ゲル-ゾル法を用いたitoナノ粒子の精密合成...ゲル-ゾル法を用いたitoナノ粒子の精密合成...

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ゲル-ゾル法を用いたITOナノ粒子の精密合成 東北大学多元物質科学研究所 村松淳司 * 、蟹江澄志 DOWA エレクトロニクス(株) 佐藤王高 1. はじめに 現在、薄型テレビ、パソコン、モバイル機器や太陽電池には欠かすことのできない透明電極には、低抵抗性・高透過率 や化学的安定性の観点からスパッタ製膜法によるITO(スズドープ酸化インジウム)薄膜が広く使用されている。このITO の原料であるInは、供給不安があることから、省使用技術の開発が期待されている。しかしながら、現行のスパッタ製膜法 では、製膜時のスパッタ装置内への付着ロス、配線形成時のエッチングロス等により、用いたITOターゲットのうち、わずか 20%程度のみが実際に透明電極として使用される。のこりのロス分80%の大部分は、リサイクルにより再資源化されるもの の、再資源化には、リードタイムが存在するため、現実的には、実際に配線として使用されるより多くのIn原料の確保が必 要となる。さらにスパッタ製膜法では、大型薄型テレビの急速な需要拡大にあわせて、その都度ITOターゲット、真空チャ ンバー等の大型化・更新を必要とするなどの問題を有することから、現行法に置き換わる根本的な技術革新が求められ る。 現行のスパッタ製膜法の問題点を解決する有効な手法としては、ITOナノ粒子をインク化し基板上に直接塗布・大気 中焼成により製膜・配線化する技術が注目されつつある。この方法では、In原料の使用効率をほぼ100%に高めることが 可能であると共に、大面積の電極作成も可能である。特に、塗布型ITOナノインク配線技術の一つであるインクジェット法 による配線は、配線を基板に直接描画できるため、工程が大幅に簡略化できる。さらには材料やエネルギー使用量が大 幅に削減できることや、微細・高集積回路が形成できることから、その実用化が強く求められている。しかしながら実際には、 インクの目詰まりの多発や、スパッタ製膜法に比べて電極の透明性および抵抗値などが劣るなど、克服すべき問題点が数 多い。 ITOナノ粒子は、低抵抗化・高透過率・低濁度(ヘイズ)の観点から、微粒子化、高い分散性、低温焼結性を兼ね備え ることが必要である。また、透明導電膜は、薄型テレビ等広く世の中に使われるため、大量生産に適した製法で合成するこ とが望まれる。 低抵抗化には、ITOナノ粒子の接触抵抗低減と内部抵抗低減が必要である。特に、塗布用途であるITOナノ粒子の 場合は、接触抵抗を低減させることが重要であり、そのためには、粒子の接触面積の増大および接触面積間の化学的な 結合を取ることが必要と考えている。粒子の接触面積を増大させるためには、粒子の高分散性、最密充填に適した粒度 分布の制御、および、接触が容易に得られる形態制御が必要である。また、粒子同士は、ただ接触しているだけでなく、粒 子同士が、化学的な結合をもつことが重要であり、かつ、ITOナノ粒子が使用される基板がガラスや樹脂基板であることを * 連絡先: Phone & Facsimile +81-22-217-5163 E-mail: [email protected] Homepage = http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/muramatsu/ - 1 -

