~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位...

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疼痛 ~痛みのアセスメントと薬物療法~ がん・感染症センター都立駒込病院 緩和ケア科医師 鈴木梢 緩和薬物療法認定薬剤師 米窪恭子 令和2年720駒込病院 緩和ケア勉強会

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Page 1: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

疼痛~痛みのアセスメントと薬物療法~

がん・感染症センター都立駒込病院緩和ケア科医師 鈴木梢緩和薬物療法認定薬剤師 米窪恭子

令和2年7月20日駒込病院 緩和ケア勉強会

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今日の内容

• がん患者の痛みの評価方法

• 基本的ながん疼痛への治療戦略

• 代表的な鎮痛剤の特徴・使い方

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がん患者の痛み

• がん診断時、20~50%、進行がん患者の70~80%が痛みを経験する

• がん自体に起因する痛みの他に、がん治療に伴って生じる痛み、消耗や衰弱によって生じる痛み、がんとは直接関連のない痛みを合併している場合がある

• がんに伴う痛みは病期によらず、適切に対処される必要がある

Page 4: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

がん疼痛の治療の概要

評価アセトアミノフェンまたは

NSAIDsの開始

オピオイドの導入とタイトレーション

オピオイドを増量しても残存・増強する痛みの治療

原疾患に対する治療(手術、化学療法、放射線治療)

副作用への対策(特に、悪心、便秘、眠気)

痛みをやわらげるケア

PEACEスライドより抜粋

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どのように対応しますか?

痛いっっ!!

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痛みの評価

• 痛みの部位と経過(いつから?突然?徐々に?)

• 痛みの強さとパターン

• 痛みの性状(ずきずき?びりびり?)

• 痛みの増悪因子、軽快因子

• 現在行っている治療への反応

• 日常生活への影響と満足度

• 客観的データ(身体所見、画像評価)

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痛みの強さの評価法とパターン

7

• Numerical Rating Scale:NRS

• パターン:持続痛 or 突出痛

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Hjermstad MJ. J Pain Symptom Manage 2011

痛みなし考えられる中で最悪の痛み

一日中ずっと痛い 時々痛くなる

持続痛 突出痛

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痛みの性状と神経学的分類障害部位 特徴 治療戦略

侵害受容性疼痛

内臓痛

食道・胃・腸などの管腔臓器、肝臓・腎臓などの被膜をもつ固形臓器

腹部腫瘍の痛みなど局在があいまいで鈍い痛みずーんと重い

オピオイドが効きやすい

体性痛皮膚、骨、関節、筋肉、結合組織などの体性組織

骨転移など局在がはっきりした鋭い痛みズキっとする

突出痛に対するレスキューの使用が重要

神経障害性疼痛

末梢神経、脊髄神経、視床、大脳などの痛みの伝達路

体性感覚神経・神経叢への浸潤により、びりびり電気が走るような/しびれる/じんじんする痛み

難治性で鎮痛補助薬を必要とすることが多い

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神経障害性疼痛

• 末梢神経浸潤や脊髄浸潤などにより、神経が障害されることで生じる痛み

• アロディニア(痛覚過敏)を伴うこともある

• 『びりびりと電気が走る』『しびれる』『じんじんする』と表現されることが多い

• 代表的なのは腕神経叢浸潤による腕、肋間神経浸潤による胸壁の帯状痛、腰神経浸潤による下肢痛

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関連痛デルマトーム

内臓関連痛

オステオトーム

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日常生活への影響

日常生活に何か支障をきたしていることはありますか?夜は眠れてますか?

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がん疼痛治療の目標

第1目標:痛みに妨げられない夜間の睡眠

第2目標:安静時の痛みの消失

第3目標:体動時の痛みの消失

本人の希望を確認しつつ、現実的かつ段階的な目標を設定する

Personalized pain goal (PPG): 個別化鎮痛ゴールの設定

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痛みの評価

• 痛みの部位と経過(いつから?突然?徐々に?)

• 痛みの強さとパターン

• 痛みの性状(ずきずき?びりびり?)

