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持続可能な開発目標(SDGs)と 気候変動 増田 大美 プログラムコーディネーター 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNUIAS) 2019年世界湿地の⽇シンポジウム 2019年1⽉24⽇ 14︓00-17︓00

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持続可能な開発目標(SDGs)と気候変動

増田 大美

プログラムコーディネーター

国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU‐IAS)

2019年世界湿地の⽇シンポジウム2019年1⽉24⽇ 14︓00-17︓00

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国連⼤学 サステイナビリティ⾼等研究所(UNU‐IAS)

国連⼤学 (UNU)

Mission︓⼈類の⽣存、開発、福祉など国連とその加盟国が関⼼を寄せる緊急性の⾼い地球規模課題の解決に取り組むため、共同研究や教育を通じて寄与すること

・世界12カ国に13の研究所。本部は⽇本・UNU-IASは、その中でも⼤学院の教育機能をもつシンクタンク

国連⼤学サステイナビリティ⾼等研究所(UNU-IAS)

Mission:―サステイナビリティとその社会的・経済的・環境的側⾯に注⽬し

ながら、 政策対応型の研究と能⼒育成を通じて、持続可能な未来の構築に貢献すること

―国際的な政策決定や、国連システム内の議論に有益で⾰新的な貢献を果たすことで国際社会に奉仕

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国連⼤学 サステイナビリティ⾼等研究所研究プロジェクト

教育と知識⽣成の取組を通した持続可能な解決策の提案• SDGsを達成するためのガバナンス(組織・制度のあり⽅等)• 持続可能な開発のための

教育• 都市の⽔環境

1.持続可能な社会

⽣物多様性及び⽣態系サービスの持続的利⽤の推進• SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ• ⽣態系サービスの評価

気候変動への適応や緩和に向けた戦略策定• 低炭素技術の移転• 災害リスク軽減

2.⾃然資本と⽣物多様性

3.地域環境の変化と

レジリエンス

SDGsを実施するためのガバナンス研究プロジェクト(GSD) Project: Governance for Sustainable Development

・SDGs・持続可能な開発のための2030年アジェンダの実施・フォローアップに向けて政策提案等を通じて貢献・アジア太平洋地域のケーススタディ等も含め、国家・地域レベルでのSDGs実施プロセスを分析

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⽬次

1.SDGsに関する動向

2.気候変動に関する動向

3.SDGs × 気候変動

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環境と開発に関する議論の進展

開発

気候変動

⾃然環境

環境と開発

1980

1992国連気候変動枠組条約

採択

1971 ラムサール条約採択

1992リオサミット

(国連環境と開発に関する世界会議)

Agenda 21

1990 20102000 2020

2015持続可能な開発のための2030アジェンダ及びSDGs

の策定

1987ブルントラント委員会報告(我ら共有の未来)

2002ヨハネスブルク地球サ

ミット

2012リオ+20 (国連持続可

能な開発会議)(我々の求める未来)

1973 ワシントン条約採択

2015パリ協定採択

1997京都議定書

採択

1992 生物多様性条約採択

1994 砂漠化対処条約採択

2000 カルタヘナ議定書採択

2010 名古屋議定書採択

1996OECD-DAC新開発戦略IDGs採択

1990人間開発報告書(UNDP)

1960〜第1次

国連開発の10年

1990世界開発報告(世銀)

2010MDGs国連首脳会合

2005国連首脳会合

2000国連ミレニアムサミット

MDGs

1972国連環境人間会議

(ストックホルム)

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持続可能な開発

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⽬次

1.SDGsに関する動向

2.気候変動に関する動向

3.SDGs × 気候変動

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持続可能な開発のための2030アジェンダ とSDGs 

持続可能な開発のための2030アジェンダ持続可能な開発⽬標Sustainable Development Goals (SDGs)-Millennium Development Goals (MDGs) (2000-2015)の後継-2015年9⽉、国連サミットで採択-SDGs: 17 のゴール, 169 のターゲット、 232 の指標-先進国・途上国の両⽅に適⽤される世界全体のゴール-基本理念︓「我々の世界を変⾰する」「誰⼀⼈取り残さない」

