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Page 1: (日漢對照.精裝有聲版)序曲 005 樣東西似的。你則聽任我如此施為。風乍起。合當奮意向人生。我將手搭在偎依著我的你的肩頭,口中反覆吟誦著這行

風立ちぬ

風起了

(日漢對照.精裝有聲版)

堀辰雄  著施小煒  譯

Page 2: (日漢對照.精裝有聲版)序曲 005 樣東西似的。你則聽任我如此施為。風乍起。合當奮意向人生。我將手搭在偎依著我的你的肩頭,口中反覆吟誦著這行

目  錄 

序じょ

曲きょく

002 序曲 003

春はる

016 春 017

風かぜ

立た

ちぬ 046 風起了 047

冬ふゆ

122 冬 123

夜よる

158 夜 159

死し

のかげの谷たに

172 死蔭谷 173

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Le vent se lève, il faut tenter de vivre.

PAUL�VALERY

風乍起。合當奮意向人生。

Page 4: (日漢對照.精裝有聲版)序曲 005 樣東西似的。你則聽任我如此施為。風乍起。合當奮意向人生。我將手搭在偎依著我的你的肩頭,口中反覆吟誦著這行

002

序じ ょ

曲きょく

  それらの夏なつ

の日ひ

々び

、一いち

面めん

に 薄すすき

の生お

い茂しげ

った草そう

原げん

の中なか

で、

お前まえ

が立た

ったまま熱ねっ

心しん

に絵え

を描か

いていると、 私わたし

はいつもそ

の 傍かたわ

らの一いっ

本ぽん

の白しら

樺かば

の木こ

蔭かげ

に身み

を横よこ

たえていたものだっ

た。そうして夕ゆう

方がた

になって、お前まえ

が仕し

事ごと

をすませて 私わたし

のそ

ばに来く

ると、それからしばらく 私わたし

達たち

は肩かた

に手て

をかけ合あ

った

まま、遥はる

か彼か な た

方の、縁ふち

だけ 茜あかね

色いろ

を帯お

びた 入にゅう

道どう

雲ぐも

のむくむ

くした 塊かたま

りに覆おお

われている地ち

平へい

線せん

の方ほう

を眺なが

めやっていたも

のだった。ようやく暮く

れようとしかけているその地ち

平へい

線せん

ら、反はん

対たい

に何なに

物もの

かが生う

まれて来き

つつあるかのように……

  そんな日ひ

の或あ

る午ご

後ご

、(それはもう秋あき

近ちか

い日ひ

だった) 私わたし

達たち

はお前まえ

の描か

きかけの絵え

を画が

架か

に立た

てかけたまま、その白しら

樺かば

の木こ

蔭かげ

に寝ね

そべって果くだ

物もの

を齧か

じっていた。砂すな

のような雲くも

が空そら

をさらさらと流なが

れていた。そのとき不ふ

意い

に、何ど

処こ

から

ともなく風かぜ

が立た

った。 私わたし

達たち

の 頭あたま

の上うえ

では、木こ

の葉は

の 間あいだ

らちらっと覗のぞ

いている藍あい

色いろ

が伸の

びたり縮ちぢ

んだりした。それ

と殆ほと

んど同どう

時じ

に、草くさ

むらの中なか

に何なに

かがばったりと倒たお

れる物もの

音おと

を 私わたし

達たち

は耳みみ

にした。それは 私わたし

達たち

がそこに置お

きっぱなし

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003

序曲

那些連綿夏日,當你站在遍地芒草叢生的草原中聚精會

神地作畫,我便總是橫身斜躺在近旁的一株白樺樹蔭裡。於是

到了黃昏時分,你擱下畫筆來到我的身畔,隨之便會有一段時

間,我們倆伸手摟著彼此的肩膀,極目遠眺天際那唯獨周緣鑲

著茜紅色的大團積雨雲覆蓋下的地平線。從暮色蒼茫的地平

線邊,彷彿反倒有某種生命正待降生一般……

就在這樣的一個午後,(那是一個已近秋令的日子)我們

倆將你畫了半截的畫作竪在畫架上,躺在那棵白樺樹蔭裡啃著

水果。流沙般的雲彩拂掠過蒼穹。這時,忽然一陣風不知從何

處吹來。我們的頭頂上,在枝葉間偶一探臉的那一抹湛藍忽而

舒展忽而收捲。幾乎與此同時,我們聽見草叢裡傳來了呯的一

聲物體倒地的聲響。好像是我們扔在那裡不顧的油畫連同畫

架一道摔倒的響聲。你便想立即起身前去,我卻硬將你一把拉

住,不放你離開我的身畔,彷彿不願失去眼前這一瞬間裡的某

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004

序じ

曲きょく

にしてあった絵え

が、画が

架か

と共とも

に、倒たお

れた音おと

らしかった。す

ぐ立た

ち上のぼ

って行い

こうとするお前まえ

を、 私わたし

は、いまの一いっ

瞬しゅん

何なに

物もの

をも 失うしな

うまいとするかのように無む

理り

に引ひ

き留と

めて、

私わたし

のそばから離はな

さないでいた。お前まえ

は 私わたし

のするがままに

させていた。

風かぜ

立た

ちぬ、いざ生い

きめやも。

  ふと口くち

を衝つ

いて出で

て来き

たそんな詩し

句く

を、私わたし

は私わたし

に靠もた

れて

いるお前まえ

の肩かた

に手て

をかけながら、口くち

の裡うち

で繰く

り返かえ

していた。

それからやっとお前まえ

は私わたし

を振ふ

りほどいて立た

ち上のぼ

って行い

った。

まだよく乾かわ

いてはいなかったカンヴァスは、その 間あいだ

に、一いち

めんに草くさ

の葉は

をこびつかせてしまっていた。それを 再ふたた

び画が

架か

に立た

て直なお

し、パレット・ナイフでそんな草くさ

の葉は

を除と

りにく

そうにしながら、

 「まあ!こんなところを、もしお父とう

様さま

にでも見み

つかっ

たら……」

  お前まえ

は 私わたし

の方ほう

をふり向む

いて、なんだか曖あい

昧まい

な微び

笑しょう

をし

た。

 「もう二に

三さん

日にち

したら、お父とう

様さま

がいらっしゃるわ」

或あ

る朝あさ

のこと、 私わたし

達たち

が森もり

の中なか

をさまよっているとき、突とつ

然ぜん

お前まえ

がそう言い

い出だ

した。 私わたし

はなんだか不ふ

満まん

そうに黙だま

って

いた。するとお前まえ

は、そういう 私わたし

の方ほう

を見み

ながら、すこし

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序曲

005

樣東西似的。你則聽任我如此施為。

風乍起。合當奮意向人生。

我將手搭在偎依著我的你的肩頭,口中反覆吟誦著這行

陡然脫口而出的詩句。然後你終於掙脫我,起身離去。尚未乾

透的畫布在此期間已然黏滿了草葉。你一面將它重新竪在畫

架上,用調色刀艱難地剔除那些草葉,一面說道:

「這可好,要是叫父親瞧見了……」

你扭過臉來望著我,露出略帶曖昧的微笑。

「再過兩三天,父親就要來啦!」

一日清晨,我們徜徉在森林間,你突然這麼開口說道。我

彷彿不悅似的沉默不言。於是你望著我這副神態,聲音微微有

些喑啞地,再度開口道:

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006

序じ

曲きょく

嗄しゃが

れたような声こえ

で再ふたた

び口くち

をきいた。

 「そうしたらもう、こんな散さん

歩ぽ

も出で

来き

なくなるわね」

 「どんな散さん

歩ぽ

だって、しようと思おも

えば出で

来き

るさ」

私わたし

はまだ不ふ

満まん

らしく、お前まえ

のいくぶん気き

づかわしそう

な視し

線せん

を自じ

分ぶん

の上うえ

に感かん

じながら、しかしそれよりももっと、

私わたし

達たち

の頭ず

上じょう

の 梢こずえ

が何なん

とはなしにざわめいているのに気き

奪と

られているような様よう

子す

をしていた。

 「お父とう

様さま

がなかなか私わたし

を離はな

して下くだ

さらないわ」

私わたし

はとうとう焦じ

れったいとでも云い

うような目め

つきで、お

前まえ

の方ほう

を見み

返かえ

した。

 「じゃあ、僕ぼく

達たち

はもうこれでお別わか

れだと云い

うのかい?」

 「だって仕し

方かた

がないじゃないの」

  そう言い

ってお前まえ

はいかにも 諦あきら

め切き

ったように、 私わたし

につ

とめて微ほほ

笑え

んで見み

せようとした。ああ、そのときのお前まえ

顔かお

色いろ

の、そしてその 唇くちびる

の色いろ

までも、何なん

と蒼あお

ざめていたこ

とったら!