• 痛みの増悪因子、軽快因子

• 現在行っている治療への反応

• 日常生活への影響と満足度

• 客観的データ(身体所見、画像評価)

による

①体性痛②内臓痛③神経障害性疼痛④混合性疼痛

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がん疼痛の治療の概要

評価アセトアミノフェンまたは

NSAIDsの開始

オピオイドの導入とタイトレーション

オピオイドを増量しても残存・増強する痛みの治療

原疾患に対する治療(手術、化学療法、放射線治療)

副作用への対策(特に、悪心、便秘、眠気)

痛みをやわらげるケア

PEACEスライドより抜粋

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WHO方式がん疼痛治療法の原則

• 経口投与を基本とする (by mouth)

• 時間を決めて定期的に投与する (by the

clock)

• 患者に見合った個別的な量を投与する (for

the individual)

• 患者に合わせた細かい配慮をする (with

attention to detail)

15

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WHO除痛ラダー強い痛みの場合には、3段目(強オピオイド)

から投与

コデイントラマドール

モルヒネフェンタニルオキシコドンタペンタドールヒドロモルフォン

第1段階軽度の痛み

第2段階軽度から中等度の強さの痛み

第4段階?メサドン↓

NSAIDs、アセトアミノフェン±鎮痛補助薬

第3段階中等度から高度の強さの痛み

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オピオイドを処方する時の注意点

• レスキューを準備する

✓ 痛みの増強や突出痛に備えて準備する

✓ 1日必要量の用量調整や持続痛のマネジメント不足の判断材料にも重要

✓ 定期オピオイドを増量する度にレスキューの投与量も見直す

• 副作用(便秘、悪心、眠気)についての説明と必要に応じて対策を行う

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オピオイドのタイトレーション

• 悪心や眠気が生じない範囲で疼痛軽減するまで増量

• 増量幅は基本的には30~50%。経口モルヒネ換算120mg/日以上や体格の小さい者、高齢者、全身状態不良の場合は20~30%程度ずつ慎重に増量する

• 増量間隔は1~3日。フェンタニル貼付剤は3日以上あけて

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がん疼痛の治療の概要

評価アセトアミノフェンまたは

NSAIDsの開始

オピオイドの導入とタイトレーション

オピオイドを増量しても残存・増強する痛みの治療

原疾患に対する治療(手術、化学療法、放射線治療)

副作用への対策(特に、悪心、便秘、眠気)

痛みをやわらげるケア

PEACEスライドより抜粋

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オピオイドの天井効果

• オピオイドを増量しても十分な鎮痛効果が得られなかったり、眠気や呼吸抑制などの副作用が問題となることもある

• フェンタニル製剤は2㎎/日程度(フェントス®

7㎎程度)で耐性が生じる可能性が指摘されてい

がん疼痛に対してオピオイド投与量に上限なし

オピオイドを増量すれば鎮痛効果が得られる

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オピオイドスイッチング• オピオイドの副作用で増量や継続が困難な場合、使用しているオピオイドを十分増量しても効果が得られない時に検討

例)便秘や悪心、眠気などの副作用が強い時、

モルヒネ・オキシコドン→フェンタニル

(ヒドロモルフォン、タペンタドール)

例)鎮痛効果が乏しい時、

フェンタニル→モルヒネ・オキシコドン

ポイント投与量が多い時には数回に分けて変更。フェンタニル貼付剤への変更は血中濃度の変化を考えて。

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モルヒネ

フェンタニルモルヒネ

オキシコドン

オキファスト

皮下/静注

200mg

60mg

0.6mg

2mg40mg

30mg 30mg

トラマールワントラム

300mg

経口

ナルサス

12mg

3.0mg

ナルベイン

タペンタ

★注意• 当院では計算を簡略化するため、ナルサス:ナルベイン=4:1を基本とした

• ただし、本換算でのナルサスからナルベイン、及びナルベインからナルサスへのオピオイドスイッチングで過量投与となるリスクもあるため、スイッチング後の眠気や呼吸抑制などに十分注意する

