ボランティア活動事例集...2 3 36...

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ボランティア活動事例集 熊本県/社会福祉法人 熊本県社会福祉協議会

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Page 1: ボランティア活動事例集...2 3 36 市町村社会福祉協議会(ボランティアセンター)一覧 24 Case 11 環境 ~海から山へのメッセージ 全国に届いた漁民の声~

ボランティア活動事例集

熊本県/社会福祉法人 熊本県社会福祉協議会

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 本県においても、少子・高齢化の進展による家族機能の変化や地域社会

における人々のつながりの希薄化などにより、介護や子育て、孤独死の問題

など、様々な生活課題が現れてきています。誰もが住み慣れた地域で安心

して生活できるようにするためには、公的なサービスの充実はもとより、県民

がお互いに支え合う地域社会の実現が重要であり、とりわけボランティア

活動のより一層の活性化が期待されています。

 このような中、本県では、ボランティア活動への理解と参加を促進するため、

平成17年10月に『全国ボランティアフェスティバル“火の国くまもと”』を

開催し、県内外の多くのボランティアが集い、熱い心で交流し、大いに機運

が高まりました。そして、この気持ちを県内に広げようと、平成18年度から

熊本県版「火の国ボランティアフェスティバル」が、各地域持ち回りで開催

されており、ボランティア活動への思いが着実に広がりを見せています。

 また県では、県民一人ひとりが福祉のみならず、環境、教育など様々な分

野にボランティアとして参加できるような環境づくりと、ボランティア活動

の実践者の志気の高揚、機運の醸成を図ることを目指して、「ボランティ

ア活動日本一」の推進を提唱し、平成20年3月3日には「ボランティア活

動日本一」推進連絡会議が設置されたところです。

 このたび、この「ボランティア活動日本一」推進の取組みの一環として、

県内において先駆的なボランティア活動を行っている団体を紹介した事例

集を作成いたしました。本事例集が、各ボランティア団体の活性化と県民の

皆様のボランティア活動への理解と参加の促進につながれば幸いです。

 なお、本事例集の発行にあたり、取材等に御協力いただきました方々に

厚くお礼を申しあげます。

平成20年3月 

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2 3

市町村社会福祉協議会(ボランティアセンター)一覧36

Case 11 ● 環境24

~海から山へのメッセージ 全国に届いた漁民の声~

Case 12 ● 寄贈26

~切手寄贈者と郵便局の協力で 20年間、さまざまな寄贈活動を実施~

Case 13 ● 観光ガイド28

~熊本の歴史や文化を伝えたい! ニーズに合った、おもてなしのご案内~

Case 14 ● 国際交流30

~着る人を笑顔にする着物の魅力 ひとりでも多くの人に体験してもらいたい~

Case 15 ● 社会貢献32

~創業から続けているフィランソロピー活動 人と人との出会いが活動の輪を広げる~

Case 16 ● UD34

~誰もがその人らしく暮らせる社会 心のユニバーサルデザイン~

Case 1 ● 地域交流4

~みんなが楽しくて心が明るくなる活動 地域を支える心を育てる~

Case 2 ● 地域交流6

~♪今日も元気にいそいそと~ みんなでつくるいきいきサロン~

Case 3 ● 地域交流 8

~誰かの元気のもとになりたい ボランティアが社会参加のきっかけに~

Case 4 ● 地域交流10

~心と身体能力の成長 お茶の精神が結ぶ人々の心の「和」~

Case 5 ● 地域交流12

~料理や手話、楽しい会話 仲間と学びあう喜び~

Case 6 ● 子育て支援14

~「輝ける」「暮らしやすく」が原点 行政を動かす、地域が変わる子育て支援~

Case 7 ● 朗読16

~子どもたちにもっと本と接する機会を! 読書の大切さを伝える~

Case 8 ● 障がい者支援18

~職種や立場の垣根を越えて 高い専門性で障がい者の悩みに答える~

Case 9 ● 防犯20

~日本一の防犯パトロール隊! 未来社会へのボランティア~

Case 10 ● 防犯22

~みんなで安全安心な街づくり 高校生によるボウハンティア活動~

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活動開始活動場所メンバー

代 表 者

:平成12年9月:産山村内:産山小学校4~6年生の児童 45人 (平成20年3月末現在):佐藤 増夫校長

■活動を始めたきっかけ

平成9年からお年寄りの見守り・声かけなどを行う阿蘇やまびこネットワーク活動のひとつとして、児童が一人暮らしのお年寄りにはがきを書く「ふれあいポストカード」に取り組んでいる。そのはがきを週1回、郵便局員が届ける際に、健康状態などを確認している。子どもたちから「実際に会ってみたい」という希望があり、交流だけでなく困っていることなどをお手伝いするヘルパー活動を目的とし、村社協や教育委員会などの協力のもと、「子どもヘルパー」を立ち上げた。

4 5

手が届かないお年寄りの代わりに、窓拭きなど掃除をお手伝い

地域交流

■概 要

子どもたちもお年寄りも、一番楽しみにしている交流の時間。折り紙を教えてもらっている

訪問前に受ける事前研修会の様子。体の動きを制限する装具をつけて、お年寄りの動きを実際に体験

 産山村では、小学4年生になると産山村社会福

祉協議会から「子どもヘルパー」に任命される。

 「子どもヘルパー」活動では、村内の一人暮らし

のお年寄りやお年寄りだけの世帯を対象に、草

取りや窓拭きなど、困っていることのお手伝いをし

ようと、年10回ほど、ふれあい協力員(民生委員、シ

ルバーヘルパーなど)と一緒に訪問している。お

手伝いが終わると、子どもたちやお年寄りが一番

楽しみにしている交流の時間だ。「お手伝いはい

いから、お話をしよう」と言われた児童もいるとか。

昔遊びを教わったり、学校の出来事を話したり。

車がない頃はどこまでも歩いて行っていた話、昔

は「修身」という科目があって寝床の敷き方などを

習っていた話など、今では想像もつかない昔の話

を子どもたちは目を輝かせて聞いている。活動

終了後のアンケートでも、面白かった活動内容の

1位は「お年寄りとの会話」。次いで「ゲーム」、「掃

除」となっている。

 自宅訪問以外にも、地区の公民館や高齢者福

祉サービスセンター、授産施設などを訪問して、

体操やミニゲームなどを楽しんでいる。

 また、「子どもヘルパー」のきっかけとなった「ふ

れあいポストカード」は、小学1~6年生まで全学

年持ち回りで続けられている。「はがきを出してい

るお年寄りに会いたい!」と、4年生になってヘル

パー活動をするのを楽しみにしている児童も少な

くないという。

 平成16年には、中学校でも「ジュニアヘルパ

ー」が立ち上げられ、小学校の後輩たちと一緒に

お年寄りたちとの交流を深めている。

  この活動に欠かせないのは、訪問先との調整

や民生委員など協力機関との連携。そのパイプ

役を同村社協が務めている。任命式や修了式、

訪問前の事前研修会、1年間の活動報告を行う

発表会の計画・運営など、全面的にサポートして

いる。

 「ヘルパー活動がうまくいくように、段取りを

整えているだけです。後は子どもたちがしっかり

やってくれていますから、お任せしています」と話

す同村社協職員の碓井さん。「活動発表会につ

いて、出席者から『活動の関係者だけが見るのは

もったいない』という意見をいただきました。『子

どもヘルパー』という名前は浸透しているけれど、

実際の活動を知る人は少ない。もっと多くの人に

見てもらえるような場所や機会をつくりたいと考

えています」。

 訪問のグループ分けは、小学校2学年と中学

校1学年(例:小学4・5年生と中学2年生)の

学年縦割りで編成される。4年生の時は何を話し

ていいか分からず戸惑う児童も多いとのこと。教

頭の筑紫聖文先生は「学校からは具体的な指示

や指導などはしていません。高学年の児童が後輩

の面倒を見ながら、または先輩たちの姿を見て、

お年寄りとの交流の中で、接し方を自然と身に

つけているようです」と話す。6年生ともなると

「最初は声が小さくて、聞き返されることもあった

けれど、今はたくさん話せるようになりました」と

少し自信をのぞかせる。

 夏には、天草の御所浦町の小学校と1年おきに

お互いの町や村を訪ね、2泊3日で体験学習を

する「海山交流」が行われている。昨年度は、御所

浦町の特別養護老人ホームでヘルパー活動を

行った。引率した先生方は初めて会うお年寄りに

対して、子どもたちがうまく活動できるか心配され

たが、日頃お年寄りと接している子どもたちは自

然とお年寄りと目線を同じにして、耳が遠いと分

かると耳もとで話しかけていたとのこと。「施設の

方に『さすがヘルパーをしていると違いますね』と

言われました」と担当の田木先生は嬉しそうに話す。

 訪問先を決める際には「ふれあいポストカー

ド」を出している人のお宅や、できるだけ子どもた

ちの家が近いお宅に行けるよう配慮されている。

そこには、休日や学校帰りなどに日常的に交流

できるようにというねらいがある。実際に、土・日

にお年寄り宅を自主的に訪問しているグループ

がある。子どもヘルパー全体としても8割以上が、

休日などでも訪れたいという思いを持っていると

いう。しかし、校区が広いため、活動のときはふれ

あい協力員の方が車で送迎しているお宅もあ

り、子どもたちだけで行く

には難しい状況もある。

子どもたちの自主的な

思いが行動に移せる

ようなサポートや体

制づくりが課題とし

てあがっている。

ふれあいポストカード

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 ♪誘いあわせて いきいきサロン 今日も元

気で いそいそと~…、と歌声がにぎやかに響く

植柳上町地区の八代市営住宅集会所。参加者か

らは「いきいきサロン」の名前で親しまれている。

地区の60歳以上の方が集まり、健康づくり・仲間

づくり・生きがいづくり・学びの場づくり・ふれあ

いの場づくりを目的に週1回水曜日の午前中に

サロン活動が行われている。

「いきいきサロン」での流れは

①あいさつ

②童謡・唱歌

③体操

④レクリエーション

⑤茶話会(月に一度昼食会)

