ictを取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求め...

4
78 ビジネスコミュニケーション 2010 Vol.47 No.11 ータルソリューション推進プロジェ クト」を社長直下に組織化した。こ の「映像トータルソリューション推 進プロジェクト」は、これまで社内 の各事業本部が個別に取り組んでき た映像関連のビジネスを取りまとめ、 お客様にトータルソリューションを 提案し、一元的に提供するためにつ くられた。この組織では、図 1 に示 す、①大量の映像ファイル配信、ラ イブ映像配信、デジタルサイネージ などの多店舗展開向けソリューショ ン、②ビデオ会議システムなどの映 像コミュニケーションソリューショ ン、③映像品質監視や端末検証など の映像配信事業者向けOne Stop 運用 保守ソリューションに、特に注力し、 お客様に質の高いトータルソリュー ションの企画・提案を行う。 「当社の強みである、ネットワー クからシステムまでの One-Stop 用管理の実績・ノウハウに着目し、 映像配信事業者やコンビニなどの多 店舗展開している業界など、ネット ワーク活用の必要性の高い業界に重 点的に、映像系ソリューションを企 画提案しています。サービス品質向 上、運用や回線コスト削減など、お 客様の課題を把握し、NTT 研究所 NTT-AT は、「始まる、次世代コミ ュニケーション。映像×ネットワー ク」をキャッチフレーズとした新た な映像関連事業戦略を打ち出した。 2010 年度を、10 年後の発展を見据え た新たな成長戦略の初年度に位置付 け、2010 年4月に、映像系ソリュー ションの企画・提案を行う「映像ト ICT を取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求めている真の価値を提供 WDM装置 ギガビットスイッチ 光スイッチ 映像処理基盤技術 映像符号化 映像配信 ビデオ会議システム 4Kディスプレイシステム 主信号系技術 RF系技術 映像品質管理技術 障害切り分け技術 端末検証技術 映像配信事業者向け One Stop運用保守ソリューション 多店舗展開向けソリューション 映像コミュニケーションソリューション 具体的なソリューション例 ・映像品質監視 ・障害切分け ・端末検証など 具体的なソリューション例 ・ファイル配信 ・ライブ配信(ODS) ・サイネージなど 具体的なソリューション例 ・高臨場テレプレゼンス ・遠隔業務コラボレーションなど VOD・IPTVサーバ ODSサーバ サイネージサーバ NTT アドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)は、国内外の技術革新や開発動向を注目し、お客様が必要としているプ ロダクトや技術を提供してきた。ここでは、NTT-AT が注力しているビジネス分野として、次世代に向けた映像系トー タルソリューション「映像×ネットワーク」と、グローバルな視点から様々なプロダクトを精選してきた「NTT-AT Global Wave商品群」、そして、NTT研究所の研究成果をベースとした先端材料関連ビジネスとして、KTN結晶を核と した「KTN ビジネス」と、地球にやさしい GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスの実現に貢献する「窒化物半導体エピ タキシャルウエハ」を紹介する。 図1 NTT-AT の映像トータルソリューション 次世代に向けた映像系トータル ソリューションを提供 アプリケーションソリューション事業本部 コンテンツ流通ビジネスユニット長 映像トータルソリューション推進プロジェクト 統括部長 理事 工学博士 曽根岡 昭直

Upload: others

Post on 19-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: ICTを取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求め …どマルチデバイス還境での映像配信 サービスに対し映像のワンソースマ

