつけていない国が多いのだ。アメリカ市場はフィアット500を皮切りに、今後クライスラー・ブランドもフル活用しながら大きな伸びを見せるはずだから、このあと乞うご期待をといったところだろう。 となるとキモはやはり中国、さらにはインド、東南アジアといったアジア系でどう勢力を拡大するかというところだろう。しかし、中国への再上陸が決まるなど、準備は整いつつある。このあとフィアット・グループがどのような展開を見せていくか。今後の成長に大きな影響を与えるだけに、見逃せないところだ。

グループ・メーカー 2010年(単位:万台)

2009年(単位:万台)

前年比(%)

Toyota Toyota 752.8 698 +7.9Daihatsu 78.3 75.5 +3.7Hino 10.7 7.9 +35.6Total 841.8 781.3 +7.7

GM Chevrolet 427.1 351.7 +21,4Opel/Vauxhall 120.7 123.6 -2.4Wuling 114.9 100.1 +14.8GMC 44.7 35.3 +26.4Buick 71.9 55.9 +28.7 Cadillac 18.1 12.9 +40.3Holden 14.1 12.6 +11.6Daewoo 13 12.1 +7.0Jiefang 8.8 3.5 +153.1other 5.8 39.9 -85.5Total 839 747.7 +12.2

Volkswagen Volkswagen 502.4 425.5 +18.1Audi 132.1 118.3 +11.7Skoda 58.5 55.2 +6.0Seat 34.9 31.9 +9.4Total 727.8 631 +15.3

Renault/Nissan

Renault 262.6 230.9 +13.7Nissan 408.1 335.9 +21.5Total 670.6 566.8 +18.3

Hyundai-Kia Hyundai 361.2 310.6 +16.3Kia 208.9 165.2 +26.5Total 570.2 475.8 +19.8

Ford 552.4 486.6 +13.5

Fiat-Chrysler Fiat 222.2 227.8 -2.4Chrysler 151.6 131.8 +15.0Total 373.8 359.5 +4.0

Fiat Industrial 25.9 19.9 +29.9

PSA Peugeot 214.2 184.2 +16.3Citroen 146 134.6 +8.5Total 360.2 318.8 +13.0

Honda 355.5 339 +4.9Suzuki 258.9 230.9 +12.1Daimler 189.5 155.1 +22.2BMW 146.1 128.6 +13.6Mazda 128.6 116.1 +10.8Mitsubishi 107.8 90.7 +18.9Subaru 65.4 52.9 +23.6

0 200 400 600 800 1000

Subaru

Mitsubishi

Mazda

BMW

Daimler

Suzuki

Honda

PSA

Fiat-Chrysler

Ford

Hyundai-Kia

Renault/Nissan

Volkswagen

GM

Toyota

2009年

(万台)

2010年

■主要メーカー・グループのグローバル販売台数

World Wide世界販売台数ランキングでは好位置につける

■フィアット・オートモビルズ・グループの 地域別販売台数 (単位:千台)

2010年 2009年 前年対比

欧州(EU27+EFTA)

全体 1165.5 1304.5 89.3%

ドイツ 107.8 179.5 60.1%

イギリス 66.4 75.1 88.4%

フランス 120.9 114.8 105.3%

スペイン 37.3 25.2 148.0%

イタリア 625.6 721.9 86.7%

ポーランド 34.7 42.4 81.8%

その他 172.8 145.6 118.7%

南米ブラジル 761.4 749.5 101.6%

アルゼンチン 69.1 48 144.0%

その他 154.9 96.7 160.2%

トータル 2081.8 2150.7 96.8%

関連会社 140.5 126.9 110.7%

世界合計 2222.3 2277.6 97.6%注)フィアットS.p.A調べ、含まれるブレンド:フィアット、フィアット・プロフェッショナル、アルファロメオ、ランチア、アバルト

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EuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEurope

FIAT[フィアット大研究]

PANDA◎パンダ

実用車のベンチマークとして一斉を風靡したパンダが2011年のフランクフルトショーで3世代目に進化。基本的に2世代目の正常進化版となっている。

BRAVO◎ブラーヴォ

Cセグメントサイズのハッチバック。このサイズのフィアットの輸入が途絶えて久しいが、このクルマ日本には導入されない。ボディタイプは5ドアのみ。

CROMA◎クロマ

フィアットのフラッグシップモデル。初代はセダン風の5ドアだったが、2005年に復活した2代目はステーションワゴンとして登場している。

IDEA◎イデア

ひと世代前のプントをベースにしたモノスペース。ワンモーションのデザインが特徴的だ。全長が4m以下と非常にコンパクトに仕上がっている。

QUBO◎クーボ

PSAと共同開発したBセグメントサイズのフルゴネット。乗用版がクーボで、商用版はフィオリーノと呼ばれる。こちらも全長4m以下とコンパクトだ。

DOBLO◎ドブロ

カングーがライバルとなるCセグメントサイズのフルゴネット。クーボ同様、商用仕様の設定も有る。オペル・コンボはドブロのOEM供給バージョン。

MULTIPLA◎ムルティプラ

2列6名乗りという独特のシート配置を持つモノスペース。日本では導入が終了してしまったが、欧州ではいまだ販売が継続されている。

FREEMONT◎フリーモント

クライスラーからOEM供給を受けるクロスオーバー。元ネタはダッジ・ジャーニー。欧州には必須アイテムのディーゼル・エンジンも選べる。

SCUDO◎スクード

商用車ベースのピープルムーバー。日本で言うところのハイエースだ。全長5.1m、全幅1.9mとボディサイズは日本の基準からするとかなり大きい。

SEDICI◎セディッチ

スズキと共同開発したSUV風のコンパクトハッチバック。ご存知のとおり、スズキ版はSX4である。生産はハンガリーのマジャールスズキが担当。

■欧州で買えるフィアット

フ ィアットが販売台数の半分を稼ぐ欧州市場。成熟し切ったある意味で難しいマー

ケットだ。さらにリーマンショック以降、ギリシャの経済問題なども重なって状況はあまり明るくない。フィアットも残念ながら、その影響をもろに受けてしまっているメーカーのひとつだ。 2010年の販売台数はほかのメーカーがなんとか前年比をキープしたのに対して約10%下げて116万台と14万台ほど減らしてしまった。その結果、ベスト10に入ることができず、下位に沈んでしまっている。とくに厳しかったのがドイツ。ここでは多くのメーカーが数字を落としているが、フィアットはそれよりもさらに上を行ってしまった。