フェンタニルクエン酸塩1日用テープ

経口経口

経口

貼付剤

皮下/静注 皮下/静注 皮下/静注

経口

オピオイド換算表

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鎮痛補助薬の分類

新版 がん緩和ケアガイドブックp47より抜粋・改編

サインバルタ®

トリプタノール®

テグレトール®

リリカ®

リボトリール®

キシロカイン®

ケタラール®

鎮痛補助薬• がん疼痛では通常はオピオイドなどの鎮痛剤と併用することで効果を発揮する

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鎮痛剤以外の方法を検討

• 骨転移への放射線照射

• 神経ブロック(硬膜外ブロック、肋間神経ブロック、神経根ブロック)

• ビスホスホネート・抗RANKL抗体

→骨関連事象(疼痛、病的骨折、高カルシウム血症など)を減少させ発症時期も遅らせる

• 骨転移へのステロイド投与

• コルセットの作成

• 痛みのでにくい日常生活の工夫

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痛みの訴えが続く時に考えること

• 本当に身体的な痛みだけなのか。痛みの閾値を下げる他の要因の存在

• オピオイド誘発痛覚過敏:オピオイド増量によって疼痛悪化

• ケミカルコーピング:オピオイドを不安など、痛み以外の症状に使用すること

痛いというつらさを抱えていることはきちんと認めたうえで、広い視点

で評価してみることも必要

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がん疼痛の治療の概要

評価アセトアミノフェンまたは

NSAIDsの開始

オピオイドの導入とタイトレーション

オピオイドを増量しても残存・増強する痛みの治療

原疾患に対する治療(手術、化学療法、放射線治療)

副作用への対策(特に、悪心、便秘、眠気)

痛みをやわらげるケア

PEACEスライドより抜粋

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がん疼痛へのケア痛みが増悪する因子となるような刺激を避け、痛みを和らげる方法を取り入れる事が重要です。

症状緩和 睡眠

周囲の人々の共感

理解 休憩

人とのふれあい

気晴らしとなる行為

不安減退

気分高揚

不快 不眠

疲労 不安

恐怖 怒り

悲しみ うつ状態

倦怠感 孤独感

内向的心理状態

社会的地位の喪失

鎮痛薬抗不安薬抗うつ薬

Twycross著、武田文和訳. 末期患者の診療マニュアル第2版(1991)より

これらを高めるケアを考える

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痛みを和らげるケアケアは薬物療法と並行して行う

• ケゕは薬物療法と並行して行う必要がある

• 患者本人や家族が行っている疼痛時の対処方法

を尋ね、より良いケゕの方法を一緒に考える ケアは薬物療法と併用して行う

• マッサージ

• 温罨法・冷罨法

• 軽い運動

• 環境調整

−痛みが増強する動きを避けられるように

• 装具・補助具の利用− コルセット、頚椎カラー、歩行器の使用

• 一人で抱え込まない− 患者も家族も、医療従事者も

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前半のまとめ

• まずは痛みの原因をしっかり評価し、痛みの原因を同定することが疼痛コントロールの第一歩

• 痛みの原因に応じた適切な鎮痛剤を正しく導入する

• 常に薬剤以外の方法も検討

• 非薬物療法・ケアも重要

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がん疼痛治療

薬物療法

薬の選択と副作用への対応

がん・感染症センター都立駒込病院緩和薬物療法認定薬剤師 米窪恭子

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メサドン

WHO方式3段階除痛ラダー

第3段階中等度から高度の強さの痛み

モルヒネ

フェンタニル

オキシコドン

タペンタドール

ヒドロモルフォン

第1段階軽度の痛み

第2段階軽度から中等度の強さの痛み

コデイン

トラマドール

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非オピオイド鎮痛薬

鎮痛作用

解熱作用

抗炎症作用

NSAIDs非ステロイド性消炎鎮痛薬

アセトアミノフェン

鎮痛作用

解熱作用

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WHO方式

がん疼痛治療ラダーの

第1段階の鎮痛薬

鎮痛・解熱作用

がん疼痛治療体性痛に効果

胃腸障害・腎障害が少ない

肝障害に注意

アセトアミノフェン

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非オピオイド鎮痛薬

鎮痛作用

解熱作用

抗炎症作用

NSAIDs非ステロイド性消炎鎮痛薬

アセトアミノフェン

鎮痛作用

解熱作用

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非ステロイド性

nonsteridal anti-inflammatory drugs

NSAIDs

消炎 鎮痛剤

通称 エヌセーズ

35

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生理的刺激

COX-1常時発現

恒常的に分泌プロスタグランジン

胃粘膜保護腎血流量維持血小板凝集能

炎症

COX-2阻害

炎症時に分泌プロスタグランジン

発熱疼痛腫脹浮腫

プロスタグランジン

分泌抑制

胃粘膜障害腎機能障害血小板凝集機能低下

COX-1阻害

COX-2誘導

解熱作用鎮痛作用抗炎症作用

副作用

NSAIDs

NSAIDsの作用機序

36

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COX2選択阻害薬セレコキシブメロキシカムエトドラクジクロフェナクNa など