Photo from IISD Reporting Services on United Nations Sustainable Development Summit 2015, 5‐27 September 2015, UN Headquarters, New York

Millennium Development Goals (MDGs)

Sustainable Development Goals (SDGs)

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SDGs における気候変動の位置づけ1持続可能な開発のための2030アジェンダでは・・

パラ14(直⾯する課題)

我々は、持続可能な開発に対する⼤きな課題に直⾯している。

・・・(中略)…

我々の時代において、気候変動は最⼤の課題の⼀つであり、すべての国の持続可能な開発を達成するための能⼒に悪影響を及ぼす。世界的な気温の上昇、海⾯上昇、海洋の酸性化及びその他の気候変動の結果は、多くの後発開発途上国、⼩島嶼開発途上国を含む沿岸地帯及び低地帯の国々に深刻な影響を与えている。多くの国の存続と地球の⽣物維持システムが存続の危機に瀕している。

(出典)外務省仮訳

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SDGs における気候変動の位置づけ2ゴール13

気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

13.1 すべての国々において、気候関連災害や⾃然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応⼒を強化する。

13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。

13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、⼈的能⼒及び制度機能を改善する。

実施⼿段

13.a 重要な緩和⾏動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施し、可能な限り速やかに資本を投⼊して緑の気候基⾦を本格始動させる。

13.b 後発開発途上国及び⼩島嶼開発途上国において、⼥性や⻘年、地⽅及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能⼒を向上するメカニズムを推進する。

*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を⾏う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。

(出典)外務省仮訳

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注)2015年9⽉、SDGsが国連サミットにて採択された。その後2015年12⽉、パリ協定がUNFCCCのCOP21にて採択された。

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SDGsの実施に向けて

政府

地⽅公共団体

持続可能な開発のための2030アジェンダ 及びSDGsの策定(2015)グローバル

Global

国家National

地⽅Subnational

地域Regional

アジア太平洋

政府 政府

HLPF(High-Level Political Forum on Sustainable Development)にてフォローアップ

VNR(Voluntary National Reviews)提出

北⽶

ラテンアメリカ・カリビア

欧州アフリカ

地域毎フォーラムにてフォローアップ

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地⽅公共団体

地⽅公共団体

マルチステークホルダー︵⺠間︑市⺠団体等︶

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世界全体でのSDGs 実施のレビュー持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム (HLPF) • 背景︓2012年国連持続可能な開発会議(「リオ+20」)においてマンデート• 開催頻度︓毎年(国連経済社会理事会(ECOSOC)のもと)、また 4年に1回 (各国⾸脳級、

国連総会のもと)• 役割︓国連における持続可能な開発の主要プラットフォーム/2030年アジェンダ及びSDGsを世

界全体でフォローアップ・レビューする上で中⼼的役割• 政治的リーダーシップと経験共有、マルチステークホルダーの参加を通じてSDGs実施を促進

• HLPFにおけるテーマ別レビュー 2017:Eradicating poverty and promoting

prosperity in a changing world 2018:Transformation towards sustainable

and resilient societies 2019:Empowering people and ensuring

inclusiveness and equality

→2019: 7⽉ ECOSOCのHLPF…Goal13(気候変動)がテーマ別レビューの対象9⽉ 国連総会のHLPF…2030年アジェンダ・SDGsの2015年採択後、初の総括的レビューの場。

(9⽉23⽇ Climate Summit 9⽉24⽇、25⽇ SDG Summit)

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国家レベルの取組

例︓アジア太平洋地域各国はSDGs実施に向けた体制を整えている。国家計画や予算へのSDGsの主流化が進みつつある。

省庁間連携・組織強化実施責任の明確化(マッピング)(インド)調整機構の創設(⽇本、インドネシア、フィリピン、 トルクメニスタン 、アルメニア、中国)専任省庁の創設(スリランカ)