 その影響はモデル別ランキングにも表れている。上位勢はBとCの両セグメントをランクインさせているが、フィアットでベストテン入りしたのはBセグメントのプント系だけ。しかも、こちらも大きく数字を落としているのだ。プントのがんばりも欲しいが、さらにもう1台、ベストテン入りできるクルマが出てくると、面白くなるに違いない。

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン 1,536,473 1,642,114 93.6%

ルノー 1,138,180 1,088,736 104.5%

フォード 1,118,089 1,289,599 86.7%

プジョー 1,002,956 990,276 101.3%

オペル/ヴォクゾール 998,692 1,057,579 94.4%

シトロエン 835,114 866,483 96.4%

フィアット 823,097 1,010,696 81.4%

アウディ 623,510 612,378 101.8%

BMW 608,502 571,688 106.4%

メルセデス・ベンツ 590,412 588,100 100.4%

注)マークラインズ調べ

モデル 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン・ゴルフ 492,556 571,075 86.3%

オペル/ヴォグゾール・コルサ 317,950 351,858 90.4%

ルノー・クリオ 338,245 313,102 108.0%

フォルクスワーゲン・ポロ 354,068 283,069 125.1%

プジョー207 305,468 367,474 83.1%

フォード・フィエスタ 402,207 472,158 85.2%

オペル/ヴォグゾール・アストラ 291,219 275,906 105.6%

フィアット・プント 257,645 324,125 79.5%

ルノー・メガーヌ 260,542 231,015 112.8%

シトロエンC3 224,953 167,400 134.4%

注)マークラインズ調べ

■欧州市場ブランド別ランキング

■欧州市場モデル別ランキング

Europeプント以外に稼げるクルマが欲しい

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EuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEuropeEurope東 欧圏の国、ポーランド。フィアットはここ

にパンダや500を生産する工場を持つ。ポーランドの市場規模は年間30~40万台程度を推移する状況だ。 その地に工場を持つメーカーは強いという慣例どおり、フィアットはポーランドで4位という強さを見せている。ただ、ここでもやはり大きく前年割れしているのが気になるところだ。 1位は東欧圏チェコの自動車メーカーのシュコ

ている。しかも、アルファロメオも3強の直後に付け、隙あらばという状況なのだ。日本に居ると想像できないけれど、これがイタリアなのである。 モデル別でもその勢いは止まらない。フィアット単体で4車種、グループ全体では7車種がベスト20内にランクインしている。しかも、プント・エヴォ/グランデプントと併売されている先代モデルのプントを合わせた連合軍が1位に輝くほか、パンダが2位、500が4位と3車種が上位に食い込む健闘をみせているのだ。 フィアット内では、2009年にモデルチェンジしたドブロとすでに3年目へと突入したフィオリーノというカングーと同じ乗用タイプフルゴネットの躍進が光っている。

ダ。2位にはシュコダの親会社であるフォルクスワーゲンが入り、グループで1-2フィニッシュを決めている。 また西欧圏とは異なり、日本のメーカーが強さを見せるのも特徴だ。5位に食い込むトヨタを筆頭に日産、ホンダ、三菱、スズキがベスト15にランクインする。これまた日本に居ると知らない事実。覚えておくといいことあるかもしれませんよ。

ブランド 2010年 2009年 前年対比

シュコダ 37785 37944 99.6%

フォルクスワーゲン 27868 26640 104.6%

フォード 26880 26879 100.0%

フィアット 25863 31740 81.5%

トヨタ 25119 27821 90.3%

オペル 24770 22101 112.1%

ルノー 18755 17292 108.5%

キア 16429 14059 116.9%

ヒュンダイ 15076 12545 120.2%

プジョー 14346 12619 113.7%

シトロエン 13484 9618 140.2%

日産 12161 10009 121.5%

ホンダ 10900 12039 90.5%

三菱 9395 8468 110.9%

スズキ 7051 7819 90.2%

注)マークラインズ調べ、アバルトはフィアットに含む

■ポーランド市場ブランド別ランキング

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フィアット 448288 544521 82.3%

フォード 181926 211970 85.8%

フォルクスワーゲン 135509 125097 108.3%

オペル 126882 127017 99.9%

シトロエン 105861 110745 95.6%

ルノー 105401 91900 114.7%

プジョー 105246 113264 92.9%

ランチア 86944 102573 84.8%

トヨタ 78708 96179 81.8%

アウディ 60004 60263 99.6%

日産 54762 55577 98.5%

メルセデスベンツ 53956 54914 98.3%

BMW 53890 55321 97.4%

アルファロメオ 51901 55292 93.9%

ヒュンダイ 36138 38828 93.1%

注)マークラインズ調べ、アバルトはフィアットに含む

■イタリア市場ブランド別ランキング

モデル 2010年 2009年 前年対比

フィアット・プント 154703 181477 85.2%

フィアット・パンダ 138670 171887 80.7%

フォード・フィエスタ/フュージョン 103717 - -

フィアット500 65542 76727 85.4%

フォルクスワーゲン・ゴルフ 51813 - -

オペル・コルサ 51391 52267 98.3%

シトロエンC3 48721 44957 108.4%

フォルクスワーゲン・ポロ 48306 28519 169.4%

ランチア・イプシロン 46531 50855 91.5%

ルノー・クリオ(ルーテシア) 40495 30351 133.4%

トヨタ・ヤリス(ヴィッツ) 35457 42721 83.0%

日産キャッシュカイ(デュアリス) 31866 25772 123.6%

プジョー207 29389 45930 64.0%

フォード・フォーカス 29072 40587 71.6%

オペル・アストラ 26395 20708 127.5%

スマート・フォーツー 26043 29117 89.4%

アルファロメオ・ミト 25931 29299 88.5%

フィアット・ブラーボ 24767 38977 63.5%

ランチア・ムーザ 22434 29587 75.8%

ルノー・メガーヌ 21805 17056 127.8%

注)マークラインズ調べ

■イタリア市場モデル別ランキング

モデル 2010年 2009年 前年対比

プント 154703 181477 85.2%

パンダ 138670 171887 80.7%

500 65542 76727 85.4%

ブラーボ 24767 38977 63.5%

フィオリーノ/クーボ 15750 12958 121.5%

セディッチ 10312 12287 83.9%

ドブロ 8611 5469 157.5%

クロマ 8064 11182 72.1%

ムルティプラ 8045 9513 84.6%

セイチェント 7350 - -

イデア 5858 9037 64.8%

ウリッセ 616 1351 45.6%

注)マークラインズ調べ

■フィアット・モデル別販売台数(イタリア)