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ゲル-ゾル法を用いたITOナノ粒子の精密合成

東北大学多元物質科学研究所 村松淳司 * 、蟹江澄志

DOWA エレクトロニクス(株) 佐藤王高

1. はじめに

現在、薄型テレビ、パソコン、モバイル機器や太陽電池には欠かすことのできない透明電極には、低抵抗性・高透過率

や化学的安定性の観点からスパッタ製膜法によるITO(スズドープ酸化インジウム)薄膜が広く使用されている。このITO

の原料であるInは、供給不安があることから、省使用技術の開発が期待されている。しかしながら、現行のスパッタ製膜法

では、製膜時のスパッタ装置内への付着ロス、配線形成時のエッチングロス等により、用いたITOターゲットのうち、わずか

20%程度のみが実際に透明電極として使用される。のこりのロス分80%の大部分は、リサイクルにより再資源化されるもの

の、再資源化には、リードタイムが存在するため、現実的には、実際に配線として使用されるより多くのIn原料の確保が必

要となる。さらにスパッタ製膜法では、大型薄型テレビの急速な需要拡大にあわせて、その都度ITOターゲット、真空チャ

ンバー等の大型化・更新を必要とするなどの問題を有することから、現行法に置き換わる根本的な技術革新が求められ

る。

現行のスパッタ製膜法の問題点を解決する有効な手法としては、ITOナノ粒子をインク化し基板上に直接塗布・大気

中焼成により製膜・配線化する技術が注目されつつある。この方法では、In原料の使用効率をほぼ100%に高めることが

可能であると共に、大面積の電極作成も可能である。特に、塗布型ITOナノインク配線技術の一つであるインクジェット法

による配線は、配線を基板に直接描画できるため、工程が大幅に簡略化できる。さらには材料やエネルギー使用量が大

幅に削減できることや、微細・高集積回路が形成できることから、その実用化が強く求められている。しかしながら実際には、

インクの目詰まりの多発や、スパッタ製膜法に比べて電極の透明性および抵抗値などが劣るなど、克服すべき問題点が数

多い。

ITOナノ粒子は、低抵抗化・高透過率・低濁度(ヘイズ)の観点から、微粒子化、高い分散性、低温焼結性を兼ね備え

ることが必要である。また、透明導電膜は、薄型テレビ等広く世の中に使われるため、大量生産に適した製法で合成するこ

とが望まれる。

低抵抗化には、ITOナノ粒子の接触抵抗低減と内部抵抗低減が必要である。特に、塗布用途であるITOナノ粒子の

場合は、接触抵抗を低減させることが重要であり、そのためには、粒子の接触面積の増大および接触面積間の化学的な

結合を取ることが必要と考えている。粒子の接触面積を増大させるためには、粒子の高分散性、最密充填に適した粒度

分布の制御、および、接触が容易に得られる形態制御が必要である。また、粒子同士は、ただ接触しているだけでなく、粒

子同士が、化学的な結合をもつことが重要であり、かつ、ITOナノ粒子が使用される基板がガラスや樹脂基板であることを

* 連絡先: Phone & Facsimile +81-22-217-5163 E-mail: [email protected]

Homepage = http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/muramatsu/

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想定すると、できるだけ低い温度で粒子同士が焼結する低温焼結性が求められる。