SDGsの国内法への反映(インドネシア、パキスタン)SDGsの国家開発計画・政策への盛り込み

(中国、フィリピン、アゼルバイジャン)

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様々なステークホルダーによる取組○SDGsは参加型で策定された(国連の「オープン・ワーキング・グループ」)。○国だけではなく⾮政府アクターの関わりが重要。企業、研究機関・⼤学、市⺠団体など○多様なアクターを受け⼊れた包摂的・協調的なガバナンスを構築する必要。

多くの国では国家以外のセクターがSDGs実施に関わる仕組みを設けている・⼜は予定⺠間セクターの例・ESG⾦融(環境・社会・コーポレートガバナンスに考慮した⾦融)の広がり「投資実務において、環境上の問題、社会の問題および企業統治の問題など長期的に

企業価値向上を牽引する要素を考慮しないことは、受託者責任に反することである。」

・グリーンボンド発⾏額の急増⇒従来のような、企業の社会的責任(CSR)の⽂脈で環境や社会に貢献するという捉え⽅と異なり、ESGに取り組むことが経営戦略として重要との認識(取り組まないことか経営リスクとなる)

地⽅⾃治体の例SDGsのローカライゼーションの広がり⇒2018年HLPFにおける⾃治体連合(UCLG)の発表では、多くの国で⾃治体は⻑期計画・ビジョンにSDGsを反映(南ア・ダーバン、独・マンハイム、⽶・NY、エクアドル・キト、韓国・ソウル等)

(出典) 国連グローバルコンパクト(UNGC)、国連環境計画⾦融イニシアチブ(UNEP FI)、国連責任投資原則(PRI)等による報告書「21世紀の受託者責任」(2015年9⽉)http://www.unepfi.org/fileadmin/documents/fiduciary_duty_21st_century_jp.pdf

(出典)UCLG website,Towards the Localization of the SDGs -Local and Regional Governments' Report to the 2018 HLPF (UCLG, 2018)

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• 総理が本部⻑、全閣僚が構成員を務める• 国内実施と国際協⼒の両⾯で政府⼀体の

取組体制を構築• 省庁横断的に総括、優先課題を特定• 「SDGs実施指針」の策定(2016年12⽉)• 「SDGsアクションプラン2018」公表

(2017年12⽉)• 「ジャパンSDGsアワード」の実施

(第1回︓2017年12⽉)

持続可能な開発⽬標(SDGs)推進本部(2016年5⽉設置)

環境基本計画

• 第5次環境基本計画を閣議決定(2018年4⽉)

内閣府(地⽅創⽣推進事務局)

• SDGs未来都市の選定(2018年6⽉)「第1回ジャパンSDGsアワード」表彰式

持続可能な開発⽬標(SDGs)推進本部

⽇本のSDGs 実施体制14

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⽇本の地⽅公共団体の取組︓SDGs未来都市(背景)○中⻑期を⾒通した持続可能なまちづくりのため、地⽅創⽣に資する、地⽅⾃治体による持続可能な開発⽬標(SDGs)の達成に向けた取組の推進が重要と認識。

○内閣府において、地⽅創⽣分野における⽇本の「SDGsモデル」を構築するとして、SDGs未来都市・⾃治体SDGsモデル事業を実施。

概要・SDGs未来都市(29の⾃治体)①⾃治体のSDGs推進のための取組②SDGs達成に向けた事業の実施・⾃治外SDGsモデル事業として、 29のうち10⾃治体に資⾦的⽀援

・成功事例の普及展開(国内外への発信)・関係省庁横断的な⽀援

選定されたSDGs未来都市(2018年6⽉)

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(出典)内閣府 SDGs未来都市ホームページ

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⽇本のSDGs実施に対する評価(例)

ドイツのベルテルスマン財団と持続可能な開発⽅法ネットワーク(SDSN、研究機関や⼤学、企業、市⺠団体などを含むステークホルダーのネットワーク)は、各国のSDGs実施状況を第三者的にレビューし、共同で報告書SDG Index and Dashboardsを発表。