Italyさすがは地元、フィアットの独壇場

Poland日本メーカーとともに大活躍

地 元のメーカーが強いのはどこの市場も同じだが、イタリアでは地元メーカーがほ

ぼフィアット・グループのみで独占しているという状況であって、さらなる強さを見せている。ブランド別ではフィアットがトップなのは当たり前だが、注目はランチア。なんとプレミアムブランドの3強、アウディ、メルセデスベンツ、BMWを抑え

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AsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsia

か つては南京汽車と合弁会社を設立していたフィアットだが、南京汽車が上海汽

車の傘下に収まったのを機に、残念ながら撤退を余儀なくされていた。しかし、敏腕のマルキオンネ氏が今や世界一大きなマーケットを放っておくわけはなく、2009年にトヨタやフォルクスワーゲンとも手を組んでいる広州汽車とともに合弁会社を設立することを決定。再び中国市場へ打って出ることになった。なお、工場は長沙市に建設中で、2012年には生産

を開始する予定だ。 それにともない、しばらくお休みしていた中国のモーターショーにも再登場。今年の上海モーターショーでブースを構え、販売を予定している500を飾り、販売計画を発表するなど、復活をアピールしていた。若干回り道してしまった感は強いが、勝負はこれから。多くのメーカーが中国でさらなる成長をみせているだけに、中国を足掛かりにしたフィアットの成長への期待も高まる。

中 国と比べると規模的にはまだまだだが、人口を考えれば、インドの自動車市場の

ポテンシャルは計り知れない。多くのメーカーがこぞって本気を出し始めているのも十分理解できる。もちろんフィアットもやる気満 だ々。2012年に新しいコンパクトカーの導入を発表するなど、中国同様準備が急速に進んでいる。販売ランキング的にはギリギリでトップ10入りを果たすフィアットだが、すでに現地工場を構えているなど、その体制的は販売ランキングでひとつ上を行くフォルクスワーゲンなどよりも整っていると言えるのだ。 また、小さくて安価なモデルを作りなれている

のもフィアットにとっては強みになるだろう。何せプント・エヴォが高級車として通用する国である。求められているのはフィアットが得意とするコンパクトカーだからだ。 中国とともにインドへの本格進出も開始される2012年。来年はフィアットにとって大きなターニングポイントになりそうだ。

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン 1474734 1121840 131.5%

上汽通用五菱汽車 1057804 916808 115.4%

ヒュンダイ 784447 621184 126.3%

トヨタ 780467 633506 123.2%

重慶長安汽車 709968 518494 136.9%

奇瑞汽車 674774 500303 134.9%

日産 672669 518968 129.6%

ホンダ 671640 604523 111.1%

ビュイック 543512 440092 123.5%

シボレー 541141 325206 166.4%

注)マークラインズ調べ

ブランド 2010年 2009年 前年対比

スズキ 1065732 836886 127.3%

ヒュンダイ 356717 289863 123.1%

タタ 343695 260137 132.1%

マヒンドラ&マヒンドラ 164496 143605 114.5%

シボレー 110361 69071 159.8%

フォード 83887 29452 284.8%

トヨタ 74762 54320 137.6%

ホンダ 62872 62338 100.9%

フォルクスワーゲン 32256 1671 1930.3%

フィアット 21950 22791 96.3%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

■中国市場ブランド別ランキング

■インド市場ブランド別ランキング

モデル 2010年 2009年 前年対比

BYD・F3 263947 290963 90.7%

トヨタ・カローラ 254796 214568 118.7%

フォルクスワーゲン・ラビダ 251615 146455 171.8%

ヒュンダイ・エラントラ 233344 239449 97.5%

フォルクスワーゲン・ジェッタ 224523 224857 99.9%

ビュイック・エクセル 222500 241153 92.3%

天津一汽・夏利 198653 147531 134.7%

シボレー・クルーズ 187752 92196 203.6%

フォルクスワーゲン・ボーラ 172537 124357 138.7%

フォード・フォーカス 172270 134360 128.2%

注)マークラインズ調べ

■中国市場モデル別ランキング

■インドで買えるフィアット

China反撃開始まで秒読み段階

India来年が飛躍の年

GRANDE PUNTO◎グランデプント

欧州や日本ではエヴォに進化したが、インドをはじめとする新興国では、グランデプントがまだまだ現役だ。基本的な仕様は欧州モデルと変わらない。

LINEA◎リネア

グランデプント・ベースにした新興国向けの3ボックスセダン。彼らの地ではこれがフラッグシップセダンだ。500Lと広大なトランクを持つ。

FIAT[フィアット大研究]

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NorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorthNorth America America America America America America America America America America America America America America America America America America America America America

AsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsiaAsia

クライスラーとの提携で受ける恩恵のひとつがフィアットのアメリカ市場への復活

である。1980年代にアメリカ市場から撤退してから30年余年。かつてアメリカの趣向に合いそうなアルファロメオで復活を試みたこともあるが、残念ながら実現に至ることはなかった。しかし、今度の復活は間違いないだろう。 すでに500の販売は開始しているが、このあとフィアット・ブランドでコンパクトカーを、またアルファロメオ・ブランドでミドルクラスのモデル

を導入し、さらなる攻勢を掛ける予定だ。さらに、クライスラー・ブランドと統合されるランチア車もクライスラーのバッジを付けて販売される。 大きなクルマがもてはやされるアメリカは、フィアットにとって得意な地ではないかもしれない。しかし、地元のクライスラーグループをはじめ、多彩なブランドを巧みに操ることでアメリカの地にフィアットの名を知らしめることはけっして不可能ではないはずだ。