 「どうしてこんなに変かわ

っちゃったんだろうなあ。あんなに

私わたし

に何なに

もかも任まか

せ切き

っていたように見み

えたのに……」と

私わたし

は 考かんが

えあぐねたような恰かっ

好こう

で、だんだん裸ら

根こん

のごろご

ろし出だ

して来き

た狭せま

い山やま

径みち

を、お前まえ

をすこし先さき

にやりながら、

いかにも歩ある

きにくそうに歩ある

いて行い

った。そこいらはもうだ

いぶ木こ

立だち

が深ふか

いと見み

え、空くう

気き

はひえびえとしていた。とこ

ろどころに小ちい

さな沢さわ

が食く

いこんだりしていた。突とつ

然ぜん

、 私わたし

頭あたま

の中なか

にこんな 考かんが

えが 閃ひらめ

いた。お前まえ

はこの夏なつ

、偶ぐう

然ぜん

出で

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序曲

007

「那樣的話,像這樣的散步也不成啦。」

「甭管像怎樣的散步,只要想,就能夠成。」

我似乎猶自心存不悅,分明感受到你不無憂戚的目光落

在我身上,卻裝出一副更為我們頭頂上樹梢間那毫無來由的喧

呶聲奪去了注意力的模樣。

「父親可是不會讓我離開他的喲。」

我終於按捺不住,用差不多可算是焦灼的眼神,回視你:

「那就是說,咱倆這就得分道揚鑣嘍?」

「這不是沒有辦法嗎?」

說罷,你似乎萬念俱灰,努力要衝我做出微笑的模樣。啊

啊,那時候你的面色,甚至連你的唇色,都是何等蒼白!