高透過率を得るためには、一次粒子径の低減が必要であり、ヘイズの低減には2次粒子径の低減が必要である。特に、

それぞれ50nmを越えたあたりから特性の悪化が顕著になることから、50nm以上の粗粒子・凝集体を含まないよう粒度分

布の精密制御が必要とされる。また、ミリング装置や界面活性剤による分散は、粒子表面の結晶性低下や界面活性剤の

吸着により、接触抵抗を著しく増加させることがわかっているため、分散性の優れた粒子を直接合成することがきわめて重

要である。

結局、ITOナノ粒子の合成方法としては、低抵抗・高透過率・低ヘイズを達成するために、高い溶媒分散性を有しかつ

単分散・形態制御が原理的に可能な液相合成法が適している。さらに、ITOナノ粒子が工業的に使用されることを想定す

ると、大量生産性に適し、かつ環境負荷低減の観点から廃液・エネルギー効率等に配慮をすると、合成系の金属イオン濃

度が0.1mol/L以上となる濃厚系での液相反応法開発が必要である。

以上の観点から、本項では超濃厚系における液相からの単分散ナノ粒子合成法である“ゲル-ゾル法”ITOナノ粒子

の合成について詳説する。

2. 液相合成法

液相からの粒子析出法では、一般に合成する粒子のサイズ、形態を自由に制御することが可能であり、かつ、それらを

揃えること(単分散化)ができる。特に液相におけるサイズ、形態の制御は機構がかなり明確になっているので、比較的容

易に行うことができる。ただし、それら粒子の生産性は低く、価格が通常の粉砕法に比べて高価になることから、高い機能

を有するテーラーメイドの粒子の合成こそ意義があると思われる。また、ナノ粒子領域の単分散粒子についての合成法は

ほとんど報告されていない。いわゆるゾルーゲル法合成ではせいぜい 50nm 程度の大きさの SiO2 や TiO2 粒子の合成研

究が散見されるのみである。単分散粒子のサイズは一般に生成核数と全物質量で決まるが、生成核数が多いときには全

体の反応時間に比較して核生成期間が長く生成粒子の標準偏差が大きくなる。通常、単分散粒子は絶対的な標準偏差

を維持しながら成長するので、サイズが大きくなればなるほど見た目の標準偏差、すなわち相対標準偏差は小さくなる。な

お、この場合成長中の粒子の凝集が全くないことが条件となる。逆に言えば、サイズの小さな粒子の単分散化は非常に困

難であり、従って報告例は少ないと言える。

本稿では、Stöber 法に代表されるアルコキシドを出発物質とするいわゆるゾルーゲル法(ゲルーゾル法ではない)シリカ

ナノ粒子合成を紹介し、次に著者と Sugimoto らが開発した全く新しい粒子合成法である、ゲルーゾル法を概括し、一例

としてチタニアナノ粒子合成の手法とメカニズムについて詳説する。その上でインジウムすず酸化物の合成手法への応用

について、基本的な考え方とともに、最後に詳説する。

ナノサイズではないが、数百nmからサブミクロンサイズの単分散微粒子合成に関する文献を紹介しておく。酸化物ある

いは含水酸化物の微粒子に関しては、Matjievicらの一連の系統的な研究 1-18) が行われるまでほとんど報告例がない。

彼らは球形アモルファス水酸化クロム粒子の合成 1-3) を皮切りに、水酸化アルミニウム 4 、5) 、二酸化チタン 8) 、ヘマタイト

10-13)などの酸化物コロイドやマグネタイト15)、フェライト16-18)などの磁性コロイドの合成について報告している。単分散粒子

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についてのレビューは、成書などが豊富にあるので参考にされたい。 19-52)また、気相法による微粒子合成についてはレビ

ュー等を参考にされたい。 9,53)

3.Stöber 法シリカ(ゾルーゲル法)

図1は、いわゆるStöber法で得られたシリカ粒子で 54)ある。Stöber法はゾル-ゲル法の一種とも言え、アンモニアのエタ

ノール溶液を溶媒に用い、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)と少量の水から

Si(OC2H5)4 + 2H2O SiO2 + C2H5OH

のようにシリカを合成する方法である。このとき、添加するアンモニアが触媒となって、単分散粒子が得られる。シリカ粒子

合成のポイントは、TEOSの精製とアンモニア濃度、温度、水の量であり、これらの因子を変えることによりサイズやサイズ分

布も変化する。特に水の量が多いと核生成と成長の制御が難しくなるため、アルコキシドを出発物質とした、単分散粒子

合成はエタノールのような有機溶媒均一系(SiO2, TiO2 55-57) , ZrO2 58,59) , PZT=Pb(Zr,Ti)O3 60,61)など)か、エマルジョ

ン(たとえば、GeO2 62) , TiO2 63) , ZrO2 64)など)を用いることが多い。液相法合成微粒子は、合成条件によって単結晶、

多結晶、非晶質になるものがあるが、ゾルーゲル法による粒子は高温履歴がないことなどの理由から、非晶質となる。液相

法で非晶質粒子ができると、最も表面エネルギーの小さい形、すなわち比表面積が最小となる、球形となる。逆に、球形の

粒子はすべて非晶質というわけでもない。

4.ゲルーゾル法

単分散粒子を得るための条件は、LaMerモデル65,66)とSugimotoらの考察 19,22,36)を元にすると、

1) 目的生成物が得られる条件であること

2) 副生成物が生成しない条件であること

3) 核生成と粒子成長が明確に分離されていること

4) 粒子成長中の凝集・凝結が防止されていること

となる。そのため、単分散粒子生成は成長中の著しい粒子同士の凝集を防止するために、希薄溶液系を採用せざるを得

ない状況であった。実際多くの単分散粒子合成について報告してきたMatijevicの研究 1-18)においても、ほとんどが 0.01

mol dm-3 以下の希薄溶液であり、実用的な手法とは言えない状況であった。ゾルーゲル法によるシリカ粒子合成におい

ても同様なことが言える。すなわち、溶質濃度が大きくなったりすると、粒子分散系、すなわちゾル状態では停まらず、ゲル

状態、すなわち粒子同士が激しい凝集を起こし、もはや粒子と識別できない状態まで進行する。逆に言えば、ゾルーゲル

法において粒子分散系で生成を停止させるには、非常に希薄な溶液系にせざるを得ないのである。

近年、Sugimotoらは、0.1~1.0 mol dm-3の濃厚溶液からの単分散粒子合成法である、ゲル-ゾル法を開発して注目

されている。この方法について簡単に述べる。

ゲル-ゾル法の要点は次の通りである。 67)