USA念願のアメリカ市場に復活

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フォード 1726359 1419436 121.6%

シボレー 1563963 1338816 116.8%

トヨタ 1488588 1496213 99.5%

ホンダ 1096874 1045061 105.0%

日産 805159 689014 116.9%

ヒュンダイ 538228 435064 123.7%

ダッジ 591150 518484 114.0%

キア 356268 300063 118.7%

GMC 333640 255234 130.7%

ジープ 291138 231701 125.7%

スバル 261348 210722 124.0%

フォルクスワーゲン 236156 194381 121.5%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

■アメリカ市場ブランド別ランキング

モデル 2010年 2009年 前年対比

フォードFシリーズ 528349 413625 127.7%

シボレー・シルバラード 370135 316544 116.9%

トヨタ・カムリ 327804 356824 91.9%

ホンダ・アコード 311381 290056 107.4%

トヨタ・カローラ 266082 296874 89.6%

ホンダ・シビック 260218 259722 100.2%

日産アルティマ 229263 203568 112.6%

フォード・フュージョン 219219 180671 121.3%

ホンダCR-V 203714 191214 106.5%

ダッジ・ラム 199652 177268 112.6%

シボレー・マリブ 198770 161568 123.0%

ヒュンダイ・ソナタ 196623 120028 163.8%

フォード・エスケープ 191026 173044 110.4%

フォード・フォーカス 172421 160433 107.5%

シボレー・インパラ 172078 165565 103.9%

トヨタRAV4 170877 149088 114.6%

シボレー・エクイノックス 149979 86148 174.1%

トヨタ・プリウス 140928 139682 100.9%

ヒュンダイ・エラントラ 132246 103269 128.1%

スバル・レガシィ 131873 86330 152.8%

GMCシエラ 129794 111842 116.1%

フォルクスワーゲン・ジェッタ 123213 108427 113.6%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

■アメリカ市場モデル別ランキング

5 00の導入で見事、日本市場での復活を遂げたフィアット。500が3年目を迎えた

2010年もその勢いに衰えは見えない。モデル末期を迎えたパンダの台数が減るなどマイナス要素がないわけでもないが、平均値を超える高い伸びを示している。 フィアットともにフィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパンが手掛けるアルファロメオは残念ながら、主力モデルだった159や147をはじめ多くのモデルが終了するという大きな逆風により、大幅に数字を下げてしまった。しかし、2011年はほぼミトだけという苦しい状況ながらプラス

に転じるなど、復活の兆しも見え始めている。来年早 に々ジュリエッタが加わるので、さらなる飛躍するのは間違いないだろう。 アバルトも堅調だ。本家の伸びには及ばないものの、確実に台数を増やし、アバルトの存在を確固たるモノにしている。 モデル別ではやはり500の健闘が光る。3年目にして前年比40%アップという数字はある意味驚異的と言っていいだろう。ブランドとしては減少に転じてしまったアルファロメオだが、ミト単体は25%アップ。こちらも順調に台数を伸ばしている。

Japan500の人気は驚異的

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン 46,704 37,925 123.1%

BMW 32,426 29,089 111.5%

メルセデス・ベンツ 30,920 28,739 107.6%

アウディ 16,854 16,171 104.2%

ミニ 11,338 11,002 103.1%

ボルボ 7,767 6,213 125.0%

プジョー 6,021 4,365 137.9%

フィアット 5,562 4,345 128.0%

ポルシェ 3,335 3,214 103.8%

ルノー 2,536 1,755 144.5%

フォード 2,507 2,525 99.3%

シトロエン 2,402 1,397 171.9%

ジープ 1,877 1,010 185.8%

アルファロメオ 1,816 2,283 79.5%

ジャガー 1,138 1,257 90.5%

スマート 1,101 642 171.5%

クライスラー 775 877 88.4%

ランドローバー 727 529 137.4%

ダッジ 712 1,087 65.5%

シボレー 694 556 124.8%

キャデラック 646 633 102.1%

フェラーリ 493 548 90.0%

ロータス 312 247 126.3%

マセラティ 287 331 86.7%

注)JAIA調べ

■日本輸入車市場ブランド別ランキング

ブランド モデル 2010年 2090年 前年対比

フィアット

500 4280 3053 140.2%

パンダ 272 345 78.8%

プント・エヴォ/グランデ・プント 264 235 112.3%

トータル 4816 3633 132.6%

アルファロメオ

ミト 864 691 125.0%

その他 917 1556 58.9%

トータル 1781 2247 79.3%

アバルト

500 482 394 122.3%

プント・エヴォ/グランデ・プント 75 124 60.5%

トータル 557 518 107.5%

トータル 7154 6398 111.8%

注)フィアット・グループ・オートモビルズ調べ

■日本市場モデル別ランキング

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Page 14: FIAT Sergio Marchionne - AUTOCAR JAPAN...Sergio Marchionne セルジオ・マルキオンネ FIAT S.p.A.および フィアット グループ オートモビルズS.p.A CEO 1952年にイタリアのキエーティで生まれ、カナダとイタ

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SouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouthSouth America

世 界第4位という大きなマーケットを持つブラジル。フィアットはこの南米の地で1970

年代に現地工場を設立するなど、早くから根を下ろしている。その甲斐あって、350万台を超える重要なマーケットでフィアットは栄えある第1位に輝いているのだ。その数はなんと地元のイタリアを上回り、フィアットのなかで販売台数が一番多い国になっている。さすがに欧州全体の数字には及ばないものの、フィアット繁栄の大きな原動力になっているのは疑いないところだ。 モデル別ランキングでは、残念ながらトップの座はライバルのフォルクスワーゲンに奪われてしまっている。その代わり、トップ10には2位のウーノを筆頭にパリオ、ストラーダ、シエナの4車種がランクイン。これはフォルクスワーゲンの3車種を上回る数字だ。エースのゴル1台でガッツリ稼ぐフォルクスワーゲンに対して、フィアットの裾野の広さを表した結果と言えるだろう。