⑥サロン音頭

⑦閉会

 あいさつから始まり、続いて季節に合わせた童

謡や唱歌を全員で大きな声で歌う。歌の後は体

操だ。参加者手づくりの玄米をつめた棒をダンベ

ルとして使う「ニギニギダンベル体操」、お年寄り

の転倒予防体操とダンベル体操を組みあわせ考

案された「やつしろ元気体操※」のどちらかを行う。

体操で体がほぐれたら週替わりのレクリエーショ

ンを楽しむ。

第1週・・輪投げ大会

第2週・・ものづくり

第3週・・血圧測定

第4週・・ゲームなどのレクリエーション大会

 毎週行われる、容器に点数を付けてその中に

ボールやお手玉を投げ入れる得点ゲームなどの

ミニゲーム大会も人気だ。レクリエーション終了後

は茶話会の時間。月に一度は昼食会となり、健康

の話題や暮らしの事、世界情勢、昔話など、さまざ

まな意見交換や自由な会話を楽しんでいる。最後

に「サロン音頭」を踊り、終了。活動中は終始笑い

声の絶えない、充実したサロン活動となっている。

 サロンを運営するのは10人のサロンサポー

ター。5人ずつの2班に分かれ、隔週でレクリエ

ーションの内容を各週のテーマに従って計画し、

準備などをしている。「参加者のみなさんが『サロ

ン音頭』の歌詞(右下参照)のように笑顔で明るい

こと、毎週のサロン活動を楽しみにしていただい

ていることが『サロンサポーター』としてやりが

いを感じます」とサロンサポーターの森田聰さ

ん。サロン音頭の作詞者でもある。

 サロン参加者にとっても、生活にリズムや張り

合いが生まれ、仲間ができて地域の情報が得ら

れるなど、生き生きとした生活を送るのに欠かせ

ないものとなっている。

 ものづくりの週に描いた絵手紙などの品々を

地元のイベントや福祉祭りなどに出展するなど、

地域との交流活動にも取り組んでいる。みんなで

一生懸命になったものづくりの作業や集会場か

ら外に出て、お花見や運動などをしたことも楽し

い思い出の一つだという。

 サロンの課題は、サポーターや参加者の高年

齢化や参加する人が固定化されてきていること。

これは、活動内容のプログラムやレクリエーショ

ン内容などのマンネリ化につながっている。森田

さんは「もっと多くの人に参加してもらうため、

活動の周知に力を入れていきたいですね。参加

者からの口コミなどで新たな参加者や若い会員

を募集し、活動内容も向上させていきたい。また、

近隣の幼稚園、小学校、中学校との世代間交流へ

の取り組みも考えています。自分たちの知識や技

能を地域に生かし、地域の活性化につながるよう

な交流活動をして、継続していきたい」と抱負を

語る。

活動開始活動場所

メンバー

代 表 者

:平成12年3月:八代市植柳上町市営住宅集会所:60歳以上の32人 (男性5人、女性27人):森田 聰さん

■活動を始めたきっかけ

 隣の地区でサロン活動が始まったことがきっかけとなり平成12年3月にサロン活動を開始。健康づくり・仲間づくり・生きがいづくり・学びの場づくり・ふれあいの場づくりを目的に、身近な場所(市営住宅集会所)に集まり、活動している。

6 7

体を動かすレクリエーションで健康づくり サロンサポーターの森田さんが作詞した「サロン音頭」

CaseCase

地域交流

2

■概 要

イベントなどに出展する絵手紙づくりもみんなで行う

※やつしろ元気体操八代市のボランティアグループ「八代筋ベル会」が考案。八代地域全域に普及しており、地域の各サロン活動に取り入れられている。

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 熊本県立黒石原養護学校高等部では、3年前

から「誰かの元気のもとになりたい」をスローガ

ンに、「ハートフルシップ」と名付けたボランティ

ア活動に取り組んでいる。

 主な活動内容は、

①学校周辺や近辺の駅などでゴミ拾いや落書き

消しなどを行う清掃活動

②保育所やデイサービス施設などを訪問しミュー

ジカルや楽器の演奏などを披露する交流活動

③環境美化やマナー向上を呼びかけるポスター

をつくり、地域の郵便局や事業所などに掲示し

てもらう啓発活動

など。その他、生徒会が主体となってベルマーク

収集や赤い羽根募金なども行っている。

 同校高等部は、熊本再春荘病院に入院してい

る、あるいは病気のために生活規制が必要な生

徒たちが学べる県内で唯一の病弱養護学校。比

較的体が動かせる生徒たちの学級と心身に重度

の障がいのある生徒たちの学級とがある。体が動

かせる生徒は屋外に出て清掃、重度の障がいの

ある生徒は体の動かせる部分を使ってポスターを

つくるなど、それぞれにできる範囲でボランティ

ア活動に参加している。担当の渡邉幸美先生は

「自分たちのしたことが人に喜んでもらえることが

分かって、ニコニコとした顔をするんです」。

 また、活動はクラス単位で、生徒たちが主体的

に計画を立てている。「最初の頃は好きな活動に

偏りがちでしたが、最近は『去年は交流活動が多

かったから、今年は清掃活動をがんばろう』など

の声が上がるようになり、生徒たちの成長を感じ

ます」と嬉しそうに話す。

 病院と学校、家と学校の往復で、外に出る機会

の少ない生徒たちに、社会を経験するきっかけを

つくりたかったという渡邉先生。

 実際に地域に出て活動して、生徒たちは多くの

ことを学んでいる。ポスターを贈呈した施設の人

に喜んでもらえたり、地域の見知らぬ人に「ごくろ

うさま、ありがとう」と言われたりする経験が初め

てという生徒も多い。清掃活動で落書きを消した

ところに、数日後に再び落書きをされることもあ

るという。「せっかく消したのにまた落書きされて

悔しい。自分は絶対にしない」と公共のものを大

切にする気持ちを学べたそうだ。「ボランティア活

動を通して得たことは病院や家の中にいては経

験できないことばかり。やっていることはささや

かですが、生徒たちにとってボランティア活動は

生きる証のようなものです。社会に参加している

という自信をつけさせてもらえるきっかけになっ

ています」。

 訪問した施設や事業所などの地域の人々から

も「病気や障がいのある人たちのことを理解する

よい機会だ」などの声も聞けるという。

 高等部でのボランティア活動で得た経験を生

涯の生きがいにつなげている生徒もいる。

 体の機能が次第に失われていく筋ジストロフィ

ーを患っているAさん。卒業後も小・中学校やボ

ランティアイベントなどで、自身の病気の体験や

マイナス思考だった気持ちを克服できた経験な

ど、前向きに生きる大切さを訴える講演活動を行

っている。きっかけは保育所での交流活動。病気

で何もできないと将来を悲観的に考えていた自

分を、子どもたちが素直に受け入れてくれたことで、

生きている喜びを感じられたという。講演の中で

「自分のしたことを誰かに喜んでもらえるってこ

んなにうれしいことなんだ。自分にしかできない

ことがあるかもしれない、と考え方が変わった瞬

間でした」と話している。

 数々の活動が認められ、平成17・18年には「ボ

ランティア・スピリット賞」の「コミュニティ賞」

を受賞した。授賞式では、同じく受賞した他の九

州各地でボランティアを行う高校生と、ボランテ

ィア活動のあり方について意見を交換すること

ができた。

 「4年間、ボランティア活動を経験してきてノ

ウハウが蓄積されてきたのはよいことですが、

『子どもたちとの交流活動をするならこの保育

所、老人ホームならあそこ、内容はあれをしよう

か』と場所や活動内容が固定化されてきている

のが課題です。もっと彼らの良いところを出せる

活動があるはず。生徒たちが輝ける、充実感を持

てる、もっと地域の人に喜んでもらえる、そんな

活動を職員全員で知恵を出し合っているところ

です」と渡邉先生は話している。

活動開始活動場所

メンバー

代 表 者

:平成16年度:合志市内、学校近隣の施設や駅、事業所など

:高等部の生徒 58人(平成20年3月末現在)

:生徒会長 吉永 将馬さん

■活動を始めたきっかけ

病院や家と学校の往復という生活が多く、外に出る機会が少ない生徒たちに、社会に参加するきっかけをつくるため、校外を中心としたボランティア活動を開始。平成16年度にボランティア協力校の指定を受けた。

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生徒たちによる学校周辺の清掃活動の様子。生徒たちは自分のできる範囲でボランティア活動に取り組んでいる

CaseCase3地域交流

■概 要

合志市保健福祉センターふれあい館を訪問。歌やゲームをしてお年寄りとのふれあいを楽しむ

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 熊本県身体障がい者福祉センターを道場に月

2回の稽古に励んでいる身体障がい者裏千家茶

道クラブ「もえぎ」。メンバーは全員、知的、視覚、

肢体など何らかの障がいを抱えている人々。熊本

市内で茶道教室を開いている福島冨美子さんが

指導をしている。茶道は畳の上でするものと思わ

れがちだが、「御園棚(みそのだな)」と呼ばれる

いすに座ってお点前※ができるテーブルがあるの

で、車いすを使用する人でもお点前ができる。

 「一人ひとり抱えている障がいが違うので、そ

れぞれにできる作法を考え、指導をするのに苦心

しました」と結成当初を振り返る福島さん。茶道具

を清め、拭くのに用いる「ふくさ」のさばき方を覚え

るのに7年かかった人もいるという。「彼が初めて

点てたお抹茶の味は忘れられません。みんな、始

めた頃に比べると動きも心もしっかりして別人の

ようです。茶道はお茶を点てるだけでなく、季節の

花や掛け軸、焼き物など総合的な知識が必要で

す。覚えることがたくさんあるから、そうした刺激が

それぞれに眠っている才能を引き出しているのだ

と思います」。

※お茶を点ててお客様に差し上げるまでの具体的な作法のこと

 お茶の楽しさを自分たちだけでなく、もっと多く

の人 と々分かち合いたいと、平成5年からボラン

ティアイベントや県内の小学校、自立支援施設な

どでお茶会を開催。年間を通して、積極的に活動

を行っている。

 道具の運搬や送迎、お茶碗洗い、着付けなど

裏方のサポートは、福島さんの茶道教室に通う生

徒さんたちが支えている。

 始めた頃は、介助してもらうのが当たり前とい

う姿勢のメンバーだったが、裏方でサポートする

生徒さんたちに対して「いつも裏方ばかりしてもら

って申し訳ないね。ありがたいね」という声が聞

けるようになったという。「お茶のおかげで感謝す

る気持ちに気づくことができた」と言う人も。「お茶

の心の素晴らしさ、人の心の豊かさに気づかせ

てもらいました。『もえぎ』の活動は私の修行でも

あるんです」と語る福島さん。

 多くのお茶会ボランティア活動の中で印象に

残っているのは、ある不登校児童たちとの茶会だ

という。始まる前は、集中力がなく協調性のない様

子だった子どもたち。茶会が始まると、一つ一つ

のお茶碗に心を込めてお茶を点てる「もえぎ」メ

ンバーの姿に、目の輝きが変わった。最後に「お

茶を点ててみたい人?」と尋ねると全員が手を

挙げた。帰るときも、道具の片づけを積極的に手

伝っている子どもたちの姿を見て「こんなに素直

に行動している彼らを見たことがない」と担当の

先生は目を潤ませていたそうだ。

 「身体が不自由ながらも、お客様に温かい心の

こもったお茶を一服差し上げたい、という一生懸

命な姿から何か伝わるものがあったのでしょう。

『もえぎ』メンバーも人の役に立てる喜びを知り、

この活動は続けていかなければ!」と思いを強くし

たという。

 長年の活動が認められ平成19年12月、内閣

府主催の「国際障害者デー」のイベントに招待さ

れ、東京会場で活動を披露する機会を得た。「8

台の車いすを連ねて、無事に行って帰って来れる

かが一番心配でした」。熊本のお菓子と阿蘇の

湧水で、おもてなししたお客様からは「感激した」

「元気をもらった」などの声をいただいた。中には

話しながら涙する人も。「お茶を出す方もいただく

方も、お互いに喜びや感動を分かち合えた。やり

終えた後の達成感は言葉にできません。何物に

も代えられない一生の思い出になりました」と目

を潤ませる。

 メンバーのうち3人は裏千家から「障がい者に

対してお茶の指導をしてよい」という「引次(ひき

つぎ)」という許状をいただいている。「これから

も稽古に励み、同じように障がいのある仲間や

お茶を知らない人々に、お茶の楽しみ、人の役に

立つ喜びを伝えていきたい」というメンバー。障

がいの有無にかかわらず、多くの人々に喜びを

伝える活動の広がりに期待したい。

活動開始活動場所

メンバー代 表 者

:昭和56年:熊本県身体障がい者福祉センターほか熊本市内を中心とする近隣市町村:11人:福島 冨美子さん

■活動を始めたきっかけ

お茶の指導をしている福島さんが通っていた手話教室で出会った聴覚障がい者に「お茶の飲み方を教えてほしい」とお願いされたのが始まり。次第に、飲み方だけでなく、茶筅の振り方や抹茶の量など「自分で点ててみたい」と興味を持つ人が集まり、障がい者による茶道クラブが結成された。