1) 固相前駆体の溶質濃度は LaMer モデルに従い、十分に下げ、制御できる範囲とする。

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2) 前駆体溶質の供給源を別途用意する。

3) 濃厚溶液中で粒子が凝集しないようにする。

であり、いずれも難解な技術を伴っている。その生成機構や形態制御機構の詳細が判明しているチタニアナノ粒子合成を

例にとって説明しよう。

5.単分散チタニアナノ粒子合成

図2は、ゲル-ゾル法による単分散チタニア(アナタース)粒子生成 68,69)の経時変化である((d)が最終生成物のアナタ

ース型チタニア粒子)。この方法のポイントは3つある。

1) 空気中で加水分解しやすいチタンイソプロポキシド(チタンのアルコキシド)に2倍モルのトリエタノールアミンを加え、安

定なチタン錯体にすること

2) 0.25 mol dm-3 [Ti4+] + 0.50 mol dm-3 トリエタノールアミン + 1.0 mol dm-3 NH3の混合溶液を、100℃1日経時

して、水酸化チタンゲルを生成(1段目)。このゲルはチタニア前駆体の供給源となり、かつチタニア粒子の凝集を防

止している。

3) 続いて 140℃3日経時して、チタニア粒子を合成(2段目)

図より (a) 0, (b) 1 日 , (c) 2 日 , (d) 3 日と、不定形の水酸化チタンゲルが、スピンドル型のチタニア粒子に相転移する

ことがわかる。この相転移は後述するように、溶液経由、すなわちゲルの溶解とチタニア粒子上への再析出で進行している。

第1段目の経時がないと溶液相のチタン濃度が高いまま、ゲルの生成と同時にチタニアの核生成が進行して、核生成と成

長の分離ができず、かつ、凝集した粒子が生成してしまう。生成した粒子は高分解能電子顕微鏡で観察すると、単結晶で

あることがわかった。スピンドル形状をとるのはアンモニアによる形態制御効果であると説明されている 68)。

粒子成長を途中で停止させればサイズの制御は比較的簡単であるが、この場合はサイズは収率に依存することとなる。

実用上は収率100%であることが望ましいので、粒子の成長が溶質の直接析出であれば、粒子のサイズは、生成核数に

依存する。すなわち、全体の物質量が一定ならば、粒子の数が多くなるほど、サイズは小さくなる。また、単分散粒子の場

合は、サイズが小さくなるほど、サイズ分布は一般に大きくなる。これは、安定な核の大きさは数 nm 以上であるから、核の

大きさに近ければ近いほど、サイズ分布が大きくなるためである。溶質の直接析出による粒子成長を伴う場合は LaMer モ

デルで考えると、初期に生成した核と後から生成した核には、その時間のずれだけ、最初に生成した核は成長しているの

で、核生成終了時にはサイズ分布はかなり大きい。核生成が終了し、成長だけの段階に移ると、どの粒子も同じように成長

を続けるため、核生成時のサイズの違いを残したまま成長する。凝集が全く起こらず、かつ、新たな核生成が粒子成長中

に全く起こらない場合、成長に費やす物質量が、核生成に費やす物質量よりも圧倒的に大きければ、粒子のサイズ分布

は非常に狭くなることが期待できる。したがって、サイズ分布を小さくするためには、核数、すなわち粒子数をできるだけ抑

えて、できるだけ成長させることが必要である。さらに、粒子成長の時間に比較して核生成の時間を短くすることも効果があ

る。

水溶液におけるサイズ制御の方法は主として2つある。全体の濃度と体積が一定である場合は、1つは生成核数を制御

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すること、2つめは種を入れて粒子数を直接制御すること、である。前者は反応条件をコントロールして生成する核数を決