規 模はけっして大きくないが、アルゼンチンも成長が見込める市場。ポーランド同

様、日本のメーカーが健闘している。 ブラジル同様、アルゼンチンでも現地生産を行っているフィアット。しかも、操業開始時期はブラジルよりも早かった。しかし、アルゼンチン市場では残念ながら、ブランド別ランキングで1位を獲得できていない。もちろん、現地生産の早い遅いがランキングを決めるわけではないのだが……。 1位はゲットしたのはフィアットの宿敵フォルクスワーゲン。2位と3位はアメリカ勢のシボレーと

フォードが分け合う。販売台数ではライバルに負けたフィアットだが、伸び率ではフォルクスワーゲンを上回っている。約32%アップはトップ5のなかでは2番目にいい数字だ。

Brasilフィアットがナンバーワン

Argentina高い成長率に期待大

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン 125659 102311 122.8%

シボレー 101399 65314 155.2%

フォード 78161 64718 120.8%

フィアット 65429 49671 131.7%

プジョー 55642 45774 121.6%

ルノー 74261 55909 132.8%

トヨタ 31092 10915 284.9%

ホンダ 20677 15085 137.1%

シトロエン 19111 15505 123.3%

日産 10049 4071 246.8%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

ブランド 2010年 2009年 前年対比

フィアット 767690 749636 102.4%

フォルクスワーゲン 714318 693345 103.0%

シボレー 651558 601294 108.4%

フォード 329055 316483 104.0%

ホンダ 130267 128079 101.7%

ヒュンダイ 111310 77846 143.0%

ダチア 103358 78988 130.9%

トヨタ 98389 97773 100.6%

プジョー 90353 81689 110.6%

シトロエン 86654 69821 124.1%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

■ブラジル市場ブランド別ランキング

■アルゼンチン市場ブランド別ランキング

モデル 2010年 2009年 前年対比

フォルクスワーゲン・ゴル 297967 307568 96.9%

フィアット・ウーノ 236310 172562 136.9%

フォルクスワーゲン・ルポ/フォックス 150481 132227 113.8%

シボレー・クラシック 147909 108547 136.3%

シボレー・セルタ 132838 142266 93.4%

フォード・フィエスタ 131898 124218 106.2%

フィアット・パリオ 130877 208945 62.6%

フィアット・ストラーダ 122652 90800 135.1%

フィアット・シエナ 119790 118048 101.5%

フォルクスワーゲン・ヴォヤージュ 85145 87058 97.8%

注)マークラインズ調べ。ライトトラックを含む

■ブラジル市場モデル別ランキング

FIAT[フィアット大研究]

■ブラジルで買えるフィアット

PALIO◎パリオ

新興国向けに独自開発されたBセグメントサイズのハッチバック、パリオが2世代目へと進化。11月に正式発表されたばかりのニューモデルだ。

SIENA◎シエナ

先代パリオ・ベースのノッチバックセダン。3ボックスだが、全長は4.1mしかない。エクステリアにクロームをあしらうことで高級化を図っている。

UNO◎ウーノ

ブラジルでの廉価モデル、ミッレの後継車となるAセグメントハッチバック。デビューは2010年。エクステリアは新型パンダに良く似ている。

STRADA◎ストラーダ

こちらもシエナ同様、先代パリオをベースに仕立てられたピックアップトラック。商用としてだけでなく、乗用にも使われる人気モデルだ。

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(    )フィアット グループ オートモービルズ ジャパン(    )フィアット グループ オートモービルズ ジャパン代表取締役社長 兼 CEO(    )代表取締役社長 兼 CEO

ポンタス・ヘグストロム氏に訊く(    )ポンタス・ヘグストロム氏に訊く

日本におけるフィアット・ブランドは不思議な存在である。ラインナップはライバルよ

り少ないし、販売網が脆弱な時期に嫌な思いをしたユーザーも居る。それにも関わらず、輸入車販売台数ランキングでは常に上位に食い込むとともに、実用車でありながらクルマに強い思い入れを持つコアな層から絶大なる支持を得ているのだ。果たして、その秘密はどこにあるのか。「感情に訴える商品を市場に送り出しているからではないでしょうか。つまらないクルマではないクルマを作り続けているのがフィアットの強みです。フィアットはデザイン重視のライフスタイルブランドという位置付けにあります。商品やデザインは日々 変化していますが、デザインを重視しているブランドだということに揺るぎはありません。また洗練された最新の技術を持っていることも強みだと思います」 イタリア本社にマルキオンネ氏が就任してからフィアットは大きく変わりつつある。その影響は

日本にも及んでいるのだろうか。「フィアット全体はかなり大きな進化を遂げています。10年ほど前は、ストレスが多く、悶 と々したひどい状況でしたが、マルキオンネ氏の入社により会社はかなり大きな変革を遂げました。1990年代に日産がドラスティックに変化したのと同じくらいインパクトを持つ変革が行われたのです。その結果、5、6年前から大きな成功をもたらしています。新しい商品を生み出すことがで、財務状況も格段に改善されました。またクライスラーとの統合も徐 に々進んでいます。商品が増え、新しい技術を入手できるなどチャンスが広がりました。また、販売地域の拡大も大きなメリットをもたらしています。フィアットはこれまで北米に進出していませんでしたし、クライスラーは欧州での存在が弱かった。それが大きく改善される見込みです。また、生産規模が拡大したことで購買力が高まるのもメリットのひとつでしょう。グループ全体で購買することで価格が最適化

でき、今よりもさらにお求めやすい商品をユーザーに届けることができるようになるからです。お互いの強みを生かして上手に補完し合っていると言えるのではないでしょうか」

復活のきっかけはやはり500 近年、日本ではアルファロメオの躍進が著しかった。しかし、500の登場をきっかけに再び脚光が集まり、500が今やフィアットの日本におけ

なぜ、フィアットは日本で愛されているのか?

日本の輸入車市場で毎年のようにトップテンに入っているフィアット。導入されているラインナップから考えれば、その頑張りはかなりのものだ。

しかも、クルマ好きのコアなファンからの支持も多い。果たして、フィアットが愛されている秘密はどこにあるのか?