10 11

もえぎメンバーの着付けやお茶碗洗いなど、裏方の仕事は福島さんの教室の生徒さんたちがサポート

お客様との交流も楽しいひととき。「感動した」と涙を浮かべていただく人も

CaseCase

地域交流

4

■概 要

「国際障害者デー」のイベントで開催したお茶会の様子。御園棚(写真右手前)のおかげでいすに座ったまま、お点前ができる

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ふれあい料理教室の様子。みなさん、明るく元気で笑い声と笑顔が絶えない

デイサービスの手話教室では、聴覚障がい者メンバーが講師となって手話を教えている

 天草市本渡の「ふれあいグループ」は、聴覚障

がい者16人、健常者4人の計20人で活動して

いる。毎週水曜日(第5週を除く)に天草中央保

健福祉センターに集まり、おしゃべりなど楽しい

ひとときを過ごしている。話題の内容は、天草市ボ

ランティア連絡協議会からの連絡や福祉サービ

スの変更などの情報、テレビで見たニュースや

昔の話などさまざま。聴覚障がい者のメンバーが

正確につかめなかった内容を健常者のメンバー

に確かめたり、逆に健常者メンバーが生活の知

恵などを教わったりするなど、情報交換の場とな

っている。

 県や市からの連絡事項を伝えるのは代表の江

﨑喜美子さん。手話と口頭で一人ひとり、目を見

ながら、ちゃんと伝わっているかを確認しながら

伝えるという。「集合日時を伝えても当日来ない

人がいる時などは『ちゃんと伝わっていないので

はないか』と悩んだ時期もありましたが、手話だ

けでなく紙に内容を書いて文字でも伝える、欠席

者にはFAXで知らせるなどして、近頃は行き違い

が少なくなりました。体調がすぐれない日や雨の

日など参加者が少ない日もありますが、みなさん

元気でニコニコ顔で来られるのを見るとエネル

ギーをもらいます」と笑顔で話す。

 「ふれあいグループ」が始まるきっかけとなった

「ふれあい料理教室」は、現在も年6回開かれて

おり、平成20年で25年目になる。「毎週集まる

『ふれあいグループ』より参加する人が多く、近年

はご夫婦そろって参加される方 も々います。それ

だけ楽しみにされているということでしょう」と

江﨑さん。

 管理栄養士の坂本つねみ先生が考えた3~

4品の料理をみんなでつくる。まず、先生から野

菜の切り方や下ごしらえなど調理方法が一通り

説明される。説明が済むと、メンバーはそれぞれ

気に入った料理の食材を持ち、調理台へ。1品に

つき2~3人のグループに分かれ、調理が始ま

る。メンバーの多くが主婦だけに手際よく調理が

進む。 

 調理中に先生がポイントやこつを教えるとき

は、健常者メンバーが手話で通訳をする。時には

障がい者メンバーが知っていることもあり、胸に

手を当てる動作(手話)で「知ってるよ」と言われ

ることも。「家庭でのレパートリーが増え、嬉しい」

と話すメンバー。活動中は、いつも笑い声と笑顔

が絶えない。

 「グループのみんなと阿蘇や太宰府に出かけ

たことも『ふれあいグループ』に参加して楽しか

った思い出です」と話すメンバー。孤立しがちな

聴覚障がい者の人々にとって気兼ねなく話し合

える仲間の存在は大きい。また、みんなで集まって

話すことは、手話の表現力の向上にもつながって

いる。聴覚障がい者メンバーでも分からない手

話の表現があるときは、他の聴覚障がい者のサ

ークルや集まりで聞いてきて教えてくれるという。

お互いに学びあう良い関係が築かれている。

 手話を通した地域交流活動にも取り組んで

いる。本渡デイサービスセンターで行われている

手話教室では、聴覚障がい者メンバーが交代で

講師を務めている。平成17年には同センター

から感謝状が届いた。毎年11月~翌2月には

近隣のめぐみ保育所から年長組の園児が活動

日に訪れ、簡単な手話指導やゲームなどで交

流を楽しんでいる。これらの活動が認められ、

「熊本県社会福祉功労者及び団体等知事表彰」

を受賞した(平成16年度)。人との出会いの場が

広がり、メンバーの楽しみや生きがいも増えて

いるようだ。

 今後の課題は、手話のボキャブラリーや表現

力を上げることだという。「手話でコミュニケー

ションをとっていますが、聴覚障がい者メンバー

は私たちに分かるように、手話の動作をゆっくり

とやってくれています。以前はグループ内でも手

話の勉強会をやっていましたがついおしゃべり

に花が咲き、継続しませんでした。『最近はお話

ばかりになっている。もっと手話を勉強しなさい』

と聴覚障がい者メンバーから叱咤激励を受けま

した」。こうしたやり取りも、20数年を過ごして築

かれてきた信頼関係があるからこそ。「今年は手

話の勉強会を必ずやります」と決意を固める江

﨑さん。手話の表現力のアップで、グループ内の

絆が深まり、より充実した活動になっていくことが

期待される。

活動開始活動場所

メンバー代 表 者

:昭和58年:天草中央保健福祉センター:20人:江﨑 喜美子さん

■活動を始めたきっかけ   

 旧本渡市(現天草市)の保健師が聴覚障がい者の家庭訪問をした際、ある主婦が子どもの離乳食づくりなど、食事のレパートリーに困っていることが分かった。当時、手話通訳で尽力されていた兼丸道子さん(故)を介して、当時の本渡市社協に伝わり、市社協が主催して料理教室を始めた。

12 13

重要な連絡事項を手話で伝える江﨑さん 

CaseCase

地域交流

5

■概 要

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 イタリア語で、“輝いて”という意味の言葉を

グループ名とする子育て支援グループ「ぶりら

んて」。“健康は心から”をテーマに、乳幼児から高

齢者までが健康でいきいきと心豊かに生きられる

地域づくりを目指している。

 活動目的は、

①核家族、少子化に伴う子育て中の保護者に情報

を提供し、健康で豊かな地域づくりを推進する

②子どもたちが自ら活動する場を提供し、その活

動を通じて達成感を高め、「生きる力」を育む

③創造する場・発表する場を提供することにより、

豊かな感性を育む。また、親子の触れ合いの場

を持ち、思いやりあふれる“ひと”が育つ、心身

ともに健康なまちづくりを目指す

という3項目。「“人のため”というよりも“自分のた

め”に活動しています。一緒に子育てしている、応援

しているという気持ち。元気と輝きをもらいながら

活動しています」と代表の吉永伯枝さん。「雑談の

中で出てきた『こんなことやってみたい』を無理せ

ず実行しているので、一つの活動が終わって振り

返ると、イベントの大きさに毎回驚きます」と語る。

 活動の3本柱は、次の通り。

①子育て中の保護者のためのゆとりの場の提供

②子どものための活動の場の提供

③地域活性化のための「まちおこし」

 設立当初、まずは「ぶりらんて」の名前を知って

もらいたい。また、活動の方向付けは最初が肝心

と考え、「子育てマップ」作成からスタートした。

熊本市内にある各相談施設を市民がもっと利用

しやすくなるよう、1枚の地図にまとめて記載した

ものを制作。他県の視察団体に評価されたことも

あり、熊本市が採用し8,000部発行した。平成

18年には独立行政法人福祉医療機構から子育て

支援基金の助成を受け、さらに充実した「子育て

マップ」5,000部を発行。育児情報として保育所や

小児科医、DVも含めた女性の悩みを相談できる

窓口も掲載した。裏面は「おでかけマップ」として、

熊本市の公園などを調査して写真付きで紹介。

熊本市に引っ越す人から問い合わせもあり、

希望者には送付している。吉永さんは「暮らしや

すいまちにしたいという、市民としての思いを実

現したに過ぎません。ただ、行政を動かす取り組

みにしなければと考えました。県内36カ所の施設

で授乳設備やトイレを調査して情報提供する

活動では、調査後にそれらが整備された施設も

あり、私たちの活動が施設の充実につながった

かもしれないと嬉しく感じました」。

 「ぶりらんて」の活動は、高校と中学校で音楽を

教えていた吉永さんの経験を生かし、音楽を交え

た楽しい企画が多い。その中の一つ「絵本コンサ

ート」は、プロが音楽を演奏する中で絵本を読み

聞かせするもの。子ども連れのお母さんにも気軽

に楽しんでもらえるよう、市内の公共施設を会場

に開催する。大学教授である吉永さんのご主人に

協力してもらい、熊本で活躍するプロの演奏家や

熊本大学の学生がサポートしてくれている。親子

で楽器をつくり、子どもたちがステージで発表する

など、子どもにスポットを当てた活動もしている。

 「『エジソンになろう』おもしろ科学実験室」や

手づくりの影絵、大型スクリーンを使った絵本

の朗読も企画してきた。ほかの子育て支援団体

や行政とも連携し、「今求められていることは何

か?」と考え、積極的に活動に取り組んでいる。

 活動は子育て支援活動だけでなく、地域に根

ざしたさまざまな形でも展開。活動拠点である熊

本市花園地区で「はなぞの音楽館」を開設し、竹

で作った太鼓を演奏するクラブ(現在は和太鼓

クラブ「清正公太鼓」として独立して活動中)も

できた。平成14年度からは「まちおこしコンサー

ト」を毎年開催。地域の文化交流の場として、公

民館の講座生や校区の自治協議会、小・中学校

の器楽部、合唱部を巻き込み実施している。回覧

板でお知らせし、地域住民から毎年楽しみにされ

ている活動だ。

 また、新聞やテレビでも取り上げられ、保育園

でのコンサート公演や子育て講座でマップを紹

介してもらう機会も増えた。助成を受けたことで

活動の幅が広がっていることもあり、熊本や福岡

で開催される子育てフォーラムで活動報告や

意見交換を実施することも。吉永さんは「ネットワ

ークが広がり、次の活動に結び付いている。私た

ちの小さな活動が大きな波紋となるよう、皆さん

とパートナーシップを築いていきたい」と笑顔を

見せる。

活動開始活動場所メンバー代 表 者ホームページ

:平成11年4月:熊本市内:約40人:吉永 伯枝さん:

■活動を始めたきっかけ

子育てに関わるすべての人が、いきいきと輝いて子育てできるよう支援したいと設立。

14 15

親子で楽器を作り、子どもたちが演奏する

ホームページで子育てに関する情報を発信。携帯電話からもアクセス可能

CaseCase

子育て支 援

6

■概 要

マップは折りたためて携帯しやすい。親子でお出掛けしやすいよう、各施設の特徴もわかりやすく表示。観光施設情報も掲載している

http://www.geocities.jp/brillante_kosodate/

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 球磨郡錦町西にある忍成寺(にんじょうじ)を

会場に、毎月1回、子どもから大人まで誰でも参

加できる「おはなしの会」が開かれている。主催し

ているのは、読みかたりボランティア活動グルー

プ「わかば」。代表者の尾方良恵さんをはじめ4人

の読みかたりメンバーを中心に、地域のボランテ

ィアなどいろいろな方の協力を得ながら活動して

いる。平成13年10月に開始して以来、これまで

73回行ってきた(平成20年3月末現在)。メンバ

ーの都合が合わず、開催できないことも数回あっ

たが、平成19年8月まで、69回連続で毎月欠かさ

なかったことが自慢だ。

 読みきかせは毎回メンバーが交代で担当する。

絵本や紙芝居、昔話など、忍成寺にあるものや

図書館などで借りてきたものの中から、担当者が

1~3本選んで読みきかせている。「聞き取りやす

いスピードで読むように心がけています」と尾方

さんは言う。特別ゲストとして、日本児童文学者協

会などに所属し、全国各地で多数の読みきかせ

会や講演会を行っている中川良孝さんを招いて、

お話をしてもらうこともあるそうだ。

 依頼があれば地域の保育所・子ども会・町内

会・婦人会・いきいきサロンなどに出向き、出前

おはなしの会も実施している。この出前おはなし

の会は聞いたひとたちの口コミで徐々に広まり、

訪問先は人吉市など町外にも広がっている。

 おはなしの会以外でも錦町図書館での七夕

会・クリスマス会やボランティアフェスティバル

など、地域のイベントにも積極的に参加している。

 講談社が主催する読みきかせの全国キャラバン

「全国訪問おはなし隊※」が2回訪れたほか、地元

中学校の家庭科の授業に参加し、読みきかせの

指導を行ったことも。読みきかせを体験した生徒

から『楽しかった。機会があれば実践したい』とい

う感想が聞けたそうだ。

 おはなしの会開催を知らせるため、会報「読書

は心のごはん」を作成し、錦町内の保育所や幼稚

園などに配布している。これには読書啓発のねら

いもこめられている。「読みきかせは、いつでも、ど

こでも、誰にでも、簡単にできると若いお母さま方

に伝えたい。最近は、絵本や小説などがテレビや

映画などで映像化されることが多く、大人も本

そのものに接する機会が減っています。子どもが

自分の頭で考え判断できる力をつけるために

は、本を読むことが一番の近道。読みきかせると

いう行為ももちろん大切ですが、読みきかせが

本と接する機会になり、読書につながっていって

ほしいと願いながら会報をつくっています」と尾方

さんは話す。

 おはなしの会では、ときおり方言(球磨弁)や英

語を使って読みきかせている。子どもたちには

分かりづらいこともあるようだが、真剣に聞き入

っている。一方いきいきサロンでは、方言での語

りを懐かしそうに聞かれるお年寄りも多いのだ

そうだ。

 忍成寺でのおはなしの会の終了後は、境内で

子どもたちに伝承遊びを紹介。外で遊ぶ場所や

機会が少なくなっている子どもたちにとって、境

内はのびのびと楽しめる場所となっている。

 尾方さんは「この会を通じて、子どもたちには

新しい友達や知識などを得て、さまざまな経験を

してほしいです。ライフスタイルの変化で、当初に

比べると参加者は少しずつ少なくなってきてい

ます。しかし、来てくれる子どもたちは、生き生きと

した目で真剣に聞いてくれています。おはなしの

会を楽しみにしている人がいる限り、今後も月に

一度のおはなしの会を継続して開いていきたい

と思います。いろいろな活動に参加しながら、各

方面でメンバーが活躍し、共に成長していけれ

ばと思っています」と未来への展望を語る。

活動開始活動場所メンバー代 表 者

:平成13年10月:球磨郡錦町 忍成寺: 4人:尾方 良恵さん

■活動を始めたきっかけ

「読書の大切さを伝えたい」と、錦町の広報誌を読み上げ、録音したものを配布するボランティアを一緒に行っていた音声訳の仲間同士で会を結成し、活動を始めた。現在はさまざまな方がメンバーとして参加、7年目を迎えた。

16 17

真剣に聞き入る子どもたち。親子での参加も多く、大人も童心にかえって聞き入っている 読みきかせが終わった後、境内で元気に遊ぶ子どもたち

CaseCase

朗読7

■概 要

読み手の問いかけにも手を挙げて答えるなど積極的

※全国訪問おはなし隊キャラバンカーに絵本を積み、各都道府県を1カ月単位で巡回している。幼稚園、保育所、小学校や図書館など、月間約50カ所を訪問。絵本を読みきかせる「おはなし会」があり、積んである絵本が自由に閲覧できる。

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 「ともにある会」の名称は、「障がいの種類や程

度、有無、老若男女、さまざまな人がともに生活で

きる環境をつくろう」という目的に由来する。名称の

通り、身体、知的、精神、すべての障がいを抱える

人やその家族のために、熊本市障害者福祉セン

ター希望荘で相談窓口を開いている。会員が3人

ずつ週交代で相談員を務める。元養護学校教師、

障がい者施設職員、就労支援機関職員をはじめ、

医師、保健師、弁護士、福祉相談員、障がい児者

親の会会員など、福祉や障がいに関わるさまざま

な立場の専門的知識を持った人が集まっている。

 相談された問題について、対応できる機関や人

を紹介し、解決までの方法を一緒に考える。その

場で解決できない場合、あるいは他の専門的知

識が必要な相談に対しては、会員全員が集まるケ

ース検討会議で、それぞれ専門の立場や視点か

らの意見を交換し、解決方法を模索する。

 会員もそのようなケース検討会議で事例をもと

に学びあうことが、お互いのスキルアップにつな

がっている。

 理事長の松村忠彦さんは「障がい者の方が抱

えている問題は、原因が一つではありません。絡み

合っている原因を整理して、優先順位に従って解

決していきます。『対応できる機関を紹介して終わ

り』ではなく継続的なフォローが必要です」と語る。

 相談内容は時代の変化に伴い、少しずつ変化

してきている。始めてから10年ぐらいは、身体、知

的障がいに関する相談が多かったそうだ。平成

5年には熊本日日新聞で「福祉Q&A」コーナー

を連載。相談事例をもとに、制度の活用方法や手

順、余暇の過ごし方などのアドバイスを行った。

「新聞掲載後は、同じ内容の相談が多く寄せられ

ました」と松村さん。連載記事や相談事例をまと

めた「輝き続ける生き方を求めて(ふれあい相談

50例が語るもの)」と題した本も出版した。

 最近は、精神障がいについての相談が増えたと

いう。精神障がい者数に対して社会復帰をするた

めの施設や訓練施設の数が相対的に足りていな

いこと、精神障がい者と精神病患者の定義付けが

曖昧なことなどが問題となっている。会員の熊川さ

んは「精神障がい者とされる人の中には、病名が

ついていて治療している人も含まれています。この

方 は々相談できる窓口がありますが、自分に『障が

い者である』という自覚がない場合、病院以外で

どこに相談できるのか分からない人も少なくない

でしょう。そのような人たちと社会との架け橋となる

のが役割です」と話す。

 障がい者の就労支援事業にも取り組んでいる。

平成15年、知的障がい者を対象に、ホームヘル

パー養成研修3級課程を開講した。一般の研修

時間より多く時間を割き、障がい者に合ったプロ

グラムで指導されている。2年間で4回開講し、

44人が資格を取得。平成17年には、ホームヘル

パー養成研修2級課程も開講。これまでに19人

が資格を取得し、病院や特別養護老人ホームなど

で実際に介護職として働いている人も多数いる。

 ヘルパー養成研修事業担当の藤島さんは

「知的障がい者の方が持つ「癒し」の部分に着目

しました。彼らの動く速さや間の取り方が、お年寄

りの動きに合っているんです。また、相手を思いや

る心は私たち以上のものを持っています」と語る。

「1対1の介護や緊急時の対応などは十分では

ない場合もあるでしょう。しかし、他にスタッフの

いる病院や施設なら介護職として十分に対応で

きます。障がいはその人の個性。その人の持つ能

力や個性をどのように生かすか、職域を広げるチ

ャレンジは続けていきます」。

 会の始まりは会結成以前の昭和61年、福祉、教

育、労働などの機関で障がい者に関わる人々の情

報交換を目的とした勉強会を始めたことからだっ

た。現在も会員の多くは、本来の仕事を持ってい

る。役職についている人も多くケース検討会議もな

かなか全員集まれない状況だという。「機動力の

ある若い世代の参加を望んでいます」と松村さん。

 また、相談者数が減少していることも気になる

ことの一つ。原因は希望荘以外にも障がい者の

相談機関が増えたことと、広報不足にあるとも考

えている。福祉施設や障がい児者親の会などと

関わりのある人はそこから福祉情報が入ってくる

が、それらと関わりがない人たちに対して情報を

届けるのは難しいという。

 理想は「みんな、それぞれ相談できる場所を知

っていて自己解決ができ、ふれあい相談所に来

る人がいない」という状況になること。しかし「相

談に来て問題解決のためのきっかけをつかんで

いかれる方がいる間は、続けていかなければい

けない」と決意を新たにする。 

活動開始活動場所

メンバー代 表 者

:平成3年9月:熊本市障害者福祉センター希望荘:32人:松村 忠彦さん

■活動を始めたきっかけ

養護学校教員や施設、就労支援機関職員など障がいに関わる職種の人たちが集まり、養護学校卒業生のアフターケアについて情報交換を行っていた。その中で、障がい者やその家族が気軽に相談できる窓口の必要性を感じ、熊本市障害者福祉センター希望荘において相談業務を開始した。