2018年の報告書では、⽇本はSDG1(貧困)、SDG2(飢餓)、SDG5( ジェンダー)、SDG7(エネルギー)、SDG12(つくる責任つかう責任)、SDG13(気候変動)、SDG14(海洋資源)、SDG15(陸上資源)、SDG17(実施⼿段)の7つのゴールについて、達成の度合いが低いと評価される指標が含まれている。

(出典)http://sdgindex.org/reports/2018/

※緑⾊が良い状態→⻩⾊→オレンジ→⾚となるにつれ悪い状態(SDGs達成から遠い)を⽰す

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ラムサール条約による報告書(2018年7⽉)

「湿地とSDGs

ーSDGs達成のため、湿地の保全・賢明な利⽤・再⽣の規模を拡⼤する」

・SDGsの実現のためには、ラムサール条約でめざす湿地の保全と再⽣、賢明な利⽤がきわめて重要

・ラムサール条約の第4次戦略計画(2016〜2024年)では4つの包括的な戦略⽬標と19の具体的ターゲットを特定、SDGs達成を⽀援

・SDGs、⽣物多様性条約の愛知ターゲット、ラムサール条約戦略計画等、既存の多国間協定間による取組の⼀層の統合、相乗効果を上げるよう求める

(出典)https://www.ramsar.org/news/wetlands-and-the-sdgs

SDGsにおける湿地の位置づけ1

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ラムサール条約による報告書(2018年7⽉) 続

SDGsにおいて「湿地」はGoal6 ・Goal15に明⽰的に記載されているが、全てのGoalに関わる

(出典)https://www.ramsar.org/news/wetlands-and-the-sdgs

SDGsにおける湿地の位置づけ218

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⽬次

1.SDGsに関する動向

2.気候変動に関する動向

3.SDGs × 気候変動

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○UNFCCCのCOP21(2015年11⽉30⽇〜12⽉13⽇、於︓フランス・パリ)にて 「パリ協定」採択

2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み

歴史上初めて、全ての国が参加する公平な合意

○2016年4⽉22⽇にパリ協定署名式を⽶国・NYで開催

⽇本を含む175ヶ国・地域が署名(⼀つの国際条約に対する⼀⽇の署名国として史上最多)

パリ協定の採択・署名

<パリ協定のポイント>

・世界共通の⻑期⽬標として平均気温の上昇を2℃より⼗分下⽅に抑えること(2℃⽬標)の設定更に1.5℃までに抑えるよう努⼒することへの⾔及

・主要排出国を含む全ての国が削減⽬標を作成、提出、維持し、その⽬的を達成するため国内措置を遂⾏することを規定。また、削減⽬標を5年ごとに提出・更新

・適応の⻑期⽬標の設定、各国の適応計画プロセスや⾏動の実施、適応報告書の提出と定期的更新

・先進国が資⾦の提供を継続するだけでなく、先進国以外の締約国も⾃主的に資⾦を提供

・5年ごとに世界全体の実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)

・全ての国が共通かつ柔軟な⽅法で実施状況を報告し、レビューを受けること

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(出典)環境省

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(出典)環境省、UNFCCC

UNFCCC、パリ協定のもとの取組

・パリ協定 2015年COP21にて採択、2016年11⽉4⽇発効

各国の約束草案…パリ協定採択前から提出

パリ協定4条19に基づく⻑期戦略の提出(カナダ、独、⽶など10ヶ国が提出済)

・パリ協定の実施指針 …緩和・適応・⽀援に関する情報提供⽅法等、パリ協定を2020年以降に実施するための包括的かつ詳細なルールに関する交渉を経て、2018年COP24にて採択

・タラノア対話等のハイレベル対話 …パリ協定の⽬標達成に資する世界中の優良事例の共有、気候資⾦の動員、2020年までの取組に関する対話。2018年COP24にてハイレベル対話を実施。※タラノア︓COP23議⻑国であるフィジーの⾔葉で、包摂性・参加型・透明な対話プロセスを意味する。