日本で指揮を執るポンタス・ヘグストロム社長にその秘密を伺ってみた。text:Kazuki Arai(新井一樹) photo:Yasuhiko Sato(佐藤靖彦)

取材協力:フィアット グループ オートモービルズ ジャパン

キレイ好きということで、机の上に置かれているものは最小限。一方でプリンターを脇に設置するなど機能面への配慮も怠っていない。

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ポンタス・ヘグストロムフィアット グループ オートモービルズ ジャパン代表取締役社長 兼 CEO

18年間自動車産業に携わったのち、2008年11月に代表取締役社長 兼 CEOに就任。フィアット以前はGMアジア・パシフィック・ジャパンで中国でのサーブ・ブランド展開のスタートに携わったほか、欧州GMでもサーブのエクスポートダイレクターとして手腕を発揮していた。日本でサーブ・ブランドの統括を行なうなど、日本市場への造詣も深い。

る重要な牽引役となりつつある。「500は2008年に欧州以外の地域では最も早く導入されました。500の販売が再び日本でフィアットが注目される大きなきっかけになったのは間違いありません。国産車からの買い替えや初めてクルマを購入する方が多く、今までの輸入車ファンだけでない幅広い層の心を掴めたと思います。最初はかわいらしいからとか小さいからという理由で購入する人が多かったのですが、現在は、実用性や安全性、燃費を含む経済性の高さに興味を示す方が増えました。これは500の本質がお分かりいただけた証だと思います」フィアットとともに絶好調なのがアバルト。導入2年目の2010年の販売台数が500台だったのに対し、今年は50%アップで推移している。「アバルトは非常に好調です。最も若いブランドで、ディーラーが4店舗とネットワークが少ないにも関わらず、市場の伸びよりも大幅に成長しています。グループにとってアバルトは重要なブランドになりました。来年もニューモデルを出す予定ですし、今後も売り上げに大きく貢献してくれるのは間違いないでしょう。大切なダイヤモンドのようなブランドです」

アルファロメオは大改革の真っ最中 フィアットやアバルトが高い注目を浴びるなか、一時代を築いたアルファロメオは逆に、159や147の販売も終了し、現在購入できるのはミトだけという寂しい状況にある。「フィアット・グループの変革のなかで最も大きく変わったのがアルファロメオです。それにともなう商品の入れ替えにより、現在はラインナップが引き締まった状態になってしまいました。それにも関わらず、日本における2011年のアルファロメオの販売は大きく伸びており、日本で愛されていることを実感しています。今後は、8Cコンペティツォーネを新しいアルファロメオがシンボルに据えて開発したニューモデルが続々登場することになるでしょう。日本では来年早 に々ジュリエッタを導入します。その後も、順次ラインナップを拡充する予定です。そのなかには、今年お披露目された4Cも含まれます。1万台の限定プロジェクトで8割がアメリカ向けとなり、残り2割を欧州と日本を含むアジアで販売されることになるでしょう。アルファロメオは今後、ジュリエッタと4Cのように、主流となる商品とシンボルになる商品の両方を送り出すという戦略をとり続けます」

 クライスラーとの統合によって一番影響を受けたのがランチアだ。果たしてランチアはどうなるのか、日本への導入はあるのだろうか。「日本への導入計画はありません。なぜなら、ランチアとクライスラーは統合されるからです。ランチアは欧州だけのブランドとなり、ほかの地域はすべてクライスラー車として販売されます。」

年間1万台は通過点 今年の始め、年間1万台という販売目標を掲げたものの、パーツ供給の遅れによるジュリエッタの発売延期の影響でその達成は難しくなった。今後の展開はどうなるのだろうか。「来年は確実に年間1万台を達成します。それは最低限の目標です。自分たちではもっと高いハードルも用意しています。販売増にともないディーラーの強化を考えていますが、現在の74店舗を闇雲に増やす計画はありません。来年は10%程度新しいディーラーを出店しますが、いずれにせよ、サービスの維持やディーラーの利益を考えながらということになります」 導入4年目に突入しながらもいまだに好調な500の販売で順風満帆なフィアット、飛ぶ取り落とす勢いのアバルト、ラインナップが減って行くなかミトの奮起で業界平均値よりを上回る伸び

を見せるアルファロメオ。たしかに、この状況をみればポンタス社長の鼻息が荒くなるのもわかる。逆に言うと、今が体力をつける時期だろう。サービス体制の強化など既存のユーザーケアは必須だが、アルファロメオ4Cだけに止まらず可能な限り、ラインナップの拡充にもトライして欲しい。もちろん闇雲にラインナップを増やすのはどうかと思うが、カングーで新たな活路を見出したルノーの例もある。そこにはフィアットとその仲間たちを愛する新しいユーザーたちが待っているはずだから。

なぜ、フィアットは日本で愛されているのか? 最初から最後まで、終始質問に対して実直に答えていたポンタス社長。イタリアン・ジョブという言葉はこの人には当てはまらない。

FIAT[フィアット大研究]

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195万円から328万円まで

今、日本で買えるフィアット日本法人のフィアット グループ オートモービル ジャパンはフィアットのほか、アバルトとアルファロメオの計3つのブランドを販売する。現在の主力車種はフィアット500だが、アバルトの健闘も著しい。さらに、残念ながら現在は1モデルのアルファロメオも来年早々には待望のニューモデルが加わる予定だ。text:Kazuki Arai(新井一樹)

右ハンドル+2ペダルMTの組み合わせからわかるとおり、アバルトの本格的な走りを堪能するというよりは、アバルトの世界観を楽しむモデル。オープンエアが一緒に味わえるのも魅力だ。中身は基本的にハッチバックと同じだが、最高出力が5ps高く、最大トルク発生回転数が低くなるなどエンジン特性が若干異なる。

ここに注目!・500Cのオープンエアにアバルトマジックをミックス・アバルト化は基本的にハッチバック・モデルに順ずる・右ハンドル+2ペダルMTのみ、MTや左ハンはナシ

500C◎500 C

339万円

アバルト500にハンドリング性能で勝るとの呼び声高いアバルト・プント・エヴォ。車格は上だし、高性能なパワートレインが与えられているにも関わらず、アバルト500よりも価格が安い。アバルトの真髄を味わいたいなら、アバルト500よりもオススメかも。10月に待望のエッセエッセKONIキットが設定された。