18 19

ホームヘルパー養成研修の様子

CaseCase

障がい者支 援

8

■概 要

希望荘での相談風景。就職や結婚、病気のことなど、生活に関わるさまざまな相談が寄せられている

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 「オバパト隊」というユニークなネーミングは、

「オバタリアンパトロール隊」の略。あつかましいく

らい真剣に、未来社会を担う子どもたちのことを

見守ろうという強い意気込みが込められている。

 そんなオバパト隊の基本姿勢は、

①力まず気負わず無理をせず、長続きをしよう

②3人集まれば、パトロール

③経費は他に頼らず自分達の力で調達しよう

④過激な場面に遭遇したら状況を見定めて

警察に連絡しよう

の4項目。犯罪をとがめるのではなく“抑止”する

ことを役目とする。行政や警察、学校と連携した地

域ぐるみの活動を展開しており、子どもの安全だ

けでなく、高齢者の安全も見守る防犯活動に発展

している。

 隊長である下川邦子さんは「ボランティアは、

心の中の優しさや感謝の気持ちをさりげなく表現

するもの。残りの人生でできることをしたい、元気

な体と心で、輝きながら生きられることをしようと考

えたのがきっかけでした」と、はつらつとした笑顔

を見せる。

 おそろいのグリーンのジャンパーに帽子、旗

を掲げての活動。尾ノ上校区内で担当地区を決

めて、通学路の10mおきに隊員が立ち、児童、

生徒の下校を見守る。夜間パトロールでは、一

人暮らしの高齢者宅に立ち寄って声を掛ける。

 毎月1回の勉強会も欠かさない。集会場で警

察署から講師を招いて防犯術について学び、情

報交換を行う。

 また、活動資金はすべて自分たちで調達するこ

とがモットー。その方法も女性ならでは。和服の

古布をドレスやブラウス、バッグにリメイクして

口コミで販売、その益金を資金に充てている。ス

タッフのデザイナーによるリメイク教室を開催す

るなど活動範囲は広がる。小物入れを作り、飲酒

運転撲滅キャンペーンの一環として運転者に配

布したことも。下川隊長は「どうしたらみんなで楽

しくできるか。これがポイント。アイデアはお風呂で

リラックスした時の短時間に浮かびますが、みん

なの努力と地域の協力に支えられているからこそ、

活動できるのだと感謝しています」。

 尾ノ上小学校からの依頼があり、学校、児童、

保護者、地域住民、オバパト隊が協力し合った

「安全マップ」も作成。子どもたちが主体となって

地域を回り、入りやすいが周りからは隠れて見え

にくい箇所や危険な場所、いざという時の駆け込

み場について、住民へのインタビュー取材や危

険箇所の写真撮影を行った。マップ完成の発表

会では、小学1年生からのオーケストラ演奏の

プレゼントに「嬉しかったですね。子どもたちとの

触れ合いが深まります」と下川隊長。

 パトロール時に会員の中から、「活動できるの

は主人のおかげ。主人に最低1日2回は感謝の気

持ちを伝えよう」という話があった。素直に伝える

ことは難しいと感じながらも実行していると、ご主

人たちがまずパトロールに参加、続いて協力隊

にと申し入れがあり、男性主体の「オバパト大

学」を設立。「防犯学部」「青少年育成学部」など

の学部から「報道局」「研修局」など組織体制まで

編成し、全員が教授や事務局長、顧問といった

何らかの役職者として参加する大学にした。男性

はいきいきと再チャレンジの場で活躍している。

 さらに校内事件を憂慮して、「学校議会」を立

ち上げた。この「学校議会」は生徒の悩み解決、

先生の立場を守り、保護者間の校外バトル解

消を目的としており、その活動の一つとして校長

室前に「心の玉手箱」を設置して、児童に率直な

意見を出してもらっている。このような活動を通

じて「子どもから教えられることが多い」と、真摯

に受けとめて議会を進行している。

 平成19年の「安全・安心なまちづくり関係功労

者内閣総理大臣表彰」を受賞したオバパト隊。

今後の活動について下川隊長は「食育と道育に

力を入れたい。地産地消で子どもが食べたいと

思える保存できるレシピを90ほど準備。朝ご飯を

しっかり食べると、勉強もはかどり、心が豊かにな

ります。命の大切さを学ぶ道育も頑張り、良い親

子の関係を築くきっかけづくりをしたい。そして今

度は福祉ボランティアで全国一を目指します!」。

「“向こう3軒両隣”の古き昔の時代を取り戻した

い」というオバパト隊の今後の活躍にも期待が

集まる。

活動開始活動場所メンバー

代 表 者

:平成17年4月:熊本市尾ノ上校区:210人(男性81人、女性129人):下川 邦子さん

■活動を始めたきっかけ

子どもが被害者/加害者になる事件が近年増加していることを心配して、安心・安全・見守り・防犯を目的とした活動を、「母親の視点で見守ろう」と女性4、5人で自主防犯パトロール隊を結成。地域の婦人会が母体。

■概 要

20 21

チャリティバザーにも参加。「オバパト漬け」の8万円の利益も資金に

青色回転灯パトロールカーで巡回。6人が専用の運転免許を取得した

安全マップ完成発表会。インターネット上で公開も大雪の日、活動を控えようと連絡したにもかかわらず、自主的に93人もの隊員が活動に出た

CaseCase

防犯9

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 玉名地区では、地区内の高等学校6校(玉名

高等学校、北稜高等学校、玉名工業高等学校、

南関高等学校、玉名女子高等学校、専修大学玉

名高等学校)の生徒による防犯や清掃のボラン

ティア活動が行われている。その名も「ボウハン

ティア」。“防犯”と“ボランティア”を組み合わせ

たもので、高校生が自ら名前をつけたものだ。放

課後、黄緑色のユニフォームと帽子を着用し、JR

玉名駅駐輪場の整理や清掃などを行っている。

各校月ごとの当番制で、1回の活動時間は30分

程度、月に数回実施されている。活動への参加

は有志で、「できるときに参加する」というもの。

 参加した生徒たちの動機を聞くと「ちょっとや

ってみようかな」と気軽なもの。「きれいな駅にな

って気持ちいい」、「通りがかりの人に『いつもあ

りがとう』といわれて嬉しかった」という感想が聞

かれた。この活動により実際に、玉名駅駐輪場の

自転車盗難が減少し、構内にたむろする若者の

姿も見られなくなったのだとか。「防犯は、きれい

な街づくりから。街がきれいだと、犯罪が起こりに

くくなるようです」と玉名女子高校の藤田先生は

話す。

 以前は、自転車やバイクの盗難など、街頭犯罪

が頻繁に起こっていたという玉名駅周辺。地元

住民により平成15年に「民間パトロールセンタ

ー」が設置された。隊員が駅周辺のパトロール

や駅駐輪場の整理などを行い、安心して利用で

きる場になり始めたが、平成17年3月にパトロー

ルセンターの活動が予算措置終了に伴い縮小

されることに。平成15年から取り組まれていた

学警連での防犯活動をもとに、玉名駅を利用する

高校生が中心となって「高校生でできる範囲で

パトロールセンターの手伝いをしよう!」と始め

られた。

 駅での活動以外にも、防犯の意識向上を目指

し、周知活動にも取り組んでいる。毎年7月に、

全6校の生徒有志による市内パレードを実施。

10月には、「全国地域安全運動」に合わせ「ボウ

ハンティア音楽祭」を開催している。また、玉名警

察署、熊本県警などの協力のもと、不審者対応用

防犯DVDを生徒たち自身が制作し、玉名市内の

小・中学校に配布。最終的には県下の小・中

学校、高等学校に配布された。不審者侵入時に

使える「さすまた」づくりなども行われている。

 各校、特色を生かした活動に取り組んでいる

のも面白い。地域のボランティアイベントなどに

参加する際は、北稜高は北稜太鼓、玉名女子高、

専大玉名高は吹奏楽などを披露している。玉名工

業高の生徒は、人の動きにセンサーが反応し、

「自転車に必ずカギをかけましょう」と呼びかける

「ボイスボックス」を製作。玉名署管内に10台

設置されている。

 こうした活動は、市内の治安回復や人々の防

犯意識の向上だけでなく、地域の活性化にもつ

ながっている。

 参加している生徒たちの多くは「学校行事の一

環」という意識が強く、自主的に取り組むまでに

は至っていないことが課題としてあげられてい

る。しかし、一部の生徒からは「活動することが当

たり前」との声も聞けるようになってきたそうだ。

「今後は、生徒たち自身による企画や運営ができ

ることを期待しています。気がついたときには、自

転車の整理や清掃、犯罪へ加担しないなどの行

動が自らの力で自然にできるようになって欲しい

ですね」と藤田先生。「そのためには、6校の連携

や組織力が大切です。1年ごとに持ち回りをして

いる事務局が平成20年度で一巡します。各校の

反省や経験をもとに、教員も力をつけて、教員主

導の活動から生徒の自主的な活動へ導いてい

かなければいけない」と将来への展望を話す。

 また、ボウハンティア活動は地区の学警連の

一部で高校生のみの活動にとどまっている。今後

は小・中学生も交えて、活動を広げていくことも

考えているという。防犯意識の向上や、地域活性

化、みんなが安心して暮らせる街づくりの一躍を

担う生徒たちの活動に期待が高まる。

活動開始

活動場所

メンバー

事 務 局

:平成15年(ボウハンティアの名称としての活動は平成17年)

:JR玉名駅周辺・玉名市内:玉名地区の6つの高校の生徒(約4,900名)。:玉名女子高等学校(平成19年度)

■活動を始めたきっかけ

玉名地区では、平成15年に学校等警察連絡協議会(以下、学警連)が発足した際に、玉名地区の6つの高等学校に1年間持ち回りで事務局を設置した。高校ごとにボランティア活動として玉名駅前の駐輪場整理、周辺清掃活動など地域の活性化活動を始めたことがきっかけ。