「怎麼變化會如此之大呢?看上去明明是把一切悉數交託

給了我的樣子嘛……」

我滿臉的百思不解,沿著裸露的樹根愈來愈多的狹仄山

道,讓你走在數武之前,步履維艱地走去。那一帶看來已入叢

林深處,空氣冷森森的。隨處可見小小的水澤侵蝕進林間來。

突然,我的腦海中閃過這樣一個念頭:你會不會就像對待我這

個今年夏天才偶然相逢的人也這般溫順一樣—不,甚或更

有過之—對你的父親,以及也包括你父親在內的、始終支

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008

序じ

曲きょく

逢あ

った 私わたし

のような者もの

にもあんなに 従じゅう

順じゅん

だったように、い

や、もっともっと、お前まえ

の父ちち

や、それからまたそういう父ちち

をも数かず

に入い

れたお前まえ

のすべてを絶た

えず支し

配はい

しているものに、

素す

直なお

に身み

を任まか

せ切き

っているのではないだろうか?……「節せつ

子こ

!そういうお前まえ

であるのなら、 私わたし

はお前まえ

がもっともっと

好す

きになるだろう。 私わたし

がもっとしっかりと生せい

活かつ

の見み

透とお

しがつく

ようになったら、どうしたってお前まえ

を貰もら

いに行い

くから、そ

れまではお父とう

さんの許もと

に今いま

のままのお前まえ

でいるがいい……」

  そんなことを 私わたし

は自じ

分ぶん

自じ

身しん

にだけ言い

い聞き

かせながら、し

かしお前まえ

の同どう

意い

を求もと

めでもするかのように、いきなりお前まえ

の手て

をとった。お前まえ

はその手て

を 私わたし

にとられるがままにさせ

ていた。それから 私わたし

達たち

はそうして手て

を組く

んだまま、一ひと

つの

沢さわ

の前まえ

に立た

ち止ど

まりながら、押お

し黙だま

って、 私わたし

達たち

の足あし

許もと

に深ふか

く食く

いこんでいる小ちい

さな沢さわ

のずっと底そこ

の、下した

生ばえ

の羊し

歯だ

など

の上まで、日ひ

の 光ひかり

が数かず

知し

れず枝えだ

をさしかわしている低ひく

い灌かん

木ぼく

の隙すき

間ま

をようやくのことで潜くぐ

り抜ぬ

けながら、斑まだ

らに落お

ていて、そんな木こ

洩も

れ日び

がそこまで届とど

くうちに殆ほと

んどある

かないか 位ぐらい

になっている微び

風ふう

にちらちらと揺ゆ

れ動うご

いている

のを、何なに

か切せつ

ないような気き

持もち

で見み

つめていた。

  それから二に

三さん

日にち

した或あ

る夕ゆう

方がた

、 私わたし

は 食しょく

堂どう

で、お前まえ

がお

前まえ

を迎むか

えに来き

た父ちち

と 食しょく

事じ

を共とも

にしているのを見みい

出だ

した。お

前まえ

は 私わたし

の方ほう

にぎごちなさそうに背せ

中なか

を向む

けていた。父ちち

の側がわ

にいることがお前まえ

に殆ほと

んど無む

意い

識しき

的てき

に取と

らせているにちが

いない様よう

子す

や動どう

作さ

は、 私わたし

にはお前まえ

をついぞ見み

かけたことも

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序曲

009

配著你一切的人們,也百依百順呢?……「節子!如果你當真

是那樣一個人,我大概會更加喜歡你吧。等到我的生活前景再

穩定一些,我非去迎娶你不可,而在那之前,你就待在你父親

的身邊,就像現在這個樣子便好……」

這些話,我只說給了自己一人聽,卻彷彿要徵求你同意似

的,猛然抓住你的手。你便聽由我抓著它。然後我倆就這麼手

牽著手,佇立在一灣水澤前,默默無言,心情黯淡地凝視著陽

光穿過無數枝條葳蕤縱橫的低矮灌木間隙,最終斑斑點點地抵

落在小小水澤最底處叢生於樹木下的蕨類之上。這枝葉間泄

露的縷縷陽光直至抵落那裡之前,始終在似有似無的微風中搖

曳不止。

又過了兩三日之後的一個傍晚,我在餐廳裡找到了正在

共進晚餐的你和前來接你回家的父親。你笨拙地將後背對著

我。守在父親身畔時你差不多是無意之間流露出的神態和舉

止,讓我感覺到你彷彿是一個我從未謀面的陌生女郎。

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010

序じ

曲きょく

ないような若わか

い娘むすめ

のように感かん

じさせた。

 「たとえ 私わたし

がその名な

を呼よ

んだにしたって……」と 私わたし

一ひ と り

人でつぶやいた。「あいつは平へい

気き

でこっちを見み

向む

きもしな

いだろう。まるでもう 私わたし

の呼よ

んだものではないかのよう

に……」

  その晩ばん

、 私わたし

は一ひ と り

人でつまらなそうに出で

かけて行い

った散さん

歩ぽ

からかえって来き

てからも、しばらくホテルの人ひと

けのない庭にわ

の中なか

をぶらぶらしていた。山やま

百ゆ

合り

が匂にお

っていた。 私わたし

はホ

テルの窓まど

がまだ二ふた

つ三みっ

つあかりを洩も

らしているのをぼんや

りと見み

つめていた。そのうちすこし霧きり

がかかって来き

たよう

だった。それを恐おそ

れでもするかのように、窓まど

のあかりは一ひと

つびとつ消き

えて行い

った。そしてとうとうホテル 中じゅう

がすっか

り真ま

っ暗くら

になったかと思おも

うと、軽かる

いきしりがして、ゆるや

かに一ひと

つの窓まど

が開ひら

いた。そして薔ば

薇ら

色いろ

の寝ね

衣まき

らしいものを

着き

た、一ひ と り

人の若わか

い娘むすめ

が、窓まど

の縁ふち

にじっと凭よ

りかかり出だ

した。

それはお前まえ

だった。……

  お前まえ

達たち

が発た

って行い

ったのち、日ひ

ごと日ひ

ごとずっと 私わたし

の胸むね

をしめつけていた、あの悲かな

しみに似に

たような幸こう

福ふく

の雰ふん

囲い

気き

を、私わたし

はいまだにはっきりと 蘇よみがえ

らせることが出で

来き

る。

私わたし

は 終しゅう

日じつ

、ホテルに閉と

じ籠こも

っていた。そうして長なが

い 間あいだ

お前まえ

のために打うっ

棄ちゃ

って置お

いた自じ

分ぶん

の仕し

事ごと

に取と

りかかり出だ

た。 私わたし

は自じ

分ぶん

にも思おも

いがけない 位ぐらい

、静しず

かにその仕し

事ごと

に没ぼっ

頭とう

することが出で

来き

た。そのうちにすべてが他ほか

の季き

節せつ

に移うつ

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序曲

011

「就算我呼喚她的名字……」我自言自語道,「大概那丫頭

也會毫不在乎地對我不理不睬吧。好像根本就不是我在呼喚

她一般……」

那一晚,我百無聊賴地獨自出門散步歸來後,又在旅舍闃

然無人的庭院裡久久徊徨。天香百合香氛飄溢。我茫然凝望

著旅舍兩三隻猶自燈光漏泄的窗戶。須臾,似乎有霧靄冉冉升

起。彷彿是對它心存畏懼似的,窗口的燈光一盞盞地熄滅了

去,於是整座旅舍終於沉入一片漆黑之中。就在這時,傳來吱

呀一聲輕響,一頁窗扇緩緩開啟,只見一個身著薔薇色睡衣似

衣物的妙齡女郎憑窗靜立。那便是你……

我至今依然能夠清晰地回憶起你們離去之後,日復一日

始終壓迫著我心靈的、那種類乎哀傷的幸福氛圍。

我終日在旅舍裡閉門索居,並且重新拾起為了你的緣故

而拋擲已久的工作。連自己都沒有意料到,我居然能夠那般平

靜地埋頭工作。未幾,一切都移徙進入了另一季節,而就在自

己也行將啟程離去的前一日,我時隔多日之後出門散步去了。

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012

序じ

曲きょく

て行い

った。そしていよいよ 私わたし

も 出しゅっ

発ぱつ

しようとする前ぜん

日じつ

私わたし

はひさしぶりでホテルから散さん

歩ぽ

に出で

かけて行い

った。

秋あき

は 林はやし

の中なか

を見み

ちがえるばかりに乱らん

雑ざつ

にしてい

た。葉は

のだいぶ少すく

なくなった木き

々ぎ

は、その 間あいだ

から、人ひと

けの絶た

えた別べっ

荘そう

のテラスをずっと前ぜん

方ぽう

にのり出だ

させて

いた。菌きん

類るい

の湿しめ

っぽい匂にお

いが落らく

葉よう

の匂にお

いに入い

りまじっ

ていた。そういう思おも

いがけない 位ぐらい

の季き

節せつ

の推すい

移い

が、

―お前まえ

と別わか

れてから私わたし

の知し

らぬ間あいだ

にこんなにも立た

ってし

まった時じ

間かん

というものが、 私わたし

には異い

様よう

に感かん

じられた。 私わたし

の 心こころ

の裡うち

の何ど

処こ

かしらに、お前まえ

から引ひ

き離はな

されているのは

ただ一いち

時じ

的てき

だと云い

った確かく

信しん

のようなものがあって、そのた

めこうした時じ

間かん

の推すい

移い

までが、 私わたし

には今いま

までとは全ぜん

然ぜん

異ちが

た意い

味み

を持も

つようになり出だ

したのであろうか?……そんな

ようなことを、 私わたし

はすぐあとではっきりと確たし

かめるまで、

何なに

やらぼんやりと感かん

じ出だ

していた。

私わたし

はそれから 十じゅう

数すう

分ふん

後ご

、一ひと

つの 林はやし

の尽つ

きたところ、そ

こから 急きゅう

に打う

ちひらけて、遠とお

い地ち

平へい

線せん

までも一いっ

帯たい

に眺なが

めら

れる、一いち

面めん

に 薄すすき

の生お

い茂しげ

った草そう

原げん

の中なか

に、足あし

を踏ふ

み入い

れて

いた。そして 私わたし

はその 傍かたわ

らの、既すで

に葉は

の黄き

いろくなりか

けた一いっ

本ぽん

の白しら

樺かば

の木こ

蔭かげ

に身み

を横よこ

たえた。其そ

処こ

は、その夏なつ

日ひ

々び

、お前まえ

が絵え

を描か

いているのを眺めながら、 私わたし

がいつ

も今いま

のように身み

を横よこ

たえていたところだった。あの時とき

には

殆ほと

んどいつも 入にゅう

道どう

雲ぐも

に 遮さえぎ

られていた地ち

平へい

線せん

のあたりには、

今いま

は、何ど

処こ

か知し

らない、遠とお

くの山さん

脈みゃく

までが、真ま

っ白しろ

な穂ほ

先さき

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序曲

013

秋,令林中變得雜亂紛紜、面目全非。殘葉稀疏的樹木

從其枝丫間,讓人去樓空的別墅露台探身展露在迢迢的前方。

菌類潤濕的氣味羼雜在落葉的氣味裡。這出人意料的季節推

移,—自與你一別之後,光陰不知不覺之中消逝如飛,令

我難禁異樣之感。是否在我心中存在著某種確信,覺得我與你

被生生拆散只是一時之厄,因而就連這樣的時光流逝,於我而

言也變得擁有了與迄今全然不同的意義?……對此,在稍後不

久我徹底究明之前,一直就已隱隱約約地有所感知。

十多分鐘後,我走到叢林的盡頭,踏入芒草遍野叢生的

草原之中,面前豁然開朗一覽無餘,連遙遠的地平線也盡收眼

底。於是我在一旁葉片已然發黃的一株白樺樹蔭裡橫身躺下。

此地就是這年夏日裡,我像此刻一樣斜躺著看你作畫的去處。