・非COX選択阻害薬ロキソプロフェンイブプロフェンナプロキセンインドメタシン など

1.COX選択性

多い 胃粘膜障害 少ない

腎機能障害

NSAIDSを選択するときに考えること

同等 同等

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COX選択性による分類COX選択性 成分名 商品名

セレコキシブ セレコックス錠

メロキシカム モービック錠

エトドラク ハイペン錠、オステラック錠

両者を同等に阻害する薬物

ジクロフェナクNaボルタレン錠・坐剤ボルタレンSRcap

メフェナム酸 ポンタールcap

ザルトプロフェン ソレトン錠、ペオン錠

ロキソプロフェンロキソニン錠、ロキソプロフェン錠

スリンダク クリノリル錠

ピロキシカム フェルデン錠、バキソcap

イブプロフェン ブルフェン錠

ナプロキセン ナイキサン錠

インドメタシンインダシン坐剤インテバンSPcap

アスピリン バファリン配合錠330mg

フルルビプロフェン ロピオン注

COX-1阻害が比較的強い薬物

COX-2阻害薬

難治性疼痛の薬物療法(南山堂)より改変

Page 39: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

主なNSAIDs一覧

半減期 成分名 商品名半減期(時間)

用法

長時間型

オキサプロジン アルボ 50 分1~2

ピロキシカム バキソ 48 分1

メロキシカム モービック 28 分1

ナブメトン レリフェン 21 分1

中間型

スリンダク クリノリル 18 分2

ナプロキセン ナイキサン 14 分2~3

エトドラク ハイペン 6 分2

セレコキシブ セレコックス 7 分2

短時間型

ロルノキシカム ロルカム 2.5 分3

イブプロフェン ブルフェン 1.8 分3

チアプロフェン酸 スルガム 1 分3

プラノプロフェン ニフラン 5.4 分3

ロキソプロフェン ロキソニン 1.3 分3

ジクロフェナクNa ボルタレン錠 1.2 分3

フルルビプロフェン ロピオン注 5.8 ※

39

Page 40: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

NSAIDSを選択するときに考えること

2.薬の半減期

✓ 薬の切れ目を確認する

✓ 薬の服用タイミングを変えてみる

いつも毎食後なの?

いつ症状が出ているの?

40

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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014年版 から抜粋 41

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①プロスタグランジン製剤

ミソプロストール(サイトテック)‥プロスタグランジンE1誘導体

②プロトンポンプ阻害薬(PPI)

[非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制]に

適応をもつ薬剤

ランソプラゾール(15mg規格のみ)、エソメプラゾール、ボノプラザン など

③高用量のH2ブロッカー

高用量とは、消化性潰瘍に用いる用量の2倍量を指す

NSAIDSを選択するときに考えること

3.副作用対策

NSIAIDs潰瘍予防

42

Page 43: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

第2段階で使用する薬剤

トラマドール

✓ 鎮痛作用…効果は早い

オピオイド様作用

代謝産物(M1)がμ受容体に結合し鎮痛作用を発揮する

✓ 神経障害性疼痛への効果…効果が現れるまでに数日かかる

セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用

✓ 投与量に上限がある

通常 400mg/日

75歳以上の高齢者 300mg/日

腎機能Ccr30mL/min未満 200mg/日(1日2回 12時間毎)

【モルヒネとの用量換算】

トラマドール100mg≒経口モルヒネ20mg(5:1)

43

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神経障害性疼痛の改善

薬の作用機序

44

視床

中脳

侵害受容器

橋・青斑核

ノルアドレナリン作動性神経

脊髄炎症

末梢神経

脊髄後角

セロトニン作動性神経

視床下部

疼痛下行性抑制系の活性化ノルアドレナリン、セロトニンを増やす

NSAIDS 等

オピオイド作用上行伝導路の抑制

延髄

痛い!