22 23

ボウハンティアのキャラクター。これも生徒たちが考えたもの 地域のイベントに参加。太鼓の演奏を披露する

CaseCase

防犯10

■概 要

全6校の生徒有志による市内パレードの様子

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 天明水の会は、水の大きな循環を通して自然を

学び、豊かな自然環境のもと、老人から子どもま

で、人が人らしく生き生きと生活できる活力ある地

域社会づくりを目的とし、いのちと環境に関わる

活動を県内各地で展開している。

 主な活動内容は、「漁民の森」などの植林活動、

緑川流域の清掃、カヌー教室、ノリの養殖で使わ

れた竹を再利用した竹炭づくり、水を用いた水質

浄化活動など多岐にわたる。

 活動のきっかけは、平成2年、有明海のアサリ

が全滅したことにある。原因を探っていくと、緑川

上流域の山や森の荒廃にたどり着いた。そこで、

有明海の現状を県民に広く知ってもらうため、平

成6年に緑川河口の5つの漁協と協力し、旧矢部

町(現山都町)の山地に広葉樹の苗木5,000本

を植樹。以来、面積にして42ha(サッカーコー

ト約85面分)、10万本以上の木々を植えてきた。

「熊本県内で、一番たくさんの木を植えた団体じ

ゃないかな」と、同会副理事長の木下修さんは笑う。

同会の植林活動では、山にたくさんの大漁旗が

翻る。昼食にはアサリの貝汁が振る舞われる。「漁

師と海からの感謝の気持ち」だそうだ。

 あわせて、緑川流域一斉清掃をする日「緑川の

日」(4/29)を決め、流域一帯に住む人々、ボラン

ティア団体などに参加を呼びかけた。参加者は

年々増加し、14年目を迎える現在では約25,000

人が参加している。

 活動の甲斐あって、最近では全盛期の半分ほ

どのアサリが戻ってきているという。

 これらの活動を通して一番変わったのは、漁師

や地域に住む人々の意識だと木下さんは言う。

漁師たちは、漁で使う網をゴミ集めに活用して海

の日に清掃活動を始めた。また、アサリはどういう

環境に生息しやすいのか考え、行動するようにな

った。地域の人々はできるだけゴミを出さないよう

に、家庭排水を流さないように、意識が高まってき

ている。「緑川は、流域に住む人が上下問わず一

体となって環境について考え、行動するきっかけ

を与えてくれた、そういう川なんです」。

  植林活動を通して訴え続けてきたメッセージ

は、ついにある実を結ぶ。平成13年、市民団体等

が実施する森づくりに対する補助事業が農林水

産省に誕生した。名称は「漁民の森活動推進事

業」。同会会長の濱邉誠司さんは「漁民の声が届

いた思いがした。『漁民の森』という名称は、全国

で実施される森づくりに力を与えることばになっ

たと感じました」と話す。同時に天明水の会も全国

的に注目されるようになり、ボランティアのネット

ワークは全国に広がった。「何かをしなければい

けないという使命感ではなく、『この問題を解決す

るために、こうしてみたらどうだろう?』とまずでき

ることから行動してみようという意識が先にありま

した。行動することこそが、たくさんの人に問題を

知らせるための一番効果的な方法だと思います」

と木下さん。

 この補助事業を活用し、緑川流域一帯の小・

中・高校などに呼びかけ、植林活動を展開。多く

の子どもたちが自然とふれあい、環境問題につい

て考えるきっかけとなっている。

 最近は、植林活動よりもつくった森の維持活動

の方が忙しいという。年間30回、植林活動を主

催した団体とともに、下草刈りを行っている。「漁

民の森づくりや植林活動が全国に広まり、緑川

の清掃も多くの人に参加してもらえるようになり

ました。環境問題に気づいてほしいという、当会の

目的は達成できつつあります」と木下さんは言う。

 これからは環境だけではなく、福祉や産業、教

育など複数のボランティア分野を組み合わせた

地域づくりに力を入れていきたいという。

 農業と福祉の融合として、地域の福祉施設で

入所者や職員を対象に、園芸を通して心身の状

態を改善する園芸療法の指導を始めている。教

育の分野では、天明地区の小・中学校に掲示

板の配布を計画中。同会からの植林・育林など

活動参加の募集や地域のイベントのお知らせな

ど掲示し、子どもたちに直接情報を発信し、地域

の行事に主体的に参加する人材発掘の場をつく

ろうとしている。

 「植林や清掃活動を通して、目的や思いを同じ

にする人たちのネットワークの強さを感じました。

今、人 と々地域との関係は稀薄になっています。

子どもも高齢者もみんなが、住みやすいまちをつ

くるためには地域のネットワークが必要になって

くる。『天明地区は住みやすいまちですね』と他の

地区がまねをしたくなるようなモデル地区を目指

しています」と希望に燃える。

活動開始活動場所

メンバー

代 表 者

:平成5年5月:熊本県内、緑川流域など:個人会員 53人(男性48人、女性5人)法人会員 1社:濱邉 誠司さん

■活動を始めたきっかけ

緑川上流にあるダムの一斉放流により、河口付近のアサリが全滅。アサリを獲っていた漁師がやめざるを得なくなった。かつての豊饒の海、有明海を復活させ、地域の元気を取り戻したいという思いから、水環境をテーマにした地域づくりの会を発足。旧矢部町(現山都町)に漁民からのメッセージとして「漁民の森」と名付けた植林活動を行った。

24 25

カヌー教室の一つ。緑川河口から島原まで、カヌーでこいでいく「有明海カヌー横断」

環境

■概 要

天明小・中学校の子どもたちによる植林活動。1本1本丁寧に植えている。この森は「未来の森」と名付けられた

CaseCase11

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 文通を通して、日本国内から世界中に友情の輪

を広げ、深めることを目的に活動をしている慶誠

高等学校ペンフレンドクラブ。クラブ活動と関連

するということで、使用済み切手を収集。換金し

て、物資の不足している国や被災地、福祉施設に

寄付金やマッサージ器、車いすなどを贈る活動を

20年来続けている。具体的にこれまでの活動を

ひもといてみよう。手作りした靴下を恵まれない

子どもたちに贈る「サンタの靴下運動」、雲仙普賢

岳噴火災害後の義援金寄付、カンボジアに小学

校を建てる運動に協力、熊本市の老人福祉センタ

ーにマッサージ器贈呈、被爆50年平和記念原爆

犠牲者の碑建立の募金、車いすボランティア協会

に書き損じハガキを寄付、24時間テレビ「愛は地

球を救う」の街頭募金活動、広島・長崎・沖縄に

千羽鶴を贈る…。実にさまざまな支援活動を行っ

ている。

 最近は、学校のそばにある身体障がい者福祉

センターへ車いすを寄贈する活動が毎年の恒

例。「本当に必要とされる方に利用していただける

し、地域の方との触れ合いにもなります」と顧問

の緒方浩教諭。授業が優先のクラブ活動なので、

昼休みの短時間を活用して、車いすを持って施設

を訪問する。クラブ生の女子生徒は「姉がペンフ

レンドクラブの先輩。とても楽しそうに活動して

いるのを見て、参加した。実際の活動で、車いすを

贈った時に喜んでもらえることが嬉しい」と目を

輝かせる。

 学校からそう遠くない熊本中央郵便局、熊本

東郵便局、大江郵便局、水前寺郵便局、江津郵便

局の5カ所に、使用済み切手を回収するためのボ

ックスを設置させてもらった。「一度の回収で多

い時にポリ袋ひとつ分くらい、5~10kgの使用済

み切手が集まります。離島の郵便局名が付いた

切手などが、収集家の方に喜ばれるので、切手

まわりを切り取らずに封筒ごと寄贈してもらえる

よう呼び掛けています」と緒方教諭。「大型ポリ袋

1個分相当の10kgで切手は約7万枚、約3,000円

になることに驚きました」とクラブ生もやり甲斐を

感じている。1~2カ月に一度のペースで、昼休み

に郵便局を回って切手を回収する。

 回収ボックスの上に、寄贈してくれる人の名前

と住所を書いてもらうノートを設置。使用済み切

手寄贈のお礼として、元来のペンフレンドクラブ

の活動でもある手紙を書くためだ。手紙には手作

りのしおりも同封する。「メッセージも一緒に寄せ

られていることが多く、とても勇気づけられます。

一時は、個人情報保護のために回収ボックスが

撤去されたこともありましたが、寄贈してくださる

方からのご要望で設置が復活できました」と緒方

教諭。切手回収時に郵便局に来ているお客さん

から「協力しますね」など声を掛けられたり、15

年近く協力し続けてくれる人もいる。熱心で協力

的な寄贈者が多くいるからこそ、活動は実を結ん

でいる。

 全国各地にある青少年ペンフレンドクラブは、

共通して「平和(Peace)」「友愛(Friendship)」

「教養(Culture)」の三つの信条を掲げて文通活

動を行っている。活動報告を行う全国大会もあ

り、そこで交流ができた福岡の高校と一緒に活

動をしたこともある。他校の活動を知ることは、

お互いに良い刺激になる。

 活動を評価してもらえることも多い。平成7年

に熊本市長より感謝状を受け、9年には逓信記

念日(現・郵政記念日)九州地方式典で功労賞

を、17年は国際ソロプチミスト財団より「社会ボ

ランティア賞」を受賞。18年には熊本ファミリー

銀行より「小さな親切運動 実行章」を受けた。ま

た、メディアに取り上げられる機会もある。15年

には世界最初の切手の使用が開始された5月6

日に、切手の有効利用をしているボランティアク

ラブとしてNHK熊本放送局の「テレメッセひの

くに」に出演。ボランティア活動の経緯や苦労

話、文通の喜びや夢を語った。熊本シティエフエ

ムにも何度も出演している。新聞に記事が載った

後には、県内の幼稚園や本渡や菊池の中学校か

らも使用済み切手の寄贈があった。遠くは、大阪

や岡山、鹿児島からもはるばる送ってくれる人が

いる。活動を、多くの人に知ってもらうと生徒た

ち自身の活動意欲も高まる。高校生活3年ごとに

メンバーが代替わりするクラブ活動。これから

先の活動を後輩たちに引き継いでいくことも課

題のひとつだ。

活動開始活動場所メンバー

代 表 者

:平成元年:主に熊本市:4人(教諭1人、生徒3人/平成20年3月現在):(顧問) 緒方 浩教諭

■活動を始めたきっかけ

ネパールの学校へ文房具を送る運動に協力するため、使用済み切手の収集、換金を、「郵便友の会」のボランティア活動のひとつとしてスタート。

26 27

マスコミの取材も。平成19年までに寄贈した車いすは26台にのぼる

手作りのしおり。切手を寄贈してくれた人へ送るお礼の手紙に同封している

寄贈

■概 要

車いす贈呈式では、贈呈した車いすを早速活用

CaseCase12

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 熊本の歴史や文化、自然などの魅力を知って

もらいたい。そして、熊本の観光資源をもっと生か

したい。そんな思いから活動を始めた「くまもと

よかとこ案内人の会」。仕事をしている人や高齢の

スタッフも多い。

 財団法人熊本国際観光コンベンション協会の

支援を得て、平成9年に熊本市の広報紙でメン

バーを募り、150~160人の応募者の中から講

習を経て133人がスタッフに。翌年3月に熊本国

際観光コンベンション協会主催で設立総会を開

催、役員や団体名の愛称を決め、45人が1期生と

して本格的に活動をスタートした。「『熊本に来て

良かった、もう一度訪れたい』という満足感を持っ

てもらえる。そんな温かいおもてなしの案内を、

シルバーパワーで行っています」と名越智博会長。

「お客さんが『何を知りたいのか』をつかむのが

ポイント。お客さんが自分たちだけで一回りしても

分からないところを説明すると、とても喜んでもら

えるんです。熊本の魅力を発見するお手伝いで

すね」。

 平成12年から、修学旅行の子どもたちを案内

する活動をスタート。修学旅行で熊本市に来る

学校へ観光資料を送ると、子どもたちは修学旅行

の班ごとにコースづくりをする。それぞれの希望

コースに合わせボランティアガイドを派遣する。

「今の子どもは日本の地理や歴史に弱いように

感じます。歴史や由来、秘密を教えて好奇心を沸

き立たせ、もっと知りたいと思ってもらうと勉強意

欲につながります。また、安心安全なボランティア

ガイドですので、学校の先生にも好評なんです」

と名越会長は自信を見せる。熊本には鹿児島か

らの修学旅行生が多いため、沖縄の小学校にも

積極的に誘致活動を行うほか、年1、2回、熊本

に赴任してきた公務員や自衛隊員を案内する

「熊本歴史体験会」も実施。熊本に愛着を持って

もらおうと活動を広げている。

 また、その時代や流行、ニーズに対応した観光

案内ガイドも積極的に展開している。

 平成15年のNHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』

放映前の平成14年10月には、宮本武蔵ゆかり

の場所を案内する「武蔵班」が誕生。熊本城築城

400年となる平成19年には、「くまもとさるく」と題

した5コースを設けた。「熊本城をさるく」「熊本城

の縄張りをまわる」「海舟の足跡を探る~その時

龍馬は??」「城下町きゃあめぐろ」「漱石が愛した

家と娘誕生」と、興味をそそるコース名でゆった

りのんびり“さるく(歩いて回る)”案内だ。平成20

年4月からは「細川家の秘宝~文・武・美~」「肥

後のラストサムライ!?~神風連の心にせまる~」

など新しく10コースに増やし、季節にちなんだ

スペシャルさるくコースも用意し、ホームページ

でも情報を公開した。その結果、毎日のようにガ

イド依頼があり、嬉しい悲鳴をあげている。

 活動の基盤になるのが、頻繁に行われる勉強

会だ。テーマごとに詳しいスタッフが学習リー

ダーとなり、現地を回って勉強している。

 名越会長は活動を通して、「多くの逸話がある

ことを知り、郷土のことが深く理解できて、歴史が

面白くなりました。また、日本全国や海外の人た

ちからいろんな話を聞くことができ、他県や外国

の歴史や文化にも興味が沸いてきました。一緒

に勉強するという気持ちでガイドをすることで、

様々な人と出会える素晴らしい機会を得、人と触

れ合うことで健康にもつながっているようです」と

顔をほころばせる。

 平成17年の「第14回全国ボランティアフェス

ティバル火の国くまもと」で交流ができたグルー

プ「熊本城周辺ボランティア」とは2カ月に一度の

会議を開き、情報交換をしている。外国語案内の

強化や会員の拡大、「くまもとさるく」のバージョン

アップにも意欲的だ。さらに、熊本県下43の観光

ボランティア団体との交流やネットワーク構築の

ため、熊本県と社団法人熊本県観光連盟の支援

で、平成20年3月末に「熊本県観光ボランティア

ガイド連絡協議会」が発足。名越会長が会長に

就任した。「ボランティア団体同士で連携し、お

互いのガイド技術を学び合い、知恵を出し合える

場にしたい。また、県外や海外ともつながりのあ

る歴史や文化などの素材を生かし、広がりある

活動をしていきたい」と、熊本の観光振興に対する

抱負を語る。

活動開始活動場所メンバー

代 表 者ホームページ

:平成9年12月:熊本市内:73人 (男女構成比はほぼ半々):名越 智博さん:

■活動を始めたきっかけ

「熊本の観光の役に立ちたい」「自身の郷土研究のため」「外国のお客さまを案内したい」という思いを持った有志が集まり発足。財団法人熊本国際観光コンベンション協会も後押し。

28 29

勉強会の様子。自分できちんと説明できるよう、熱心に話を聞くスタッフ

「くまもとよかとこ案内人の会」メンバー。おそろいの黄色いジャンパーが目印

観 光ガイド

■概 要

熊本城ガイド。ひとつひとつ分かりやすく、楽しく説明

CaseCase13

http://www.k-yokatoko.com/

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 留学生を始め外国からの来熊者や障がい者、

高齢者への着物の着付け活動を行っている「日本

現代和装研究会」。代表は、着付け歴25年、着付

け教室で指導する小池美代子さんが務める。「着

物を着ると、気持ちが温かく、豊かになれます。着

せる時、体同士が触れる部分でお互いのぬくもり

を感じ合う。そこから交流が生まれると思います」。

 着付けの3カ月無料講習に通い、着物の魅力

に夢中になった小池さん。子どもの卒業式に着物

で出席した際、近所の女性から着付けを教えてほ

しいと言われ、公民館で無料講習を始めた。その

うちに活動が広まり、正式に教室として生徒を抱え

るようになる。3年以上教室で頑張った生徒は、男

女の着付けや振り袖の変化結びも習得。習うだ

けでなくそれを生かす場がないかと考えていた

時、YMCAの留学生ホームステイ先を募集する

新聞記事を読む。「着付けならできる。留学生にも

喜ばれるはず」と連絡を取ったことが、着付けボラ

ンティアのきっかけとなった。

 海外青年協力隊を支援する「熊本県協力隊を

育てる会」を通して、海外から来た技術研修生を

対象に行う着物の着付けや和食づくりの体験イ

ベントに協力。「参加者と一緒になって楽しんで

います。外国からいらっしゃった方は、男女ともに

着物にとても興味を持っています。中には自分の

浴衣を持っている留学生もいるほどなんですよ」。

これまでにアメリカやモンゴル、ギリシャ、タイ、

中国、韓国、ブラジルなど、世界中の人と交流を

持った。また、小池さんは国際協力機構(JICA)を

通じて、中南米の国ボリビアの日本人移住地で

も講習を実施。「着付けを体験して、日本の着物

は世界一だと感じてもらいたい」と日本から着物

を持参し、すでに3~4回の講習を行ってきた。外

国人に着付けをする時は、主催者側のコーディネ

ーターや通訳スタッフもいるが、勉強のためと積

極的に日本語で話し掛ける。「ジェスチャーや片

言でも通じますが、いろいろな国の人と今以上に

交流が深まるよう、英語で話せるようにもなりたい

ですね」と小池さん。

 イベントにも引っ張りだこだ。熊本市国際交流

振興事業団の事業や平成19年の熊本城築城

400年祭はもちろん、熊本市のサンロード新市街、

下通り、上通りで行われた「ゆかたまつり」にも着

付け協力依頼が来た。「くまもと秋のお城まつり」

には第1回から、また、県が主催する熊本国際交

流祭典にも平成6年の第1回から毎年参加(14

回)。熊本市の成人式では、市から「市役所で着

付け直しコーナーをしてほしい」と依頼を受けた。

「私たちにとっても勉強する良い機会になってい

ます」。

 日本の成人式体験を希望する留学生や、身体

障がい者福祉センターで行われる障がい者の

成人式で晴着の着付けを行って15年以上にな

る。事前の着合わせで、着崩れしにくい着せ方

や着替えやすい体勢をしっかり把握。当日はお化

粧も行い、大変喜ばれている。「喜んでくれる笑顔

が良いんです。女の子の場合は特に、『もしかし

て成人式に晴着を着せてあげられないかも』と思

っていたお母さんが涙を流して感激してくれま

す」。その笑顔に支えられ、老人ホームでも活動

を始めた。少しでも多くの人に喜んでもらいた

いと、車いす介助についても研修している。

 留学生に喜ばれるはずと始めた着付けボラン

ティアは、今では地域の人にも大いに喜ばれる

活動になっている。

 女性用の着物はほぼ小池さんの私物を利用して

いるが、外国の男性の体に合う着物のサイズは既

製品になく、自分たちで仕立てなければならない。

金融機関や熊本市社会福祉協議会などの助成

を受けて購入した男性用の袴は、特に役に立って

いる。会の運営は資金面でも大変だが、「会の皆

さんが自分の技術向上を目標に『勉強させてもら

っている』という姿勢で取り組んでくれています」。

 着物と茶席はセットで体験してもらうことが多

く、ボランティアグループ「もえぎ」(CASE4参照)

と一緒に活動する場合も。生け花を体験してもら

うこともあり、他のボランティアグループとの連携

も取っている。

 小池さんは「着物は贅沢品だと思われることも

ありますが、『何かお役に立てることをしたい』と

いう原点を大切に、着物の持つ温かさを伝えて

いきたいです」と明るく意欲的に思いを語る。

会の発足

活動場所

メンバー

代 表 者

:平成2年(活動はこれ以前から少しずつ行っていた)

:主に熊本市。県外、海外出張もある:有資格者 19人 + 着付け教室生 :小池 美代子さん

■活動を始めたきっかけ

韓国人留学生のホームステイ先募集の新聞記事に、「着付けならできる」と連絡をし、実行したことがきっかけ。着付けの講師資格を取得した人の技術を生かす場、着付け教室の生徒の練習の場にもなっている。

30 31

外国からの来熊者は、着物を着ることをとても喜んでくれる

国際交流

■概 要

CaseCase14

着付けをする時、いろいろな話ができるのも活動の楽しみ

市役所で行った成人式の着付け直しコーナー

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 若い頃から身体を動かすことが好きだった

栗谷利夫社長。会社創業と同時に、早朝からの

ボランティア活動を始めた。当初は、ゴミ拾い

や老人ホームでの手伝いなどが主な活動。「早朝

に身体を動かすことが気持ちいい」という社員の

声もあり、定期的に続けていくことに。

 社員が増えていくと、イベントボランティアや

環境新聞発行など、活動規模も徐々に大きく

なっていった。規模が大きくなると、人手が必要に

なる。そこで、周りの企業に声をかけるようになり、

いつのまにか活動の輪が広がっていった。「はじ

めは小さかった運動が、やがて大きな力に変わっ

ていく。そのお役に少しでも立ちたい」。そんな

思いが徐々に広まり、今では企業がボランティア

イベントに参加する光景が多く見られるように

なった。例えば、熊本を良くしようという思いから

始まった「熊本くらし人祭りみずあかり」。同社は

開始当初の企画立案から参加し、イベントへの

参加を呼びかけた。たくさんのボランティアの力

により、イベントは大成功。今では、多くの企業が

ボランティアとして参加する大イベントとなり、

熊本の秋の風物詩となっている。

 企業として活動をしている理由は、「無償で動

くというメンタルを養うことで、人間的に豊かな

心の持ち主になることができる」という栗谷社長

の考えから。毎月1日は、社員全員が早朝からゴ

ミ拾いや老人ホームでのボランティアを行って

いるほか、チャリティーイベントへの参加、イベ

ントボランティアなど、ほかの活動にも積極的に

参加している。社内でのボランティア意識を高

めるために、フィランソロピー委員会を設け、社

員が活動に参加しやすい環境を作っているほ

か、新入社員研修プログラムの中には、ボラン

ティア研修が盛り込まれている。はじめは早朝か

らの作業ということもあり、慣れない社員も多い

そうだが、月日が経つにつれ顔つきが変わり、積

極的に活動に参加するようになるという。「活動

を通じてたくさんの人と出会えることが魅力。い

ろいろな話が聞けておもしろいですよ」と話すの

は、フィランソロピー委員長の緒方さん。「はじめ

は早朝から活動をするということが大変なときも

ありましたが、今はいい運動になり、気持ちよく仕

事ができています。チャリティーイベントへの参

加を呼びかけるときは、参加希望者が多数で困

ってしまうほどなんです」。

 同社が活動する上で考えていることは、「率先

して動くが、でしゃばり過ぎず」ということ。参加

者が少なく、活動を広めていかなければいけな

い成長期には、リーダーシップを取りながら活動

をする。しかし、ある程度任せることができるよう

になれば、いち参加者として活動に参加。あまり

会社のカラーを強く出さないように意識してい

るという。一つの企業から多く出すぎると、他の

人たちが参加しづらくなるというのがその理由。

たくさんの人に参加してほしいという願いから

の活動方針だ。ほかにも、時間を区切ったプロ

グラムを立てることで、参加者の負担を減らす

工夫をするなど、活動を長く続けてもらえるよう

アイデアも同社から提案している。

 「ボランティア活動は、自分のためにやって

いると思っているんですよ」と話す栗谷社長。

「活動を通じて得ることができた人のつながり

は、今の私にとってかけがえのないもの。たまに

は、事業発展へのヒントをもらうことだってある

んです」と笑顔で話す。ボランティア活動では、

さまざまな年代の人たちと接することがある。

その中で得る情報は、とても価値が高い。だから

こそ、多くの企業に参加をしてほしいと考えて

いる。「さまざまな人と話し、情報交換をすること

は、社会的にも素晴らしいこと。それが、人の役

に立つフィランソロピー活動を通じて行われる

のであれば、なお素晴らしい。人を救いたいと

いう温かい気持ちが集まる場所にこそ、良い情

報があるものですよ。それに、身体を動かすこと

は脳の活性化にも繋がりますしね。本当に自分

のための活動ですね」。今後も要請があれば、

活動を広げていく予定。同社の活動はこれから

もずっと続いていく。

活動開始活動場所メンバー代 表 者

:昭和56年1月:主に熊本市内:(社員) 220人:(社長) 栗谷 利夫さん

■活動を始めたきっかけ

会社創業当初からフィランソロピー※活動に積極的に参加、展開。若い頃からさまざまな職業を経験してきた栗谷社長が、「人生は日が当たったり当たらなかったりする。身近でできるところから何かしてみよう」と活動を始めた。

※フィランソロピー(Philanthropy):人類愛。博愛。また、慈善奉仕活動。(企業などの)社会貢献活動。ギリシャ語のフィラン(愛)とアンソロポス(人類)を語源とする合成語。