気候変動に関する世界全体の取組

パリ協定実施指針の採択時

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様々なステークホルダーによる取組○⾃治体、企業など全ての主体の気候変動に関する取組促進がCOPでも⼤きく取り上げられた。〇マルチレベルの取組により各国の約束NDCの引き上げを⽬指す動き

⺠間セクターの例ESG投資の拡⼤の中、・独⾃の中⻑期の削減⽬標(例︓Science-Based Targets企業版2度⽬標)を設定、対策に着⼿・RE100への世界からのコミット・化⽯燃料ダイベストメント・⾦融安定理事会(FSB)気候関連財務情報開⽰タスクフォース(TCFD)による提⾔2017年6⽉既存の財務情報開⽰と同様、気候関連財務情報を経営層も把握すること、年次財務報告書と併せて開⽰し内部監査等の対象とすることなどを重視

地⽅⾃治体の例COP24 においても、・都市と地域におけるタラノア対話・カトヴィツェ気候シフト等、多くの地⽅公共団体が参加、気候変動対策を共有

(出典)環境省http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010101.html#n1_1_1_3https://www.env.go.jp/press/files/jp/109759.pdf

(出典)https://www.iges.or.jp/jp/climate-energy/cop24/20181226.htmlhttp://japan.iclei.org/index.php?id=4019

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(出典)環境省

〇地球温暖化対策の推進に関する法律(1990)に基づく取組

〇パリ協定に関する動向

・2015年7⽉ 約束草案の策定・提出…2030年度の中期⽬標として、温室効果ガスの排出を2013年度⽐26%削減

・2016年5⽉ 地球温暖化対策計画の策定(閣議決定)…中期⽬標と併せ、⻑期的⽬標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を⽬指すことを位置付け

〇気候変動適応法(2018年)…気候変動適応の推進に特化した法律。気候変動適応計画、気候変動影響評価、適応の情報基盤、地域における適応の推進、適応の国際展開等について規定。

気候変動に関する⽇本の取組

http://www.adaptation‐platform.nies.go.jp/index.html

コメの収量の将来予測

砂浜消失率の将来予測

<対象期間>21世紀末(2081年~2100年)

<シナリオ>厳しい温暖化対策をとった場合(RCP2.6)

※品質の良いコメの収量

適応の情報基盤の整備 適応策の事例︓⾃然⽣態系サンゴのモニタリングや移植・増殖

• 海⽔温の上昇により、サンゴの⽩化が深刻な状況。

• サンゴ礁⽣態系の状況をモニタリングするとともに、劣化したサンゴの回復を⽬指し、サンゴの移植や⼈⼯岩礁での増殖を⾏っている。

着床具に付着して成⻑したサンゴ

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気候変動におけるSDGsの位置づけパリ協定では・・

持続可能な開発の⽂脈で気候変動策を位置づけ

前⽂

・・・(中略)・・・気候変動に関する⾏動、気候変動に対する対応及び気候変動の影響と持続可能な開発のための衡平な機会及び貧困の撲滅との間に存在する内在的な関係を強調し、・・・

第2条1項

この協定は、条約(その⽬的を含む。)の実施を促進する上で、持続可能な開発及び貧困を撲滅するための努⼒の⽂脈において、気候変動の脅威に対する世界全体による対応を、次のことによるものを含め、強化することを⽬的とする。…

(出典)パリ協定 外務省仮訳

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気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)※世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設⽴された政府間組織。195の国・地域が参加。

2013-14年 第5次評価報告書

2018年 IPCC1.5℃報告書

※パリ協定において1.5℃が⾔及された際、UNFCCCからIPCCに特別報告書の作成を要請。

※この中で、SDGsと気候変動の関係にも焦点を当てている。

<報告書のポイント>

(出典)https://www.ipcc.ch/sr15/

• パリ協定の下で各国が現在提出している⽬標による2030年の排出量では、1.5℃に抑制することはできず、将来の⼤規模な⼆酸化炭素除去技術の導⼊が必要となる可能性がある。

• ⼈為的な活動により⼯業化以前と⽐べ現時点で約1℃温暖化しており、現在の進⾏速度で温暖化が続けば、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が⾼い。