Page 45: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

第2段階で使用する薬剤

✓ 麻薬ではない⇒麻薬処方箋は不要

✓ 代謝 CYP2D6、CYP3A4により代謝

日本人の約5%はCYP2D6の代謝酵素欠損

⇒効果がみられない

✓ 副作用

・悪心・嘔吐、眠気、めまい、便秘、口渇

・モルヒネなどのオピオイドと比較し、便秘の頻度は低い

・耐性、身体依存、乱用も生じにくい

ただし、長期使用時は注意が必要

・セロトニン症候群やけいれん発作が報告されている。

単独投与ときよりもSSRI,SNRI,三環系抗うつ薬等と

併用するときは注意

トラマドール

45

Page 46: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

①NSAIDSが使用できないときに使用する

・腎機能低下⇒投与量に注意しながら使用

・胃腸障害がある(消化管潰瘍、出血等)

・血小板数が少ない(術後、化学療法や放射線治療後など)

・喘息の既往がある、喘息の素因をもつ

②神経障害性疼痛がありそうなときに使用する

※③オピオイド導入前、オピオイド減量時に間に入れる。

(適当な規格、剤形がない場合)

経口モルヒネ30mg/日=経口オキシコドン20mg/日

=トラマドール150mg/日

第2段階で使用する薬剤

トラマドールを使用する

46

Page 47: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

トラマールOD錠 トアラセット配合錠

規制 劇薬 劇薬

成分(1錠中)トラマドール塩酸塩

25mg、又は50mg

(1錠中)トラマドール塩酸塩 37.5mgアセトアミノフェン 325mg

効能又は効果

非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛○疼痛を伴う各種癌○慢性疼痛

非オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記疾患における鎮痛○非がん性慢性疼痛○抜歯後の疼痛

投与量

1日400mgを超えないこと

1日300mgで鎮痛効果が不十分となった場合、本剤の投与を中止し、モルヒネ等の強オピオイド鎮痛薬への変更を考慮すること

1日8錠を超えて投与しないこと

トラマドール37.5mg×8=300mg

アセトアミノフェン325mg×8=2600mg

トラマールOD錠 と トアラセット配合錠

47

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WHO方式

がん疼痛治療ラダーの

第2段階の鎮痛薬

鎮痛より

鎮咳目的で使用

300mg/日程度で有効限界

副作用はモルヒネと同じ便秘、嘔気、眠気

濃度により規制区分が異なる

コデインリン酸塩

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コデインリン酸塩濃度によって規制区分が異なる

規制区分 商品名

麻薬区分保管に注意

コデインリン酸塩 原末

コデインリン酸塩散 10% (10倍散)

コデインリン酸塩錠 20mg

非麻薬区分コデインリン酸塩散 1% (100倍散)

コデインリン酸塩錠 5mg

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メサドン

WHO方式3段階除痛ラダー

第3段階中等度から高度の強さの痛み

第1段階軽度の痛み

第2段階軽度から中等度の強さの痛み

コデイン

トラマドール

モルヒネ

フェンタニル

オキシコドン

タペンタドール

ヒドロモルフォン

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日本緩和医療学会 ガイドラインから引用

オピオイド受容体の特徴

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オピオイド受容体の分布

μ受容体 κ 受容体 δ受容体

モルヒネ μ1、μ2 ○ ○

オキシコドン μ1、μ2 ○

フェンタニル μ1

ヒドロモルフォン μ1、μ2 ○

タペンタドール μ1、μ2

メサドン μ1、μ2

52

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一般名主な代謝部位

未変化体尿中排泄率(腎排泄率)

半減期主な代謝経路

代謝物鎮痛活性の有無

腎機能低下時の調節

コデイン 肝臓 約3~16%約2.5~3.5時間

CYP2D6 モルヒネ ○

使用しないCYP3A4 ノルコデイン ○

UGT2B7 コデイン6グルクロニド ×

トラマドール 肝臓 約30% 約6時間

CYP2D6 O-デスメチルトラマドール ○Ccr<30mL/分の患者においてトラマドールは1日最大200mg12時間ごとの投与間隔とするCcr30mL/分以下であればトラマドールの投与は避けたほうが望ましいCYP3A4 N-デスメチルトラマドール ×