78 ビジネスコミュニケーション 2010 Vol.47 No.11

ータルソリューション推進プロジェ

クト」を社長直下に組織化した。こ

の「映像トータルソリューション推

進プロジェクト」は、これまで社内

の各事業本部が個別に取り組んでき

た映像関連のビジネスを取りまとめ、

お客様にトータルソリューションを

提案し、一元的に提供するためにつ

くられた。この組織では、図1に示

す、①大量の映像ファイル配信、ラ

イブ映像配信、デジタルサイネージ

などの多店舗展開向けソリューショ

ン、②ビデオ会議システムなどの映

像コミュニケーションソリューショ

ン、③映像品質監視や端末検証など

の映像配信事業者向けOne Stop運用

保守ソリューションに、特に注力し、

お客様に質の高いトータルソリュー

ションの企画・提案を行う。

「当社の強みである、ネットワー

クからシステムまでのOne-Stop運

用管理の実績・ノウハウに着目し、

映像配信事業者やコンビニなどの多

店舗展開している業界など、ネット

ワーク活用の必要性の高い業界に重

点的に、映像系ソリューションを企

画提案しています。サービス品質向

上、運用や回線コスト削減など、お

客様の課題を把握し、NTT研究所

NTT-ATは、「始まる、次世代コミ

ュニケーション。映像×ネットワー

ク」をキャッチフレーズとした新た

な映像関連事業戦略を打ち出した。

2010年度を、10年後の発展を見据え

た新たな成長戦略の初年度に位置付

け、2010年4月に、映像系ソリュー

ションの企画・提案を行う「映像ト

ICTを取り巻く新しい時代のビジネス環境や社会環境が求めている真の価値を提供

WDM装置 ギガビットスイッチ 光スイッチ

映像処理基盤技術 映像符号化 映像配信

ビデオ会議システム

4Kディスプレイシステム

主信号系技術

RF系技術

映像品質管理技術

障害切り分け技術

端末検証技術

映像配信事業者向け One Stop運用保守ソリューション 多店舗展開向けソリューション

映像コミュニケーションソリューション

具体的なソリューション例 ・映像品質監視 ・障害切分け ・端末検証など

具体的なソリューション例 ・ファイル配信 ・ライブ配信(ODS) ・サイネージなど

具体的なソリューション例 ・高臨場テレプレゼンス ・遠隔業務コラボレーションなど

VOD・IPTVサーバ

ODSサーバ

サイネージサーバ

NTTアドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)は、国内外の技術革新や開発動向を注目し、お客様が必要としているプロダクトや技術を提供してきた。ここでは、NTT-ATが注力しているビジネス分野として、次世代に向けた映像系トータルソリューション「映像×ネットワーク」と、グローバルな視点から様々なプロダクトを精選してきた「NTT-ATGlobal Wave商品群」、そして、NTT研究所の研究成果をベースとした先端材料関連ビジネスとして、KTN結晶を核とした「KTNビジネス」と、地球にやさしいGaN(窒化ガリウム)パワーデバイスの実現に貢献する「窒化物半導体エピタキシャルウエハ」を紹介する。

図1 NTT-ATの映像トータルソリューション

次世代に向けた映像系トータルソリューションを提供

アプリケーションソリューション事業本部コンテンツ流通ビジネスユニット長

映像トータルソリューション推進プロジェクト 統括部長理事 工学博士

曽根岡昭直氏

Page 2: ICTを取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求め …どマルチデバイス還境での映像配信 サービスに対し映像のワンソースマ

や海外企業の先端技術・商品を活用

し、解決することにより、より多く

の付加価値を提供することが当社の

ミッションです。10年後の発展に

向けて、最新技術、商品の継続的調

達や企画提案力・保守力の充実、

NTTグループ各社との営業および

ソリューション連携を推進して、映

像系ソリューションの拡充を展開し

ていきます。」(映像トータルソリュ

ーション推進プロジェクト 曽根岡

統括部長)

例えば、映像系ソリューションを

構 成 す る 新 し い 商 品 と し て

「R e a l F e e lトランスコーダ」や

「VAT-100」がある。RealFeelトラ

ンスコーダは、NTT研究所成果の

高性能AVC/H.264エンコードエン

ジンを、海外のトランスコーダアプ

リケーションに搭載した商品であ

る。ARIB対応することで、IPTV

サービス向けのトランスコードを可

能にした。一方、VAT-100は、前

述の同エンジンと海外ベンチャー企

業のグリッドコンピューティング技

術を活用した高速映像トランスコー

ダアプリケーションである。映像を

実時間の1/2~1/5程度の時間でトラ

ンスコードできるだけでなく、その

高速性を活かして要求毎のトランス

コードに対応し、スマートフォンな

どマルチデバイス還境での映像配信

サービスに対し映像のワンソースマ

ルチユースを可能にした。

NTT-ATのグローバルプロダクツ

事業本部は、豊富な実績と技術力を

ベースに、NTT研究所のR&D成果

を補完する最先端の商品・技術をワ

ールドワイドに発掘し、お客様が求

めている価値を付加して市場に供給

するプロダクト・セールス(代理店

ビジネス)を推進してきた。

「当社は、様々な技術をお客様の

役に立つ多様な価値に変換して提供

する“Integrated-Value Provider”

をミッションとしていますが、当事

業本部もこのミッションをしっかり

と実践して、クラウドサービスをは

じめとするICTビジネスの大きな変

革に対応した最先端の商品群をワー

ルドワイドに品揃えすることで、地

球にやさしく豊かで活気に満ちた社

会の実現に貢献していきます。」(須

田取締役)