ここに注目!・アバルト復活の第1弾のプントがマルチエアを得て進化・1.4直4ターボは163psの高出力仕様、6MTとの組合せ・弟分のアバルト500より10万円も安いお値打ち価格

PUNTO EVO◎プント エヴォ

289万円

アバルトマジックでかわいいチンクがスパルタンなスポーティモデルに大変身。1110kgの車重に135psのパワーだから、その走りは推して知るべし。見た目だけでなく、エンジン、シャシーに至るまでアバルトのノウハウがたくさん詰まった本物のホットハッチだ。もちろんエッセエッセ・キットでバージョンアップが可能。

ここに注目!・1.4直4ターボ搭載、最高出力はツインエア+50psの135ps・エアロ、バケットシートなど内外装にアバルト専用パーツ多数・電制擬似LSD、TTC採用で強力なトラクション性能を確保

500◎500

299万円

ABARTH◎アバルト

アバルトをさらに過激にするオプションキット。エンジンだけでなく足回りも含むのでバランスを崩すことなく全体のバージョンが可能だ。プント用はダンパーがKONI製のエッセエッセKONIキットとなる。現在は500とプント用のみだが、追って500C用も用意される予定。

ここに注目!・アバルトらしさを高めるパッケージオプション・EUCと吸気系の変更でエンジン出力もアップ・専用サスとブレーキのほか、タイヤサイズも拡大

esseesse◎エッセエッセ

46.2万 ~ 67.8万円

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ミニ・カブリオレ対抗のオープンエア。熟慮の結果、フルオープンではなくあえてこのスタイルにしたと思うが、実用性を失うことなく手軽にオープンエアを楽しめるという点でひとつの正解を示したと言える。通常モデルより30万円ほど高いが、その甲斐は十分ある。ルーフ開放時は後方視界が減るのでトバす方は要注意。

ここに注目!・サンルーフ以上、カブリオレ未満のオープンエア仕様・ラゲッジスペースが若干小さい以外は実用性に遜色なし・ハッチバック同様、1.2ℓと0.9ℓのツインエアの2種類

500C◎500C

239万 ~ 279万円

イタリア統一150周年とグッチ創設90周年を記念したコラボモデル。フラウの本革シートが備わるインテリアは色使いを含めてオシャレなグッチワールドが広がる。シートベルトも緑と赤のストライプだ。グッチウェブを配したエクステリアは思いのほか派手なので、乗る方もオシャレしないとクルマに負ける可能性大。

ここに注目!・イタリアのグッチを全身にまとったオシャレな限定モデル・外観のストライプほか、内装もグッチでドレスアップ・黒と白の2色、1.2ℓのみだがオープンの500Cも選べる

500 BY GUCCI◎500 バイ グッチ

260万 ~ 294万円

気が付いたら日本で買える4/5ドアのフィアットはプント・エヴォだけになっていた。Bセグメントとしてはかなり高い実用性を持つが、もう少し大きい5ドアが欲しいという方は、来年早々にアルファロメオから登場する新型車までしばしお待ちを。走りを楽しみたいならパドルシフトが備わる上級グレードがオススメ。

ここに注目!・今日本で唯一のフィアット系5ドア、ライバルはVWポロ・アイドルストップ機能付き1.4直4+2ペダル5MTのみ・上級グレードはパドルシフトや幅広タイヤで走りも差別化

PUNTO EVO◎プント エヴォ

205万 ~ 230万円

プント・ベースに開発されたコンパクト・アルファ。小さいけれどしっかりアルファロメオ・クオリティに仕立てられている。マルチエア・エンジンやデュアルクラッチといった先進技術がてんこ盛りなのもトピック。グレードは全部で3種類。MT仕様の高性能グレードは普及版の135psから170psへと高出力化も図られている。

ここに注目!・新世代デザイン仕立てのアルファ初のBセグメント・最新エンジンの1.4直4ターボ・マルチエアを搭載・ATモデルはデュアルクラッチ式6速のDCTを採用

MiTO◎ミト

278万 ~ 328万円

2007年7月のヌオーバ500生誕50周年に復活した3世代目。最大の魅力は愛嬌のある外観と内装のデザインだが、全長3.5m、全幅1.6mというコンパクトなボディらしかならぬ高い実用性も見逃せないポイントだ。エンジンは1.2直4と0.9直2ターボのツインエアの2種類で、どちらもアイドルストップ機能付きの環境対応型。

ここに注目!・ヌオーバ500を彷彿させるポップなエクステリア・環境性能に優れるツインエアで伝統の2気筒復活・かわいいだけじゃなく、広い室内など実用性も高い

500◎500

195万 ~ 245万円

FIAT◎フィアット

ALFAROMEO◎アルファロメオ

FIAT[フィアット大研究]

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「フィアットって、どこで売ってるんですか?」フィアット・ディーラーCI再構築欲しいものがあれば、どんな困難も乗り越えられる。実は、そんな奇特な人はそれほど多くない。いくら欲しいと思っていても、売っているところが見つからなければほとんどの人は買うのを諦めるか、別のものを探すはず。実は、フィアットもそんな危うい状況に遭遇していたのである。text:Kazuki Arai(新井一樹) photo:Hideyuki Miyakado(宮門秀行)取材協力:フィアット世田谷、FIAT CAFFE

タイトルの言葉は実際にフィアットへ寄せられた問い合わせである。「そりゃ、トヨ

タみたいに日本全国どこにでもあるわけじゃないからな」と思われる方がいらっしゃるかもしれないが、実はそんな簡単な話ではない。いや、実は簡単な話なのだが、この問い掛けを生んだワケをしっかりと把握しないとフィアットブランドの存亡に関わる一大事になりかねなかったのだ。 ときは1990年頃、フィアット グループ オートモービルズ ジャパンの前身であるフィアット アンド アルファロメオ ジャパンが輸入元だったときまで遡る。当事、フィアットとアルファロメオの販売はお互い仲良く1000~2000台の販売台数を記録していた。ところが1998年、アルファ156が日本へ導入されると状況が変わる。ようやく、どちらのブランドも販売台数は3000台を超えるまでに成長していたが、2000年をきっかけにアルファは156旋風の後押しにより4000台から2002年に記録した7426台のピークへとうなぎ上り。一方、フィアットは3000台に届くときもあれば、1000台近くまで落ち込むこともあるなど、両ブランドに大きな差がつき始めた。さらにアルファロメオは147の投入で加速が付き、さらに156の後継モデルのウワサが聞こえてくるなど、まさにイケイケだったのである