モルヒネ 肝臓 約8~10%約2~4時間

グルクロン酸抱合 M6G ○ Ccr30~50mL/分⇒50%に減量Ccr30mL/分 以下の場合⇒PCTに個別の相談

★駒込緩和マニュアルよりグルクロン酸抱合 M3G ×

オキシコドン 肝臓 約5.5~19%約3.5~4時間

CYP3A4 ノルオキシコドン × 少量から漸増して投与。Ccr60mL/分未満の患者で鎮静作用が増強するとの報告あり。

CYP2D6 オキシモルフォン ○

フェンタニル 肝臓 約10% 約 4時間 CYP3A4 ノルフェンタニル ×

投与量の減量は必要ないと考えられるが、呼吸抑制による死亡例も多数報告されているため、少量から使用。投与量を調節して使用。

オピオイドの特徴

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メサドン 肝臓 約 21%約30~40時間

CYP3A4CYP2B6

EDDP、EMDP ×投与量を減量、または投与間隔を延長

一般名主な代謝部位

未変化体尿中排泄率(腎排泄率)

半減期主な代謝経路

代謝物鎮痛活性の有無

腎機能低下時の調節

ヒドロモルフォン 肝臓 約 3% -

グルクロン酸抱合H3Gヒドロモルフォンー3-グルクロニド

×弱い

※ 緩和ケアチームに相談

グルクロン酸抱合 ヒドロモルフォンー3-グルコシド×弱い

【参考資料】AHFS DRUG INFORMATION 2015UP to date日本腎臓薬物療法学会各医薬品 添付文書・IFトワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬

日本緩和医療学会がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 一部改変

オピオイドの特徴

タペンタドール 肝臓 約 3% 約 4~5時間 グルクロン酸抱合タペンタドールO-グルクロニド

×

腎排泄はほとんどないため、正常腎機能者と同じ投与量でよいと考えられる。ただし、重度の腎機能障害患者は慎重投与

54

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オピオイドの特性に従った選択

【投与経路の選択】内服可 or 緊急性があるか⇒注射

個別に判断

咳・呼吸困難

腎機能障害モルヒネ

オキシコドン

ヒドロモルフォン

フェンタニル

なし

あり

あり

なし

なし

あり

便秘・サブイレウス

Ccr30mL/min未満

何かお困りのことがあれば、緩和ケアチームにご相談ください鄭医師のスライドより 55

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投与初期 投与中 増量時 まれに発現

悪心・嘔吐 便秘 悪心・嘔吐 呼吸抑制

眠気 口腔内乾燥 眠気

せん妄 発汗 せん妄

めまい 掻痒感 便秘

便秘 ミオクローヌス

排尿困難

尿閉

「臨床医のくすり箱」より改変

オピオイドの副作用

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症状 対処

悪心・嘔吐 ・出現頻度は30%程度、1~2週間で耐性が生じる。・制吐薬の予防投与は必須ではないが、頓用できるよう準備をしておくとよい。・経口剤から貼付剤や注射剤に投与経路を変更することで改善できる場合もある。

便秘 ・オピオイド使用患者の60%に生じる頻度の高い副作用。・耐性は生じないため、オピオイド使用中は継続な対策が必要。・便秘の状況により下剤を使い分ける。・モルヒネやオキシコドン製剤をフェンタニル製剤に変更することで症状が軽快することがある。

眠気 ・投与開始初期や増量時に現れる症状、耐性が速やかに生じ数日内に自然に軽減・消失することが多い。・不快な眠気であれば、対応を検討する。オピオイドの減量や種類・投与経路の変更、他薬剤の見直し、他の原因がないか検索