めるもので、後者は粒子生成系に別に調製した種を添加する手法をとる。種は大きさにはこだわらず、核と同じ大きさであ

る必要はないが、種が必ず成長するような条件としなければならない。

粒子生成においては、核生成と粒子成長は競争反応であるので、生成核数を増やすには粒子成長の方を抑制しなけ

ればならない。LaMer モデルで表現できる粒子生成においては、最初の生成核数の制御は臨界過飽和度を抑制するこ

とで数を減らすことが可能であるので、通常核生成期と粒子成長期の反応温度を制御することで生成核数の制御は可能

である。たとえば、高い生成エネルギーを必要とする核の生成は比較的高温条件で行い、核生成は反応温度を下げること

で終了させ、その後は成長だけを行うような、温度ジャンプの手法である。ただし、この試みは核生成と粒子成長の各段階

がよく知られた系でのみ適用可能である。制御されていない溶液からの固相析出では、過飽和状態が固相析出終了まで

継続するため、核生成と成長を明確に分離しやすい希薄溶液を用いる場合が多い。逆に制御しやすいような溶液条件と

温度を選択すると、希薄溶液系にならざるを得ないである。ゲルーゾル法を初めとする濃厚系では、核生成と成長のそれ

ぞれのステップを、前者は最初から溶液相に含まれる溶質、後者はリザーバーに含まれる溶質を使用する、という役割分

担をすることができる。ゲル-ゾル法では溶質の供給源にリザーバーを使うが、これにより系の過飽和度を十分に下げ、核

生成と粒子成長の制御を可能にしている。リザーバーと溶液相は平衡関係にあるから、核生成は平衡濃度で存在する溶

質によって起こる。この平衡をずらして溶質濃度を制御できれば、生成核数の制御も可能であろう。また、この平衡に達す

る時間は必ずしも短くないことから、リザーバーが存在する溶液に核生成のための溶質を添加し、すぐに核生成を行わせ

ば、生成する核数は添加する溶質の量に依存する。溶質が消費されると直ちにリザーバーから溶質を補給する。このように

何らかの方法でこの溶質の初期濃度を制御することで、核生成時間、すなわち生成核数を制御することが可能であろう。

なおリザーバーの役割は直接最終生成物に変換するのではなく、溶液相の溶質濃度を低く保ちながら溶質を供給するこ

とである。

さて、上記のチタニア粒子合成でアンモニアフリーの系で合成すると、チタニアナノ粒子となる 70.71)。図3はアンモニアを

除いてpHを変化させたときの最終生成物のTEM写真である。図4は最終pHが 9.88 での成長の過程を観察したものであ

り、最初に生成するTi(OH)4ゲルが次第にTiO2ナノ粒子に変換していることがわかる。最終的に 5~10nmのチタニアナノ

粒子が生成する。生成した粒子は全てアナタース型であった。

以下は、上記のゲルーゾル法を応用したものであり、ゲル化条件下、第2金属塩を添加したところが特徴となる。

5.単分散 ITO 粒子合成

ナノインク用ITOナノ粒子の合成について、その実用化を念頭におくと、下記のような基本的な考え方ができる。

1) ナノサイズ(数nm)の粒子は甚だしい凝集を起こすことが知られていて、その懸濁液は凝集物(フロック)の性質に依

存する。従って、凝集物となりやすい数nmサイズの粒子の合成は行わない(図5①)。加えて数nmサイズの粒子ではその

高い表面活性のために、ほとんど球形となり、事実上形態制御は不可能である。形態制御可能なサイズまで大きくする必

要がある(図5②)。

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2) 分散剤を使用すると焼結の際にそれが残存し、抵抗が高くなり、良好な導電性を保てなくなる(図5③)。分散を良くす