• 将来の平均気温上昇が1.5℃を⼤きく超えないような排出経路は、2050年前後には世界の⼆酸化炭素排出量が正味ゼロとなっている。

図:観測された気温変化及び将来予測出典: IPCC SR1.5I Fig.SPM1a

現在(2017年頃)で約1 上昇

2030年から2052年の間に1.5 上昇

SDGsと気候変動IPCCによる知⾒1

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(出典)環境省 政策決定者向け要約(SPM)の概要

IPCC1.5℃報告書 政策決定者向け要約(SPM)の概要(2018年、環境省)より

D. 持続可能な開発及び貧困撲滅への努⼒の⽂脈における世界全体による対応の強化

D2. もし地球温暖化が 2℃ではなく 1.5℃に抑えられ、また、もし緩和と適応の相乗作⽤(シナジー)が最⼤化されつつ負の影響(トレードオフ)が最⼩化されるのであれば、持続可能な開発、貧困撲滅及び不公平の低減に対する気候変動による影響は、より⼤きく回避されるだろう(確信度が⾼い)。

D3. 国の⽂脈に固有の適応オプションは、もし可能とする条件とともに慎重に選択されるとすれば、1.5℃の地球温暖化において、負の影響(トレードオフ)の可能性もあるものの、持続可能な開発と貧困削減にとっての便益を伴う(確信度が⾼い)。

D4. 持続可能な開発⽬標(SDGs)全般にわたって、1.5℃排出経路に整合した緩和オプションは、複数の相乗作⽤(シナジー)と負の影響(トレードオフ)を伴う。起こりうるシナジーの総数は、トレードオフの数を超えるが、それらの実質的な影響は、その変化の速度と規模、緩和(策の)ポートフォリオ、及びそれらの移⾏をどうマネジメントするかに依拠する(確信度が⾼い)。

D6. 持続可能な開発は、1.5℃の地球温暖化に抑えることに寄与する社会及びシステムの根源的な移⾏と変⾰を⽀援し、また多くの場合それを可能とする。それらの変化は、貧困撲滅と不公平の低減と共に、野⼼的な緩和と適応を実現する、気候に対してレジリエントな開発経路の追求を促進する(確信度が⾼い)。

D7. 国及び地⽅当局、市⺠社会、⺠間部⾨、先住⺠族、及び地元の(ローカルな)コミュニティの気候⾏動の能⼒を強化することによって、1.5℃の地球温暖化のために⽰唆される、野⼼的な⾏動の実施⽀援が可能となる(確信度が⾼い)。国際協⼒は、持続可能な開発の⽂脈において、これらのことが、すべての国及びすべての⼈々において達成されることを可能とする環境を提供する。国際協⼒は、開発途上国及び脆弱な地域のための、重⼤な成功要因である(確信度が⾼い)。

SDGsと気候変動IPCCによる知⾒2

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SDGsと気候変動IPCCによる知⾒3

(出典)

長さは関係の強さ 濃さは確信度の程度

エネルギー供給 エネルギー需要 陸域

①貧困

②飢餓

③保護

④教育

⑤ジェンダー

⑥水・衛生

⑦エネルギー

⑧成長・雇用

⑨イノベーション

⑩不平等

⑪都市

⑫生産・消費

⑭海洋資源

⑮陸上資源

⑯平和

⑰実施手段

※⑬は気候変動

出典:図, IPCC SR1.5I Fig.SPM4

(※)

・長さは関係の強さであり、影響の強さは表していない。

・空白は、「影響がない」のではなく「文献がない」。

SDGs全般にわたって、1.5℃を⽬指す排出削減策は、複数の相乗作⽤(シナジー)と負の影響(トレードオフ)を伴う。

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⽬次

1.SDGsに関する動向

2.気候変動に関する動向

3.SDGs × 気候変動

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ゴール間の関係性1・SDGsでは様々な課題を対象とした⽬標が設定されている。・SDGs実施においてはゴールの同時達成が重要。

<2030年アジェンダ 前⽂に記載されたIndivisible Wholeの考え⽅>

The 17 Sustainable Development Goals and 169 targets …(中略)… They are integrated and indivisible and balance the three dimensions of sustainable development: the economic, social and environmental.