せん妄・幻覚 オピオイド投与開始初期や増量時に出現しやすい。さまざまな要因で出現するため、原因を鑑別する必要がある。

呼吸抑制 用量依存的な延髄の呼吸中枢への直接の作用によるもの。

口腔内乾燥 用量依存的に外分泌腺における分泌を抑制して生じるもの。

掻痒感 脊髄後角のオピオイド受容体を介した機序が考えられている。

排尿障害 排尿反射の抑制と外尿道括約筋の収縮及び膀胱用量を増加させる。

ミオクローヌス モルヒネの場合、神経毒性のある代謝物の蓄積が要因と考えられている。

オピオイドの副作用

日本緩和医療学会 疼痛治療ガイドライン2014より抜粋 57

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オピオイドの副作用 悪心・嘔吐への対応

58

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Page 60: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

大腸

結腸

小腸

肛門管

直腸

S状結腸

下行結腸

横行結腸

上行結腸

回腸

空腸

十二指腸

食道

咽頭

口腔

①塩類下剤(酸化マグネシウム)胃酸を中和する。

主に小腸に作用。腸管内に水分を移行させて便を軟らかくする。

⑥消化管運動賦活薬(モサプリド等)

上部消化管・下部消化管の運動を促す

④刺激性下剤、⑤漢方薬(センノシド、ピコスルファート等)

腸内細菌により分解され、大腸を刺激して蠕動運動を起こす

②上皮機能変容薬アミティーザ®

小腸に作用。腸管内への水分分泌を促して便を軟らかくする

①糖類下剤(ピアーレ®)

大腸で腸内細菌に分解され、生成された有機酸が腸管運動を促す

⑧テレミンソフト坐剤結腸・直腸粘膜を刺激し、蠕動を促す

⑧レシカルボン坐剤®

直腸を刺激して排便を促す。排便刺激。

⑦浣腸腸内の水分吸収による便の軟化と腸管蠕動の亢進

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便秘治療薬 (作用機序からみた分類)

① 浸透圧性下剤(塩類下剤、糖類下剤)② 上皮機能変容薬③ 膨張性下剤④ 刺激性下剤⑤ 漢方薬⑥ 消化管運動賦活薬⑦ 浣腸薬 高齢者では脱水の注意⑧ 坐剤⑨ その他(スインプロイク®)

①②③⑦の働きには腸管内の水分移行が関係しているこれらの薬を使用するときは水分も必要

61

Page 62: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

⑨その他 スインプロイク

末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(peripherally-acting mu-opioid *receptor antagonist:PAMORA)

*米国では非がん性慢性疼痛の患者に使用

【効能】オピオイド誘発性便秘症(OIC)

【用法】成人にはナルデメジンとして1回0.2 mgを1日1回経口投与

【注意】オピオイド投与中止とともに本剤の投与も中止すること

【代謝】主に肝代謝酵素CYP3A4で代謝される

【副作用】下痢、腹痛、吐き気、だるさ等

*服用してから効果がでるまでに3~7.5時間(治験)

*消化管閉塞を起こしている患者には使用禁忌

*血液脳関門の透過性ない

血液脳関門が機能していない又は機能不全が疑われる患者(脳腫瘍(転移性を含む),エイズに伴う認知症,多発性硬化症,アルツハイマー型認知症)においては,本剤が中枢に移行し,オピオイド離脱症候群又はオピオイドの鎮痛作用の減弱を起こすおそれがある。

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呼吸数減少

鎮痛作用(鎮痛有効域)

嘔気・嘔吐

便秘作用

呼吸抑制作用

催眠作用(傾眠)

鎮痛作用(鎮痛有効域)

嘔気・嘔吐

便秘作用

催眠作用(傾眠) 催眠作用(傾眠)

「がん疼痛治療」より改変

フェンタニルの呼吸抑制

他のオピオイド フェンタニル

血中濃度

血中濃度

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先発品 後発品 先発品 後発品 後発品 先発品

商品名デュロテップMT

パッチフェンタニル3日用テープ

ワンデュロパッチ

フェンタニル1日用テープ

フェンタニルクエン酸塩1日用テープ

フェントステープ

効能又は効果

①中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛

②中等度から高度の慢性疼痛

②中等度から高度の慢性疼痛

②中等度から高度の慢性疼痛

用法 3日毎(約72時間)に貼り替える 1日(約24時間)毎に貼り替える

初回投与における注意

効能又は効果①②において、本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する

①がん疼痛本剤貼付前にオピオイド鎮痛剤を使用していない場合、0.5mgより開始

②慢性疼痛他のオピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えて使用

フェンタニル貼付剤の用法が一部変更されました

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がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2014年版)より改変