るには分散剤を使用するのではなく、表面電荷の制御が必要であり、図6のような pH-電位曲線データを使って、もっとも

適当な溶液条件を設定すれば特に分散剤を使用しなくてもよい。ITO の等電点は表面のインジウムとスズの構成比で連

続的に変化することから、分散性の決め手となる表面電荷の制御は表面組成の変化で可能となる。

3) 焼結性能は単粒子層にきれいに並べることに大きく影響することが予想されるので、図7のように粒子や基板の表面

電荷を考慮に入れた塗布法が効果的と考えられる。すなわち、粒子同士は同電荷により反発し、粒子と基板は異電荷を

有し、基板上にきれいにヘテロ凝集して単粒子配列させることが可能となろう。そのためには粒子の表面電荷制御が必要

不可欠である。

このように、ナノインク ITO 微粒子合成に必要な3要素について詳細な検討が必要となる。

ここで用いたゲル-ゾル法は前述の通りであり、この場合、溶液からの固相析出反応では反応条件を整えることでインジ

ウムとスズの比を任意に制御して ITO 粒子を合成することが可能である。合成フローチャートを図8に示した。硝酸インジウ

ムの溶液を100℃経時し、その後スズを投入、この後、ゲルーゾル変換反応を通して、最終的に ITO 粒子を得るルートで

ある。ところが、この場合最終粒子の構造には水酸化物が多量に混入することがわかっており、現状、ワンパスで ITO 粒子

は合成できていない。いったん、結晶性水酸化インジウム粒子を合成し、すずを添加して焼成処理して、ITO 粒子を得て

いる。具体的には、最初非晶質水酸化インジウムゲルを合成し、これを水熱合成条件に供することにより、結晶性単分散

粒子を得、その後、最終的に ITO 粒子を得るものである。このときの合成ルートと実際の TEM 観察結果を図9に図示した。

明らかに、ゲル状非晶質物質から経時変化により立方体状の結晶性粒子が生成しており、それは水酸化インジウムである。

それをスズとともに熱処理することにより同じサイズの ITO 粒子となる。

7.終わりに

以上、ゲルーゾル法 ITO 粒子合成について概括した。今後は、ワンパスで直接 ITO 粒子が得られるような合成系の設

計と、その実現が大いに期待される。

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図1 Stöber 法合成単分散シリカ粒

子の

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図2 ゲル-ゾル法による単分散スピンドル型チタニア(アナタース)粒子生成

の経時変化: a) 0, b) 1, c) 2, d) 3 日 68,69)

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図3 ゲル-ゾル法による単分散チタニア(アナタース)ナノ粒子生成に与えるpHの効果

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図4 ゲル-ゾル法による単分散チタニア(アナタース)ナノ粒子生成の経時変化

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凝集の問題

たとえ数nmのITO粒子ができても激しい凝集を起こしフロック(凝集体)となる

粒子の特性は見かけの粒径で決まるので、フロックの粒径と形状が品位を決めるフロックの粒径や形状の制御は理論上不可能

単分散ナノ粒子 → 多分散凝集体

ナノ粒子は高い表面活性のため、頂点がたとえできても緩和されて角がとれるまた生成した核のサイズと変わりがないためほとんど成長できない

→ 見かけは立方状などができるが精密形態制御は不可能

精密形状制御不可能形状の問題

分散・焼結の問題

分散剤を添加して、たとえ1粒子毎に分散しても表面には分散剤が強く吸着している分散剤が表面にあると、焼結後の特性に大きな影響を及ぼすしかるに、分散剤なくしてナノ粒子の分散は不可能

分散剤を添加

表面に分散剤が吸着

サイズが小さくなるほど多量の分散剤が必要

1 2

3 図5 ITO 粒子の設計指針

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pH

13 1 7 ITO

SnO2

In2O3

図6 ITO 粒子のpH とゼータ電位の関係: 概念図

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図7 静電力を使った ITO 粒子のモノレイヤ配列の概念図

単粒子層粒子配列 と 低温焼結

立方体に形状制御 した単分散ITO粒子

負電荷同士で 静電的反発

場合によってはバインダ用シングルナノ粒

子を間隙に分散させてから焼結

下地との静電引力

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Indium solution 0.25 M

Indium Tin oxide nano particles

pH control

1st aging at 100 ℃

pH control

Tin solution 0.0125M

2nd aging at 250 ℃

Centrifuged and Washed by distilled water

Sintering

Centrifuged and Washed by distilled water

Indium solution Indium(Ⅲ) Nitrate Trihydrate In(NO3)3 ・3H2O

Tin solution Tin(Ⅳ) Chloride Pentahydrate SnCl4 ・5H2O

pH control NaOH, HNO3

図8 ITO 粒子合成フローチャート

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単分散 In(OH)3 微粒子

ゲル生成

0.50 M In(NO3)3

8.0 M NaOH

水熱合成

In3+ 初期濃度: 0.25 M

100 ˚C, 24 h

250 ˚C, 3 h 遠心分離および洗浄

凍結乾燥

SnCl4 (In に対して 5%) 300 ˚C で 3 h 熱処理

単分散 ITO 微粒子

非晶質 In(OH)3 ゲルの形成

In(OH)3 微粒子の生成

ITO 微粒子の生成

50nm

50nm

50nm

核生成

粒子成長

図9 現状の合成フローチャート: インジウム水酸化物結晶化