グローバルプロダクツ事業本部で

は、精選した最先端の通信システ

ム/コンポーネントを商品ブランド

「NTT-AT Global WAVE」として

提供してきた。図2は、NTT-AT

Global WAVE商品の提供方法と

NTT-ATの役割をまとめたものであ

る。SI企業向けチャネル販売・保

守と、直接販売・保守があるが、大

半は販売パートナー企業やソリュー

ションパートナー企業を経由した間

接販売・保守である。また主流商品

は、一次代理店としてベンダーから

直接調達し、同時にお客様の声を直

接ベンダーに伝達している。

現在、同事業本部がターゲットと

している重点領域が「マルチメディ

79ビジネスコミュニケーション 2010 Vol.47 No.11

【中央】取締役 グローバルプロダクツ事業本部長 須田宏一氏【右】同本部 メディアコミュニケーションプロダクツビジネスユニット

ビジネスユニット長 湯浅晴喜氏【左】同本部 IPネットワークプロダクツビジネスユニット

ビジネスユニット長 阪路賢二氏図2 「NTT-AT Global WAVE」商品の提供方法とNTT-ATの役割

販売パートナー企業様 &

ソリューションパートナー企業様 NTT-AT

一次販売代理店として

ユーザー企業様

直接販売・保守

・パートナーベンダーから直接仕入れ

・お客様要望をパートナーベンダーに 直接伝達して実現

・他社製品との相互接続性検証

・製品アップデート検証

・開発コンサルティング

・アプリケーション設計・開発

・個別カスタマイズ

・設備設計・工事

・各種セミナ・トレーニング

・保守サービス

SI企業各社

NTTグループ 各社(SIer)

通信キャリア

ISP・ASP・IDC

コールセンター

金融系 流通系 製造業系 あらゆる業種

開発・製造メーカー

パートナーベンダー

商品仕入

チェネル販売・保守

チェネル販売・保守

世界規模でのパートナーシップを活かして商材の育成から市場開拓など幅広い分野でビジネスを展開

Page 3: ICTを取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求め …どマルチデバイス還境での映像配信 サービスに対し映像のワンソースマ

ダクツビジネスユニットである。

「当ビジネスユニットでは、IPネ

ットワークの利用効率化や高信頼化、

インターワーキング高度化を支援す

るアプライアンスシステムなどを市

場に供給しています。主要商品とし

て、負荷分散(BIG-IPシリーズ)、

ファイアウォール(SonicWALL)、

帯域制御(NetEnforcer)、不正侵入

防御(TippingPoint IPS)、IPネット

ワーク測定器(Spirent TestCenter)

などがあります。」(阪路ビジネスユ

ニット長)

NTTは、同研究所において、光

を自在に曲げられる電気光学結晶の

KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウ

ム、KTa1-xNbxO3)を利用して、小

型で高速な光ビームスキャナーの基

盤研究に取り組んできた。さらに、

KTN結晶(図3参照)を利用した

新機能デバイスの研究を進め、電圧

に応じて焦点距離を変えられる可変

焦点レンズを開発し、既存デバイス

の1,000倍高速で焦点距離を変えら

れることを実証した。NTT-ATは、

本成果をもと開発した光偏向モジュ

ール「KTN光スキャナー」を2009

年6月から評価用サンプルとして提

供している(図3参照)。

K T N光スキャナーの特長は、

KTN結晶に入射したレーザ光を電

圧で自在に曲げること、可動部が無

く小型で高速なこと、そして、鉛を

使わない環境にやさしいことであ

る。

「現在、光を曲げる目的で広く使

われているスキャナー素子として、

可動ミラー(ポリゴンミラーやガル

バノミラー)やMEMS(Micro

Electro Mechanical System)など

が利用されています。これらの素子

は、ミラーを機械的に駆動するため、

素子のサイズや動作速度に限界があ

アコミュニケーション技術領域」と

「アプリケーションデリバリネット

ワーキング技術領域」である。マル

チメディアコミュニケーション技術

領域を担当しているのがメディアコ

ミュニケーションプロダクツビジネ

スユニットである。

「当ビジネスユニットでは、IPネ

ットワークやメディアコミュニケー

ションに関わる最先端の商材を市場

に供給しています。主要商品として、

豊富な実績を持つビデオ会議システ

ム(Cisco/TANDBERG、SONY、

P o l y c o m)、通話録音システム

(Impact3600/ULTRA)、音声/メ

ディア処理ボード(VOCALNET)、

通信プロトコルスタック/開発ツー

ルキットなどがあります。」(湯浅ビ

ジネスユニット長)