當時幾乎始終遮蔽在積雨雲後的地平線上,如今卻連不知其名

的遙遠山脈,也撥開搖曳不已的芒草梢尖上的蒼穹,將其輪廓

一一清晰地顯現了出來。

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014

序じ

曲きょく

をなびかせた 薄すすき

の上うえ

を分わ

けながら、その輪りん

廓かく

を一ひと

つ一ひと

くっきりと見み

せていた。

私わたし

はそれらの遠とお

い山さん

脈みゃく

の 姿すがた

をみんな暗あん

記き

してしまう

位くらい

、じっと目め

に 力ちから

を入い

れて見み

入い

っているうちに、いまま

で自じ

分ぶん

の裡うち

に潜ひそ

んでいた、自し

然ぜん

が自じ

分ぶん

のために極きわ

めて置お

てくれたものを今いま

こそ漸や

っと見み

出いだ

したと云い

う確かく

信しん

を、だん

だんはっきりと自じ

分ぶん

の意い

識しき

に上のぼ

らせはじめていた。……

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序曲

015

我用力睜大雙眼凝望遠山,幾乎要將它們的身姿熟記於

心。漸漸地,一種確信湧上心頭昭然可見:此刻,我總算找到

了一直在自己心中深藏不露的、大自然惠賜予我的東西……

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016

春は る

三さん

月がつ

になった。或あ

る午ご

後ご

、 私わたし

がいつものようにぶらっと

散さん

歩ぽ

のついでにちょっと立たち

寄よ

ったとでも云い

った風ふう

に節せつ

子こ

の家いえ

を 訪おとず

れると、門もん

をはいったすぐ横よこ

の植うえ

込こ

みの中なか

に、労ろう

働どう

者しゃ

のかぶるような大おお

きな麦むぎ

稈わら

帽ぼう

をかぶった父ちち

が、片かた

手て

に 鋏はさみ

もちながら、そこいらの木き

の手て い

入れをしていた。私わたし

はそうい

う 姿すがた

を認みと

めると、まるで子こ

供ども

のように木き

の枝えだ

を掻か

き分わ

けな

がら、その傍そば

に近ちか

づいていって、二ふた

言こと

三み

言こと

挨あい

拶さつ

の言こと

葉ば

を交か

したのち、そのまま父ちち

のすることを物もの

珍めず

らしそうに見み

ていた。

―そうやって植うえ

込こ

みの中なか

にすっぽりと身み

を入い

れていると、

あちらこちらの小ちい

さな枝えだ

の上うえ

にときどき何なに

かしら白しろ

いものが

光ひか

ったりした。それはみんな莟つぼみ

らしかった。……

 「あれもこの頃ごろ

はだいぶ元げん

気き

になって来き

たようだが」父ちち

突とつ

然ぜん

そんな 私わたし

の方ほう

へ顔かお

をもち上あ

げて、その頃ころ

私わたし

と婚こん

約やく

たばかりの節せつ

子こ

のことを言い

い出だ

した。

 「もう少すこ

し好い

い陽よう

気き

になったら、転てん

地ち

でもさせて見み

たらど

うだろうね?」

 「それはいいでしょうけれど……」と 私わたし

は口くち

ごもりなが

ら、さっきから目め

の前まえ

にきらきら光ひか

っている一ひと

つの 莟つぼみ

がな

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017

三月了。一日午後,我像平素一樣,假作信馬由韁的散步

途中順便路過,走訪了節子的家。大門內裡的花木叢中,頭戴

著工人們常戴的那種大草帽的節子父親手執剪刀,正在修剪

身旁的樹木。我一看見他,便像小孩子一般撩開樹枝走近他

身邊,三言兩語地寒暄了幾句之後,就立在那裡滿心好奇地瞧

著他幹活。當整個身子都埋沒於花木叢中,便可見縱橫交織的

細小枝條上,不時會有白色的物體隱約閃爍。那些似乎全是

花蕾……

「小女最近好像身體也好多啦。」父親突然仰臉望著我,

說起了剛剛與我訂婚不久的節子的事。

「等她情況再好一點,就試試轉地療養,你看如何?」

「那自然很好啦……」我吞吞吐吐地答道,裝作一直在關

注眼前一朵晶晶閃亮的花蕾的模樣。

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018

春は

んだか気き

になってならないと云い

った風ふう

をしていた。

 「何ど

処こ

ぞいいところはないかとこの 間あいだ

うちから物ぶっ

色しょく

しと

るのだがね―」と父ちち

はそんな 私わたし

には構かま

わずに言い

いつづけ

た。「節せつ

子こ

はFのサナトリウムなんぞどうか知し

らんと言い

うの

じゃが、あなたはあそこの院いん

長ちょう

さんを知し

っておいでだそう

だね?」

 「ええ」と 私わたし

はすこし上うわ

の空そら

でのように返へん

事じ

をしながら、

やっとさっき見み

つけた白しろ

い莟つぼみ

を手て

もとにたぐりよせた。

 「だが、あそこなんぞは、あれ一ひ と り

人で行い

って居お

られるだろ

うか?」

 「みんな一ひ と り

人で行い

っているようですよ」

 「だが、あれにはなかなか行い

って居い

られまいね?」

父ちち

はなんだか困こま

ったような顔かお

つきをしたまま、しかし 私わたし

の方ほう

を見み

ずに、自じ

分ぶん

の目め

の前まえ

にある木き

の枝えだ

の一ひと

つへいきな

り 鋏はさみ

を入い

れた。それを見み

ると、 私わたし

はとうとう我が

慢まん

がしき

れなくなって、それを 私わたし

が言い

い出だ

すのを父ちち

が待ま

っていると

しか思おも

われない言こと

葉ば

を、ついと口くち

に出だ

した。

 「なんでしたら僕ぼく

も一いっ

緒しょ

に行い

ってもいいんです。いま、し

かけている仕し

事ごと

の方ほう

も、 丁ちょう

度ど

それまでには片かた

がつきそうで

すから……」

私わたし

はそう言い

いながら、やっと手て

の中なか

に入い

れたばかりの

莟つぼみ

のついた枝えだ

を 再ふたた

びそっと手て

離ばな

した。それと同どう

時じ

に父ちち

顔かお

が急きゅう

に明あか

るくなったのを私わたし

は認みと

めた。

 「そうしていただけたら、一いち

番ばん

いいのだが、―しかしあ

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019

「這陣子正在物色有啥好地方—」父親毫不理會我的拿

腔作調,自顧自說道:「節子提出來,說是 F療養院不知咋樣。

聽說你認識那裡的院長,是嗎?」

「是的。」我有點兒神思恍惚地答道,終於將方才發現的

白色花蕾拽到了身前。

「不過,那裡的話,小女一個人去,行不行呀?」

「好像大家都是一個人去的喲。」

「可是,小女的話,一個人只怕不成吧?」

父親面露不無為難的神色,然而卻不看我,衝著自己眼前

的一截樹枝便是一剪刀。見此情形,我終於按捺不住,衝口說

出了無疑是父親期待著由我來說的話。

「要不然,我也陪著一起去好了。現在手頭做了一半的工

作,到那時候剛好也該有些眉目了……」

我一邊這麼說著,一邊輕輕鬆開手,將好容易才抓到手的

花蕾未綻的枝條又放了回去。與此同時,我看到父親的表情一

下子明朗了起來。

「你能夠這麼做,自然再好不過嘍。—就是太委屈

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020

春は

なたにはえろう済す

まんな……」

 「いいえ、僕ぼく

なんぞにはかえってそう云い

った山やま

の中なか

の方ほう

仕し

事ごと

ができるかも知し

れません……」

  それから 私わたし

達たち

はそのサナトリウムのある山さん

岳がく

地ち

方ほう

のこと

など話はな

し合あ

っていた。が、いつのまにか 私わたし

達たち

の会かい

話わ

は、父ちち

のいま手て

入い

れをしている植うえ

木き

の上うえ

に落お

ちていった。二ふ た り

人の

いまお 互たがい

に感かん

じ合あ

っている一いっ

種しゅ

の同どう

情じょう

のようなものが、

そんなとりとめのない 話はなし

をまで活かっ

気き

づけるように見み

えた。

……

 「節せつ

子こ

さんはお起お

きになっているのかしら?」しばらくし

てから私わたし

は何なに

気げ

なさそうに訊き

いてみた。

 「さあ、起お

きとるでしょう。……どうぞ、構かま

わんから、其そ

処こ

からあちらへ……」と父ちち

は 鋏はさみ

をもった手て

で、庭にわ

木き

戸ど

の方ほう

を示しめ

した。 私わたし

はやっと植うえ

込こ

みの中なか

を潜くぐ

り抜ぬ

けると、蔦つた

がか

らみついて少すこ

し開ひら

きにくい 位くらい

になったその木き

戸ど

をこじあけ

て、そのまま庭にわ

から、この 間あいだ

まではアトリエに使つか

われてい

た、離ばな

れのようになった病びょう

室しつ

の方ほう

へ近ちか

づいていった。

節せつ

子こ

は、 私わたし

の来き

ていることはもうとうに知し

っていたらし

いが、 私わたし

がそんな庭にわ

からはいって来こ

ようとは思おも

わなかった

らしく、寝ね

間ま

着き

の上うえ

に明あか

るい色いろ

の羽は

織おり

をひっかけたまま、

長なが

椅い

子す

の上うえ

に横よこ

になりながら、細ほそ

いリボンのついた、見み

けたことのない婦ふ

人じん

帽ぼう

を手て

でおもちゃにしていた。

私わたし

がフレンチ扉ドア

ごしにそういう彼かの

女じょ

を目め

に入い

れながら近ちか

づいて行い

くと、彼かの

女じょ

の方ほう

でも 私わたし

を認みと

めたらしかった。彼かの

女じょ

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021

你啦……」

「哪裡,像我這種人,在那樣的山裡頭沒準兒反而更能出

活也說不定呢……」

隨後我們聊了一會兒那家療養院所在的山嶽地帶,然而

曾幾何時,我們的話題又落到了父親正在拾掇的花卉上。此時

此刻兩人彼此間感受到的類似同病相憐的某種心緒,竟讓這種

漫無邊際的閒談也顯得生氣勃勃……

「節子她起來了嗎?」過了片刻之後,我若無其事地問了

一句。

「哦,大概起來了吧。……請請,沒關係的,從那邊往那

邊……」父親用拿著剪刀的手,指了指院落的柵欄門。我穿過

叢叢花木,使勁扳開那扇纏滿了爬山虎的澀滯的柵欄門,徑直

從院子裡向著那間不久之前還用作畫室、如今卻變成了病房

的別廳走了過去。

節子似乎早就知道我已然到了,卻沒有想到我會這麼從

院子裡走進來。她在睡衣外邊罩了件鮮麗的短褂子,躺在長椅

上,手中把玩著一頂飾有細絲帶、我從未見過的女帽。

我透過法式玻璃門望著她那嬌態,走近前去。她似乎也

瞧見了我,下意識地做出起身的動作,然而卻依舊躺著未動,

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022

春は

は無む

意いし

識き

に立た

ち上あが

ろうとするような身み

動うご

きをした。が、彼かの

女じょ

はそのまま横よこ

になり、顔かお

を 私わたし

の方ほう

へ向む

けたまま、すこし

気き

まり悪わる

そうな微び

笑しょう

で私わたし

を見み

つめた。

 「起お

きていたの?」 私わたし

は 扉とびら

のところで、いくぶん乱らん