32 33

「熊本くらし人祭り みずあかり」の準備の様子。熊本城長塀前の坪井川にろうそくを設置した

社会貢献

■概 要

YMCAチャリティープチ駅伝。仮装して行うなど楽しめる要素を織り込む

CaseCase15

Page 19: ボランティア活動事例集...2 3 36 市町村社会福祉協議会(ボランティアセンター)一覧 24 Case 11 環境 ~海から山へのメッセージ 全国に届いた漁民の声~

A

高さ(A)×8~12倍の長さが必要

表面には滑り止めテープを貼る

 緑川に近い静かな住宅街にある「歩師奇屋」。

今から約130年前に建てられたという木造平屋

づくりで、屋内には13台のパソコンが並ぶパソコ

ン室や学校の調理室にあるような調理台3台が

設置された調理室、和室、囲炉裏を囲んで団らん

できる談話室などを備えている。

 利用目的や利用する人に特に制限はなく、大き

なイベントなどの時には県外からやってくる人も

少なくない。利用方法も、食材を持ち寄っての食事

会や俳句の会の集まり、シニア世代のためのパソ

コン教室、敷地が広いのでバンド演奏の練習に

使われるなどさまざまだ。

 「歩師奇屋」という名前には

「歩」…一歩ずつ

「師」…誰もが先生(師)になれる

「奇」…おもしろくて不思議なこと

「屋」…「歩」、「師」、「奇」を組み合わせた場所

という意味が込められている。「人はそれぞれの

人生で得た経験や技術があります。参加を呼び

かけるとき『何もできないから』という声をよく耳に

しますが、それは違います。その人なりにできるこ

とが必ずある。時には誰かに教えたり、教えられた

り…、そうやって教える喜び、学ぶ喜びなどがある

場所なんです」と話す主宰者の安藤實奈子さん。

 「同じ世代だけの交流では物足りない」と、所有

の農地を生かした子どもたちとシニア世代との交

流イベントも開催している。熊本市の児童養護施

設や地域の子どもたちを招いて、田植え、稲刈り、

どんどや、野草摘みなど、昔遊びや伝統行事などを

伝えている。「子どもたちは昔の知恵や思いやりを、

シニア世代は生きがいを、お互いに学んだり、感

じたりしています」。

 安藤さんとユニバーサルデザイン(UD)の出会

いは、自宅を訪れたUDの世界的な権威者からの

「このお家ってUDの家ね!」という一言がきっかけ

だった。「母と自分が住みやすいように、居心地が

良いように考えてつくった家。UDと意識していな

かったので、驚きました」。それからUDの勉強会

などに参加し、県内の施設のUDチェックなどを通

してある考えにたどり着いた。「もう出来てしまって

いるものに『これが悪い』『あれがない』と言っても

始まらない。大切なのは、今あるものの中でどう

補えば使いやすいものになるか、居心地の良い

場所になるか、を考えてちょっとだけ手を差し伸べ

てあげること。“心のUD”に気づいたんです」。

 「心のUD」とは、構造などハード面の不足を知

恵や工夫で補うこと。例えば、車いすを使用する

人がクローゼットを使う場合、その人に合った長

さのS字型のフック(左ページ下図参照)を使え

ば、その人の使いやすい高さに変えることができ

る。段差のある場所は、角材やベニヤ板などでつ

くる簡易スロープで対応。取り外しができ大掛か

りな工事なども必要ない。歩師奇屋でも、何らか

の不自由を抱えた人をその人だけ浮いた存在、

特別な人にしない工夫や配慮がなされている。例

えば、車いすを使用する人や膝に障がいがある

人とともに食事をする時に食卓が低い場合は、昔

使われていた足つきの高膳を食卓の上にのせて

高さを補い、他の方はいすを使用して同じ目線

で食卓を囲めるようにしている。「みんなが正座や

あぐらで座っている中、自分一人だけ高い位置で

食べていたら、肩身の狭い思いをするでしょう? 

自分がその人の立場だったらどう感じるか、思い

やりながら行動すれば、誰にでもできる簡単なこ

とです」と笑顔で話す。

 「熊本県ユニバーサル・サービス協議会」の

会長も務める安藤さん。歩師奇屋のネットワーク

活動を通してできた仲間と平成17年に設立した。

ユニバーサル・サービスとは性別や年齢、国籍、

障がいの有無など、どのような条件にも関わり

なくすべての人々に公平なサービスと情報を

提供すること。「分かりやすく言うと困っている人

への接し方や意識を学ぶこと。困っている人の立

場になるというのは、その人が不安に感じている

ことを理解することです。勾配のあるところで車い

すに乗る、視覚障がい者の方が使う白杖を体験

する、またはその介助をして怖さや不安を体験す

る、それが一番の近道です」と語る。

 県とのパートナーシップ事業で、旅館業に携

わっている人を対象にUDをアドバイスする「『宿

のおもてなし』ヒント集」を仲間と作成。今後も心

のUDやユニバーサル・サービスをより多くの人

に知ってもらうため、普及活動に力を入れていき

たいという。「UDを理解し、行動できる人が増え

れば、過ごしやすい環境や暮らしやすい街にな

っていく。お声をかけていただければ、どこにでも

お話にいきますよ!」と意気込んでいる。

活動開始活動場所代 表 者

:平成12年:嘉島町内:安藤 實奈子さん

■活動を始めたきっかけ

10年ほど前、実母の介護のために名古屋から31年ぶりに帰ってきた安藤さん。「一人になっても心配のないように自分の居場所や社会をつくらなければ…」という思いがあり、「インターネットができる環境とご飯を食べる仲間を」と、パソコン3台と調理台を自宅の離れに設置。人が集える場所、食事が作れて会食ができる場所として地域に開放した。

34 35

「『宿のおもてなし』ヒント集」。障がい者だけでなく高齢者や外国人の方たちが心地よく過ごせる環境づくりのヒントがまとめられている

手の届かないクローゼットのバーや段差も、S字フック、簡易スロープで使いやすいものに早変わり

UD

■概 要

稲刈りの様子。シニア世代が先生となって、手取り足取り教える。子どもたちのそばには必ず大人がついて見守っている

簡易スロープ

S字フックの使い方

CaseCase16

Page 20: ボランティア活動事例集...2 3 36 市町村社会福祉協議会(ボランティアセンター)一覧 24 Case 11 環境 ~海から山へのメッセージ 全国に届いた漁民の声~

※ボランティア活動については、最寄りの市町村社会福祉協議会の「ボランティアセンター」までお問い合わせください。

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熊本市社会福祉協議会八代市社会福祉協議会人吉市社会福祉協議会荒尾市社会福祉協議会水俣市社会福祉協議会玉名市社会福祉協議会天草市社会福祉協議会山鹿市社会福祉協議会菊池市社会福祉協議会宇土市社会福祉協議会上天草市社会福祉協議会宇城市社会福祉協議会阿蘇市社会福祉協議会合志市社会福祉協議会城南町社会福祉協議会富合町社会福祉協議会美里町社会福祉協議会玉東町社会福祉協議会和水町社会福祉協議会南関町社会福祉協議会長洲町社会福祉協議会植木町社会福祉協議会大津町社会福祉協議会菊陽町社会福祉協議会南小国町社会福祉協議会小国町社会福祉協議会産山村社会福祉協議会高森町社会福祉協議会南阿蘇村社会福祉協議会西原村社会福祉協議会御船町社会福祉協議会嘉島町社会福祉協議会益城町社会福祉協議会甲佐町社会福祉協議会山都町社会福祉協議会氷川町社会福祉協議会芦北町社会福祉協議会津奈木町社会福祉協議会錦町社会福祉協議会あさぎり町社会福祉協議会多良木町社会福祉協議会湯前町社会福祉協議会水上村社会福祉協議会相良村社会福祉協議会五木村社会福祉協議会山江村社会福祉協議会球磨村社会福祉協議会苓北町社会福祉協議会

熊本市南千反畑町10-7八代市千丁町新牟田1502-1人吉市西間下町永溝41-1荒尾市下井出193-1水俣市牧ノ内3-1玉名市岩崎88-4天草市今釜新町3699山鹿市菊鹿町下永野650菊池市隈府888宇土市浦田町44上天草市松島町合津3433-52宇城市不知火町高良2273-1阿蘇市内牧976-2合志市須屋2251-1下益城郡城南町宮地1050下益城郡富合町清藤405-3下益城郡美里町永富1510玉名郡玉東町木葉764玉名郡和水町藤田352玉名郡南関町小原1405玉名郡長洲町2771鹿本郡植木町岩野238-1菊池郡大津町室151-1菊池郡菊陽町久保田2623阿蘇郡南小国町赤馬場3388-1阿蘇郡小国町宮原1530-2阿蘇郡産山村大利657-2阿蘇郡高森町大字高森1258-1阿蘇郡南阿蘇村大字久石2705阿蘇郡西原村小森572上益城郡御船町御船1001-1上益城郡嘉島町上島551上益城郡益城町宮園708-1上益城郡甲佐町岩下24上益城郡山都町大平91八代郡氷川町島地651葦北郡芦北町大字湯浦1439-1葦北郡津奈木町小津奈木2123球磨郡錦町一武1587球磨郡あさぎり町上北1874球磨郡多良木町多良木1571-1球磨郡湯前町1693-37球磨郡水上村岩野2678球磨郡相良村深水2500-1球磨郡五木村甲2672-41球磨郡山江村山田甲1373-1球磨郡球磨村一勝地乙1-5天草郡苓北町志岐660

096-322-23310965-30-12000966-24-91920968-66-29930966-63-20470968-73-90500969-24-01000968-48-46660968-25-50000964-23-37560969-56-24550964-32-13160967-32-1127096-242-70000964-28-7030096-357-29390964-47-00650968-85-31500968-86-45060968-53-27000968-78-1440096-272-1141096-293-2027096-232-35930967-42-15010967-46-55750967-23-93000967-62-21580967-67-0294096-279-4141096-282-0785096-237-2981096-214-5566096-234-11920967-82-33450965-52-50750966-86-02940966-61-29400966-38-20740966-49-45050966-42-11120966-43-41170966-44-07820966-35-00930966-37-23330966-24-15080966-32-00220969-35-1270

No. 社 協 名 所 在 地 電話番号

Page 21: ボランティア活動事例集...2 3 36 市町村社会福祉協議会(ボランティアセンター)一覧 24 Case 11 環境 ~海から山へのメッセージ 全国に届いた漁民の声~

「火の国ボランティアの星」火の国ボランティアフェスティバル シンボルマーク

ボランティア活動事例集平成20年3月作成/社会福祉法人 熊本県社会福祉協議会

〒860-0842 熊本市南千反畑町3番7号TEL 096-324-5470

発行/熊本県

 「全国ボランティアフェスティバル火の国くまもと」大会ポスターのコピー「ボランティアの星になろう!」からヒントを得て、火の国の「火」を星(★)になぞらえ図案化しました。赤い「人」と金色(黄色)の「V」が組み合わさって、熊本県民の「熱か心」とボランティアの「輝き」を表現しています。また、右肩上がりに3つの星が並ぶ図案は、手を取り合ってボランティア活動を広げ、成長させようという私たちの意思を表しています。