1 抗うつ薬‥アモキサン、トリプタノール、サインバルタ、ルボックス等

2 抗けいれん薬‥リリカ、ガバペン、デパケン、リボトリール等

3 抗不整脈薬/(局所麻酔薬)‥メキシチール、リドカイン等

4 NMDA受容体拮抗薬‥ケタラール、デキストロメトルファン(メジコン)等

5 中枢性筋弛緩薬‥リオレサール等

6 コルチコステロイド‥リンデロン(ベタメタゾン)、デカドロン

7 ベンゾジアゼピン系抗不安薬‥セルシン・ホリゾン等

8 ビスホスホネート、デノスマブ等の骨代謝薬‥ゾメタ、ランマーク等

9 その他‥サンドスタチン、ブスコパン等

①主たる薬理作用としては鎮痛作用がない

②鎮痛薬と併用することで鎮痛効果を高める

③特定の状況下で鎮痛効果を現わす

【定義】

鎮痛補助薬とは

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①鎮痛補助薬の開始する前に、オピオイドをしっかり使用する

②痛みの機序と既往疾患を総合的に評価する

③効果だけではなく、副作用や薬剤の相互作用も評価する

④鎮痛補助薬の開始時は複数の鎮痛補助薬を同時に使用しない

⑤鎮痛補助薬は少量から開始し、効果と副作用を評価しながら

少しずつ維持量まで増量する

⑥維持量まで増量しても効果がみられない場合は、他の種類の

薬剤に変更する

⑦一部の患者では鎮痛補助薬の多剤併用が必要となるが、この

場合は同じ種類の薬剤は併用しない

Davis 2007 Lussier &Portenoy 2006より改変 66

鎮痛補助薬を使用する時の注意

Page 67: ~痛みのアセスメントと薬物療法~痛みの性状と神経学的分類 障害部位 特徴 治療戦略 侵 害 受 容 性 疼 痛 内臓痛 食道・胃・腸などの

①高齢者・全身状態が悪い患者 ⇒ 1日1回25mg寝る前から開始

②腎機能障害時には投与量を調節(添付文書参照)

③薬剤間の相互作用を起こしにくい

⇒体内で代謝されることがないため、肝臓での代謝酵素チトクローム

P450の誘導・阻害作用がない

④眠気・ふらつきに注意!

・投与初期に生じる

・増量時は寝る前から開始すると良い

・眠気は、数日(3日間程度)で落ち着くことが多い

・夜間のトイレ歩行時などには注意を促す

⑤他の副作用として、めまい、末梢性浮腫、劇症肝炎(頻度不明)、

肝機能障害(0.4%)等

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第1選択薬 プレガバリンを使用時のポイント

商品名:リリカ薬 効:抗けいれん薬(カルシウムチャネル遮断薬)

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①血中濃度は3日程度で安定(血中半減期10~12時間)

5~7日間で有効性を判定し増減を検討

②副作用として、セロトニンが原因の嘔気が生じやすい

対応として、モサプリド(5HT4受容体刺激作用をもつ)を併用しておく

③その他の副作用として、眠気などの消化器症状、口渇、頭痛、全身倦怠感がみられる。

眠気、吐き気、口渇は投与初期にみられるが、その後軽減することが多い

④セロトニン作用薬と併用すると、セロトニン作用が強まり、セロトニン症

候群が生じる(不安,焦燥,興奮,パニック発作,不眠,易刺激性,敵意,

攻撃性,衝動性,アカシジア/精神運動不穏,軽躁,躁病等があらわれる

ことが報告されている

⑤4週間以上の継続服用している場合は、急に減量や中止をすると中止後

発現症状を発症することがある。減量や中止時は漸減していく。

⑥重度の腎障害のある患者は投与禁忌(血中濃度が上昇することがある)

(クレアチニンクリアランス値が30mL/min 未満の場合〕

商品名:サインバルタ薬 効:抗うつ薬(SNRI セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)

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第2選択薬 デュロキセチンを使用時のポイント