暴ぼう

靴くつ

を脱ぬ

ぎながら、声こえ

をかけた。

 「ちょっと起お

きて見み

たんだけれど、すぐ疲つか

れちゃったわ」

  そう言い

いながら、彼かの

女じょ

はいかにも疲つか

れを帯お

びたような、

力ちから

なげな手て

つきで、ただ何なん

ということもなしに手て

で 弄もてあそ

でいたらしいその帽ぼう

子し

を、すぐ脇わき

にある 鏡きょう

台だい

の上うえ

へ無む

造ぞう

作さ

にほうり投な

げた。が、それはそこまで届とど

かないで床ゆか

の上に

落お

ちた。 私わたし

はそれに近ちか

寄よ

って、 殆ほとん

ど 私わたし

の顔かお

が彼かの

女じょ

の足あし

さきにくっつきそうになるように屈かが

み込こ

んで、その帽ぼう

子し

拾ひろ

い上げると、今こん

度ど

は自じ

分ぶん

の手て

で、さっき彼かの

女じょ

がそうして

いたように、それをおもちゃにし出だ

していた。

  それから 私わたし

はやっと訊き

いた。「こんな帽ぼう

子し

なんぞ取と

り出だ

して、何なに

をしていたんだい?」

 「そんなもの、いつになったら被かぶ

れるようになるんだか知し

れやしないのに、お父とう

様さま

ったら、きのう買か

っておいでになっ

たのよ。……おかしなお父とう

様さま

でしょう?」

 「これ、お父とう

様さま

のお見み

立た

てなの?  本ほん

当とう

に好い

いお父とう

様さま

じゃ

ないか。……どおれ、この帽ぼう

子し

、ちょっとかぶって御ご

覧らん

と 私わたし

が彼かの

女じょ

の 頭あたま

にそれを 冗じょう

談だん

半はん

分ぶん

かぶせるような真ま

似ね

しかけると、

 「厭いや

、そんなこと……」

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023

將臉朝向我,略顯羞澀地微笑著盯著我看。

「起來了嗎?」我站在門邊,稍稍有些粗暴地脫著鞋,對

她說道。

「試著起來了一小會兒,可馬上就感到累了。」

她一邊這麼說著,一邊用明顯帶著倦意的無力的手勢,

將無所事事拿在手裡把玩著的那頂帽子漫不經意地拋向近在

咫尺的梳妝台。然而帽子在半道上便掉落了下去。我走近它,

俯下身去,臉幾乎湊到了她的腳尖,拾起帽子,這下卻拿在自

己手中,就像方才她做過的那樣,把玩了起來。

然後我才問道:「把這種帽子拿出來幹嗎?」

「這東西,誰知道幾時才有機會戴它,可父親也真是的,

昨天卻買了回來。……父親是不是有點怪怪的呀?」

「這,是父親給你挑的嘍?真是一位好父親呀,不是

嗎?……來,把帽子戴上試試。」我半開玩笑地作勢要給她戴

在頭上。

「別,別這樣……」

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024

春は

彼かの

女じょ

はそう言い

って、うるさそうに、それを避さ

けでもする

ように、半なか

ば身み

を起おこ

した。そうして言い

い訳わけ

のように弱よわ

々よわ

い微び

笑しょう

をして見み

せながら、ふいと思おも

い出だ

したように、いく

ぶん痩や

せの目め

立だ

つ手て

で、すこし縺もつ

れた髪かみ

を直なお

しはじめた。

その何なに

気げ

なしにしている、それでいていかにも自し

然ぜん

に若わか

女おんな

らしい手つきは、それがまるで 私わたし

を愛あい

撫ぶ

でもし出だ

した

かのような、呼い

吸き

づまるほどセンシュアルな魅み

力りょく

を 私わたし

感かん

じさせた。そうしてそれは、思おも

わずそれから 私わたし

が目め

をそ

らさずにはいられないほどだった……

  やがて 私わたし

はそれまで手て

で 弄もてあそ

んでいた彼かの

女じょ

の帽ぼう

子し

を、

そっと脇わき

の 鏡きょう

台だい

の上うえ

に載の

せると、ふいと何なに

か 考かんが

え出だ

した

ように黙だま

りこんで、なおもそういう彼かの

女じょ

からは目め

をそらせ

つづけていた。

 「おおこりになったの?」と彼かの

女じょ

は突とつ

然ぜん

私わたし

を見み

上あ

げながら、

気き

づかわしそうに問と

うた。

 「そうじゃないんだ」と 私わたし

はやっと彼かの

女じょ

の方ほう

へ目め

をやりながら、それから 話はなし

の続つづ

きでもなんでもなし

に、出だ

し抜ぬ

けにこう言い

い出だ

した。「さっきお父とう

様さま

がそう

言い

っていらしったが、お前まえ

、ほんとうにサナトリウムに行い

く気き

かい?」

 「ええ、こうしていても、いつ良よ

くなるのだか分わか

らないの

ですもの。早はや

く良よ

くなれるんなら、何ど

処こ

へでも行い

っているわ。

でも……」

 「どうしたのさ?なんて言い

うつもりだったんだい?」

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025

她說道,似乎心嫌絮煩,想要躲開去一般,支起半個身

子。隨即彷彿辯解般地作出弱弱的微笑,又彷彿忽然想起來似

的,用稍顯纖瘦的手,梳攏起略微凌亂的頭髮來。那隨性而為

自然之極的手勢,少女味十足,宛如伸手愛撫我一般,讓我感

受到一種充滿性感的魅力,令我幾乎窒息,竟不由自主地將視

線轉向了一旁……

未幾,我將手中那頂把玩多時的帽子輕輕地擱在一旁的梳

妝台上,忽然若有所思地陷入沉默,猶自不敢正視她的嬌顏。

「你生氣了嗎?」她突然仰臉看著我,幽幽地問道。

「那倒不是的。」我好容易將目光轉向了她,然後沒話找話

地冷不丁說道:「剛才父親告訴我了,你當真想去療養院嗎?」

「嗯。老是這個樣子的話,也不知道甚麼時候才會好嘛。

只要能快點好起來,隨便哪裡我都願意去的。只是……」

「怎麼啦?你想說甚麼來著?」

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026

春は

 「なんでもないの」

 「なんでもなくってもいいから言い

って御ご

覧らん

。……どうして

も言い

わないね、じゃ僕ぼく

が言い

ってやろうか?お前まえ

、僕ぼく

にも一いっ

緒しょ

に行い

けというのだろう?」

 「そんなことじゃないわ」と彼かの

女じょ

は 急きゅう

に 私わたし

を 遮さえぎ

ろうと

した。

  しかし 私わたし

はそれには構かま

わずに、最さい

初しょ

の 調ちょう

子し

とは 異ことな

って、

だんだん真ま

面じ

目め

になりだした、いくぶん不ふ

安あん

そうな 調ちょう

子し

言い

いつづけた。

 「……いや、お前まえ

が来こ

なくともいいと言い

ったって、そりあ

僕ぼく

は一いっ

緒しょ

に行い

くとも。だがね、ちょっとこんな気き

がして、

それが気き

がかりなのだ。……僕ぼく

はこうしてお前まえ

と一いっ

緒しょ

にな

らない前まえ

から、何ど

処こ

かの淋さび

しい山やま

の中なか

へ、お前まえ

みたいな可か わ い

らしい 娘むすめ

と二ふ た り

人きりの生せい

活かつ

をしに行い

くことを夢ゆめ

みていたこ

とがあったのだ。お前まえ

にもずっと前まえ

にそんな 私わたし

の夢ゆめ

を打う

明あ

けやしなかったかしら?ほら、あの山やま

小ご や

屋の 話はなし

さ、そん

な山やま

の中なか

に私わた

達したち

は住す

めるのかしらと云い

って、あのときはお

前まえ

は無む

邪じゃ

気き

そうに笑わら

っていたろう?……実じつ

はね、こんどお前まえ

がサナトリウムへ行い

くと言い

い出だ

しているのも、そんなことが

知し

らず識し

らずの裡うち

にお前まえ

の 心こころ

を動うご

かしているのじゃないか

と思おも

ったのだ。……そうじゃないのかい?」

彼かの

女じょ

はつとめて微ほほ

笑え

みながら、黙だま

ってそれを聞き

いていた

が、

 「そんなこともう覚おぼ

えてなんかいないわ」と彼かの

女じょ

はきっぱ

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027

「也沒甚麼。」

「沒甚麼也不打緊的呀,你且說來聽聽。……你是無論如

何也不肯說的嘍?那,我就幫你說了吧?你是想要我也跟你一

起去,對不?」

「才不是呢。」她急忙打斷我的話頭。

然而我沒有理會她,繼續說了下去。語氣與方才迥異,漸

漸變得認真起來,多少顯得有點不安:

「……不,就算你說了無須我去,我也是非去不可的。不

過呢,我有一種小小的感覺,就是它讓我心緒不寧……還在我

像現在這樣跟你走到一起以前,我就夢想著和你這樣可愛的

姑娘一塊兒,跑到一座遠離塵世的深山裡去生活,兩人朝夕相

伴,再無別人。我不是老早就對你也談起過我的這個夢想嗎?

喏,就是說到山中小木屋那次嘛。那時候你不是還笑得天真爛

漫,說那種深山老林裡我們住得慣住不慣呀?……其實吧,我

覺得這次你提出來要進療養院,八成就是因為那些話兒不知不

覺中讓你為之心動了……難道不是這樣嗎?」

她努力微笑著,安靜地聽完這些話,卻乾脆地說道:

「我已經不記得有這麼回事了。」

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028

春は

りと言い

った。それから寧むし

ろ 私わたし

の方ほう

をいたわるような目め

つき

でしげしげと見み

ながら、「あなたはときどき飛と

んでもないこ

とを考かんが

え出だ

すのね……」

  それから数すう

分ふん

後ご

、 私わたし

達たち

は、まるで 私わたし

達たち

の 間あいだ

には何なに

事ごと

なかったような顔かお

つきをして、フレンチ扉ドア

の向うに、芝しば

生ふ

がもう大だい

ぶ青あお

くなって、あちらにもこちらにも陽かげ

炎ろう

らしい

ものの立た

っているのを、一いっ

緒しょ

になって珍めず

らしそうに眺なが

め出だ

していた。

* * *

四し

月がつ

になってから、節せつ

子こ

の 病びょう

気き

はいくらかずつ恢かい

復ふく

期き

に近ちか

づき出だ

しているように見み

えた。そしてそれがいかにも

遅ち

々ち

としていればいるほど、その恢かい

復ふく

へのもどかしいよう

な一いっ

歩ぽ

一いっ

歩ぽ

は、かえって何なに

か確かく

実じつ

なもののように思おも

われ、

私わたし

達たち

には云い

い知し

れず頼たの

もしくさえあった。

  そんな或あ

る日ひ

の午ご

後ご

のこと、 私わたし

が行い

くと、 丁ちょう

度ど

父ちち

外がい

出しゅつ

していて、節せつ

子こ

は一ひ と り

人で 病びょう

室しつ

にいた。その日ひ

は大たい

へん気き

分ぶん

もよさそうで、いつも 殆ほとん

ど着き

たきりの寝ね

間ま

着き

を、めずらしく青あお

いブラウスに着き

換が

えていた。 私わたし

はそう

いう 姿すがた

を見み

ると、どうしても彼かの

女じょ

を庭にわ

へ引ひ

っぱり出だ

そう

とした。すこしばかり風かぜ

が吹ふ

いていたが、それすら気き

持もち

のいいくらい軟やわ

らかだった。彼かの

女じょ

はちょっと自じ

信しん

なさそう

に笑わら

いながら、それでも 私わたし

にやっと同どう

意い

した。そうして

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029

隨後反而用安慰般的眼神端詳著我:

「你常常會冒出些莫名其妙的念頭來嘛……」

幾分鐘之後,我們好像彼此之間甚麼事情都不曾發生似

的,一起興味盎然地眺望法式玻璃門外來:草坪上綠意已濃,

滿目游絲飄曳。

* * *

進入四月後,節子的病看似一步一步地抵近了恢復期。

而這進展愈是遲緩,邁向恢復的那令人心焦的每一步,卻反

而更令人覺得扎實可信,甚至給了我們一種無以言喻的踏

實感。

就在這樣的一個午後,我去時,正趕上父親外出不在家,

只有節子一人待在病房裡。那天她看上去情緒很好,幾乎長年

不變的那一身睡衣,也難得地換成了藍色襯衫。一見她那身打

扮,我便尋思著定要把她拖到院子裡去。儘管颳著些許微風,

可連那風也軟柔柔的,令人神怡。她似乎稍欠自信地笑著,最

終還是答允了我。於是將手搭在我的肩頭,顫巍巍地移步挪出

法式玻璃門,怯生生地來到了草坪上,沿著灌木形成的樹牆,

朝著混雜著各色外國品種、枝丫交錯分辨不出彼此、花繁葉

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030

春は

私わたし

の肩かた

に手て

をかけて、フレンチ扉ドア

から、何なん

だか危あぶ

かしそ

うな足あし

つきをしながら、おずおずと芝しば

生ふ

の上うえ

へ出で

て行い

た。生いけ

墻がき

に沿そ

うて、いろんな外がい

国こく

種しゅ

のも混ま

じって、どれ

がどれだか見み

分わ

けられないくらいに枝えだ

と枝えだ

を交か

わしなが

ら、ごちゃごちゃに茂しげ

っている植うえ

込こ

みの方ほう

へ近ちか

づいてゆく

と、それらの茂しげ

みの上うえ

には、あちらにもこちらにも白しろ

黄き

や淡うす

紫むらさき

の小ちい

さな 莟つぼみ

がもう今いま

にも咲さ

き出だ

しそうになっ

ていた。 私わたし

はそんな茂しげ

みの一ひと

つの前まえ

に立た

ち止ど

まると、去きょ

年ねん

の秋あき

だったか、それがそうだと彼かの

女じょ

に教おし

えられたのを

ひょっくり思おも

い出だ

して、

 「これはライラックだったね?」と彼かの

女じょ

の方ほう

をふり向む

きな

がら、半なか

ば訊き

くように言い

った。

 「それがどうもライラックじゃないかも知し

れないわ」と

私わたし

の肩かた

に軽かる

く手て

をかけたまま、彼かの

女じょ

はすこし気き

の毒どく

そうに

答こた

えた。

 「ふん……じゃ、いままで嘘うそ

を教おし

えていたんだね?」

 「嘘うそ

なんか衝つ

きやしないけれど、そういって人ひと

から 頂ちょう

戴だい

したの。……だけど、あんまり好い

い花はな

じゃないんですもの」

 「なあんだ、もういまにも花はな

が咲さ

きそうになってから、

そんなことを白はく

状じょう

するなんて!じゃあ、どうせあいつも

……」

私わたし

はその隣とな

りにある茂しげ

みの方ほう

を指ゆび

さしながら、「あいつ

は何なん

ていったっけなあ?」

 「金エ ニ シ ダ

雀児?」と彼かの

女じょ

はそれを引ひ

き取と

った。私わたし

達たち

は今こん

度ど

はそっ

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031

茂的花木叢走近了去,只見那叢叢繁枝上佈滿了白色、黃色、

淡紫色的小花蕾,已經含苞欲放。我在這樣的一簇花枝前駐

足不前,陡然回想起好像是去年秋天,她曾經告訴過我這花的

名字。

「這是丁香花吧?」我扭頭望著她,半是詢問地說道。

「那好像並不是丁香花哦。」她的手依然輕輕地搭在我的

肩頭,略顯歉然地答道。

「咦……那麼,你一直都在跟我瞎說嘍?」

「我怎麼可能瞎說呢,那是人家送花來時告訴我的……不

過,反正也不是甚麼好花。」

「好呀!連花都快要開了,你才如實招供!這麼說來,莫

非那個也……」

我指著旁邊那叢花卉問道:「你說那叫甚麼來著?」

「金雀花?」她接過了話茬。這次我們移足來到了那叢花

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032

春は

ちの茂しげ

みの前まえ

に移うつ

っていった。「この金エ ニ シ ダ

雀児は本ほん

物もの

よ。ほら、

黄き

いろいのと白しろ

いのと、 莟つぼみ

が二に

種しゅ

類るい

あるでしょう?こっち

の白しろ

いの、それあ珍めず

らしいのですって……お父とう

様さま

の御ご

自じ

慢まん

よ……」

  そんな他た

愛あい

のないことを言い

い合あ

いながら、その 間あいだ

じゅう

節せつ

子こ

は 私わたし

の肩かた

から手て

をはなさずに、しかし疲つか

れたというよ

りも、うっとりとしたようになって、 私わたし

に靠もた

れかかってい

た。それから 私わたし

達たち

はしばらくそのまま黙だま

り合あ

っていた。そ

うすることがこういう花はな

咲さ

き匂にお

うような人じん

生せい

をそのまま少すこ

しでも引ひ

き留と

めて置お

くことが出で

来き

でもするかのように。と

きおり軟やわ

らかな風かぜ

が向む

こうの生いけ

墻がき

の 間あいだ

から抑おさ

えつけられ

ていた呼こ

吸きゅう

かなんぞのように押お

し出だ

されて、 私わたし

達たち

の前まえ

している茂しげ

みにまで達たっ

し、その葉は

を僅わず

かに持も

ち上あ

げながら、

それから其そ

処こ

にそういう 私わたし

達たち

だけをそっくり完かん

全ぜん

に残のこ

した

まんま通とお

り過ぎていった。

突とつ

然ぜん

、彼かの

女じょ

が 私わたし

の肩かた

にかけていた自じ

分ぶん

の手て

の中なか

にその顔かお

を埋う

めた。 私わたし

は彼かの

女じょ

の心しん

臓ぞう

がいつもよりか高たか

く打う

っている

のに気き

がついた。

 「疲つか

れたの?」私わたし

はやさしく彼かの

女じょ

に訊き

いた。

 「いいえ」と彼かの

女じょ

は小こ

声ごえ

に答こた

えたが、 私わたし

はますます 私わたし

肩かた

に彼かの

女じょ

のゆるやかな重おも

みのかかって来く

るのを感かん

じた。

 「 私わたし

がこんなに弱よわ

くって、あなたに何なん

だかお気き

の毒どく

……」彼かの

女じょ

はそう 囁ささや

いたのを、 私わたし

は聞き

いたというよりも、

むしろそんな気き

がした位くらい

のものだった。

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卉前。「這個金雀花可是真的喲。你瞧,不是有黃白兩種花蕾

嗎?這邊這種白色的,聽說那可是名貴品種喲……父親可引以

為豪啦……」

就這麼東拉西扯些閒言淡語,其間節子的手始終搭在我

的肩上不離,與其說是因為倦乏,不如說是陶然欲醉似的,依

偎著我。久久地,我們就這樣無言相對。彷彿這麼做就能夠讓

這繁花吐豔般的人生盡可能地留駐片刻。不時地,軟風宛似壓

抑已久的呼吸一般,從灌木構築的樹牆那端被擠了出來,掠過

我們面前的花叢,將葉片微微掀起,然後又飄然逝去,獨將我

們兩人原封不動地留在那裡。

突然,她將臉埋進搭在我肩頭的自己手裡,我感覺到她的

心臟狂跳,遠甚於平日。

「累了嗎?」我溫柔地問她道。

「沒有。」她小聲回答。我益發感受到她的重量緩緩地壓

上了我的肩膀。

「我身子這麼弱,總覺得對不起你……」她的這聲低語,

我與其說是聽到的,還不如說是感覺到的。

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034

春は

 「お前まえ

のそういう脆ひ

弱よわ

なのが、そうでないより 私わたし

にはもっ

とお前まえ

をいとしいものにさせているのだと云い

うことが、ど

うして分わか

らないのだろうなあ……」と 私わたし

はもどかしそうに

心こころ

のうちで彼かの

女じょ

に呼よ

びかけながら、しかし 表ひょう

面めん

はわざと

何なん

にも聞き

きとれなかったような様よう

子す

をしながら、そのまま

じっと身み

動うご

きもしないでいると、彼かの

女じょ

は 急きゅう

に 私わたし

からそれ

を反そ

らせるようにして顔かお

をもたげ、だんだん 私わたし

の肩かた

から手て

さえも離はな

して行い

きながら、

 「どうして、 私わたし

、この頃ごろ

こんなに気き

が弱よわ

くなったの

かしら?こないだうちは、どんなに 病びょう

気き

のひどいと

きだって何なん

とも思おも

わなかった癖くせ

に……」と、ごく低ひく

声こえ

で、独ひと

り言ごと

でも言い

うように口くち

ごもった。沈ちん

黙もく

がそん

な言こと

葉ば

を気き

づかわしげに引ひ

きのばしていた。そのうち

彼かの

女じょ

が 急きゅう

に顔かお

を上あ

げて、 私わたし

をじっと見み

つめたかと思おも

うと、それを 再ふたた

び伏ふ

せながら、いくらか上うわ

ずったよ

うな 中ちゅう

音おん

で言い

った。「 私わたし

、なんだか 急きゅう

に生きたく

なったのね……」

  それから彼かの

女じょ

は聞きこ

えるか聞きこ

えない 位ぐらい

の小こ

声ごえ

で言い

い足た

た。「あなたのお蔭かげ

で……」

* * *

  それは、 私わたし

達たち

がはじめて出で

会あ

ったもう二に

年ねん

前まえ

にもなる夏なつ

の頃ころ

、不ふ

意い

に 私わたし

の口くち

を衝つ

いて出で

た、そしてそれから 私わたし

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「你的這種羸弱,比起不是這樣更讓我疼愛。這一點,你

怎麼就不明白呢……」我急不可耐地在內心裡向她傾訴著,可

表面上卻裝作甚麼也沒聽見,立在那裡一動不動。她猛地抬起

頭來向後仰去,甚而連手也漸漸離開了我的肩頭,彷彿自言自

語一般,聲音低抑地嘟囔道:

「這一陣子我怎麼變得這麼憂心忡忡了呢?從前就算病情

再嚴重,我可是都沒當回事兒來著……」

沉默將她的話音拉長,長得令人不安。過了一會兒,

她突兀地仰起臉,直勾勾地盯著我看,旋即又低下頭去,用

略帶亢奮的中音說道:「不知道為甚麼,我突然又想活下去 

了……」

接著又用若有若無的低聲添上了一句:「多虧有你……」

* * *

那是些歡愉的日子,歡愉得令人黯然神傷。就如同早在

我倆初次相遇兩年之前的那個夏日裡我於漫不經意間脫口而

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036

春は

何なん

ということもなしに口くち

ずさむことを好この

んでいた、風かぜ

立だ

ぬ、いざ生い

きめやも。

  という詩し

句く

が、それきりずっと忘わす

れていたのに、又また

ひょっ

くりと 私わたし

達たち

に 蘇よみがえ

ってきたほどの、―云い

わば人じん

生せい

に先さき

立だ

った、人じん

生せい

そのものよりかもっと生い

き生い

きと、もっと切せつ

ないまでに愉たの

しい日ひ

々び

であった。

私わたし

達たち

はその月げつ

末まつ

に八やつ

ヶが

岳たけ

山さん

麓ろく

のサナトリウムに行い

くため

の 準じゅん

備び

をし出だ

していた。 私わたし

は、 一ちょっ

寸と

した識しり

合あ

いになって

いる、そのサナトリウムの院いん

長ちょう

がときどき 上じょう

京きょう

する機き

会かい

を捉とら

えて、其そ

処こ

へ出で

かけるまでに一いち

度ど

節せつ

子こ

の 病びょう

状じょう

を診み

貰もら

うことにした。

或あ

る日ひ

、やっとのことで郊こう

外がい

にある節せつ

子こ

の家いえ

までその院いん

長ちょう

に来き

て貰もら

って、最さい

初しょ

の診しん

察さつ

を受う

けた後あと

、「なあに大たい

した

ことはないでしょう。まあ、一いち

二に

年ねん

山やま

へ来き

て辛しん

抱ぼう

なさるん

ですなあ」と 病びょう

人にん

達たち

に言い

い残のこ

して 忙いそが

しそうに帰かえ

ってゆく

院いん

長ちょう

を、 私わたし

は駅えき

まで見み

送おく

って行い

った。 私わたし

は彼かれ

から自じ

分ぶん

だけでも、もっと正せい

確かく

な彼かの

女じょ

の 病びょう

態たい

を聞き

かしておいて貰もら

たかったのだった。

 「しかし、こんなことは 病びょう

人にん

には言い

わぬようにしたまえ。

父ちち

親おや

にはそのうち僕ぼく

からもよく話はな

そうと思おも

うがね」院いん

長ちょう

そんな前まえ

置お

きをしながら、少すこ

し気き

むずかしい顔かお

つきをして

節せつ

子こ

の容よう

態だい

をかなり細こま

かに 私わたし

に説せつ

明めい

して呉く

れた。それから

それを黙だま

って聞き

いていた 私わたし

の方ほう

をじっと見み

て、「君きみ

もひど

く顔かお

色いろ

が悪わる

いじゃないか。ついでに君きみ

の身しん

体たい

も診み

ておいて

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出、從此以後便喜歡上了它、無緣無故地常要淺吟低誦的「風

乍起。合當奮意向人生。」那行詩句一般,分明忘懷已久,卻

又悄然蘇生—可謂是早於人生之先、遠比人生本身更為鮮

活的日子。

我們開始為月底前往八岳山麓的療養院做準備。我們打

算趁小有交情的那家療養院院長偶爾來京的機會,在動身趕赴

那裡之前,請他為節子診視一次病情。

一天,總算將那位院長請到了地處郊外的節子家裡。接

受了首次診察後,只見院長衝著病人留下一句「看來沒啥大

不了。姑且到山裡來熬它個一年兩載吧」,說罷便要匆匆地歸

去,我送他到火車站,想藉機與他獨處,請他把更為準確的病

情,講給我聽。

「不過,這種話你千萬別告訴病人。至於她父親嘛,過幾

天我自己也會跟他好好說說的。」院長講過這麼一通開場白

後,神色凝重地將節子的病狀仔仔細細地對我說明了一番。然

後緊緊地盯著沉默不語傾耳諦聽的我,同情地說道:「你的臉

色也非常糟糕嘛。我得順便給你也做個檢查啊。」

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春は

やるんだったな」と私わたし

を気き

の毒どく

がるように言い

った。

駅えき

から 私わたし

が帰かえ

って、 再ふたた

び 病びょう

室しつ

にはいってゆくと、父ちち

そのまま寝ね

ている 病びょう

人にん

の傍そば

に居い

残のこ

って、サナトリウムへ出で

かける日ひ

取どり

などの打う

ち合あ

わせを彼かの

女じょ

とし出だ

していた。なん

だか浮う

かない顔かお

をしたまま、私わたし

もその相そう

談だん

に加くわ

わり出だ

した。

 「だが……」父ちち

はやがて何なに

か用よう

事じ

でも思おも

いついたように、

立た

ち上あ

がりながら、「もうこの 位ぐらい

に良よ

くなっているのだか

ら、夏なつ

中なか

だけでも行い

っていたら、よかりそうなものだがね」

といかにも不ふ

審しん

そうに言い

って、病びょう

室しつ

を出で

ていった。

二ふ た り

人きりになると、 私わたし

達たち

はどちらからともなくふっと黙だま

り合あ

った。それはいかにも春はる

らしい夕ゆう

暮ぐれ

であった。 私わたし

さっきからなんだか頭ず

痛つう

がしだしているような気き

がしてい

たが、それがだんだん苦くる

しくなってきたので、そっと目め

立だ

たぬように立だ

ち上あ

がると、硝ガ ラ ス

子 扉とびら

の方ほう

に近ちか

づいて、その一いっ

方ぽう

の 扉とびら

を半なか

ば開ひら

け放はな

ちながら、それに靠もた

れかかった。そう

してしばらくそのまま 私わたし

は、自じ

分ぶん

が何なに

を 考かんが

えているのか

も分わ

からない 位ぐらい

にぼんやりして、一いち

面めん

にうっすらと靄もや

の立た

ちこめている向うの植うえ

込こ

みのあたりへ「いい 匂におい

がするなあ、

何なん

の花はな

のにおいだろう―」と思おも

いながら、空くう

虚きょ

な目め

やっていた。

 「何なに

をしていらっしゃるの?」

私わたし

の背はい

後ご

で、 病びょう

人にん

のすこし 嗄しゃが

れた声こえ

がした。それが

不ふ い

意に 私わたし

をそんな一いっ

種しゅ

の麻ま

痺ひ

したような 状じょう

態たい

から覚かく

醒せい

せた。 私わたし

は彼かの

女じょ

の方ほう

には背せ

中なか

を向む

けたまま、いかにも何なに

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我從車站回來後,再度走進病房,父親仍舊留在臥床未起

的病人身邊,同她商量動身前往療養院的日期。我繃著一張陰

沉的臉,也加入了他們的討論。

「可是……」父親俄而似乎想起了有事待辦,便一面起身,

一面大惑不解地說道:「既然已經恢復得這麼好了,那只消去

那裡待上一個夏天,不就足夠了嗎?」

說著,走出了病房。

只剩下兩個人後,我倆不約而同地默然不語。那是一個

春意盎然的黃昏。我自剛才起便覺得有些頭痛,那痛楚愈來愈

強烈起來。我不露聲色地站起身,走近玻璃門,將其中一扇打

開一半,倚門而立。然後半晌呆立不動,心內茫然,甚至不知

道自己在想些甚麼,將呆滯的目光投向對面籠罩在薄薄一片暮

靄之中的花叢,心忖道:「味道好香吶,是甚麼花啊?」

「你在做甚麼呢?」

背後傳來病人略顯喑啞的聲音,冷不丁將我從那樣一種

麻木狀態中喚醒。我猶自背對著她,假裝是在思考毫不相干的

事,語氣很不自然地開口道:

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040

春は

他ほか

のことでも 考かんが

えていたような、取と

ってつけたような 調ちょう

子し

で、

 「お前まえ

のことだの、山やま

のことだの、それからそこで僕ぼく

達たち

暮く

らそうとしている生せい

活かつ

のことだのを、 考かんが

えているのさ

……」と途と

切ぎ

れ途と

切ぎ

れに言い

い出だ

した。が、そんなことを言い

い続つづ

けているうちに、 私わたし

はなんだか本ほん

当とう

にそんな事こと

を今いま

がたまで 考かんが

えていたような気き

がしてきた。そうだ、それか

ら 私わたし

はこんなことも 考かんが

えていたようだ。―「向む

こうへ

いったら、本ほん

当とう

にいろいろな事こと

が起おこ

るだろうなあ。……し

かし人じん

生せい

というものは、お前まえ

がいつもそうしているように、

何なに

もかもそれに任まか

せ切き

って置お

いた方ほう

がいいのだ。……そう

すればきっと、 私わたし

達たち

がそれを希ねが

おうなどとは思おも

いも及およ

ばな

かったようなものまで、 私わたし

達たち

に与あた

えられるかも知し

れないの

だ。……」そんなことまで 心こころ

の裡うち

で 考かんが

えながら、それに

は少すこ

しも自じ

分ぶん

では気き

がつかずに、 私わたし

はかえって何なん

でもない

ように見み

える些さ

細さい

な印いん

象しょう

の方ほう

にすっかり気き

をとられていた

のだ。……

  そんな庭にわ

面も

はまだほの明あか

るかったが、気き

がついて見み

ると、

部へ

屋や

のなかはもうすっかり薄うす

暗ぐら

くなっていた。

 「明あか

りをつけようか?」 私わたし

は 急きゅう

に気き

をとりなおしながら

言い

った。

 「まだつけないでおいて 頂ちょう

戴だい

……」そう答こた

えた彼かの

女じょ

の声こえ

は前まえ

よりも嗄か

れていた。

  しばらく私わたし

達たち

は言こと

葉ば

もなくていた。

Page 43: (日漢對照.精裝有聲版)序曲 005 樣東西似的。你則聽任我如此施為。風乍起。合當奮意向人生。我將手搭在偎依著我的你的肩頭,口中反覆吟誦著這行

041

「我在想你的事呀,想山裡頭的事,還有我們在那裡即將

開始的生活……」我說得斷斷續續,可說著說著,居然連自己

也覺得剛才當真是在琢磨這些事情來著。對了,而且我還在思

考這樣的事情呢—「到了那裡後,恐怕真會發生許多事情

呢……然而人生這玩意兒,就像你始終在做著的那樣,把一切

都委身於它才好。……這麼做的話,說不定連我們從未奢望過

的東西,它甚至也會慷慨惠賜給我們呢……」

分明是在心底琢磨著這樣的事情,我竟然對此卻毫無自

覺,反而被那些無關緊要的細枝末節勾走了魂去……

庭院的地面依舊微微發亮,可回過神來一看,房間內已經

是一片昏暗了。

「要開燈嗎?」我趕忙振作精神,問道。

「請暫時還不要開燈……」她答話時的聲音比方才更顯喑

啞了。

我們倆沉默片刻。

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042

春は

 「私わたし

、すこし息いき

ぐるしいの、草くさ

のにおいが強つよ

くて……」

 「じゃ、ここも締し

めて置お

こうね」

私わたし

は、 殆ほとん

ど悲かな

しげな 調ちょう

子し

でそう応おう

じながら、 扉とびら

の握にぎ

りに手て

をかけて、それを引ひ

きかけた。

 「あなた……」彼かの

女じょ

の声こえ

は今こん

度ど

は 殆ほとん

ど 中ちゅう

性せい

的てき

なくらいに

聞きこ

えた。「いま、泣な

いていらしったんでしょう?」

私わたし

はびっくりした様よう

子す

で、急きゅう

に彼かの

女じょ

の方ほう

をふり向む

いた。

 「泣な

いてなんかいるものか。……僕ぼく

を見み

て御ご

覧らん

彼かの

女じょ

は寝しん

台だい

の中なか

から 私わたし

の方ほう

へその顔かお

を向む

けようともしな

かった。もう薄うす

暗ぐら

くってそれとは定さだ

かに認みと

めがたい位くらい

だが、

彼かの

女じょ

は何なに

かをじっと見み

つめているらしい。しかし 私わたし

がそれ

を気き

づかわしそうに自じ

分ぶん

の目め

で追お

って見み

ると、ただ空くう

を見み

つめているきりだった。

 「わかっているの、 私わたし

にも……さっき院いん

長ちょう

さんに何なに

か言い

われていらしったのが……」

私わたし

はすぐ何なに

か答こた

えたかったが、何なん

の言こと

葉ば

も 私わたし

の口くち

から

は出で

て来こ

なかった。 私わたし

はただ音おと

を立た

てないようにそっと

扉とびら

を締し

めながら再ふたた

び、夕ゆう

暮ぐ

れかけた庭にわ

面も

を見み い

入り出だ

した。

  やがて 私わたし

は、 私わたし

の背はい

後ご

に深ふか

い溜ため

息いき

のようなものを聞き

た。

 「御ご

免めん

なさい」彼かの

女じょ

はとうとう口くち

をきいた。その声こえ

はまだ少すこ

し顫ふる

えを帯お

びていたが、前まえ

よりもずっと落おち

着つ

いていた。「こんなこと気き

になさらないでね……。 私わたし

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043

「我有點兒喘不過氣來。是花的香味太濃了……」

「那我把這扇門也關起來了噢。」

我的語氣近乎悲哀,回應道,伸手抓住把手,將門拉上。

「你……」這次她的聲音聽上去幾乎接近中性:「剛才是在

哭吧?」

我做出驚訝的神情,急忙扭頭望著她:

「怎麼會哭呢?……你瞧瞧我。」

她躺在床上,甚至不願把臉對著我。天色已微暗,難以看

明白,不過她似乎目不轉睛地在凝視著甚麼。然而當我滿心憂

慮地縱目追逐她的視線時,卻發現她只是在凝望著一片虛空

而已。

「我知道的……剛才院長跟你說了些甚麼……」

我很想立馬作答,然而甚麼話也沒能說出來。我只是悄

然無聲地輕輕關好門,重又入神地望著暮色降臨的庭院地面。

俄而,我聽到背後傳來一聲長歎。

「對不起。」她終於開口道。那聲音裡依然帶著少許顫悸,

卻比先前鎮靜多了:「你不要再擔心這種事情啦……從今往

後,我們能活多久就活多久,好嗎?……」

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044

春は

達たち

、これから本ほん

当とう

に生い

きられるだけ生い

きましょう

ね……」

私わたし

はふりむきながら、彼かの

女じょ

がそっと目め

がしらに指ゆび

先さき

をあ

てて、そこにそれをじっと置お

いているのを認みと

めた。

* * *

四し

月がつ

下げ

旬じゅん

の或あ

る薄うす

曇ぐも

った朝あさ

、停てい

車しゃ

場じょう

まで父ちち

に見み

送おく

られ

て、 私わたし

達たち

はあたかも蜜みつ

月げつ

の旅たび

へでも出で

かけるように、父ちち

前まえ

はさも愉たの

しそうに、山さん

岳がく

地ち

方ほう

へ向むか

う汽き

車しゃ

の二に

等とう

室しつ

に乗の

込こ

んだ。汽き

車しゃ

は徐しず

かにプラットフォームを離ばな

れ出だ

した。そ

の跡あと

に、つとめて何なに

気げ

なさそうにしながら、ただ背せ

中なか

だけ

少すこ

し前まえ

屈かが

みにして、 急きゅう

に年とし

とったような様よう

子す

をして立た

って

いる父ちち

だけを一ひ と り

人残のこ

して。―

  すっかりプラットフォームを離はな

れると、 私わたし

達たち

は窓まど

を締し

て、 急きゅう

に淋さび

しくなったような顔かお

つきをして、空あ

いている二に

等とう

室しつ

の一ひち

隅ぐう

に腰こし

を下お

ろした。そうやってお 互たがい

の 心こころ

と 心こころ

温あたた

め合あ

おうとでもするように、膝ひざ

と膝ひざ

とをぴったりとくっ

つけながら……

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045

我扭過頭去,看見她悄悄地將指尖貼在眼角上,再也沒有

移開。

* * *

四月下旬一個微陰的早晨,我們在父親的伴送下來到火

車站。宛如啟程去蜜月旅行一般,我們在父親面前滿臉喜悅

地,坐進了駛往山嶽地帶的二等車廂。火車緩緩地駛離了站

台,將父親一個人留在了後面。父親努力做出若無其事的神態

站在那裡,只不過脊背微微前屈,彷彿陡然間蒼老了許多……

當火車完全駛出了站台後,我們關好車窗,一下子流露出

落寞的表情,在二等車廂一隅的空座上坐了下去。彷彿是要互

相溫暖對方的心靈一般,膝頭與膝頭緊緊相偎……

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作者簡介

堀辰雄1904—1953,日本小說家,昭和初期的新心理主義的代表作

家,是芥川龍之介唯一的弟子。他受西歐心理主義文學的影響,

擅長人物心理描寫,尤其擅長描寫人物面對死亡時敏感纖細的內

心感受,讓讀者從中感受到看似柔弱的生命中蘊涵的無與倫比的

韌性。 1930年以小說《神聖家族》登上文壇。 1938年以自身經歷

為基礎創作小說《風起了》。 1941年小說《菜穗子》獲中央公論文

藝獎。代表作有《神聖家族》《美麗村莊》《風起了》《菜穗子》等。

譯者簡介

施小煒畢業於復旦大學外文系日本語言文學專業,畢業後留校任

教。後留學於日本早稻田大學大學院日本文學研究科,並執教於

日本大學文理學部。

主要譯著有村上春樹《當我談跑步時我談些甚麼》《1Q84》《天

黑以後》《沒有色彩的多崎作和他的巡禮之年》等作品的簡體中文

版,以及川上弘美《老師的提包》簡體中文版等多部譯著。