 そして159が日本へ導入される2年前の2004年、改名して新しい名称に変わったフィアット オート ジャパンは大きな決断をする。屋号をすべてアルファロメオにしたのだ。たとえば世田谷店ならアルファロメオ世田谷といったように。159が導入された暁にお客様がドッと押し寄せても大丈夫なように準備を整えたのである。 もちろん最初はその成果が十分発揮されていた。しかし、時代というのは無情なことに変わっていくもの。アルファロメオの販売は徐 に々下降線をたどり始めるのだ。そして、タイトルの発言のきっかけを生む事件が2008年に起こる。500の日本導入がそれだ。キュートな外観と高い実用性で、現在の名称になったフィアット グループ オートモービルズ ジャパンがてんてこ舞いするほど人気を博した際に出たのが「フィアットって、どこで売ってるんですかぁ?」なのである。それはそうだ、フィアット500が欲しいと思ってそういう名前のお店を探しても存在しないのだから。クルマが好きな人なら想像が付くかもしれ

ないが、女性誌などで500の存在を知ったような人には荷が重い。 このままでは500のお客様を取り逃がしかねない。というわけで、500人気でホクホクのフィアット グループ オートモービルズ ジャパンはCIの再構築を始める。 まずは2008年からお店の正面にあるフェイッシアバンド、いわゆる看板にフィアットのエンブレムを追加。さらに2010年、フェイッシアバンドからアルファロメオの文字を外し、店舗名だけを掲示することで、フィアットとアルファロメオのどちらを買いに来ても迷わないような店舗作りにした。同時に、フィアットとアルファロメオが混在しないように展示フロアを整理するなど、きめ細かい修正も加えている。 今、オートカー・ジャパンを読んでフィアットが欲しいと思った女性の皆さん、もう大丈夫ですよ。今度は絶対に迷いませんから。オートカー・ジャパンをお読みになるような方には釈迦に説教かもしれませんが。

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Page 20: FIAT Sergio Marchionne - AUTOCAR JAPAN...Sergio Marchionne セルジオ・マルキオンネ FIAT S.p.A.および フィアット グループ オートモビルズS.p.A CEO 1952年にイタリアのキエーティで生まれ、カナダとイタ

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FIAT[フィアット大研究]

フィアットを感じよう(  )

欲しいものがあれば、どんな困難も乗り越えられる。実は、そんな奇特な人はそれほど多くない。いくら欲しいと思っていても、売っているところが見つからなければほとんどの人は買うのを諦めるか、別のものを探すはず。実は、フィアットもそんな危うい状況に遭遇していたのである。

FIAT DEALER

ABARTH SCORPIONE DAY 2011

FIAT CAFFE

白基調の清潔感溢れるモダンなお店

アバルトが思いっきり堪能できる1日

もはやアンテナショップの領域を超えている

フィアットのエンブレムを配し、アルファロメオ屋号を外すという新しいCIはすでに74ディーラーすべてで展開されている。白を基調にした清潔感に溢れる内外装。フロアには明確な線引きはないが、アルファロメオとフィアットが混在しないような配慮がなされている。また、新しいCIのフェイシアに対応できなかったディーラーに対して、新しいフェイシアが用意された。フィアット/アルファロメオ世田谷が新しいフェイシアを取り付けたディーラーのひとつである。フィアットとアルファロメオのロゴを2つ並べた新しいデザインはひと目で両方のブランドを扱っていることがわかりやすい整ったデザインだ。

アバルトユーザーとアバルトに興味がある潜在ユーザーを対象に年に1度開催されているのがアバルト・スコーピオン・ディだ。今回は富士スピードウェイのショートコースを貸し切って行われた。自慢の愛車でのサーキット走行をはじめ、プロドライバーによるレーシングタクシーや最新アバルトの試乗会など、とにかく参加できる催し物が目白押し。さらに、本格的なイタリア料理も振舞われるなど、1日

中、アバルトとイタリアが堪能できるアバルトユーザーにとっては夢のようなイベントである。来年は関東のほかに、関西地区でも開催予定だという。

フィアットには興味があるけど、ディーラーはちょっと苦手。そういったユーザーに身近にフィアットを見て、触れて、感じてもらおうと企画されたのがフィアット・カフェだ。オープンは2008年12月。地上2階、地下1階の3フロアで、1階はフィアットを間近で見られるアンテナショップ、2階はこだわりのイタリア料理が楽しめるカフェバー&レストラン、地下はフィアット・スペースと呼ばれるイベント用の空間になっている。取材当日はリーボックのクロスフィット・プログラムとのコラボイベントが行われていたが、このあとも各種イベントが目白押し。詳しくはホームページをチェックしてください。

2階のカフェバー&レストラン。本格的なイタリアンが楽しめるとあって、ランチなどは予約しないと入れないほどの人気スポットになっている。

実は、フィアットはワインも手掛けており、フィアット・カフェが正規モノのフィアット・ワインを飲める唯一のお店なのだ。

いにしえのアバルトも展示。アバルトの今だけでなく過去を知る絶好の機会だ。オーナーの手により、走行シーンも披露された。

走行会は技量に応じて3つのクラスを設定。サーキット経験者から今回が初めてという人まで、思い思いのサーキット走行を楽しんだ。

FIAT CAFFE東京都港区北青山1-4-5ロジェ青山

アンテナショップTEL:03-5771-7661カフェバー&レストランTEL:03-5771-7662

フィアット世田谷/アルファロメオ世田谷東京都世田谷区世田谷2-4-11Tel:03-5426-4301

白の中に効果的に赤を用いたフロア。いい意味でイタリアン・ジョブである。受付カウンターの後ろにも2つのエンブレムが備わる。

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