これらの⽬標及びターゲットは、統合され不可分のものであり、持続可能な開発の三側⾯、すなわち経済、社会及び環境の三側⾯を調和させるものである。

ゴール間の相互作⽤・シナジー効果・トレードオフ効果 を考えつつ、

○17ゴール全ての観点で現在の取組を⾒直し・改善

○異なる分野間のパートナーシップによる取組 が重要

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ゴール間の関係性2<現時点でのUNU-IAS研究成果紹介>UNU-IASで70か国の報告書をもとにSDGs実施のためのガバナンス枠組みを評価(2016-18年に英語で提出された

Voluntary National Reviews)・多くの国においてSDGs実施が進められていることが明らかになった。 SDGsに関する組織間調整メカニズムを設置している国は9割以上、マルチステークホルダーの関与を反映した国は9割以上、SDGsの既存政策への当てはめ(マッピング)、国家レベルでのモニタリングメカニズム創設を実施した国は8割以上にのぼっている。・⼀⽅で、マルチステークホルダー⾃⾝によるSDGs実施、SDGsに基づく国家レベルの新規戦略・計画⽴案、⽬標間の相互作⽤の評価、地域におけるモニタリングメカニズムに関する記載はまだ1-2割程度の国々にとどまっている。

0.00%10.00%20.00%30.00%40.00%50.00%60.00%70.00%80.00%90.00%100.00%

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Monitoring

National level SDG implementation (n:70, VNRs 2016‐2018)

Step completed Step commenced/planned

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SDGs ×気候変動の事例緩和策の事例︓建築物における省エネ・再エネ(住宅、医療福祉・教育施設、オフィス等)

⾼い断熱性能による効果⇒

ユーザーにとっては…健康増進、快適性向上、⽣産性向上、災害対策

供給業者にとっては…建物の付加価値増加、産業活性化など(出典)https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/mat001_2.pdf(参考)https://www.env.go.jp/press/y0618-12/mat04_Part3.pdf

×

適応策の事例︓⽣態系を活⽤した防災・減災(Eco-DRR)(Ecosystem-based disaster risk reduction)

⽣態系と⽣態系サービスを維持⇒

危険な⾃然現象に対する緩衝帯・緩衝材として⽤いる、

⾷糧や⽔の供給などの機能により⼈間や地域社会の⾃然災害への対応を⽀える。

⇒洪⽔のリスク低減、産業基盤の強化、健康等の付加価値を⾼めることが期待されている(出典)環境省 気候変動適応情報プラットフォームhttp://www.adaptation-platform.nies.go.jp/db/measures/report_052.html

×

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SDGs と気候変動(まとめ)●2015年に歴史的な2つの国際的合意

パリ協定 と 持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGsを含む)

これら2つは相互に連携しながら動いていく。

●SDGsと気候変動は相互に貢献

・パリ協定の実施 → 2030アジェンダの実施を強化

・気候変動への取組強化

・SDGsの要素がNDCに統合されればパリ協定の野⼼サイクルの⼀部として国際的・継続的に議論される

・ 2030アジェンダ → 気候⾏動を促進

・経済、社会、環境の統合的な取組を求める

・SDGsを活⽤して開発にも資するコベネフィットを有する気候対策を進めることができれば、

開発全体の流れを汲むためステークホルダー、資⾦⾯での今後の広がりがある

●これまでも各条約間で相乗効果を⾼める必要性は位置づけられてきたが(UNFCCC,CBD,ラムサール条約…)SDGsではより明確にシナジーが求められる段階に

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御清聴ありがとうございました。

Thank you

※本研究は(独)環境再⽣保全機構の環境研究総合推進費(S16及び1-1801SDGs⽬標達成に向けた統合的実施⽅法の包括的検討)により実施したものです。