一方、アプリケーションデリバリ

ネットワーキング技術領域を担当し

ているのが、IPネットワークプロ

80 ビジネスコミュニケーション 2010 Vol.47 No.11

図3 KTN結晶とKTN光スキャナーチップ&モジュール

KTN事業部 開発部部長 工学博士

藤浦和夫氏

光を自在に曲げる光学結晶を用いた100倍以上の高速動作が可能な「KTN光スキャナー」

Page 4: ICTを取り巻く新しい時代のビジネス環境や 社会環境が求め …どマルチデバイス還境での映像配信 サービスに対し映像のワンソースマ

り、また、ランダムに光の方向を制

御することは困難でした。しかし

KTN結晶を用いた光スキャニング

は、原理的にはこれらの問題を一気

に解決し、素子体積1/100、動作速

度100倍と、いずれも2桁向上する

ことができるという驚異的な性能を

期待できます。」(藤浦部長)

KTN光スキャナーは、レーザ計

測・加工、光通信、光記録、センシ

ング、イメージング、ディスプレイ、

プリンタ・コピーといった幅広い分

野での利用が期待されている。

NTT-ATでは、2010年4月から、

KTN結晶をベースとしたビジネス

を推進するKTN事業部を新設し、

KTN結晶の生産やデバイスの製造

体制を強化した。今後は、医療分野

での応用を軸に、量産化に向けた体

勢づくりを進めていく。

また2010年4月には、KTN光ス

キャナーが「CLEO/Laser Focus

World Innovation Award」の大賞

を受賞した。同賞は、レーザや光技

術の世界最大級の国際会議である

「CLEO/QELS:2010」が、最もタ

イムリーで革新的と認められたレー

ザ科学分野における製品や技術を表

彰するものである。第1回(2006

年)の表彰以来、大賞を受賞した日

本企業はNTT-ATが初めてである。

次世代のパワーデバイス(高出

力・高周波電子デバイス)用半導体

材料として期待されている窒化物半

導体。これは、窒素を含む2種類以

上の元素から構成されている化合物

半導体の1つである。代表的なもの

に窒化ガリウム(GaN)や窒化ア

ルミニウム(AlN)がある。これら

の半導体は、短波長の光に相当する

バンドギャップ(Band

Gap:禁止帯)を実現

でき、また化学的に安

定で、機械的性質にも

優れ、高温環境下でも

動作可能であるという

特長を持っている。

NTT研究所は、次世

代の先端材料として期

待が高まる窒化物半導

体をシリコン(Si)、サ

ファイア等の下地基板

の上に薄膜状に結晶成

長させた「窒化物半導

体エピタキシャルウエ

ハ」を作製する技術を開発した。

NTT-ATは、この技術をもとに、パ

ワーデバイス製造のキー素材となる

GaN系エピタキシャルウエハの製

造・販売を行ってきた。

「ユビキタスネットワーク時代に

必要な超高速・大容量の無線通信シ

ステムを実用化するためには、パワ

ーアンプ等の高周波で動作する高性

能なパワーデバイスが必要です。ま

た、電子機器の省エネ化や小型化も

不可欠です。これらを実現する手段

として、高温環境下かつ低消費電力

での動作が可能な素子であるGaN

系電子デバイスと、この部材となる

窒化物半導体エピタキシャルウエハ

への注目が高まっています。」(蓮見

ユニット長)

2010年、NTT-ATは、窒化物半

導体エピタキシャルウエハの生産能

力を拡大するために、三菱化学への

製造委託を本格的に開始した。

また、大口径6インチSi基板にも

対応し、ニーズに応じて様々な製品

検査データ提供している(図 4参

照)。

81ビジネスコミュニケーション 2010 Vol.47 No.11

先端プロダクツ事業本部ナノテクビジネスユニット ユニット長

蓮見裕二氏

150mmφ

シート抵抗分布:Variation 6% Ave.:440 ohm/sq. Mobility:2180 cm2/Vs)

ウエハ形状:160m以上の曲率半径  BOW:34 μm  SORI:34 μm

表面粗さ:RMS~0.25 nm (1μm視野) 表面欠陥密度:~2e9 cm-2

図4 GaNエピタキシャルウエハ(6インチ)と評価データ例

次世代パワーデバイス製造のキー素材となる「窒化物半導体エピキシャルウエハ」を提供